○
菊川参考人 私、
国鉄労働組合中央執行副
委員長の
菊川でございます。本日
委員長の
加藤が参りまして、
組合の
意見を申し述べるはずでございますが、御
承知の
通りに、
加藤は
自由世界労連の
結成大会に、
日本側の
代表に選ばれて参りまして、帰途今アメリカにおりまして、一両日中に帰る見込みでありますが、本日間に合いませんので、私がかわ
つて組合の
意見を申し述べたいと存じます。
先ほど運輸大臣が発言されました
組合の
要求並びに
調停委員会に持
つて行つた経緯、
仲裁の出された
経緯等については、大体
経過はその
通りでございます。日付その他については私は間違いないと思います。ただ私がここで申し上げたいのは、
調停委員会において最も問題にな
つた点、
組合としてぜひ
委員諸公に聞いていただきたい点だけを、一言つけ加えさしていただきたいと存じます。と申しますのは、第一に、
調停委員会におきまして、
組合側が特に主張したのでございますが、私
たちが九千七百円と一箇月の年末
賞與の
支給方を
要求したことに対して、
国有鉄道側は、
経理上の
都合から、これはどうしても出せないということを強く主張されまして、拒否しました。しかしながら過ぐる六月
定員法が実施されまして、七月の
首切りの際には、実際には
国会を通過した国の
予算におきましては、
国会議員諸公の前に出すときには、これは
石炭を買うのだとい
つて予算を組んでおきながら、それを
首切り賃にまわしたということがあ
つたのであります。しかも事実これはCPSから考えても、あるいはよそとの関連から考えても、この九千七百円ということについては、決して過大な
要求ではない。
日本のほかの
一般労働組合において、現在九千七百円
ベースを
要求しておるような
組合がどこにありますか。これさえも実現できない。特に
共産党あたりからは、そういう小さいものを
要求してはいかぬということを相当攻撃されております。そういうように、われわれとしてはきわめて謙虚な気持で
要求したのに、それを実施されないのにかかわらず、
都合のよい
首切りをやるときには、
国会では
石炭を買う金だとい
つて承認を受けておきながら、
首切りにまわした。
首切りにまわす金があるならば、これを出せないはずはない。われわれはかように主張したのでありますが、この点が論議の
中心になりまして、これが
仲裁委員会においても問題にな
つたということだけを、特に御記憶願いたいと思うのであります。これは将来の問題として、
国会対
国鉄の運営問題につきましての大きなポイントになるのではないかと思いますので、特につけ加えさしていただきたいと思います。
その次には、
調停委員会においては、やはり
調停される場合に、
国鉄は
公共企業体である限りにおきまして
公共の福祉ということを特に考えなければならぬので、
国民一般の輿論をまず聞く必要があるという見地に立たれたものと見えまして、あるいは
労働者の
代表、あるいは
言論界の
代表、あるいは政党の
代表等を呼ばれまして、そうして
公聽会を開催されました。その際私傍聽いたしたのでありますが、日経連の
代表として
出席された方と私鉄の
経営者連盟を
代表して
出席された方、すなわち
ほんとうに
資本家の
代表の方は、
国鉄の
給與を上げることは、われわれの方の
労働者がやかましくなるから、これは困るという点を主張されてお
つた。それ以外の
出席された方は、大体において
組合のこの
要求は、むしろ謙虚に過ぎるくらいであるから、ぜひとも
要求をそのまま入れてやるべきであるという支持をされてお
つたことを、私は申し上げたいと思います。
次に、以上のような
調停委員会の
経過をたどりまして
調停案が出されたのでありますが、私
たちはこの
調停案をもら
つたときに、なるべくならば
団体交渉によ
つて問題を解決して、
調停の手を煩わすようなことのないようにしたい。しかしながら拒否されてしま
つたので、
調停へ
行つたのであるが、これを
仲裁に行くことなしに、
調停案のままを
双方がのむことによ
つて、問題を一日も早く解決したい、こういう
考え方に立ちまして、まず塩原で開催いたしました
大会にこの議案を上程いたしまして、
審議いたしましたところ、
