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1950-04-07 第7回国会 衆議院 労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月七日(金曜日)     午後二時十分開議  出席委員   労働委員会    委員長 倉石 忠雄君    理事 篠田 弘作君 理事 島田 末信君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君       天野 公義君    佐藤 親弘君       塚原 俊郎君    船越  弘君       松野 頼三君    柳澤 義男君       前田 種男君    柄澤登志子君   人事委員会    理事 庄司 一郎君 理事 玉置  實君    理事 中曽根康弘君       上林山榮吉君    藤井 平治君   運輸委員会    委員長 稻田 直道君    理事 大西 禎夫君 理事 林  百郎君    理事 木下  榮君       岡田 五郎君    尾関 義一君       片岡伊三郎君    黒澤富次郎君       土倉 宗明君    坪内 八郎君       滿尾 君亮君    淺沼稻次郎君       松井 政吉君    上村  進君       石野 久男君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大屋 晋三君  出席政府委員         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       加賀山之雄君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 荒井誠一郎君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (国鉄労働組合         中央執行委員         長)      加藤 閲男君         労働委員会専門         員       横大路俊一君         労働委員会専門         員       濱口金一郎君         人事委員会専門         員       中御門経民君         人事委員会専門         員       安倍 三郎君         運輸委員会専門         員       岩村  勝君         運輸委員会専門         員       堤  正威君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第三号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 私が本連合審査会委員長の職務をとりますから、御了承を願います。これより労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。本日は御多忙にもかかわらず、特に御出席願いました参考人各位に対してあつくお礼を申し上げます。何とぞ隔意なく御意見の御開陳を願いたいと存します。これより公共企業体労働関係法第十八条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件議決第三号につきまして、まず政府趣旨説明を求めます。大屋運輸大臣
  3. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいまから昭和二十五年三月十五日に、公共企業体仲裁会委員が、日本国有鉄道国鉄労働組合との間の昭和二十五年四月以降の賃金ベース改訂に関する紛争について下しました裁定を、国会に上程いたし御審議を願う次第につきまして、御説明申し上げます。  国有鉄道国鉄労働組合との間の賃金ベース改訂に関する紛争については、御承知通りさき昭和二十四年十二月二日に第一回の裁定が下されたのでありますが、その後本年一月五日に、国鉄労働組合日本国有鉄道に射して、本年四月以降の賃金ベースについて、本年四月一日より平均九千七百円、二級一号を四千七百五十円とすることの要求を提起したのであります。国鉄当局は前国の場合と同様に、財政上の見通しその他諸般情勢上、組合要求を全面的にいれることはできないとして、これを拒否いたしましたので、組合では、国鉄中央調停委員会に対し、調停申請をいたしたのであります。  同委員会では、さきに前回の紛争に関し同委員会が示した調停案は、本年四月以降をも含めた賃金ベースについて定めたものであり、かつその後の諸般条件にも重大な変化はないので、その意見をかえるべき事由はなく、従つて委員会調停によつてこの紛争を円満に解決することはほとんど不可能であると認めて、調停案を提示することなく、同委員会より仲裁の請求を行つたのであります。よつて仲裁委員会は審理の結果、去る三月十五日に、ただいまお手元にありますような仲裁裁定第三号を下した次第であります。  そこで政府におきまして、本裁定を検討いたしましたところ、その第一項及び第二項ともに新たなる予算措置を必要とするものと認められましたので、公共企業体労働関係法第十六条所定の手続をもちまして、裁定国会に上程いたし、国会の御審議を願う次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第であります。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより本件に関し関係各位の御意見を求めることといたします。まず日本国有鉄道総裁加賀山之雄君の御説明を求めます。
