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1950-02-18 第7回国会 衆議院 労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十八日(土曜日)     午後一時三十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 篠田 弘作君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君    理事 春日 正一君 理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    天野 公義君       小淵 光平君    金原 舜二君       佐藤 親弘君    塚原 俊郎君       松野 頼三君    赤松  勇君       前田 種男君    柄澤登志子君       石田 一松君  出席国務大臣         労 働 大 臣 鈴木 正文君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         大蔵政務次官  水田三喜男君         大蔵事務官         (主計局次長) 東条 猛猪君         大蔵事務官         (日本専売公社         監督官)    冠木 四郎君  委員外出席者         労働事務官   松崎  芳君         日本専売公社総         裁       秋山孝之輔君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 堀木 鎌三君         専  門  員 浜口金一郎君         専  門  員 横大路俊一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第二号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、議決第二号を議題といたします。前会に引続き質疑を許します。春日正一君。
  3. 春日正一

    春日委員 労働大臣にこの間の続きでお聞きします。     〔委員長退席吉武委員長代理着席〕  専売については、今度公労法で一億二千万円出せないということになつている。この間の大臣答弁の中で、国鉄のときにはここで審議中折衝ができて、十五億何がし出るようになつたという話であつたのですけれども、今度の専売のこの一億二千万円について、政府はやはりそういう折衝をやつておるかどうか。この点をお聞きしたいと思います。
  4. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 国会に不可能として提案する以前におきましては、これはもちろん法の建前から申しまして、政府独自の立場予算を検討して、不可能という確定を出したのであります。しかしそういうような重大なことでありますから、当時一応の折衝はあつたものと思つております。それ以後引続きどうこうという問題は、これはもう言うまでもなく、全体のドツジ・ラインの意向はわかつておりまするし、また専売にしろ、国鉄にしろ、裁定の可能、不可能を決定するのには、その公共企業体予算自身について計数的に決定すべきであつて、そのほかの事象を取入れるべきではないというのが、根本的の建前でありまするから、その一線でもつて進んでおるわけであります。なお、どことどういうふうな折衝をしたかというふうなことは、一々それを御報告するに当らないと存じます。
  5. 春日正一

    春日委員 そうすると、折衝はおやりになつた、大体向うで出していいというのを政府で出さぬというのですか。それとも大体両方意見が一致したということになつているのですか。
  6. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 繰返して申しますが、政府自体見解でもつて政府自体予算を吟味して、不可能と考えたのでありまして、別にそれ以上に、今御質問にありましたような要素を取入れなければならない必要はむろんないのであります。
  7. 春日正一

    春日委員 それでは進めてお聞きしますが、公共企業体労働関係法に、専売諸君やその他国鉄諸君なんかでも、非常に期待を持つてつた。これがこの前の国鉄のときにも、ああいう形でつぶされてしまつた。今度の専売のときにも、つぶされてしまうというようなことで、非常に労働者諸君は、この法でもたよつて行けぬというような気持を強くしておる。だからこの前の国鉄のときは、あなたも常におほめになつた民同諸君を、ゼネスト宣言を出す立場にまで追い込んでしまつた、というふうに考えられる。ところでこのゼネスト宣言について、きのうの朝日新聞によりますと、エーミス氏が、官公庁の労働者によるいかなるスト行為法律違反である。二つ以上の主要労組の協調による行動は、いかなるものといえどもこれをゼネストとみなす。日本の現在の経済情勢並びに日本が今まだ米国から大規模経済援助を受けている点から見て、大規模ストはいかなるものも望ましくない。こういう見解を発表されておりますけれども日本政府としてこの国会共闘の動き、これに対してどういう見解を持つておいでになるか。
  8. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 直接裁定問題には触れておらないように思いますが、国会共闘というものが、私ども国会の中にある一つの連絡機関として動いておるということは知つておりますけれども単位組合の代表というものとは、相当性格も違つておるように見えまするし、いずれにせよ、正式なる機関として、政府がそれらの声明その他に対して、応答する必要はないのではないかという考え方で臨んで来ました。その根底をなす労働運動全体の情勢につきましては、深い注意を払つておりますけれども国会共闘に対しましては、今日までそういう考え方でありました。
  9. 春日正一

    春日委員 専売関係ないというふうにお考えですけれども、それは政府の非常な認識不足で、やはり国会共闘に集まつている諸君が、この前の国鉄のときにハンストをやつて合法闘争の限界に来たということを言つてつたという事実から見て、やはりこの専売裁定というものも、あの線の中の大きな要素になつている。だから、これに対する政府出方いかんは、非常にやはり関係がある。そういう意味で、あの共闘に対しては重く考えていないというお話ですが、新聞なんかで見ると、政府としては、二つ以上の労働組合ストライキも、ゼネストとみなすという見解をとるというふうな報道があるのですけれども、これについてはたして事案かどうか、これをお聞きしたい。
  10. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 エーミス労働課長の発言については、おのずから別個の問題であります。しかし根本において労働問題に対する政府考え方と、司令部考え方とが違うということはないわけであります。御質問点等につきましては、現段階に即して政府エーミス課長意向をも聞いてはおりますが、最後的には、そのときの段階情勢等によりましても判断をしなければいかない場合もあると思いますので、具体的な決定につきましては、必要な際不日政府考え方を発表したいと思つております。
  11. 春日正一

    春日委員 そうすると、大体エーミス氏の出した、特に二つ以上の組合が共同してやるものをゼネストとみなして弾圧するという意図は、今のところ政府としては持つていない、こういうふうに了解していいですか。
  12. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 エーミス氏の考え方が弾圧であるとも思つておりませんし、今のところ持つておりませんということを、お答えしておるのではありません。このことを、そのときの段階により、情勢によつてどういうふうに認めるかということは、根本方針はきまつておりましても、その段階事情等に即して考えるべき面が多々あると思いますから、今このことを言う域に至つておりません。必要なときに不日明確にその判断を発表いたします、こう申し上げておるのであります。
  13. 春日正一

    春日委員 そうすると根本方針はきまつておる。根本方針というのは大体あの声明沿つた方針というふうに了解していいですか、また別な方針があるわけですか、その点伺います。
  14. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 先ほどからも繰返して申します通り根本的な方針におきまして、司令部労働行政の局に当る者と、日本政府の局に当る者との考え方が、そんなに違つておるということはあり得ないわけであります。
  15. 春日正一

    春日委員 非常にけつこうな御証言でありまして、それでは私は次に大蔵次官にお聞きしたいのですけれども、塩の問題で、この前もちよつと質問が出まして、秋山総裁からもお答えがありましたが、大体項目的にいつて日本内地で買い上げている塩の値段数量、それから輸入して来る塩について、こつちで払う値段数量、それから国内一般食料用として専売で出している塩の大体の数量値段、それから工業用として出すものの数量値段、これをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  16. 水田三喜男

    水田政府委員 今の御質問専売公社監理官からお答えいたします。
  17. 冠木四郎

    冠木政府委員 ちよつと調べましてお答え申し上げます。
  18. 春日正一

    春日委員 それでは大体私の方で持つている材料でお聞きします。大体この間公社総裁からも塩の問題はお話があつて、大体食用百万トンというふうなことを言われ、需要全体で百五十万ないし百六十万トンというように言われております。そうすると大体大ざつぱに言つて、正確な数量でなくていいのですけれども、大体食用百万トン工業用五、六十万トンというふうに見ていいですか。
  19. 冠木四郎

    冠木政府委員 大体の数字お話のような数字でございます。
  20. 春日正一

    春日委員 輸入して来る塩の値段、これがこつちに入つて来るものは大体八千円ないし九千円で、国内で買い上げるものが九千七百四十五円、大体この数字でいいですか。
  21. 冠木四郎

    冠木政府委員 輸入塩価格でございますが、これは大体六千八百四十円になつておりまして、それに取扱費の四百十九円を加えまして、約七千二百六十円ほどになつております。それから国内塩の買入れ価格はただいまお話通りでございます。
  22. 春日正一

    春日委員 塩の払下げの方ですけれども、民間の食用塩最終消費者価格は、約二万円弱というふうに私どもの方では聞いておる。ソーダ用の塩の価格は三千円、このためこの年度で二十七億円を補給金として一般会計から繰入れておるというふうに聞いておりますが、その点間違いないですか。
  23. 冠木四郎

    冠木政府委員 塩の売渡し価格につきましては、種類別にわかれておりまして、一番高い白塩におきましては、一万七千百五十七円ということになつております。それから輸入したままの原塩であれば、一万二千円ということになつております。それからソーダ用お話通り三千円になつております。
  24. 春日正一

    春日委員 ここで非常に大事な問題が出て来るのです。国民全体が使う食用の塩、これは買つて来た七千二百六十円、国内のものでも九千七百四十五円というものを、一万七千百五十円なり、一万二千円で売つて、非常に利益をあげておられるにもかかわらず、これの約六割に相当する工業用塩に対しては、三千円で払い下げて、莫大な損害をしておる、そういうふうになつている。こういうところから見れば、この三千円という値段を百円上げれば、一億二千万円楽に出てしまう。だから財源がないと言うけれども、こういう点を考慮すれば十分出ると思うが、その点大蔵次官はどうお考えになつておるか。
  25. 冠木四郎

    冠木政府委員 ただいまお話の点の数字の問題について、ちよつと先ほど申し上げました点に補足して申し上げます。輸入塩価格につきましては、先ほど申し上げましたように、商品値としては六千八百四十円でありまして、それに輸入取扱費として四百十九円ばかり加わつております。しかしこれを国内食料用として配給する、売り払うためには、そのほか輸送費、さらに輸入いたしました原塩を再製いたしまして白塩にいたして配給し、売り払つておりますから、そういうような経費を加えますと、大体一万四千円くらいになるわけであります。それを先ほどの一万七千百五十七円で売り払つておるということになります。
  26. 春日正一

    春日委員 そうすると、結局多少数字が違つて来たけれども、やはり食料用ではもうけている、工業用ではうんと損しておるということには、かわりないと思う。こういう工場の資本家がもうけるという点だけには損をして、それで補給金まで出してやつて――二十七億ですよ。だから四万近い労働者に一億二千万円足らずくらいは、へいちやらなことである。それを出すのが適当でないと言われるけれども、こういうところから出せば、出せるはずじやないか。なぜそれを出そうとしないのか。この点政務次官からはつきりお答え願いたい。
  27. 水田三喜男

    水田政府委員 この前申し上げました通りでありまして、ソーダ工業に対して特に安くするというのは、国内産業保護という立場で、今の程度にしても、まだなかなかやつて行けないという問題があつて、その点われわれ非常に慎重に考えております。しかしソーダへの補給金も大体九月までくらいであと打切るというような予定を立てておりますし、さらに遠洋漁業捕鯨事業なんかに対しましては、やはり捕鯨者の使う塩は昔から安くしておつたのですが、それを今度安くしないことになつたために、事実上業者が今の塩の値段ではやつて行けないので、遠洋漁業保護のために、塩の特別な値段をこしらえてくれという陳情が参つておるのですけれども、いろいろな経理事情その他から、まだ政府でこれは実行できないというくらいでありまして、工業及びそういう遠洋漁業保護するためには、これを値上げすることか現在では適当でないという事情からこの点の経理の操作というものもわれわれはまだ考えておりません。
  28. 春日正一