大会といたしましても、
公共企業体労働関係法が実施されまして、初めて持
つて行つたものであり、
調停委員会の仕事として初めて出された問題であるからして、将来におきましても
調停委員会、
仲裁委員会等の法的の根拠を持
つた機関をあくまで尊重して行かなければ、力と力とのもみ合いということになることは、われわれの好むところではない。こうした
法的機関を尊重して、そうして民主的の
日本を建設しなければならぬ、こういう
観点に立ちまして、
大会も大多数をもちまして、
調停委員会の
権威を尊重する、そうしてこの取扱い方は
執行部に一任するということを決定いたしました。この決定を受けましたので、帰りまして
大会の意のあるところを十分参酌いたしまして、
当局側に対して、示された
調停案に
従つて妥結しようではないかという申し入れをいたしましたが、最初の
団体交渉のときと同じような
理由をもちまして、やはり
諸般の
情勢からというのと、
経理上の
観点からというのと、この二つの
理由をも
つて拒否いたしました。やむを得ずわれわれとしては、
労働協約の定めるところによりまして、
仲裁委員会に
仲裁の
申請をと
つたような次第であります。そうしてただいま
国会の議題にな
つておりますところの
裁定が、十二月二日
労使双方の立会いの上で交付されたような次第でございます。
そこで
仲裁の
裁定に対する
組合の
考え方を――とにかく六月一日に実施されて以来、今日まで、われわれは
公共企業体労働関係法をいかに考えるか、
仲裁委員会の
裁定というものをどう考えて来たかということをぜひとも御考慮願い、お聞き願いたいと思いまして、この点をひとつ述べさしていただきたいと思います。
公共企業体労働関係法は、皆さん御
承知の
通りに、昨年の七月二十二日の
マツカーサー元帥の有名なあの
書簡に基いて、それから
国有鉄道が
公共企業体になり、これに関連して
公共企業体労働関係法が実施されるようにな
つたわけでありますが、あの当時におきましても、私
たちとしては、あくまでも
国有鉄道というものは
国民の
国有鉄道である、
従つて国民を相手とするものであるからして、われわれとしては、
労使の
紛争もできる限り忍むべき点は忍んで、そして
ストライキだとか、あるいはサボタージュという
行為に訴えて、問題の解決に持
つて行くということは、愼んで行かなければならぬ。これは忍べるだけ忍ばなければいけない。そういう点については、私
たち常に考えて主張して参
つたわけであります。しかしながら
一般の
労働運動の
趨勢といたしまして、
団体交渉が決裂したならば、ただちに
ストライキだという気風が、
日本の戦争後の
労働運動の中には、みなぎ
つてお
つたと申し上げては語弊がありますが、これは敗戦後の国の
情勢――どこの国でもそういう
経過をたどることは、
欧洲の方の諸国におきましても、みなそういう動きを示しているので、いまさら御
説明申し上げるまでもないと思うのであります。しかしその中にあ
つても、私
たちは戰争に負けたあの日に、
汽車が動いておるということだけで、ようやく
国民がまだ安心してお
つた。そのときの感激を私
たちは忘れてはならないために、これはどんなことがあ
つても、
汽車だけはなるべくとめたくないという一点でや
つておりました。しかしながら、いろいろそういうような
趨勢にも押されて、
部分的にはやはり列車がとまるという争議も行われました。しかし今後はそうした
精神だけは持
つて、できる引けやはりとめないようにする。
罷業権は持
つてお
つても使わずに、その圧力だけで問題を解決して行くということを、
組合は
結成以来考えて参
つたのであります。しかしながら所々で問題を起して、結局あの
書簡が出されることにな
つて、
法律をも
つて罷業権が剥奪されるという悲しむべき結果にな
つたのでありますが、これは
組合が自制してお
つて、
罷業権は持
つておるけれども、凶器として使わない、
労働者を
ほんとうに守るために使うというように使
つて行けば、この問題も、将来は必ず私
たちの手でも
つて、
組合が正しくこれを使うということで、お互いに切瑳琢磨して、そういう訓練をつけることによ
つて、この罷権だけはまた必ずいつの日にか獲得しなければならない。そして
