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1950-04-11 第7回国会 衆議院 法務委員会通商産業委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十一日(火曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    法務委員会    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君    理事 猪俣 浩三君       佐瀬 昌三君    押谷 富三君       松木  弘君    眞鍋  勝君       武藤 嘉一君    田万 廣文君       加藤  充君    世耕 弘一君    通商産業委員会    理事 永井 要造君       岩川 與助君    門脇勝太郎君       高木吉之助君    坂本 泰良君       田代 文久君  出席政府委員         検     事         (法制意見第一         局長)     岡咲 恕一君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君  委員外出席者         法務委員会專門         員       村  教三君         法務委員会專門         員       小木 貞一君         通商産業委員会         專門員     谷崎  明君         通商産業委員会         專門員     大石 主計君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第六四  号)     ―――――――――――――
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより法務委員会通産委員会連合審査会を開会いたします。  法務委員長であります私が委員長の職務を行います。  これより先日に引続き商法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑通告がありますから、これを許します。岩川與助君。
  3. 岩川與助

    岩川委員 去る八日合同審議のとき同僚門脇委員から関連法令提出時期その他五項目にわたつて質問をいたしました。これに対する政府の御答弁には幾分了承しかねる点がありますのでさらに今日私から再質問をしてみたいと思うのであります。  株主総会特別決議定員数などに関する本法案の第三百四十三條のむずかしい規定を緩和してはどうかという質問に対しまして、政府特別決議の対象となる事項重大性にかんがみ、この程度の制限は必要である、また必要に応じ本法案第三百四十三條第三項の仮決議規定を活用すればよろしいというお答えであつたのであります。まず第一の点でありますが、政府だけが重大性を認めましても、かんじんの株主自身は一向にその重要性を認めない、また総会に対する関心熱意もないときがあるのであります。最近の実例をもつて御参考に供しますと、かつて日東化学工業株式会社、これは資本金二億五千万円、株主総数一万九千名弱の会社でありますが、本年一月二十五日総会開催のため、昨年十二月二十七日総会招集の通知を発しました。一向に委任状が集まらぬので、なお一月七日、一月十三日、同十七日の三回にわたつて督促いたしました結果、ようやく総数の四二%しか集まりませんので、さらに社員を特派して八方手を盡しまして、一月二十日に至つてようやく総数の五一%に達する委任状を得まして、辛うじて流会を免れたという実情があるのであります。また日発のような株式総数二千九百三十六万株、株主約十七万人というような大規模のものにつきましては、一回の総会招集費臨時措置法のときは六十四万七千五百円であつたものが、現行商法によりますと七百九十一万円という大きな金額を要するのであります。かように多額の経費と手数とを浪費するのみならず、その間相当時日の余裕を置かなければなりませんため、急の間に合いません。要するに特別決議事項重大性株主みずからが判断すべきものであつて政府の一方的判断によるものではないと思うのであります。  次に第二の仮決議の点でありますが、本法案の第三百四十三條第四項には「前三項ノ規定ハ会社目的タル事業ヲ変更スル場合ニハ之ヲ適応セズ」とあります。従つて今日のごとく、企業合理化その他のためしばしば会社目的変更を余儀なくせられる場合にはこれではどうにもしようがないと思うのであります。以上の理由によりまして、本件に関して本案第三百四十三條の第一項を、前條第一項の決議発行株式総数過半数に当る株式を有する株主出席し、その決議権過半数をもつてこれをなすと修正してはどうかと考えるのでありますが、これに対しまして政府の御所見を伺いたいのであります。
  4. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 三百四十三條に規定いたします株主総会特別決議要件が現在の株主の自覚と申しますか、総会に対する熱意が不十分であるという点から考えまして、多少行き過ぎではないかという点につきましては、私も同感の意を表するものでございます。しかしながら一般の態勢から見まして、株式会社、ことに大会社におきまして株主が分散することの度合いがはなはだしくなりますればなりますほど少数株主が現われて参りますし、この少数株主が大部分会社企業運営につきまして無関心でありまして、ただ配当あるいは株価の上下に関してのみ非常な関心を持つということが実情であるということも認めるにやぶさかではございません。従いましてこの不在株主漸次数を増す、これに対して株式会社をいかように適応せしめて行くかということが一つの問題であろうと考えます。このたびの法律案におきまして取締役会を強化いたしまして、会社業務運営につきましては、株主総会原則として重要な事項を除くほかは関與しないというふうな改正を企図いたしましたのも、かような実情に即しての考慮でございます、ところが三百四十三條に規定いたしまする特別決議事項は、ただいま御指摘になりましたように会社の組織の根本に関するような重大な事項、あるいは営業に属する事項でございましても、営業の譲渡とか、あるいは営業の譲り受けとか、あるいは共同経営といつたようなきわめて重大な事項に関することを決定いたす会議でありまするがゆえに、少くとも発行済み株数過半数賛成を得るということが、株式会社等民主化の見地から考えますとやむを得ない措置ではないか、現状から考えますとやや嚴格に過ぎるうらみもございまするけれども、先日も申し上げましたように、英米立法令に比較いたしましてきわめて寛大な規定考えまして、まずこの程度規定を置くことを必要やむを得ないと考えた次第でございます。ただいま御指摘になりました修正案はかような理由でございまして、政府といたしましては遺憾ながら賛意を表しかねる次第でございます。なお現行法に比較いたしますと、この改正案株主の頭数というものを要件といたしておりません点にかんがみまして、ことに大会社にとりましては決議要件が緩和せられたことになるであろうと考えております。
  5. 岩川與助

    岩川委員 私どもはこの実情に即して法律改正していただきたいと思います。さつきも申し上げましたような事実が現にあるのであつて、今までのような資本の小さい場合には、過半数といつても大して支障は来さなかつたと思いますが、昨年以来の資本の膨脹によりまして、非常に株主がふえている。事実実行不可能なことが到来する可能性が多分にあると思うのであります。それに応じたやはり改正をしていただきませんと、実情とかけ離れたものが生れて来て、せつかく改正をされるのに遺憾な点が出現して来る、こういうことになりはせぬかと心配をするものであります。なおひとつその実情に即した改正をしていただきたい。今までのような株式資本ではなくて、非常な厖大な数である、従つてそれを招集するために多大の費用をかけなければならないので、会社株主もむしろ逆に迷惑をすることが多くなりはせんか、かように考えますためにもう一度御考慮を煩わしたいと存ずるのであります。
  6. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 三百四十三條のこの改正案をつくりますにつきましても、私どももなるべく実情に即するようにいたしたいと考えまして、いろいろ研究をいたしたのですが、現在到達いたしました結論といたしましては、恒久法としての商法特別決議要件はまずこの程度をもつて妥当である、かように考えた次第でございます。この株主総会の実態を多少考究いたしたことがございますが、大会社のみならず小会社におきましても、株主総会に対しては大多数の株主が無関心でありましてその出席を求め、あるいはこの代理の委任状を集めることになかなか莫大な手数費用をかけて、会社は非常に迷惑するのでございます。会社当局におかれては株主総会否認論というふうなものをまじめに考えていられる向きもあるのでありまして、かような実情と申しまするものは、一片法律改正によつてなかなか修正いたすことはできないということも十分承知いたしておるのでございます。しかしながら繰返して申しまするように、会社機構根本に触れるような大変更をいたす決議を、発行済み株数過半数に当らない株主によつて決定いたすということは、いかにも行き過ぎのように考えまして、かようにいたしたわけでございます。もつとも株式分散現状から考えまして、なお会社敗戰後企業復興のために一銭一厘といえども節約しなければならないということ、なるべく無用な手数を省いて業務の本来に邁進しなければならないというような実情が、きわめて緊切なことを考えますると、ただいま御提案になりましたような法案を一種の暫定的な特例法として考えてみるということにつきましては政府といたしましても反対いたすものではございません。
  7. 岩川與助

