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今澄勇君 私は、緊急を要する現下の
中小企業対策について、次の諸点を
質問いたします。
まず、元来
中小企業対策というものはかけ声の大きい割合に実効の上らないものでございますが、現状においては、まつたく対策らしい対策が実際には行われておらないということが事実でございます。先般来、あらゆる
質疑において、
政府各大臣の
答弁は、経済の安定、生産の復興等の合言葉のメモによる朗読の連続で、
中小企業の三月危機はあり得ないと、楽観そのものの体に見受けられるのであります。しかしながら、生活苦にあえぐ今日の
中小企業者は、それが空念仏であることを十分身をも
つて経験されつつあることは、御承知の通りであります。
そもそも経済の運行については、絶対の條件ともいうべき秩序の維持は、今日の
日本においては、占領軍の権威によ
つて裏づけられておるのであります。
政府の経済政策の失敗が、ただちにパニックとなり、あるいは経済破綻とならないのは、そのためでございまして、しかも、米国よりの今日まで十七億ドルに及ぶ援助
資金は、大部分大産業の助成に用いられておるのであります。この援助物資の裏づけと、今言つた占領軍の権威によ
つて、
日本の経済は、現象的にはどうにか破綻を免れておるというのが実情であります。金融においても、全国銀行の貸付五千八百八十億の中に、一千億円の滯貨金融、すなわち五分の一が非生産的な滯貨の金融に充てられておるということは、企業の合理化などは、ほとんどなす余地のないことを、雄弁に証明しておるものであります。
しかるに
政府は、みずからの政策の失敗には気づかないで、これらの占領下わが国経済の特殊事情による経済的な指数を掲げて形式的な安定論を述べ、あるいはまた、一切を米国の援助に依存する前提條件のもとに復興の確信を述べるがごとき前提條件のもとにおいては、今の
中小企業の深刻なる問題を解決するに、その心構えからして間違
つておると思うが、安本長官の御所信を承りたいのであります。
次に、
政府のインフレ収束策の強行による購買力の低下と極端な金詰まり、さらにこれに加うるに、無計画な統制廃止による自由経済への構造的な変化、それは
中小企業を自然淘汰の焦点に追い込み、株式の暴落、不渡手形の濫発、滯貨の増大、問屋街のダンピング激化、企業の破綻・倒壊等々を誘発しつつあるのでございまして、その惨状は、皆さん方のすでに御承知の通りであります。しかも見返り
資金は、今日まで
中小企業に対してどの程度援助せられておるかというと、
政府のかけ声にもかかわらず、実績はわずかに二、三億円程度の、雀の涙にひとしい反面、税金は、二十四年度の一—三月の申告所得課税が一千八億の厖大な
金額を残しておるのでありまして、その大半は、
中小企業者から一—三月に取立てようといたしておるのであります。ここに
中小企業の三月危機が唱えられておるところのゆえんがあるのでございまして、蜷川
中小企業長官ならずとも、良心と勇気のある人物であるならば、何人が長官とな
つても、これらの
中小企業の危機を訴えるであろうと思うのであります。
これに対し
政府は、これらの長官の免職や、あるいは辞職を強要しておるが、さらば
政府は、一体このような
中小企業の三月危機に対して、具体的な対策をどのように用意いたしておるものであるか、
責任をも
つて国民に約束し得る政策を
説明されたいのであります。総括的には通産大臣、金融関係については大蔵大臣より、それぞれ詳細な御
答弁が願いたいのであります。
第三点は、問題の中心は金融でございます。ここにお見えにな
つておる大蔵次官は、見返り
資金の長期融資や共同融資、日銀の別わく、商工中金、信用保証協会、損失補償制度等々、おそらくこれらの金融対策を述べられるであろうと思うのであります。しかし、それは表面的な
中小企業家への儀礼にすぎないと私は思う。なぜかならば、大蔵大臣は金融資本の代弁者として、手数のかかる、利益の少いこれら
中小企業を冷遇し、これを倒壞に導いてもかまわないという決心ではないかと察せられるゆえんが、次の五点あるのであります。
その一つは、自由経済のもとにおける銀行の任務というものは、安全性と利益率の高いところに金を流すのが当然の姿でなければなりません。しからば、危険率多く、安全性少き
中小企業へ金が流れるためには、
国家が
責任を持つところの
中小企業専門の金融機関たる
中小企業金融金庫等の設立をするか、あるいは少くとも、これらの金融機関の社会化をはからなければ、現実に
中小企業へ金がまわらないのであるが、大蔵大臣は、このような意思は毛頭ないものであると私どもは思う。しかしながら大蔵大臣は、そのような問題について、どのような
見解を持
つておられるか、お伺いをいたしたい。
次は、大蔵省
預金部の金は、御承知のように
国民の零細なる