  5. 加賀山之雄

    加賀山説明員 今回の第二次裁定がありました点につきまして、その経過並びに国有鉄道といたしましての考え方の一端を申し上げて、御参考にしていただきたいと存じます。  国鉄労働組合は本年の一月五日に、本年四月以降の賃金べースにつきまして平均九千七百円、二級一号というところで四千七百五十円とするように要求を提起いたしたのでございます。この要求は、御承知のように第一次裁定のときの組合要求とまつたく同じ内容のものでありますが、国有鉄道といたしましては、当時の国鉄経理事情並びに経済安定原則に基く諸般客観的情勢よりいたしまして、実現不可能の状態と思うということを述べまして、他面国鉄経営改善を強力に実施いたしまして、給與実質的向上をはかつて行きたい、かように回答いたしたのでございます。その後組合当局側団体交渉を持つたのでありますが、当局側態度に不満であるといたしまして、一月十九日交渉を打切ることになりまして、翌二十日に調停委員会に問題を提起いたした次第でございます。同委員会からも国鉄当局意見を徴されたのでありますが、まつたくさきに述べました通り事情でありますことを、調停委員会に対して申し述べました。これに対して同委員会といたしましては、第一次紛争において示した調停案が、本年四月以降をも含めました賃金ベースについて定めたものであり、かつその後の諸般条件にも重大な変化はないので、その意見をかえるべき理由はない。従つて委員会調停によつてこの紛争を円満に解決することは、ほとんど不可能であるというように認めまして、調停案を提示することなく、第一回から直接に仲裁委に持つて行かれ、その結果といたしまして、仲裁が行われることになつたという経過を持つております。  仲裁委員会審議経過その他は裁定書に記載されておりますから省略させていただきますが、この裁定を受けました国有鉄道といたしましては、ただちにその内容を検討いたしまして、この裁定に全面的に従いますためには、新たな予算措置が必要であるということが明らかとなつたものでありまして、三月十八日付をもちまして裁定、四月三日付をもつてその次の予算上の措置について運輸大臣あて申請をいたした次第でございます。  経過は以上の通りでございますが、国有鉄道といたしましては、非常に多数の従業員を擁しておりまして、この従業員の、昭和二十五年度における今回の裁定において基準賃金と申しておりますものに当りますものは、予算面におきましては、一人当り一箇月七千五十円程度に見積られておるのでありまして、この給與は必ずしも十分なものであるというふうには、もちろん考えておらないのでございます。しかしながら昨年の従業員の大きな整理に伴いまして、ただいますでに五十万を割つておる従業員でございますが、その勤務ぶりは、特に昨夏以来格段に私はよくなつてつておるということが、申し上げられると思うのであります。  一例といたしまして、石炭費節約等に向けられた努力は、非常なものであつたということを申し上げられると思うのであります。もちろん昭和二十五年度も二十四年度予算の継続でありまして、今後において石炭というような費目のみならず、微細にわたつて節約を重ねて行かなければならないと存ずるのでありまして、年度当初にあたりまして従業員諸君に対しましても、私から特にこの点につきましては強く要請をいたしたような次第であります。従業員の生活につきましては、いわゆるCPS等考え方もございましようけれども、やはり何と申しましても国鉄従業員といたしましては、非常に近い関係にある、仕事の内容も似ておるところの私鉄の従業員でありますとか、あるいは法的に性質が同じであります専売公社従業員との比較、権衡が私は一番問題になるのではないかというふうに考えておるのであります。  この際特にわれわれとしお願い申し上げておきたいと思ますことは、先ほども申上げましたように、昭和二十五年度予算として御審議を願いましたものは、人件費におきましても、また石炭費修繕費等いわゆる物件費におきましても、非常に切り詰められたものでございまして、たとえば人件費について見ますと、先ほどの七千五十円という単価に、人数といたしまして、年度当初の人員から年度内に順次減少して参る人員、これを年間全部として三万人と見積つておりますが、この順次減少して行くその人件費も落してあるというような状態でございまして、何ら弾力を持つたものではないという点を特にお考え願いたいと思います。また物件費の点といたしましても、石炭費は昨年はいわゆる当初において五千六百五十カロリー以下の石炭を目標にいたしておりまして、それに基いて消費量計算しておつたのでありますが、その後カロリーが順次品上昇いたしましたことと、従事員節約意欲が非常に旺盛になつて努力が積まれた結果として、石炭費において非常に大きな節約を生むことができた。つまり石炭費一つ予算弾力を持つ項目となつたのでございますが、昭和二十五年度におきましては、その節約したベース数量基準にとつております。いわゆる列車キロキロ当りにどれくらいの石炭がいるかという基準つて、われわれは石炭使用量計算をいたしておるのでありますが、昨年の節約したベース基準にしておりますので、もうすでに石炭数量自体において、昨年よりも非常な減少した計算がされておる。それから炭価につきましては、昨年の九月から、御承知のようにオープン・ビッドでやつておるのでありまして、その結果として公団から公定価格で買い取つておりました当時よりは、かなり安く手に入つております。最近のビッド事情を見ますと、必ずしも楽観はできないのであります。