○
丸山直友君 私は、ただいま上程されました
結核対策に関する
決議案について、提案者を代表いたしましてその趣旨答弁を行います。
まず
決議案を朗読いたします。
結核対策に関する
決議案
わが国における結核まん延の現況は、近年やや改善されたとはいえ、なお、昨
年度の死亡者は、十四万に垂、とし、その推定り患人口は百億十万と言われている。
従
つて、その影響するところは、ただに保健衛生の分野のみならず、生活窮乏の因となり、
経済の
復興を阻害し、その
国家的損失は、実に千億を超える国との喪失にも匹敵するのである。
よ
つて政府は、結核死亡率を今後五箇年に半減し、十箇年に欧米文化諸国と同
程度まで低下せしめることを目標として、強力なる
対策を樹立し、これが急速なる
実現を期するため、
予算的その他必要なる
措置を講ずべきである。
右決議する。
さて、
わが国の結核の死亡率につきましては、死因統計の第一位を占めておりまして、死亡実数は
昭和二十四
年度十三万八千七百六十五名でありまして、死亡率は人口一万対一六・八八に達しており、従
つて罹患人口はその十倍、約百四十万くらいと推定せらえておるのであります。戦争と申しますような生活環境の不良化を来す場合は、著しく結核死亡数を増加するものでありますが、
わが国の場合は、戦前二〇以下でありました死亡率が、終戦の二十年には二八・二まで増加したのであります。終戦後の施策、
方針が誤らなかたためとも見られますが、二十四年には、この死亡率は一六・八八と漸減して参つたのであります。これはまことに喜ぶべきことでありまするが、しかし、
他方これをアメリカの三・六、英国の五・三に比較いたしまする場合には三倍もしくは五倍とな
つておりまして、これはまことに遺憾であります。さらに一層の
対策の強化が必要であり、またこの水準に達せしむることは決して困難ではないのでございます。
また結核は、保健衛生以外、多分に
経済的意義を包含しておつのであります。すなわち本病による
経済的損失は、概算いたしますと年間一千億あるいは一千五百億にも達するのではないかといわれておるのであります。もし年間十億もしくは二十五億の
予算を得て、本
決議案の内容に盛られておりますことを実行に移して参りまするならば、年間五百億の損失を防止できると考えるのでございます。その他健康保險、生活保護法等の
支出にも多大なる節約を見ることは明らかでありまして、直接
国家財政の節約に寄與するところ少からざるものがあるのであります。しかるに、現在の結核予防に関しまする
予算は約一億円余りでございまして、まことに遺憾でございます。このゆえに早急なる
対策を樹立いたしますことが必要であり、本
決議案を提案した理由であります。
以下、簡單に具体策について申し述べますならば、まず予防の面におきましては、第一線機関である保健所を、人口十万に対し一箇所の割合に増設することが必要であります。また病気にかか
つてお
つて、みずから気のついておらない患者を発見しまするためには、都道府県知事及び政令の定める市の市長に対して、指定業以外までもの市長に対して、指定業以外までも必要なる健康診断を行い得るようにすること、また病気を発見いたしましたり、あるいは健康なことが証明せられましたことがはつきりした場合においては、その事後
措置として、未感染者に対してはBCGの強制予防注射を行うこと及びその費用は国庫の
負担とすること、一方黴菌をまき散らす危險のあるところの解放性結核患者の法律によるところの収容をなすこと、あるいは家庭内における隔離をなすこと等の結核予防法の全面改正を行うことが必要であると考えられます。これがためには、五箇年間に十二万床の増床を行う目的をも
つて、
施設の増設及び強制的の被収容者に対する
経済的な裏づけがなされなけばなりません。すなわち、社会保險の
拡充強化、傷病手当金の増額、給付期間の延長及び内容の充実、生活保護法の基準額の引上げ等による医療及び生活費の保障が必要であると考えられるのであります。
発病予防のためには、必要ある所に栄養食の集団給食を行い、一方保養所、養護学校、養護学級等を
整備し、虚弱児童等に対する
対策を
確立しなければなりません。またBCGの予防注射に関しましては、もし該当者の八〇%もてもこれを施行することができるならば、二十六
年度には五千六百名の罹病者を
減少するといわれておるのであります。しかるに、このBCGは、
生産よりも、その検定機構の不備のために、その検定に百日以上を要する
現状であります。生命の短い生物でありますこういうものを取扱う上において、その利用の点にまことに遺憾の点が多いのであります。こえは至急
政府において改善せられねばならぬことを強調するものであります。
また治療の方面及び後保護については予防と直結するものでございまして、外科的療法等の新治療法の発達者及をはかるとともに、基本的研究に対する研究費の
補助の増額、新治療薬の研究及び
生産に対する助成もまた考慮せられねばなりません。また営利を目的とせざる結核予防
事業を行う法人に対する寄付金等は非課税となすべきであります。社会保障制度
確立にあたりましては、結核撲滅に重点を置くの
措置が必要であります。
最後に申上げたいことは、これらの法律の改正あるいは
施設の充実等が行われましても、これを運用し、この
実施に当る
技術者が優秀でなければその効果は期待いたしがたいのであります。現在、国立療養所の職員、
技術者の待遇ははなはだ貧弱でありまして、そのために優秀なる者を得るに困難あることは明瞭であります。二十五年一月末も調査によりますと、現在国立療養所における充員率は六二%で、三八%の欠員があるという状況であります。これが待遇の改善をはかるとともに、
他方医師、保健婦その他に補習教育を
行つて技術の向上と充実をはかり、放射線
技術者の身分法をつくる等の
措置もまた考慮せられなければならぬと考えるのであります。
さらに行政機構を一元化し、部局の新設と結核予防
審議会をつくること等によりまして、厚生省内及び関係各省間の結核行政に連絡と統一を與え、その目的完遂のために努力を盡されんことを望むのであります。
以上提案の趣旨は、結核小委員会におきまして
審議を重ね調査を重ねました結果でき上つたものでございまして、それを
基礎といたしたものであります。
政府は最も近き将来において法制的並びに
予算的
措置を講ずることを要望するあであります。本
決議案に対しし総員の御賛同を賜らんことをお願いする次第であります。(拍手)