    岩川委員 重ねて希望を申し上げて質問を打切りますが、事実今御説明になりましたように、非常な手数と時間と費用をかけて総会を開くことは、株式会社民主化すればするほど今後非常に多くなると思うのです。それだけにもつとよい事実を取上げての改正を希望いたしまして私の質問を打切ります。
  8. 花村四郎

  9. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 私は根本の問題について二、三、それから法文の内容の運用について二、三御質問したいと思います。私少し遅れましたから、前委員から質問があつたかもわかりませんがまず第一に株式民主化に基く経済民主化根本なつてこ会社法改正が行われるというふうに承知しておりますが、この改正がはたして経済界実情に適しておるかどうか、この点について通産次官の御見解をお伺いしたいと思います。
  10. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまのお尋ねでありますが、これはたいへんむずかしいことでありまして、総括的に適しておるかどうか。御承知のように商法改正の問題つきましてはいろいろの審議機関ができまして、日本のあらゆる学者及び知識階級を集め、またこれらの専門家も集めまして検討せられて得ました成案でございますから、大綱的に申上げますならばこれは実情に即したものだ、こう申し上げねばなるまいと思うのであります。しかし個々の点につきまして勘案いたしますと、若干行き過ぎであるということも考えられないではありません。ことに産業行政を担当いたしております通商産業省として見ますと、また早いではないかというような感じのする点が各所に認められるということを申し上げてもさしつかえないと思いますが、この法案が成立いたしますまでの間の経緯を考えますと、それゆえにこの原案に対しまして、適当な方法によりましてこれを改善して参るということのはなはだ困難である事情を察知するわけであります。一例をあげますと、ただいま岩川委員からお尋ねのありました株主総会特別決議の問題でありますが、これらにつきましても、在来独仏系法制のもとに育成されて参りました日本産業というものは、株主総会議決の形にもいろいろありますが、いわゆる法的統制と申しまして、大体一人もしくは特定人の集まりによりまして株式の過半を占めておりまして、その過半数の力をもつて経営統制して参りました形のものが、これが多数統制と申されるものであります。それからピラミツド型統制と申しますか、持株会社がありまして、持株会社が順次この段階を積み上げまして、最終持株会社はきわめて小なる投資でありましても、末端に行きますとピラミツドのすそが非常に広がりまして、各種の企業支配権を持つという統制方式もあつたのであります。一番発達しました、いわゆる民主主義に近い制度経営者統制型というのでありまして、大体一人であるいはその親族、縁故者等によりまして資本構成の一割以上の株を持たない。御指摘日発とか、かつて東京電燈、かような会社は十人寄せましても一割の株式にならぬ。かようなところは法的統制もなければ、ピラミツド型統制にも入らない。結局経営者統制型と申しまして、経営者手腕力量を買いますところに委任状が集まりまして、その会社経営統制されて参つた。これはまだほかにもあります。しかしそれが本来でありませんから、詳しくは申しませんが、おおむねさような形で育つて参りましたのが日本株主総会決議機構の状況であります。これを今回の改正に一飛躍いたしますることは、これは法律の精神が英米法、ことにこの中に授権資本制、オーソライズド・キヤピタル・システムというものを取入れておりますこと、あるいは無額面株、これはアメリカ以外にはないのであります。英国にもそういう類例はない。そういうものから見ますとなかなかぴつたり参りません。こいねがわくば過渡的な措置といたしまして、かようなことは附則にでもこれになれますまでの一つ練習期間を與えてほしいというのが通商産業省としての偽らざる気持であります。とにかく各株式市場も開設はせられておりますが、三原則のもとに縛られておりまして、ただいま自由な運営は許されておりませんけれども、とにかく証券取引所のほんとうの使命は発行市場であり売買市場でなければなりません。そうして財閥が解体いたしました以上は、大衆投資によつて資本の調達をいたすことが原則になります。大衆投資はすなわち株式の分散することであります。株式の分散されました議決権を、これを十四日や十五日の期間を與えまして、一片の書面の通告により委任状を集めろということは、これはなかなか困難な事実でありますので、この間におきまして訓練ができますまで、いわゆる大衆資本家が現在の機構になれますまでの経過措置というものはぜひ必要であろうと思います。しかしながら当初から申し上げましたように、この法案をつくりますまでの間の関係方面との交渉等におきまして、政府当局としては、おそらく法務府としても実情を無視したお考えではなかつたでありましようが、かような原案にならざるを得なかつたであろう。かように考えておりますので、でき得べくんば運用の面、と申しましても法律には裁量の限度がありますから、他の行政的な措置と違いまして運用の妙味もありません。そこで一々の問題につきましては、何とかでき得る範囲におきまして日本産業運営を萎微沈滞せしめないと申しますか、あまり障害にならないようなことを法務府が中心になつて考えをいただき、かつ法務委員の方にもひとつ御研究をいただいたならば仕合せではなからうか、かように思つておる状態であります。坂本委員お尋ねに対して適切なお答えとは存じませんが、問題が全般にわたりますので、一言をもつて盡すようなことができませんので、ただいまの岩川委員お尋ねに便乗いたしまして、若干通産省としての考えを申し上げた次第であります。
  11. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 起案者の方、あるいは審議会の方の経過について実業家学者意見を広く聞いたと言われますが、学者の方も英米法系独法糸とあると思うのですが、双方の学者の顏触れが出ているように私は承知いたしておりますが、この二つにわけたおもなる学者見解を聞かれて、そうしていずれの見解を主として起案されたか、その点をちよつと承りたいと思います。
  12. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 法制審議会が発足いたしましたのは、制度の上では六月の一日でございますが、商法改正法律案要綱を示しまして、審議会が活動いたしましたのは八月の十三日以降でございます。なるべく早く成案を得たいと考えまして、大いに御研究願つたのですが、時間的な関係なり、場所的な関係がありまして審議会商法部会委員として選ばれました学者は、主として東京大学及び京都大学、それから東北大学商法担当教授でございます。従いまして、中には英法相当研究しておられた方もあるようでございますが、大体従前の商法ドイツ系商法でありますために、大陸法の造詣の深い方が多かつたと考えます。具体的に申しますと、東京大学鈴木石井教授京都大学の大隅、大森両教授東北大学の小町谷先生とか伊澤教授、それからちよつと正確に名前を存じませんが、昔の商科大学田中誠二教授、そういう方々学者としておもに参画されたわけであります。
  13. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 学者として私立大学関係から来ませんでしたか。
  14. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 私立大学からはどなたも関與なさいませんでした。
  15. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 現在は高等試験なんかも私学からも一、二出るようになつたのですが、往々にして官学万能になりやすくて、私立大学権威者意見を聞かれることが非常に簡素になつている。この商法改正にも、あるいは慶応にしても、あるいは早稻田、中央その他の大学におきましても、相当権威者がおるのですが、こういう方の選考がなかつたということは遺憾に思うのであります。そこでこの学者独法系英米系の点で、結局英米系の理論にまとまつた。もちろん独法系学者といえども英米法系の点を相当研究している学者でありますが、その意見実業家その他実務家方面委員との間に、どういう見解の食い違いがあつたか、その点のいきさつをお伺いしたい。
  16. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 学会の方面意見と実際会社経営にお当りになつておられる方々意見との間で、ひどく食い違つた意見が闘わされたというようなことは、あまりございませんでした。たとえて申しますと、政府が提案いたしました原案要綱では、累積投票とか、あるいは書類閲覧というものを非常に嚴格にいたしまして、個々株主に当然累積投票請求権を認めましたり、あるいは個々株主に一様に会社の会計に関する帳簿書類閲覧権を認めたというふうな点につきましては、学界におきましても、やや行き過ぎではないかという意見が出ますし、実業界の実際を担当されておる方々からは、これは非常に濫用されるおそれが多いのではないかというふうな猛烈な反対意見が出まして、その点を調節されまして、本法律案のように修正されたのでございますが、問題の取扱いにつきまして、学者立場と実際家の立場とがひどく相反しまして、論議を生んだというふうなことは、あまりなかつたと考えます。
  17. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 そこで無額面株式の点について、実業界学者界の間に何らか見解の相違その他はありませんでしたか。
  18. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 今正確に記憶いたしておりませんが、理論的には無額面株賛成であるというのが一応の意見であつたと思います。学者の中で、無額面株はちよつと疑問ではないかというふうな意見を持たれた方も、多少あつたかと思いますが、あまり強い反対はございませんでした。実業界の方におきまして、無額面株は、実に危險きわまるから、嚴重に考えてもらいたいというふうな意見は、法制審議会、あるいは商法部会、または小委員会におきましても、あまり出なかつたと記憶いたしております。
  19. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 そこで無額面株式制度ですが、この制度がはたして資本吸収の便宜になるかならぬか、この点について大いな疑問を持つておるわけですが、この点について通産次官見解をお伺いしたい。
  20. 宮幡靖