ことに山の大手筋におきましてはかなり強気で、ございまして、われわれが予算で予期しておるような炭価で買うことは、よほどの努力と山元の協力がない限りは、むずかしいような状態でありますので、楽観は許しませんが、炭価といたしましても、そういうふうに最近のビッドによつて得た炭価基準にして計算しておりますので、石炭費自体についてはよほどの節約をこれからいたしましても、昨年のような大きな節約を見ることはとうていむりであると私は考えております。むろん節約の上にも節約をするということは大切でありますので、私どもといたしましてはひとかけの石炭といえどもむだにしないようにという建前で努力を重ねて参り、これを従事員諸君に要請いたしておりますが、さような状態で、弾力がないということをお含みいただきたいと考えるのであります。  またももう一つの大きな点は修繕費でありますが、これは二十四年度予算と比較いたしますと、公布予算面として比較いたしますと多少増加をいたしております。しかしながらこの修繕費中には、いわゆる冬期における除雪の関係でありますとか、あるいは不時の災害復旧費用というようなものを見込んでおるのでございまして、線路、建物あるいは車両というようなものの修繕につきましては、さらにこれは手を加えて行かなければならないのでございまして、もちろん工事単価そのもの節約については十分に努力するといたしましても、修繕費だけを考えてみて、それほど多く見積られておるものではないのであります。  これらの三つのアイテムが最大の項目で、ほとんど経営費の大部分を占めておるというような状態でありますので、一口に申しまして二十五年度予算は、まつたく二十四年度経費が切り詰められた結果と同じ状態、あるいは項目によつては、さらにこの上に節約を重ねて行かなければ、執行できないという予算になつておるということを、この際申し上げたいと存ずるのであります。二十四年度予算と比較いたしましてプラスになつております点は、収入の面からいたしまして約二百億、それは一部は減価償却、一部は特別補充とりかえの費用といたしまして、約二百億を工事勘定の方に繰入れておる次第であります。御承知のように昨年度は、この工事勘定経費は、大部分の百五十億をエイド・フアンドから受けまして、それに減価償却の約十三億を加え、百六十数億をもつて実施いたしたのでありますが、本年度といたしましては、約二百億のものを自己資金の中から繰入れておるというように、改善を見ておるのでございます。この点は二十五年度予算と、二十四年度予算との、非常に大きな差であろうと私は考えております。  さような次第でありまして、第一次と第二次の裁定が出たことに対しまして、私どもといたしましては先ほど申しましたように、従事員給與は必ずしも十分であると考えておりませんし、その上に裁定が出れば、われわれといたしましては当然その裁定に服する義務が生ずるわけでございます。  第二次裁定に対しましては、第一項の実施をいたすには、これこれの金額が必要になつて参る。裁定の第二項につきましては、必ずしもその内容は明らかでないのでありますが、これにつきましては従事員の待遇の実質的な低下となつた面を考慮いたしまして、その各項目に対して、これを元へもどすにはどのくらいかかるかという計算をいたしまして、これを政府提出いたしたという段取りでございまして、その提出日にち等については、先ほど御報告申し上げた通りであります。  以上簡単でありますが、経過と私どもの考え、並びに今回の二十五年度予算内容概貌について御報告を申し上げた次第であります。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に国鉄労働組合中央執行委員長加藤閲男君の御意見を求めることといたします。加藤閲男君
  7. 加藤閲男

    加藤参考人 国鉄労働組合加藤でございます。ただいまからこの委員会において意見を求められました事柄について私の見解を申し述べさしていただきます。  最初に、私は今次仲裁裁定書がこのような形のもとに国会審議にかけられますことについては、納得いたしかねるものでありまして、その意味から、本日のお呼出しには応ずべきではないという意見が、組合の中で相当強く主張されたのであります。私も理論的にはそれに賛成でございましたが、しかし実際問題として考えます場合に、委員会が開かれておりますことから考えまして出席いたしましたような次第でございます、政府がこのように二度までも、法規裁量をなすべを事柄につきまして、自由裁量をいたしておりまする行政上の違法行為について、私ども行政訴訟を提起して、あくまでその責任を追究したいと考えておることを冒頭に申し上げたいのであります。  話の順序といたしまして、私は最初組合側考え方を申し述べておきたいと思います。私ども要求は、終始一貫、合法性の上に立つて主張して参つたのでありますが、その要点は、かいつまんで次のようなものであります。  第一番目に、法律的根拠としては、私からあらためて申し上げるまでもなく、仲裁委員会の制度は、罷業権行使にかわる労働争議平和的解決の方法として選ばれたものでありまして、単に組合側にのみ運動の幅を狭めるものであつてはならない。使用者側に対しても拘束力を持つものでありまして、公労法第十七条第二項並びに第三十五条、第三十六条の各条項においても、その立法精神を知ることができるのであります。すなわち公労法第三十五条は、使用者側に対しても裁定に服すべき原則規定しております。その均衡の上に立つて、平和的に争議解決しようとするものでございます。しかるに政府が同条第二項と日鉄法並び昭和二十五年度予算総則をたてに、組合側要求を拒否しようとしておるのは、明らかに公労法精神に違反し、かつまた十六原則の第四項、第五項の精神を蹂躙するものであると考えるのであります。