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1950-01-26 第7回国会 衆議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十六日(木曜日)  議事日程 第十一号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説対する質疑(前会の続)     午後一時四十三分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  一 国務大臣演説に対する質疑(前金の続)
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。三木武夫君     〔三木武夫君登壇〕
  4. 三木武夫

    三木武夫君 私は、新政治協議会を代表いたしまして、吉田首相並びに他の閣僚諸氏による施政方針演説に対して、基本的問題に限り質疑をいたしたいと考えます。  終戰以来すでに五箇年を迎えた今日でありますけれども、対日講和具体化の気運が濃厚になつて参つたことは同慶にたえないことであります。しかしながら、二つの世界の対立が日に緊迫の度を加えつつある事実に対しましては、日本国民として深刻なる関心を寄せざるを得ない次第であります。この国際情勢のもとにおいて講和條約を締結しようというのでありますから、その困難なことは言うをまたないのであります。にもかかわらず、国民の率直なる希望は全面講和にあることは明白であります。單独講和による日本国際的環境複雑性困難性を思うにつけましても、全面講和を期待せざるを得ないのであります。米国を中心とする連合諸国におきましても、この事実に対しましては十分理解を持つていられることでありましようから、全面講和に対し最後まで努力を傾注されるものと期待いたすものであります。従つて、今日の段階におきましては、その連合国の努力に信頼を寄せているべきであつて国際情勢を揣摩臆測して、單独講和でよいのだというがごときことを申す時期ではないのであります。(拍手)しかるに、先日来、吉田首相の国会における発言を承つておりますと、全面講和を希望するが、しかし客観情勢云々と言われて、内心單独講和の見解を持つかのごとき印象を国民に與えていることは、今日のところ、きわめて軽率のことと申さなければなりません。(拍手)対日全面講和がわれわれの一致した要請でありますから、首相は率直にこの国民の要請を世界に表明しておればよいのであります。(拍手)このような首相の態度は、全面講和單独講和かというがごとき先走つた課題が講和問題の中心テーマとなり、不必要に国論を分裂せとめるの結果を招来しておるのであります。どうしても全面講和が不可能であるという場合には、その原因と、そのときの情勢によつて、国論を分裂せしめることなく、国民の公正な判断が下されることと信じます。従つて、今日の段階においては、いやしくも首相たる者が、一方的見解を持つかのごとき印象を内外に與えることであつてはならないのであります。(拍手吉田首相は、口に愼重を唱えながらも、かえつてこの問題を中心に、不必要に国論を分裂せしめ、講和問題のごとき超党派的課題を、ややもすれば内政の争いに持ち込むの結果を招来するおそれあることを警告するものであります。(拍手)  次に、安全保障の問題にいたしましても、戰争と武力を放棄した日本の憲法の精神を貫徹した上の対外安全保障を求めるということが国民多数の意思であります。吉田首相は、施政方針演説において、戰争放棄の趣旨に徹することは自衛権の放棄を意味するものではないとの見解を明らかにされました。自衛権行使の内容について承りたいと存じますが、いずれにしても、憲法の精神にのつとつてのお話でありましようから、その威力の限界は、きわめて明白であります。結局日本安全保障は、自力によつてはいかんともなしがたく、国際的保障を受ける以外に道はない。国際的保障とは、端的に申せば、米国並びにソ連による保障であります。いずれの一国による保障も、万々一平和が破れるようなことがあれば、日本は戰場になるやもしれぬ危險を有するといわねばなりません。(拍手)  日本は、永久にみずから戰争を放棄するの決意を持ちますと同時に、日本を再び戰場にしたくないということが日本国民の切なる希望であります。(拍手)武器を捨てた日本国民のこの希望は、いかに声を大にして世界に訴えても、当然の主張であると信じます。われわれは、日本を餓死より救つてくれたアメリカ経済援助を永久に忘れるものではありません。またわれわれは、一部少数のもりを除いて、思想的には西欧的デモクラシ一に味方するものであります。にもかかわらず、軍事的中立のこの一線だけは、われわれが絶対に守りたい一線であります。(拍手)  挾少な領土と貧弱な資源の上にこの過剰な人口を擁する日本が、米ソ両国にとつて、さほどの戰略的価値があろうとは思われません。日本の中立を維持せしめることが、米ソ両国ともに非常なる支障になつて不可能とは、われわれには考えられないことであります。米ソの両指導国家が、日本の講和問題、安全保障問題につき明朗な解決点を発見し、これをきつかけに両国の国交調整がはかられるならば、一挙に人類の不安と危機は解消するでありましよう。  今日米ソ両国はともに原子爆彈を所有いたしておる。原子戰争が人類と文化の破滅を意味することは明白であります。米ソ両国が平和を希望していることも疑いません。われわれは、米ソ両国が必ず衝突しなければならぬという説にはくみしない。われわれは、あくまでも歴史の理性を信じたいのであります。吉田首相は、国民とともに、日本をめぐる諸問題に、米ソの明朗な解決に、最後まで強い期待を持つべきであります。簡單に、この問題の打開に絶望して、日本安全保障を考えるべきでないと思うのでありますが、御見解はいかがでありすすか。  さらに対日講和問題に関連して考慮さるべき問題は、経済に関する條項であります。これはきわめて重大なる影響を日本国民に與えるものであります。ポツダム宣言により、日本の主権は本州北海道、九州及び四国並び連合国の決定する諸小島に局限されます結果、その制約された領土内において、いかにして八千数百万の人口を養い得るかということは、日本最大課題であります。  われわれの平和国家に対する日本の決意は、断じてかわることはありません。連合国が、この国民の決意を率直に承認されて、日本産業水準に対し、鉄は何トン、船舶は何トン、何は何トンと、こまかい水準を設けられることのないことを世界に訴えざるを得ないのであります。むろん、純粋な軍需工業を再建するの必要も、また意図も、毛頭あるはずはありません。しかしながら、ただ平和産業に対して無制限の生産を許容されなければ、日本国民生活確保生活水準の向上は、とうてい望まれるものではありません。(拍手)  さらに講和條約に対する受入れ態勢としては、日本民主化に一段の熱情を持つことが必要であります。国際的信頼の回復は日本民主化にかかつていると申しても過言ではないと信じます。民主化に対する努力は、国民の厳粛なる義務であるとともに、とりわけ政府国際的責務として、これ以上大なるものはありません。吉田内閣に対する世界の輿論が必ずしも良好でないことは、吉田首相みずから、とくと御承知のことでありましよう。もちろんその輿論の中には酷に過ぎるものも、当らないものもあるが、よつて来るところは、吉田内閣日本民主化の熱意に欠くるところにあることは事実であります。  民自党内閣になつて以来、日本民主化は終つたかのごとき惰性的な安易感が、都市に農村に瀰漫して来たことは、政府として警戒されなければなりません。日本民主化の形式は一応整つたではありましようが、それを自分のものとするためには、今後永続的な努力を必要といたします。よほどの熱意を持たなければ、旧秩序的意識がすぐ頭を持ち上げて来る。従つて日本民主主義の本流を守り、これを徹底せしめるためには、民主主義のために闘つて行く、すなわち戰闘的な民主主義でなければなりません。さもなくば、常に極左極右の脅威にさらされて、民主主義の危機となることは明らかであります。  わが国においても、極左の脅威は、共産党の無謀な戰術が国民の指彈を受けて、一時は閉塞したのでありますが——もちろんこれは、民自党共産党対策の成功でも何でもなく、彼らの無謀と国民の良織によるものでありますが——いつまた攻勢に出ないとも限らない最近の情勢であります。さらに極右の脅威も将来生れて来ないとも眠らない。私は、フアツショ的な勢力が民自党の背後におるなどと申すものではありませんが、いつその勢力が最右翼政党たる民自党を利用せぬとも限らないのであります。  ことに、民主主義の支柱であり、民主革命を通じて確立しかかつた基本的人権が、ともすれば崩れて行く事実をわれわれは各所において見るのであります。かかる状態が反映して、講和條約において、こまかく日本民主化の條項が規定されるとするならば、日本の独立後においても、常に内政干渉の機会を有し、政治自立化は容易に確立されない結果になるのであります。吉田内閣は、この点に関し反省をされますとともに、日本民主化の熱意を、実践を通じて世界に示して、その信頼にこたえなければなりません。以上の諸点に関しては、吉田首相の答弁を求めたいのであります。  次に、現内閣経済政策に関連してお尋ねをいたしたいのであります。首相を初め、安本長官大藏大臣ともに、わが国経済政治も安定してと、きわめて楽観的な見解を表明いたされたのであります。しかし国民は、これを一片の式辞演説なりと、きわめて冷やかにその演説を開いたとは、各新聞紙上においても明らかであります。  なるほど、日銀券発行高は圧縮され、インフレの危險が終息したとは申せ、今日の安定は貨幣的、形式的安定であつて、実質的、積極的安定では断じてありません。均衡予算を御自慢になりますが、これだけの重税の負担を強行して——一月から三月の間に千七百三十億の徴税が強行されようとしております。しかもその税金が、申告研得税にいたしましても、昨年度の予算に比ぶれば、これは一・四倍であり、国民所得の比率は一・三倍であるにかかわらず、前年度の約六割増加の見込課税が一月から三月にかけて強行されようとしておるのであります。こういう重い税の負担を強行して、歳出をそれに合せればバランスが合うのは当然であります。  実質的安定でない証拠には、金詰りの深刻化、株式の大暴落、中小企業の崩壊、滞貨の堆積、未拂金の増大、潜在失業者増大等、その一つをとらえ来ても、わが国経済の危機を予告せぬものはありません。政府の努力と苦心は認めるにしても、この事実に目をおおうて、三大臣が額をそろえて、わが国経済安定せりというがごとき積極的詭弁を罪することは、将来慎んでもらいたいと思うのであります。(拍手)  経済政策に対する現内閣の欠陥は、計画性の軽視にその原因があります。すなわち、経済安定政策にいたしましても、消極的な、すなわち萎縮したままで通貨面財政面を押えて、あとは価格競争による自然のなり行きにまかせ、つぶれるものはつぶれ、残るものは残つて、どうにかなつて行くというやり方であります。これを自由経済方式と言うのかもしれませんが、これでは、毫も責任ある経済政策の指導にはなりません。こういうことでは、経済は安定するものではない。もし、かりに安定すると仮定いたしましても、きわめて規模の小さい、縮小再生産的な安定で、失業の問題一つでも、その安定はただちに破れ去る性質のものであります。  従つてわが国経済は、三年なり五年なりの長期計画を樹立して、大きな見通しを立てて国民にも将来の方向を示しつつ、そのわく内で広く自由競争をやつて行くということでなければならぬと考えます。世界自由経済計画経済の両陣営にわかれて、その中にあつて貧弱な日本がやつて行こうというのでありますから、わが国経済自由経済方式を貫いて立つて行けるものでは断じてないのであります。現に、自由経済自由経済の声に、農民はすでにおびえきつているじやありませんか。こじんまりした安定ではなくして、長期計画のもとに、計画的に生産の基盤を拡大し、雇用の機会を増大して、この上に輸出の増進、国内市場の培養をするような方法をとらずして、八千数百万の国民生活が確保できるわけはありません。  しかるに、首相の一言で復興五箇年計画がとりやめになつたり、経済安定本部の存在が危くなつたりする確信のない態度で、どうして政府わが国経済復興期の責任ある指導力になつて行けるのでありますか。政府は、今後日本経済計画体制をいかに運営されようとするのでありますか。いかなる方法によつて安定恐慌を克服して行くのであるか。さらに輸出に対しては今後重点を置かなければなりませんが、きわめて楽観的な見通しを説明されたのでありますが、その根拠はどこにあるか承つておきたいと考えます。  次に現内閣金融政策についてでありますが、復金融資は廃止をする。預金部資金は数百億の資金を擁しながら、公共団体以外には貸出さない。あれほど池田大蔵大臣が御宣伝に相なつ見返り資金は、昨年十二月までに、産業投資わずかに五十余億円というていたらくであります。かかる金融締め方をやりながら、ほかに機関を設けないのでありますから、産業界金融難に陥ることは当然であります。  資金市中銀行株式市場に求めざるを得ないのでありますが、市中銀行は安全第一であり、しかも短期資金に限られ、株式はまた、証券民主化運動とやらで、買え買えと政府も御宣伝に相なりましたが、大暴落で一般投資家に非常な損害を與え——この対策について、この機会に承つておきたいのでおりますが、とにかく、このようにして株式市場で集めた資金の大部分も、銀行の古い債務の肩がわりに充てられて、政府は新しい設備資金をまつたく枯渇に追い込んだのであります。  この環境下にあつて産業合理化を推進しようというのでありますから、日本産業合理化とは、設備、技術の近代化にはあらずして、首切りの代名詞のごとき観を呈するに至つたのであります。いかに抗弁しようとも、池田大蔵大臣金融措置をあやまつたということは明々白々であります。(拍手)現内閣は、この深い反省のもとに金融政策を再建されなければならぬ責務を持つていると言わなければなりません。池田蔵相も、今後見返り資金預金部資金適時適量に放出すると述べておりますが、昨年度の見返り資金の放出の時間的な大ずれ、また数百億の次期繰越金を持つことなどは政府の怠慢に属することを銘記すべきであります。(拍手)  さらに、昭和二十五年度には合計一千二百六十六億の債務償還が予定されておりますが、その大部分は長期公債償還に充てられるものであります。ここ一、二年の間に全公債の償還をあえてしなければならぬという理由は、どこに一体あるのでありますか。これは相当長期にわたつて債還して行つて一向さしつかえのないものであります。三、四百億程度の債還でよいと思うのであります。こういう余裕があれば、一般会計の分からの債務償還減税基金に充てるとか、積極的な復興資金に充てるとかして、もうと適切な資金使用方法を考えるべきだと存じます。  この均衝予算は、国民からすれば非常に苦しいものであるにもかかわらず、しかしこの上に、これでもかこれでもかと、その周辺に鉄筋コンクリートの建物を建てまわすような池田大蔵大臣やり方は、必要以上にデフレ体制を強化し、また国民の困窮にさらに拍車をかけるものといわなければならぬのであります。(拍手)しかも公債の償還は、日銀保有分償還となれば完全な通貨の收縮となり、市中銀行への償還となつても、日銀借入金の返済に充当して、産業資金とはならないと考えます。  要は、せつかくアメリカの対日援助の中核をなす見返り資金を十全に活用して、長期設備資金中小企業金融資金農村漁村金融資金等市中銀行金融のコマーシヤル・べースに乗りがたい金融を、大幅にこれによつて補足して行く必要があります。今日の予定された中小企業あるいは農村金融の額は少題に過ぎて、増額を必要と考えます。今後の金融政策に対する大蔵大臣の所信を承つておきたいのであります。  次に政府は、社会政策的諸費の支出によつて国民生活の安定を期すると述べられました。失業対策費生活保護費引揚者援護費健康保險事務費等をさすのでありましようが、一週間三、四時間しか働けない者を、もし失業者とするならば、その数は七百万、農村における潜在失業者の数は少くとも二百数十万を数えるでありましよう。実に一千万に近い国民が、働こうとして職なく、失業群として生活の破綻にあつておるという事実、こういう事実からみて、日本社会政策的費用はきわめて不徹底なものであるということを政府は考えなければなりません。  アメリカのごとき安定せる社会においても「厚生国家」を目標に揚げて、社会集団全体の福祉を意識的に目ざしておるのであります。イギリスは広汎な社会保障制度を確立して、イギリス保守党ですら、政変があつて社会保障制度は後退させぬと言つておるのであります。ことに、日本のごとく窮乏せる大衆が存在する社会においては、困難な財政環境の中にあつても、この問題に真剣に取組まなければ、政治の安定は期されるものではないのであります。  政治の安定とは、議員の人数でもたらすものでは断じてありません。社会保障制度に対し、今政府は真剣に取組む時期であります。しかるに、わが国における社会保障制度は、いまだに健康保險事務費を国庫で負担するとかせぬとかいつてつておる、まことに情ない段階であります。