○
神山茂夫君
民自党の
総裁であり、同時に
内閣総理大臣である
吉田茂君に対して、私は共産党を代表して若干の
質問をせんとするものであります。ただ、私が聞かんとする大綱の点につきましては、すでに淺沼議員
並びに北村議員からの
質問がありまして、これに対して、まことにご親切な回答が副
総理からあ
つたのでありますが、この点についての私の
質問はあとでいたすといたしまして、この根本的な点につきましては私は繰返すことをいたしません。
私たちが、ここでむしろ問題にしたいのは、なぜ
吉田総理がこういうふうな発言をせざるを得なかつたかという、まことに同情すべき点について、一言触れておきたいのであります。この点は、すでに北村君によ
つて指摘されておりますように、前
国会における
議事の
運営が思うにまかせなかつた。ことに食確法の処理にあた
つては非常に窮地に追い込まれた。これは單に
野党各派の構成が強かつたということの結果ではなくして――これもありましよう。しかし、ここに並んでおられる
民自党の同僚議員の
諸君の腹の底にも、あの食確法を持
つては農村に帰れないという、まことに痛切、正直なものがあつた。(
拍手)この点が、古田君をして日ごろ悩ませてお
つたのではないかと思うのであります。しかも、この問題をとらえて、全
国民、ことに農民
諸君の意思を代表しての
野党各派、これが一致結束した攻撃は、非常に大きな痛手であつた。
皆様も御承知のように、平清盛は、わが世のことは何でもままならないことはないと言つた。あり誇つた平清盛に、ままにならないものがあつた。加茂川の水と山法師だ。われわれは断じて山法師ではない。われわれは、ちようど加茂川の水のように、自然に流れるものだ。しかし、この
吉田君が思うにまかせなかつたところの、
国民の
批判と、それから
野党の一致結束した反撃こそ、あの気の弱い
吉田君をして、遂に――これは悲鳴と北村君は言いましたが、これはヒステリー性の叫び声かもしれない。とにかく自分の本心を吐露したのが昨日の
談話であります。もしもこれが單なる一井の個人の
談話であるならば、私たちは、これを笑
つて過ごしてよいのでありますが、残念なことには、
吉田君は
民自党の
総裁である。ワン・マノ・パーティのワンマノである。しかも
内閣総理大臣である。このことが、私たちをして、あえてここで問題をを問題として取上げざるを得なくした最大の原因なのであります。(
拍手)
さて、この話の
内容をよく私たちが見てみますと――今日ここに尾崎先生がおられないことは、まことに遺憾なのでありますが、か
つてあの
日本の軍閥と藩閥が横行して、天皇の名をかたり、天皇の袖に隠れ、袞龍の袖に隠れ、詔勅をたてとして
国民の
批判を押え
たことを、私たちは思い出さざるを得ない。いま皆さんの目の前で、あの
吉田総理は、文字
通りこれと同じことをやろうとしておられる。
彼の
声明のまつ先にあるものは何であるか。いわく九
原則である。その次にあるものは何であるか。いわくドツジ・ラインである。その次には、恐れ多くも
マツカーサー元帥の名前をひつぱり出しておるではないか。(
拍手)これこそ、か
つてあの藩閥
どもが天皇の名をかたり、その袞龍の袖に隠れて
国民の輿論を抑圧したのと、まつたく軌を一にしておる。違
つておるところは、ただ
一つある。か
つて日本の天皇の名を使
つて、藩閥があの凶暴なる
政治を行つたとするならば、あの
吉田君は、まさに外国の人間の名前だけを使
つておる。ここが特徴である。
さらに彼の
談話の
内容を見ますと、彼は
国民の厳格なる
批判、
国民の希望、
国民の熱情、
国民の感情を反映しておる
野党各派の意思を押えつけようとしておる。これは、か
つて東條たちが――あの、われわれが背負つた帝国
議会、この帝国
議会を翼賛
議会とした。真に勇敢に
反対意見を述べる人は、指を折
つて数えるような、そういう
議会である。そういう
議会を
吉田君が望んでおるのであります。
吉田君の頭の中にあり、胸の中にあるものは、あの東條がそこへのさば
つておつたように、あれと同じ
議会にしたいのである。
彼は、口を開けば民主主義と誓う。しかし、その
本質は、彼の哀れな悲鳴の中にはつきりと現れておることとを、われわれは冷静に見抜き、また見抜かざるを得ないのであります。
従つて、
世界の目が、この
吉田君をさして極右――いやでもありましようが、聞いてもらいたい――極右と言う。また
日本人の中の一部の人は、彼を目ざしてファシスト的と言う。――的をつけておきます。――的という彼が、まさにか
つてのムソリーニ、ヒトラー、そしてあの東條が昔ここにいたと同じことを望んでいるということを今度の
談話は、はしなくも暴露しているのであります。
彼は、今度の
談話の中で、大きなことを
言つている。われわれの尊厳と