公労法第三十五条第二項制定の趣旨は、組合側要求が万一不当のものであつて企業の運営を阻害し、機能を破壊する場合を予想してつくられたものと私どもは聞いております。従つて特異なる事例に対する例外的適用条項であります。しかるに政府がこれを、あらゆる組合側要求に刈して同項を発動して片手落ち的にと申しますか、片務的に債務を拒否することは、みずから平和的解決を放棄しようとする、基本的戦略の上に立つておるものといわざるを得ないのであります。公企業労働関係は、一切をあげて公労法規定すべきであつて公労法以上の法的拘束力を、他の法律や政令に與えてはならないと私は考えます。政府日鉄法において債務処理責任を不明確にし、あまつさえ、予算総則において給與総額を制限することは、公労法に対する自己否定であつてて、法律効力については立法機関みずからの責任において、その権威を守るべきであるにもかかわりませず、さき国会が制定せられました公労法を、次の国会において日鉄法を改正して、その法律的効力を減殺するということは、民主憲法下における民主議会権威を、みずから失墜するものといわざるを得ないと思うのであります。  私ども裁定に対する法律的態度は、東京地方裁判所判決によつて確立された次の三原則を堅持して参るものであります。  第一には、予算上または資金上可能か不可能かは客観的にきまる。第二に、大蔵大臣予算の移用または流用承認は、裁定の履行に関する限り、法規裁量行為である。第三に、裁定と同時に法的規範効力は発生いたしまして、議会の不承認は、法的規範効力に影響を及ぼすものでなく、単に債務を履行できない状態となるにすぎない。このように解釈をいたしております。  次に経済的根拠といたしましては、争議解決のかぎは国鉄予算中において、組合側要求資金的、予算的に可能であるかいなかの点に置かれておるのおりますが、われわれは可能であることを絶対に確信しておるものであります。すなわち第一番に、人件費割合企業を破壊するものではございません。かりに仲裁案を全面的に承認したといたしますならば、人件費国鉄予算中に占める割合は四二%にしかすぎないのであります。簡単に式をあげて御説明申し上げますならば、五百五十四億割る一千三百十九億、これは〇・四二となり、この四二%という人件費比率は、過去二十年間にわたりまして、国鉄予算中において妥当とされ、かつ民間鉄道会社においても均衡比率として認められて来た五〇%の比率よりも低い割合であつて運輸業におけるこの比率が、企業そのものの破壊にならないことを実証して余りがあるものと思われるのであります。従つて政府が主張いたしまするごとく、公労法第三十五条第二項による予算上不可能とは断定しがたいものでありまして、客観的に判断いたしますれば、可能であるという結論に到達するのであります。     〔倉石委員長退席稻田委員長着席〕  ベース改訂要求妥当性を與えるものは、その生産性であると率直に認めます。賃金べ一スは、その企業における生産性とマッチすべきものであることは、昨年一月の労資協議会におきまして、高能率高賃金マーケット代将が強調された点でございます。国鉄職員生産性を示す人トンキロは、昭和五年ないし八年ごろにおきましては、年平均で百五十七万人トンキロでございました。昭和二十四年度においては大量減員にもかかわらず、確実なる推計によれば百八十八万人トンキロと予想されております。一一九%約百二十パーセントの高率を示しているのであります。一般工業生産指数が七〇ないし八〇%を示しているに比較いたしまして、はるかに上まわる生産性を示しているのであります。しかるに平均賃金は、昭和二十四年十月全産業が九千百一円、交通業九千八百三円を示し、国鉄仲裁賃金の八千二百円に比して、一〇ないし二〇%高率を示しているのであります。従つて高能率高賃金原則からいつても、賃金安定の、原則からいつても、われわれの要求は無視さるべきではなく、かつ仲裁裁定によります人件費増加総額は、国鉄予算総額のわく内において、支出可能であることが実証されているのでありますから、資金上不可能とは決して言えないのであります。むしろベース引上げこそ、国鉄再建に必要欠くことのできない労働意欲向上一つ要案であると考えるのであります。  第三に政治的根拠といたしまして、現自由党内閣労働政策は、騒ぐものには與え、平和的に解決を希望するものには抑圧をもつてこたえるという、力の政治を行わんとする代表的標本であると考えるのであります。このような労働政策は、必然的に労働運動をして、平和的解決から、力による解決への、非合法的地下潜行の方向に追いやる結果を招来するものであると、確信いたすものであります。その企業内で解決し得る問題を、ことさらに政治問題化し、仲裁委員会で平和的に解決し得るものを、好んで政治問題化し、労働運動革命的運動に挑発するものであるといわざるを得ないのであります。その結果は、単に労働問題のみならず、一般社会の治安すら不安に追い込む結果となるでありましよう。この政治的責任は、一切吉田民自党内閣が負うべきものであると私は考えております。また専売裁定承認した政府が、同じ仲裁委員会裁定でありながら、国鉄裁定を拒否しようとしているので、われわれはあくまでも政府責任を追究するものであります。民主国家において法律は平等に適用さるべきであろうということを、強調したいのであります。  以上の見解から第一、第二の裁定を通じまして公社当局組合側との間にいかなる債権債務があるか——このような言葉を使いますことは、私は非常にいやでありますけれども、一応債権債務と申し上げますが、第一次裁定の残額として、これを東京地方裁判所判決文より拾つてみますと、ただちに支払いを命ぜられた分は三億二百四十三万七千円でありまして、予算上出すことの可能になつだときに支払うべき宣命ぜられた分は、二十六億九千二百五十六万三千円であります。