法律によ
つて禁じられている
行為は、やはり
法律によ
つて禁じられないようにしなければならぬ、そうでなければ
ほんとうの
労働組合ではない。こういうふうな
考え方に立
つてお
つたのであります。しかし禁じられている以上、やはり何かによつで問題は解決されなければならない、かように考えるのであります。
罷業権を剥奪するということは、すなわち
団体交渉権というものを尊重するということと、それによ
つて解決しない場合には、
調停、
仲裁等の諸
機関の
権威を十分に尊重して、
罷業を
行つたと同等の結果が得られるように
労働者が保障されなければならぬ、かように考えておるものでありますが、われわれといたしましても、この
考え方に立
つて、今日まで
組合員に対しても訴えまして、われわれは
公共企業体労働関係法によ
つて保護されているのだ。少くとも制約も受けているかわりに、あくまでもこの
法律によ
つて保護されているのだ。
従つてこの
法律によ
つて定められたる
仲裁委員会、
調停委員会は、われわれは十分にこれを活用して行かなければならぬということを確認いたしまして、今日まで
労働組合の中の
組合教育こいう面も、その方面に向
つて参つてお
つたのであります。それがたまたまこの
裁定が下されまして――この
裁定は、昨日
院議をもちまして、趣旨を尊重するという御
決議がなされた趣でありますが、
政府の考えておられることを、われわれ情報として、あるいは新聞の記事によ
つて察知いたしますと、年内に三十億を
支給すべしというあの
裁定でさえ、今日の
趨勢によりますと、ほとんどその半分も実施されない。少くとも尊重するという以上は、九十五パーセントあるいは九十パーセント以上が
支給されてこそ、尊重されると言えるのであるが、その半分も実施されない。こういう尊重のされ方である。
院議と
政府の考えを、このくらい離れている。こういう悲しむべき事態を考えましたときに、私
たちはまことに遺憾である、かように考えておる次第でございます。
国会の参議院、衆議院の
決議から考えますと、私
たちの今日まで考えてお
つたことを、大体において御
了承願つてお
つたと思うのでありますが、
政府のお
考え方が遺憾ながらそういう
状態であるということについては、
組合員一同今日まで
公共企業体労働関係法に非常に大きな期待を持
つてお
つた、そしてこれにたよ
つて来ただけに、落胆する点が非常に大きいということだけを特にお考え願いたいと思うのであります。
それから
法律的の
解釈につきまして、いまさら私がここでとやかく申し上げるのはどうかと思いますが、十六條のあの
解釈につきましても、
組合側といたしましては、あの
法律が制定された当時、すぐに労働省へ参りまして
法律の
解釈についても聞きました。そのときにも
はつきりと、もし
資金上、
予算上、
支出のできない場合には、ただちに拂うことはできないのだ、これはそういう意味で
政府を拘束することにな
つているのだ。しかしながら一旦
裁定が下された以上、三十
五條に
従つて国会へ
予算をつけて、この
予算で
支給したいと思うと出されて、そして
国会におきましてそれが否決されたときには、これは国の最高
機関を拘束する何ものもあり得ないのだから、やむを得ない。しかし
国会へはやはりスム
ースに持
つて行く、そして実施すべく持
つて行
つてもらわなければならぬ。そして
国会において削除され、あるいは全面的に否決されてもやむを得ないのだというふうに私
たちは
説明を受け、また国には最高的な何か
権威がなければならぬので、
国会が当然憲法の示すところに
従つて、最高
権威としてこれを決定される分にはやむを得ない、かように考えてお
つたのでありますけれども、
政府が
国会へそういうことを出そうとせられない、こういう点につきまして非常に不満を持ちまして、まず
政府に対しましてわれわれの考えていることを聞いてもらい、われわれの主張を聞いてもら
つて、そしてわれわれの主張
通りにや
つてもらうように、連日首相官邸へ参りまして、増田官房長官にもお目にかかりまして、われわれの考えはこうである。今までそういうふうに労働省からも
説明を受けて来た。あなたも労働大臣としてあの