資金を集めてつくつたものであります。しかも、これが現在各種公団その他には流用されておりますが、その最も零細なる
資金を
中小企業へ融通することこそ、われわれの希望であるにもかかわらず、今日まで大蔵省は、
中小企業関係について、これらの
預金部資金は一文も融通しておらないのであります。これまた大蔵大臣は、このような
預金部資金は絶対に
中小企業へは融通する決意のないものであると断定してさしつかえないかどうか、私は明快なる
答弁を承りたいのであります。
次は、
中小企業等協同組合法による信用協同組合の設立は、その認可権を大蔵大臣が持
つておることは、御承知の通りであります。しかるに大蔵省は、このような組合組織の金融機関を歓迎しないらしいのであります。それはどういうことでわかるかというと、昨年の七月信用協同組合施行以来、今日まで八箇月を
経過いたしております。いわゆる
中小企業家にと
つて、自家専用の機関とも言うべきこれらの信用協同組合の設立が、各地より数十件申請されておるのに対して、大蔵大臣は、事を構えまして、一件も許可を與えておらないのであります。わずかに二月七日に、一件だけ最近許可されておるのでございますが、それは一体どういう
理由に基くのか。口には
中小企業金融を唱えながら、
法律でも
つて保障されておるこれらの信用協同組合に対し、大蔵省が設立阻止の
態度に出ておるということについて、明快なる御
答弁を賜りたいのであります。
ところが、他方
中小企業等協同組合法の施行に伴い、十二月に廃止と
なつたはずの市街地信用組合については、昨年の十一月、奇怪にも、その連合会ご設立に内認可が與えられておるのであります。巷間伝えるところによれば、銀行局長は独断でその認可を関係者に約し、関係者また運動
資金として相当の金品を費消し、今日事志と違い、紛糾をかもしておるとのことであるが、大蔵大臣は、そうしたことがあつたかどうか、この
壇上から明快なる御
答弁を願いたいのであります。これは
国会で定めた
法律の精神を無視し、
中小企業金融に一片の誠意なきものと断ぜられても仕方のない問題である。総司令部よりのメモによ
つて、この連合会の設立は中止と
なつたと聞き及んでおるが、まじめなる
中小企業者は、事の真相を知らんと欲しておるのであります。
資金難にあえぐこれら
中小企業者の信用協同組合設立の努力を踏みにじつたところの、この傲慢不遜な大蔵省の
態度は、はたして
中小企業を救う熱意ありやいなや、言わずして明瞭であろうと存ずるのであります。(
拍手)
昨年末、
政府が声を大にして、いわゆるポリシー・ボード、
中小企業特別わくの融資として、マーケツト・オペレーシヨンによる長期設備
資金の貸出し二十億円を約束したことは、
中小企業の皆様方の、いまだに忘れ得ないところであります。しかるに、現在実行されたものは、これまた、ほとんどその例を見ないのであります。全国八区にまたがるところの通産局を経由してのおびただしき借入れ申込みを、昨年十一月二十四日、
中小企業庁は打切
つております。これらの、非常な手数をかけ、厖大な書類を整理せて査定に合格した企業に対して、今日まで何ら貸出しを行わない。しかも、その貸出しは、今日一割にも満たないのでありますが、出先の日銀
当局は、まつたくあずかり知らぬと、空うそぶいておる実情であります。全国の
中小企業者の期待を裏切り、怨嗟の声は、大蔵大臣に対して限りなき憎惡を含んでおります。まじめなる
中小企業者を欺いて恬として恥じざる大蔵大臣の所信を伺いたいと存ずるのであります。(
拍手)
さらにもう一点、毎四半期三億円程度の協調融資が、ことしより始められることになりましたが、これも例によ
つて、その趣旨は金融機関に徹底いたしておりません。かつまた、四半期三億円の
金額は、まことに僅少であります。大蔵省においては、これを倍額程度に増額する意思があるかどうか。さらに日銀の
中小企業特別融資わくの増大とその取扱いを市中金融機関に拡大の意思があるかどうか。
以上の五つは、大蔵省が、はたして
中小企業のために、表面的な美辞麗句はとも
かくも、腹の底で、その金融難を打開してやろうという誠意があるかどうかという大きな根拠となるべきものでございますから、懇切丁寧なる御
答弁を願いたいと思います。
次は税金の問題でございますが、二十四年度の申告所得で、一月—三月にしわ寄せせられた未納
金額は、前述のご
とく一千八億八千万円でございます。そこで、昨年末、仮更正決定を実施いたしまして、十二月に業者に通告があり、大波瀾を生じましたことは、御案内の通りであります。さらに問題は本決定でございますが、国税庁は、一—三月の徴税の重点を申告納税におきまして1月末の確定申告に基いて再更正決定を強行する
方針と言われておりまするが、その通りやられる
方針であるかどうか、御
答弁が願いたい。もしそうだとすれば、再
審査要求の続出によりまして、徴税旋風の本舞台は三月に集中することになります。