責任の自覚云々という、もつともらしいことを
言つているのでありますが、(「その
通り」)一体その
責任をサボリ、そうしてその尊厳を汚したものはだれであつたか。(「共産党だ」)と呼ぶ者あり)
諸君、そこらで共産党という声がかか
つている。よろしい、事実を見よう。第六
国会におきまして、
予算案が問題になりましたときに、ここに増田君がおられますが、増田君は、まず十日には大体上程できる、こう言つた。それが十二日に延びました。そり次には十四日に何とかしますと言つた。十四日にはやつと上が
つて来ました。さらにこの十五日には財政
演説がありまして、
諸君も御承知のように、十六日から
野党各派からの
質問が行われるようにな
つておつた。ところが、その場合に、
総理の
出席を
野党各党が求めたばかりではなくて、賢明な
民自党の議員
諸君の中にも、それが当然とお考えになつたに違いない。
ところが、私たちがこの問題を問題にしました場合に、
吉田総理は一体どこに行
つたのであるか日ごろから――すでに北村議員によ
つても指摘されましたように、
参議院その他における失言問題、さらには
国会の構成
そのものに対する失言、こういうふうなものに対しまして、われわれは衆議院の
議院運営委員会に
出席を頼みました場合に、彼は一度も出て来
たことがない。しかも、この十六日に始まろうする財政
演説に関連する
質問におきましては、ぜひ
吉田君の
出席を必要とする。ところが、私たちがこれを求めた場合に、彼は出て来なかつた。
理由は何であるか渉外
関係である。またしても渉外
関係。(「その
通り」)
私たちは、物事の道理がわかる。私たちは、話の筋道をよく知
つている。ですから、十六日、あるいは十七日、真にだれとどういう事情でございますと、せめて増田君を通じてでも
言つて来たならば、私たちはそれを
了承るに決してやぶさかではない。ところが、どうしても古田君は出られない、彼は渉外
関係の重大な要務がある、こう言う。そうして
総理をあくまでも
出席させなか
つたのであります。気の毒なことに、十一月十七日の読売新聞には、こういう記事が出ておつた。
吉田首相に、十一月十六日、衆議院本
会議に
出席せず、二時半から外相官邸で、三時間にわた
つて、米太平洋沿岸の有力な土建業者アツキンソン氏と会談したと、読売新聞に報道されている。(
拍手)しかもアツキンソン氏は、会見後、INSの記者に対して次のように語
つているのであります。(「そこまで
言つてはだめじやないか」と呼ぶ者あり)そこまで言つちやだめだという話がありますが、もう少し言わなければならない。「私ほ個人の
資格で單に視察に来たたけである。今度の訪日は二度目だが、そのときに
吉田総理と会見した」、
諸君、この個人的なとも思われる渉外
関係を、国権の代表者であり、
国民の信託に基いて国権を運用している
国会に向
つて報告できないのである。こういう現実がある限リ、だれが何と言おうとも、この問題の
責任は
政府側にあることに古田君にあると言われて、何がおかしいだろうかそこでやじつた
諸君、どうだ、これは(
拍手)
さらに彼は、昨日も、すでに他の議。員
諸君によ
つて指摘されましたように、確かに病気であるらしい。この病気の
内容について、私はあえてここで云々しようとはしない。しかし、もし副
総理にして良心が一片だに残
つているならば、一応病気の実情を話してみたがよろしい。ただ問題になるのは、
諸君、か
つてこの帝国
議会に、この演壇の上に、凶漢によ
つて狙撃されて、生命の危機を憂えられていた、あの
濱口雄幸君を連れ出した人さえある。われわれは、そのひそみにならおうとするものではない。しかし、その生命の危機さえ冒して、自己の
責任を果すために演壇に立つ
総理と、ちよつとかぜを引いて大磯へ行
つて、そうしてゆつくりしている
総理と、どちらが
諸君、更に
国民に対して
責任を負う
総理だ。(
拍手)
しかも濱口君は、か
つて日本の主権は天皇の軍閥のもとにあり、
国会は單なるその装飾物にすぎなかつた、そういう時代の
総理であつた。今日においては、
お互い国会議員が代表するところの
国会こそは、真に
国民の主権を代表するものである。しかも、その多数党によ
つて総理に選ばれている
吉田君がかの濱口君に劣ること何等ぞや。これを聞きたい。(
拍手)これが民主
政治家なのか。これが民主主義者なのか。これこそ
民主自由党にはふさわしいが、
日本の
民主化を語るには最もさわしくない人物なのであります。(
拍手)
さらに、こまかなことに省きますが、昨日の
運営委員会において、今名前をあげることはいたしません。おさしさわりがあるから申し上げません。申し上げませんが、十一時を過ぎた、きのうの
運営委員会におきまして、
吉田君がこういう
談話を発表したということを、
