○中村純一君 ただいま
議題となりました
電気通信事業の
公共企業体経営移行に関する
決議案の
提案の
趣旨を御説明いたします。
まず
決議案を朗読いたします。
電気通信事業の
公共企業体経営移行に関する
決議案
わが国
電気通信事業は、戰後における当局者の
努力にもかかわらずその復興は容易に進まず、なかんずく電話事業にあ
つては、復旧拡張
計画はなおすこぶる不充分であり、加うるに設備の大半は依然老朽に委せられ、サーヴイスもまたはなはだ低下している状況であ
つて、
国民の
要望に隔たること遠く、延いては産業の振興、文化の進展に悪影響を及ぼしていることは、極めて憂慮に堪えない。
由来
電気通信事業は、高度の公共性を有する一面、その本質はあくまで企業的性格を帶びるものである。この点に鑑み、
政府はさきに電気通信省を設置して事業管理機構の合理化を図
つたのであるが、本事業の経営形態が依然国営に属しておる結果として、企業経営の根本たる会計、経理及び
人事管理等の面は、今なお原則として一般行政機関を規律する準則によ
つて拘束されておるため、運営上活発な企業活動が阻害せられ、本事業の健全な発達に多くの障害を與えているものと認められる。
よ
つて政府は、これらの障害を除去し、本事業の根本的刷新向上を図る目的をも
つて、これが経営形態を公共企業体に移行するとともに、運営諸般の方途についても検討を遂げ、経営上充分な
自主性と機動性とを附與すべきである。
本院は、
政府が速やかに右に関する施策を決定することを
要望するものである。
右
決議する。
以上であります。
申すまでもなく、電気通信、すなわち電信電話の事業が一国の政治、経済、文化活動の根本であり、また
国民生活の
福祉の増進に至大の関係を持つものであることは、これまでしばしば言い盡されたことでありますが、これはもはや單なる謹論ではなく、電信電話の機能の発揮が不十分であるために日々いかに能率を阻害せられ、支障を生じつつあるかということは、われわれが身をも
つて体験しておることであります。
試しに一例をあげて申しますならば、昨年八月の電気通信省による
調査の結果によ
つて見ましても、もし電話が、戰前、すなわち昭和五年——九年程度の疏通状況に復旧しますならば、
日本全国の全事業所を通じて月額約十二億二千六百万円、年額にして約百四十七億円の出張費用以外の有形無形の損失を加算して考えまするならば、電話機能の不良、設備の不十分のために
国民経済上いかほどの損失と悪影響を與えているか、けだし思い半ばに過ぎるものがあるのであります。しかしてこのことは、もとよりひとり経済の分野においてだけでなく、国家、社会活動のあらゆる部面においてまつたく同様の状態にあることは、あえて多言を要しないところでありまして、かようの状態でありまするがゆえに、
電気通信事業の設備を整備し、サービスを改善することは、今日
国民の最も熱望するところであり、まさに與緊の急務であると存ずる次第であります。
諸君御承知の
通り、通くる第五
国会において、
電気通信事業復興促進に関する
決議が本院に上程され、満場一致をも
つて可決され、同時に
参議院においても同様
趣旨の
決議が成立いたしましたことは、まつたくこの
国民の不満が
国会を通じて
政府を鞭撻、督励する声とな
つて現われたものと信ずるものであります。
戰時中の酷使に次ぐ酷使と、戰災による非常なる破壊のため一時極度の麻痺状態に陥つた電信電話が、近時相当程度の回復を示して参りましたことについては、当局の
努力を認めるにやぶさかなるものではありませんが、なお復興状況ははなはだ不十分であるばかりでなく、その設備の大半は老朽のままにまかせられ、サービスの内容ははなはだ低下してお
つて、まことに遺憾な、憂うべき状態にあるといわねばなりません。加うるに戰後電気通信に対する需要及び利用度が著しく増高して参りましたことは、他の理由もありましようが、大局的には、国際競争場裡において敗戰
日本を復興するためには、だれが何と言おうとも、どんな謹論があろうとも、
国民生活のあらゆる分野において最高度の能率を発揮して活動、奮闘すること以外には道がないという歴史的必然から来る現象でありまして、この国家復興上の必然の趨勢に思いをいたしますときには、あらゆる活動の基本である本事業に関しましても、この際これが経営上に一大刷新を加え、その飛躍的拡充と一層の能率的運営を断行するの必要きわめて緊切なることを痛感いたす次第であります。