過去の債務償還を千数百億果した、超均衡予算剰余金も出るようになつた、こういうことを誇る前に、最小限度においても社会保障制度を確立して、そのためには、少くとも予算の一割程度の支出は今日においても可能であり、かつそれをなすことが民主的政府のあり方でなければならぬと考えます。(拍手)  今日のごとく、私的所有権が支配的な時代においては、社会集団全体の福祉を意識的に目ざさなければ、国家権力少数特権者の擁護に堕することは明白であります。ここにも国民経済計画性を要請される理由があり、民自党内閣の唱えるがごとき自由経済方式が、だれの利益を守らんとするか明白であります。(拍手)  ことに、給與ベースの改訂をめぐる吉田内閣の態度は、一層吉田内閣の本質を語るものであります。なるほど、人事院規則とか公共企業体労働関係法を、絶対多数を擁して言いのがれをしようとするならば、言いのがれ得る余地はあるのでありましよう。しかし、争議権を奪われ、団体交渉権を奪われた公務員が、民間企業の賃金に比し、低賃金のまま放置されていいという理由は、どこにも存在いたしません。(拍手)しかも、それがもたらす意味は、民間企業との均衝をとるにとどまつて一般賃金を上昇させる作用を持つものではなく、賃金と物価のシーソー・ゲームにはならないのであります。  しかも、消費者実効価格の引下げによつて実質的給與の向上をはかると政府は申しますが、第二次的消費物資の多少の値下りは認めます。しかしながら、食糧とか、電気とか、ガスとか、こういう第一時的な消費物資の値上りを、これによつて吸收することはできないのであります。その上に、おそらく財政の剰余金も数百億円生ずるであろうと考えます。加えて、経費の節約とか債務償還費削減等によつて、予算の建前をひどく変更しないでも支出は可能なのでありますから、この際人事院勧告程度に給與の改善を行つて政府の怠慢に基く追加的義務をこの際果すべきであります。  勤労者や農民の犠牲において生産が拡大し、日本経済復興が達成されるものではないことは、だれが見ても明らかであります。われわれは、資本家の利潤の要求を否定するものではありません。しかしながら、一方において、穏健な勤労者が適当だと考える程度に人権の実現を主張するものであります。この両者を両立せしめて協同関係を確保することが可能であり、またそういう方向に戰後の世界は働いておるものと見るのがわれわれの立場であり、わが党の主張であります。政府は、物価と黄金の将来に対し、どういうお考えを持つておるか、この点を承りたいのであります。  さらに農業政策についてであります。この点については、あとで竹山君から詳細に質問がありましようから簡單にいたしたいと思いますが、安本長官は、農業生産の基盤の脆弱さがようやく表面化して来た、これからは災害復旧土地改良などの諸施策を推進して農業経済の安定をはかりたいと、きわめてゆうちようなことを言つておられますが、農村はまさに窮乏のただ中にあるのであります。  現内閣無為無策は、農業政策に最も顕著であります。その証拠には、吉田内閣は今から農政審議会とかいうものを設けて研究しようというのでありますから、これを見ても明らかであります。第一に、政府食糧政策についても確固たる方針を持つておるとは認められません。行き当りばつたりの感が深いのであります。もちろん、占領下という特殊事情も考慮されるけれども、それにしても大きな方針だけは持たなければならないのであります。  輸入食糧が三百七十万トンという大量な割当があれば、すでに政府がいたしておつたいもに対する生産割当のごときも、もういもは将来大して必要がないというような印象を農民に與えて、この実行を躊躇するようなことをなさる。しかしながら、戰時中あるいは戰後を通して、唯一の大増産の目的を達したものはいもであります。政府のこの不明確な、あやふやな態度が、これだけの大増産の目的を達したいも生産基盤を、今やくずさんといたしておるのであります。いも買上げ価格については検討の余地はあります。しかし、食糧としての加工の研究を通じて、いも生産は、日本食糧政策上どうしても確保されなければならぬと考えます。  政府食糧政策は、工業製品の輸出に重点を置いて輸出を振興し、見返りとしての輸入食糧に依存して行こうというのではないかというような感を農民は深くいたします。もしそうでないというならば、食糧自給度を高めるために、政府は全力をあげなければならないはずであります。土地改良事業費公共事業に対する割合は、昨年度は少くとも一九%あつた。今年は、わずかに九%に削減をいたされております。これをもつてしても、現内閣食糧自給に対する熱意の度合いというものは明瞭であります。  また価格政策のごときも、農民の増産意欲を冷却しておることは、これはもうすでに明らかなことであります、アメリカにおいても、農作物については支持価格制度を設けてこれを保護し、イギリス保守党は、保護関税制度を設けて、イギリス農業生産高を五〇%引上げるということを、今度の選挙の重大なスローガンにいたしておるのであります。世界はともに農業を保護する方向に動いておるりでありますが、ひとり日本は、小麦においては五割、米においては七割の高い外国輸入食糧を、しかも数百億の輸入補給金まで出してこれを輸入せしめながら、国内の米価を低位に抑えておるというがごとき矛盾せる政策をとつておるのであります。(拍手)今日のごとく、供出制度価格政策が関連もなく、ばらばらに切り離されておる環境下では、生産費を下まわるがごとき低米価方式は、まつたく合理性を持つておりません。この現状は早急に是正さるべきであります。  さらに、零細な日本の農業がその生産性を高めて行くよりどころは農業協同組合であります。しかしながら農業協同組合の現状は、まさに崩壊する組合が続出しかねまじき現状であります。政府は、協同組合の将来の育成についていかなる見解を持つか、農林大臣及び青木安本長官の御答弁を求めたいのであります。  要するに、この困難な客観情勢下に、吉田首相を初め各閣瞭の苦心は察せられないわけではないのでありますが、吉田内閣は、二百七十名の與党勢力を過信して、その絶対多数におぼれておるといわねばならぬのであります。(拍手)その結果は、きわめて不勉強であります。吉田内閣はきわめて不勉強である。吉田首相が、国会を軽視して、ときどきいらぬとをおつしやつて国会との間に悶着を起しておるようなこともこの端的な現われである。また食確法の改正とか、見返り資金の処置等にも、その不勉強が端的に現われておる。中小企業対策あるいは農業対策についても、民自党内閣の不勉強ぶりが端的に現われておるのであります。政治は数ばかりではない、政治の定定は数ばかりではないということを申し上げて、私の質問演説を終るものであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  5. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 三木君にお答えをいたします。  私の施政演説勉強してごらんくだすつたならば、私の答弁を待たずに、あなたはわかつただろうと思います。私の申したことは、全面講和希望する、但し講和は相手のあることでありまして、一人相撲ではないのであります。連合国との間の談判によることである、すなわち客観情勢によるのであると、こう申したのであります。また、あなたの御質問の中に、全面講和單独講和かと揣摩臆測して云々ということをおつしやつたのでありますが、これはあなたこそ揣摩臆測されるのであつて、私はかつて全面講和單独講和いずれがいいかという命題は出したことがないのであります。(拍手)また、單独講和によつて日本の安全を脅かす、こうおつしやつたのでありますが、すでに私は單独講和をするという腹も何もないのであろます。従つて單独講和より日本の安全を脅かすという御議論は当らないと思います。  また、日本民主化は、はなはだ安易たる気持ではできないのである、その通りであります。ゆえに、私の施政の演説の中においても、対日講和を早く招来せしめるためには、日本民主化に徹底する、日本が戦争放棄の趣意に徹底するということを、長々と申しております。よく私の施政演説勉強願いたいと思います。  その他のことは所管大臣からお答えいたさせます。(拍手)     〔国務大臣青木孝義君登壇〕
  6. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) ただいまの三木議員からの御質問に対してお答えを申し上げます。  まず第一に、計画経済自由経済との限界はどうか、こういう御質問であつたと思いますが、日本経済再建にあたりましては、必要な部門に投資して、生産基礎の拡大とか、あるいは雇用の増大をはかることが必要なことは、御説の通りであります。このために、どんな程度計画と統制が必要かつ効果的であるかということは、経済の実情いかんによつて判断しなければならぬと考えます。政府といたしましては、何の見通しもなく、あるいはまた調整もせずに、経済を自由に放任しようとするような考えはございません。ただ、できる限り個人の自由を活用して、時宜に適した方策をとつて行く方針でございます。  それから第二点でありますが、これはわれわれは、今日経済安定本部といたしまして、一年、二年先の見通しのできる程度、しかも実行可能と考えられる見通し作業、その範囲の計画は、絶えず努力をして立てておる次第でございます。ことに今年度におきましては、貿易の促進であるとか、あるいは建設投資の拡大及び国民生活の安定というような三本の柱を土台といたしまして、ぜひともその目的を達成いたして行きたいと努力をしておる次第でございます。なかんずく、来年度の貿易の見通しとしては、経済演説で述べてあるのでございますが、輸入は約十億ドル、今年度の一割四分増し、輸出は約六億二千万ドル、これは今年度の二割四分増しという予想をいたしておる次第でございます。  なお最後に、農産物の価格は国際価格にさや寄せすべきであると思うがどうか、こういう御質問だと存じますが、農産物の価格政策の問題でありますから、食糧のような物資の価格は、将来の国際価格の価格変動等も予想されます。そのときどきに、これを簡單に国際価格にさや寄せすることは、農業政策上の関係から妥当でないと考える次第でございます。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  7. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 三木議員にお答え申し上げます。  まず第一に、三木議員はやはり悪性インフレ計画経済の夢をまだ見ておられるように私は感ずるのであります。(拍手経済の安定には、ただいままでわが党内閣がとつて参りました方法は、古今を通じて誤らない経済安定方策であるのであります。(拍手)これは各国のインフレ收束の歴史をごらんになつてもおわかりになることと思うのでありますが、とにかくここでは、財政演説並びに昨日の三宅議員に対しましての答弁で盡きておると考えております。ただ問題は、一—三月の金融問題にきまして、ことに税を中心にして非常に御心配のようでありますが、これは今年度の今までの税收入の実績をごらんくださいましたら氷解すると思います。しかもまた、吉田内閣が一—三月何も金融政策をしないという前提ならば御心配でございましようが、われわれは経済安定の方策、また経済復興のあらゆる方策をとつておるのでありますから、一—三月の税の問題あるいは金融の問題には、御心配は無用と思います。詳しくは委員会でお答えを申し上げます。  次に計画経済あるいは統制経済の話がございましたが、計画経済、統制経済、今わが国経済の実情から申しまして、できるものではないのであります。アメリカの援助によりまして、ようやく日本が立つておるのであります。それが今後どいうふうになるかという見通し、いろいろな点がありますので、私は計画経済、統制経済の失敗をまざまざと見ましたから、自由経済のもとにおいて、今までの悪い統制経済計画経済を徐々にかえつつあるのであります。  第三に金融政策の問題でありますが、見返り資金の運用につきまして非常に誤つたお説を言つておられます。予算は、当初は千七百五十億円、補正予算で千四百億円になつております。その金がいかに入つて、いかに使われたかということを、ごらんくださいましたならば、おわかりと思うのであります。何も見返り資金は直接投資にばかり向けるものではないのであります。国債の償還に充てる、これが原則であるのであります。鉄道あるいは通信の事業勘定に入れるのが第二段であります。余つた金を直接投資に充てるのが私の本来の考えであります。しかして、国債の償還、復金債の償還は、予定よりも早く行つております。鉄道、通信への貸付は予定以上に行つております。ただ、或る直接投資の問題は、一年間の金融を見まして、まず十二月の金詰まりを見込んで、これからどんどん産業へ直接投資ができるのであります。三月までをごらんくださいますれば、いかに見返り資金の運用がうまく行つたかということが、おわかりになるだろうと思うのであります。  なお債務償還の問題につきましては、昨日三宅議員にお答えした通りでありまするが、この債務償還を、多過ぎるからやめて減税に充てろとおつしやつても、もう前年に比べて九百億円の減税をしておるではありませんか。今、世界の各国を見てごらんなさい。アメリカにおきましても、歳出は四百二十四億ドル、歳入は三百七十三億ドルで五十一億ドルの赤字を出して、しかもアメリカは、今年度増税をしようとしておるではありませんか。ありがたいことに、日本は九百億円の減税をして、しかもなお債務償還をしようとしておるのでございます。(拍手)  次に社会保障制度給與ベースの問題につきましては、昨日お答えした通りでありまするが、まだ足りない点をここに申し上げます。われわれ実質賃金の引上げに努力しておるのであります。しかして、米の値が上りました、鉄道運賃が上がりました、いろいろなものが上つておりまするが、減税その他によりまして、実質賃金は非常に向上しております。昨年の三月に比べまして、十一月のCPIが非常に少くなつて、昨年の三月を一〇〇といたしまして、昨年の十一月は九三になつておるではありませんか。これだけ実質賃金が上つておるではありませんか。しかしてまた、今年度におきます減税によりまして、米価は上つても実質賃金は非常に上つて来るということは、数字をもつて委員会で御説明申し上げます。(拍手
  8. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 農林大臣は渉外用務のために欠席されておりまするから、答弁は適当な機会に願うことにたします。     〔国務大臣林讓治君登壇〕
  9. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 三木議員にお答えいたします。社会保障制度の問題につきましては、今日の場合ぜひとも必要であるということは、三木君とまつたく同感でございます。しかしながら、何分にも広汎にわたつた問題でありますので、幸いにして先年より審議会がつくられておりますので、その答弁を持ちまして、諸外国等の例なども十分しんしやくいたしまして、それが実行に当りたいと考えております。なお昨日も申し上げましたように、六月ころには、最も緊要と称すべき問題につきましては、さだめし具体的の答申があることと考えております。それらの点を勘案いたしまして、早急に善処いたしたいと心得ております。
  10. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 三木君、よろしゆうございますか。
  11. 三木武夫

    三木武夫君 よろしゆうございます。
  12. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 勝間田清一君     〔勝間田清一君登壇〕
  13. 勝間田清一