    春日委員 ただいまの御答弁で、ソーダ工業保護する必要がある。こういうふうにおつしやつた。それで補給金も出し、値段も損するような安い値段で出して、これを国民の負担にしておる。ところがソーダ工業については、戦争前の状態では、大体アンモニア法三について、電解法一くらいの割合であつた。ところが最近では、アンモニア法の方はどんどんつぶされ、電解の方はずつと戦前の能力を保存されておる。現在では一対一くらいになつておる。しかもこの電解法ソーダの使い道といえば、塩化ヴイニールとか何とかいう方面である。もちろんいろいろな面に使われるから、どうにも言えるけれども、結局潜在的な軍需工業である。そういうものだけ大きくして、そのために三千円という値段で払い下げ、二十七億という金をつぎ込んでおる。アンモニア法の場合でも、つくつたガラス沖繩その他に安く輸出されておる。そのために専売経費が苦しくなる。先日来私聞いておりますと、労働者があれだけ基準法違反や、からだをすり減らし、命を削つてかせいでおるのに、一億二千万円が出せない政府がそういう方針であるから出せぬのだと、私たち考えざるを得ないけれども、そう考えてよろしいかどうか。
  29. 水田三喜男

    水田政府委員 ソーダ工業軍需工業であるかどうかわかりませんが、現在日本物価は、御承知のように公定のあるものは、全部これは物価庁が管理しておりまして、物価庁がこの値段をきめる以上は――特に安くつくつた値段生産費をきめているという現状におきましては、厚価計算の上から見て、ソーダ工業の原料を、このくらいの値段にきめなければやつて行けないという計算の上からも、値上げの余地は現在のところはない、こういうわけであります。
  30. 春日正一

    春日委員 私の質問にはお答えになつておらないようですけれども、私は大蔵省予算面だけでなくて、政府の政策だから、物価庁物価のきめ方も、労働者労働運動に対するところの態度も含めて、そういう方向だと考える、こういうふうに言つているわけです。それ以上お答えがなければ、私は大体そういうものと了解をして質問は打切ります。
  31. 前田種男

    前田(種)委員 私はきのうも質問いたしましたが、大臣が一人も見えなかつたので、きようは政府を代表して労働大臣から答弁願えますならば、幸いだと考えます。労働大臣はつきり答弁を願いたい。また必要な個所は大蔵次官、さらに仲裁委員堀木さん両方から、今まで相当質疑はとりかわされましたが、法の解釈について、両者からもう一度はつきりと再確認を願いたいと考えます。過日大蔵大臣は、十六条の解釈の中で、公共企業体予算上、予算の範囲内という意味は、流用の点でありましようとも、自分が判を押せば、国会承認なくして流用できる。大蔵大臣が拒否した面は、予算上不可能だということになるから、国会承認が必要だという解釈を、はつきりとここで答弁をしておられます。しかし、本法の成立の前後の事情、法全体の解釈から申し上げまして、三十五条には明確に「最終的決定」という文字まで使われて、労働者を押えておるのです。おそらく日本法律で「最終的決定」というような字句の使い方をしている法律は、ほかにはないと私は考えます。それほど固く押えて、そうして一方には罷業権を剥奪するかわりに、従業員の主張なり待遇改善等につきましては、公労法において確保してあげる。調停、仲裁最終決定において確保されているから、この法律従つて公労法関係労働組合運動のあり方というものを、指示していると私は考えるのであります。そういう意味から、十六条の解釈というものは、まつた予算上あるいは資金上不可能な点は、もちろん国会承認を経なくてはなりません。大蔵大臣権限において予算上可能な流用の面というものは、予算上不可能な点に入らない。これは一方的に行政官庁である大蔵大臣見解解釈によつて、十六条の解釈が一、二にされるべきことではないと私は考えるのであります。この点の法的解釈、しかも本法の第一条第二項には、もうすでに政府当事者がよく御承知のように、この問題の解決のためには、関係者最大限努力を尽さなければならぬ。国務大臣最大限努力を尽して、こうした紛争の処理のために最善を尽すということが、明記されているわけです。こういう点からにらみ合せて参りましたときの十六条の解釈というものは、私の解釈が正しいと考えるのであります。政府解釈並びに仲裁委員法的解釈を、この席上においてもう一度明確に願いたいと考えます。
  32. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 三十五条の末段において、最終的の決定であるということを一条うたつているが、但し不可能な場合においてはという書き方で、十六条にその場合をあげ、その措置が示されているものと考えますので、これは両方を併用して解決をはかつて行くべきものであると考えております。それから大蔵大臣流用移用等権限、これは財政法あるいは専売公社法、いろいろなものとの関係があるらしいのでありまして、そういつたこまかい法的な関係は、事務当局なり大蔵省の方からしていただきますが、帰するところは、法の書き方から見ても、あるいはその他の関係財政法あるいは予算、決算及び会計令等関係から行きましても、大蔵大臣専決事項である。大蔵大臣がすべての内容を吟味して、そうして承認をするか、しないかを決定する問題であつて大蔵大臣専決事項にかかつている、従つてこの場合におきましては、大蔵大臣流用承認するか、しないか。また単にしないというのみでなく、するときもあるでありましよう。その判定は資金上、予算上の関係大蔵大臣が見て、そうしてこれは認められない、あるいは認めるということを決定すべきであつて大蔵大臣専決事項としての流用の問題にかかつて来ると思います。この流用が可能かどうかということによつて予算上、資金上可能か不可能かという問題が一応決定される。しかもそれについてなお最終的には、国会でもう一度その考え方が正しいかどうかということを吟味して、承認、不承認態度決定していただく、これが法の考え方であると思つております。     〔吉武委員長代理退席委員長着席
  33. 堀木鎌三

    堀木参考人 政府解釈が、この会議に列席させていただきましてよくわかつてつたのでありますが、それにもかかわりませず、私どもは従来の考え方を少しも変更する必要を認めていないのであります。今十六条の問題についてお話になりましたのですが、この委員会で、公共企業体予算上と申しますのは、議会議決を経た予算だということを大蔵大臣みずからが認めておられます。そうすると、不可能か可能か。この予算上――議会議決を経た予算の上で可能な支出なのか、不可能な支出なのかという問題だけが残つて参ります。この点が実は政府と私どもとが違う点であります。私どもは可能か不可能かということは、議会議決を経ました予算そのものから客観的にきまるべきものである。大蔵大臣が認定いたしましたとか、あるいは公社総裁がどうだとか、どう考えるとかいうことでなしに、前の委員会においても末弘委員長から申し上げましたように、これは客観的にきまるものであつて大蔵大臣流用を許すとか、許さぬとかあるいはその金は使つていいとか、悪いとかいう問題ではないのだ、こういうふうに考えているのであります。しかも今度の専売公社の場合におきましては、増田官房長官も、その歳出予算十分経費のあることを認めているのであります。つまりこの予算上というのは、国会議決を経た歳出予算上ということは疑いないので、政府も認めておられるのですから、初めはこの点も論議いたしましたが、この点は抜きにいたしまして、すでに官房長官議会議決を経た歳出予算においては、十分余裕があつて可能な支出だと言われている。それから大蔵大臣も、流用自分承認すれば、歳出予算はあるのだ、こういうふうに言われている。そういたしますと、私どもの方から言わせれば、つまり客観的にきまるものであつて、だれがどう考えたかという問題ではない。しかも歳出予算だということは政府みずから、大蔵大臣増田官房長官も認めておられる。つまり法律の可能が、一人の認定権考え方によつて、可能になつたり、不可能になつたりするという法律は、私どもないと思うのであります。ですから、この問題については――国鉄の場合には四十五億中一部可能である、一部不可能であるということを私どもが認定いたしました。もつとも可能だという金額が十五億五百万円であるか、あるいは公社総裁が言われた十八億であるか、あるいは組合が主張した二十七億であるかという問題は、客観的にきめなければならない問題でありますが、いずれにしてもこれの可能か不可能かということは、だれがこう考えたからということで、きまるものではない。ただ大蔵大臣は、今労働大臣の言われたように、財政法上、流用移用を認める権限は持つております。これは行政権として持つておる分でありますが、その場合に一体その問題と、この十六条との競合をどうするか。こういう問題になつて参る。政府はこれについて、予算には公社総裁流用可能な分がある。また大蔵大臣承認を得て流用可能になる分がある。それから国会承認を得て流用不能になる分がある。こう三つある。これは財政法上の問題として当然三つあるのでありますが、これは公労法十六条には関係なしに、財政法上そういう問題になつて参る、こういうことである、公労法上は、あくまでも議会議決を経た上での、予算上可能な資金か、不可能な資金かということを、客観的にきめるべき問題である。そういたしますと、先ほど申し上げましたように、大蔵大臣増田官房長官も、その歳出予算のうちにはあると、こう言つておられるのでありますから、これは三十五条によつて、もう最終的決定として服従しなければならないものになつて参るのであります。すなわち裁定に服従しなければならないと申しますことは、いわゆる公社側組合側とに、債権債務関係が生じた、こういうことになつて参ります。十六条に関係なしに、つまり公社組合との間に債権債務が生じた。この債権債務は、履行期において公社総裁が支払わなくてはならない金になつて参ります。それが問題になつておる一億二千八百万円であります。この点で、どうも少し各方面に御理解が足りないのじやないかと思われておる点を申しますと、この公労法公社組合側に、労働協約ができたと同じ効力が発生したということに関して、どうも認識不足なのではなかろうか。これを忘れてしまいますと、大蔵大臣財政法上の裁量権で、いろいろとかわつて参る余地がある。つまりこれが国家と国家公務員との関係でありますと、違つた性質が出て参ります。しかし公社――今度の公労法によります公共企業体と、その従事員との間には、団体交渉権が認められておる。そうして労働協約を締結する権利を持つておるのであります。そうしますと、裁定はここにこれと同じ効力を発生するのである。こういうふうなことに相なつて参ります。過般末弘委員長が、何人も奪うべからざるものである。この権利は憲法上保障された私法上の権利であつて、何人も奪うべからざるものであるということを申しましたのは、この意味であります。その考えがないから、大蔵大臣考えによつて活殺自由になる。権利のような、権利でないような、事実何もかも大蔵大臣の自由裁量によつてできて参ります。どうにでもなるものならば、権利でも何でもないという問題になつて参るのでありますが、これは新しい法律関係ができて、いわゆるもう私法上の債権債務が生じておるのであります。そういう意味において――過般この委員会で、公社総裁は、大蔵大臣承認しないから私は払う意思がありませんと、ここで公然とお言いになりましたが、それは払わなくてはいけないのであります。あくまでも払わなくてはいけない。ただ公社総裁としては、大蔵大臣流用しませんから、事実上支払えないという問題は起つて参ると思うのであります。しかし証文に判を押して、何月何日までに幾ら払うと言つておいて、おれは払わないのだと言われるわけがない、払わなければならないのであります。ただそういう証文ができましても、一方において民間においても金ができないで、事実上支払うことがむずかしくなるということはあります。これは事実問題であつて法律問題ではありません。しかしながら私が大蔵大臣の裁量は法規裁量であるということを申したところが、どうも大蔵大臣は自由裁量だ――自分で何でもかつて判断できるように思われているのでありますが、そうは参らないのであります。ことに私法上の権利義務に関係するような場合には、行政権でもつて大蔵大臣のそう自分つて判断は許されない。これは前の憲法時代からでも、すでに行政上の自由裁量というものは、法規が命じておる制限を強化したり、あるいはその権利を行使するにあたつては、法律の線に沿うておるかどうかという考え方から、運用しなければならぬことは確かなのでありまして、この問題は私どもはいわゆる便宜裁量の問題ではなしに、法規裁量の問題である。しかしこの法規裁量だということを考えるには、すでに団体交渉によつて、権利義務が発生しておるがどうかという問題を考えなければならないと私は思います。事実今度の場合には発生しておるということが言えるのであります。従いまして私の十六条に対する考え方は、この可能だ不可能だということは、大蔵大臣だとかその他の判断によるものではない、客観的にきまつておる問題である。今度の裁定の金額は、その客観的にきまつておることでは、当然払い得るところの予算を持つておることは明らかであります。従つて十六条の問題ではなくて、ただちに三十五条の効力が発生する、そういうふうに解釈しておることを重ねて申し上げます。
  34. 前田種男