    宮幡政府委員 無額面株式発行によりまして資本の調達できることは、先ほども申しましたように、大衆資本を集めなければならない現在の経済機構におきましては、この方法が非常によいものだと考えております。しかしながらこの法律が実際に運用されまして、大衆投資家に親しまれるには相当期間がいるのじやないかと思つております。これは法理論ではございませんが実情から申しますと、かような法文は特殊の会社についての一、二は格別といたしまして、おそらく全般的な産業会社におきまして、この法文がほとんど空文化すような事態がしばらく続くのではなかろうか、かように考えておるわけであります。特に先ほども申しましたように、日本証券市場の発達がまだ制限的な関係にありますので、容易にこの無額面株を消化します機関もございませんし、消化して市場を通じてこれを大衆にばらまくというような機構ができて参りますれば格別でありますが、一手に無額面株を引受けるというような信託投資的な制度でも発達して参らない場合には、容易にこれは利用されないのじやないか、これはあつても別に害はない。もしよく利用されますならば、非常に有効なものでありますけれども、残念ながら現在の日本実情におきましては、しばらくこの法律によります実際の運営というものは利用度が乏しいのではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  21. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 実はこの点に対しては、大臣にも出てもらつて、もう少し材料に基いた答弁を願いたかつたのでありますが、これはあとで田代委員からも質問があると思いますから、ただ私はこういうものを法規上認めて、実際に活用の見込みがあるかどうかという点について、非常に疑問を持つておるものであります。  そこで次は取締役の問題でありますが、これは従来の運営のやり方で実際にならされておるものにおいては、その実績に照してうまく行くかどうか。これは非常に疑問を持つておるものでありますが、この取締役権限が附加され、そうしてその結果は株式民主化という点とは逆行して、取締役少数者独裁に陷りはしないか。またひいては独占資本主義をこれで謳歌するのではないかという疑問が大いにあるのでありますが、かような点について、法律起案に当つて少数者独裁になりはせぬかというふうな考えをもつて立案せられたかどうか。その点についてお伺いしたい。
  22. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 株式会社機構民主化という問題は、いろいろな問題を含んでおるのでございますが、今坂本委員の御指摘になりました取締役権限の強化というものが民主化と逆行するおそれはないか。ひいてはこの独裁的な傾向を助長し、さらにそれが他の関係と結びつきますと、財閥支配にかわるような特殊な経営者連合というようなものにもならないかというふうなお尋ねだと思いますが、株式会社機構民主化一つの問題といたしまして、いわゆるコーポレーシヨン・デモクラシーとでも申しますか、株主というものの現実のあり方というものから考えまして、これが会社の一切の経営というものを指揮監督するということは、りくつはともあれ、現実株主総会というものの動きを考えますと、先ほどもるる御説明のありましたように、大多数の株主が無関心で、株主総会出席することをはなはだ好まない。なるべく総会などには出席をしないし、委任状も出さないでいて、そうして平然としておるというのが株主総会あるいは実業界実情だと考えますから、会社経営というものをある程度まとまつた專門的な、練達堪能な人に委託する。言いかえれば経営と所有との分離というようなことは、株式会社におけるデモクラシー上当然の進み方であろう。その場合にただ無條件経営者会社経営の実権の一切を委託いたしまして、何ら顧みないということになりましては、それこそ事実上の独裁を招来いたすことでございますから、株主取締役との間の信任関係あるいは進退関係というものを強化するという意味におきまして、任期というものを検討いたすことが必要ではなかろうかと考えておるのであります。あるいは業界では現行法のように、任期を三年にすることが適当であるというふうな御意見もございますが、アメリカ立法例等も検討いたしまして、これを二年といたしまして、信任を問う機会をなるべくすみやかに来さしめるということにいたしたのも、経営者支配に対する株主間の検討の機会を與えるためであります。  それから経営定款目的範囲内に限定せられ、またそれが定款違反の行為でない場合には、取締役全部が信任されるわけでございますが、いやしくも不法な、あるいはイリーガルな定款違反取締役の行為に対しましては個々株主による嚴重な監査権というものを認めた次第でございます。この方が株主総会というものの総体的な形における監督よりも、もつと具体的であつて、しかも適切である。かように考えまして、個々株主による一つの監査権、言いかえればただいま申し上げました不法定款違反の行為に対するさしどめの請求権、あるいはさような行為から発生いたしました取締役の責任に対して、個々株主がこれを追究し得るところの代表訴訟というふうなものを認めました点も、経営者独裁になることを防ぐ一つ措置であるわけであります。  そのほか株主の権利をいろいろの面で強化いたしておりますが、そのことはコーポレーシヨン・デモクラシーの実現のために、株主総会としての権限はある程度圧縮せられましたけれども個々株主あるいは小数株主による会社に対する監督権というふうな面から、これを十分補うということにいたしておりますので、坂本委員指摘のように、極端なる経営者独裁ということにはならない。ことに重大な問題は、会社経営の成果は、一に経営に当つておる取締役の才幹と識見によるわけでありまして、取締役株主関係はきわめて倫理的な信任関係に置かれておると申しますか、そういうふうに考えられますので、法制的にもその信任関係に違反することがないように、適当な規定を設けておる次第でございます。
  23. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 今御指摘の点もありましたが、私はここで少数者独裁について大いに問題にしたいのは、五十八條の第一項の第三号の点でありますが、この「会社業務ヲ執行スル社員又ハ取締役法務総裁ヨリ書面ニ依ル警告ヲ受ケタルニ拘ラズ法令若は定款ニ定ムル会社権限ヲ踰越シ若ハ濫用スル行為」こういう問題でありますが、この点について法務総裁の警告、この中にはもちろん私は今の場合も法規に含まれると思うのでありますが、その点についての御見解を承りたい。
  24. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 五十八條の規定は、第一項の本文にありますように、公益維持の見地からいたします会社の解散命令でありまして、その一つの請求事由といたしまして、この第三号にただいま御指摘のように、取締役定款に定むる権限を踰越する行為もしくは濫用する行為があつた場合に、法務総裁がこれに対して警告を與えるというにもかかわらず、依然その警告を無視して同様の権限踰越行為を犯したという場合に、裁判所に対して解散命令を申請するということにいたしておるのでございます。定款違反の行為、ことに権限踰越の行為、いわゆるウルトラ・ヴアイアリスの行為につきましては、これは会社内部の関係でございまして、多くの場合に株主取締役関係として適当に処理されるであろうと思いますが、それが公益保持という面に抵触いたすようなことになりますと、法務総裁は書面をもつて停止を警告いたすわけでございます。従いまして法務総裁が警告をいたしますることは、少くともそれがひいては公益に影響するという場合に限られるものであると考えるのであります。
