○砂間一良君 私は
日本共産党を代表いたしまして、
修正部分を除く
政府原案に
反対の
意見を述べるものであります。
住宅問題は今や
日本の重大な社会問題の一つとな
つております。これが解決は焦眉の急務であるということは、益谷建設大臣も、その
提案理由の説明の中で、
わが国の住宅難はきわめて深刻であり、これが解決は
政府の最重要課題の一つであると言
つておるところを見ましても、
政府自身その重要性を認めておるものだと思うのであります。しかるに、
自由党吉田内閣の住宅
政策の一枚看板ともいうべき
本法案は、與党議員瀬戸山君が、
委員会の席上で、羊願を掲げて狗肉を売ると評しております
通り、何らこの住宅問題の根本的解決策とはならない欺瞞立法であります。
今日住宅の絶対的不足は、昨年七月末現在におきまして約三百五十三万戸といわれておりますが、これを十三箇年で建設復旧するといたしましても毎年五十五万戸の新築が必要であります。そのほか、人口の自然増加に伴う住宅不足が毎年二十六万戸、また火災とか、地震とか、あるいは洪水等によるところの損失柱宅の不足が約八万戸でりまして、これらを合計いたしますと、年々九十万戸の住宅が不足して行
つておるのでおります。しかるに、
本法案によりますと、本年度わずかに八万戸の住宅を建設するというのでありまして、これは年々
災害で失われて行く住宅の復興にようやく当るくらいでありまして、今日の住宅の絶対的不足及び人口の自然増加に伴うところの住宅難の
緩和と言うことには何ら役立たないということにな
つておるのであります。
本法案の第一條には、健康にして文化的な
生活を営むに足る住宅を建設するというふうなことをい
つておりますけれども、しかし、その
内容はまことに貧弱でありまして、まことにおこがましい表現と言わなければならないのであります。
政府の住宅
政策を見ますと、この公庫による住宅建設が約八万戸でありますが、そのほか国庫補助による賃貸住宅二万七千戸を加えましてもわずか十万戸足らずでありまして、これをも
つてしましては、今日の住宅不足はとうてい
緩和できないばかりか、いなむしろ、かえ
つて住宅難をますます激化して行くということにな
つておるのであります。
この一事をも
つてしましても、
自由党とその
吉田内閣がいかに住宅
政策に冷淡であるか、また国民正活に無関心であるかということが言えると思うのであります。
吉田内閣と
自由党は、内外
独占資本に対する補助金の支出や、あるいは
日本の直接、間接の軍事基地化を促進するような方面の支出につきましてはきわめて寛大でありますけれど、こういう国民
生活の安定をはかるような住宅問題につきましては、まことにけちんぼうであります。
次に
本法案の
内容について申し上げまと先ず第一に、融資の
対策が住宅の新築に限られておりまして、余裕住宅や、旧軍要施設の改造、あるいは現在住んでおるところの住宅の維持改善という方面には何ら融資の
措置が講じられておりません。これは
自由党が大金持の余裕住宅を解放する積極的な意思がないということを物語るものと言わなければなりません。今日の住宅難がかくも緊急、焦眉の問題であ
つて、しかも新築するということが困難であるならば、さしあたり応急
措置といたしまして、大金持の大邸宅や余裕住宅を解放いたしまして、これを一人々々が借りて住めるように改造する、あるいは旧軍用施設を転用する、また現在非常にぼろぼろにな
つているところの営団住宅、これなんか実にひどいものでありまして、雨が漏
つて住めないような
状態にな
つておる、こういうものの修繕、あるいは維持補修という方面にも融資の道を講じまして住宅難を
緩和すると言う
政策がとられなければならないと思うのでありますが、
本法案によりますと、こういう方面には融資の道が何ら講ぜられておらない。
次にこの
手続上の問題でありますが、これがきわめて煩瑣でありまして、この点につきましては、
自由党の議員であるところの井手君でさえも、驚くべき非能率的
法案というような批判を
委員会でや
つてお
つたのであります。いろいろな書類を添えまして役所に申し込んで行く。またこの役所の判こををもら
