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1950-04-08 第7回国会 衆議院 法務委員会通商産業委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月八日(土曜日)     午後二時六分開議  出席委員   法務委員会    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君    理事 猪俣 浩三君 理事 田中 堯平君       佐瀬 昌三君    松木  弘君       眞鍋 勝君     田万 廣文君       加藤 充君     世耕 弘一君   通商産業委員会    理事 小金 義照君 理事 永井 要造君       阿左美廣治君    岩川 與助君       江田斗米吉君    門脇勝太郎君       澁谷雄太郎君    關内 正一君       高木吉之助君    田中 彰治君       前田 正男君    坂本 泰良君       高橋清治郎君    田代 文久君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (法制意見第一         局長)     岡咲 恕一君  委員外出席者         法務委員会專門         員       村  教三君         法務委員会專門         員       小木 貞一君         通商産業委員会         專門員     谷崎  明君         通商産業委員会         專門員     大石 主計君         通商産業委員会         專門員     越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第六四  号)     —————————————
  2. 角田幸吉

    角田委員長代理 これより法務委員会通商産業委員会連合審査会を開きます。法務委員長が所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。  本日の議題商法の一部を改正する法律案でありますが、まず政府より提案理由説明を聽取し、引続き質疑に入ります。牧野政府委員。     —————————————     —————————————
  3. 牧野寛索

    牧野政府委員 ただいま議題になりました商法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  現行商法は明治三十二年に制定せられ、昭和十三年の大改正を経て現在に至つたものでありますが、終戰後わが国の政治、社会経済の各般にわたりまして、着々その民主化が実現せられつつありますことは御承知通りでありまして、国民の経済生活、ことに企業に密接なる関係を持つ商法の分野におきましても、経済民主化に対応いたしまして、その改正が考慮せられなければならないことは当然の趨勢であります。一昨年七月まずその一端といたしまして、法律第百四十八号をもつて株式会社について株金分割拂込制度が廃止せられました。これは経営者の恣意的な支配の制限と、投資大衆保護とを目的といたしたものでありますが、反面これによつて会社自己資本のプールを失い、その限度におきまして、資本調達便宜を失うに至りましたことも、またいなみがたいところであります。政府といたしましては、すでに当時からこの欠点を補い、会社資金調達便宜をはかるための法的措置の必要を認めていたのであります。  企業資金、ことに自己資本調達を容易ならしめるということは、現下わが国産業復興にとりまして不可欠の要請とされるところでありますが、財閥解体以後は、企業資本は広くこれを大衆投資に仰ぐこととなりますので、この資金調達便宜の問題は、同時にこれらの投資大衆株式会社について申しますれば、株主保護のための配慮を必要とするのであります。政府はこの資金調達便宜株主保護との観点から、この際株式会社中心とする現行商法規定全面的検討を加える必要ありと考えまして、英米に行われております資本調達便宜なオーソライズド・キヤピタル・システム、いわゆる授権資制度及びノン・パーストツク、すなわち無額面株式制度並びに一般株主保護の方策を考究することといたし、一昨年五月当時の法務庁商法改正準備調査会を設けまして、学界実業界、官界の学職経験者委員にお願いし、調査を進め検討を重ねました末、法律案要綱作成の運びに至りましたので、昨年八月十三日、これを公表いたしますとともに、朝野の権威者委員として、同年六月新たに発足いたしました法制審議会にこれを諮問いたしました次第であります。  