    前田(種)委員 労働大臣にお聞きします。今堀木参考人見解を申し述べられましたが、労働大臣としては堀木参考人見解に対して、いかなる見解を持つておられるか。もう一度ただしておきたいと考えます。
  35. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 あえて労働大臣でなく――労働大臣ももちろんでありますが、政府解釈、それはもう国鉄のときからしばしば申し上げて参りました。人件費等でもつて措置し得るものは、言うまでもなくただちに可能なものに入りますが、そうでない流用移用等の場合におきましては、大蔵大臣専決事項として、大蔵大臣考えによつて決定する。しかしそれは閣内においても、大蔵大臣の出す資料を十分検討して、大蔵大臣の判定をさらに判断することはもちろんでありますが、最終的にはそうである。もう一つかんじんな点は、三十五条によりすでに債権債務を生じておるという考え方、これは国鉄のときにも明確に申し上げて参りましたように、政府はそういう考え方はしておりません。十六条を読むと明確にわかりますように、国会承認があつたときに効力が生ずるのであつて、しかも明確に書いてありますように、過去にさかのぼつて効力を生ずるのであります。従つて国会承認がなかつた場合には、過去にさかのぼらないというのはもちろんのこと、効力を生ぜずじまいになりますから、債権債務を発生しない。従つて将来に残るということもない。これが最初からかわらない政府考え方であります。
  36. 前田種男

    前田(種)委員 どうも政府態度は私のみこめません。というのは、この法律を提案されて、成立に努力されたときの政府考えと、今日裁定が下つて、これを実行する具体的な問題になつて参りましたときの解釈とは、そこに非常に見解が違つて来ておる。きめられた法律をさように解釈するようなやり方は、私は許されないと考えます。しかも問題は普通の物権上の債務ではありません。いわゆる生きた労働問題を処理するという観点に立つたところの、この法の運用であると私は考えます。今労働大臣答弁の中に、国鉄裁定から終始一貫してそうした態度をとつておると言つておられますが、しからば私は労働大臣に聞きます。国鉄裁定のときには一部の十五億五百万円をのんでおりますが、今度の裁定には一銭ものんでない。今度の裁定に関しまして、一銭ものめないという理由は一体どこにあるか。国鉄の場合には十五億五百万円がのめて、今度は一億二千八百万円の中で一銭ものめないという理由は、一体どこにあるかという点を明らかにしてもらいたいと存じます。
  37. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 国鉄の場合におきましては、国会に最初提案するときにおきましては、全額が不可能という判断を下さざるを得ない形になつた。その後諸般の折衝等にもよりまして可能な部分が出て来た。それを可能な分として、国会承認を求める分から取除いたということであります。今回の場合は、可能な部分としては生れて来るものが今までもなかつた。将来のことは別といたしまして、今までそういうものは可能なものとして生れて来なかつた、というだけの事実なのでありまして、別にそのほかの理由があるわけではありません、
  38. 前田種男

    前田(種)委員 今の答弁は、労働大臣の詭弁であると私はあえて言つておきます。というのは、国鉄裁定のときには、公社に能力がないと言つております。能力がないが、予算的措置を講じて四十五億は支払うべしという裁定を下しておる。今度の専売公社裁定は、完全に公社に能力ありと裁定しております。それほど裁定の内容が明確に違つて来ておるにかかわらず、一方には一部をのめて、一方には一銭ものめないという理由が、私にはわかりません。もし裁定の内容が逆でありますならば、一応そうしたことも考えられる。しかし専売公社裁定の場合には、支払い能力ありと認定をしておるわけです。しかも専売公社総裁から大蔵大臣に出した書類の中にも、はつきりと能力ありという数字をあげて、資料を本委員会にも提出しております。この内容から推しましても、能力がないとは言えないと私は考えますので、もう一度それが流用できないという結論を、ただしておきたいと考えます。
  39. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 あえて国鉄の場合に関係をつけて、判断を下し、解決して行かなければならない関係はないのでありまして、専売専売だけの問題として予算上、資金上可能かどうかということを検討する。ほかの要素を加えて来る必要はないと思います。そうして予算上、資金上可能かどうかということにつきましては、観念的の問題でなくて、具体的な計数の問題であります。その点につきましては、大蔵省当局からすでに詳細にただされたことと思います。なお必要がありましたならば、大蔵省当局について、計数を事実についてただしていただきたいのであります。その結果、政府といたしましては、不可能であるというあの判断を下しておつたのでありまして、それに対する最終的な判断及び決定は、国会がなさるべきものであつて、要はあの場合、この場合というのでなくて、この場合計数自体について予算上、資金上はたして可能か不可能かという一点を明確にしていただくことによつて、法の精神は十分保たれることと思います。
  40. 前田種男

    前田(種)委員 しからば大蔵次官に聞きますが、秋山総裁から出されたこの数字的内容に対して、大蔵大臣流用承認しないという具体的な事情を、もう一度明確にしていただきたいと考えます。
  41. 水田三喜男

    水田政府委員 これはこの前お答えしましたが、国会承認を得た歳出予算が余つているからといつて、その流用をただちに許せるかどうかというような問題であります。国会承認を得た歳出予算であつても、そのときには葉タバコがもつと買えるというようなことで、タバコの購入費というものを非常にたくさん組んできめておつても、その後災害があつたというようなことから、葉が十分買えなかつたというので、金が残るということは、十分あり得ることでありまして、国会がたといそれを承認しておつても、そのためにどこへ出せる金が余つているんだということにはなりません。今度の場合におきましても、企業経理の上で、大体人件費の予算とか、そういう物件費の予算というものは、均衡をとつてきめて、国会承認しておるのに、そういう事情でそういう方面から金が余つたからといつて、こつちは金がたくさんあるから、幾らでも出せるんだという性質のものではないので、その辺のいろいろな検討をいたしました結果、この金は流用を許すべきでないという大蔵大臣の結論に達した、こういうことに御了承を願います。
  42. 前田種男

    前田(種)委員 どうも大蔵次官答弁を聞いておりますと、非常に苦しい答弁をしなくてはならぬという結論になると考えます。というのはもちろん、それはそうです。予算が余つてつても、それをむやみに流用することの慎まなくてはならぬということは、一般的にわかります。その反面に、費目がなくとも、他の費目から流用するということも、大蔵大臣権限においてなされることです。これは昨年の暮れの国鉄裁定の一部をのんだ財源にいたしましても、その他の各省の財源にいたしましても、既定の予算の範囲内からいろいろ節約し、捻出して、人件費として年末賞与も出ているという内容を見てもわかります。またいろいろ問題になつておりますところの、塩の購入のために流用された問題についても、私はそう多く塩を買うことを悪いとは言つていない。今日のような国際関係において、必要なときに一年分、二年分の塩を買うこともけつこうですが、ああした多額な金を出す場合には、国会承認を得てやる。これは大蔵大臣権限によつて、費目の流用に基いてやれるのだからよろしい。一方ではそうしたことを大胆にやつておきながら、一方において、こうした問題が一銭もどうにもならないという解釈をされるところに、政府解釈はむりだと私は言つておるのです。しかも先ほど申し上げましたように、この問題は将来例になります。公企法を中心にするところの、労資の関係のあり方をトする問題であります。私はそうした観点からいつて日本労働組合運動が、ほんとうに正常な発達をする正常な、いい習慣をつけて、事ごとに労資が実力をもつて相争うというようなことを避けて、平和的に問題が処理されることを念願する。ただ国鉄の場合全部のまなかつたということは、一歩譲りますれば、これは公社にそれだけの資産上の能力がなかつたから、やむを得なかつたという解釈を、善意に私は一応とつておきます。しかし、今度のような場合、公社に能力があるという裁定を下した以上は、しかもあれだけの益金をあげておるところの公社経理内容から行きまして、また昨日来総裁がたびたび言われておるように、三万八千の従業員が、ほんとうに生産増強のために努力しておるということを、総裁自身が認めております。それほど実績をあげております公社従業員に対して、あの程度の裁定がのめないという結論に達した政府見解が、私にはふに落ちないのです。一応言い訳としてそうした答弁をされることならば、それで私はいいと思いますが、これは言い訳だけでは済まないと思います。それほど重要な問題を将来に残しますから、これに対する政府見解を明らかにし、さらに政府が誤つておる見解は、将来に対して正しく直して行くという雅量を、政府は示すべきだと私は考えますので、もう一度政務次官に聞いておきたいと考えます。
  43. 水田三喜男

    水田政府委員 前にもお答えしました通り仲裁委員会の仲裁を無視するということは、将来の労働問題にとつては大きい問題でありましてこの点は十分われわれも承知しておつて、できるだけこの仲裁に沿いたいという努力をし、最善を尽して来ました。今まで私たちこの流用ができないという理由を述べて来ましたけれども、それに対して少し苦しい答弁だというようなお話でありました。若干苦しい答弁であるかもしれませんが、そういう経理上の問題からと、あわせて大臣が述べられましたように、諸般の情勢考えまして、われわれとしては、どうしても承認できない事情なつたと御了承願いたいと思います。また諸般の情勢の変化によりまして、公労法を完全に運用できるような方向には、十分われわれとして努力して、将来決してこの公労法が死んでしまうというような運営をしないで済むように、努力をしたいと思つております。
  44. 前田種男

