○田中織之進君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程に相な
つておりまする
長期産業資金調達促進のための
株式対策確立に関する
決議案に対しまして
賛成の
意思を表明せんとするものであります。
本案は共同
決議案でありますために、わが
社会党の要求が全面的にいれられておらないうらみがありますので、この機会に、株式市場対策に対しまするわが党の立場を闡明いたさんとするのでありまするが、今日経済再建の見地から長期産業
資金の調達の必要なことは、きわめて重大な意義を持
つておるのでありまして、この
意味において、今日の株式市場の任務につきまして、社会主義を標榜するわが党といたしましても、單に資本主義経済の機構の一部分であるという理由で株式市場の存在を否定することはできないと信じます。平和的な革命遂行を党是といたしまするわれわれの立場から見まするならば、長期
資金の調達が経済の安定を再建を促進する大きな要件であり、
従つてその役割をになう株式市場の振興につきましては、確かにその必要を認めるものであります。
そもそも株式市場は、資本主義経済下における景気変動を率直に反映して発展して参
つたものであります。従いまして、資本主義上昇期における株式市場は、自由主義の原則のもとに発展することができたのでありまするが、資本主義が崩壊
過程に入りますと、自力をも
つて株式市場を維持することがきわめて困難にな
つて参
つたのであります。特に戰後の経済再建の
過程におきまして、資本主義の本来の機構がその機能を失
つておりますので、株式市場の健全化を維持しようといたしまするならば、戰後経済の特殊性を十分に認識した上で慎重な株式対策を立てなければならないのであります。しかも、戰後の経済の性格が戰前とは大きく異なりまして、資本主義的経済政策をも
つてしては再建が不可能であることほ明白な事実でございます。従いまして、現実の問題として、ただちに社会主義的な経済政策を
実施し得ない今日の状態におきまして、長期
資金の調達機関としての株式市場の役割を十分活用しなければならないのであります。この
意味において、戰後には一つの目的意識を持
つた経済政策上の問題として株式市場対策を考えなければならないと信ずるのであります。
戰後の株式市場の推移をながめまするならば、戰争直後の虚脱状態を脱しました後、昨年の秋ごろまでは相当活況を呈したのでありますが、これは当時のインフレ高進に乗じて現われました現象であ
つて、インフレ收束期に入りました今日、金詰まりから、投資
資金が枯渇したり、あるいは、かえ
つて資金が市場から引上げられたりすることになりまするから、株式の需給バランスが破れて株価が低落することは当然であります。特に戰後、財閥解体によりまして、株式所有者の層が、財閥からいわゆる大衆にかわ
つて参りましたために、株価が低落するとともに、これをもちこたえることができない事実が発生いたしまして、一段と株価の低落に拍車をかける結果を来しておるのであります。従いまして、株式市場を通じて長期
資金を調達するという建前をとるといたしますならば、インフレ收束期に備えた株式対策というものを当然考えなければならないと信ずるのであります。すなわち、ただいま川野氏から提案の理由に
説明せられたのでありまするが、ドツジ・ラインの
実施によ
つて引起された金詰まりが株式市場に影響を與えるであろうことは、これは当然予想されたことであります。従いまして、これに対する具体策を何ら考えることなく時日を空費して、ついに今日の株式恐慌を引起したということは、これはま
つたく
吉田内閣の責任と言わなければならないのであります。
そもそもドツジ・ラインは、資本主義的な原則から見まするならば、これは正統的なインフレ收束の方策と言えるでありましよう。
従つて、
日本経済の実情がこのやり方に耐えられまするならば、資本主義的には一つの
意味を持
つて参るのであります。しかしながら、今日の情勢では種々深刻な問題を生じておるのでありまして、
日本経済の実情に即応するところの修正が必要であります。ドツジ・ラインの修正こそが株式対策の根本であるということを私は申し上げたいのでございます。
今日、長期
資金調達の必要上、株式市場の意義を認めますならば、総合的な経済政策の一部として株式市場対策を取上げることが至当であり、この点について、
政府の施策の矛盾、つまり経済政策における合理性の欠如をわれわれは指摘しなければならないのてあります。言葉をかえて申しまするならば、自由資本主義を基本方針とする
政府の政策には、
日本経済の近代化の基礎である経済合理主義がま
つたく認められておらないのであります。経済合理主養の見地に立もまするならば、今日の株式市場の不振をもたらした根本的な原因が資本の欠乏にあるということは明白であります。つまり、
資金調達の必要額と、これを充足し得る力とのアンバランスの問題であります。従いまして、株式市場に供給される株式数が消化能力をはるかに越しておるという事実がある以上、この現象を何らかの方法において解消させる必要があるのであります。
さらにここで一言いたしますならば、ドツジ・ラインによるところの資本の蓄積の
過程において自己
資金の充実が強く叫ばれましても、それが債務償還等に振向けられて、直接いわゆる設備投資等に向けられる部分が少いところに、やはり今日の株価の低落の一つの原因を生じておるという事実を、われわれは指摘しなければならないと思うのであります。つまり、今日のごとき資本主義崩壊期におきまして自由に放任いたしまするならば、株式需給のアンバランスから、とうてい自力をも