法制審議会におかれましては、特に審議愼重を期せられるため、商法部会を設け、部会はさらに小委員会を設置の上、要綱発表以後広く学界実業界等より寄せられました多数の御意見を十分参酌しつつ、愼重審議されました結果、原要綱に若干の重要なる修正を加え、昨年十二月二十三日商法の一部を改正する法律案要綱修正案を答申されたのであります。よつて政府は、この修正案に基き、法務府におきまして、鋭意審議立案いたしまして、本年一月下旬立案の完了を見、過日商法の一部を改正する法律案として国会に提出し、本日ここにその御審議を願うことと相なつた次第であります。  以上がこの法案立案の趣旨及び経過の大要でありますが、次にその内容の要点を御説明申し上げたいと存じます。この改正案は、株式会社につきまして、いわゆる授権資制度及び無額面株式制度採用いたしまして、会社資本調達便宜をはかるとともに、株式譲渡性新株引受権株主決議権株主書類閲覧権取締役責任少数株主保護外国会社及び罰則等に関する現行商法規定改正を加えたものであります。この法案において採用いたしました授権資制度は、大陸法系株式会社法基本原則の一であります資本確定原則修正を加え、会社の設立に際しては、必ずしも資本総額に当る株式引受を要するものとせず、総株式数の四分の一以上の引受け拂込みによつて会社は成立するものとし、その余の株式につきましては、会社成立後、そのときどきの資金の需要と経済情勢に応じて、原則として取締役がその権限におきまして、必要とする数の株式を発行し得る制度であり、無額面株式制度は、株式企業に対する均等な比例的持分であるという性質に着眼いたしまして、従来の額面株式のほかに、券面額の定めのない株式、すなわち発行価格券面額に拘束されることのない株式を、市況に応じ公正な価額で発行し得るものとする制度でありまして、ともに会社資本調達にきわめて大なる利便を提供するものであります。このように、授権資制度のもとにおきましては、会社現行法における複雑な増資手続によることなく、取締役の裁量により随時株式を発行して資金を獲得し得るという利便がありますが、他面におきまして、取締役権限はすこぶる大となり、企業興廃は一に取締役の良識と材幹とにかかることとなりますので、改正案は、新たに合議体たる取締役会制度採用して、企業経営方針は、原則として取締役会の専決するところとし、この決定に基き、代表取締役業務の執行を担当することといたし、これに伴つて監査役制度を廃止して、監査役による業務監査をやめ、ただ会計監査のために新たに会計監査役を設けることといたしたのであります。また取締役の職責のきわめて重要なるにかんがみまして、その選任及び解任につきましては、その要件を嚴重にし、かつ取締役責任を明確にいたしますとともに、株主に対しまして、直接取締役越権行為を阻止し、その責任を追究する道を開くことといたしました。  改正案は、さらに前に申し上げました一般投資大衆保護要請に応ずるため、一般株式会社機構民主化株主権利の強化をその重要な改正点といたしておりますが、そのうち特に重要な点を申し上げますと 一、投資の回収を容易ならしめるため、定款による株式讓渡制限を禁止し、かつその方 式を明確にするとともに、株式名義書きかえを容易ならしめましたこと。  一、定款による議決権制限を認めないものといたしましたこと。  一、株主会社企業に対する関與機会を確保するため、通常総会定足数につき規定を設けますとともに、特別決議愼重にいたし、その決議要件を嚴格にいたしましたこと。  一、少数株主の資格を緩和いたしましたこと。  一、少数株主の希望する者の中からも取締役を選出し得るようにするため、取締役選任について、株主請求により、いわゆる累積投票方法によるべきことといたし、定款をもつて累積投票制度をとらない旨を定めることはさしつかえありませんが、この場合におきましても、発行済株式の四分の一以上に当る株式を有する株主から請求がありますれば、累積投票によらなければならないことといたしております。  