次に第二次裁定の分でありまするが、べース・アップに要する金額は約七十億円であります。実質賃金切下げ復元に要する金額は約六十億円でありまして、両裁定書を合算いたしまして、私は組合側当局に対し約百五十六億の債権を有しておると考えておるのであります。  そこで私共は三月十五日第二次仲裁裁定書を受領いたしますや、ただちに国鉄当局に対し団体交渉開始を申し入れまして仲裁裁定実現方について交渉行つたのであります。そのときの態度は、日一日と悪化して来る労資間の紛争を、できるだけ早急に、しかも合理的に解決せんがための誠意以外に何ものもなかつたのであります。しかしながら第一次裁定第一項のいわゆる三億円については、総裁が二十四年度決算見込みの上、大よそこの額に相当する余剰金ありとして支給を決意し、運輸大蔵大臣承認を求めましたところ、費目流用は認められないとの一言で、これが拒絶せられたのであります。しかし私どもはこの問題につきましては、政府及び公社が、どのように抗弁しようとも、来る四月十九日の東京地裁の判決において強制処分が認められるものと考えておりますので、これによつて処理して参りたいと考えております。別の残額二十六億につきましては、控訴中の問題でありますので、最高裁判所の最終決定を見た上で処理したいと申しておりますので、不満ではあるが、その時期まで待とうというのが、組合側の偽わらざる態度でございます。第二次裁定第一項のベース・アップにつきましては、加賀山総裁は、この裁定書を受取られますや、ただちに予算措置を講ずるよう政府に要請した模様であります。しかるに政府はドツジ・ラインと公務員給與との対比上と称し、これを拒絶したかに承つております。私はこの政府のいうドツジ・ラインなるものは、よくわからないのであります。私どもの了解するところでは、このドツジ・ラインはインフレの収束のため——均衡予算を堅持して、ディス・インフレのための処置であつたと思つております。しかるにわが国の現状は、今や完全にデフレの様相を呈しておりますし、ドツジ氏の声明の本旨が、政府のいうがごとき硬直狭隘なものでないという証拠は、ドツジ声明後昨年一月二一十七日、占領軍の最高責任者の一人であるマーケット少将が労資協議会において、輸出品生産の増大こそ、生活水準向上の必要条件として緊要であると強調されまして、同時に賃金ストツプ令のごとき印象を與えられた賃金原則につきましても、生産能率の向上と、その結果たる生産の増大が実証されたときに、初めて労働給與増加は妥当であると説示されているのであります。私どもはこのことによりまして、先に例示いたしましたことから、われわれの要求が、ドツジ・ライン違反でないことを立証し得ると思うものであります。私どもは先の例とかわりました例を、簡単に最もわかりやすく御説明申し上げますならば、こういう例も引くことができるのであります。すなわち一九四八年度におきましては、国鉄従業員六十万人を持つて、一億二千万トンを輸送いたしました。一人当りの負担量は二百トンということになります。昨年七月行政整理の結果、従事員は五十万人に減少したにもかかわらず、一億三千五百万トンを輸送いたしました。一人当りの負担量は二百七十トンということになりまして、三〇%の生産増強ということができます。この実績より見て、現在の給與ベースの改正及び公正なボーナス制度に対する私ども要求が、十二分に妥当であることを確信するものであります。しかもなおこの上ともわれわれの積極的な経営への協力によつて国鉄事業の歳出の減少と歳入の増加がもたらされる点を考えますとき、特にしかりであります。さらに皆様は合理的増給は、購買力と国内商業市場の維持を助ける重要な要素であることを、御深慮願いたいのであります。  さらに第二次裁定第二項については、その内容はおおむね第一次裁定の一——三月についてなされました月額五億に相当するものでありまして、この点は疑義のないところであります。しかるに遺憾ながら現状においては、これを並行して実施をしなければならぬのに、第二項のみを実施するやの議論が行われておるようであります。しかもその所要額は、公社総裁は四十億内外と称、しかもこれに対して組合側が全面的に同意いたしておるやのことがいわれておりますが、私どもが了解しましたのは、ベース・アップと同時に行われます場合の現金給與部分は、第二項に関する限り、その程度でよろしかろうと申し述べたにすぎないのであります。いろいろ申し述べて参りましたが、国鉄労組といたしましては、第一次裁定がようやく三分の一程度の履行を見ましただけで、残余は実質上放棄されたようなかつこうになつておりますところへ、第二次裁定が出されてからずでに一箇月近くなりましても、何ら固まつて参りませず、不安と申しますか、焦慮と申しますか、組合員の中には、もはや合法運動は限界に来れりと、職場の空気はきわめて険悪となつて参りまして、統制に苦慮いたしておるのが実情でございます。この険悪になつて参りました空気の中には、生活上の不安が第一でありますことは論をまちませぬが、公分法に対する不信の比重が漸次拡大して参りましたことを、私指導者の一人として憂慮しておるのであります。ようやく緒についた民主的労働運動、すなわち法を守り、守らせる労働運動方式では、物事は解決せぬ、やはり力と力の争いでなければならぬというふうに転換いたしますならば、講和条約締結を目前にして、日本全体の不幸、これに過ぐるものはないのであります。万一委員各位の中に、私や星加など、一応戦後外国に出たこともあるし、根からの合法運動主義者がいちから、大したことになるまいなどと、甘いお考えをなさる方がありましたら、たいへんな誤りでありまして、私も最近ではもはや統制し得ない段階に参つておる。