つて株価を維持することができないのでありまするから、適当なる方法において株価を維持する施策が考えられなければならないのは当然でございます。
かように、株式対策についても合理主義に基くところの経済政策の
実施が要望されるのであるまするが、この点につきまして、従来の
政府の施策が
一貫性を欠き、今日まで思いつき的な動きを示したにすぎないことは、これは
吉田内閣の非近代的な性格を
意味するものと考えるのでありまするが、今日、
日本経済に関する科学的な認識を欠く見解が施策を
決定しておることは重大問題でございます。株式対策も、今日まで幾たびか取上げられたりでありまするが、今日の事態に至
つては、きわめて深刻な問題であり、かつきわめて広範囲な問題で、これの及ぼすところの影響が重大な
関係がありまするから、われわれはその趣旨に
賛成するものでございまするが、わが党として、以下要約いたしまして、
政府の施策につきまして若干の注文をつけたいと考えるのでございます。
まず第一に、株式対策は、その主体となるべき証券業者自体がみずからの体制を整えることが先決
條件であると思いまするが、今日の証券業界は、きわめてばらばらな意見と行動によ
つて動いておるようにわれわれは考えるのでありまして、この点に対する調整がまず第一に必要であるということ。
第二には、昨秋行われました国税庁の帳簿検査の結果にきわめて注目すべき事実が現われておるのでありまして、その一例といたしまして、四大証券を初めとして業者の資産
内容や経理状況の
報告については嚴重な検討を要する問題が発生しており、また取引所の役員の中にも、証券取引法によ
つて禁止されておる手張り等を行
つておるということも従来からいわれておることでございまするが、これらの問題に対する処置も必要でございます。
第三には、幾たびが行われて参りましたところの証券民主化運動によりまして証券知識が普及いたしまして、大衆が無批判的に株式を買う結果を今日招いております。そのために、昨年の秋以来の株価の低落によ
つて最も打撃を受けたものが、これらの大衆でございまするが、これに対する保護の施策というものがまた重要な問題にな
つて来るのであり、特にこの点では、プレミアムつきの優良株を社内で処分して、大衆にはほどんど提供しておらないというこの事実についても、
政府は嚴重な監督をしなければならないと思うのであります。
第四には、証券業界におきまして、いわゆる四大証券の制覇が完全に行われておりまするが、それ以外の中小業者の利益が証券業界においても犠牲にされておる事実に対しまして、民主化の見地からこれが適切なる処置を講ずること。
五番目には、資本発行にあた
つて、発行会社はあらかじめ
規定の事項を証券取引
委員会に届けることには相な
つておりまするが、
資金調達後にこの届出事項の
変更が行われておりましても、今日、これら投資家が知る由がないのであります。従いまして、投資家保護の見地から、これに対しましても、こうした届出事項の
変更に伴う危險の救済措置を講じなければならない点。
さらに、いわゆる場外市場として放置されておる自由市場には幾多の問題を生じておるのでありまして、証券取引の健全化をはかる
意味において、これに対する処置も講じなければならない。
さらに株式市場の公共的性格から考えますならば、その構成に、定款にありまするところの理事の四分の三、あるいは監事の三分の二以下の者は、会員である証券業者以外の者から選挙することに相な
つておりまするが、現在、
議長以下二十二名の役員中、証券
関係業者でない者は
日本銀行の
関係者一人にすぎないという事実に対しましても、取引所の公共的な性格から、その役員構成等の民主化についても、
政府としては、ただちに手を打たなければならない問題が出ておるのであります。
さらに、
昭和二十三年十一月以降の証券引受業務は証券業者の專業とな
つておるわけでございますが、今日の証券引受機能を証券業者だけではとうてい果し得ない実情である点より、
資金調達の見地から、この引受機能の充実増大についても速急に施策を講ずることを私は
政府に要求したいのであります。
さらに見返り
資金による証券会社の増資が考えられると聞いておりまするが、個々の会社に国家資本を導入するよりも、売買市場の健全性を維持いたしまして発行株式の消化を促進するということ、その方面に国家資本を利用するということは、これは
自由党の
諸君としても、私は理論的に一貫すると考えまするので、
政府において、この点についての留意をはか
つていただきたい。
さらに最後には、証券取引法によ
つて、証券取引所や証券業者の監督については証券取引
委員会の権限に一応属することにな
つておりまするけれ
ども、今月問題になうておりまするところの証券業に対する総合的な施策は、一体証券取引
委員会の
委員長が責任を持つのか、あるいは大蔵大臣が責任を持
つているのか、この点について明白にすること等が、この
決議案の趣旨を実行する上において最もすみやかに手をつけなければならない問題であるということを指摘するわけであります。
われわれは、以上指摘しましたような諸点についての
政府の急速なる努力を強く要請いたしまして、国民経済内における証券業者の地位を認めると同時に、そのあり方に対しまして嚴重な反省を求め、必要に応じては
政府の監督と指導を強化いたしまして、証券業者がその重大な使命に即応する態勢を実現することによ
つて投資大衆の保護と資本蓄積の役割が十分に果され得るように、
政府において格段の努力を拂われんことを強く要求いたしまして、本
決議案に
賛成の
意思を表明するものであります。(
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