    ○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表しまして、総理の施政方針演説並びに経済閣僚の施政演説に対する質問を申し上げさせていただきたいと存ずるものであります。私は、特に今度の池田大蔵大臣演説の内容が、きわめて楽観的であるのみならず、きわめて倣岸なる態度に対しては、まことに遺憾の意を表するものであります。  私は、現在いわゆる経済安定ができておるかどうかについては重大な疑義があるのでございますけれども、インフレーシヨンが終息しつつある事実につきましては、私は、ドツジ氏初め、あるいは吉田内閣の功績をもあえて否定するものではございません。しかしながら、私どもが一番注意しなければならない問題は、池田大蔵大臣が言われるごとくに、通貨の変動が異常な状態を示しておらない、あるいは物価と賃金が完全に安定しておる、あるいは生産の上昇が行われておるという事実のみをもつていたしまして、日本経済が安定しておると断定することは、まことに大きな疑義を生ぜざるを得ないのであります。  われわれは、現在農業恐慌におびえつつあるところの日本農民、街頭にはき出されて今日職業を求めておるところの失業及び半失業の大衆、今日倒産に悩み重税に悩んでいるところの中小商工業者の現在の苦境というものに、われわれは今眼をとずることによつて、現在の経済を論ずることは断じてできないものと考えるのであります。池田大蔵大臣が、これらの事実に眼を覆うて、事実を歪曲し、経済は安定せるかのごとくに誇大に吹聴するゆえんのものはどこにあるかを疑わざるを得ないのでありまして、もしわれわれが、これに対する批判を下すといたしましたならば、いわゆるためにする議論であるとこれを非難いたしておりますけれども、私は、いたずらに楽観を述べる池田大蔵大臣の言葉こそ、ためにする議論であると言わざるを得ないと存ずるものであります。(拍手)  もし、現在経済が安定しておるといたしますならば、この経済の安定をにない得たところの人は、数百万戸の農民と、数百万人の労働者と、数百人の中小商工業者の窮乏と忍耐とによつて得られたところの安定であつて、これに対する感謝と熱意なくしてこれを論ずることは、断じてできないものと思うのであります。一大臣の功績によつてなつたものでは断じてございません。私は、謙虚なる態度によつてこの現実を直視いたしまして、現在の経済を、祖国の復興希望あるものたらしむるために、真摯にして謙虚なる態度を要求せんとするものであります。  まず、池田大蔵大臣の言われるごとくに、はたして通貨は真の安定を見ておるであろうか。私は、昨年末における日本のデフレの状態、なかんずく財政のしわを自己資本の蓄積に過大に求めたために生じたところの株価の暴落、これに対して政府があわててとつておつたところの証券融資の経過を見ましても、また昨年末において、池田大蔵大臣はあえてドツジ・ラインを突破いたしまして、百億の緊急なる融資、いわゆる預金部の資金を放出いたしまして、三千五百五十億という通貨量をかろうじて維持した状態というものを考えてみまして、またその百億の融資も、事実は中小商工業、産業に浸透せずして、銀行の金庫にいたずらに眠つておつた事実に対して、結局三千五百五十億円の通貨量というものは、断じてこれは真の意味の通貨ではなくて、仮想にすぎないと私は考えるものであります。  かかる状態に追い込まれている金融への圧迫、財政が金融へ圧迫するこの事実は、いかに池田大蔵大臣が万能の士といえども、私はこれを防除することはできないと考えるものであります。そこに通貨が異常なる状態を発していないという現象をとらえて、内容にわたつての吟味を行わずして通貨の安定を論議するにおきましては、私は重大なる錯誤を生ずるものと考えるのであります。  現に池田大蔵大臣は、一—三月の危機については心配がないと言われる。私は、巷間伝えられるように、三月危機を必ずしも過大に宣伝せんとするものではございませんけれども、現に起きつつあり、また起きんと予想されるところの三月末における千三百億円の通貨の引揚げ超過、もし三千億円の通貨量を維持せんといたしますならば、少くとも日銀の追加投資は六百四、五十億円を必要とするであろう。現在の金融の状態、なかんずく銀行の資産内容、それぞれの状態から考えて見まして、この六百五十億円の追加投資が可能であるかどうか、従つて三月末における三千億円の通貨量がはたして維持できるかどうかについて、国民経済界は重大なる疑問視をいたしておるのであります。これに対して、池田大蔵大臣は、確固たる具体的政策をもつてこたえるのが当然の責務といわなければならぬと存ずるものであります。  しかも、かかる状態は年々起きつつある状態なのであるから、これを心配する必要がないとの先ほどの答弁でありまするけれども、いわゆる二十三年度春における引揚げ超過は、二十三年度における支拂い超過のあとを受けての引揚げ超過でありますので、そこに大きなデフレーシヨンは起し得ませんでしようけれども、過去二十四年度におけるいわゆるデフレ的傾向を引受けて、しかもこの一—三月に至つて千三百億の引拠川げ超過を起す実情というものは、昨年の実情と本年の実情とはまつたくその基礎を異にしておるものといわなければなりませんので、われわれは、この事実に対して明快なる答弁を要求せんとするものであります。(拍手)  同時に、池田大蔵大臣は、物価と賃金はまつたく安定したと言われました。はたして、物価まつたく安定しておるであろうかどうか。なるほど、現在までに至る物価指数、やみ物価の値下り等々の一般的傾向については、われわれはこれをあえて否定するものではございません。問題は、さようなところにあるのでは断じてないのであります。すなわち、現在の補給金の撤廃が日本の価格体系にいかに影響して行くかという問題は、過去における問題ではなくて、ここ数箇月におけるところの重大な問題なのでございます。  ご案内の通り、肥料はすでにニ割の値上がりを来しましたけれども、三月においては三五%の引上げを行う、八月には、七五%の引上げを行うという事柄には、昨日河野主計局長の御説明でございます。同時にわれわれは、一般産業に重大な関係あるところの鉄の価格差補給金がいかに撤廃されるかという問題は、これは重化学工業に対して重大なる関係を有するものといわなければなりません。御案内通り、七月におきましては、銑鉄が六一%の値上り鋼材は七九%の引上げを予定されておるではありませんか。肥料の農産物に対する影響、鉄の一般産業に対する影響、しかも諸君の御案内の通りに、現在優良石炭の値上りは急速度ではありませんか。これが現在の科学工業に及ぼす影響はいかに甚大であるかということは、皆さんも御案内の通りであります。問題は過去の問題ではなくて、今後いかにこれに処して行かんとするか、いかに物価をこれによつて体系づけて行こうとするか、そこに問題がなければならぬと考えるものであります。  しかも農村におきまして、御案内の通り、一般物価の値上りと農産物との関係におきましては、いよいよもつてシエーレの拡大は増加しておるではありませんか。農村におけるシエーレの拡大、都市における補給金等々に関する一般物価の基礎物資の値上がりの問題、今後における物価の問題は、われわれは重大なる関心を持たなければならぬと存ずるものでありまして、これをいたずらに放置し、自由放任価格を形成して、日本産業の物価水準を自然に生み出して行こうとする政策というものは、そこに重大なる支障を生ずるであろうことを私は考えるものであります。ここにおいて私は、物価がまつたく安定したとの考え方については、むしろ私は重大なる疑問を生ずるものでありますがゆえに、政府は物価政策をいかにして体系化せんとしておるか、この点を明確に知らす必要があると存、ずるものであります。  次に、賃金は安定しているかのごとくに言われておりますけれども、われわれは、賃金が何ゆえに低き水準に——たとえて申しますならば、八千六百二十六円がいわゆる平均賃金でありますけれども、これは生活が安定し、そこに余力ができて賃金が安定しておるものと考えることは大きな間違いでありまして、われわれが考えねばならぬ事柄は、農林省の統計によりましても、農村の潜在的過剰人口は五百万に達するであろうと言われておる。経済安定本部見通しは、いかなるものかは知りませんけれども、三十六万人の二十四年度の失業者に対して、五十六万人ではないかと私は推測されるのであります。かかる失業の産業予備軍が背後に控えておる。それがいかに賃金を押えんとしておるか。また、現在の中小商工業者が団結することがなく、労働者が組織化されていないために強カな賃金要求ができないでおるという事実、しかも官公労は、ごらんの通りに罷業権、団体交渉権は禁止されておるという、かかる実情における賃金の水準というものは、経済外的な圧迫と、かかる客観的経済事情によつて当然抑圧されておるという事実を認めざるを得ないのでありまして、かかる事実によつて形成されておるところの賃金をもつて安定せる賃金ともし考えるならば、われわれは、これこそ大きな間違いといわなければならぬと存ずるものであります。現に、五百二十万の労働者、三十三單産の民主的労組が、いかにこの問題に対して、ほうはいと巻き起るかは、われわれはこれを眼前に見るであろうということをいわざるを得ないのであります。  われわれは、そこにおいて疑問を生ずる事柄は、賃金を上げれば物価と悪循環を生ずると言われる。人事院は勧告する際に、賃金と物価の悪循環は起らないと言われた。けれども、これは政府人事院との関係について矛盾でありまして、人事院総裁は“いかにこれを考えておるか、さらにもう一つ考えられまする事情は、いわゆるこの前の七八ぺースの勧告が政府の一方的な判断によりまして、これが阻止されておる現状でありますけれども、人事院総裁は、再びこの勧告案を国会及び政府に対して勧告する意思あるやいなや明快に答弁願いたいのであります。次に私どもの考えねばならぬ事情は生産の問題であります。池田大蔵大臣は、生産は上昇していると言われる。しかも、十一月が最高の生産額であつたと言われた。青木安本長官は、二割の増産であつたと言われた。しかし、われわれはこれを疑問に考えるものでありまして、両者も御案内と考えるのでありますけれども、いわゆる経済科学局、ESSの生産指数をもつていたしますならば、本年六月が、いわゆる八——十年の平均に対して七八・七、七月が八〇・七、八月が七九・五、九月が七九・〇、十月が八〇・六、十一月が七九・六。これは、いかなる根拠に立つて十一月が最高であり、生産は上昇しておると根拠づけることができるのか。むしろ生産の上昇は、ドツジ・ライン政策実施以前における、すなわち昨年の三月以前における現象なのであつて、ドツジ・ライン修正政策実施後におきましては、出産が停滞的であることは、ESSの統計がはつきり物語つているのではありませんか。そこにわれわれは問題を置いておるのでありまして、現在の池田財政を遂行する限りにおきましては、生産が上昇を見ないのではないかというところに、われわれはそこに重大なる関心を置いておるのであります。この事実に対して、池田大蔵大臣及び安本長官はいかに考えておられるか、  しかも、御案内の通り現在においては、あるいは出血生産であると言われておる。滞貨は増加し、しかも生産は続行し、——これをもつて言うならば、ちようど自転車のごときものであり、走つていなければ倒れる。だから、いたずらに走らざるを得ない。かかる生産の状況というものが、滞貨の存在の背後に、反面生産停滞の條件というものが生れておるものと考えるのであります。かかる生産の状況に対して、大蔵、安本両長官の明快なる答弁を承りたいと思うものでありまして、かかることのために経済が安定せるという考え方に対して、私はそこに疑問をもつがゆえに、先ほど申した通りに、あえて過大に安定を主張しなければならないものは、現に不安定なる條件があるがゆえに、政府は安定を過大に主張しておるのであります。(拍手)われわれは、これを言わざるを得ない。そこに私どもはいかなる考えを待つべきか。  先ほど。池田大臣は、三木氏への答弁に対して、悪性なるインフレ政策に云々と言われましたけれども、さような問題を論じておるのではありません。いわゆる設備が遊休し、数百万の失業者が街頭に投げ出され、しかも滞貨が嚴存しておる社会において、さらに生産水準が七九・六という低水準において、かかる形における経済の安定の施策というものを考えるよりも、より高き水準においてより拡大された生産において経済の安定の確保をする考えがあるかどうか、ここがわれわれの最も考えねばならぬところと考えるのであります。  私の言わんとするところは、設備と労働と滞貨というあらゆる條件を考えてみましてインフレを伴わずして、日本経済の拡大再生産と安定とが——すなわち御案内の通りに、モネタリ・スタビリゼーシヨンではなくて、スタビリゼーシヨン・オブ・エコノミーといものをわれわれはつくり出すことができないかどうか、ここに問題の中心があるのであつて、いわゆる悪性インフレを回顧し憧憬するという態度は、われわれは断じて持つていないということを表明するのであります。  次に重大な問題は、先ほど来問題になつておりまするけれども、吉田財政のいわゆる資本の蓄積と再投資に関する問題であります。これは、すでにしばしば論じられたところでありますので、私は簡單に申しまするけれども、いわゆる大衆課税をしておいて、国家が資本を蓄積して、しかもそれを国債償還という形で銀行にその金をまわして、これを健全金融によつて市中に流して、財政的デフレーシヨンを金融によつて処置して行こうとするこの資本主義形態は、池田大蔵大臣には最も確実なる資本蓄積の形態であると言われました。はたしてわれわれは、それを真実にうけていいだろうか、そこに問題がある。  すなわち、われわれは馬を水辺に導くことはできる。しかしながら、馬に水を飲ませることはできない。現在の銀行の資産状況については、諸君も御案内の通りに、預金に対する貸付は、月末をとつて八割、月央統計をとつて十割に近い状態に相なつておるではありませんか。しかも、現在の公債の保有量は約六百億と言われておるその中の二百億が日銀の担保になつてつておる。現に、銀行の資産内容は悪化しつつあるのでありまして、しかも昨年融資せるところの五千数百億の融資の中で、千億は滞貨融資と言われるではありませんか。  現在、中小の商工業者や、あらゆる産業が、これらの資金を受入れるだけの規模と基礎を持つておるかどうか。かく考えてみまするならば、いかに資本を蓄積して、銀行がこれを投資せんといたしましても、銀行に水を飲ませることはできない。そこに基本的な問題があるのでありまして、すなわち通貨は蓄積できても、それが現物資本として蓄積されることができない限界に達していると見なければならない。(拍手)そこに、いわゆる池田方式、ドツジ方式というものによつて資本蓄積が行われる形が大きな限界に達しておるのではないであろうか。そこを私たちは指摘せざるを得ないのであります。現に、現在の市中銀行が言つておるところのものは、いかに財政のしわを銀行に寄せられてもわれわれはこれ以上引受けることはできないと言つておるではありませんか。私はこの点を指摘せざるを得ない。しかも、池田大蔵大臣は、三宅議員の、減税をいわゆる見返り勘定でやつたらどうかという質問に対して、これを拒絶されましたけれども、三宅議員の質問は、そのようなものではないと私は考えるのであります。すなわち、シヤウプ氏が言つております通り、復金債、国債の償還に多額を支出することは、デフレーシヨンであるのみならず、それは税制改革を困難ならしめ、税を歪曲せしむる原因になると言つておるではありませんか。すなわち、一般会計において今度は七百二十数億の国債償還行つておりまするけれども、このこと自身は、いわゆる税軽減を不可能ならしめ、あるいわ抑圧しておる條件と相なるのであります。  さらにシヤウプ氏が言つておる通り、もし復金債、国債の償還をこれ以上増額しなければならぬといたしますならば、むしろそれは一般会計によらずして、見返り勘定でやつた方が税のためにもデフレのためにも効果的であると言つておるではありませんか。それなるがゆえに、御案内の通りイギリスの労働党は、昨年の見返り勘定八億五千七百万ドルのうち七億五千万ドルというものを国債償還に充てておるではありませんか。イギリスは、見返り勘定の八、九割を国債償還に充てることによつて、税体系を保持せんといたしておるのであります。  本年度における千二百八十億円の甚大なる国債償還を減額する、これも重大なる問題であります。シヤウプ氏の例を一つ申しますならば、御案内の通りに、これは地方債の発行限度を若干上まわる程度でよろしいではないかと書いてある。われわれは、千二百八十億をさらに圧縮する必要があることを考える。もし必要といたしまするならば、むしろ見返り勘定に多額なものを持つて行くことが、イギリス方式に持つて行くことが、減税を可能ならしめるのではないかということに相なるのでありまして、この事実を三宅議員がはつきりと言われたのでありますがゆえに、かかる政策はデフレと税体系を決定する上において重大なる問題でありますがゆえに、池田大蔵大臣の再答弁をお願い申したいと思うものであります。  しかも、かかる蓄積方針のもとにおける銀行社会化がわれわれは必要であると考えますが、池田大蔵大臣は、いわゆる日銀のポリシー・ポードルを改革して、かつて片山氏が内閣にあつたときに言つた通りに、金融は産業に対する奉仕者であるという態度をとるべきであると思う。現在の池田大蔵大臣は、金融界に対する奉仕者であるとの疑惑を受けるものであります。現在の銀行の職員が、一般平均賃金が八千何百円のときにおいて、一万六千円の高賃金をもらつておる。われわれは、これは單なる一例にすぎないと思うけれども、現在は、まさに金融資本、銀行資本の勢力を拡張し、うつかりすると旧財閥の抬頭を許す結果に相なるものと考えるのであります。  われわれがさらに考えねばならぬ問題は農村問題であります。これは簡單に申しておきたいと思いまするけれども、一つの問題は、いわゆる開墾政策と農地改革と、これに対する現在の政府の消極的態度を私は非難せざるを得ないのであります。われわれは、いわゆる地主に蓄積される資本を、生産者である農業者自体に持ち来らすために、土地改革を実行いたしたのであります。それに対して消極化することは、いわゆる農村民主化を後退せしむるところの大きな基礎に相なるのでありまして、しかもわれわれは、現在の開拓政策が、過去百数億を投じて、現在開墾その他土地、財産の評価が百十億に達しておることを見ますならば、かつての開拓政策というのは決して失敗でなかつたことを指摘せざるを得ません。しかも、私たちがさらに考えねばならぬ事柄は、国際小麦協定参加に関する農業政策の問題であります。御案内の通りに、国際小麦協定におきましては、いわゆる最高価格を一ブツシエル一ドル八十セント、最低価格を一ドル三十セントにいたしまして、一年ごとに十セントずつ下げて行くのであります。