一、取締役は、決算期ごと会社業務及び財産に関する明細書を本店及び支店に備え置くことを要し、株主はいつでもその書類閲覧、謄写をなし得ることといたしますとともに、発行済株式数の十分の一以上に当る株式を有する株主は、いつでも会社会計帳簿及び書類閲覧、謄写できることといたし、取締役は、株主請求権利の濫用にわたるような特定の場合においては、その請求を拒絶できるものといたしましたこと。  一、取締役会社目的範囲外行為または法令定款違反行為をいたし、これによつて会社に回復すべからざる損害を及ぼすおそれのある場合、及び取締役が不公正な株式発行によつて株主に不利益を與える場合には、株主はその行為のさしとめを請求することができるものといたしましたこと。  一、従来の少数株主請求による訴え制度を廃止し、株主会社のためみずから取締役責任を追究する訴えを提起することができるものといたしましたこと。  一、合併営業譲渡等の場合において、これに反対する株主は、一定手続に従い、会社に対して自己の持株の買取りを請求することができるものといたしましたこと。  一、株主間の対立抗争、あるいは会社財産管理処分の著しい失当等のため、会社運営停頓状態に陥り、その続行が不能または不適当な場合に、発行済株式数の十分の一以上に当る株式を有する株主は、会社の解散を裁判所に請求することができるものといたしましたこと。 等でありますが、以上のほか改正案は、外国会社に関する現行商法規定整備をはかつておりまして、外国会社は他の法律、たとえば税法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律その他の法律の適用につきましては、原則として内国会社と同一の地位を有する旨の一般的規定を設け、その法律上の待遇を明らかにいたしますとともに、日本において外国会社が継続的に取引を行うには、必ず営業所及び代表者等の登記をしなければならないことといたしております。  以上申し述べましたところから見られますように、このたびの商法改正におきましては、授権資制度及び無額面株式制度採用といい、株主書類閲覧権その他の規定といい、従来の大陸法系会社法から英米法系会社法への転換が企図せられているのでありますが、異なる法制的地盤におい立ちましたこれらの制度採用に当りましては、いかにすれば社会事情経済状態に差異のあるわが国実情に最もよく適合するかは、特に愼重配慮を要する点でありまして、政府といたしましても、要綱原案につきまして、広く一般の批判を求め、また法制審議会の御審議にあたりましても、特にこの点に意を用いられ、実業界その他の御意見を十分しんしやくされましたことは、さきに申し上げた通りでありまして、改正案はこの点におきまして、よくわが国情に合致するものと存ずるのであります。  なお、本改正案施行につきましては、政令をもつて明年七月一日以前の日を施行の日として定めることといたしておりますが、本改正案は、現行会社法に根本的な改正を加えておりますので、幸い御可決を得られますれば、一日も早く改正法律周知徹底をはかる必要がありますとともに、その施行のためには、別に改正法律施行に関する法律、非訟事件手続法有限会社法及び関係法令整備に関する法律等立案いたさねばなりませんので、これらの事情もお含みいただきまして、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたす次第であります。
  4. 角田幸吉

    角田委員長代理 以上をもちまして政府提案理由説明は終了いたしました。これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。門脇勝太郎君。
  5. 門脇勝太郎

    門脇委員 ただいま提案になりました商法の一部を改正する法律案に関連しまして、二、三の質問をいたしたいと存じます。現在の経済情勢下におきまして、株式会社の立場はきわめて重大でありまして、ほとんど経済界の基盤をなしておる現状であるのであります。従つてこれが改正また今後の動向に関連しまして、経済界興廃密接不可分の影響をもたらすものでありまして、この点につきましては最も愼重審議を要する次第であります。つきましては今回商法の一部改正ということになつておりますが、内容がなかなか浩翰でありまして、相当広汎にわたつておるようであります。その法理的な点につきましては、法務委員諸君よりそれぞれ愼重御審議があることと存じますので、通産委員側としましては、実際の運営に関連します面を中心として、立案当局の御意向、御説明を拝聽いたしたいと思う次第であります。  