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石崎参考人 私は
澁谷公共職業安定所で
日雇い労働者をや
つております
石崎であります。今の私
たち失業者、
日雇い労働者の苦しい立場というものは
東京土建の
委員長を初め二、三の
参考人によ
つて大体の概要は申し述べられております。私の所属しております
澁谷におきましても、やはり同じような
状態であります。特に
澁谷職安は、全都的に見ましても、非常に
婦人の
労働者が多いということが、特殊的な
状態にな
つていると思います。この
婦人の問題が、いろいろな点から非常に大きな問題を投げかけております。最近の一例を申しますならば、どんどん
婦人の
登録者がふえて行く一方である。特に最近は二十代の若い
婦人の
登録労働者がふえて来たが、少くとも年の若いこれらの婦
人たちは、緊急
失業対策事業というような、社会の一般的な通念から考えれば、どぶさらいをや
つたりもつこをかつぎをや
つたり、そういうことをやりえいという希望を持
つて入
つて来ている者は、一人もないと思います。今まで、それぞれの前職があるか、あるいは
商店の者ならば目分の店で働いているとか、いろいろな境遇にあ
つた人たちが、やむにやまれず入
つて来ているような
状態であります。と同時に、この
人たちはほとんどが世帶持ちである、あるいは未亡人である。そういうような関係上、その日の食にも困るような人でありますから、当然
子供さんをどこかに預けて
仕事に来るということも、事実上不可能であります。また金を出して託兒所なんかに委託するということも、不可能であります。また近所の人というようなところに預けて参りましても、実際に牛乳を買
つてやるとか、ミルクを預けてやるとか、そういうようなことも不可能な
人たちであります。必然的にこの
人たちは、
子供を負ぶ
つて職場に出て来ます。それで
子供を負ぶいながら、もつこかつぎをや
つたり、あるいはスコツプでどろをさら
つたり、こういうようなことをや
つているのが
現状であります。それについて当局側は、つまり職安なりあるいは
事業所なりが、
婦人の
労働者、特にそういうような
子供づれの
人たちに対して、どういうような態度をと
つているかということを具体的、な例として申しますならば、四、五日前から
澁谷の職安では輪番制というものを実施しております。番号によ
つて寄せ場の中に呼び入れる、そうして配置票を渡す。こういうふうなことにな
つておりますが、この番号を呼び入れるのをスピーカーでや
つております。このスピーカーで番号を呼び入れるその合間々々に、
事業所からの要請があるから、あるいは作業の能率が落ちるから、
子供を負ぶ
つて来た人には配置をしない。
登録を拒否することがあるかもしれないというようなことを、盛にスピーカーんでがんがん放送する。それで先日、どこかの職安の所長が、
日雇い労働者につるし上げられ、生命の危險を感ずるというようなことを申されましたが、現実に生命の危險を感じながら働いているのは
日雇い労働者であり、
失業者であると、私
たちは断ぜざるを得ないのであります。毎日このようにして、お前は
就労させないぞ
子供をつれて来たら
就労させないぞ、あるいはげたばきで来たら、お前は職場へ
行つても使わぬぞ。あるいは一軒の家から二人以上働いている豊は
登録を取消す。実質的に
失業者でありながら、その
失業者の中から、また首を切ろうとしている。この意図がはつきりこういうような形で、公然化されている。実際に生命の危險を感じ、脅迫されながら働いているのは、私
たち労働者なんであります。
日雇い労働者といえども、
子供を負ぶ
つて仕事をしたいと思
つている者は、だれ一人いないわけであります。また作業の能率に影響することも事実であります。しかもそれをやらなければならない原因がどこにあるかと申しますならば、このような
生活困窮者のたよるべき適当な託兒所というものも、ほとんど皆無に近い
状態であります。このようなことが一番原因をしているのでありまして、
安定所なり、
事業所なり、あるいはもつと大きく
国家としては、こういうような
人たちのためにも、至急に託兒所をつく
つて、この
人たちが
ほんとうに愉快な気持で、
事業休にも、あるいは仲間同士にも、気がねのないようにして愉快に働けるというような
状態を一日も早くつくることが、問題の一番の解決の早道でありまして、單に職安のスピーカーでも
つて、
子供をつれて来たら
登録を取消すぞとか、あるいは
就労を拒否するぞとかというようなおどかし文句を
言つていたのでは、この問題の解決には何らならないと私
たちは考えている次第であります。また三月五日ごろ、
予算がまだ各職安に具体的に幾らというやつが来ていない、そういう関係上、四月に入
つてからは、三月中に来たもの、二月中に来たものは四月にな
つて新
予算を組んだら、あんた
たちを
登録してやると
言つていたにもかかわらず、四月にな
つても依然として
登録させてもらえる人がほんの一部、あるいは四月の六日、七日ごろまでは、皆無の
状態であ
つたのであります。
澁谷でも大体一日
平均百