それが実行せられた場合において日本の国産の小麦価格といかに違うか。  本年においては、確かに三万四千二百円という一トンの値段でありましようけれども、また同時に、国内は二万五千二百四十円であることは御案内の通り。もし小麦協定に参加するならば、日本のシフ価格は、最高において二万九千三百四十円、最低価格において二万五千三百八十円、しかもこれが、一年に十セントずつ下つて行くといたしますならば本年の価格が、国内産小麦価格とちようどとんとんに相なるのでありまして、もしこれが、最低価格で一年に十セントずつ下つて行くといたしますならば、いわゆろ主食の値段が外麦の圧迫を受けるという状態は一両年に迫つているということを、はつきり言い得られるのであります。  かかる状態のところにおきまして、肥料の値段を三割五分とか七割上げるという状態が現に存在している。この肥料の補給金撤廃と値上げという問題と、国際小麦協定参加とい問題は、絶対に相矛盾する條件ではないか。われわれは、さような條件を考えてみて、今後の農産物価格の政策をいかにとつて行くか。しかも、農業恐慌対策をいかにとつて行くかということを明確にいたすべきあると考えるのであります。  なおわれわれが一番最後に注意をいたさなければならぬ問題は、日本の産業構造に関する問題であります。現在円レートの維持がいかに困難であるかという事柄は、ポンドを切下げた諸国家におきまして、もはやポンドを切下げた有利な條件というものは、ほぼこれを解消するに至りました。そうしてポンド切下げ以前の状態が現世界に起つていることは御案内の通りであります。  しかも現在においては、補給金の撤廃、これも一つの悪條件であることは御案内の通りであります。現在銀行がいわゆる採算主義を強行していることも事実であります。これらの事実が産業合理化となつて現われることは、言われている通りであります。しかもそれが首切り、労働強化等々となつていることは御承知の通りであります。しかもそこに生れて来ることは、下請工業に対する責任転嫁の過程であります。現在下請工業におきましては、旧態依然たる封建的支配関係が、再び復興せんといたしているではありませんか。産業における構造、低賃金、低米価、農村における五百万人の潜在失業者、零細化、過小農化、この事実を諸君は否定するわけに参らぬと存ずるのであります。  しかも、われわれは考えねばならぬ事柄は、今度食糧が三百七十五万トン入る。この三百七十五万トン入つて食糧が改善されることについては、われわれは決して反対するものではありませんけれども、いわゆるローガン方式によつて占める、このいわゆる食糧の地位が過大に高まつて行くために、日本の貿易、なかんずく輸入の構成がきわめて不利な、すなわち過去へこれが逆もどりする可能性を持つているのであります。食糧が多く場をふさげばふさぐほど、建設資材の輸入はそれだけ防除されて、輸入の構成は逆転しつつあるのであります。  しかも、現在補給金の撤廃、炭価の植上り及びアジア・ブロツク経済における競争力等々、しかも政府産業合理化の観点から見まして現に起りつつある問題は、重工業の発展の阻止と機能を失いつつあること、軽工業が逆に進展せんとしていること、日本の産業構造がせつかく重化学工業への編成を遂げようといたしましたけれども、これが再び軽工業化へ逆転せんとしている傾向は農耕であります。低賃金、低米価、過小農、下請工業等々のあらゆる條件を考えてみますならば、日本の産業は近代化民主化方向に進んでいるのではなくて、如実に非民主的な、封建的な過去へ日本経済構造は移りつつあるということを、われわれは否定することはできないのであります。(拍手)かかる事実の上に、平和條約の締結であるとか、あるいはいたずらなる楽観論を説くという根拠が、私はわからないのであります。  私は、日本経済のかかる事実を民生化し、しかもこの根拠の上に立つて行くところの條件を検討して参りますならば、日本の全産業構造を維持する上におきまして、全面講和がいかに必要であるかということが裏づけられると思うのであります。われわれは、この非民主化の傾向はフアシズムの温床であると考えるものであります。かかる事実の上の平和條約の締結、あるいは全面講和経済的な必要條件、かかるものを考えて来る場合における吉田総理の責任は重大であると考えざるを得ません。吉田総理の所感を承つて私の質問を終ることにいたします。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  14. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) ただいま勝間田君からして、日本経済は不安定の状態であり、日本の工業その他は、最近において、はなはだおもしろくない状況にあるかのごとくにお話でありましたが、これに対して私は、これまで申した通り、賛成を表するわけには行かないのであります。私は、この現状において講和條約に臨んでも決して御心配のことはないのみならず、日本民主化に徹底し、軍備、戰争放棄の原則をあくまで持つてこの講和会議に臨むならば、日本に同情のある、日本の事態を了解しておる列国としては、必ず日本希望国民希望する條約が締結し得ると私は確信いたします。(拍手)     〔議長退席、仮議長着席〕     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 勝間田君の御質問にお答え申し上げます。  御質問の第一点は、通貨の問題、ことに一—三月の問題であると思うのであります。三月までに三千億円の通貨が保てるか、しかもその論拠といたしまして、一—三月の政府の引上げ超過千三百億円と計算いたされております。しかしてまた、日銀の国債買上げ、あるいは一般貸出しを六百五十億円と計算しておられるようでありますが、私はその根拠がわからないのであります。私の計算によりますれば、昨年の一—三月におきましての政府の引上げ超過は千二百七十億円であります。しかして、ただいま私の見込みでは、今年は三百億円が減りまして、九百七、八十億円かと思います。しかしてこの材料は、まだ未徴收になつておりまするところの租税が二千億円足らずあります。しかしこれは、昨年の租税は千六百数十億円あつたと思います。租税は二千億円ふえましたが、十二月までに相当税金を徴收しておりますので、一—三月に徴收するパーセンテージが非常に少いのであります。しかしてまた、預金部の預金がどのくらい集まりますかということもアンノウン・フアクターであります。また見返り資金がどれだけ出るかということにつきましても、向うとの関係がありますから、はつきり申し上げられませんが、五百億円程度見返り資金が出ることを十分期待し得るのであります。かく考えてみますると、貿易会計の引上げ超過も前年に比べて多くはなりますが、別に供出米の三百万石余のずれがございまして、政府の支拂いが多くなります。こういう計算をいたしますると、千億円を割ることは必定であるのであります。私はまた大蔵大臣として、財政金融の円滑をはかるために、そのくらいの仕事はできるのであります。(拍手)先ほども申し上げましたように、決して御心配はいりません。  千三百億円の引上げ超過でないと同様に、また六百五十億円の日銀の国債買上げ、あるいはマーケツト・オペレーシヨン、これは困難であります。私の計算では、国債の買上げは、すなわち祉債の発行状況、長期設備資金の状況によりまして、二百三、四十億かと考えております。ただいままで話がついているのは二百億でございますが、二百三、四十倍、まず二百五十億は国債の買入れができましよう。しかしてまた、設備資金の貸出しの問題につきましては、二百億程度はやつてみたいということになりますと、あなたの六百五十億は四百五十億になります。従いまして、一—三月の金融は今申し上げましたような状態でございまして、万全を期しつつありますし、また期し得られる確信であるのであります。御了承願いたいと思います。  次に、補給金を撤廃したならば非常に物価に影響するというお話でございます。この問題は安本長官からお答えを申し上げてもいいのでありますが、補給金問題に過去一年間苦労した私として意見を申し上げる。御承知の通り補給金……来年度残つておるのは肥料と鉄とソーダだけであります。ソーダは問題になりません。しかして鉄、肥料がどれだけ米価に響くかと申しますと、これは御承知の通り、ほとんど問題になりません。たとえば、一反から米が幾らできて、一反に流安をどれだけやるか、四千四百五十円の米価に、肥料の占める地位というものは非常に少いのであります。(「四千二百円だ」と呼ぶ者あり)俵代を入れております。そういう状態でございまして、鉄なんかにつきまして大した影響はございません。主食の米価につきましては、大体一月に決定いたしますときに、できるだけの資料は入れて計算いたしておりますから、補給金によります大した物価の異動はないと考えております。  次に資本の蓄積、減税の問題、あるいは銀行の資産状態、滞貨金融の問題、これも要するに国債償還といいますか、債務償還の問題と関連しますから、私の考えを一括して申し上げます。資本の蓄積は、国民の協力によりまして非常によろしゆうございます。私は、昨年の議会におきまして、貯蓄目標を二千五百億円とし、実際二千三百億円集まるだろうということを申しまして、それは楽観過ぎる、二千三百億円の貯蓄はできない、銀行家も言つているように、千七、八百億ではないかという、非常な強い反対論があつたのでありますが、どうでございます、一年足らず、十二月末には、二千五百億を突破いたしまして、三千百八十億の貯蓄ができたのであります。(拍手)この貯蓄は、四月から十二月までに三千百八十億円、こういう貯蓄ができた。資本蓄積は非常に順調に行つております。私は、今後も経済が安定し、ほんとうに財政ががつちり行くならば、資本の蓄積は十分できると思うのであります。  従いまして、預金がふえた、そのふえた金を、皆様方のお考えになるように極力貸出しに向けております。従つて、勝間田君のおつしやるように、預金に対して八十何パーセントの貸出しがあるということは不安定だとおつしやいますが、預金ができた場合に、買おうにも国債はない、復金値は償還する、地方債は制限する、こういうときには有価証券がないのでありますから、貸出しに向けるよりほかにありません。また銀行が貸出しをしているからこそ経済復興ができるのであります。預金に対しまして貸出しの比率が多いからといつて、決して心配はいりません。過去の歴史を見ましても、昭和元年から四、五年までは、預金に対しまして七、八十パーセントの貸出しがあつたのであります。政府が赤字公債を出し始めましてから、民間への貸出しよりも国債を買え、あるいは復金債を買えと言つておる。預金に対しての貸出し率が少くなつたので、これが正常——今の状態がほんとうの状態であるのでありまして、決して銀行の資産内容は心配はいらないのであります。  また滞賃金融の問題もありまして——しかし滞貨金融の問題は、去年の八、九月、十月ごろの問題で、帯貸はもうふえておりません。貿易はどんどん出始めましたから、滞貨はふえておりません。しかもまた、金融をどんどんつけておりますから、今はそう心配することはいりませんが、滞貨もある程度あります。しかし、滞貨というものの定義をどうするか。昔は金融の常態のときは、三箇月くらいのものを滞貨としておりましたが、今は一箇月あるいは一箇月半くらいで滞貨にしてしまいます。だから、滞賃幾らあるかというときには、観念をきめて行かなければならぬ、今の観念で申しますと、昨年の十月ごろよりも渋つて来ております。しかし、これをおろそかにはできませんから、われわれは、これから滞貨金融につきましても万全を期しまして、そうして御期待に沿いたいと思うのであります。(拍手)  なお最後に、シヤウプ博士が債務償還はあまりする必要はない、こういうお話。勧告書に出ておりますように、シヤウプ博士は、三百五十億程度債務償還が適当だろうということを勧告書に書いてあります。これは御承知の通りである。私は、これから千二百八十億の債務償還をした根拠を申し上げます。まず五百億というものは見返り資金で、これは勝間田さんも問題ないと思う。次に二百六億と、二十億余の、財政法によりまする償却は問題になりますまい。それだつたら、千二百八十億で勝間田君の議論になる点は、一般会計償還するところの五百億が問題である。シヤウプ博士の三百五十億と、私の五百億と、隔たるところ百五十億、この百五十億を説明いたしましよう。一般会計の方へ復興金融金庫から繰入れます金は——よろしゆうございますか、(笑声、拍手)百八十七億であります。一般会計に持つて行つて復金から繰入れます金は百八十七億であります。百八十七億を繰入れ得るのは、今年度見返り資金で復金債を償還して、それが返つて来るのであります。もちろん百八十七億が全部とは申しません。一般会計から三百億円も昨年繰入れましたし、あるいは今までに出資を数百億円しておりますから、百八十七億の繰入れの分は、アメリカのエード資金から繰入れるものが百億を計算すべきだと思います。そういたしますと、シヤウプ博士は三百五十億、池田は四百億、五十億の違いであります。私は、シヤウプ博士の言う通りにやつたとは言いませんが、私の考え方はシヤウプ博士と合致したのであります。(拍手)しかもまた、中央地方を通じて、悪性インフレをほんとうの安定、デイスインフレに持つて行きますのには、地方債で三百億なり三百五十億を発行すれば、国の方で国債を償還するのも、全体として債務償還しないということになるではありませんか。しかし私は、七百億あるいは九百億の減税ができなければ、シヤウプ博士が三百五十億の償還をしろと言つてもできませんが、七百億から九百億に相当する減税をしたのでありますから、この際三百五十億程度の実質上の債務償還は適当であるという考えのもとにやつたのであります。(拍手)  次にポリシー・ボードの制度を改正したらどうかというお話でありますが、私は、今のポリシー・ボードは金融家から二人、産業家から二人出ておりまして、大体所期の目的を達しておると思います。悪ければ直しますけれども、ただいまのところは、あれでいいんじやないか。私は決して民主化でないということは考えておりません。  なおついでに、銀行の職員の給與が一般の給與よりも高いじやないか、大蔵大臣給與を上げることをやつておるじやないか、こうおつしやいますが、決してそうではないのであります。新聞でごらんの通りに、絶対に銀行の職員の給與を上げない。上げるときには承認を得ることというので、さしとめております。しかもまた、どうして八千四百円より多額、一万円以下かと言うと、あそこに勤めておる人の年齢、教養が違うのであります。御研究を願います。しかし、私は低いとは思いません。できるだけ下げたい。しかも私は、金利を引下げるべく非常に強力な施策を講じてやつておるのであります。決して大蔵省は金融費本家の走狗になつていないことを、ここではつきり申し上げておきます、(拍手)     〔国務大臣青木孝義君登壇〕
  16. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) ただいまの勝間田議員の御質問に対してお答えを申し上げます。  まず第一に、生産上昇の状況は、数字の点で政府の言つておることが違つておりはせぬか、こういう御質問があつたと思いますが、これは勝間田議員も御承知の通りに、経本の統計で私どもは申しておりますので、おつしやる統計とは大した違いはございません。ごくわずかな、微細なものであります。御承知の通りに、鉱工業生産は、ドツジ・ライン採用以後においても着々増加を示しております。すなわち、昭和——十年、この平均を一〇〇とした経本指数によりますれば、二十四年五月が七三・四、これは同年十一月には八〇となつております。そうして、これが戰後の最高であり、これを二十三年十一月に比較いたしますれば二一%の増加であります。特に銑鉄であるとか、銅材であるとか、あるいは自転車、セメント、それから板ガラス、綿糸等三十一品目が、十一月において戰後の最高記録を示したことも御承知であろうかと存じます。さらにドツジ・ラインの採用と單一為替レートの設定によりまして、企業の合理化は大いに促進せられております。今後国際市場における競争力を伸張させるためには、いま一層の企業の合理化が要請されるのでありまして、政府、業界一体となつて努力しなければならないと存じております。  昭和二十五年度における有効需要の問題でありますが、これは財政からの投資、支出見返り資金、その他設備資金の供給及び輸出増大等について一層の改善に努力いたしたいと存じております。これを基盤といたしました生産見通しを主要物資について見ますると、石炭四千万トン、普通鉄鋼材は二百五十万トン、それからセメントは四百万トン、綿糸が五億ポンド、これらの生産が見込まれまして、総体として二〇%程度生産増加が見込まれる次第でございます。  それから第二点でありまするが、三百六十円の為替レート維持の條件はその限界に達しておる、積極的レートの維持方針はどうか、こういう御質問があつたと存じます。昨年秋の、ポンドを初めとする各国通貨の切下げ、最近における国際物価の低落傾向等によりまして、わが国産業——直接的には輸出産業は、相当合理化を要請され、また合理化の実績を着々と示して参りました。最近の状況を昨年初めと比較して見ますると、たとえば、石炭は一三%、アルミニウムが一五%、それから銑鉄が一二%、銅材が八%、板ガラスが一〇%、この程度のコスト切下げに成功した模様であります。しかし合理化の現状は、国際水準と比較すると、まだ十分とは申せません。またその方法も従来とかく、人員整理であるとか、あるいは事業の縮小等の安易な方法にたよつて来たきらいがないとは申せません。今後産業度の向上であるとか、あるいは技術の改善、新式機械採用等積極的な合理化方策を講ずることが必要であり、政府といたしましても、これが資金の確保等、極力これの推進に努力して、三百六十円為替レートを堅持して参りたいという考えでございます。  それからその次は、物価は安定していないと思うがどうか、こういう御質問であつたと思いますが、最近の物価指数、CPI等を見まするのに、物価は大体安定して来ていると考えます。また今後におきましても、商品の需給が大体緩和している点から考えまして、物価は安定して行くと考えられます。補給金の撤廃であるとか、物価統制の廃止については、経済安定化の速度とにらみ合せまして、漸進的に愼重に行つて行く方針であります。それから農産物の価格につきましては、バリテイ計算の方式をとつておりますから、鋏状価格差、いわゆるシエーレの拡大は避けられると思つております。補給金の撤廃につきましては、その影響をも考えまして、漸進的に行つて参る考えでございます。  次に自由経済の考え方は、国内経済のアンバランス、いわゆる国際経済の制限されている今日では不可能ではないか、こういう御質問であつたと存じます。日本経済自立化のためには、国際競争に耐えて、進んで行けるような経済態勢を整える必要がある。これがために、めくら貿易の打開に極力努力いたしますとともに、国内的には、障害となるような統制は漸進的に解除して行く必要があると考えておる次第でございます。(拍手)     〔政府委員上野陽一君登壇〕