しかして本事業は、もとより高度の公共性を有するものでありまするが、これとともに、一面あくまで経済的企業であります。十分に企業的に運営されねばならぬ本質を持
つておるものであります。しかるに、今日これが官営で経営されておりまするために、本来一般行政官庁を
対象として制定された諸制度によ
つて拘束せられておりまして、企業的見地から見まするならば、その間多くの矛盾や不合理が存在し、ために本事業の活発な活動発展をはなはだ阻害しておる実情であります。特に事業経営上の根本である会計、経理及び
人事管理の面において最も大きい不合理の存在を痛感いたすものであります。
すなわち、現行
電気通信事業特別会計制度は、名は特別会計でありますけれ
ども、單に一般会計との会計区分の役割を果すにすぎないものでありまして、内容的にはあくまで消費会計的予算制度によ
つて制約せられており、そこには何ら弾力性と永続性を持つた企業会計的特異性は認められないのであります。ことに、ここに大いに留意すべきことは、もつぱら支出規制のための会計制度であるために、も
つて企業経営上の指針となし、また反省の材料となすべき決算がはなはだ軽視せられているということでありまして、これがため、ひいては予算の編成も真に企業的とならず、とにかく形成的に偏しやすいということであります。
次に
人事管理の面におきましては、その任用、昇任、給與等の諸制度がことごとく国家公務員法に基く画一的原則によ
つて律せられておりまするために、真に事業経営の実情に即する
人事管理を行うことができず、ために積極的に経営を合理化し、能率を増進し、あるいは増收をはかり、支出を節減する等の職員の
努力に対して、精神的にも
物資的にもこれに報いるの方途がきわめて乏しく、職員の事業に対する
関心を深め、勤労意欲を向上せしむることが困難でありまして、サービス低下の原因の一班をなしておるということは、はなはだ遺憾に存ずるところであります。
このような根本的欠陥は、官庁機構というわく内に存在しておる限り、これを改善是正することは、従来もしばしば試みられたことではありますけれ
ども、遺憾ながらほとんど不可能であると斯せざるを得ないのでありまして、ここにおいて、どうしても経営形態の根本を改革し、も
つて十分に自主的、機動的な企業活動を行い得るところの態勢を確立するの必要があると確信いたすものであります。
この経営形態の改革については種々の方策が考えられるのでありますけれ
ども、事業の公共的性格、
国民経済の実勢その他の事情をあわせ考えまするときには、今日の段階においては公共企業体といたすことが最も実情に即するものであると考えるものであります。さきに
内閣に設置せられました電信電話復興
審議会においても、久しきにわたる愼重
審議の結果、本事業の経営を公共企業体に移行せしむべしとの答申を
政府に
提出したと承知したしております。
公共企業体については、すでに国鉄、專売公社等の先例の存するところであります。しかして、これらのものに対して必ずしも所期の期待に
沿つていないとの批判のあることも承知いたしておるのでありまするが、私は、今日かような結論を出すことは尚早であると存じまするばかりでなく、それはむしろ、そのつくり方に遺憾の点があり、運用の方法がいけないからであると思うものでありまして、企業体の設立並び運営にあたり、欠陥の所在を徹底的に認識して、この組織、制度、
人事、資金調達方法等の方途につき果敢にかつ強力に企業的要素を盛り込みまするならば、十分に目的を達成し得るものと考えるのであります。
政府はよろしく万難を排して、十分に企業性を持つた公共企業体を設立するとともに、運営諸般の方途についても徹底的な検討を遂げ、是正を施し、も
つて本事業経営の根本的刷新を行うべしと認めるものでありまして、かくのごとくして初めて本事業が国家の復興、発展の基石た得るものと信ずる次第であります。
以上申し上げました理由によ
つて、同志三十一名の
議員相はかり、所属各派の共同
提案として本議案を
提出いたした次第であります。何とぞこの
趣旨を了とせられまして、満場一致御賛成あらんことを希望いたす次第であります。