まず、第一に商法密接不可分関係にあります会社等臨時措置法についてお伺いしたいと存じます。御承知のように会社等臨時措置法は昨年一月十日限り廃止せられたのでありますが、一部必要規定につきましては、ポツダム勅令による政令及びその後法律をもつて昨年十二月三十一日までその効力を延長せられたのであります。しかして現在は失効のままに相なつておるのでありますが、これに関連しまして、運用上に種々の不都合を生じておるような次第であります。なかんずくはなはだしいものは、株主総会特別決議にかかる定足数の問題であります。会社等臨時措置法廃止の結果、現行商法によつて実施されることとなり、これがため会社運営上著しい支障を生じ、かつ過重の負担をこうむつておるのであります。すなわち本法案第三百四十三條によりますと、出席したる株主議決権の三分の二以上にして、かつ発行済み株式総数の過年数に当る多数をもつてするということになつております結果、発行済み株式総数の四分の三を越える多数を要することとなり、現行法に比してあまり緩和せられていない。かくのごときは会社経営者にとりまして、現状に照してあまり苛酷ではないかと存じます。よつてこの第三百四十三條第一項を、出席したる株主議決権過半数にして、かつ発行済み株式総数過半数に当る多数もつてこれをなすというように修正することを私どもは希望するのでありますが、これらに関連しまして御質問申し上げます。
  6. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 特別決議運用につきまして、実業界からいろいろな御要望がございますことは、私もよく承知いたしておるのでございます。ことに現下株式大衆の間に分散いたしました状態におきましては、現行法規定いたしておりまするように、総株主半数以上が出席するということは、はなはだ困難でありまして、また実際上その必要もないのではないかと考える次第であります。改正法律案におきましては、総株主半数以上の出席という要件は排除いたしましたかわりに、ただいま門脇委員がお示しになりましたように、発行済み株式総数過半数に当る多数をもつて決議をする。しかもその過年数決議が、出席したる株主議決権の三分の二以上に当らなければならないという、かなり重い要件を定めたのでございまするが、特別決議対象となりまする事項のきわめて重要なことにかんがみますると、この程度要件はやむを得ないことではないかと考える次第でございます。私どもがこの條文を起案いたしますにつきまして、アメリカにおきまする制度、あるいはイギリスにおきまする制度も多少検討してみたのでございますが、アメリカの州法におきましては、大部分の州におきまして発行済み株式数の三分の二以上または過半数という要件を定めているのでございまして、この要件は決して重きに過ぎるとは考えないのでございます。イギリスにおきましては、総株主の四分の三というふうな要件規定しておる例もございまして、少くとも会社組織、あるいは定款、あるいは合併といつたような重要な議案を決定いたしまするのに、発行済み株式数過半数の多数の賛成を得るということは当然ではないかと考えるのでございます。三分の二以上と申しますのは、これは重大な決議にはしばしば行われておるところでございまして、この要件過半数に下げることは適当ではない、かように考えます。発行済み株式数過半数を得ることは、現在のように株式が分散いたしておりますと相当困難もあろうかと考えますので、三百四十三條の第二項におきまして、仮決議の便法を認めた次第でございます。万やむを得ないときには、この仮決議方法によりまして、決議を行うことができる次第でございますから、三百四十三條は、規定といたしましては、まず妥当な規定ではなかろうかと考える次第でございます。
  7. 門脇勝太郎

    門脇委員 いろいろ外国例等も参酌されまして御説明があつたのでありますが、日本株主現状は、そういうような外国の例の境域にまで認識がまだ引上つておりませんので、先ほど私が一応私案を申し上げましたように、出席したる株主議決権過半数というふうに修正するということにいま一応お考えを願うことをこの機会に申し上げておきます。  第二には、本法案と関連せる附属法令の問題についてでありますが、本法案によつて画期的大改正を断行せられんとするにかかわらず、基本法たる本法と密接不可分関係がある付属法令が提出せられていないのであります。かくては本法案審議上遺憾の点が多々ありはせぬか、これが付属法令提出に関する準備進捗状況並びに本法案最終施行期日との時期的関係等について、御意向を伺いたいと存じます。