  17. 上野陽一

    政府委員(上野陽一君) 勝間田議員の御質問にお答えいたします。  昨年末、人事院は、給與ベースの改訂について国会及び内閣に勧告をいたしましたが、こちらの人事委員会におきまして、私どもの側から御説明申し上げだままで、まだ何らの討議にも入つていない状態でございます。私どもといたしましては、あの遠慮深い給與引上案が一日も早く実現されて、わが愛する公務員の生活に多少のゆとりを與えたいと念願するだけで、ただいまのところ再勧告をいたす計画はございません。  また物価との悪循環についての御質問でありましたが、これが民間産業人の給與でありますと、給與の引上げそのものが生産コストを高めることになりまして、ただ購買力を増加するばかりでなく、資金の引上げそのものが物価を高くいたしますので、ニ重の原因になつて参りますが、公務員の給料は、これとその性質を異にいたしまして、ただ購買力が多少高まるだけであります。その購買力が全部物価にまわりましても、私どもといたしましては、物価を引上げるほど大きな影響はないということを計算いたしまして、あの給與ベースを勧告いたした次第でございます。どうか慎重ご審議の上、一日も早くこれが実現されんことを希望いたします。(拍手
  18. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 農林大臣答弁は適当な機会にお願いすることにいたします。——勝間田君よろしゆうございますか。  有田喜一君     〔有田喜一君登壇〕
  19. 有田喜一

    ○有田喜一君 私は、民主党を代表いたしまして、吉田総理の施政方針演説並びに池田、青木両大臣財政経済演説に対し、若干の質問をしたしたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは、過般の施政方針演説において、政府は、これからいよいよ復興再建へ歩みを強く進めるのだということを力説されておるのでありまするが、しからば、わが国産業経済復興の目標を政府はどこに置いておられるか、復興を目ざしての産業経済の規模をどういう目標に置いておられるのか、また将来の産業の構造のあり方をどうお考えになつておるのか、またわれわれ国民生活水準の目標をどういうところに置いておられるか、これらに関して具体的にお聞かせ願いたいのでございます。  過般の施政方針演説は、いずれも足の地につかない、抽象的な楽観論ばかりでありました。ただわずかに青木安本長官が、二十五年度の鉱工生産見通しと貿易の見通しについて、若干触れただけでありまして、われわれ国民の最も知りたいところの基本的な国民経済水準とその目標については何ら伺われなかつたのであります。政府は、われわれ国民に対して、積極的な再建への熱意努力とを要望されておるのでありますが、国民の進むべき指針も目標も示されないでは、国民熱意努力もこれを傾けようがないのであります。  吉田内閣は、いわゆる経済復興五筒年計画をお捨てになつたようであります。これをお捨てになることは御自由でありますが、これにかわるべき何らかの復興計画ないしは復興目標とでもいうベきものをお立てになつておられなければ、その日暮しの場当り政策ならばともかく、真の産業政策経済政策も、これを立て得ないと考えるのであります。(拍手)これらの計画をわれわれに示されないために、今日日本経済は、まつたく目標を失い、三すくみになつておる現状であります。経済の目標と計画もないところに、産業の合理化もこれを積極的に進めることはできません。  ことに必要なることは、今後の日本産業構造のあり方であります。この問題は、わが国経済自立のため、はたまたわれわれか経済活動をなす上において、どうしてもなくてはならぬ指針であります。超均衡予算や、税制改革や、新貿易方式の構造につきましては、ドツジさん、シヤウプさんやローガンさんからわれわれは示されておりまするが、民主自由党の在野当時と総選挙の際の公約は別として、吉田内閣固有の基本政策なるものは、一体何でありましようか。米券制度というような思いつきの場当り政策新聞紙上などで拝見いたしまあしたが、真に国民を納得させ奮起させるようたな高邁にして崇高なる政策とその目標は、一向にわれわれにお示しくださらないのであります。かく言えば、あるいは政府は、われわれは自由経済復帰という一枚看板がある、こうおつしやるかもしれません。無用の統制を撤廃することは、われわれもももろん賛成であり、またこれを主張して来たのでありまするが、しかし、いかに経済を自由にいたしましても、それで経済問題は解決するものではありません。自由競争の復活は、経済の目標でもなく、目的でもなく、それは單なる手段にすぎないのであります。しかるに、自由競争を復活するだけで、あとは手をこまねいて顧みないというのが、吉田内閣の性格であります。自由競争に伴うところの弱肉強食の幣、すなわち今日現われて来ているところの中小企業の崩壊、農村の窮迫、失業者の続出等々、これらに対して、政府はいかなる手を打たれたでございましようか。  自由経済、すなわち競争の原理は、もとよりけつこうでございますが、これによつて生ずるところの弱肉強食の幣を社会保障の原理をもつて行くところに真の政治があり、真の政策が生れ出ずるものであることをわれわれは考えるのであります。(拍手)いかに企業の合理化がなされても、国民経済全体としての調和と、全体としての合理化が進められなければ、真の経済再建はできません。これがためには、どうしてもわが国経済の目標と計画を立てなければならないのであります。いかに政府自由経済を旗じるしとされましても、よもや計画の樹立を自由経済の逆行というような時代錯誤に陥つておられるとは考えられないのでございますが、いかがでございましよう。もちろん、刻々と変化して行く不確定要素がありますから、確たる経済復興計画の樹立は困難でございましようが、だからと言つて政府国民経済の目標を全然與えなくてよいという弁解は成り立ち得ないと思うのであります。これらに関し、具体的に御所見を伺いたいのであります。  次にお伺いいたしたいことは、吉田総理及び池田大蔵大臣は、わが国現状を非常に楽観的に見られて、しばしばこの席上から、わが国経済はすでに安定・正常化した、安定の軌道に乗つたと言われておりますが、それは一体いかなる根処と事実に基いてでございましようか。なるほどインフレは終熄いたしました。しかしインフレの終熄は、経済の安定そのものではないのであります。政府は統計の表面に現われましたところの生産物価、運貨等の横ばい状態をながめて楽観しておられるようでありますが、しかし、疲労困憊して倒れておるところの姿と、安息を求めて横たわつている姿とは一見同じようでありますが、両者は根本的に違つているのであります。(拍手)われわれは、日本経済がそのいずれであるかということを、ここに真劍に洞察いたさなければならないのであります。  しかもわれわれは、統計の面に現われないところの各種の矛盾と危険が内攻している事実を見のがしてはならないのであります。生産の状況についてみましても、なるほど大蔵大臣が言つているように、生産状況は一般の想像よりも順調に行つているように統計の面では現われております。しかしその反面には、せつかくつくつた品物も、有効需要の減退のために、莫大なる滞貨の山を築いているのであります。今日までは、いわゆる滞貨金融によつて、辛うじてその破綻を免れて来ましたが、このような状態が長続きするはずは絶対にございません。  中小企業は、今や次から次へと崩壊せんとし、農村は不況のどん底にい込まれ、かてて加えて、刻一刻と深刻となつているところの失業者の増大、各所に発出しつつあるところの賃金の遅配、未拂金及び不渡手形の増大等々、深刻なる金詰まりにより、まさにわが国経済危機の寸前にあるのであります。最近の株式暴落、証券市場の恐慌的不安、これこそ雄弁にこの事実を物語つているのであります。今日デフレーシヨンが深刻となりつつあることは、すでに議論でなくして事実であります。  池田大蔵大臣の言葉を借りて申すならば、かかる現実を率直に認識することを回避して、いたずらに経済安定を説くことは、いわゆる手前がつてな議論にすぎないのであります。(拍手)われわれは、率直に池田大蔵大臣が、かかるデフレの要因に、冷静に検討に検討を加えられて、この角度から来年度予算等を中心とする財政金融政策を確立されんことを、全国民とともに要望してやまないのであります。  こういう深刻なるデフレ段階に突入しているにかかわらず、吉田内閣は、来年度もまた超均衡予算をもつて臨まんとしているのであろます。今回の予算は、一般財政見返り資金で千三百億という巨額な債務償還をすることになつておりますが、私は、かかる莫大なる償還資金が、はたして産業資金として民間に円滑還流するかどうか、ここに大きな凝問を持つているのであります。  池山大蔵大臣は、債務償還は最も確実な資本蓄積の方法である。こう言われております。しかし、これはその資金が再び円滑に日銀、市中銀行等から貸し出されるというその保証がなければ成り立ち得ない議論であります。ところが、現在市中銀行の国債手持額はきわめて少量であります。すでにその限度に来ております。従つて、この巨額の償還資金は、結局日銀と大蔵省預金部保有の公債償還に充てられることとなりますが、こうなりますと、民間への資金還流はいよいよ困難となつて来るのであります。日銀より市中銀行へ貸し出すということは、最近の市中銀行の融資警戒の状況から見ますと、これまたすでに限界点に達していると見なければなりません。  かように考えてみますと、償還資金は、そう簡單には産業に還流されないのでありまして、ここに通貨はますます縮小し、金融はいよいよ逼迫し、産業資金に大きな穴があいて来るのであります。そこへ持つて来て、最近の証券市場の状況では、増資も期待は持ち得られません。社債も発行限度が来ておりますので、見返り資金産業投資が来年度多少増されたにいたしましても、とうてい追つつかないと思うのであります。私は、二十五年度の産業貸金に大きな穴があいて来はしないかということを非常に心配いたしているのであります。  そこで、どうしても日銀の貸出しを強行せねばならないこととなるのであありますが、現在日本銀行市中銀行に対する貸出しは約一千億程度でありまして、この三月末には千五百億円くらいになると考えられますが、ここへもつて来て、さらに日銀の貸出が強行されるならば、この懸隔はますます増大されまして、約二千五百億円以上になりはしないかと考えられるのであります。こうなりますと、市中銀行は、はたはだしく不健全なる金融をいたさなければならないこととなつて、ここに金融界の不安を招くおそれを生じて来るのであります。  吉田総理大臣も、池田大蔵大臣も、今回の予算は健全財政だ、真の均衡予算だ、昭和六年以来のりつぱな予算だ、しかもこれはドツジ公使、いな、われわれ吉田内閣で編成したのだと、声高らかに得意がつておられますが、その裏には、財政のしわを金融に寄せ、産業資金に大きな穴をあけるか、あるいは金融機関をはなはだ不健全ならしめて、金融界を不安に導かんという、恐ろしき岐路に立たざるを得ない難関をはらんでおるのであります。(拍手政府は、これに対していかに考えておられるか。  長期資金確保の問題で、もう一点お伺いしておきたいことは、大蔵大臣は、興業銀行等の増費を見返り資金で引受けさせよということを明らかにされましたが、これは確かに従来の方策から見ますれば一歩前進であります。しかし、これをやるなら、もう一歩前進して、見返り資金の直接産業投資へのわくを広め、また預金等資金も直接産業貸金として動員し得るよう一層積極的な政策が必要と考えられるのであります。これらの資金が、一定の條件のもとに社債、株式の保有引受けにも利用されることに相なつたならば、行き詰まつた証券対策にも審與するところが大であると私は考えるのであります。(拍手)これに対する大蔵大臣のお考えを伺いたいのであります。  一—三月の危機については、先ほど勝間田君の御質問がありましたので私は差控えます。この問題は当面の重大なる課題と考えられますので、大蔵大臣慎重にも慎重を期して万遺憾ないように切に念願して、質問は差控えます。  次に、貿易及び海運の問題についてお伺いいたします。わが国の死活を決する問題は、一にかかつて貿易及び海運の振興のいかんにあると言つても、私は過言ではないと思います。いわゆるローガン構造によるわが貿易の一大転換は、国際情勢の悪化により、輸出停頓の重圧下にあるところのわが国にとりましては、靜かに一服の清涼剤であります。しかし、ローガン構想の成否は、一にかかつてその運用のいかんにあると思います。しかるに政府は、このローガン構想の技術的方式を確立することにのみ日夜追われまして、この構想が真の効果を收めるような根本問題をゆるがせにされておるのであります。  すなわちその一つは、ローガン構想は、従来の国民生活の耐乏による輸出振興という方針を百八十度転換いたしまして、輸入優先による満腹輸出方針とつたのでありまするが、政府は、従来の謝乏輸出と、この満腹輸出との矛盾をいかに打開しようと考えておられるのか。従来のドツジラインによる耐乏方式を変更するにあらざれば、ローガン構想は有名無実になつてしまうのでありますが、これに対する措置を政府は何ら講じておられないのであります。  第二は輸入資金の問題であります。ローガン構想の実現にあたつては、輸入資金に対する十分なる措置を講ずるにあらざれば、せつかくの改革も何らの効果をあげ得ないのであります。貿易の技術方式を確立することはもとより必要でありますが、その前に、これらの根本的措置を講ずるにあらざれば、ローガン構想による輸出復興は期待することができないと考えるのであります。これらに対する政府のお考えにを伺いたいのであります。  外国貿易の基盤という立場から見ましても、国際收支の改善という立場から見ましても、海運の復興は、わが国経済の自立上最も緊張を要する問題と考えます。この意味におきまして、わが船舶のコマーシヤル・べースに基く海外就航の実現は、一日も早くこれを達成いたさなければなりません。ローガン構想のもとに、民間貿易は一歩前進し、多年の要望であつた輸出CIF、輸入FOBの契約も許可の運びとなつて、ここに一応民間貿易の態勢は整えられましたが、貿易と唇歯輔車の関係にあるわが船舶の外航配船は、依然として強き諸般の制約を受けていることは御承知の通りであります。かくのごとく、そのままこれを放任しておりましては、貿易の新方式の活用にも支障を生ずるのみならず、たとい講和後海運の国際自由航行が容認認されたといたしましても、外国船に既成事実をつくられてしまつて、ふたをあけたときには手も足も出ないということにならないとも限らないのであります。  占領下に置かれたるわが国が、ある程度海運の制約を受けるということは、これまたやむを得ないといたしましても、わが国が独立国としてその生存を許容されておる以上、はたまた西独におきましては、この制限がほとんど撤廃されているという事実にかんがみましても、少くとも貿易の民間自由方式に即応する程度のコマーシャル・ベースによる外航就航は容認されてしかるべきものと私は考えるのであります。(拍手政府は、いつも関係方面に申請中だと言つて明確なる御答弁を避けられておりますが、私は、本日これがいかなる程度に関係方面の了解を遂げられているか、またそのお見通しはいかんということを、はつきりお答え願いたいのであります。  わが国の船舶は、最近新造船が着々軌道に乗つておりまするが、しかし、現在のわが国保有船腹量は、これら新造船を含めましても、まだわずか百六十万トンにすぎないのでありまして、戰前の二割五分程度にすぎません。