  25. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 そこでそういう狹い見解になればその公益を維持するような場合はどういう場合か。従来のような商法関係におきましても、ことに定款に定むる会社目的ということは、非常に広く解されておる。従つて先ほど岡咲政府委員の言われた、いわゆる監査権とか、さしどめ請求権とか代表訴訟では、多数に分散された株主としては、これは実際上非常に困難だと思われる。  従つて私はこの法案を見まして、ただいま申し上げましたような少数者独裁という点が、ひいては発展して公益の範疇に入るところまで起案者考えてやられたか、少くともこういうことは全然入らずに、單なる公益違反と言えば、狹いいわゆる公益上の目的だけに限定されるという点にやられたか、もしそういう御見解でやられたならば、この公益を維持するためという場合はどういう場合があるか。そういう点をお聞きしたいと思います。
  26. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 第三項にございますように、刑罰法令に違反する行為というような場合は、これが公益に結びつく場合がきわめて多いかと考えまするが、いわゆるウルトラ・ヴアイアリスの行為ということになりますと、むしろそれは会社の内部関係でございまして、それがただちに公益に関係を持つことは、比較的少いだろうと思います。がしかし、今坂本委員が御指摘になりましたように、取締役独裁的にふるまつて定款規定を無視して、定款に定めたるところの目的外の行為をかつてにやる。しかもそれはひいては企業民主化を害するおそれがある。しかも株主はそれに対して無関心で、何らさしどめの請求もしなければ、また取締役に対して責任追究の訴えも起さないというふうな事態があつた。これを放置しておけば、結局株式組織に大きな欠陥を與え、ひいては御指摘のような、企業独裁的な傾向を生むというふうなことになりますと、これは明らかに公益を維持するため必要があるということになるのでございまして、さような場合には、法務総裁は会社の解散命令を出すであろうと考えます。
  27. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 あろうというので、大体この起案の際は、そういうことは全然考えなかつたというふうに了承していいかどうか。しかし今御説明のように「公益ヲ維持スル為」の公益の場合に入ることもあろうというような御見解があつたのですが、私はこの点は單なる会社内部の関係だといつて済まされない場合が非常に多いと思う。もちろん刑罰法令に違反するなどというのは、旧法にもありましたし、問題ないのですが、公益というこの点をもつと広く解してやる考えがあるかどうか、その点を最後にお伺いいたしたいと思います。
  28. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 法令もしくは定款に定める会社権限を踰越する場合に、解散請求を認めているわけでありますから、ウルトラ・ヴアイアリスの行為があつても、それは内部関係で公益に結びつきを持たないとは決して考えませんで、さような場合には、公益との関係は比較的少いだろうけれども、公益と結びつく場合もあるということは、十分考え起案いたした次第でございます。
  29. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 この点はまだいろいろありまするが、この程度にいたしまして、あと小さな問題ですが、一、二お伺いしたいのは、この十七條の合資会社の削除の点です。要綱を見ましても、第六十七に「株式合資会社を廃止すること」とあるだけですが、これはいかなる理由で廃止することになつたか、この点を承りたい。
  30. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 株式合資会社はその沿革を考えましても、株式会社が当時認許制度を採用されていたので、その認許を避ける意味におきまして、株式合資会社をつくつたというようなこともありまするし、また規定の実体を見ますると、非常に複雑でございまして、株式会社法を改正いたしまして授権資本制度というものを採用いたし、あるいは取締役権限を強化するというようなことになりますると、その原則株式合資会社に適用いたします場合には、非常に困難を生ずるということ。それから現実の状態を見まするのに、株式合資会社の数は、株式会社が十数万ございますのに比較いたしまして、わずかに百にも足りないというきわめて少数な企業形態であるというふうな点を考えまして、現状におきまして株式合資会社をしいて存置する必要はないのではなかろうか、現にございまする株式合資会社は、もちろん経過法によりまして、将来も存続を容認いたすつもりでございますが、新しく株式合資会社というきわめて変態的な企業組織を認める必要はない、かように考えまして、改正法におきましては、これを廃止するということにいたしたのであります。
  31. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 私ももちろん合資会社は実際上運営されていないから賛成です。最後に、これはほかの委員からも聞かれたかとも思いますが、監査役を会計監査役というふうにかえて、その権限も少しかわつておるのですが、それは会計監査役にしたがためにどういう利益があるか。どうしてこう改正する必要があるか。その点をお聞きしたい。
  32. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 取締役会制度を採用いたしまして、現実の会計の業務執行は取締役会の決定に基きまして、代表取締役がこれを行うということになりますると、取締役会が代表取締役業務執行を監督する機能を持つようになるのではないかと考えます。それともう一つは、監査役の中には、もちろん業務監査として大いに成績を上げていられる有能な監査役もいられたかとも思いまするが、会社業務執行というものから独立した別個の機関をして業務を監査さすということはまことに困難でございまして、もし監査役の機能が非常に強くなりますると、ドイツにおきまする監査役のように取締役業務執行を制肘するということになりまするし、ただ單に取締役業務執行などを見るというだけになりますると、大多数の日本の監査役がさようであるように承つておりまするが、得て有名無実になる傾きを持つようになるのではないかと思います。業務執行と絶えず密着しながら監査するというところに、監査の十分な機能があるように考えまして、これは監査役をして行わしめるよりは、業務執行を決定いたすところの取締役会というものに監査的な機能を與えるということで十分であろう、かように考えたわけであります。またアメリカにおきましては、御承知のように監査役という制度がございませんで、まつたくこれは取締役会における権限とされております。それと先ほど申しましたように、個々株主にある程度会社業務執行の監督権を與えておりますので、この両面の働きに期待いたしまして、監査役という制度を廃止することにいたしたわけであります。ところが監査役を廃止いたしまして、それで十分かと申しますると、多少の不安もございまするし、ことに株式会社は、いわゆる大衆の出資によるところの資本運営をいたすわけでございまするから、その会計の監査だけは別の機関をして嚴密に行わしめることが必要ではないか。そこでイギリスの制度にならいまして、会計監査役というものを置きまして経理監査をすることが適当である、かように考えたわけであります。証券取引法などによりまして、国家的な監督作用もございますけれども、やはり会社の内部におきまして会社の財政状態を調査し、そうしてこれを会社あるいは株主に報告せしめるということは、少くとも日本現状においては必要である、かように考えまして会計監査役を認めたわけでございます。
  33. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 私はこの経過をもう少し見た上でこの大改正が行われた方がいいのじやないかという見解を持つておるものでありまして、経済民主化株式民主化と申しましても、やはりこれに対しては、まだ非常に行き過ぎがある。ひいては小数者の独裁になり、独占資本家の一部寡頭政治に陥る危險性が十分にあるということを指摘いたしまして、質問を打切ります。
  34. 花村四郎