    前田(種)委員 これは今裁判所の問題になつておりますが、裁判所の手数を煩わしまして、その結論が出てから政府考え直すというようなことをやらずに、もつと正常な見解において問題を処理されるように願つておきたいと考えます。説明書の中にあります政府答弁されました諸般の事情は私をして端的に言わしめるならば、昨年暮れの国鉄の場合に不承認態度をとつた政府は、その国鉄裁定に対する処置を見習つて、結局承認できぬ――いわゆる諸般の事情とは、国鉄のときにとつた態度を、今度変更するわけに参らぬということで、その諸般の事情のみによつて、今度は許さないという見解を私はとつておると思います。その点について私は大蔵大臣なり、大蔵次官から見解を聞いておきたいと考えます。  さらに公労法の第一条二項にありますこの法律できめる手続に関与する関係者には、いわゆる政府も含まつておると思います。最大限努力を尽さなくてはならぬということが、はつきりと公労法第一条に明記してありますが、一体今度の裁定にあたりまして、政府最大限努力をどういうふうに尽したかということを、労働大臣にお尋ねしておきたいと考えます。
  45. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 閣内におきましては、法の精神にかんがみて、専売公社自体の問題として厳正に可能か不可能かを決定すればいいのでありまして、その点について大蔵大臣流用権云々と言う前に、政府としてはでき得る限りこれを可能ならしめるような方法が、この予算の中にないのかという問題を、検討したつもりであります。まだ関係方面との折衝につきましては、申し上げることができないのであります。
  46. 前田種男

    前田(種)委員 私は、閣内において労働大臣だけが、この第一条に拘束されるものでなくして、総理大臣以下全大臣が、この第一条第二項に拘束されて、最大限努力を尽さなくてはならぬと解釈いたしております。しかし長い間審議をして参りましたこの過程において、政府当事者がとつたところの処置は、第一条第二項に該当する努力をしたとは認められないのです。もちろんこれは見解の相違でありますから、答弁の限りではないでありましようが、私ははつきりとそう申し上げても過言でないと考えます。そこに結局公労法を、政府みずから無視しておるということになるのであります。私はこれ以上は意見になりますから、申し上げることをやめます。  労働大臣に次にお聞きしたいことは、昨日も公社総裁組合委員長に聞いたのでございますが、労働大臣はこの裁定が不承認なつた場合に、三万八千の従業員に及ぼすところの影響、今後の勤務状態、あるいは今後の従業員の生産に対する協力態勢、そうした面等から来るいろいろな問題が予測できます。そうした問題等に対して、どういう配慮、あるいはどういう指導を今後やつて行こうと労働大臣はお考えになつておられるか、その点だけお聞きしておきたいと考えます。
  47. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 不承認になるかどうかということにつきましては、国会の今後の推移によるのでありますから、従つてこれは総理大臣の口まねのようになりまして、仮定に対するお答えのようになりますが、しかし私自身としては、不可能であるという政府見解は、国務大臣の一人として、もちろん私も同じ見解をとつておることは事実でありますけれども、一方において専売公社の人たちの労に報いることは、可能な限り考うべきであると考えますし、同時に裁定の中には、将来にわたつて妥当な報奨制度だつたか、そういうことが書いてあります。その部面は、少くとも昨日も申しました通り、明らかに今日では不可能な部分としては取扱つておらないのであります。従つてこれは拘束力を持つておるわけであります。私は将来にわたつて、これをどういうふうにやるという、こまかいことを十分申し上げるだけの段階に達しておりませんけれども、そういう場合には、この報奨制度は特に考え方根本といたしまして――公共企業体は公務員とは違うものであるという考え方が、私の考え方であります。しかも同じ公共企業の中でも、国鉄もあり専売公社もある。必ずしもこれは鼻づらをそろえて考えなくてもいいのであつて、それぞれの企業体の努力によつてそれぞれの行き方が、ある程度将来にわたつて開かれてしかるべきであつて、それが公共企業体をつくつたねらいであると思います。そういう点に関しまして今計数をあげてどうこうと、具体的に申し上げる時期に至つておりませんけれども、報奨制度にしろその他――専売公社の人たちの賃金ベースをどうするとか、あるいはドツジ・ラインをどうするとかいうことは、全般的の問題としてもできませんけれども、そういう範囲内でできることに対しましては、最大の努力を払うべきだと思い、また私自身も報奨制度その他については、多少考えをまとめつつあるというのが現状であります。それ以上のことは、どうぞもうしばらく時をかしていただきたいと存じます。
  48. 前田種男

    前田(種)委員 私は特に労働大臣にその点を聞いたのではなくて、御承知のように法規に基いて、正常な仲裁機関、調停機関を経て、平和的に問題が処理されなくてはならぬ。しかも今従業員は、全員がこの裁定が処理されるものだと確信を持つてつたにかかわらず、政府の一方的な見解において拒否されるということから及ぼすところの、今後の公社労働組合のあり方について、またいろいろ杞憂される点もあるわけです。さらに従業員の今後の生産に協力する態勢についても、憂慮しなければならぬ問題があるわけです。そうして問題がいろいろな角度から現われて来るという点は、私は国家的に見ても防止しなくちやならぬと考えます。私はそうした問題についてまじめに考えてやらなくてはならぬと思いますから、この点については特に最善の努力政府に希望しておきます。  次に、私はこの前本会議でもちよつと質問いたしましたが、来月は年度末が参ります。年度末は予算の面においても、剰余金が残るというような問題等が、いろいろ今日言われておるわけでございます。また吉田総理も連絡会議の席上において、欠員が生じて剰余金が残つた場合は、これをまじめに働いておる公務員全体について何とか考慮したらよかろうというような発言をされたという新聞記事も出ておりますので、そうした点等とも合せまして、一体来月の年度末に対して、今日のように賃金ベースも改訂しない、裁定も拒否するというようなやり方から参りますところの、この春のいろいろな問題を想像いたしますならば、こうした問題に対して、政府として大所高所から対処せねばならぬ問題に追い詰められて来ると私は考えますが、そうした点等から考えて、年度末に予算上剰余金等が残つた場合、またいろいろな点でやり繰りができるように努力して、今日苦境に立つておりますところの公務員、あるいは公社従業員全体の生活の問題等について、どういうふうな対処をしようとしておられるか。その点に対してお聞きしておきたいと考えます。
  49. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 年度末手当云々という御質問に対しましては、今お答えし得る段階に至つておりません。ただ私自身の考えるところでは、いわゆるドツジ予算というものの考え方は、一般に考えておるよりはきわめて厳格なものであつて、そうしてこの問題につきましても、そう簡単には行かないという情勢にあるということだけは、申し上げられます。なお将来にわたりましてたとえばいろいろな給与の形でもつて充実して行く云々というふうな問題については、かつて大ざつぱの輪郭を総理が語つたかもしれません。これらの問題につきましては、主として二十五年度以降の問題になつて参りまするし、それにつきましても、今日のところでは明確なお答えをしかねる状態であります。
  50. 前田種男

    前田(種)委員 私はもう質問は終えます。ただ最後に、いつの場合でもそうでありますが、いろいろな諸情勢に追い詰められて、やむを得ず処理するというやり方が、年末にしても、あるいはその他の場合でもあるのです。私はこうしたやり方は一番拙策だと見ております。いわゆる諸情勢がだんだん高まつて来て、抜き差しならぬようになつてから問題を処理するという行き方も、やむを得ない、今日の客観情勢からいたし方がないと言われれば、そうでありますが、そうでなくして、もう少し先を達観して問題を処理するというやり方が、政府当事者としてなくてはならぬと考えます。もちろんこの年度末の問題等も、必ずしも三月末日になつてということをさすわけではありませんが、今日の生活の実情と、二十五年度の予算が実行されて行きまするときの国民負担の実情、それからもつと下らなくてはならぬ物価が、逆に基礎的な諸物価が引上げられるという今日の現状、それから税金の負担能力等から参りまして、実際問題として今日非常な苦境に追い込まれつつある現状から見て、何とかこれを打開せなければならぬという問題でございますから、こうした問題等につきまして、私は政府の善処を要望しておきたいと考えます。あるいは吉田内閣に労働行政の善処を要望することは、やぼの骨頂だというようなことを言う人があるかもしれませんが、私はむしろ日本の将来と今日の現状とを真に憂慮して、吉田内閣に対しても労働行政の面において、もつと幅を広く今日の現実をつかんで対処されることを、重ねて要望しておきます。
  51. 倉石忠雄

    倉石委員長 次は柄沢さんの順序でございますが、柄沢さんにちよつと申し上げます。申合せの時間を、あなた方はすでに一時間余り超過しておりますので、それをお含みの上で御質疑を願います。柄澤登志子
  52. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 秋山総裁に御質問申し上げます。連日御答弁の中で、企業体になつてからのいろいろの御抱負や、実績を上げられた点について力説されているのでございますが、企業体になりまして官僚的でなくなつたことによつて、どういうふうに具体的に利益が上つたか。まず第一には能率が上げられて、生産が上つたことだと思うのでございますが、それは具体的に、どういう方法で能率が上げられているか、この点につきまして伺つてみたいと思います。
  53. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 企業体になつて約十箇月であります。具体的にどういうことをしたかということを、一々羅列することははなはだ困難なことでありますが、大体工場設備の充実ということと、前会以来申し述べました従業員諸君の熱誠が、おもな原因だと私は思うのであります。専売と申しますと、主として工場作業のタバコというものがあげられるのであります。これにつきまして、徐々に一人当り生産の数量というものも上つて来ていることは、数字に現われておりますが、私ここに今持つておりませんので、そういうことについて具体的にお示しすることはできぬと思います。その他塩というものも戦時中は二十数万トンに下つたものが、今日は四十二、三万トンにふえているのであります。これらも主として諸般の情勢、すなわち物の供給あるいは燃料の増加、労務者の能率増進、そういうことから、さようにふえて来ているのであります。もう一つ私どもの事業といたしましては、樟脳があるのであります。これはやはり戦時中相当混乱の時期があつたのでありますが、だんだん安定とともに、山方面の製造能率が上りまして、最近においては――輸出を対象とすることでありますから、いくらでもこしらえてよいとは言えないのでありますけれども、所定の数量には達しているのであります。これは需要がふえれば、さらに供給をふやし得る可能性もできたというところまで増進しております。なお専売公社といたしましては、従来とかくの批判もありましたので、特に官僚云々というような批判もありましたけれども、私参りまして後に、まつたく私企業の精神をもつて、公に奉ずるという精神で、社中一同協力しておりますことを御報告申し上げます。
  54. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 国鉄の場合におきましても、企業体になりましてから、今までの矛盾のもとであつた官僚的な機構の簡素化であるとか、いろいろ人件費や物件費の節約というようなことが言われておりますが、そういう点で人件費、物件費の切捨てということが、専売公社におきましては、どの程度になつておられるか、御説明願いたいと思います。
  55. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 ただいま人件費は何割下つたというようなことを申し上げかねるのでありますが、たとえば一例を申し上げますと、運賃のごときものも、すでに新しい契約をいたしますものは、二割程度の減額を目途として、徐々にそういう契約をしつつあるのです。物件費におきましても、おそらくは一割ないし二割、値段の下落をしたものもあります。また下落をしないものもありますが、こういうことでありまして、来年度におきましては、相当な減額をし得ると存じております。
  56. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今井仲裁委員にお伺いしたいと思います。専売経理について、タバコ光の場合には、五十円につき労賃が八十銭で、日本産業の中では最も低い労賃だというお話がございましたが、その点につきましてもう一ぺん御意見をお述べ願いたいと思います。
  57. 今井一男