従つて責任のようでありまするが、本委員会の委員各位の御決定のみが、国鉄労働組合を、いな日本の労働組合運動の浮沈を決するものとの認識を持つて、問題をたれもが納得するように御決定いただきたいと思う次第であります。  結論として、問題の解決はマッカーサー元帥と吉田首相の手中にあると存ずるのであります。私は事態の推移を憂慮いたしまして、数次吉田首相に会見を申し出ましたが、首相はいまだに私を不遑の輩と考えておると見え、会見に応じません。三月十六日私は意を決し、別紙の請願書を持参し、マ元帥に直渡しせんといたしましたが、これまたバンカー大佐に阻されて、果すことができませんでした。一方組合といたしましては、すでに先ほど申し上げましたように、合法斗争の限界来れりとして、国鉄労組はいかにあるべきかということを、輿論に問うておるのであります。この輿論の帰趨に従いまして、私ども組合員全体の投票を得まして、そうして公労法を蹂躙した政府に合法的手段をもつて対抗して行きたい、このように考えておるのであります。できるならば、このような険悪な事態をすみやかに解決するために、本委員会において御善処をお願いしたいということを再度申し上げます。  以上最後の結論としては、はなはだ意に満たないところもありますが、多くを申し上げませんけれども、私どもの苦痛を御賢察の上、ぜひ第二次裁定の早急実現について、すみやかなる御決定をいただくようお願いする次第であります。
  8. 稻田直道

    ○稻田委員長 次に公共企業体仲裁委員会委員荒井誠一郎君、今井一男君の御意見を順次お述べを願いますが、まず荒井誠一郎君。
  9. 荒井誠一郎

    ○荒井参考人 ただいま御審議中の国鉄仲裁裁定につきまして、御説明をいたしたいと存じます。ただ一言申し上げておきたいことがございます。それは裁定の当時、ちようど末弘委員長が海外に旅行中でございましたので、私が委員長の職務代行を委嘱されまして、裁定に参加いたしたことであります。  さて公共企業体の職員の給與の性質とか、あるいは公労法規定の解釈等に関しましては、第一回の国鉄裁定及び専売裁定の際に十分に国会において論議されておると考えますので、これらの点についてはすべて省略いたしたいと思います。ただ私は今回の裁定の基礎となりました委員会考え方について、一言申し述べたいど存じます。  第一に、国鉄職員給與は、一般官庁職員の給與とは違つて考えなければならないということであります。鉄道事業職員の仕事は、その仕事の性質から申しまして、むしろ民間企業と比較して考えることが適当でありまして、この給與につきましては、公務員の給與水準ももちろん考慮すべきでありますが、しかし全然同一に考えることができないということは、しばく述べられておるところでありまして、委員会もさように考えておるのであります。  第二は、国鉄職員の現在の給與は、先ほども説明がありました通り、民間の一般企業ないし私鉄等の類似企業給與に比べまして、著しく低いこどであります。これは国鉄の経理が久しく赤字を続けて参りましたので、給與改善がなかつたのみならず、経理の改善のために、給與は従来よりかえつて低下されておるのでありまするこのことは前裁定において詳細に申し述べてあると存じます。従いまして国鉄職員給與をある程度引上げるということはやむを得ないことになりますが、これにつきましては、次の誰点について考慮しなければならぬと考えた次第であります。  第一は一般経済の現勢であります。大体現在の物価は安定の状態にあると認められますし、本年度予算におきましても、その方針をもつて編成されておるようでありますかも、委員会もさように前提をいたしたのであります。また一方経済九原則賃金原則の制約もありますので、これも考慮しなければならないということであります。  第二は国鉄の経理の状況につきまして、十分検討する必要があるということであります。国鉄の経理状況につきましては、先ほど総裁からも説明がありましたが、最近著しく改善しまして、平常の状態に復したと申してよろしいと思うのであります、しかして昭和二十五年度予算におきましては、損益勘定から工事勘定に約二百億円の繰入れがあります。すなわち益金に相当する財源をもつて、資本的支出をまかのうておる部分も多額に上つておると考えます。従つて相当の負担能力があるのでありますが、しかしこの改善は何分今年度のことでありますので、これも考慮に入れる必要があると存じます。以上諸点を十分に検討いたしました結果、お手元に配布してあります裁定をいたした次第であります。  なお裁定に至ります経過について御説明いたします。先ほどもすでに説明があつたのでありますが、本件の紛争につきましては、本年一月二十ひ国鉄労働組合から中央調停委員会調停申請が行われたのであります。調停委員会におきましては、諸般情勢を検討いたしまして、審議の結果、前回の調停案については、変更の必要を認めない、また新しく調停案を提示しても解決の見込みがほとんどないという理由から、二月十日新しく調停案を示さずに、当委員会に対しまして仲裁請求をいたしたのであります。当委員会といたしましては、いろいろ研究の結果、調停委員会のとりました措置は異例のことではありますが、事情やむを得ないものと認めまして、申請を受理いたした次第であります。そうして委員会といたしましては、当事者双方につきましてその主張を聴取いたしましたほか、公聴会を開催いたしまして各方面の意見を徴し、また各種の資料につきまして種々検討を重ねた結果、本裁定を行つた次第であります。  裁定内容につきまして一言いたしますと、その第一項におきましては昭和二十五年四月以降の国鉄職員基準賃金を、平均八千二百円と定めたのであります。この基準賃金を定めるかどうかにつきましては、いろいろ論議を斗わしたのでありますが、慎重に考慮の結果これをきめることにいたしました。