○並木芳雄君 私は、
民主党野党派を代表いたしまして、ただいま
議題とな
つております本
動議に全幅の賛成の意を表するものでございます。(
拍手)
実は、この前
国鉄裁定の問題のときにも、私は同じこの壇上に立
つて討論を行
つたのでございますが、あのとき私は單に
政府を攻撃したり、与党を罵倒する討論ではなかつたつもりでございます。今からでもおそくない、
民主自由党の中にも具眼の士があるのであるから、どうぞ私のこの討論を聞いてくださ
つて、気持を翻してもらいたいということを述べたつもりでございます。しかるにもかかわらず、私の切なる願いはいれられなかつた。しかしながら私は、その後時の経過とともに、われわれの気持もくんでもらえて、再びかくのごとき凡失を繰返さないだろうということを期待してお
つたのでございますが、今日同じような性質を持つた
專売公社の
裁定について、同じ凡失を繰返すに至
つては、これは
政府と與党がよほどのボーン・ヘッドであるか、よほど心臓の強いむちやであるかの、いずれかであると断ぜざるを得ず、私は、はなはだ遺憾に思うのでございます。
專売公社というものは
行政上の機関でなく、公共企業体として、全額を
政府は出資しておりますけれども、民間企業のよいところを取上げて、十分能率をあげ、そうして独立採算制のもとに運営を改善して行こう、こういうねらいにおいて、進められたことは、
わが国において初めての試みでありまして、われわれは、これを現在の
政府が、従来監督の地位ににあつた
行政の一機関と同じように取違えておる傾向を見ることは、まことに残念でございます。
公共企業体というものは、国の
予算それ
自体の
予算とは区別して考えるものでございまして、
仲裁裁定案というものが双方を拘束して、そうしてこれに従うべきものであることは、しばしば述べられた
通りであります。ここには司法上、民法上の債権債務の
関係が生ずるのでございまして、もし確立された私有財産権、その債権というものに対して、
政府が干渉するごときことがあるならば、これは憲法違反に問われてもやむを得ないと思うのであります。
裁定そのものに、もし違反の疑いがありといたしますならば、これは、われわれが
国会において論議すべき問題ではなくして、最高裁判所または降伏文書による司令官の指令するところの精神に基いて
審議さるべきでありまして、
裁定それ
自体に対する疑いの問題と今回の問題とを混同して、これを
国会に
提出し、われわれにその
責任を転嫁するごとき感を抱かしむることは、これまた私どもが承服できない点であります。
ただいまの反対討論の中に
予算上不可能であるということを論ぜられておりましたが、この
予算が可能であるか不可能であるかということは、これは当事者がきめることであ
つて、それに対して
責任者であるところの秋山総裁は、明らかに
予算上可能であるということを断言しておるのであります。当事者がきめるところの可能か不可能かどういうことを、舞台をかえてこの
国会の壇上に持
つて来て、そうして
予算が不可能であるからだめなんだというような討論をして、
本件をカモフラージすることは、良識ある人のとるべき
態度ではないと私は思うのであります。
かりに、この
予算が可能か不可能かという
議論は譲りましても、今度の問題の最も重要な点は、
予算の
流用を許す
大蔵大臣の
権限、この行使に対して、これは明らかに
行政処分であり、
国会の関知すべきものではない、
大蔵大臣の
責任において
予算の
流用を許可する、あるいは許可しないというだけの話であ
つて、
大蔵大臣の
責任をも
つてやる
行政処分を、この立法府である
国会に持
つて来て、そうして許可しないことを、あたかもわれわれ
国会議員が承知をしないからできないのだというような欺瞞な
態度をとるところに、われわれがこれに対してどうしても糾弾しなければならない点があるのであります。
従つて、この問題を冷静に考えてみると、これは実は
政府とか與党の問題ではなくて、この
政府のボーン・ヘツドによるところの欺瞞な
態度、
行政処分を
国会の問題にして、
責任転嫁するという
態度、その
責任をわれわれ
国会議員全部が負うか負わないかの問題である。こういう点においては、與党の皆さんにおいても、われわれが分担すべからざるところの
責任を負うべきではないと思うのであります。新しく発足した公共企業体の円満なる発展のために、またわれわれが
公労法の法の精神を生かすために、最高である