  8. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 本法律案につけ加えまして、施行に関する法律案、あるいはそのほかの関係法令整備いたして国会に御提案いたしたいと考えたのでございますが、法制審議会審議が予想以上に長期間を要しました点と、この法案がきわめて重大な改正を包含いたしておりますので、あるいは国会におかれまして愼重御審議の上、場合によりましては相当なる修正もあるのではないかということも考えられましたので、まずとりあえず本法律案を確定いたしました上、関係法令整備することがより適当ではないかと考えまして、とりあえず本法律案提案いたしました次第でございます。もつとも施行の期間につきましては、提案理由で御説明いたしましたように、昭和二十六年の七月一日までに施行するということになつておりますので、本法律案が本国会におきまして幸い可決せられまするならば、さつそく関係法令整備いたしまして、次の国会には必ず提案いたしたいと考えておりますので、施行の上にはさしたる支障を生じないだろうと考えるのであります。  関係法令といたしまして最も重大な法令は、施行法でございまするが、施行法構想につきましては、私どもの方で目下検討いたしておりまして、あるいは草案程度のものを遠からずごひろうできるのではないかと考えております。構想といたしましては、なるべく現在の株式会社のあり方をそのまま尊重いたしまして、現存のものはなるべく変更を加えることなしに、そのまま存続いたすように、この改正法案におきまして強行規定とされておる点につきまして、適当な調整を加えるというふうな方針で起案いたしておる次第であります。
  9. 門脇勝太郎

    門脇委員 第三の質問でありますが、これは資本金に関します制限額をきめてはいかがであるかという点であります。本法案第二百二條によつて額面株式最低発行価格は、従来通り一株二十円と規定せられておりますが、資本金に関しましては何らの制限がないのであります。一定限度以下の小規模資本を認めることは、株式会社としての信用を保つ上からも、また脱税目的等のために悪用せられることを防止する上からも、その他種々観点からいろいろ弊害があるのではないかと考えられます。よつて一定限度最低額をきめるということが妥当ではないかと考えるのでありますが、これに対していかようにお考えになつておるか。また本法案有限会社法との関係はどうなつておるかということについてお伺いいたします。
  10. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 ごもつともなお尋ねでありまして、私どもといたしましても、有限会社との調整考え株式会社形態によるところの企業は、ある一定限度資本を有することを條件といたすべきではないかということも考えたのでございますが、現在の会社状況検討いたして見ますのに、お手元に差上げたかと存じますが、会社統計表でございますが、二十一年の統計でございまして、少し古いうらみがございますが、昭和二十一年当時におきまして、資本金が二十万円未満のものが株式会社総数のうち八一・五%という非常に大部分を占めておる次第でございます。従いまして、かりにこの資本金を二十万円以上の会社といたしましても、現在あります大多数の株式会社というものが、株式会社でなくなるという状況になりますし、もしかりに現行株式会社をそのままに認めまして、改正法律案施行後の会社につきましてのみある一定資本を有する企業株式会社といたすということになりますと、現存株式会社との間にあまりにはなはだしい均衡を失するということにもなりますので、これをむしろ法律上の制限とはいたしませんで、企業を発起せられるところの発起人、あるいは会社の自治にまかせることが適当ではないか、なるべく株式会社というものは大企業形体企業において採用せられることが適当であり、家族的な、あるいは同族的な、組合的な企業合名会社もしくは有限会社という企業形態採用せられることが適当ではないかと考えます。これは法律で強制いたしますよりも、むしろ企業者の方で自主的に決定せられるということが適当と考えまして、このたびの改正案には株式会社最低資本額あるいは最低発行総株数というものを法定いたさなかつた次第であります。このたびの改正案で特に問題になります点は、株式譲渡制限を禁止いたすという規定でございますが、そういたしますと、現在この家族的な、あるいは同族的な会社というものが、場合によつて組織変更をしなければならないではないか。組織変更をいたします場合に、最も近似した組織といたしますと、有限会社であろうかと考えます。従いまして、株式会社から有限会社組織に簡單に組織変更ができるように、有限会社法に適当な改正を施したいと考えております。