    花村委員長 田代文久君。
  35. 田代文久

    田代委員 これは宮幡政務次官にお願いしたいのですが、先日私は岡咲政務委員質問いたしまして、法務関係の方に專門的に答えていただきましたが、実ははつきりしなかつたのでありまして、その点を経済産業面からお願いしたいと思います。  私は、この法案が出ました経過なり実態なりを見ておりますと、ふに落ちないのでありまして、先日も申しましたように、相当この法案に対しては反対があつたように聞いております。学者なんかと言われる方は別としまして、実際の日本経済界、單に大資本だけではなくして、全般的な経済界産業界からこの法案に対して、これでよろしい、これができれば、この法案目的としておるような資金調達が潤沢に行われるから、ぜひやつてもらいたいという全面的な意向のもとにこれができたかどうかという点を、まずお伺いいたしたいと思います。
  36. 宮幡靖

    宮幡政府委員 これもまた先ほど坂本委員お尋ねと同じように、なかなかむずかしい問題でありますが、少くとも本法は、日本経済民主化に役立つ法制であるということについては、異存はないところであります。しかしながら、実情が必ずしもこれに合わないという点がある。そこで経過的な措置考えなければならないではないかということを、先刻お答えをいたしておきましたが、現状にぴつたり合わぬから、この法案のねらいます目的を達することはできないとは考えておりません。しかし先ほども申しましたように、独佛系の法制から完全なる英米系法制に移つて参ります間に、若干現在の実情にマツチしない点もあろうと思いますので、それらについては、十分考慮をめぐらすべきだと考えております。だからこの合同審査におきまして現われましたお尋ねのうち、株主総会特別決議の問題は一応片づいたと思いますが、坂本委員からお尋ねのありました、なお田代委員からも尋ねられるであろうということでありましたが、取締役会の問題のごときは、坂本委員が御退場なさいましたから申し上げるのではありませんが、通産省としての考え方から参りますと、むしろ取締役会制度をしきましたことの方が、実情にぴつたり合つていると思うのであります。現在の株式会社経営というものは、ほとんど取締役会の專決と申してもよいほどに、曲つておるかどうかは別としまして、発展しておるのが実情であります。なぜならば、委任状が多く取締役の手元に集まりまして、法的の裏づけのない取締役会なるものが、会社の仕事を專決しているというのが実情でございます。それを今回法的な裏づけをこしらえまして、健全な取締役会の存在を認める。そのかわり、かつての監査役と同じように。個々株主に対して監督権を付與いたしましたこと等は、非常に実情に適しております。ことに発起人取締役に対しまする特別決議による免責規定等を排除いたしまして、それを徹底的に追究できる機会を與えたことは、きわめて進歩的でありまして、会社運営実情に即して、かえつてスムースに行くのではなかろうかという考え方をわれわれの方では持つておるわけであります。先ほど申しましたように、無額面の株などがすぐに資本調達の役に立つかと申しますと、これは残念ながら漸次空文化するきらいがあるのではなかろうかとお答え申し上げておきましたように、事実に合わない点もありまするが、この法案の全体から考えますと、適当な時期にはこの法案の効果が現われまして、所期の目的が達成せられるものと考えておるわけであります。
  37. 田代文久

    田代委員 ただいまの説明は、はなはだ奇怪な印象を受けるのですが、先日の岡咲政府委員の御説明によりますると、この法案ができるについては、日本経済的な状態がしからしめて、必然的に生まるべきものだ、客観的な実情がこれを生み出したのであつて、あらゆる面から大体実情に合つているという確信のもとにつくつたのであるということでありましたが、私どもとしましては、どうもそれはおかしいじやないか、これはほんとうに日本経済界に合つて日本産業を発展させ、資金の調達を潤沢にさすという立場からなされたのであるかどうか。実はそうではなくして、外国の力がむりにこれをつくらせるという、そういう力が作用しなかつたかどうかという点を聞いたのでありますが、そのときに、そういう方面からの力も加わつて來たことは認めます。ということを言われたのであります。現在宮幡次官の御説明によりましても、この取締役会につきましては、実情に合つていると言われましたが、これはあとから質問いたしたいのでありますが、とにかくこの資金の調達、無額面株普及化という面から言いますと、これは明らかに実情に合つていないということを、政府当局自身が言われているのであります。なぜそういう実情にまだぴつたりしない、十分納得行かないような法案を、今早急に強引につくる必要があつたかということを考えてみますと、この法案の作成にあたつては、自主性のない立場からこれを作成し、提案したのであるということを認められるかどうかということの質問をしたいのであります。
  38. 宮幡靖

    宮幡政府委員 田代さんのお尋ねの中には、たびたび自主性のないという一貫した御主張がありますので、この点についてはあえてお答えはいたしません。私が申し上げましたのは、この法律をつくつて今ただちにやつても、これをマスターするには相当の時間がかかるであろう、従つてこの法律自体が空文化するおそれがあるということを申し上げたことは事実であります。またその通り考えております。従いましてこの法律の施行は来年に讓られておりまして、一箇年にわたる猶予期間をおいて、これに合うように、各産業人、社会人の心構えをつくるだけの準備期間をおいているのであります。そこに私どものともすれば現在に合わないものが、順次社会とぴつたり一致いたしまして、いい法制としてこの目的を達成し得ることを期待しているのであります。この法律そのものの解釈から行きますと、今ただちに現状に合わなくとも、経過期間をもちまして、それに準備の心構えを與えたならば、十分日本経済民主化のために役立つ法律であると、私は確信いたしております。
  39. 田代文久