    ○今井参考人 光と申しますと、実は誤解があるのでございますが、私大ざつぱに、しかも御理解の便利のために、一切をかりに光に直して五十円当りとして申し上げたのであります。原価が約十円、これは本年度の実績でありますが、その十円の中で――部外でございません、部内の労働者専売に属するタバコ関係だけでございますが、その職員に払います賃金が約八十銭、こういうことでございます。私も詳細に各産業を調べたわけではございませんが、販売手数料を見れば十三円、益金を除きまして、十三円の中で八十銭という労賃は、おそらくは他の産業中にも例を見ないほど低い比率であろう、こういうことをごく常識的な意味合いで申し上げました。
  58. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働省の政府委員にお伺いしますが、大体女子労働者――女子労働者でなくて一般の労働者でもよろしゆうございますが、女子労働者が特に専売では多いので、女子労働者の産業別の平均賃金を、主要な産業でよろしゆうございます、製造工業とか、商業、金融業、運輸業、六、七の主要なる産業でよろしゆうございますから、平均賃金がどのくらいになつておりますか、御説明願いたい。
  59. 松崎芳

    ○松崎説明員 私ども担当いたしておりませんので、いずれ担当の方面の者が参りまして御説明いたします。
  60. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 秋山総裁にお尋ね申しますが、企業体の中で、人件費の割合をどのくらいに見ておいでになりますでしようか。
  61. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 私どもの人件費についてのお尋ねでございますが、人件費のどういう部分についての御質問でございますか。まずその輪郭を示していただきたい。
  62. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 お宅の方はたいへん階級がございまして、大体主になつている八五%くらいの者が非常に低賃金だということは、私どもの資料でも承知いたしております。先ほど大蔵政務次官が、八件費、物件費の予算を云々というようなお話もありましたが、専売予算全体の中で占めます人件費でけつこうでございます。
  63. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 専売支出予算が五百八十億でございます。それから、抽象的ですが、いわゆる人件費と申しますものが四十億くらいございます。
  64. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 四十億と申しますと、何パーセントくらいになりますが。
  65. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 七分弱でございます。
  66. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 総裁にお伺いいたしますが、いろいろ能率をお上げになりまして、企業体の実績をお上げになりますために――従業員の熱誠ある努力というようなこともお話がありましたが、その中で、労働大臣の非常に待望されておりますところの報奨制度というものが、専売でも実施されているように承つております。この報奨制度の実際の実施の状況によつて、どのくらいの能率が上つたかというようなことを、御説明願いたいと思います。
  67. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 ただいまお尋ねの、報奨制度によつて能率が幾ら上つたかということでございますが、どれだけ上つたということは、かなり困難なカルキユレーシヨンだと私は思うのであります。もちろん報奨制度というものは、収入の一部をなすものでありますから、従業員諸君が最も能率を上げて、いささかずつでも報奨の金額をたくさんとるということから考えますれば、私は相当な刺激になつているということを申し上げておきます。
  68. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 平林闘争委員長にお伺い申し上げたいと思います。私どもの持つております資料によりますと、報奨制度と申しますか、そういうものが専売で突施されます場合に、優秀機とか、赤字とか、要努力とかというような標識が機械などに貼付されて、それによつて実際に女工さんたちが、労働強化になつて行くというようなことを、私ども聞いているのでありますが、そういう事実について御説明願いたいと思います。
  69. 平林剛

    ○平林参考人 今お尋ねになりました制度、その方式は、結局生産報奨制度に根源を持つものなのであります。労働大臣もたいへん生産報奨制度について期待を持たれているようでありますが、現在の生産報奨制度はそういうものでなくて、実際に自分たちの能力に相当するようなものが、与えられるというような制度になつておらないのであります。割当てられた数量に対して、それを越えれば出す、またわれわれの努力によつてそれより生産が上げられるということになると、これがもつと上げられるというように、また上の基準に持つて行かれるような、おそれがある制度になつているのであります。そういうために、各工場の製造部長は、自分の工場の成績が上ると、やはり人事上でもたいへん影響があるので、製造部長がみんな競争をし出すのであります。おれのところの工場はこれだけ生産を上げたということで、ほめてもらおうという考えがありますから、勢い機械のまわりに、この機械は何億本つくれるというような標識をつけるわけであります。年の若い女子は、これらを自分たちのやらなければならないものだと考えますから、一生懸命になつてその目標を果そうと努力しているのであります。御承知のように専売のタバコ工場は女の人が多くて、そして立作業で、しかも連続作業でありまして、非常に疲労を覚えるのでありますが、こういうような標識目標が定められておりますので、そうした立場を克服して仕事をやつているのでありますが。一般の方から見られると、馬がにんじんを前にぶら下げられて、追つかけて行くようなあさましい状況でありますが、私どもはそういう努力を行つているのであります。
  70. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働省の方にお伺いしたいのでございますが、かつて資本主義の発達しますときには、優勝旗をぶら下げまして、そして原始的な紡績女工の労働強化が行われたわけでございます。それからまた戦争中にも同様なことが、炭鉱各地で行われて来たと思います。その当時私ども、指導しているところの係員などと話をいたしますと、労働者というものはふしぎなもので、給料を安くして、賞与制度をぶら下げておいてやると――私はこれは炭鉱の切羽で聞いたのでございますが、夕張鉱の千メートルのロングの切羽に、十六台の截炭機が並んでいたときに、競馬のように競争して走らせる競争意識を非常に利用するということが、言われておりました。それによつて石炭を増産するのを、非常に誇りに考えているのでございます。こういうような報奨制度というものを、今の最低賃金にたよれなくなつたところの労働者の、唯一のより場であるというふうに労働大臣がお考えになつているようでございますが、こういう点で、昨日もお話にありましたように、労働基準法の違反が行われるのではないかと思います。そういう点につきまして、基準法違反の事実を当局はお認めになつているようでございますが、厳重にこれを取締つていただきたいと思います。労働省当局のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  71. 松崎芳

    ○松崎説明員 今の、賞旗制度によりまして労働強化ということがあるかないかということですが、なお検討を要しますけれども、もし労働強化というような面になりますれば、これは基準局といたしましても、相当慎重な態度をとるであろうと思います。私労政局の者でありますから、他の局のことを責任をもつて答弁いたすわけに参りませんので、この程度で……
  72. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 平林闘争委員長にお伺いしたいのでございますが、現場を視察しました一端から伺いますと、部品の不足ということや、準備時間のために労働時間以外に動いている事実、これは今の賞旗制度、報奨制度と関連していると私ども考えますが、組合としては、そういうことに対してどういうふうにお考えになつておられますか。
  73. 平林剛

    ○平林参考人 部品の不足、それから機械の設備の悪いこと、故障が起きたこと、こういうこともやはり生産報奨制度には、もちろん影響がございます。たとえば機械が悪くて生産が上らない、こういう場合は割当られ数量に達しませんので、そういう方面から影響がございます。ただ私どもとしては、不可抗力な問題からできない生産目標、こういうものについては、協議をして不当のことのないように交渉しているわけであります。それから労働を、定められた勤務時間以外にやるような傾向にあるのではないかいう意味にとれますが、そういう実情について、お答えをいたしたいと思うのであります。やはり現在の給与が低いために、組合員は生産報奨制度にたよらざるを得ないのであります。超過勤務にたよらざるを得ないのでありまして、基準内賃金ではとても食つて行けないのであります。だからどうしても労働時間の中で一生懸命働くと同時に、もつと生産を上げようとして、きのう私が申し上げましたように、基準法違反のようなことであつたといたしましても、自分たちから進んでやつているような場合もあるのであります。自分たちが休憩時間とか、あるいは始業時間前に仕事をするのは、基準法に違反するのだと自分たちでも承知いたしておるのでありますが、生産を上げて、少しでも生産報奨金をもらつて生活をゆたかにしたい――ゆたかというより、足しにしたい、こういう考えで、始業時間前にも作業服にかえて工場に入つて、八時になつたらすぐ仕事ができるような準備にかかる。こういうような傾向になつておるのであります。こういう点は、私どもは労働基準法を厳格に守りまして、そうして定められた時間内で所定の製造目標をあげるように、努力をすべきであると思いますし、設備やその他につきましても、所定の時間で割当てられた製造数量が、われわれの労働強化でなしにあげられるように、生産設備を改善をしていただかねばならないと考えております。これらにつきましては、公社と交渉を進めて行きたいと考えているわけであります。
  74. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 鈴木労働大臣にお伺いいたしたいのでございますが、報奨制度は企業体のねらいだということをおつしやつたと思います。ただいま非常にわずかの間ではございますけれども、働者の代表と、それから公社の方の御答弁によりまして、むしろ今の場合では、基本給が安くて食えないような場合に、報奨制度をつくつた方が利益が上る、能率が上るというのが、これが資本家のねらいで、労働大臣はまつた労働者立場ではなく、そういう企業体の利潤本位のお立場に立つて労働行政をお考えになつていると思うのでありますが、そういう私ども見解に対しまして、労働大臣は、企業体のねらいという報奨制度が、労働強化になつているという現実に対しまして、むしろ基本給を上げてやるべきであるというようにお考えにならないかどうか、その点を伺いたいと思います。
  75. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 基本給を上げ得ないという説明は、もう累次にわたつて申し上げた通りであります。基本給の問題よりも、報奨制度の方が重要だという意味で、申し上げたのではありません。同時にまた報奨制度は、今後行われるにいたしましても、組合側を相手方として、団体交渉によつてその実質がきめられるのでありまして、組合がいやな報奨制度を、むりに押しつけるということはないはずであります。
  76. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働者が食えない賃金に置かれおりますと、自分から進んで基準法を破りたい、食うためにやむなくそういう要求を出す場合があるのであります。たとえば休日を変更して、休日を金にかえてくれとか、時間外をやらしてくれとか、労働者自身が望むということが、はたして民主的と言えるかどうか、そういう場合に、食えない労働者が、労働基準法をみずから破るということを、食うために望んだことに対して、それが労働者の意思である、これは民主的だという形で労働大臣お答えになるかどうか。
  77. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 食う食えないという問題は、きわめて幅の広い問題になつて来ますが、この問題に対するわれわれ民主自由党というか、現内閣の解決の方向は、実質賃金を充実させ、消費物資の価格を引下げて行くということにあるのであります。どうぞ日本の最近の実情から、この動きが、ねらいが、はずれたかどうかということを見届けていただきたいと思います。
  78. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働大臣に対する質問はこれ以上やめます。組合の方にお尋ねしたいのでありますが、持出し点検ということが、携帯品の検査が専売公社ではたまたま行われるるそうでございます。その場合に、私どもの経験いたしましたいわゆる監獄と言われている犯罪人を取扱います場所でも、婦人の身体検査は婦人がいたすのでございます。女子の監視がいたすのでございますが、そういう点で、専売の場合には女子労働者にとつて、不愉快な点が多いということを聞いております。そういう事実がございますか。
  79. 平林剛