国会というものが、行
政府の一長官の
責任の転嫁の場と化せられるならば、われわれとしては、これを断じて排撃せざるを得ないということを申し上げたいのでございます。
われわれは、
従つて、
予算上できるできないの
議論——また秋山総裁は、明らかに
予算上できると言
つておる。あとは、残るのは技術上の問題であ
つて、
予算上の問題とこの技術上の問題とを混合し、
行政処分と
国会の
議決の問題とを混合しておるところのこの
裁定案というものを
国会に上程して来ること
自体が、その
目的が那辺にあるか、われわれは、ひつきようこの
裁定案を
国会において否決させることによ
つて、そうして現
内閣が非常に苦しんでおる——言葉の上では安定した財政、安定した経済と言
つておるけれでも、その底に流れておるところの、実に不安定なもろもろの矛盾というものを弾圧しようとする、むりに押えつけようとする一端であるということを考えざるを得ないのであります。(「三月革命をやりますと言つた方が早いではないか」と呼び、その他
発言する者あり)最近ようやく民主的な歩みを進めて参つたところの労働組合の健全なる進路を妨げるものであり、ようやく花の開かんとする花園を、どろぐつをも
つて荒しにかかろうとするのが、今回の
政府のとつた処置である。われわれとは、
国会の権威にかけて、かくのごとき弱い者をいじめ、正しい者を押えつけようとするような法案の
提出に対し、これを受取ることは絶対にできないのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)
私
たちの生き方は、つとに労資協調の線を強く出しまして、いずれの方にも特にえこひいきをするものではない。資本家、経営者の味方にもなりますれば、一方において労働組合の味方でもある。
日本の困難を救うために、労資協調の線を強く押出すことが緊要であるということを、繰返し繰返し主張しておるのでございます。
従つて、最近の労働運動の傾向を見ますときに、その穏健なる足取りに対して深く敬意を表しておるのでありますけれども、かくのごとき頑冥、固陋なる案というものを
国会が受入れるようであるならば、この調子が出て来たところの足並が再び乱れざるを得ない。これを憂うるものであります。
もとより、最近再び起つたような労働攻勢、特に不法なる行動にも出でんとするがごときものに対しては、われわれは、これをやはり支持することはできない。あくまでも合法的な闘争によ
つて労働組合の健全なる発展をはかる、これを主張しておるものではございますけれども、今回重ねてとつたこの
政府の
態度、そうして、もしこれが
国会において受入れられる、通過せられるようなことがあるならば、これは、あかつきにひたひたと押寄せて来るところのこの労働攻勢の波、今でこそ小さい波ではある。しかしながら、この押寄せて来るところの波に対して、天気予報は何と言
つているか。與党の皆さんも、ぜひ科学的な、合理的なこの天気予報に耳を傾けなければならないと思います。
今は波は荒くないけれども、今夜までにはあらしになるかもしれないと警鐵が鳴
つておる、この天気予報に耳をおおわんとするのが今度のこの
態度である。もしも皆さんが、この多数の力によ
つて押し通そうとするならば、夕べには、今でこそさざなみであるけれども、この波が荒れ狂
つて、皆さんのむりやりに押し流す船というものは、再び帰らざるところの、行方不明の船とな
つてしまう、晩鐘の挽歌になるのではないかということを恐れるのでございます。
そういう点におきまして、私は、どうか誠心誠意——この問題に限
つては、
行政処分と
国会の
審議とを混同しておる、この点を特に留意せられまして、そうしてこの
裁定案をわれわれに上程せずして、
政府が
予算の
流用さえ許せば解決をする。そうして解決をすることによ
つて、
国鉄や専売
公社の問題が、やがては官公吏の賃金ベースに影響するというようなことを考慮する必要はない。第一、これは人事院の方でもちやんと
勧告案を発しておるので、われわれは、人事院の線あるいは
仲裁委
裁定案の線というものを、まことに冷静に考え、また穏健なる
労働者の向上、
日本の民主化のために必要であるということを考えますならば、ぜひこの案を
政府において
撤回して、
專売裁定案の
裁定の線に沿
つて一刻も早く円満なる妥結が行われるよう切に望みまして、私の本案に対する贊成の討論を終わるものでございます。(
拍手)