    田代委員 先ほど質問に対してお答えがないのでありますが、なお申しますと、日本経済に直接参加しておられる人たちが大体全面的にこれを支持されたかどうか、特殊な大きな資本家だけでなくして、中小業者もその他も、これはわれわれの産業の発展のために非常にいい商法であるというふうに、全面的に支持されたかどうかという点であります。
  40. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 本法の立案につきましては、先ほど政務次官から御説明がありましたように、法制審議会の議を経まして、なるべく各方面意見を十分に承るというふうにいたしたのでございます。法制審議会のみならず。各商工会議所、あるいは有力な経済団体から、法制審議会に対していろいろの意見の開陳がございましたが、それをもしんしやくいたしましてこの法案をつくつたので、私どもといたしましては、十分現実日本経済状態に適応する、さように確信いたしている次第てございます。  それから先ほどのお話の中にございましたが、関係方面からむりにつくらせられたのではないか、そういうことを言つておつたというような御趣旨のことを仰せになりましたが、さようなことは私は申し上げたことはございません。関係方面からきわめて有力、かつ適切な示唆と申しますか、勧告のあつたことは事実でございますが、強圧を加えられたというような事実は全然ございませんから、もしさようにお聞とりでありますれば、御訂正を願いたいと思います。  この法律案につきまして、小中企業意見はどうかというお話でございますが、商工会議所あたりにおかれましては、小中企業意見も十分しんしやくされまして、御意見の開陳があつたものと考えます。一番問題になりましたのは、株式の讓渡制を本法律案が保障いたした点でございます。これは小中企業にとつてははなはだ迷惑ではないか、行過ぎはないか、家族的な、あるいは同族的な、組合的な株式会社が幾らもある、ことに小さい株式会社はほとんどそうだ、そのような株式会社に対してまで、株式の絶対讓渡制を考慮しなければならぬ理由はどこにあるのであろうか、これはぜひ検討してもらいたいというふうな要望はございましたが、しかし授権資本あるいは無額面株の採用については、不必要だという話は、かつて聞いたことがございません。だから政務次官から御説明がございましたが、この無額面株式というものは初めての制度でございますので、長い期間額面額になれました国民にとつては、きわめてふなれな制度として、あるいは受入れるために多少の準備期間を必要とするであろうことは、私も同様に感ずるのでございます。しかしアメリカの実際の経過を見ますのに、一九一二年にニユーヨーク州法において無額面額を採用いたしますや、一九三〇年ごろにはほとんど全アメリカの普通株が無額面なつたというふうな事態から考えますと、日本においてもあるいは早い期間内に十分慣熟いたしまして、これが活用されるということも、私は期待していいのではないかと思います。授権資本につきましては、これは田代委員は今しきりと議論をお持ちのようでございますが、これは危險だ、この制度日本実情に合わないというふうな意見は、私はどの方面からも一度も聞いたことはございません。松本先生が、そういう制度をとるよりは、あるいはドイツ流の認許資本制度で足りるのではないかという学問的な御意見をお述べになつたことはございますが、実際立案いたします経過におきまして、審議会においても、あるいは実業界においても、授権資本は行過ぎだというふうな意見は、私はまつたく聞いておらないことをはつきりと申し上げます。
  41. 田代文久

    田代委員 この問題の焦点の資金調達の問題でありますが、なお申しますと、これは現在においては空文みたいなものだ、しかし一年間のいろいろな訓練によつて、また運用の仕方をよくはかられることによつて、これは目的を達成されるだろうというような御見解のようでありますが、決してそういう資金の調達、なおそれによる産業界の発展というなものは、こういうことによつて解決されるものではない。現在の資金の逼迫している根本原因はどこにあるかということは、私が申し上げるまでもなく、これは宮幡次官自身がよく御存じの通りで、これを一箇年間試験してみて、実際にこういう無額面株というようなものを発行することによつて、その他非常に小手先みたいな小さい法文をつくることによつて、これがうまく行くかどうかという点からしまして、私はこれは全然失敗する、できないということが考えられるのであります。事実確信をもつてこの法案改正することによつて、資金の調達ができるという見通しを持つておられるかどうかという点を質問いたします。
  42. 宮幡靖

    宮幡政府委員 相当の訓練期間がありますれば、資金調達の面においても、相当の効果を上げ得るものと私は信じております。特に授権資本の問題についてお話があつたようでありますが、これは従来は保証資本制度と申しますか、額面五十円以上の株式でありますならば、四分の一まで拂込みを下ることができるという要件であります。残りの四分の三が債権者に対する保証資本として運用されて参りました。事実の問題としましては、未拂込み株金が保証資本の役目を果して来た歴史は少いのであります。しかも今度株式の譲渡制限、裏書き制限を完全に撤廃いたしますと、株式は流通証券としての本来の使命に帰りまして、転々いたします。さらに会社が不良の状態であつて拂込みを追求されようと思う場合には、株主はどんどんその拂込みを回避する態度をとりまして、保証資本の役は立たないのであります。今度の授権資本によりまして最初四分の一の株式の発行、続いてもし増資をする場合、その発行をする場合においては四倍を越えてはいけないというわくがありますことは、従来の保証資本という制度をよき意味に転換いたしまして、その企業の持ちますところの彈力性を示すものでありまして、私ども産業資本立場としては、大いに歓迎するところであります。この制度によりまして直接資金が何億調達されるとか、何千万円できるとかいうことは別といたしまして、十分効果をあげ得るものだと確信しておる次第であります。
  43. 田代文久

    田代委員 私は事実はそのようにはならないと確信いたしますが、それは議論になりますので先に進むといたしまして、私たちが最も憂うるのは、この法案がただ形の上で見ますと、資金の調達とか民主化というようなことが盛んにうたわれておりますけれども日本経済界の実態、資金事情、また国際的な経済界実情というようなものを勘案して考えますと、この法案自体は日本産業にとりまして非常に重要な内容を持つ。ということは別な言葉で申しますと、日本経済の心臓部が外国の資本によつて握られてしまうのではないかという点であります。その点に非常に心配の根源があります。私たちは事実この法案はそういう方向へ道を切り開くものである、いろいろのこれに類する法案が各委員会、各部門で出されて、これがまたその一環になつているというふうに確信いたしますが、その具体的な実情として、なお私は確めたいと思うのでありますが、現在の株式市場の状況また現在の会社に対する外国資本の導入されつつある状況、この実態というようなものをまず御説明願いたいと思います。
  44. 宮幡靖

    宮幡政府委員 外資導入の実情につきましては、大蔵当局から御説明申し上げるのが妥当だと考えておりますが、知つておる範囲においてお答えすることといたします。田代さんのおつしやる外資導入とは民間外資の意味だと思います。政府の外資の入るというのは、物その他によりましてガリオア、イロアで入つております援助資金でありますから、これは別といたしまして、民間外資ということだと思いますが、具体的にただいま民間外資が導入されたという事例を聞いておらぬのであります。それはなぜかと申しますと、再度申し上げますように、外国資本の導入に関しますところの法制がまだできておりません。また外資が入りましても、その利潤なり、あるいは元本の一部なりを本国へ送金いたしますことの法制等も整つておりません関係上、この点につきましては事例が乏しいのであります。ぼつぼつ話題には上つておりますが、日本経済事情がまだ外資の喜んで入つて来るような状況にない、かような実情でありますので、外資委員会の設置法とか外資導入に関する法制等を完備した上において初めて現われて来るであろうと思います。従いましてここにあります商法改正案なるものは、外資導入に寄與せんとする含みはさらにないものと私ども考えております。
  45. 田代文久