民自党の
委員諸君の大部分が御存じなかつた。極端な表現をすれば、だれ一人知らなか
つたのであります。さらに夜開かれました
委員会におきまして、この
談話の経緯その他をついても、だれ一人
責任ある回答ができなかつたではないか。こういう事実を見る限り、皆さんが望もうと望むまいと、
吉田君がワン・マン・パーティであると言われ、
ウルトラ・コンサーヴアテイヴであると言われるのはあたりまえであ
つて、何もふしぎはない。(
拍手)従いまして(発言する者あり)従いまして、全
世界の前に
日本を誤解させる、こういうふうに彼は
言つておりますが、しかし、
日本のことを誤解させるのは、われわれ
野党はなくて、まさに
諸君、こういう実情を演ずるところの
吉田君その人にあるということが問題なのであります。(
拍手)
彼はみずから、今の北村君の表現に寄れば、耳をおおうて鈴を盗むと言つた。彼は、おろかにも毛を吹いて傷を求めている。こういう形によ
つて野党を
批判したと思
つている。だが、まさに
批判されているのは、われわれを含む全
野党ではなく、
吉田君こそ全
世界の前に
批判されているのであります。(
拍手)
彼は、口を開けば、
日本は
民主化していると言う。だが、
日本の
民主化の現状は、この
総理をいただき、この
ワン・マン・パーテイのもとに、二百六十六名の
民自党の
諸君が、胸に一ぱいの悩みと叱りと憤激を抱きながら、ここにすわ
つていなければならぬという、こういう現状なのであります。(
拍手)(「そこまで心配してもらわなくてもいい」と呼び、その他発言するものあり)しかし、もしも
諸君が冷静に
国民の声を聞かれるならば、
諸君の地盤における農民の声を聞かれるならば、また学校を求めている子供たちの希望を聞かれるならば、中小業者の希望を聞かれるならば、必ずや、こんな
ワン・マン・パーテイありがたが
つているのではなくて、もつと別個な方向と道と努力があるに違いないことを私たちは信じ、また必ずやそうなることを疑わない。
さて……(
質問しろと呼ぶ者であり)ただいまから
質問いたします。(笑声)ことにこの点は、林副
総理にお尋ねしたいのであります。私は、すでに今までの話の中でも、皆さんが御承知のように、
吉田君に対して、すでに
淺沼君及び北村君の真正面の
批判があつた今、あえて君が
吉田君と四つに組むの忙少しおかしい。ちやんちやらおかしいそこで私は、副
総理にちよつと聞いておきたい
先ほどからの各議員の
質問に対して、副
総理がのこのこ来て回答され
たこの場合、私は一言しておきたいのでありますが、もしもここで副
総裁が答えてておりますように、真に彼は
政府の代表者としてだけ、ここに立
つておるのであ
つて、
與党としての
民自党の代表者でないから、今のような問題に答えられない、そう考えておるのであるとしますると、私は、この
質問に対して、一体だれが答えるのか。ここにすわ
つておるのは副
総理ではなくて、廣川弘禪君あたりで適当なのではないか、こういう皮肉さえ言いたくなるのであります。そうではなくて、彼はほんとうにまじめに、今行われております
野党各派からの
質問に対して、言葉を盡し、誠意を盡し、真に
国民の
批判に訴えるために、その
見解を述べるべきだ。それを一言も言わずに、ああいう逃げ方をするのを、
日本語では卑怯者と申します。(
拍手)
従つて、この点について、副
総理からはつきりした回答を求めたい。なぜならば、われわれが述べたようなことについて答える度胸もなければ、趣旨もなければ、腹もない、何もないのだ。(
拍手)
こういうときにあたりまして、こういう
談話を発表し
たことによ
つて、私たちが憂えるのは、まさに今
日本は、全面講和か、それとも単独講和かの、大きなわかれ道に立
つておる。ことに
国民の中では、自分の生活を守るだけではなくて、
日本の独立のために生涯をささげようと考えておる。こういう重大な時機にあた
つて、この
世界の目の見ておる前で、
日本の最大の党の
首相であり――この
首相という言葉は
吉田君の言葉であります。――
首相であり、そうして
総理である
吉田君が、各党の
批判にこたえないような、こういう笑うべき
見解を述べることは、まさに全
世界の前に
日本をさらしものにし、わが
国会をさらしものにし、さらには
民自党をさらしものにすることにたりはしないかこれをおそれる。(
拍手)
私たちは、この重大な時機でありますから、すべてこの点を、
総理そのものがここに立
つて所信を述べ、自分の失言はわび、撤回すべきは撤回し、そして自分の無知を
国民の前にわびるべきではないか。そういう腹があるかないか、これを聞きたい。これをも
つて質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣林讓治君
登壇〕