しかるに、この船舶は、その約七〇パーセントが粗悪な戦時標準船でありまして、あとは大部分、船齢二十年以上を越ゆるところの老朽船であります。量的に見ましても、質的に見ましても、実にさんたんたるものであります。航適格船の拡充こそは、刻下急務中の急務であります。しかるに、一方国内的には、かかる少量の船舶をもつていたしましても、最近デフレ下、荷動きが不振のため、約六十万重量トンの船舶の過剰を呈しまして、海運市場をはなはだしく圧迫しているのであります。  かくのごとく、わが海運は、外航面におきましては船舶不足をかこち、内航面においてはその過剰に悩むという奇現象を呈して、船質の粗悪なことと、外航適格船の不足、このことこそは、わが海運界のがんであり、致命的欠陥であるのであります。これを一日も早く改善しなくては、海運の再建は望めないのであります。従つて日本の自立も困難であります。  しかるに政府は、来年度予算を見ましても、これらに対する何らの施策もいまだ講じておらないようであります。政府は、これに対していかに考えておられるか。私どもは、この際かかる粗悪なる戰時平和と老朽船は政府の責任において一日も早くスクラツプ化して、その船主に対しては新船建造の優先権を與え、これに対し長期低利資金のあつせんをするなど、いわゆるスクラツプ・アンド・ヒルドの計画を推進させることが最も緊要なことと考えますが、政府の御所見を伺いたいのであります。  次に、労働問題について若干お尋ねいたしたいと思います。復興途上にあつて経済の不安、社会の不安のおそれ大なるこのときに、労働施策のよろしきを望むこと今日ほど大なるときはございません。しかるに吉田内閣は、弱肉強食の反動政策に終始し、労働者、農民中小企業者等の犠牲において日本経済の再建を企図しておるのであります。  最近の労働運動は次第に健全なる方向に向いつつあることは、われわれも同慶にたえませんし、政府も、いかにも得意顔をしておられますが、しかしこれは、一部極左分子の行き過ぎによつてもたらされた結果でありまして、決して現内閣の労働政策の結果ではないということを銘記いたさなければなりません。現内閣の労働政策は、実に無為無策、せつかく健全化しつつあるところの労働運動に対してすら、これを阻害するがごとき所為に出ておられるのでありまして、このたびの鉄道、專売従業員及び公務員の給與改善問題に対する政府やり方は、まさにその適例であります。国鉄従業員及び專売従業員は、労働者として最大の権利たる争議権を奪われ、ただ一つ残されたる仲裁委員会の裁定も、吉田内閣はこれを踏みにじり、また踏みにじらんとしておるのであります。(拍手)  先般の施政方針演説において、現内閣は、今回の公務員給與ベースに関する人事院の勧告には絶対に応じないということを明らかにいたしました。しかし、その論拠は実に薄弱で、十分納得することができません。しばしばこの席からも政府は御答弁をなされておりますが、一向われわれは了解できないのであります。政府は、公務員給與の引上げに、他の民間賃金の引上げに影響し、これが物価の値上げを招来し、いわゆる物価賃金の悪循環を起すということを、その理由の一つとしておられます。しかし、それははなはだしき誤診であつて、公務員に対する給與は、すなわち民間の給與とは全然別でございます。民間賃金とのバランスがとれておらないから、これを引上げようというのであります。ことに物価賃金の悪循環云々のごときは、今日のデフレの時代においては何ら懸念がないと私は考えるのであります。(拍手)  また政府は、現在の公務員の給與は実質的には昨年三月に改訂され、爾来物価は横ばいまたは下落し、実質的給與は低下しておらない、このときに給與を改善するのは時勢に逆行する、こう言つておりますが、公務員の現行給與は、一昨年十二月より実施されたのでありまして、その基礎が一昨年の七月にとられておることは周知の事実であります。一昨年七月を基礎とする六千三百円ぺースの給與では、現在とうてい生活ができない。しかも、やみ物価はある程度つたが、補給金の打切りによる公定価格の値上り、米価、運賃、電気料金、家賃、地代の値上り等を考えるならば、しかく実質賃金は上つておらないのであつて、かえつて下落しておるのであります。その間、民間の賃金は三割も上り、あまりにもその開きが大きくなつておる。これでは捨ておけないというので人事院の勧告が出たのでございますが、問題の重点は、公務員給與と民間賃金との差をいかに縮めるかということにあるのであります。少くとも民間賃金との差をなくすることにならない以上は、かかる政府見解は納得できないのであります。昨日も政府は、これに対して、中小企業との比較がどうの、あるいは時間外手当が云々というようなことをおつしやつていましたが、それは單なる弁解にすぎなくて、真の見解にはならないのであります。  政府は、財源がないということを最後理由として、もし公務員給與人事院勧告通りになしたならば、年約六百億円の財源を要し、税金も減らすことができなくなるし、運賃も料金もまた上げなくてはならぬ、さらには平衡交付金の増額、地方税の引上げ等もいたさねばならぬ、こう言つて弱い公務員を押えつけようとしておられますが、しかし、年六百億という数字は、中央地方の全額を国庫で新しく負担するという最大限の場合でありまして、財源の問題に、政府熱意により、いかようにもなるのである。現に、昨年末の年末資金のごときは、あれほど予算の余裕がないと言つてつたにもかかわらず、いざ腹をきめたならば、ともかくあれだけの金額が浮び出たではありませんか。(拍手)経費の節減、債務費の減額などをやつたならば、財源は幾らでも出て来るのであります。  本件解決のかぎは、一にかかつて政府勤労者に対する理解とその熱意いかんにあると考えるのであります。(拍手)弱き者のみをいじめるのが政治ではありません。今からでも遅くはない。わが国労働運動の健全なる行き方に水をさすがごとき従来の態度を改められて、政府はすみやかに人事院の勧告をすなおに採用される意思はないか。また人事院は、政府の説明で納得しておるのかどうか、人事院総裁の考え方も聞きたいのであります。  今日の失業者の続出と就職難の深刻さ、これを政府はいかに考えておられるか。政府失業対策の貧困さには、実に寒心にたえないものがあります。ことに中小企業者、農民、引揚者等に対する失業救済は、吉田内閣はほとんど何も手を染めておらないのであります。現在の失業問題は、組織労働者のみならず、こうした方面にも重点が置かるべきものと私は考えます。これら大衆は、今まではインフレ的なやみの領域において何とか糊塗しておりましたが、インフレの終熄とともに、これらの潜在失業者は、ほうはいとして顕在化されつつあるのであります。このままこれを放任しておくならば、はなはだしき社会不安を生ずるおそれがあります。  政府は、いわゆる公共事業費を増額して雇用量の増大に資せんとしておられるやに見受けられます。これはけつこうでございまするが、これのみをもつてしては、とうてい今日の厖大なる失業者を救済することはできないと思います。失業問題解決の根本は、もちろん人口問題、移民問題も関係いたしますが、さしあたりの解決策は、私は生産事業と結びつけるところにあると思うのであります。現内閣のごとき消極的デフレ政策を改めまして、ここに思い切つて有効需要の喚起をなし、たとえば電源開発、造船、国鉄電化、合成繊維を思い切つて振起させ、生産財に対して有効需要を喚起さすことこそ失業問題解決の根本であると思います。中小企業より生じつつあるところの増大せる失業者も、農村に流れ込んでおるところの厖大なる遊休人口も、これを中小企業振興対策、また農村人口対策に織り込んで行きまして、抜本的に解決をはかつて行くことがきわめて肝要なことと思うのであります。わが国は過剰人口で苦しんでおるが、一面からいえば、この過剰人口こそわが国の尊とき資源でもあるのであります。この人的資源を活用ぜずして、失業者を増大せしめるばかりでは、真の政治ではありません。政府失業問題に対する根本的態度と具体的対策を承りたいのであります。  最後にお尋ねいたしたいのは農村問題でありますが、農村の発展なくしては、日本経済の安定は期し得ません。しかるに吉田内閣は、低米価と供出の強化、苛酷な税金の取立てによつて、いたずらに農民を苦しめるばかりでありまして、何ら農村振興に対する積極的対策を立てておられません。米価審議会によつて決定された四千七百五十円の米価は、これを四千二百五十円の低米価に決定し、従来の超過供出特別価格の三倍はこれを二倍に軽減し、また国会の意図を無視して、ポツダム政令の名のもとに超過供出を法的に強制するなど、実に吉田内閣農業政策は、無為無策どころか、悪為悪策であります。(拍手)  御承知の通り、最近の世界食糧事情の好転と、国内食糧事情の改善は、わが国農業経営に一大転換をもたらしておるのであります。二十五年度のごとき、わが要請量以上の三百七十五万トンという厖大な食糧が輸入されるということであります。かくして、わが国食糧事情はますます改善の機運に向いつつあることは慶賀にたえないところでありますが、しかし、この一大転換期に処して適切なる施策を講ずるにあらざれば、わが国農業経済を破綻に導くのであります。  わが国農村は、低米価と、供出の強化と、税金の取立てにより、疲労困憊の域に達しておりますが、これに加うるに、デフレ政策に基く企業合理化と行政整理による多数の失業者農村農村へと流れ込みまして、農村人口過剰に拍車をかけておるのであります。しかも一方、農家の生産財及び消費財は高騰し、いも類の統制解除は間近に迫り、まことに農村の苦境や察するに余りあるものがあります。この農村窮迫化の具体的現われは、日銀及び安本調査の通貨滞留状況や、農林中央金庫の資金状況によつても十分察知されるのでありまして、農民をかかる窮地に陥れたるは、まつたく現内閣の責任であり、現内閣に対する農民の憤りはその極に達しておるのであります。  農民は、かかる窮境の中にあつても、その自衛策に涙ぐましいまで態度な確度を拝して、敢然として立上つておるのでございますが、しかし、それは單に農民努力のみによつて防ぎ得るものではなく、政府の適切なる農業政策によらずしては、とうてい救われないのであります。外国の食糧価格が、今日のわが国のそれに比べて高いために、または食糧輸入資金の制約があるから、世界食糧の過剰があつても大丈夫だというような楽観論は、今日ではすでに成り立ちません。  そこで、今後日本農業は、世界農業との競争にたえ得るように、農業経営の合理化によつて生産力の増強をはかつて行かなければなりません。日本農業経済的脆弱性の根本原因は、農民一人当りの耕地面積の狭いこと、その生産高が少いことであります。従つて、かくのごとき貧窮せる日本農業を振興せしむるところの本質的解決は、わが国食糧の自給強化ということを基本線としながら、農業生産力の合理的向上をはかることにあると私は思うのであります。すなわち、農地改良、災害復旧等あらゆる方策を講じて、農地面積の拡充をはかるとともに、農業生産の技術化を促進し、他方有効需要の喚起によるところの鉱工業の発展により、農村人口をこの方面に吸收せしめ、農村過剰人口を調節して、農民一人当りの食糧生産の拡大をはかることが第一点、第二点としては、農村労働力の立体的活用による農民自体の農村工業を育成するのほか、飼料問題を解決して、酪農その他の畜産を奨励するとともに、茶、菜種の増産、はつかの栽培等、貿易面ともにらみ合せた他種農産物の奨励をなすこと等、農村の多角経営に対する具体的方策を急速に実施することが肝要であります。  それにも増して緊急に措置しなければならぬ問題は、現内閣食糧管理政策に自主性を確立することであります。今までのような、ごむりごもつともで、オー・イエス・マンになつてつては、農村は絶対に救われません。(拍手)従来の米価決定のごとき弱肉強食の農村圧迫政策は、すみやかにこれを改めて、ここに百八十度の転換をすることが私はきわめて緊要であると考えるのであります。  二十五年度の予算に現われたる吉田内閣農村政策をながめるとき、公共事業費を一千億円計上するとも、農村関係はわずか百五十億にすぎずして、全体のわずか一五%余りにしか当らない。土地改良費のごときは実に寂莫たるものであつて政府は本年増加したというが、昨年の農業関係が公共事業費中に占める割合は二〇%であつたのが、今回ははなはだしく減り、本年はその比重が低下されておるのであります。しかも、廃業近代化の促進、農村の多角経営に対する施策、後進産業としての日本医業の国家的保証助長政策も何ら講ずるところがありません。  私は、現内閣農業施策のあまりにも乏しきに唖然たるを感ずるのであります。農村経済が成り立たないとするならば、日本民主化も、経済の自立も、おぼつかないのであります。政府は、この転換期に立つた窮迫せる農村に対して、いかに対処せんとしておられるのか、明確なる御答弁をいただきたいのであります。  私は以上をもつて終ります。(拍手)     〔国務大臣青木孝義君登壇〕
  20. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) ただいまの有田議員の御質問にお答え申し上げます。経済復興の目標はどうか、この点でありますが、経済復興ということは、あくまでわが国の置かれておる経済上の自然的な條件と、そして経済上の、何といいますか、その條件のもとにおける経済力を根底として考えなければなりません。その根本的な目標は、わが国経済力と、そのインフレを起さないような範囲において十全に活用して行く。すなわち、生産と貿易との伸張を期しながら、そのときの国民所得自身が諸條件を満して行ける、すなわち、そのときの諸條件のもとにおいて最大限に拡大するとともに、その分配を合理化するということであると存じます。従つて、国際的にも変化のはなはだしい現状のもとにおきましては、将来長期にわたつて固定的な計画をつくることはあまり有意義ではない、こう考えますので、われわれは、先ほども申し上げましたように、大体見通し得るということ、それからさらに実行可能であるというような目標のもとに計画を立てておる次第でございます。     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  21. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 有田君の御質問に対しましてお答え申し上げます。  生産はあまり復興していないではないか、滞貨が起きておる。何とかして有効需要を起さなければならないではないか、御説の通りでございます。今回の予算案につきましても、昨年のいわゆる建設資金としましては千二百七十億円しかなかつたものを、七割増の二千百五十億円にいたしておるのであります。極力建設方面に金を使つて行くことにいたしておるのであります。しかしてまた、他面減税をいたしまして、国民の間にいわゆる産業資金の蓄積をはからしめる、こういうことにいたしておるのであります。  なお次に債務償還の問題につきまして、債務償還の場合に、その償還した金が日銀や預金部に行つてはだめではないか、御説の通りであります。ぐずぐずしていると、日銀の貸出しが千五百億とか二千億とかいうようなことを言つておられますが、それは何もせずに一番悪い條件を積み重ねたら、そうなりましよう。しかし、そんなことはないのでありまして、財政演説で申し上げておりますように、いわゆる長期資金金融債をもつてまかなう。そうしてまた、各会社の資産再評価によりまして社債発行限度もふえて参りますので、債務償還の金はその方にまわします。できるだけ産業貸金にたくさん行くようにしたいと考えておるのであります。どうも皆さんの御質問には、見返り資金を直接投資、直接投資と言つておられますが、私は、社会主義的の計画経済なら別でありますが、この見返り賞金は、やはりイギリスでやつておりますように債務償還に充てるのが適当で、いわゆる民間の増資に向けて行くのがほんとうだと思います。足りないところを政府が直接投資をするのが、ほんとうの金融政策であると考えておるのであります。  次に賃金ベースの問題につきましては、総理並びに私が財政演説で申し上げた通りであります。また足らざるところは昨日の答弁にありますので、いまさら御説明を加えませんが、いずれにいたしましても、わが国をほんとうに復興せしむるためには、いましばらく公務員の方にもごがまん願いたいというのが私の真意であるのであります。     〔国務大臣稻垣平太郎君登壇〕