法律が立法されている当時には携わ
つておられたのである。そのときにはそういう
説明をされておきながら、今にな
つて官房長官にな
つたからとい
つて、ころつとかわ
つてしま
つて、これは
承認不
承認を求めるのだ。
承認を求めなければならないと文章にあるけれども、英語では
承認か不
承認かきめてもらうことにな
つてお
つたのだが、
日本語に訳すときにこうな
つてしま
つたのだという放言をされておりますが、これを
法律として
国会へ出すときには、そういうことを言
つている。十六條の二項におきましても
承認を求めなければならないというふうにな
つているにかかわらず、増田さんがそういうふうな
解釈をと
つておられて、
政府の
考え方でどう出してもいいのだ。こういう
政府側の動きについては、
組合員一同非常に不満を持
つているということだけを、特にお含み願いたいと思います。そこで増田さんでは話がわからない。やはり総理大臣の吉田さんにぜひ一ぺん聞いてもらおうというので、
組合側は大磯の私邸へも、あるいは外相官邸へも押しかけたことも事実でありますが、決して脅追したとか、そういう意味でなしに、門前へ行
つてお願したのであります。辞を低くして――決して一国の総理大臣、七十二歳になる高齢者をつかまえて、失礼なことを申し上げるわけでも何でもないが、ぜひとも一ぺん会
つて聞いていただきたい。巷間よく行われまするつるし上げ等のごときことは絶対しないから、ぜひともお聞き願いたいということを辞を低くして申し出たにかかわりませず、今日まで会
つていただけない。従いましてこれは
政府では問題は解決できないだろうというので、やむを得ず
国会へ
組合員がそれぞれ訪れて面会室に郷土出身の議員諸公をお呼び出しして訴えたから、一回ぐらいは
国鉄労働者の声を、皆様方お聞きくださ
つたことと思うのであります。そういうふうな
状態であるということを、特にお考え願いたいと思うのであります。
次に可分、不可分というようなことをよく諭せられておるのでございます。今回の
仲裁委の
裁定はなるほど
国有鉄道側が債務を負うような事項が多いのでありますが、将来におきまして必ずや
国有鉄道はこうこうすべし、
国鉄労働組合はこういうことをしなさい。こういうふうな二つの双務的なものが出される時代が来るだろうと思う。そうい
つた場合に、これが二つとも実行されてこそ、初めて成立つのです。そのうちの一
部分を実行したのでは、この
裁定を実施したとは言えない。これはすべてが関連を持
つて実施されるので、私らはあくまでも不可分である、切り離して考えることはできないのであ
つて、関連を持
つてこそ、初めて成立つのではないか。将来におきまして
国有鉄道はこうせい、
国鉄労働組合はこうしなさいということがあ
つて。
国有鉄道がしなさいということは
予算上、
資金上の
都合が悪いからできないが、
国鉄労働組合がしなさいということは、いつでもやらなければならぬという議論が成立つかということにつきましては、私は疑問がある。そういう点も、
組合側としても、もしそう出されたときにどうなるか。今回の例は第一回のことでもございますし、重大なる将来の慣行ともなると思いますので、この点につきましても十分御
審議を煩わしたいと思う次第でございます。
次に、これは
国会議員の院内の発言に対して、とやかく言うという意味ではないのでありますから、その点をお断りいたしまして、ちよつと申し上げたいのでございますが、昨日吉武惠市議員が衆議院の本
会議におきまして
決議案の御
説明の際に、
国鉄の
労働組合が幹部と会
つているけれども、全部もらわなくてもいい。そんなことを思
つている者はないんだというような発言をされたということを、傍聽していました
組合員が聞いて帰りまして、昨日
組合本部でいろいろ問題にな
つて、お前そういうことを言
つたのかということを言われたのでありますが、私も吉武さんには一度、ほかの民自党の
給與対策委員の方々とともに御面会いたしまして、これは一文切れても尊重にならぬ。ぜひとも今回は第一回のことであるから、ひとつ全額
支給していただくようにお願いしますという懇請には参りましたが、決して半分でもよろし、い、値切られてもいいというようなことを申し上げたのではないのであります。お立会いくださいました民自党の