  11. 門脇勝太郎

    門脇委員 第四の質問は、端株整理に関する件でありますが、現在の状況は、いずれの会社零細株主が多数を占めて、しかもその中には極端なる例として、住所不明の者も少くない、こういつたような事情でありますため、総会の招集あるいは増資その他に関しまして、会社側のこうむる不便不利というものが非常に大きいのであります。こういつたことは資本調達の上から言いましても、ほとんど意味をなさぬのであります。さらに本法案第二百六十七條によりますと、一株の株主さえも会社に対する訴訟提起対象となり得ることに相なつておるのであります。また株主側から申しましても、いわゆる会社荒しの目的のために利用する等のものはともかく、ほとんど配当もなく、かつ端株売買が現在実際的には不可能になつておるといつたような今日の事情におきまして、これらの端株整理のために株式併合を断行する必要があるのであります。しかるにその手続については、現行法のままでは全株主の同意を要する関係上、実際問題としては、ほとんど不可能に近いのであります。時勢に即応するよう株式併合手続の緩和について考慮されておるのでありましようか、この点をお伺いしておきたい。
  12. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 上場株式売買実情を承つてみますのに、大多数百株單位で今日は行われておるというようなことでございますし、なるべく端株という問題につきまして適当な措置を講じたいものと考えております。これもお手元に配付いたした資料でございますが、券面金額別の株券数というもの、あるいは登録指定法人の株式分布状況調というものを見ますと、百株未満の株式、一株券、二株券、五株券、十株券、五十株券といつたような株券が相当多数でございまして、商法の現在の建前でただちに端株というものを措置するということはいかがかと考えまして、株式併合に関する特別な規定は設けなかつた次第でございますが、門脇委員の仰せのように、業界においても相当この端株は御苦心のようでございますので、なるべく早い機会におきまして特別法を制定いたしまして、端株の処理を円滑にいたすことができるような措置を講じたいと考えております。
  13. 門脇勝太郎

    門脇委員 第五にお伺いしますことは、いわゆる会社荒しの防衛の問題についてであります。前四項で申し上げましたように現行法によります資本金総額十分の一の制限が撤廃されまして、一株の株主でも取締役に対する訴訟提起ができるということに相なるのであります。また現行法第五十九條、第六十條、第百六條を削除する結果、提訴に際しまして担保提供の義務は免除せられるということになつております。また第百七條削除のため裁判所の自由裁量による棄却も不可能に相なつております。また本法第二百六十八條ノ二によりますと、惡意のあることが立証せられない限り——こういつたことは非常に裁判上デリケートな問題でありますが、敗訴した場合、会社に対しまして損害賠償の責めに任じないこととも相なつております。これら一連の條文によつて会社荒しに乘ぜられる危險性が著しく増大いたすように感ぜられるのであります。これに対しまして適当な防護措置が講ぜられない限り、株式会社によるところの経済上の今後の発展に非常な惡影響を及ぼすものと考えますが、この点につきまして御意見をお伺いいたします。
