○
世耕委員 そのお説は一応ごもつともだと思う、無理じやないと思いますが、正しいことは正しく主張するということは、無條件であ
つてもさしつかえないじやないか、征服されていてもいいじやないかということが私の所論です。ことにわれわれは憲法がかわ
つて、インピアリアル・ジヤパニズ・ガバメントからジヤパニズ・ガバメントに
なつた。しかも
アメリカのマツカーサー元帥の指導によ
つて、
アメリカ式国家がここにつくられた。
アメリカの世論の、正しいことはあくまでも貫けという考えが、
民主主義の思想としてここに現われて来たものだと思う。古くはワシントン以来——リンカーンのごときは正義は力なりと言
つておる。正義は力の前に服するのだというのは、あなたの観念論じやありませんか。あきらめろ、もうどうせ無條件降伏したのだからしかたがない、あなたまかせというのではあまりふがいないじやないかと思う。おそらくマツカーサー元帥は、そういうことは好まないでしよう。気に入らなかつたならば、ノーとなぜ言わぬか。
日本国民は気に入らなくてもイエス、イエス、それでイエス・マンと言
つている。ノーという
国民があ
つてこそ、今後の日米
関係も私は力強く結ばれて行くのじやないかと思う。頼りないじやないか。何を言うてもイエス、イエスと言
つている。そこを私は言いたい。しかも、きようも
アメリカから帰
つて来た人の話によると、
日本政府の問題はほんのちよびつと書くけれども、台湾問題に関しては、こんなに広く取上げて書いておるという。
日本では眠
つておる。あなたまかせである。無條件降伏に
なつたということは、われわれをはだかにしたということなんだ。かぜを引いたらはだかにした人に責任があるでしよう。われわれははだかでふるえていても、寒いから着物を着せてくれという要求権まで放棄したとは私は思わぬ。そうじやないですか。そこをひとつ考えてください。私の頑固一徹の主張ばかわじやないと思う。われわれにも
世界中至るところに生存する生存権というのはあるでしよう。この気持がすなわち
世界国家をつくり上げる前提となるのじやないかと私は言いたい。今日はもう飛躍的に、
アメリカにおいてもヨーロツパにおいても、すでに
世界国家ということが首題にな
つて行われて来ておる。原子爆彈時代は御
承知の通りである。この機会に、われわれ頭を抑えられても、苦しくても默
つて引込んでいなくちやならぬという、そういう道徳を私は
日本にあらためてつくりたくない。
アメリカ式をなら
つて、正しいと思うことは大いに主張して、それは誤りであつた、こういうところに矛盾があると言
つて、はいと言
つて引込んでいないで、いさぎよくその誤りを改めさせるところに、われわれ今日
民主主義国家をつくり上げた前提がなかつたか。よけいなことではありますけれども、私は隠退蔵物資の問題について、いろいろなことで
国民に非難された。私は憲兵総司令官に会つたときに、私のや
つておることで少しでも不正なことがあつたら、裁判なんかいらぬからすぐつかまえて銃殺にしてくれ、そのかわりに私のや
つておることが、道義的にも、国家的にも正しいとあなた方が考えられたら、私を全面的に支持してもらいたいと言つたら、オーケーという話が出た。なかなか
アメリカさんはそういう点はわかりがよいと私は考える。私もヨーロツパに長くおりまして、大体
外国人の気分はよく
承知いたしておりますが、あまりにも
日本人は卑屈じやないか。引込み思案じやないか。言うことも言わないで、相手の顔色ばかり見ておるということが、かえ
つて外交上にいろいろ支障を来すのじやないか、かように考えて特にこの点を主張するのであります。御返事をいただかなくても
けつこうですが、そういう点をひとつ御考慮に入れていただきたいのと、もう一つ言いたいと思いますことは、台湾は向うがか
つてに処分していいのだ。それは條約に基いてやつたことだからいたし方がない。しかしながら、ポツダム宣言に基いて、われわれ無條件降伏したということは事実であるけれども、あの当時は、條約文を見ますると、
日本帝国
政府が條約を結んだ。今日新しい憲法のもとに講和会議を開くときは、おのずから立場が違
つておるはずです。しかもそのときに約束したことをわれわれは無視しようというのではない。そのときにやつた誤りをわれわれはうのみにする義務がないじやないか。盗んだというそういう誤つた帝国主義時代のものを、そのまま
民主主義時代の現在においてうのみにする必要が、どこにあるかということが、私の主眼点である。これをまた大きな賠償問題の見地から考えてみますれば、盗んだのならただ返してやればよい。
日本の領土であつたということがはつきりされたならば、結局それならば賠償物資として得られると言えるのであります。そういう
意味合いから、特にこの点は、愼重に、われわれも研究いたしますが、
外務省といたしましても、十分御研究を願
つておきたいということが、私の念願であります。
なお專任外相を置かれて——さらに
予算もこんなちつぽけなことで、気のきいた雑誌を買つたり、出張旅費をとつたらあとはないような、こんなことでは
日本を再建する
外務省として、あまりに見すぼらしいから、飛躍的な計画を立てて、次の機会にでも提出されることを希望して私の
質問を終ります。
〔
主査退席、
北澤主査代理着席〕