  22. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 有田さんにお答え申し上げます。  まず輸入金融の問題でありましたが、輸入金融につきまして、輸入手形の決済に関する外貨金融につきましては、先ごろ、取引相場の決定を基準といたしまして、実質上外銀に対しては年四分、また輸入業者に対しては年五分という低金利におきまして、品物が到着するまでの間の融資をする、かくて輸入業者は外銀と対等の競争ができると存ずるのであります。これに次いで、輸入業者が品物を引取りまして需要者に渡すまでの金融につきましては、編入スタンス手形の制度を採用いたしまして、従来適格再割貿手と同じような形において日銀において再割引をし、また高率除外をする、こういうことに相なつております。  なお外洋就航のことについてお話がありましたが、なるほど国際收支の上からのみならず、オープン・アカウント協定国との間におきましては、この邦船が外洋に就航いたしますことは最も必要でありますけれども、今日日本艦船が外洋に就航するということについては、いろいろの制約を受けておることは、これはもう有田さん御自身が御承知だと存ずるのであります。のみならず、船舶自体の問題、あるいは運送條件、あるいはまた寄港地の碇泊の細目というような点につきまして、いろいろの制約がありまするので、実際上のいわゆる純商業的基礎に立つところの、邦船の外航につくという問題は、平和條約後でなければ相ならぬかと存じておるのであります。しかしながら、これが必要であることは先ほど申し上げました通りであり、また有田さんの申された通りでありますので、政府といたしましても、できるだけこの方面に努力をいたしております。たとえば一、二の例を申し上げるならば、最近アルゼンチンとの通商協定におきましても、その協定の中におきまして、日本の船舶に対して好意的待遇を與えるという字句を入れさしておるような次第であります。あるいはまた、その他の協定におきましても、インヴイジブル・トレードということを認めておりまして、そのインヴイジブル・トレードの中に船運貸といつたような点を認めさせておるといつたようなことでありまして、ことに従来最も望まれておりましたプリツテイシユ・セツツルメント——マレーにおきましても、いわゆる例の鉄鉱石その他をとつて来るのを、日本船が寄港することに大分問題があつたのでありますけれども、これについても最近了解を得たような次第であります。しかしながら、実際におきましては、なお今日いろいろ制約がありますので、政府といたしましては、できるだけ邦船によるところの就航について努力いたしておる次第であります。     〔国務大臣大屋晋三君登壇〕
  23. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 有田君の海運に関する御質問は二点で、そのうちの第一点は、ただいま稻垣君から御説明がありましたが、運輸大臣の立場から、もう少し補足をいたしておきます。根本観念は、ただいま有田君も御意見を述べられ、通産大臣も申し述べられましたが、まず第一に、このいわゆるコマーシヤル・ベースについて、日本の海運業者が、つまり自分の勘定において自由に外国に引合いを出して、自分の船を自分の意思において自由に就航させるということは、今行われておりません。御承知の通り、現在でも外航に日本の船が従事はいたしておりますが、事すべてが連合総司令部の監督指令のもとに外航に従事しておるのであります。船舶業者、日本政府の自由意思による形態は、ただいま稻垣通産大臣が御説明申し上げた通りでありますが、運輸大臣のこの点に関する手の打ち方といたしまして、まず前提として、日本には外航に適する船が実に少いのでありまして、今外航可能の船は、昭和二十五年一月二十六日現在で十八隻、十万二千トンしかございませんが、今年の三月末日までには、この船級をとれる見込みの外航適格船が二十二隻——四隻ふえます。トン数は十一万六千総トンになります。さらに来年の昭和二十六年三月末日におきましては、これはたくさんふえまして、総数におきまして百三十二隻、八十六万七千トンの——これは油船を含むのでありますが、これだけの量の外航適格船ができまして、この時分には、おそらく日本の業者の自由意思によるコマーシヤル・ベースによります外国配船が私はできると考えております。  さらに第二の有田君の御質問は、この船舶建造に関する御質問で、いわゆる今日本の海運業の特徴は、内航においては荷物の出まわりがないにもかかわらず、古い船、あるいは戰時中に急造いたしました不完全な船が非常に多くあつて、常に六十万トンほど緊船しておかなければならぬという現状にある一方に、外航の方におきましては、ただいま御説明申し上げました通り、どんどん出たいのでありますが、船がないという、実にアンバランスな、ちんばな状態になつております。そこで、有田君のただいま問題を提供されたスクラツプ・アンド・ビルドという、つまり古船や、戰時中の急造のまずい船は、これをスクラツプにつぶして、これで新船をつくつて行くということに対する政府の考えはいかん、ということでございましたが、これに関しましては、目下いろいろ方式を考えて、スクラツプ・アンド・ビルドいたそうと考えておりますが、まずそのうちの一つの考え方といたしましては、この見返り資金の方を、いわゆる一隻スクラツプにいたすものに対しましては——普通でありますならば、新造船の場合なら見返り資金を五〇%貸與いたすのでありますが、このスクラツプにいたすような場合におきましては、九〇%くらいの金融をつけてやるというような方式におきましてスクラツプにいたし、そうして新しいものに切りかえるというような方式を考えておるのでありまするから、有田君の御希望の点は、十分政府といたしましても考慮いたしまして、これからやつて行く考えであります。(拍手)     〔国務大臣鈴木正文君登壇〕
  24. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 有田議員の御質問のうち、失業対策について申し上げます。御質問をお伺いしていて、根本的の考え方は、私どもの考え方とほとんど相違がないように伺いました、失業対策の根本は、あくまでも国民経済の中の雇用力を高めて行くというところに中心が置かれて、そうして段階的に緊急的ないろいろな対策が織り込まれて行くべきだというお考えであり、その具体的な実例として、電源の開発とか、その他いろいろなことをあげておられました。現内閣の考え方は、まつたく有田さんと同様でございます。ただ現実の問題といたしまして、さしあたつて提出された二十五年度の予算の中に、その考え方がどういうふうに盛られておるか、また吸收計画はどうなつておるか、これの詳しいことは委員会を通じて御説明申し上げますが、この機会に、誤解の起きないように、総括的に、やや詳細に数字だけを御説明しておきます。  第一番に、国民経済の中で、二十五年度にどれだけり雇用力が生れて来るかという問題であります。この問題につきましては、二十四年度には四十万という数字を政府はあげたのであります。お断りしておきますが、就職者と離職者と差引いて四十万就職者が多いという意味ではないのでありまして、この計算は、離職者、失業者は全然別の観点から計算して、それは別として、国民経済の中に、二十四年度に四十万の雇用力が生れるという推定でなくして、実際に基いた計算をしたのであります。いろいろな批評はありましたが、二十四年度の実績は、まさに十分これだけの雇用力はあつたということを、安定所その他の情勢を通じて立証しております。同じ方式でもつて、二十五年度にはどれだけの雇用力が生れて来るか。これは八十万人が計算されておりますが、これはもちろん安本、大蔵省その他と詳細にわたつて計算したのでありまして、その詳細なる内容は委員会を通じて御説明申し上げます。いずれにしても、八十万の雇用は、この予算を通じ、現内閣経済政策を展開していく中に、離職者とは別個に必ず生れて来るという、確固たる計算が成立つておるのであります。  その次に、見返り資金約一千数百億円を動かすことによつて、どの程度の雇用力が生れて来るか。この計算は、三十万ないし四十万が、二十五年度内に、この関係からして雇用力として生れて来る。これも詳細なる数字が出ておるのであります。その次に、御承知のように公共事業は、雇用力の上昇の重要な一環である。一つの柱であるということには御異議がないと思います。二十四年度において、約五百億円の公共事業によつて、五十万人の人たちが毎日消化されておつたことは、現実の実績であります。従つて、二十五年度において、一千億円の公共事業費が投ぜられるならば、一応物価の問題は現状といたしましたならば、百万人がこの面において消化されるのであり、二十五年度の二十四年度に対する純増加が五十万人であるという数字は、一応の納得でき得る数字であると言い得るのであります。  以上の三つが、安定的もしくは半安定的な雇用の計算であります。この三つの総計は百六十万ないし百七十万という数字になつておるのであります。この数字の根拠は、二十五年度予算を詳細に検討していただけばわかると思うのであります。これは安定的もしくほ半安定的な雇用力の計算でありまするけれども、もちろんこれは、一挙にこの雇用力の数字が生れて来るのでないのでありまして、時間的、段階的のずれが出て来る。そういう問題に対してはどうするか。それは、たれがやつても奇想天外の手はないのでありまして、一つは緊急失業対策であり、一つ失業保險の制度であり、もう一つは、労働省が特に今回力を入れておるところの職業補導の制度であります。その数字はどうなつておるかと申しますると、緊急失業対策費は、二十四年度において八億何千万円であつたものが、四十億円にふえております。五倍になつております。この面において、緊急失業対策として、日雇い労働者その他を通じて毎日十万人づつを一年間消化し得るところの計画は、すでになつておるのでありまして、二十四年度の第四・四半期、今日においても、八万数千人をすでに吸收しておることは事実なのであります。  その次に職業補導の問題でありまして、これは、ただいま御指摘になりました農村あるいは中小商工業方面からの失業者を配置転換して行くためにも必要なのでありまして、労働省は、苦しい予算の中から、今回もそれを拡充箇所の職業補導所を通じて、五万人の新しい産業戰士を育て上げる、国民経済のわく内における配置転換をはかる十分の準備と予算の裏づけをいたしたということをも御報告申し上げます。  次に保險の問題であります。保險は、一般保險が四十万ないし八十五万人、それから日雇い労働者の保險が十三万人、すべてこれらのものを合計いたしますと二百二十八万ないし二百八十三万の、永久的、半永久的、あるいは段階的のそれぞれの吸收計画は、二十五年度の予算の中に明確に出ておるのでありまして、もとより大戰後のこの失業対策の重要な、困難なことはわかつておりますけれども、一部にいわれますような、破局的な、そういう情勢を通つてはおりませんことを明確に申し上げます。(拍手)     〔国務大臣森幸太郎君登壇〕
  25. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 有田議員にお答えいたします。  政府農村対策について無為無策だというおしかりがあつたのでありますが、これは御意見と承つておきます。  なお、御高見を拝聽いたしましたその中に、農村対策についていろいろおあげになりましたが、まことにその対策事項につきましては政府も同感であります。この農業政策の上において、今お延べになりましたすべてのことは、予算の許す範囲内において極力これを実現するように、政策のうちに加えておきますから、十分御承知を願いたいと思います。  食糧問題については、なるべく自主性を持てという御希望でありましたが、今日の日本食糧問題は、海外より輸入を受けなければならぬ事情であります。日本のこの食糧事情を、できるだけ自給度を高めまして、そうして自主性を持たせるように各般の施設を行いつつあることを御承知願いたいと思います。(拍手
  26. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 有田君、よろしゆうございますか。  川上貫一君。     〔川上貫一君登壇〕
  27. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、日本共産党を代表いたしまして、政府財政経済政策に対して、いささか質問したいと思います。  まずお聞きしたいことは、世界経済情勢に対する吉田内閣の御見解態度について承りたい。第二次世界戰後における世界の資本主義諸国、ことに最近におけるアメリカ中心とする恐慌は、諸国間の対立をますます深めております。この間にあつて、資本主義諸国は、資本主義そのものが破綻に追い込まれつつあるということは明らかな事実であります。ことに一九五〇年は、こうした恐慌が日本に集中的に襲いかかるであろうことは申すまでもありません。こういう中にあつて、アチソン米国務長官は、去る一月十日、上院外交委員会において、米国日本をアジアにおける共産主義の防壁として再建しなければならぬと言われております。しかも日本の国情は、経済といわず、金融といわず、人民の生活といわず、これに容易ならざる状態であることは、笑いごとではありません。  吉田総理大臣は、繰返して、日本の人民ならだれでも驚くであろうようなことを言うておられる。その中でも、特に中国の政情はなはだ安定を欠いておる、ひとり日本のみ復興再建、国民の意気とみに旺盛、と言われております。これは一体どこの国のことを言われたのであるか、われわれは総理大臣の識見を疑わざるを得ない(「何を言うか」と呼ぶ者あり)何を言うかじやない。今日本が、かような状態の中にありながら、総理大臣は何をもつて復興と言い、何をもつて国民の意気旺盛と言われるのであるか。かような施政演説をかついで、皆さん国へ帰れるか。また総理大臣は、実際にさように思つておられるか。もし、世界の動向と国内情勢について、それほど盲目無知であるとすれば、総理大臣に、この日本危機を切り抜ける資格はありません。これは單なる言葉の上の問題ではない。世界並びに日本の状態に対する根本的な見解でありますから、総理大臣の御答弁をお願いしたい。  吉田内閣の無定見と、自主自立の放棄は、二十五年度の予算案その他一切の財政経済政策を通じて歴然たるものがある、私は、以下少しくこれについて質問します。  第一は国債の償還であります。今日国民の苦しみは、重税と不景気であります。しかるに政府は、この大衆の苦しみを無視されて、どういう理由で合計千二百億という莫大な国債の償還をお企てになつたのであるか。大蔵大臣は、これに対して、最も確実な資本蓄積だと御答弁になつておる。しかしながら、現在産業資本家は、この政策を支持してはおりません。また当然喜ばなければならぬ金融界がどう言つておりますか。この政策には、はつきりと反対しております。ましてや、重税と生活苦にあえぐ人民大衆が、たれ一人としてこの政策に賛成しておる者はありません。(拍手)  私は大蔵大臣にお聞きするが、これは一体だれのための政策なのか。もちろんこれは、第一に、大衆からしぼり取つた税金を直接国内の独占資本のふところに注ぎ込む政策である。これによつて、巨大銀行の地位は決定的なものになるでありましよう。しかし、この償還の異議は、單にそんなものではありますまい。すなわちそれは、第一に、国際独占資本の要求に応じて、産業資金の供給源をあげて見返り資金に依存させようとする政策である。またそれによつて日本の産業をますます国際独占資本の意思にまかせる政策だと思う。大蔵大臣は、そうでないと、ここで言い切ることができるか。  第二に、これは外国資本に対する、まことに卑屈な政策である。すなわちドレーバー氏は、外資導入の前提条件として、何よりも国債及び外債の償還を指摘しておられる。だからこそ政府は、二十五年度予算案で百三十三億の外債支拂いを予定しておるのであります。してみれば、この国債償還は、その真意において、財政金融の分離などに名をかりるところの、国際金融支配への隷属政策なのである。(拍手)もしそうでないと言われるなら、日本人のほとんどが賛成しないこのような政策を何ゆえ強行されるのであるか、大蔵大臣の明確なる御答弁をお願いしたい。  次に、補給金減廃の問題についてお尋ねいたしたい。この政策は、物価体系の崩壊であり、具体的には基礎物資の価格引上げであります。ところが、一方政府は低物価政策を強行している。基礎物資の引上げ政策、一方においては低物価政策、これは一体何か、これは明らかに、この一切の犠牲を低資金と低米価にしわ寄せする政策なのです。その結果は当然のこととして、これは破壊的な企業整備になることは明らかである。また首切りであり、賃金引下げであり、労働強化であり、国内産業の破壊であり、社会不安の激発であることは、おそらく與党の諸君といえども御心配になつているに違いない。だからこそ現在産業資本家さえもこれを憂慮しております、この政策が、政府のもつともらしい説明のいかんにかかわらず、事実におきまして、自由経済とか国際物価へのさや寄せとかいう名のもとに、国内における独占価格を確立し、民族産業以下全人民の犠牲において日本全体をまる裸にする政策なのです。そうしておいて、それを外国資本の利益に提供する政策なのです。(拍手)これが政府の補給金撤廃の意図であり、日本の産業の自立の放棄であるとわれわれは考えております。大蔵大臣安本長官は、かような政策を強行されて、それで日本産業の再建が可能であるとお考えになつておるか、明確なる後答弁をお願いしたいと思う。  さて、吉田内閣の全政策の性格が、およそこのようなものであるということは、政府の一枚看板である税制改革を見たら、もつとはつきりいたします。大蔵大臣は、国民負担がたいへん軽減されると御自慢になりますが、第一政府は、外国人に対して税金の引下げを考えておられるらしい。一体、外国人が日本で仕事のできぬような税金で、日本の産業はやれますか。(拍手)ましてや、一労働者、農民、人民大衆は、とても耐えられる税金ではありません。その結果は、いよいよ耐ゆるべからざる耐乏生活、強要される飢餓輸出、この二つのほかにはありません。