○舟山
政府委員 ここ一両年来の金融
政策につきまして、非常に重要性が加味せられて来ましたことは、ただいまの御
質問にも現われておつたところと存じます。二十四年度の
予算が均衡
予算でありまして、その面からインフレの要因が断ち切られた。これに基きまして、経済の基盤がようやく安定の基礎ができまして、インフレの進行が停止されたのでありますが、しかし何分この変化がいささか急激でございましたので、経済界全体として、これに対応する態勢をつくりますまでに、相当の摩擦が起るということはやむを得なかつたことでございます。また急激に
財政によ
つて相当の資金が吸収せられますので、これを埋め合せ、かつ摩擦を円滑ならしめますために、それがすべて金融
政策の任務と相
なつたことは当然でございまして、この意味におきまして、
ちようど昨年の夏ごろから時を同じくして起りました金詰まりその他の声に対しまして、
大蔵省におきましてもいろいろの手を打ちまして、遺憾なきを期して参つたわけでございます。最近の
銀行券の発行を見ましても、十七日に三千三十億ということでございまして、昨年から比べて約百億円くらいの減少を示しているのでございます。これはデフレではないかといつたような御
意見も、あるいはあるかと思うのでありますが、しかし昨年の一
——三月ごろはまだインフレであつたが、本年度の
財政政策によ
つてようやく安定期に入つたのだという見方からいたしますれば、去年の一
——三月に比べるということは、必ずしも当を得ないという
意見もあるわけでございます。しかし日本経済の全体といたしまして、資金量、信用量が急激に収縮いたしましたので、各
方面それぞれ悩みもあるわけであります。またこの悩みを分析して考えますと、従来のインフレ期における資金の非常なだぶつきによ
つて、きわめて楽をしておつた面が、資金量が適正にな
つて参りましたために生ずる苦痛というものも加わ
つているかと思うのであります。しかしまた実際現在の情勢下におきまして、中小企業、零細企業、あるいは中小生活者というものが、相当金融的な苦しみを味わ
つておられることも、十分了察せられるところでございます。昨年の夏以来、
大蔵省といたしましても金融
政策には重点を置きまして、いろいろ施策したのでございまして、その一、二を拾
つてみますれば、去年の夏にはさつそく融資準則を変更いたしまして、丙種産業の優遇とか、あるいは貿易業あるいは問屋卸売業に対する融資準則上の優遇とか、それから証券業者に対する資金の融資準則上の優遇とかを行
つて参り、また金利の低下にも努めて参つたのであります。特にこの
財政資金で、また市場から金融が引上げられることに対処して、
日本銀行から潤沢な資金が金融市場に流れますように、いろいろ配慮いたしたわけでありまして、たとえば
日本銀行の国債及び国債買上げのオペレーシヨンは、昨年中は大体二百五十八億ということにな
つておりますが、このほかにも復金債を六十二億買い上げまして、これだけの金が市中に流れ出ておる。なお
大蔵省から
日本銀行に金の借りやすいように、いわゆる
法律適用の利率を下げまして、またさらに
日本銀行からは積極的に中小金融資金といたしまして、
銀行を指定いたしまして、すなわち興銀とか勧銀とか商工中金とかに対しまして、別わく融資という特殊の中小金融用の資金を供給するというような工作を用いまして、極力日銀から市中
金融機関への金の流れを潤沢にしておるわけであります。なお暮れに至りましては
政府資金も動員いたしまして、国庫資金を
金融機関に預託するという試みは、去年の前半にも実施いたしたところでありますが、昨年末の情勢に対処いたしまして、預金部資金を特に百億円市中
金融機関、特に中小金融と
関係のあります無盡会社とか信用組合も新たに加えまして、これに対して融資をしておるわけでございます。最近の対策といたしましてなおいろいろ計画をしておるのでございますが、まだ発表の段階にな
つておらぬものもございます。たとえば国庫資金の市中
銀行への預託、預金部資金も相当余裕金がございますから、これをさらに追加して市中
金融機関へ預託をするとか、
復興金融金庫が回収その他によりまして余裕金ができ、これを国庫に納入しますまでに相当の期間もございますので、これを市中に還元する方法とかいうようなこと、それからさらに閉鎖
機関にも余裕金がございますので、これを市中
金融機関に放出するというようなことも考えておるわけであります。さらに見返り資金の