給與対策委員の方も今日おいでのはずですから、十分この点につきましては、
組合側としてそういう
考え方を持
つているのではないということだけは――皆さんも同じだろうと思いますが、議員諸公の院内における発言について、われわれは院外からとやかく言うのではないという点だけをおくみとりの上、お考え願いたいと思います。私も
加藤君がおらぬために、
組合の最高の責任者として、決してそういう考えは毛頭持
つておらないのでございますから、ぜひともこの点だけ誤解のないようにつけ加えて申し上げておきます。そしてもし、ありましたといたしましても、私の決して関知しないことでありますし、執行
委員会としても関知しない問題であるということだけを、特にうけ加えさしていただきたいと思います。
それから
裁定が今後の
日本の
労働運動に及ぼす意義についても、特に私
たちはお考え願いたいと思うのであります。これは
先ほどもくどくど申し上げたようでありまするが、
公共企業体が実施されて初めての仕事であると同時に、
日本の
労働運動の歴史をひもときましても、こうした法的な
機関におきまして、
仲裁の
裁定がなされたのは初めてなのであります。アメリカやイギリス等にはあるといたしましても、
日本では初めての仕事だ。その初めての仕事が、あるいは政治的な意図によ
つて、政治的な
関係によ
つて左右せられる。すなわち
法律を政治が左右する、時の権力によ
つて法律が左右されるというような印象を残し、悪例を残したならば、将来私は重大なる問題を残すのではないかと思う。こういう点からも、今回の
裁定の御
審議にあたりましては、十分愼重な態度をお願いしたい、かように考える次第でございます。
それから次に、すでに御
承知の
通り、
仲裁委員の選考は内閣総理大臣によ
つて任命されたのでありますが、その選考にあたりましても、
仲裁委員の名簿を
組合側にも提示されまして、その当時に末弘巖太郎氏以下十二名の委員を
組合側に提示されまして、このうちからひとつ
組合が選んだらどうかということを、われわれに示されたのであります。これは本日見えております賀来労政局長もよく知
つておるはずであります。これを示されたが、その際に
組合側は、この方々ではどうにか賛成できる、やむを得ず賛成できるのは末弘巖太郎先生一人だ、あとの方は遺憾ながら御賛成できかねる、もう一ぺん名簿を出して来てくれということを言
つて、末弘さんから失礼なことを言うなと言われた。私は断
つた。それがこれで行くんだというので、内閣総理大臣が
組合の意向を無視されまして任命されたのが、現在の
仲裁委員なのであります。しかもその
仲裁委員が出した
裁定を、任命された
政府が、こんなばかなものは聞けるかと言
つておられる。こういうことが一体あり得ることでございましようか。この点をひとつ
国会が十分お考え願いたいと思うのであります。自分でけんかの
仲裁人を頼んでおきながらそれではいやだと言
つたような、
政府が頼んでおきながら、
政府がそれはできない。こういうばかなことは、りくつから考えてもあり得ないと思う。社会道義上、成立つかどうかということについても、十分
国会において御考慮願いたい。
組合員がそういうように考えております。
法律的根拠よりも、
一般労働者はきわめて單純に考えておりますので、そういうことが一体許されるか、これが民主主義であろうか、現在の
政府側のお考えにな
つていること、それから
国会に上程された方法等につきましては、きわめて不満を持
つているということだけを、十分お考え願いたいと思います。
次にこの不満をどうして爆発させるか、
先ほども申し上げましたように、増田ざんにお願いしても、まるつきり反対な
考え方であ
つて、いくら言
つても聞いてくれぬ。労働大臣当時におつしや
つたことと、現在官房長官になられておつしや
つたこととは、著しく食い違いがあるように考えます。しかしいくらお願いに参りましても、一向お聞入れにならない。それではということで、総理大臣にぜひともお願いしようというので上
つたのでありますが、これも会
つていただけませんでした。やむを得ず、それでは
代表をも
つてそうした平和的に行うお願いを――歎願と言いますか、
組合員の中には直訴状だとい