しかしながらその金額は各般の事情を十分に考えまして、必勇最小限にとどめた、次第であります。右のように基準賃金の額を最小限に定めましたため、基準外の賃金、現物給與、福利施設その自他の給與等を充実いたしまして、さらに実質的に賃金の充実をはかる必要も認められましたので、それを第二項においてきめた次第であります。すなわち前回の裁定の際に指摘いたしました待遇の切下げにつきまして、昭和二十五年四月以降におきまして、日本国有鉄道はその補填のため、これら諸点について適切な措置を講じ、職員の実質的な賃金の充実をはからなければならないことといたした次第であります。  最後に本裁定の実行につきましては、裁定の理由の末尾に述べてあります通り国鉄当局としては、すでに成立しました二十五年度予算内でできるだけの措置を講ずることとし、また組合もこれに協力することが要請される次第であります。しかしながら、これにはおのずから限度がありますので、国会におきまして十分に御審議になり、裁定の実現ができますよう適当な措置が講ぜられることを切望する次第であります。なお前回の裁定から関係せられております今井委員から御説明があると存じますので、私はこれをもつて説明を終ります。
  10. 稻田直道

    ○稻田委員長 次に今井一男君。
  11. 今井一男

    ○今井参考人 今回の裁定趣旨につきましては、ただいま荒井委員長代理から要点はすべて尽されたのでありますが、若干補足させていただきます。  前回の裁定にあたりまして、なぜわれわれがベースを出さなかつたか、それに今回の裁定には、第一項にベース問題がうたつてあるという点についてまず申し上げます。前回の裁定書に掲げました通り、理論的には、賃金は何と申しましても基本給が土台となりまして決定さるべきが筋合いでありますが、政府諸般の施策が今後急速にその効果をあげられるかどうか、その見通しも待つ必要があると認められましたし、かつまた年度末までの期間もきわめて短期間でございますので、一応これを見送るという考え方をとつたことは、裁定書に書いてある通りでございます。ところがその後の経過を詳細調べましたところ、いろいろプラスの面、マイナスの面両者がございますが、いずれにいたしましても、民間の賃金国鉄賃金との開きが、名目的にも実質的にも、縮まるような傾向は認められないということが一つ。もう一つはやはり新しい年度というときは、こういつたことを考えるべききわめて自然な時機であるという、この両点に立ちまして、基準賃金の改訂を結論に出したわけであります。ただ前回の裁定の際には、いろいろの資料からいたしまして、われわれおよそ八千五百円程度という数字を出したのでございます。しかしながらとにかく今後の経済の見通し等を考えますと、かつまた、ただいま荒井委員長代理が申し上げましたように、国鉄の経理改善がその初年度に当るといつた意味合いも込めまして、これを最小限度にとどめるといつた考え方が、この八千二百円という数字でございます。なお第一項につきましていろいろなむずかしい表現になつておりますが、特にこの機会に申し上げておきたいと思います点は、前回の裁定で指摘いたしました実質的な賃金の切下げ、その中にはたとえば合宿寮の料金が上つておるといつたような問題がございますが、これをいまさら下げるということも実行上不都合を生じ、かつまた不公正な結果になるという場合もございますのでで、そのかわりに別の面で、現物なり、実質給與なりで改善が行われるといつた場合もございます。その場合に、それを幾らに見積つて、前の分をどう考えるかといつたような点になつて参りますと、計算上きわめていろいろの意見が出て来る場合も想像されるのであります。その意味から、これは結局両者が団体交渉をしてきめなければならぬという問題にも相なりましようし、また話のまとまらぬ場合には、われわれがお手伝いをしなければならぬということも起つて来ようかと思います。なお昨年の年末に若干の昇給があつたのでありますが、その昇給によりまして、従来の切下げ部分がどのくらい改善されたかという点につきましても、まだ精算は済んでおりません。そういつた関係もございまして、われわれといたしまして、この第二項については金額責任のある数字を出すことは、きわめて困難だといつた見通しを持つております。とにかく年度経過中に、両者の話合いできまつて行く面が非常に多かろうということは、裁定にあたりまして頭に浮んだ点であります。なお前回の裁定は、衆議院におきまして現在の国鉄賃金は低いと認められるが、予算上金が出せないからこれを不承認とする、だから予算が出せるようになつたらやる、こういつた附帯決議かつきまして通過されたのであります。本年度国鉄の経理は、先ほど加賀山総裁が申しましたように、一般の経費についてはきわめて切り詰めてございますが、二百億に上りますところの特別補充費、いわば益金による建設といつたことが、終戦後初めて、しかも大きな金額をもつて計上されておるのであります。経理のことにつきましても、理由書に若干書いてございますが、昭和の初め、まだ国鉄が平常の営業状態にありましたときにおきましても、運輸収入に対しましての益金の割合は、少いときには十二、三パーセント、多くて二十五、六パーセントというのが平常であります。今回は約十五パーセントに当りましてすでに平時の水準の中に入つております。この二百億によつて実施されますところの工事内容を見ますと、従来あまり急いでやらないでよろしいといつたものまでも、この機会に手をつけようという部分も、一部認められるのでございます。