しかも、これほどにして、この飢餓輸出でわずかに獲得する外貨は、外債支拂いに充てようとしてあるのが政府であります。これは、何億の減税とか、なんぼの負担軽減とかいう問題じやありません。日本における税の性格の問題であります。吉田内閣の重税の性格の問題なのです。ごらんなさい。第一に政府は、賃金を植民地的に押えつけておる。世界一高い税金をとつておる。そうしておいて、物価は国際的さや寄せだと言うのです。このわくの中に人民をはめ込んでおいて、予算の数字の上で減税を振りまわすようなことは、人民を侮辱するものだと言われてもしかたはありますまい。(拍手)  私は大蔵大臣にお聞きするが、一方においてこのような政策を強行しながら、予算面の数字だけをたてにとつて国民負担が軽減すると、ほんとうに大蔵大臣は断言なさるか。(「断言するよ」と呼ぶ者あり)断言なさるならば、ここではつきり断言してもらいたい。  次に日本経済の国際的経済へのさや寄せは、隷属は、政府農業政策で非常にはつきりとわかります。このことについては、他の議員諸君から御質問がありましたので、私はくどくどしく申しませんが、一口に言つて、低米価と重税を基礎にして、土地改革はたな上げする、災害復旧は放棄してしまう、独占物価はどんどん上げる、強権によつて飯米を取上げる、ありとあらゆる政策によつて日本農業を体系的に破壊しておいて、その破壊の上に厖大なる食糧輸入をするというのです。しかも、この食糧は外国における過剰農産物なんだ。  大蔵大臣は昨日の本会議で、こう言われた。食糧の輸入は、日本食糧が足らぬから入れるのだと御答弁なつた。私は、今そういうことをお聞きしているのではありません。第一に、この食糧輸入は、政府のほかの農業破壊政策と一貫しておるじやないかということなんだ。第二番目には、この食糧は外国の強行輸入ではないかと言うのだ。(拍手従つて、かかる政策は、日本農村して低賃金と奴隷労働の給源地たらしめようとする吉田内閣の植民地化政策ではないかと言うのだ。(拍手)これを答弁してもらいたいのだ。農林大臣は、次から次へと、かような政策をやつておられるが、それではたして日本が従属化しないとお考えになるかどうか、はつきりと御答弁を願いたい。  さらにこの際関税について一言お聞きしたい。現在、この世界恐慌のまつただ中で、国内産業の保護ということは、日本の自立にとつて絶対必要な要件であります。しかるに政府は、これに対してまつたく無意無策、何ら考慮するところがないばかりか、一切の保護政策を放棄し、なかんずく保護関税を放棄しようとしているのじやないか、これで日本の産業が自立すると思われますか。これは日本の自立の放棄であります。重大な問題でありますから、はたしてどうであるか、大蔵大臣及び安本長官の関税政策に対する御見解を承りたい。  次に、外資導入と貿易についてお聞きいたします。政府は、口を開けば外資導入と言い、これが日本再建唯一の道であると宣伝しておられます。実際そうであろうか。伝えるところによると、ドレーバー氏は、外交導入の前提條件として、第一に国債、外債の償還、第二に投資利益の自由なる送金、第三に投資が国有化された場合の補償、第四に外国人の所得税及び法人税の大幅引下げ、第五に統制の撤廃を指摘しておられます。政府は、かような傑作をうのみにして外資を導入なさるおつもりであるか。第一に、これをはつきりと承りたい、かような條件をうのみにして外資を導入するとなれば、それは日本のためではなく、外国の利益のための導入になりはしないかと私は考える。(拍手)ことに外国人に対する税金の引下げに至つては、雑誌東洋経済新報さえも、その社説でこう言つている。「わが当局の見識の低劣、占領四年の間に育くまれた卑屈な奴隷根性」と罵倒しているんだ。(拍手大蔵大臣、その点についてどうお考えになるか。  外資導入について、いま一つ私はお聞きしたい。それは国鉄及び電気通信関係の問題であります。政府は、国鉄を独立採算制にされ、民営化の方式を強行しておられます。また電気通信事業も、これを公共企業体に切りかえようとしておられる。そうして、見返り資金を盛んに国鉄、電通事業に注ぎ込んでおられる。これは吉田内閣が、これらの事業をば民営化するとともに、次第に外国にあけ渡し、外国のために第二の満鉄、第二の満州電業をもくろんでいると言われる根拠であると私は思う。かような方向が、吉田内閣の外資導入による軍事的植民地化であると言われる一つ理由であると私は思う。(拍手)運輸大臣及び電気通信大臣は、これをどうお考えになりますか、御答弁をお願いしたい。  次に貿易について質問したい。第一に、政府はローガン構想というものによつて貿易をされる、こういつておられますが、ローガン構想による貿易、西ドイツの貿易が、はたして成功したとお考えになつているかどうか。それを承りたい。  第二に、政府は貿易の焦点を東南アジアに置いておられます。そもそも、この東南アジアが世界恐慌のるつぼであることは、だれにでもわかつていることであります。こんな不安なところを焦点にして、将来日本の貿易がはたして発展するとお考えになつているかどうか。これもはつきりとお聞きしたい。  第三には、この東南アジアは戰略物資の主要な生産地であります。かような地点を焦点とすることは、戰争予想の貿易政策であると言われはしないか。もしも日本が、国内産業の平和的な発展と、平等互惠の貿易を望むのなら、道はたつた一つだと私は思う。それは中国との直接貿易である。しかるに政府は、中日貿易を実質的には放棄しております。政府は、たとえば輸出貿易管理令の改正で、このたび輸出許可品目を拡大して、主として今度は原料を押える方針をおとりになるらしい。これは明らかに中国との貿易を制約する目的であると言われてもしかたがありますまい。しかも、この貿易さえも、これを実行なさるのに、実際に政府には自主権があるのでありますか。  吉田総理大臣は、きのうの本会議で、わが党の質問に対して、経済は自主を守つていると申されました。一体、外貨予算といい、閣僚審議会といい、それにどれだけの自主性があるか、ここではつきりと御答弁をお願いしたい。現に外貨予算においても、品目別金額さえこれを国民の前に発表しておりません。これでは、決してほんとうの自由貿易ではありません。この貿易は、事実において、全人民の血と汗の結晶をあげて国際資本に提供する貿易であり、国全体をあげてのダンピング貿易です。総理大臣並びに通産大臣のお考えを承りたい。  なおこの際大蔵大臣にお聞きいたしますが、大蔵大臣は、昨日の本会議で、見返り資金アメリカの納税者の負担に属するものである云々と言われました。われわれは、日本国民負担によて積み立てられておるものと考えております。たとえば輸入補給金五百億にいたしましても、これは明らかに見返り資金として積み立てることになるのであります。これは日本人民の負担であります。してみれば、この資金日本国民負担であると考えるが、この点について、大蔵大臣のはつきりとした御見解を承りたい  最後に、国内における恐慌の深化、特に金融恐慌についてお伺いいたしたい。昨年末は、オペレーシヨンと日銀の貸出し、これもまことにしやにむな貸出し、それと預金部資金によりまして、わずかにこれを支えてはおりますが、危機は少しも解決してはおりません。これは、大蔵大臣がいくら大言壮語せられようとも、金融界、産業界がちやんと一番よく知つております。それゆえ、たとい一月——三月の破局をどうにか支え得るにしても、不渡り手形の激増、産業会社の倒産、株式の投げ売りと暴落、首切りと賃金不拂い、社会不安の激発で一大混乱を来すであろうことは、もう目の前に見えておる。かようにして、吉田内閣の亡国的政策の結果は、ここでは大きなことを言われるが、政府それ自体が抜きさしならぬところに落ち込んでおるのです。一体政府は、ドツジ・ラインにしがみつくだけで、どうしてこの危機を処理することができるか。産業人は、大臣の大言壮語を信用してはおりません。財界人も大蔵大臣のここでの演説を信用してはおりません。これは、この重大なときに、すべての自由と独立を放棄した吉田内閣の責任である。  以上一切の事実、これがまさに政府のなしくずし講和、すなわち事実としての講和の姿であります。吉田内閣單独講和とは、かような状態を恒久化する以外の何ものでもありません(拍手)それゆえに、わが党は、この日本経済的破綻の危機日本民族独立の脅威、これを打破して平和的日本を再建するために、あらゆる愛国者を結集する民主民族戰線を主張しておるのであります。これがポツダム宣言精神であります。これなくしては、日本の自由と平和と独立は絶対ありません。(笑声)諸君はげらげらお笑いなるが、もしも政府にして、ここに思いをいたさないならば、民族に対する裏切者として、必ずや近い将来に愛国的日本人と、全世界の民主勢力の反撃を受けることは明らかである。(拍手)私はこれをもつて質問を終ります。     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  28. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます  わが吉田内閣財政経済政策に対して金融界、産業界とも賛成していないとのお話であります。昨年の四月に、吉田内閣当初の予算を出しましたときにも、われわれの考えているところは、なかなか皆さんに徹底しないで、いわゆるドツジ・ラインというので、かなり心配せられたようでございましたが、過去一年間の経過を見ますると、だいたいわれわれの当初の二十四年度予算案は、皆さんにおわかりになつて、非常に経済もよくなり、御安心なすつたようです。しかして、今回の予算におきましては問題の債務償還も、前年度よりよほど少くなつておることは、昨日も申し上げた通りで、これはやはり、だんだん本会議並びに委員会で皆さんと議論しておる間にわかつて来ると思ひます。昔から、良薬は口に苦しで、なかなか苦いのではありましようが、とにかく良薬でありまするから、国民はそのうち安心されると思うのであります。  次に、外国人あるいは外国資本に対して税の軽減を考えておるかという問題でありまするが、これは財政演説で申し上げた通り考えております。日本の再建に必要なる資本や技術は、私はぜひとも早く入れたいという考えのもとに考えておるのであります。  次に、農家は非常に困つているという話でございまするが、農業所得、農家に対する所得税は非常に軽減します。その他地方税を加えましても、平均、農家につきましては、ほとんど半分くらいの負担になるということは、あとから説明申し上げます。  なお関税政策につきまして申し上げまするが、別に保護関税を全部やめたといことは、だれも言つておりません。日本経済発展に必要な関税は置きます。あまり取越し苦労はなされない方がいいと思います。  次に見返り資金国民の租税からできているのだということは、とんでもない話でございます。今の計算は、アメリカのエード・フアンドを三百六十円で換算しておるのであります。税金から出しておるということは、実際のCIFの価格より安く国民に拂い下げておる差額を国で負担しておるのであります。これはエード・フアンドでなつておるのであります。これは委員会でも御説明申し上げます。今ごろ見返り資金国民の税から出ておるということを言われることは、私は非常に心外に思つております。(拍手)     〔国務大臣青木孝義君登壇〕
  29. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 川上議員の御質問に対してお答えを申し上げます。  まず第一に、アメリカ中心とする世界経済恐慌はますます深まり、そうしてこの影響が日本に集中的に現われるのではないか、この情勢に対して、政府は何ら自主的識見を持つていない、こういうふうに見ておるがどうか、こういう御質問であります。この点につきましては、皆様も御承知の通りに、米国経済は、昨年七月を底といたしまして、その後特に生産は上昇たしておりますし、失業も減少しつつあります。そうして景気は次第に回復しつつありますることは、皆さん御承知の通りであります。そこで、世界経済恐慌が深まるとは、この意味において、私は思つておりません。もちろん、日本経済の働きに影響を受けるのは当然でありまするけれども、それに対処して、政府といたしましては、輸出の振興、それから三百六十円の為替レートの堅持、これを最重点政策といたしまして、国内経済の安定と復興のため各般の施策を行つて行きたい、こうえておる次第であります。  その次の私への御質問は、価格差補給金の減廃は、価格体系をつり上げて低賃金と低米価にしわよせさせる、典型的な植民化政策ではないか、こういつた御質問であります。政府といたしましては、価格差補給金は本来経済の正常化ということを目標としておりますので、極力これを削減して参りたいと思つております。そこで、今後積極的に国際経済に参加して貿易を伸張して行くためには、価格差補給金で支えられておる、これまでのような、つぎはぎだらけの物価体系というものを、いつまでも続けて行くわけには参りません。そこで、今後の問題といたしまして、多額の補給金支出のために、国民生活にいつまでも租税負担を與えて行くことは適当でないと考える。従つて、価格差補給金は極力これを削減して、経済の正常化をはかつて参りたいと思います。承つておりますと、まつたく別の世界のお話を承つておるようで、はなはだ私どもは、こつけい至極に感じた次第でございます。(笑声、拍手)     〔国務大臣大屋晋三君登壇〕
  30. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 川上君にお答えします。  川上君は、国鉄の独立採算制をとつたということが、おわかりにならないようでありまするが、これは国家財政を軽減する意味におきまして、鉄道は鉄道でまかなうという建前であることを御了承願います。  なおまた、見返り資金を使つているのは、鉄道をアメリカに売り渡すことになるじやないかというような、ばかなことをおつしやいましたが、かようななことは絶対にありませんから、御心配はいりません。(笑声、拍手)     〔国務大臣小澤佐重喜君登壇〕
  31. 小澤佐重喜

    国務大臣(小澤佐重喜君) 川上君にお答えいたします。  お話のように、電気通信建設費用といたしまして、二十四年度に百二十億、二十五年度にさらに百二十億、この二百四十億を、見返り資金勘定から当省の建設勘定に使用することになつていることは、その通りであります。  また、公共企業体の現在の事業を、あるいは民営に移すのではないかというようなお話でありまするが、これは第六国会におきまして、当院並びに参議院で、電信電話復興決議がございました。つまり、現在の電気通信事業の復興・拡張を企図するには、どうしたらばいいかということを、総理大臣の諮問によつて、現在審議会が審議いたしているのであります。従いまして、今川上君が非常に心配しているようなことがあつたからといつて、ただちにアメリカの奴隷になるのでもなければ、植民地化するのでもないのであります。何となれば、ただいまの見返り貸金は一定の條件がございます。すなわち、年利五分、十五年間に償還するという厳然たる條件のもとにやつているのでありまして、ごうも心配する点はないということを、はつきり御了承願いたいのであります。(拍手)     〔国務大臣稻垣平太郎君登壇〕
  32. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 川上君の御質問は、東南アジアを中心とする貿易に対する御批評のようでありますが、われわれは、許されたる條件のもとに、可能なる範囲において、いずれの国とも貿易をいたしたいと存じておるのであります。ただいまにおきましては、とにかく東南アジアがわれわれの輸出品の消化地としてもつとも中心的に考えられておる、こういうことにすぎないと存ずるのであります。たとえば、われわれはソ連とも取引をいたしております。ソ連の取引におきまして、オープン・アカウント以来、大体われわれは七百万ドルの輸出をいたしております。ソ連からは五百五十八万ドルであります。われわれは、この差額を補うために、ずいぶんソ連とも交渉いたしておりますけれども、なかなかこれは実行されません。それから向うからオツフアをいただいておりません。  対中国の貿易でありますが、中国貿易につきましても、今日占領下にありますので、われわれはその政策に従わなければなりませんけれども、個々の取引におきましては、すでに天津あるいは青島のバイヤーを通じて取引が行われておりまして、今後これも増加する見込であると私は存じておるのであります。  なお、東南アジアは戰略物資の産地であるからして、われわれは戰争危險に巻き込まれるおそれがあるというお話でありますが、われわれは、さようなことは全然考えておりません。こ心は考えられている人自身の気持に大なる危險があると考えるのであります。(拍手)     —————————————
  33. 山本猛夫

    ○山本猛夫君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十七日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  34. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十八分散会