しかも、所得申告の期待倍数は、昨年度所得の、一・六倍を税務署は主張いたしておると聞くのでありますが、これは
国家予算において前年度の一・四倍弱、推定
国民所得において前年度の一・二倍に比し、はなはだしく割高な数字であるので、少しく調査いたしてみたところが、少々の不合理は強引にこれを断行して徴税しろという通達がなされておるとかやに承るのでありますが、そうした事実があるかどうか。あるいはまた、この
予算課税方式による見込み課税の方式が、すなわちこのような間違いを生じたものであるということであるならば、これを修正される意思があるかどうか。減税と言われるのでありますけれども、現実に
中小企業者のもとに與えられる更正決定は、かかる実情であることを大蔵
当局は十分に検討されて、これまた明快なる御
答弁を願いたいのであります。
さらに、三月の徴税がこの年度末に集中するので、これに対する季節的な緩和策、あるいはまた繰延べ納入等の、そのような
中小企業に思いやりのある
措置をお考えにな
つておるかどうか。な
つておられるとすれば、具体的な方策を承りたいのであります。
さらに次の一点は、
政府は本年度中に産業復興公団、繊維貿易公団、鉄工品貿易公団、閉鎖機関整理
委員会、特別調達庁の保有物資を処分するというが、有効需要が極度に減退し、卸問屋の滞貨増大とダンピングの競争が激化いたしておるこの際、数百億に達する
政府の滞貨を放出するということは、これは言わずとしれた重大なる問題であります。
政府のいう滞貨の減少は、大口機関に限られるところの一部的な傾向で、
中小企業庁の統計によりますると、
中小企業の滞貸はますます増大いたしております。この際、
政府みずからダンピング競爭を行い、数百億の民間
資金を
政府物資の放出によ
つて吸い上げるということは、
政府みずからが
中小企業を壊滅せしむるものといわなければならないが、これに対する通産大臣の見通しと対策を承りたいのであります。
次に第六点は、
中小企業庁発行の、一月二十八日付の実態調査
報告によると、最近特に給料の遅配が激増をいたしておるのであります。さきに検事総長から各地に取締りの指令が出たが、いまや、すでにその取締り指令は空文化しております。その証拠には、
中小企業庁最近の統計の数字と、労働者が発表いたした、摘発処理いたしたものとの差が非常に大きく開いていることは、十分にこの間の事情を証明するものと存ずるのであります。
政府の経済政策の失敗のために、現実の問題としては、検察
当局もこれを放任しなければならないというこの事態は、まことにゆゆしき問題でございます。労働大臣並びに
殖田法務総裁の御所見を伺いたい。なおこの際あわせて、これらの労働基準法を守り得ない
中小企業に従事する労働者を
政府の
責任において保護する意思が労働大臣はおありであるかどうか、おありならば、その具体的な方策を示されたいのであります。
第七点としては、三月危機の実相
報告が原因して、
吉田総理側近の朝飯会において、広川幹事長は、蜷川
中小企業庁長官の首切りを
発言されたということであるが、これは真実なりやいなや。しかして、稲垣通産大臣は、その後において、蜷川
中小企業庁長官に対して辞職を勧告せられたと承るが、これも事実なりやいなや。しかして、蜷川
中小企業庁長官は、過日辞表を
提出したと伝えられるが、これまた事実なりやいなや。これは通産次官と官房長官にお伺いをいたしたいのであります。もしこれが事実でありとするならば、吉田内閣は、いわゆる宮廷人事を行うものであり、官吏に対する彈圧を行うものである。これは、立法
政府の與党の幹部
諸君が行
政府を私するものなりと言われても弁解の余地はないのであります。(
拍手)さきには現職の検事総長が
民主自由党より
国会議員に出馬が伝えられる等のことがあり、今日また蜷川
中小企業庁長官の問題等、まことに独裁的な翼賛政治とも言うべき事態が、次ぎ次ぎと現内閣のもとにおいて行われているが、これに対する官房長官の所信を伺いたいのでございます。
最後に、
中小企業庁は、今通産省内における、大企業に重点を置いた行政に対応して、外局として
中小企業の保護と助成指導育成が進められております。しかるに
政府は、この重大なる
中小企業の危機に臨んで、堂々正論を吐くこの蜷川長官に詰め腹を切らせ、しかも聞くところによれば、これを通商産業省の内局に編成がえをいたしまして、
地方組織を大縮小するということが言われておりますが、それは事実かどうか。今後の
中小企業庁のあり方について、通産大臣並びに本多
国務大臣は見えませんが、官房長官より、
中小企業庁の今後のあり方、その機構の縮小、拡大並びに人員の問題について、該細御
答弁が願いたいのであります。もしこれが事実とするならば、たとい内局にまわ
つて、
中小企業局に百八、九十人の人員を擁するようになろうとも、
地方出先の拡充がなければ、
中小企業の振興指導は絶対に不可能であります。内容は、このようなものを包蔵しながら…