またせんだつて安本から発表になりました数字によりますと、民間の企業におきまして、昭和二十四年度中に自己資金によつて拡張いたしました部分は四百十億、あるいは二十五年度が五百九十億の見込みであるとかいう数字を見たことがございますが、これと比べましても、国鉄が千三百億の収入の中から二百億もの自己資金による建設を行うということは、比率的にもきわめて厖大な数字だということは、申し上げられると思うのであります。この意味合いからいたしまして、われわれとしては、この特別補充費二百億の中から一部をまわすことによりましてて、十分今回の裁定の実現は可能である、しかもその結果は、昭和十一、二年度におきまして、人件費が五十五パーセントか五十四パーセントでありましたものが、せいぜい四十五パーセント程度にしかならないであろうと思う。この点は、先ほど加藤委員長の申した数字と、私どもの数字とは若干違いますが、いずれにいたしましても、とにかく国鉄の経理内容には決して支障がない。もちろん益金が出まして、この益金を極力そういう建設資本に向けるということは、経営の状態を良化せしめるためには、確かにすぐれた方法には違いありませんが、一方におきまして、この前指摘いたしましたような賃金の切下げまで行いながら、しかもそれの穴埋めも済まないうちに、こういつた面ばかりに、しかも民間の資本を越えてそういつた投資をされるということは、われわれも相当とは認られないのであります。民間の企業におきましては、こういつたことをやる場合には、御承知通り増資という方法もございまするし、社債を借り入れるという方法もございます。ところが国鉄につきましては、資本の増加という方法も、内部資本以外にございませんし、また社債という方法も今まえでとられておりません。しかも戦災に上りまして、あれほどの厖大な損害を受けたのでありますが、自己資本の努力によりまして、少くともほかの産業と比べて見劣りのしないところまで復興して参つたのであります。そうしてこの犠牲が大部分賃金にかかつているということは、この前の裁定でも指摘した通りでありまして、こういつた経理改善の機会に、その一部をこの辺にまわすということは、しかもそれが民間水準にまで上らないという線で、がまんしてもらつて、上げるということは、この情勢下におきましても、私どもは自信を持つて、相当であると結論した次第であります。  ただ最近物価が安定しておるのに、なぜそう組合では苦しい苦しいというのだろうか、妙ではなかろうかという意見も、一部にはあるのであります。これは今回の裁定にあたりまして、特に国鉄の経理当局に勉強してもらつて出した数字でありますが、二十三年の十二月から六千二百七円べースに切りかえられまして、御承知通り二十四年の一月と二月は、それが一七・五%へつこんでおります。それにいたしましても、この二十三年の十二月から二十四年の三月までの四箇月間の平均給與、一切のものを加えました給與は八千四百三十六円であります。ところが二十四年度になりまして、四月以降十二月までの平均は七千百六十六円、千三百円近く下つておるのであります。これは国鉄の支払いの総額からはじき出したものでありまして、私ども正確と自信いたしておりますが、なぜこういうことが起つたかと申しますと、要するに問題は超過勤務手当の関係であります。前年度におきましては、超過勤務手当が一箇月——これは二十三年度平均でありますので、ベースのもつと低かつた時代も含めまして、なおかつ一箇月千二百三十三円ありました。ところが二十四年度におきましては、四月から十二月までの平均が二百三十三円にしか相なりません。その間ちようど千円削られたことに相なつております。私どもが第一回の裁定で指摘いたしました待遇切下げは、この千円とは違いますが、とにかく超勤だけで千円の手取り収入が減つておる。しかも勤務条件は、勤務時間の延長なり、何なりによりましてさらに強化されましても、なおかつ実収入が千円以上減つておる。要するにここに問題があるわけであります。御承知通り、一昨年のマッカーサー元帥の書簡によつてできました政令二百一号には、従来の労働条件はこれを確保するという条文がございました。もつとも国家公務員法の施行によりまして、政令二百一号の国家公務員への適用はなくなつたわけであります。しかし本来ならば国鉄職員は、あのマ元帥の書簡によりまして、当然国家公務員という中途の段階を経ませんで、ただちに公共企業体職員と相なるべき筋合いであつたのでありますが、諸般の準備の都合上、やむを得ずその間臨時に腰かけて国家公務員になつた。そのなつた機会に二百一号の効果を失われまして、そういつた条件は残らず——残らずと言つては非常に失礼でありますが、相当大部分が消えてなくなつた。それがこの超勤におきましては千円という大きな——実はこれを今のベースに直しますと、千円以上ということに相なるのであります。従つて組合員といたしまして、前よりも苦しいということを申すことが具体的に、数字的には出ておるわけであります。ただいま加藤委員長も触れましたように、こういつた日本の再建につきまして大きな役割をになつている国鉄というものが、この労使関係がいつもがたがたで参るということは、はなはだ将来のためにも問題であろうと思うのであります。  どうかそういつた意味合いにおきまして、大局的な見地から、国会におかれましての御審議をお願いしたいと思います。簡単でありますが、これをもつて終ります。
  12. 稻田直道

    ○稻田委員長 次会は追つて公報をもつてお知らせいたします。なおその際は、参考人各位の御出席を再びお願いいたしまして審査を進めたいと存じますから、本日ご出席の参考人各位は、御足労ながら次回の連合審査会にも御出席をお願いいたしたいものであります。右御了承をお願いいたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時二十四分散会