    ○平林参考人 専売公社のタバコ工場の中で、従業員が不正な持出しを行うということが前に若干ございました。私どもは正しい態度で、そういうことはいけないという運動を起しまして、現在では全国的に見まして、ごく僅少になりました。私どもの工場でそういう人があるということは、決してそこだけに悪い人がおるというのではなくて、悪い人間はどこにもおるのでありますから、ごく一部あるのはやむを得ないことでありまして、四万のうち大多数、九十何パーセントが正しい労働者であることは、言うまでもないところであります。こういうことが前にございましたので、その後専売公社は取締りということを行いました。またこれは私どもの責任ではないのでありますが、一時町にやみタバコが氾濫いたしました。こういう関係から、工場の取締りも非常にやかましくなつておるのであります。それで今御質問のありましたように、今でもそういう制度が残されておりますので、従業員はたいへん気持の悪い思いをしております。正しい労働者であればあるほど、それに対して不快な気持を持つておるのであります。帰る時間につきましても、終つてから、ひどいとこるでは二十分から三十分ぐらいかからないと、門を出ることができないくらい、厳重な検査が行われておるのでありまして、そういうことの結果、悪い人はそんなに出ておらないのであります。これがあるので、各工場で働くのがいやだということで、やめて行かれる人が多かつたのであります。今言われますように、婦人のからだ等に触れます検査をする人につきましても、男の人が行うことが多かつたのでざいまして、婦人組合員からたいへん苦情が申し込まれておりまして、これについては専売公社に対して、婦人の検査は婦人が行うようにという申入れを行つておるのでありますが、人手が足りないために、現在でも男が行つている実情があります。こういうことは、私ども基本的な人権という面から行きまして、ときに度を越すような場合がありますから、その都度抗議を行つておるのでありますが、現在の実情はそういうこともございます。ただ、ここで申し上げておきたいことは、私どもはこういうような状況にありますが、いろいろこれらの問題につきまして、基本的な人権というものを破らないように願いたいという要求を出しておりますけれども、不正があることについては、強く批判をしておるのでありまして組合といたしましても、たとい一人でもそういう不正な考えを持つ者がないように指導をいたしております。これらにつきまして、現在の状況がきわめて少いことになりましたのは、私、やはり組合員の民主化という考え方が徹底したためだと確信をしておるのであります。実情は、まだそういう実態が残されておるということであります。
  80. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それからもう一つつけ加えてお尋ねしたいのは、生理休暇を労働組合等の団体交渉で獲得した中で、専売の場合には立作業で、塵埃がひどくて、結核患者や脚気患者が多く出ているにもかかわらず、生理休暇は実際上当日出動をして、一時間仕事をした上で、医者の証明をもらわなければならないというのですが、流れ作業のために、作業に入つてしまうと、実質的に休めなくなつてしまうということを私ども承りております。そういう事実はございますか。
  81. 平林剛

    ○平林参考人 生理休暇の問題は、労働基準法に示されているものの解釈の仕方で、非常にかわつて来ると思うのであります。女性の母体保護という立場から、この母体保護を重点に考えました場合、生理休暇は必ず与えるようにしてやる、こういう保護の仕方が、私どもからいたしますれば、基準法の解釈であるように考えるのでありますが、これとはまた逆に、実際に仕事ができない場合に限るということになれば、一人もとれないということにもなつて参るのでありましてこの基準法の解釈が、とる人によつてきわめて異なつて来るように思うのであります。今御指摘のようなことは、結局女性の母体保護という考え方、これを重心に考えるか、いわゆる製造のためには、母体というものを犠牲にしてもよいのだという考え方の方が重点になるのか、こういうところがわかれ道になつて来るのであります。組合としては、これにつきましては、基本的には母体保護のために基準法があのようにつくられておる、労働者を守るための法律だと解釈をしておるのでありまして、そういうような指導を行つております。しかし、そのために、何でもかんでもとつていいのだ、こういう考えではいけない、そこは生産階級の自覚にまつて母体保護、そして生産ということも忘れずにやる、こういう考え方で指導しておるのであります。しかし現状は、やはり考え方の組違によりまして、今御指摘のありましたように、実際には、とりにくいような状態に陥れる傾向は、いなむことのできない事実であります。はずかしいというために、とらない人もありますが、出て参りまして、お前は仕事をしに来ておるのか、どういうのか、こういうようなことを言われますと、やはりとりにくくなるというのが、今女子組合員の実態でありまして、そのために、私ども組合の調査によりますれば、実際にこれをとつておる人は、ひどいところでは七%から八%ぐらい、いいところでも二〇%から二五%、こんな程度でありまして、実際には女子の生理休暇は、ほんとうに労働基準法の趣旨である母体保護立場からは、実施されておらないというのが、現状であると考えております。
  82. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 秋山総裁にお尋ねいたします。女囚でさえも、からだの検査をいたします場合などは、婦人を使つておりますのが常識でございますが、これを即刻お改めになる御意思はないかどうか。それから実質的には生理休暇がとれなくなるような、一時間仕事をしてからというようなことは、基準法違反を実質的にやることになると思いますが、これもお改めになるお考えがないかどうか、伺いたいと思います。
  83. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 婦人のからだを改めるということは、実は専売公社もはなはだ迷惑をいたしております。これは決して好んでやつておるのではないのであります。いかんせんただいま委員長が申しますように、九九%は実にりつぱな人でも、わずか一%のそういう人がおるということのために、どうしても置かなくてはならない。これは実際問題でありまして、まだ残念ながら全部それをやめるというところまでは、立ち至つておらないのであります。やがては私はそういう時期が来ると思うのであります。同時に、専売公社建前といたしましては、やはり婦人には、同性の人がそういうことに当るという建前になつておりますが、あるいは人の関係で、そういう手がまわらないようなところがありますれば、全部これを最近の機会に改めたいと思います。  なお生理休暇の問題でございますが、そういう事実は私は聞いておりませんけれども、これも仕事の前に、医務室がありますから、そういうところに行つて、必要を認められれば、私は一時間の労務を強要する意思は毛頭ございません。
  84. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今の秋山総裁のお答弁の中で、従業員だけが何か不正をしておるようなお話がありましたが、これは非常に遺憾だと思います。専売の不正というものは、上の方がよけいやつておる。東京の品川工場などにそういうことがあつたということを私は仄聞しております。従業員の不正なんというものは微々たるものだと思います。しかも従業員には、専売となつておりながら、何でも五十本のタバコを有料でもつてつて、少い給料の中から二百五十円も差引いておるということも承つておりまして、ただいまの御意見では、私非常に不満でございますが、ぜひこのからだの検査の問題、それから生理休暇の問題は実施していただきたいと思います。  それからもう一つ、今度は労働大臣に何分御答弁願いたいと思うのでありますが、(「労働大臣にはさつき打切つたと言つたじやないか」と呼ぶ者あり)政府委員でもよろしゆうございます。しかしおいでになるのですから、ロボットでない限りは――それと大蔵政務次官にお伺いいたしたいと思います。五百八十億の中で、人件費が四十億と申しますと、〇・七、国鉄の場合などは、ともかく人件費が四五%でありまして、物件費が五五%、戦前はこの逆であつたのであります。専売日本労働者の中で一番低い問題であります。これは北京のアジア婦人会議などにも、日本労働者の労働条件の中で、最も悪い労働条件として私どもは提出してあります。これは日本の恥辱と言わなければなりません。よくもそれで労働大臣が、こういう問題に対しまして、賃金を上げなくてもいいとか、そういう報奨制度が企業体のねらいだとかいうようなことを低賃金はいけないと言つて、世界の民主的な国が、今日本を注視している最中に、こういう方針がとれるものだと思います。しかも基準法違反をどんどんやつておる。生理休暇も実質的にはとれない。労働者の不正ばかり見て、自分たちの不正は何ら自主的に摘発しない。専売公社は、労働行政の監督が十分行き届いていない象徴だと思います。この責任をどうするか。実際女工哀史ということが、侵略戦争のもとになつていたことは御承知だと思います。今日本が軍事基地になろうとして……(「ヒステリーだ」「生理休暇をとれ」と呼ぶ者あり)(笑声)笑つておる人があるけれども、軍事基地になろうという戦争の危機の場合に、労働賃金の一番低いタバコの専売公社の賃金裁定が、こういう状態になつておりますことは、私は非常に遺憾だと思います。ぜひ労働省当局は、基準法違反や労働強化の点について、十分責任を持つて監督していただきたい。あなた方がその責任を感じておられないかどうか。この見解をまず労働省関係の方に伺いたいと思います。  それからもう一つ大蔵政務次官にお伺いいたしたいのでありますが、専売の人件費の予算は〇・七、国鉄の場合は四五%であります。労働大臣は、国鉄の例をあげる必要はないと言われましたけれども専売自身が年末には五億幾らというものを専売の中で出しておられる。何も国鉄によらないでも、専売自身が年末の場合に出しておられるのであります。でありますから大蔵政務次官の御答弁は、苦しいどころか、まつたくつじつまの合わない、まつたく根拠を持たない答弁であると思います。そういう点で人件費、物件費の予算の根拠がどこにあるか。〇・七の人件費は、人件費、物件費の予算の中でどういうふうに考慮されたか。千二百億円という益金を先にとつてしまつて予算から割出したところのこの賃金で、一体労働者が食えるとお考えになつておるかどうか。また大蔵当局としてどういうふうにお考えになつておられるか。そうして今審議されておる予算の中で、どういうふうに専売の人件費が組まれておるか。その人件費の割出ざれた根拠がどこにあるかということを承りまして、私の質問を終りたいと思います。
  85. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 いろいろ御意見がありましたが、大体ものの見方の観点が、根本的に違つておるように思います。そうして私たちの考え方は、あらゆる政策の面で、私だけでなく、同僚の閣僚も総理もすべて、あらゆる機会に開陳して来たところでありまして、それらを全部総合して、私どもお答え考えていただきたいと思います。なお基準法を励行するというようなことは、御指摘になるまでもなくその通りであります。今後も基準行政、その他そういつた方面は充実して、遺憾なきを期したいと存じます。
  86. 水田三喜男