つてこしらえて、これを吉田さんにぜひ渡してもらいたいと言
つて、持
つてお
つた者がございましたが、しかしそれもできないで、やむを得ずこういうことにしてしま
つて、
先ほど申し上げましたように、われわれの
考え方からいたせば、
法律が守られないという結果に対する不満が爆発いたしまして、今回みなや
つておるハンガー・
ストライキにな
つてしま
つたのであります。九日から入りましたのでありますけれども、しかし私は中央の最高責任者といたしまして、少くとも
政府の手を離れて、一旦
国会に問題が移
つてしま
つたのだ、それだから今後の
国会の動きを見るまで、一応
国会にそういう圧力を加えるということは、国の最高
機関に対しまして、生命の危險を冒して圧力を加えるということについては、一応考えなければいかぬだろう。しかしいつまでも黙
つておるわけにはいかぬと思
つておる。一応は考えることにしようというので、十三日に打切り指令を出したのであります。そうしてしばらく
国会並びに
政府側の動きを見て参
つたのでありますが、依然として
政府方面の案は、半分にも満たないような案を
国会に提出されようとしておる。それでさえもいまだに提出されない。その不満をどうしてやるか。まずやるには私
たちの禁ぜられておる十七條を踏みにじる。
政府も
法律を踏みにじ
つておるんだから、おれ
たちの方も踏みにじ
つてもよかろうというので、十七條を踏みにじ
つてストライキをやるということも考えられます。しかしながらこれは
先ほども申し上げましたように、今、年末を控えてそういう
行為に出ることは、
国民を敵にまわすことにな
つて、
国民に対して申訳ないわれわれは決して
政府に対して申訳ないと思いませんけれども、
国民に対して申訳ない、こういう考えを持
つております。
公共企業体労働関係法は皆さん御
承知の
通り、これにそむいても罰せられるという罰則
規定はないのであります。ただ私が首を覚悟さえすれば、
ストライキの指令は出すことができるわけであります。たとえばちよつとした軽犯罪でも科料何円、何千円というようなことで、道ばたで小便をしても罰金を科せられることにな
つておりますが、この
公共企業体労働関係法に違反をしても、どこにも罰金をとられるという
規定はない。ただ首を切られることさえ覚悟すれば、やればできぬことはないのであります。しかしこれは
国民に対して申訳ない、こういう
考え方に立
つてわれわれはあくまでも主張しておる。われわれの不満だれかに聞いてもらわなければならぬ、それには黙
つてお
つてもいけないというので、
組合員の不満が爆発して、ハンストが各地において行われました。これは決して
国会に圧力をかけるというのでなしに、
国会でこの不満を十分お考え願
つて、そうして愼重な御
審議を願いたい、こういう意味であることをひとつ十分おくみとり願いたいと思います。本日各方面から情報が入りまして、二百名ばかりもうすでにハンストをや
つておる。そうしてこれがだんだん蔓延する傾向にあるということで、憂慮しておるのであります。特に
国会の御
議決によ
つて政府を鞭撻せられまして、この
裁定が完全に実施せられ、そうしてこの問題が一日も早く円満に解決するように、御盡力願いたいと思うものであります。
次に
国鉄の
経営につきまして、若干申し上げたいと思うのであります。十六條の第一項によりますると、
予算上、
資金上、不可能というように
国鉄では申されておりますけれども、大体
国鉄から第二次
補正予算として提出されましたところを見ますと、十八億くらいはやりくりによ
つて何とかできるというふうな案が提出された模様でありますが、私
たちの考えますところによりますと、運輸
收入のうち、旅客
收入六百九十三億、貨物
收入三百九十三億、このうちには今後出荷融資あるいは旅客への宣伝――
汽車に乗
つたらどうも込むということがあまりにも行きわたり過ぎてお
つて、そうしてかえ
つてお客さんが
汽車に乗りたくても、まあ込むからというので躊躇しておられるという面も相当あるのではないか。だから今後サービスの改善、事故の防止等に
努力する限りにおきましては、この旅客収入と貨物
收入は
