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池田国務大臣
お答え申し上げます。債務償還千二百数十億円はデフレ的要因であるということを言う人があるのでありますが、私は必ずしもそう
考えておりません。千二百数十億円の債務償還をいたしました
理由につきましては、またの機会に申し上げますが、この千二百数十億円のうち、国債を償還する予定額は大体九百九十億でございます。このうち使途のきま
つている借入れ金の返債等がありますので、国債償還は九百九十億
程度を見込んでおります。しかして今持
つている国債の機関別の状況を見ますと、普通銀行が八百数十億円、預金部が六百数十億円にな
つております。この国債償還をいたしまして、これでデフレ的要因を生み出す危険性は、この金を早く民間に放出しない時間的のずれと、もう一つはこの金をも
つて日本銀行の所有国債を償還して、しかも
日本銀行が貸出しをしなかつた場合のことが
考えられるのであります。従いまして私といたしましては、まず債務償還につきましては、市中銀行あるいは預金部の保有証券を償還することにいたしました。早急に市中に出しますと同時に、また
日本銀行のマーケット・オペレーシヨンをもつと活発にさすために、市中銀行の持
つております国債にかわるに金融債をも
つてしようとしていることは、財政演説で申し上げておる
通りであります。この施策をや
つて行きますならば、デフレ的要因は容易に避け得られると
考えておるのであります。従いまして債務償還をいたします時期並びに
方法につきましては、大体のことは財政演説で申し上げておるのでありますが、今後の金融の情勢を見ながら、適当な措置をと
つて行きたいと
考えておるのであります。
なお見返り資金の運用につきましてお話の点もありましたが、決して見返り資金は遊んではおりません。ただいま
貿易会計より見返り資金特別会計へ繰入れました金額は、一月の二十六日までで千百三十億円にな
つております。しこうしてこのうち六百二十億円ばかりを復金債の償還に充てまして、市中銀行並びに預金部が運用いたしております。また別に鉄道、通信等につきまして年額二百七十億円のうち二百二十数億円をもうすでに使用済みであります。しこうして一般私企業に対しまする直接投資は六十四、五億円も出ております。きようまた日鉄その他の製鉄
関係並びに造船
関係に十四億円ばかりを出してお力ます、こういう状況でありまして千百三十億円のうち七百数十億円を使
つておる。手持ちにありまする四百億円
程度のものも、預金にして遊ばしておるのでなしに、糧券を引受けまして、もし見返り資金が引受けなければ、市中銀行その他が引受けるものをかわ
つて引受けておる。ただこれが直接投資とかあるいは債務償還にまだ行
つていない、あるいは国鉄の方へ出してはいないというだけの問題でありまして、一―三月のうちにおきましては、復金債の償還を二百三十五億円、また国鉄、通信の方に五、六十億円、また面接投資の方に向
つてもなお二百億円近い金を出す、こういう予定であるのであります。そういたし山ますと、千五百億円の見返り資金のうち繰越される金額は二百億前後で、多くても二百五十億くらいになると思うのであります。これを
各国の見返り資金、エイド・フアンドの状況を見ますと、これはほとんど使われていないような状況であります。イギリスなどにおきましては、ほとんど全部を債務償還に充てておる。割によくや
つているのが
日本とフランス。イタリア、ギリシャその他の国々におきましては、まだ半分も使
つていないような状況であるのであります。
関係方面の好意ある御
努力によりまして、大体ほかの国に比べますと、できるだけ早い機会にやることはいいのでありますが、見返り資金の運用の状況が非常に悪いとも実は
考えていない。しかし適時に適当な金額を出すことは、経済再建に最も必要なことでありますから、今後も努めて行きまして、ただいま申し上げたような計画で本年度を越したいと
考えております。