    田代委員 民間外資は全然入つて来ておらないという意味は私にはわからないのであります。たとえば現なまのドルとかポンドというような形ではそうでないかもしれませんけれども、聞くところによりますと、船会社またその他にいたしましても、技術が導入されろという形で入つて来ておる、あるいはパテントが輸入されるというような形で入つて来ておるというようなことを聞いておりますが、これも実際にはまだ入つて来ていないということになるのでありますか。
  46. 宮幡靖

    宮幡政府委員 パテントを利用することを許されたというような事例は、これは一、二ありますが、これらに対しまして、その代償を本国へ送金するとか、その対価に対しますところの契約の方式等はいずれ定められるでありましよう外資委員会権限及びその外国資本導入に関する法律規定にまつことでありまして、現在全面的に技術の導入が許されておるとか、これが自由であるとかいう見解にはなりにくいと考えます。
  47. 田代文久

    田代委員 政府当局は、現在今の瞬間にどうなつておるか、これはまだ入つて来ておりませんというような答弁をなさることによりまして、このつくらんとする法律は正しいのだというふうな説明が常に出るのでありますが、われわれが法律をつくります場合におきましては、現在の実情はもちろんのこと、将来これがどうなるかということがむしろより重要なる意味を持つのでありまして、私たちが外資が日本資本を握る、日本経済界の心臓部を握るということを申し上げますのは、そういう可能性が非常に多いし、それが着々として進められつつあるというところに問題がある。また政治家としましてはその見通しを持つことなくしては、これは立法の意味がないのでありまして、ほんのちよつぴり出て来ておる外資の入つて来る来方、それを見たならばその背後にどういう意図があるか、またそれによつて将来日本産業がどうなるかということを見きわめて法律をつくらないことには、日本産業にとりましては、実に危險きわまりないのであります。われわれは非常に国際事情にうといので、ぼやつとしておりますけれども、世界的にいろいろの文献その他から見ますと、日本の実際の経済というものは、日本自体によつて運営されているのではない、もうすでに八〇%は外国の資本によつて押えられておるのだということが、国際的に言われております。また事実私たちが、これは実感の上で、ほんとうに日本の政治あるいは経済というものが、自主性のあるわれわれの手によつて日本の発展のためにひとしくこれがやられておるかどうかということに対しましては、常に危惧しておるのであります。またパテントの問題なんかにいたしましても、それはまだ公々然たる形において條約によつてそれができていないから、従つてこの法案は通過することになつても、外国の資本によつてこれが運営されるとか、何とかいうことは御心配いりませんというような御見解のようであります。この点はなはだ遺憾である、またそれは法律をつくるのに対しまして最も危險な考え方であるといわねばならないのであります。将来現なまの形で入るにしましても、あるいは技術導入、あるいはパテントの問題、こういうような形で入るにいたしましても、そういうことがだんだん日本経済界に実質的に食い込んで来る。たとえば技術の導入、あるいはパテントの輸入というようなことがどんどん進められているということになりますと、これは非常に危險になつて来るのでありまして、これが現物出資の形で入つて来てそうして実際そういう向うのパテントなんかというような、食えもしなければあるいは着ることもできないようなものが、結局現物出資となつてその会社を握つてしまう、非常に発言権を大きくするという形になつて来るのでありますが、この心配に対して、これが行き過ぎであるかどうか、われわれはそういうことに対してはほんとうに安心していいかどうかという点を、重ねて御質問いたします。
  48. 宮幡靖

    宮幡政府委員 田代さんの御質問は、おおむね田代さんとしての御意見でありますから、御意見の点は承つておくことにいたしますが根本的な一つの何か錯覚と申し上げますと失礼かもしれませんが、あるようでありますから、その点を明らかにいたしておきます。吉田内閣は成立いたしましてから、日本産業の復興のためには外資導入を実現することが必要であるということを、総理大臣談でも発表いたしております。外資導入を拒否しようなどとは考えておりません。しかしながらこの商法改正そのものが、外資の導入に直接寄與するために立案したものでないという考え方を持つておるのでありまして、これが何ら外資導入をじやまするものになろとかいうような考え方にもならぬのであります。この点をどうぞ御了解いただきたいと思います。
  49. 田代文久

    田代委員 その点に関しましては、なおこれ以上は議論になりますので省きますが、先ほど岡咲政府委員は役員会の問題に関しまして、坂本委員質問に対しまして、この役員会制度こそが民主化の内容を物語つておるのであつて、それに対しては坂本委員見解と非常に相反するというような御答弁をなさいましたが、私といたしましては、これは非常にむちやな牽強附会じやないかというふうにも感ずるわけであります。なお申しますと、この取締役会というものを大体だれが握るかということであります。法文の上ではそれははつきり出ておりませんけれども、これを握るバツクというものが問題になるのでありまして、これをほんとうに握る者は大体だれであるかという点であります。それによつてこの運営が決定するのでありまして、従いまして非常に株主が多い場合にこういうものをつくつて、これで運営されることがほんとうの意味において民主化されることになるとおつしやることは、どうしても納得できないのでありまして、この点なお御説明願いたいと思います。
  50. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 取締役は申し上げるまでもなく、株主総会がこれを決定したものでございます。しからば株主総会の実態いかんということになりまして、あるいは田代委員のお言葉を付言いたしますると、財閥に似たような大株主があつて、それが事実これを支配しておるというようなお考えではないかと思いますが、最近における株主分散の状況を考えますと、財閥はもちろん解体いたしましたいわゆる大株主というものは非常に少うございまして、大多数の株式が小株主に分散されているというのが実情ではないかと思います。従いましてその小株主の意向をも十分反映せしめるということが、立法上考えられなければならないと思います。この法律案におきましては、株主総会のさような機能を考えまして、取締役の選任につきましては、定足数を発行済み株数の三分の一以下に減らすことはできないというようにして、なるべく各株主の受益権を尊重いたしますと同時に、累積投票という制度を設けまして、小株主にも彼らが適任と考えているところの取締役を選任し得るという機会を與えるようにしただけでございます。
  51. 田代文久