方面におきましても、これは国民から吸収した資金でございますので、でき得る限り早く民間に還流せしめるということで、許可その他の手続を急いでおることは御
承知のことと思うのであります。こういうふうに現在の機構のもとにおきまして、でき得る限りの配慮はいたしておるのでありますが、さらに喜ばしいと存じますことは、最近金融界において懸案でありましたいろいろの大きな制度的な、あるいは機構的な問題が着々と解決せられて参つたことであります。委員長の御
質問の中にもございましたように、近く法案を提出して御審議を願うことに相な
つておるのでありますが、
銀行に債券を発行せしめまして、長期資金を供給するという件がございます。これもこの運用をなめらかにするためには、見返り資金でも
つてこれらの
銀行に
出資優先株を引受けしめるということも考えられておるのでございます。大体金詰まりの一つの打開策としては、不動産金融によ
つてできれば低利の長期資金を供給するということが、多年の要望であつたのでございますが、いろいろの見解のもとにこれが妨げられておる。御
承知の
通りそのために勧業
銀行あたりが、長年の不動産金融の経験あるにかかわらず、これがただ普通
銀行としての機能しか発揮できなかつたというような事情があります。この不動産金融という問題は、不動産を担保といたしまして資金の融通を可能ならしめますのみならず、中小企業等につきまして、唯一の担保であります不動産を担保として金を借りることができることになりまして、中小金融上も非常に重要な一つの手段であるのでありますが、これが今回の
法律改正によりまして、勧業
銀行あたりが不動産金融の再開ができまして、その
方面に寄與することが非常に多いであろうと思うのであります。なお大体
法律によりまして商工中金も債券を発行できます。この債券発行に伴いましては、これもかねて問題でございました預金部資金の運用が許可せられる見込みであります。預金部資金は申すまでもなく国民大衆の零細資金の蓄積でありますが、終戰後インフレを防止する意味におきまして、預金部資金は原則として国債の引受けあるいは地方債の引受け、地方公共団体への貸付、こういうもの以外には運用を認めないという
建前がとられておつたのでございます。それが最近預金部の
金融機関への預託が認められたということを契機といたしまして、近くは金融債の引受けも認められる、こういうふうに運用
範囲が広げられて参りましたことは、非常に金融界のため慶賀すべきであろうと考えておるのでございまして、ますますこれが広く認められますように、言いかえますれば預金部資金が眠
つておりまして、国民経済に少しも働かないようなことのないように、私
どもはますます努力して参りたいと考えておる次第でございます。見返り資金の問題につきましても、その放出が非常に遅れておつたことは周知の事実でございまして、せつかく民間から吸收いたしました資金ができるだけ民間に還流すべきであるにもかかわらず、その許可が遅れており
範囲が限局せられておつたために、この本来の機能を発揮することができなかつたということは、多少金詰まりというような問題につきましても
関係があるのでありまして、その見返り資金の運用につきましても、今回
銀行に
出資を認められたということは、まさに注目すべき大きな転換であると思うのであります。その他いろいろ新聞紙上にも伝えられておりますようなこともございまして、見返り資金をいかに有効に使うかということについては、
大蔵省をあげまして頭を悩ましておるところでございます。こういうふうに大きな懸案でございました点が、年末から今度の
国会の御審議を経まして、この春のうちに
組織なり用意なりが整いますれば、今後はますますこれらの
機関を活用し、その力を総動員いたしまして金融の疏通に努めることができることになります。委員長の
お尋ねのありましたように、これらの内容的な大きな変化が昨今起りつつありますことは、国民経済のために非常に喜ばしいことと存ずる次第であります。さらに一
——三月の金融の危機ともいわれておるのでありますが、来年度になりますれば、
予算における公共
事業費あるいは住宅建設費等の散布も着々実行することと思われ、これが国民経済において有効需要を喚起いたしまして、金が再びまわり始めるのではないかというふうにも考えられ、また株価対策というようなものにつきましても、
大蔵大臣は非常に御盡力中でありますので、これもやがて実を結ぶのではないかというふうに考えておる次第でございます。