双方で約十億ずつくらいは、ただちに今年内には黒字になる見込みがある。この計数についてはあとで御質問がありましたら、資料も提出してよろしゆうございますが、
労働組合としては資料をつくりまして、二十億くらいは大体ここから出て来る。そうするとあとの十八億とを加えましたならば、ごくわずかの金でこれが完全に実施されるのではないか。そうして
收入がふえることによ
つて支出がふえるということは、健全
財政、均衡
予算ということを決して阻害するものではなく、
法律に反するものでもなく、またドツジ・ラインにも反するものではない。こういう
考え方から私
たちは
予算の組みかえをお考え願いたい、かように考えるものであります。
なお
石炭の節約についても、首切るために三十億も去年において節約できたのでありますから、カロリーも大分よくな
つて参りましたので、もう少し節約もできるのではないか。かような点を考え合すならば、決して三十億の年内
支給は、
予算の組み方いかんによ
つては、私はドツジ・ラインにも反せず、あるいは健全
財政を保持しつつ
支給できるのではないか、かように考えるものであります。次にそれさえもやれない――われわれはハンストをやり、あるいはきわめて穏健に
国会にお願いして、あるいは
政府にも交渉いたしておるにもかかわりませず、やれないとするならば――やはり
法律というものは、どうしても政治的な問題によ
つて左右されてはならない。
法律はやはり
予算に優先するのだ、国の経済には優先するのだ、いかなる事態にあ
つても
法律だけは守られるという習慣を、
国民の中に植えつけなければならぬ。こういう
考え方に立ちまして、国の司法権の発動を願
つて、われわれとしては法廷において問題を争おうじやないか。たとえば
仲裁委員長の末弘さんも言
つておられるのですが、
予算上または
資金上云々のこの
解釈は非常に微妙な問題だ、
国鉄側
はこれは不可能だと言
つてしま
つても、常識的に見て可能であるということも成立つのであ
つて、将来におきましても、
国鉄総裁がこれは不可能でございますと言
つてしまえば、何事も不可能で、一文も出さぬと思えば、出さなくても済むような問題であるが、それがそのまま見過されていいかどうかということも重大な問題になるのでありまして、これは
先ほど私が申し上げましたように、年内三十億
支給は決して不可能ではない。かように考えますので、もしこれが蹂躪されるようであ
つたならば、訴訟を起してでもやる、決して自分
たちの金を欲張
つてとるために訴訟するというのではなく、
法律は正しく守らるべきであるという
考え方から、訴訟の問題にまで持ち出したい、かように考えまして、今
組合といたしましては顧問弁護士を委嘱いたしまして、着々準備しておるということもお考え願いたいと思うのであります。
次に
国鉄の
裁定が
日本の国内においていかになされるかということは、これは單に国内の問題ばかりでなく、すでにアメリカの問題にな
つておるそうであります。アメリカ本国におきましても、特にAFL、CIOのような大きい
組合においては、重大なる関心を持
つてながめておるということであります。それは
先ほども申し上げましたように、私どもの
加藤が今アメリカに寄
つておるのでありますが、特にこの問題の
説明のために、ひつぱりだこにな
つておる、そうして国務省の方にも行
つて一々
説明しておるそうでありますが、
日本がやがて民主化される、講和
会議も間近にあるというときに、
法律が踏みにじられて、そうして
労働運動の常識的な問題さえも実施されないという印象を、もしかりに與えたとしたならば、
日本は民主化してない、
労働組合のこれだけ穏健、しかも民主的にや
つておる運動さえも、踏みにじ
つておるような
日本の
状態であるとすれば、再び
日本にフアシヨが芽ばえておるという悪い印象や與える。決してそうではなくても、そうなるのではないか。今アメリカの大きな問題にな
つておると、私のところの
加藤からたよりをよこしたということを御報告申し上げます。そうした国際問題にまで発展しておるということをお考え願いまして、愼重なる御
審議を賜わりましてわれわれの意のあるところを十分御参酌くだされ、いい結論を出されんことを特に期待いたしまして、私の発言を終らしていただきます。御清聽ありがとうございました。(拍手)