    田代委員 今の御説明によりますと、そういう点ではいかにも民主化されて、その制度の上に出て来る取締役なので、これは民主的かというような御結論になるようでありますが、実はそれは非常に浅薄ではないか、財閥が解体されて、またその方向に向つて行くので、日本産業というものはそういう方面からもだんだん民主化して来ておるし、この制度は形態上における民主化された形であるという御説明でありますが、私たちが申しますならば、むしろ小株主取締役に出て来る可能性が非常にできた、あるいはまた株を持たない人が取締役にもなり得るというような、こういう道が開かれておりますが、現在の資金あるいは金融の面から申しまして、一般の日本産業界はその資本力を持たないのであります。なお申しますと、ごくわずかの資本でも、ある一つ会社を支配するというような可能性が生れて来るのでありますが、これは集中的に申しますと、見返り資金の問題であり、また実際の日本の金融の実態を握つているものはだれであるか、それは決して中小商工業者でもなければ、また小さい産業資本家でもないのであります。これはきわめて少数な大きな大資本家がその実権を握つております。これが実情であります。結局そういう特殊の少数の外国資本、あるいは日本の大資本というものがこの少数株主権を発動することによりまして、ある意味から申しますと、今まで持つておつたその金融上の実力というものをより他方面に活用することができ、その会社の中に取締役をどんどん入れる、こう申しますと、現在この法案では株主は非常に発言権が強くなつているから、それによつてその少数の資本家が全部その取締役なるものを握るというふうには行かないではないか、またそういう道が切り開いてあるから御心配はいらないと申されるかもしれませんけれども、これは私が申し上げるまでもなく、経済界の実態というものは、特に現在のようたドツジ・ラインによりまして金融が逼迫している、一切がここを握らないことには動けないというような実情にあります場合に、その大資本家、大金融業者、外国資本の持ちます力というものは、もうある意味から申しますと、これはオールマイティーでありまして、そういう場合にこういう取締役会というようなものを設置いたしまして、これによつて運営させるということは、財閥を解体する、独占禁止法をやつたといつても、実際においてはそれにもまさる一つの独占形態、支配形態というものがこういう形で持ち出されつつあるということを私たちは危惧し、またそういつた方向に進むことに対しまして大反対をするものでありますが、事実そういうふうにお考えにならないかどうか、その点を御質問いたします。
  52. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お尋ねの点は御意見が多いようでありますから、御意見の点につきましては別に議論にわたつて申し上げませんが、先ほど申しましたように、現在株式会社運営というものは、法的な裏づけのない取締役会の組成によつて行われている。従つて取締役会というものを法定いたしまして、そしてその取締役に対しまする監督権を拡大いたしましたことや、また取締役経営資本の分離の一つの現われといたしまして株主以外から選ぶことができるようにいたしたこと等におきましては、むしろ現状に合つたもので、非常によいものだということは先刻坂本委員の御質問に対して私はお答えいたしておいた通りでありまして、この点につきます御意見に対しまする適当の答弁を、実は発見できない。ことにその少数の独占資本家が左右するであろうという点につきまして、独占禁止法の規定等を御指示になつておりますが、株主といたしまして株式を保有いたします限度も、おのずから田代委員も御承知であろうと思います。かつてのように一人で過半数株式を掌握いたしまして、法的な統制ができるというようなことは考えられないだろうと思います。そういう点から推しましても、お考えの点につきましては、議論にわたつてはどうかと思いますから申し上げませんが、どうも私の方では、御質問の内容が実ははつきりと受取りかねるわけでありまして、なおこれらの運営の問題につきましていろいろ御質問の点もありましようが、事業界の実態というものはきわめてこの点についてはスムースに行つておりまして、別に支障はなかろうと思います。また外資の点を御指摘になりましたが、今度無決議権株式がありまして、これには優先配当が條件であります。優先配当のついておりますものは決議権のない株式となりますので、もし各事業が御心配のような自営体制をとろうといたしますならば、外資のごときには高額なる比較的割のよい優先配当の権利を與えて、決議権のないような措置を適用しますとか、これらはおのおの経営者企業意欲によりまして勘案すべきものでありまして、法律がいずれともこれを決定しかねる問題であろうと思いますので、この点御了承願いたいのであります。
  53. 田代文久

    田代委員 この外国資本が入る形でありますが、これははつきりさせておかなければならぬと思います。将来内債償還から外債償還に移ろという場合に――当然それは近い将来と思うのでありますが、その金がどんどん利用されて、それによつて日本経済界が左右される。あるいはそれで握られるというような心配はありませんか。
  54. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御質問の趣旨が私にはよくわかりませんが、外国資本が入つて、外国に事業をみな握られてしまわないか、そういう御質問の意味でありますか。
  55. 田代文久

    田代委員 内債が済んで、外債を支拂うようになつた場合に、その償還された外債がつまり金融的の力を日本に持つわけでありますから、それがどんどん日本経済界の中に入つて来て、そうしていろいろ産業なり会社なりを支配するというような危惧はないかということでございます。
  56. 宮幡靖

    宮幡政府委員 内債償還と仰せられますのは、債務償還は本年度の予算におきまして、千二百八十億程度のものが計上されておる、さような意味だと思いますが、これは循環いたしまして、外国資本との結合ということはちよつと思い及ばないのでありますが、ただ後段のお尋ねの点につきましては、外貨債がもし内地で保有されておつて、内地へ入りました場合にどうなるかというような意味にもとれるのでありますが、一体ポンド及びドルによります外貨債の処理につきましては、先般の見返り資金のゼネラルモーゲージの関係の段で申し上げました通り、処理がはつきりいたしておりません。またこれに対しまして意見をさしはさむ自由も現在ないのでありまして、この点未確定のことでありますので、さようなことになろうとは思つておりません。後日の問題としてこれは検討してみたいと思います。
  57. 田代文久

    田代委員 この外貨債の問題はちよつと誤解されておるのではないかと思いますが、たとえば電気産業に入つておる外債、これが償還されるということになつた場合に、電気産業に対するそういう外国資本の進出、あるいは支配というような、そういう意味に私はとつたのであります。
  58. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その点につきましては、外貨債のそれぞれにつきまして償還いたすと仮定いたしますならば、支拂い場所があるはずであります。日本内地で全部拂われるものだとは考えておりません。しかも内地で拂われるものがドル建、ポンド建であるということは考えておりません。日本ではとにかく為替集中をやつております。国内は円系通貨一本でありますので、ドルやポンドで支拂うといたしますれば、外地における支拂い、すなわち少くとも日本の円との流通関係を絶ちました一つの関所を越えたところで行われるのでありまして、円系通貨といたしましては、日本産業の中に飛び込みまして重大な圧迫を加えるものであるという御意見は、残念ながらどうも肯定しがたいものであります。
  59. 田代文久

    田代委員 最後に私はこの法案が通過しまして、これが運営される場合に、実際に利益を受けるものはだれかということをよく考えてみたいと思うのであります。私はこの法案の意図は單なる資金の調達というような、そういう單純なものではなくて――もちろんそれを表面的にはねらつておるし、またそれができるとしましても、実質的にはこれの運営によつて利益するものは外国資本である。そのために大きな道が法文の上に切り開かれる。また日本資本といたしましては、これは外国資本に結びついたごく一部の大資本だけでありまして、実際一部の産業資本家あるいは株主、重役というような人たちも危機にさらされる危險が多分にある。この法案からはそういうことがどこから出るかというような御意見が出るかもしれませんけれども、実際こういう法案が出ますことは、勤労大衆にどういう影響を及ぼすかということであります、そういう外国資本なり、日本の大資本会社の実体を握るというようなことは、当然日本の労働者諸君に対しましては、豊富低廉な賃金を要求することになつて来ますし、また当然そういうことは、職階制というような形で労働者を非常に圧迫するということにもなりますし、農民に対しましては、そういう安い賃金を保障するため低廉な強権供出、あるいはまた輸入食糧を入れることによつて農村を圧迫する、また中小企業家は大資本のもとに、より以上に屈服しなければならないということになつて来ると思うのでありまして、私たちは実際は、この法案からそういう事態へ着々として進むということをおそれるのであります。またそういう実情に向いつつあるということを察知しなければならないと思うのであります。これを單なる現在のほんの瞬間の経済界の近視眼流的な考え方によりまして法文をつくるということは、きわめて危險である。それは日本を不幸にするということをはつきり申し上げまして、質問を終ります。
  60. 山口好一

    ○山口(好)委員長代理 それではほかに御質疑もないようですから、これをもつて法務、通産両委員会連合審査会を終了いたします。     午後零時五十九分散会