    水田政府委員 人件費の問題でありますが、これは企業によつて、人件費と物件費の割合は全部違いまして、全然一律ではございません。たとえば材料をたくさん使うのと、ごく少量の材料で、しかも安い材料を使うようなものでしたら、人件費の割合というものはまつたく違つて来ますし、ことに国鉄専売公社の比較をされましたが、専売公社のように、ああいうものを大量生産でつくるという企業におきましては、人件費のパーセンテージはきわめて少くて済むということになりまして、これは一律にどうこうという問題ではないと思います。専売公社におきましては、人件費の予算をきめる場合に、従来の実績その他に基いて積み上げて来たものでありまして、今仰せのように、でたらめに一方は四割幾らだが、一方は七分に計算したというものではございません。この点は十分わかつていただけると思います。
  87. 倉石忠雄

    倉石委員長 石田一松君。
  88. 石田一松

    ○石田(一)委員 私はこの際労働大臣の御所見をお聴きしておきたいと思うのでございます。それは過日この国会内に三十数組の労働組合の代表が集まりまして、国会共同闘争委員会なるものを組織しております。この委員会は、吉田内閣が人事院の公務員の給与べース改訂勧告案を拒否し、また今回専売公社仲裁委員会の下した裁定をも拒否するという態度に出ました、それに対する一つの戦術といたしまして、新聞に伝うるところによりますと、ゼネストを決行してこれに対抗するという宣言をしております。この国会共同闘争委員会ゼネストの決行を宣言いたしましたことは、公労法第十七条の解釈から言つて、どういう関係にあるものか、ひとつ労働大臣の御所見を承りたいと思います。
  89. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 裁定の取扱いに対しまして、法の定めるところに従い、順序をふんで国会承認、不承認を求めるに至つたそれらの考え方段階等につきましては、政府見解は繰返してお答えした通りであります。その過程において、違法であつたか、あるいは法を蹂躪したかというふうなことについては、政府はそういう事案は考えておりません。裁定を全部のまなければ、それは違法であり、蹂躙であるということもないのでありまして、全部のむ場合もあり、全部のまない場合もある。また一部のむ場合もある。それは一に公共企業体予算上、資金上可能か不可能かという判定によるのでありまして、その判定自体が正しかつたか、正しくなかつたか、あるいは政府の言う通り承認すべきか、不承認すべきかということは、最終的には国民の代表である国会がきめられるという、その手続をふんでおるのでありまして、違法でも蹂躪でもないと思います。従つて公務員の場合に、重ねて検討するまでもなく、争議権というものはないのでありますし、公共企業体の場合も同様であります。ないものと考えております。
  90. 石田一松

    ○石田(一)委員 争議権というものはないと考えていらつしやるということは、要するにそれでは先般の国会共闘委なるものが発したゼネスト宣言は、第十七条の違反である、こうお考えつているというのでありますか。
  91. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 国会共闘は、どういう形でもつて組合を面接的に代表し、また指令というものを出す立場をとつておるか、実は私まだ寡聞にして存じません。その立場権限等につきましては、相当のみ込めない点もありますが、しかしいずれにせよ、私たちがこの国会共闘を相手といたしましてゼネストの問題を議論し、それから解決するということは、必ずしも必要でないのであつて、りつぱな個々の単位の組合がありますし、その組合の連合体もあるわけでありまして、本来そういう筋道で行くべきだと思つております。また声明を出したということについてでありますが、声明従つてストはまだやつておらないのであります。この段階におきまして、声明自体を特に政府が取上げて云々するということは、不適当だと考えております。
  92. 石田一松

    ○石田(一)委員 これはまことに労働大臣としては、けつこうな御見解であると私は思いますが、そういたしますと、この国会共闘委員会なるものの性格というものはつまびらかにしていない。労働省としては、各職業別にあるところのいわゆる組合の単位、この相手とする単位はきまつておる。その単位によつてなさるところの声明、あるいはゼネストの宣言とか、争議行為でなければ、――国会共闘委がなしたものであれば、これは何ら政府として相手にするものでない、こういう御見解であるとしますと、この国会共闘委の名において公労法十七条違反の行為がなされても、これは政府としては十七条違反とは見なさない、こういうふうにお考えになつておるのか。この点をはつきりお聞きしておきたい。
  93. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 あえて国会共闘に限らず、一々声明を相手にして善処する場合もあり、相手にして別に措置をとらない場合も、それはそのときどきの情勢によつてあるのでありまして、国会共闘声明だから、相手にしなかつたという形式論ではありません。今回はあれを取上げて今どうこうということは考えておらないという意味であります。同時に十六条の違反云々という問題は、先ほどから申し上げておりますように、政府といたしましては、所定の手続を経て、所定のコースをとつて国会の審議を仰いでおるのであるから、そういう問題は起きて来ないと考えておるのであります。
  94. 石田一松

    ○石田(一)委員 私が聞いているのは、十七条の違反であるかどうかを言つておるので、十六条の問題を言つておるのではないのであります。十六条のいわゆる予算上、資金上不可能云々というのではない。十七条を一ぺん読みましよう。「職員及びその組合は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。又職員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない」これに違反するのではないか。この点に関してどういうお考えを持つていらつしやるか聞いておるので、声明を発せられたからといつて声明自体は問題にしないということになると、この中に、共謀とか、そそのかし、あおるという言葉が入つておるのですけれども声明を発しておるだけでしたら、あおることにもならないし、共謀にもならないし、そそのかすということにもならないとお考えになるのですか。おそらく今労働大臣は、十六条と十七条の条文とをこんがらがつて考えになつたのじやないかと思うのですが、もう一ペンはつきりこの点についてお答え願いたい。
  95. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 違法を対象として争議権が復活するとか何とかいうことが言われているらしいのでありますが、第一番には、違法でないから、そういう問題はない。起きて来た場合には、平明にただいまの条章の通り考えて、適当な措置をとるべきものだと考えております。
  96. 石田一松

    ○石田(一)委員 これは私は労働大臣に特に申し上げたいと思るのですが、最近の新聞紙の伝うるところによりますと、関係当局のエーミス労働課長ですか、たいへんにこの問題について苦慮なさいまして、労働組合の幹部、あるいは最初には国会共闘委の代表者とも面会をなさつて、あらゆる手段を講じて、このゼネスト声明についての見解労働組合に発表して、いわゆる最善の措置を事前にとつていられるということが、明らかにうかがわれるのであります。それに対して日本労働行政を預かる労働大臣が、国会共闘委のやつた宣言であるから、それは何らわれわれの関知するところではない。実際にこれがなされたときに手を打てばよいのだというような、まことにのんびりした考え方でこの問題に対処していらつしやるというその心構えが、すでに労働者に相当不安な気持を与えるんじやないか。私はこの際労働行政の長にいらつしやる労働大臣が、この問題に対してどういう見解を持つているのか、今後これに対してどういうふうに処置しようとするのか、その指針というか、決意というか、見解というか、それがここにすでに明らかに決定していなければならぬと思う。それが全然決定していないということになると、いざ事実争議の態勢に入つたときに、これは相当の手違いを生ずる。こういうことで私は一応聞いているのですが、やはり今おつしやつたように、国会共闘員会においてなした宣言であるならば、政府は、特に労働大臣としては、これに対して何ら見解もない。こういうことに聞きおいてかまいませんか。
  97. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 争議を行い、あるいはあおつたり、そそのかしたりしたときにどうするかという問題は、いまさら見解をたださなくても、今読み上げられたところに書いてある通り、必要な際にその通り決定する。しかし労働大臣といたしましては、そこに行くまでにむしろあやまちなきを期したい、一人の犠牲者も出したくないというのが、立場上当然でありまして、そういう段階の手を尽した後に、なおかつそういう実情の起きて来た場合におきましては、あらためて労働大臣の決意を聞く必要はないと思います。そこに書いてある通りであります。
  98. 石田一松

    ○石田(一)委員 そういたしますと、今回のこの問題に対しても、あらかじめそうしたことにこれが突き進まないような、労働省としてはあらゆる手をお打ちになつているということでございますか。
  99. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 あらゆる手そうしてその範囲というものに対しましては見解がいるいろあるでありましようが、なし得ること、またなすべきことは、やつているつもりであります。
  100. 石田一松

    ○石田(一)委員 なし得ること、なすべきことはなしているという、まことにお含みのある答弁でありまして、私はそうあるべきだと考えます。そこでこの際労働大臣に特にお尋ねいたしたいことは、先般来私が佐藤法制意見長官あるいは他の政府委員にいろいろ質問いたしました結論として、公共企業体従業員は、組合を結成して団体交渉をする権利を持つている。しかもこの十五条によつて、団体交渉というものは一年に一回は必ず開かなければならぬということになつておりまして、これによつて賃金とか、その他のいわゆる労働条件についての労働協約を、文書で締結することになつております。しかもこの締結された労働協約も、過日の政府委員の御答弁によりますと、第十六条のいわゆる協定の中に、これらの労働協約が含まれるということであります。しかも今回のような仲裁委員会の裁定も、もちろん三十五条の但書によつて、これは十六条によるということになつておりますので、この公共企業体従業員は、与えられた権利であるところの団体交渉権を行使して、専売当局と平和的にして円満な労働協約を文書によつて締結しても、それが給与総額の範囲を越える協約であつた場合には、ほとんどこの十六条によつて、これが最後に決定されるということになりますと、公共企業体従業員は十七条によつて争議権を剥奪されておる。しかも今労働大臣が、書いてあることを読めばわかるとおつしやつたように、その禁止された行為を共謀したり、そそのかしたり、もしくはあおつたりしてはならないという広範囲な争議権が剥奪されておるにもかかわらず、支出予算の面において、給与総額を越えるところの賃金の協約はできない。一旦決定したところの賃金は、いかなる労働協約を結んでも、時の政府が賃金政策を改訂する以外には、絶対に公共企業体従業員の賃金というものの引上げは、不可能であるという結論に到達するのでありますが、この点について労働大臣はどうお考えでありますか。
  101. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 今回の裁定が不可能という判定のもとに国会の審議を仰いだことは、御承知通りであります。そうでない場合もありましようし、また一部認められるというような場合もあるのでありまして、それはそのときどきの予算上、資金上の実態によるのであります。政府は必ずしも、いつでもそういつたものを不可能な状態に置こうという意図のもとに、予算を組むというわけのものではありません。予算全体として、国政全体、諸般の情勢ともからみ合せて組まれて行くのでありまして、それらの点から起きて来るところの、ある時期におけるある制約というものはあり得るかもしれませんけれども根本といたしましては、成規の手続をふんで、そうして最終的には政府の意図だけで決定するのではなくして、国会承認を求めるのであります。もし国会承認したときは、政府は不可能な場合でも、当然国会の意図に従つてその措置をとるべき政治的責任をも生じて来るのでありますから、法の精神というものは生かされておるのであつて何ら無意味の交渉ではないと思います。その都度々々の結論の相違は、そのときの情勢に応じ、予算上、資金上の関係から決定されて行くのであります。
  102. 倉石忠雄

    倉石委員長 石田君に申し上げますが、あなたはお一人で、もうすでにあなたの党の持ち時間を、先ほどまでで五十八分超過しているわけであります。ことにただいまの御質疑はしばしば当委員会で繰返された質疑でありまして、石田君おいでのときも、御不在のときも繰返されたことでありますから、なるべくひとつ簡明にお願いしたいと思います。どうも石田君の能弁を拝聴しておりますと、満場魅了されて、つい時のたつのを忘れるわけでありますが、なるべくひとつ簡単に願います。
  103. 石田一松