つて歩くのがたいへんであります。その申込みの受付を審査する金融機関は、銀行が窓口においてやる。大体銀行が審査するということにな
つておるのでありますが、その審査り條件は三つある。第一は住宅に困
つておる者、第二は世帯主であるということ、第三は返済能力がある者ということであります。一番問題なのは、この返済能力があるということであります。大体建設省において、この住宅金融金庫
法案の施行規則をつく
つておるようでありますが、この施行規則などによりますと、月々の返済金の約八倍に当るところの定收入がなければ貸せないというようなことを考えておるようであります。こういたしまして、実際には銀行が事実上の審査の権利を持
つている。
大体、銀行に審査させるということが不当であります。この銀行というやつは、石橋を叩いて渡るような商売をや
つておるのでありまして、担保のない無産の低收入の勤労者には、法の上では借りられるようにできておりまし手も、実際にはなかなか貸してくれないということになるのであります。また貸付金にしましても、一ぺんにこれを貸してくれるのではない。これを何期にもわけまして、
最後の金は、もう家を立てて、でき上
つて、火災保険をつけた後でなければ貸してくれない。しかしながら、大工や左官りの手間賃というものは毎日々々拂
つて行くのでありますから、こういうようなやり方では実際困る。こういう
手続上の点についても、はなはだ遺憾の点が多いのであります
しかしながら、
本法案の最も基本的は欠陥はどこにあるか。第一に、これは
自己資金がいる、すなわち頭金がいるということであります。木造十坪の家を建てるにいたしましても、少くとも六、七万円の現金を用意しておかなければ家を建てることができないのであります。現在の勤労階級が、あの六千三百円ベースで縛られておるところの勤労者が、五、六万円の金をどうして工面できますか。しかも在宅で一番困
つておるのは、こういう低収入の勤労階級であります。また月々の返済金でありますが、これが地租や家屋税や、これらの諸費用を合算いたしますると、大体毎月千五百円以上返して行ける力がなけれが借りられないりであります。建設省や
国会の専門員室で調べたところによりますと千五百円というような基準が出ておりますけれども、しかし、これはきわめてずさんな計算でありまして、実際には二千五百円から三千円以上毎月返済して行く能力があるものでなければ借りられないということにな
つておる。ここにこの
法案の一番大きな欠格と欺瞞性があるのであります。
今日一番住宅に困
つておるのはだれか、低収入の無産の
労働者であります。そういう一番困
つている人たちが、住宅をつくるための金が借りられない。これでは何にもならない。そうして
政府に聞きますと、そういうものは対象としていない、少くとも一万二千百以上の収入のある中産階級の中以上ぐらいの人たちを対象としておる、こういうことを
委員会におきましても公然と答弁しておるのでありますが、これでは、勤労者にさも住宅を與えるような錯覚を與えておきまして、事実においては與えない。ここに
自由党吉田内閣の最も大きな大衆欺瞞性があると思うのであります。
それから宅地の問題でありますが、なかんずく戰災都市、大都市等におきましては、家を建てるにしましても、この土地の問題が非常にむずかしい問題であります。ところが
本法案によりますと、この土地の収用につきましては何ら法制的
措置が講ぜられていない。
あるいは公庫の余裕金の運用にいたしましても、これは国債を買うとか、あるいは預金部に委託するとか、国庫に預託するとかいろいろありますけれども、しかし、この公庫の金の一部分は銀行に預けることができるという
規定にな
つておる。で、この公庫の余裕金をもちまして、株式が暴落したときの證券
対策資金に使うとか、あるいは銀行がこれを自分のいろいろな資金に流用するという危險性がきわめて多いのでありまして、こういう点におきまして、私どもは、この公庫の余裕金があるならば、これは住宅の修繕であるとか、あるいは補修であるとか、そういう方面に流用してもら
つたらいいと思うのでありますけれども、そういう方面のことは何も講ぜられていない。