名前後の人が
求職に来て、
日雇い労働者にしてくれと
言つている
状態であります。この
人たちがこのようにして一月、二月長いのは、私はもうか去年ら
登録をとりに来ているのだというような人もあります。こういうような人がたまりたまると、非常に大きな数になるわけであります。四月の五日でしたか六日でしたか、日にちは忘れましたが、このときもやはり六、七十名の、ほとんど
婦人、特に未亡人が大部分でありましたが、この
人たちがやはり
登録をとりに
安定所に参
つております。このときに所長に、何とか
登録をさしてもらいたいというような申入れをしておりましたが、依然としてらちが明かないわけであります。夕方にな
つて一
婦人が—この人は世田谷区下北沢の人でありまして、四十六才の女の方です。この人は三日くらい食わなか
つたという困
つた人です。その人がとうとう栄養失調、過労のためにその
安定所の配置を受けるところの窓口で、倒れてしま
つたのであります。こういうような悲惨な
状態まで現実に出ております。しかもこの倒れたのをそのままにしておけば、死ぬのだということがはつきりわか
つていながら、
安定所は依然としてこの人に
登録を出そうとしない。なぜ出さないかという理由を聞きますと、この人は
生活保護法を受けているから、いくら、三日食わなかろうが、四日食わなかろうが、
登録は出せないというのが、
安定所側の回答であります。このときも職安として、これは小さい法律論にこだわらず、人道的な立場からも、何とかするのがあたりまえではないかということを強硬に申し入れましたが、依然として取合わない。それでその倒れた人に対して、適当な医療の応急的な処置をと
つてもらいたいということを職安側に申し入れましたが、そいつもやらない。やむなく労働
組合側において医者を呼んで来て、適当な手当をした。こういうような事実もあるのであります。また今までいろいろ
澁谷においては、いわゆる職よこせ
鬪争なるものがやられて来ました。しかしこの原因というものは、今まで二、三の
参考人の方が述べました
通り、原因はそのような個々の事態にあるのではなくして、根本的な問題がもつとあるのであります。こういう点が解決されない限り、
澁谷においても依然としてこのような問題は小さくなるのではなくして、ますます大きくなるのではないかと私
たちは考えている次第であります。
それから先日、
労働局長初め各
安定所の所長並びに
職員組合の幹部諸君が非常に労働
組合、特に
東京土建あるいは共産党や地区
委員会、地区細胞、こういうものが宣伝をして、眠れる子をゆり動かして、つまり
失業者でない者まで、あるいは
生活に因らない者まで狩り出して、職安に圧力をかけているというようなことを申されました。このようなことがはたして事実であるかどうかということは、われわれとしてはまじめに取上げて、あれするだけの勇気は、もうここまで来るとないのであります。これは労働省から昨年出されておる内外労働シリーズでありますが、ここにもはつきり出ておる
通り、適職が見当るまでは公共
事業で、つまり公共
事業、その中でも一番緊急に救済しなければならないものが緊急
失業対策事業、現在私
たちが従事しているこの緊急
失業対策事業というものに従事することにな
つておるのでありまして、適職のある人とか、あるいは
生活に困らない人は、それぞれみんな
自分の持場、職場で働いておるのであ
つて日雇い労働者にな
つて、ひとつ楽をして金をもうけようなんていう気持の者は、一人もないと思います。それでビラの件でありますが、
労働者自体がこういうように宣伝もし、あるいは放送機関、ラジオなんかも通じて、職のない人は
安定所にこういうのがあるということを今まで盛んにや
つて来ております。しかしこれがまだ徹底されていないので、一般の人は
ほんとうに困るときはどうしたらいいのか、路頭に迷うような人が非常に多いわけであります。われわれとして現在早急にもうきよう食う米がなく
なつた、何とかしてもらいたいということならば、この緊急
失業対策事業で働くか、あるいは
生活保護法を受けるか、この二しかないと私
たちは今まで通念上考えて來たのであります。ところが職安に行きましても、あんたは
生活保護法を受けなさいということを言われる人が非常に多いのであります。民生委員のところに参りますと、あなたは働けるからだを持
つているんだから
安定所に行きなさい、日曜い
労働者の
仕事があるはずだ。こういうふうなことになるのであります。そこで
安定所と民生委員の間を盛んに引きまわされて、あげくのはてがやはり何にもとれなか
つた。そうしてだんだん非合法的な、男の若い気の強い者ならば、よた者になるとか、あるいはどろぼうでもやるとか、あるいは若い
婦人ならば、賣春行為をやるとかいうような非合法な
生活に落ちて行きます。それが
実情であります。それで
政府といたしまして、この私
たちの窮状に対して、
生活保護法もかけられない、あるいは緊急
失業対策事業でも、
予算の関係上使えないということになれば、それ以外の方法で合法的に
労働者が生きて行ける方法があるならば、それをはつきりと早急に
国家の責任において明示すべきだと私は考えております。