    ○石田(一)委員 委員長の御注意了承いたしましたが、もう二、三点お伺いいたしたいと思います。ただいま労働大臣の御答弁の中で、ある場合には政治的な責任をも負う場合があるのだというお言葉があつたのでございますが、私はその言葉が、ほんとうに正しい御答弁だというふうに拝聴したのです。なぜかと申しますと、少くとも政治的な責任をまで負うという観点に立つて、今回の専売公社裁定国会に提出するような場合には「公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件」としないで、第十六条に明らかに規定してあるごとく「承認を求めるの件」として、政府がこれを提出しなければならぬことは、法律において明らかな問題であります。承認を求めるの件として出して、これが国会の不承認なつた場合、すなわちこれに対して政府が政治的責任を負うということでなければならない。ただ単に「議決を求めるの件」であつて要するに国会の意思通りになるので、政府の意思がこれに全然入つていないという提出の仕方、これでは政府がいわゆる責任を回避しているということになり、先般来各委員によつてただされた通りのことになるのであります。そこで最後に一つお尋ねを申したいことは、先ほどもすでに政務次官の水田氏より御答弁がありました中に、たいへん含みのあるお言葉があつたのであります。つまり将来公労法の立法の精神がむだになるようなことは決してない、諸般の情勢さえ許すようになつた場合には、必ず自分たちとしても、この精神がむだにならないように善処する考えであるということを、含みを持つておつしやつたのであります。そこで私がお聞きしたいのは、諸般の情勢さえ許すならば、本専売公社裁定自体も、おそらくただいまの水田政務次官の御答弁のように善処され、またこの目的、この裁定の趣旨が実行されるように、政府としても善処する意思があるのだ、こう解釈していいか。この問題自身も、諸般の情勢が許すならば、そのまま実施するにやぶさかでないという決意があるかどうか。この点を一ぺんお聞きしたい。しかもさいぜんから、最善の努力をして来たという、要するに過去分子のような言葉をお使いなのでありますが、現在政府国会で審議しつつある過程においても、なおかつ不可能な支出が可能になるような、最善の努力関係当局方面となされておるかどうか。それがなされていて、その結果がどうなるかわからないということのあることも、もちろん私どももお察ししておりますが、最善の努力が現在なされつつあるかどうか。この点について特に責任のあるお答えを願いたいと思つております。
  104. 水田三喜男

    水田政府委員 政府努力しているか、していないかは、具体的なことが申し上げられませんので、皆さんにおわかりにならぬだろうと思つて恐縮しておりますが、とにかく最善の努力をしておるということは間違いございませんので、この点ははつきり申し上げておきます。  それから諸般の情勢のいかんによつては、これは政府としてすぐ承認できるかどうかというのでございますが、これは御想像におまかせいたします。
  105. 石田一松

    ○石田(一)委員 今までは最善の努力をして来た、しかし諸般の情勢上、こうであつたという御説明であつたのであります。ただいま大蔵政務次官の御答弁によりますと、具体的には説明ができないので、どうかと思うけれども政府としては現在も最大限努力をなしつつあるとの言明を私は信頼いたしまして、より以上の最善の努力を今後も続けられんことを特に要望いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  106. 倉石忠雄

    倉石委員長 青野武一君。
  107. 青野武一

    ○青野委員 私は、社会党関係で非常に質問の時間が超過しておるという話でありますので、一、二要点だけの質問を申し上げたいと思います。これは確実な情報として申し上げるのではありませんが、年度末を控えて日本専売公社は先ほど総裁答弁によりますると、人件費は経費の七分くらいで、約四十億円くらいとお答えなつたように記憶しております。年度末に相当の節約をすれば、人件費がある程度残りはしないか、こういうように私どもはいろいろな情報を基礎にして推定しおるのでありますが、この点について公社総裁はどういう見通しを立てておられるか。
  108. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 ただいままでの情勢から判断いたしまして、年度末に人件費で、私の裁量によつて使い得る金額はないと思います。
  109. 青野武一

    ○青野委員 これは大蔵大臣が出ておりませんので、政務次官にお尋ねを申しますが、今労働委員会にかかつておりまするこの問題は、全専売公社労働組合諸君公社とが、賃金ベース改訂要求で紛争を起しているのでありまして、実際問題としては、政府を相手に労働組合諸君が紛争を起しているのではありません。これはもう言うまでもないことでありますが、結論から申しますと、大蔵大臣が認定をしないために、こういう労働委員会にかけて問題が討議されておるのであります。これは裏から見れば――当事者の労働組合から見れば、政府の一種の干渉である、こういうふうに考える者もあるのであります。でありまするから、私が政務次官にお尋ねしたいと思いますることは、これくらいの程度は、仲裁委員会の裁定にも書いてありまするように、また委員諸君がたびたび言つておられますように、流用ができるのに、それもしない。しかも大蔵大臣の説明によりますると「諸般の事情を考慮いたしますと」こういう言葉を使つている。いろいろの委員の方が御質問にもなりましたが、これは本会議の討論に非常に必要なことでありますのでお尋ねしておきます。大体諸般の事情を考慮するということはどういうことか。そういう抽象的な言葉で御説明がありましても、三万八千の公社従業員諸君が納得できない。それが国会共同の全面的なスト声明になつて来ている。これは国鉄専売公社労働組合の問題だけではなく、日本全体の労働組合が大きな関心を持つている。政府が一方的に公社と一緒になつて、こういうむり押しの解釈をして、こうい形でこれを否定しようといたしますると、たびたび言うようでありますが、公労法の精神を無視してしまう。この法律の存在価値を抹殺してしまう。それが日本労働組合の上にどういう影響を与えて行くか。これは国鉄の問題だけでなく、専売公社労働組合だけの問題ではありません。大きな全国的な影響を持つていることでありまするから、大蔵大臣は「諸般の事情を考慮いたしますと、」という言葉を使つて説明して、それ以上深く掘り下げて具体的な説明がありませんが、次官としてこれはどういうことをさしておるか、その具体的な説明を私は聞きたい。
  110. 水田三喜男

    水田政府委員 承認の出来ない理由は、ここでもうたびたび申した通りでありまして、そういうものを総括して、諸般の事情大臣お答えなつたと思います。今まで説明しました程度で、諸般の事情ということを御了承願いたいと思います。
  111. 青野武一

    ○青野委員 最後に労働大臣にお尋ねいたします。これは国鉄裁定のときも同じようなことを申し上げたと思いますが、私ども日本労働運動が、急激に左へ左へ進んで行くということを希望するものではありません。私も北九州で、そういう関係を長らく続けて参りました一人でありまするが、合法的な労働組合運動というものが――たとえば今度の問題にいたしましても、公労法で団体交渉権や、調停委員会や、仲裁委員会の機関を経て、自分たちの要求が平和的に解決すると考えております諸君が、これではだめだ、自分たちが生きるためには、自分たちが生活を守つて行くためには、こんな法律にたよつてつたのではだめだ。結局力と力の対立だ。衷願する者には何も与えられぬ、最後は力で闘いとらなければ、ということになりますれば、いくら法律で禁止しておりましても、最後の武器である争議をやらなければならない。やらねば死ぬる。食えなければどうするか。人間はどたん場に追い込められれば、勢いそういうところに入つて行かざるを得ないのでありますが、その火ぶたは切られておる。実行に移ろうとしておる。こういう点について――吉田内閣は全閣僚が責任を持つてこの問題を決定したという労働大臣お答えでありましたが、日本労働組合運動にそういうような影響を与え、そういう方法に行かざるを得ないようにしているという点につきまして労働大臣国内的にも、また国際的にも、どのようなお考えでこれに対処して行こうとしておられるか。私は御答弁によりましてもう一ぺんお尋ねしたいと思いまするが、大体これで質問を打切りたいと思います。
  112. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 公労法解釈、それから運用、そうしてその段階、時期、諸条件等によつて、いろいろの結論が出て来ることはあるけれども政府といたしましては、この段階においてなし得る判断、それから成規の手続をふんで国会承認または不承認を求めているということは、先ほどから繰返して申し上げた通りであります。従つて仲裁案が出れば――三十五条の場合はそうでありますが、いかなる場合でも、諸条件上、また特に資金上、予算上不可能な場合でも、これをのまなければ蹂躪だという解釈は、でき上らないのでありまして、そうであるからこそ、そういう場合の措置として、十六条も置いてあるのであります。あえて十六条に常に逃げ込むという考え方に、終始しているわけではありませんけれども、その判定は一に公社資金上、予算上可能か不可能かによるのでありまして、その不可能だという説明につきましては、ほとんど連合審査会以来、政府の各係及び大臣から十分説明されたと思います。将来の問題につきまして――従つてそうでありますから、ただちに非合法運動というふうなものが起きて当然だという考え方は、私どもは持つておらないのでありまして、この問題にどういうふうに処するかという根本的な考え方それ自体は、すでに本会議その他でしばしば申し上げたのであります。今の段階におきましては、実質賃金の向上というものをもつて、この問題の基本的解決のかぎとすべきであるという政府考え方は、しばしば申し上げた通りであります。今日でもそうでありますし、今日以後さらに各方面に――配給の方にも、あるいはその他減税はすでに進みつつありますけれども、その他物価の引下げ、統制の撤廃という方向の総合的政策を、強力に迅速に進めて行くということが、根本的の最初の方針であるということを申し上げる次第であります。
  113. 青野武一

    ○青野委員 もう少し項目別に御質問したいと思いまするけれども、ただいまの労働大臣の御答辯によりまして、政府の労働政策というものが大体判明したと思います。つきましてはこまかい点が若干残つておりまするが、これは一応やめまして、政府専売公社裁定に対する考え、それから労働問題に対する全般的な、総合的な労働政策というものの全貌が、今の御答辯で大体つかむことができましたので、私の質問はこれで終りたいと思います。
  114. 大橋武夫

    ○大橋委員 動議を提出いたします。公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件につきましては、すでに労働委員会、人事委員会、大蔵委員会の連合審査会におきましても、また昨日以来本労働委員会におきましても、十分なる質疑が行われ、大体において質疑事項も尽きたと存じまするので、この程度をもつて質疑を打切られんことを望みます。
  115. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいま大橋武夫君より質疑終局の動議が提出されましたが、ただちに採決をいたします。  ただいまの大橋武夫君の質疑終局の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて動議のごとく決しました。これにて質疑は終局いたしました。  それでは本日はこの程度にいたしまして、次回の委員会において討論採決を行いたいと思いますが、その日時は追つて公報をもつて御通知いたします。  本件の審議にあたりまして、御多忙中のところにもかかわらず、今日まで数回にわたつて御出席願いました参考人各位に、この際委員会を代表いたしまして私からつつしんで御礼を申し上げまする  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三分散会