  14. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 きわめてごもつとものお尋ねでございまして、深く敬意を表する次第でございます。このたびの法律案におきまして、私どもは特に苦心いたしたと申しますか、苦慮いたしました点は、正当な株主権利を保障すると同時に、惡意ある不当な株主権利行使をいかにして抑制するかという問題でございます。現行法におきましては、ただいま御指摘のように、原告に担保提供義務を認めるということによりまして、訴え提起を濫用せられるということを防ぐという措置を講じておることは御指摘の通りでございますが、担保提供をいたさせますことによりまして、被告たる会社あるいは取締役の訴訟費用、あるいは損害賠償の請求について一つの保障が與えられるという作用がありますと同時に、原告の濫訴を防ぎ得るという効果があることと考えられますが、無資力な株主に対して、事実上訴え提起の機会を奪うきわめて危險な圧制的な効果を生ずる、少くとも民主主義的な法律体系のもとにおきましては極力廃止しなければならないような、非常な遺憾な結果が生ずるということもこれまたおおうことのできない事実であろうかと考えます。アメリカにおきましても、ただいま御指摘の代表訴訟は多少濫用せられる傾きがあると見えまして、一九四四年のニユーヨークのゼネラル・コーポレーション・ローの改正によりまして、原告が社外株と申しますか、発行済み総株数とは多少意味が違いますが、いわゆるアウト・スタンディング・シェアーズの五%以上の株主であるか、あるいは原告の有する株式が、市場価格五万ドル以上の株式である場合のほかは、訴訟費用に対して担保を提供する義務を原告に命ずる規定を設けたのでございます。これはニューヨークの商工会議所の提案によりまして、さような規定を設けた次第でございまして、他の州におきましても、この規定にならいまして、担保提供義務を認めた州法もございますが、この担保提供義務を規定いたしましたニューヨーク州法は、学界及び一般から、きわめてデーンジャラスなオプレッショナル・アンド・ディスクリミネートリーなキャラクターを持つておるものとして、非常な論議を招いたのでございます。さような経緯がありまして、少くとも日本のあるべき新しい姿としての株式会社におきましては、正当なる権利の主張が、財乏しいがために許されないといつたような立法をとどめますことは、いかにも遺憾と考えまして、御指摘のように担保提供に関する規定は、全部削除いたした次第であります。しかしこれは先ほども申し上げましたように、一方においては惡意のある株主権利濫用の機会を與えるという効果もまたこれは否定し得ないのでありますが、これは結局裁判所に訴えを提起するのでありまして、裁判所は公正なる判断によりまして、その権利行使を必ず適法に判断せられると、私どもは期待いたすわけでございます。この点のみならず、新憲法下における諸般の立法を見まするのに、法の支配というものが強く要請されるのでありまして、その法の支配は、究極するところ裁判所による司法作用によりまして担保されるのでありまして、権利濫用がそのままに放擲されることは絶対ございませんで、結局その権利濫用は裁判所において阻止される。そうして正しい権利主張のみがそこで認められるということになりますので、多少の不自由なり、あるいは不便を生ずる場合もあろうかとは思いますが、究極においては、法の支配というものを実現するということが許されるわけでございますので、そのことを考えれば、担保提供義務を排除いたすことはさほど危險なことではない。かように考えたわけでございます。  次に裁判所の裁量による請求棄却の規定を削除いたした点でございまするが、これは裁判所におけるさような公正賢明なる判断あるいは裁量権を否定する趣旨におきましてこの規定を削除いたしたわけではありませんで、裁判所は諸般の事情を明察せられまして法規の適当なる解釈によりまして、きわめて軽微なる瑕疵を理由とするような主張、事案全体から見ますとまつたく理由のない主張であります場合には、裁判所は解釈問題として適当に措置せられる道はもとより残されているわけでございますから、現行法にありまするような、きわめて法規の解釈の範囲を逸脱して、裁判所があたかも事案に対する自由裁量権を持つかのごとき印象を與える百七條の規定を不適当と認めて、これを削除いたした次第でございます。
  15. 門脇勝太郎

    門脇委員 るる御説明がありまして、この会社荒しに対する防衛に関する件につきましては大体了承したのでありますが、経済界がこの新改正法案に対しまして一番憂慮しておりますることは、ただいま申し上げました会社荒しに関連する問題でありまして、この改正法案があまりにも少数株主に対して権利を尊重され過ぎている。これは法理論的にはまことにけつこうなことであるかと存じますが、現在の日本の情勢といたしましては、各会社に対するところの批判機関といたしましては新聞雑誌等が相当多数にありまして、絶えず社会的に相当嚴格な監査がされている。また場合によつては司法権の発動もあるのでありますから、こういつたような、従来特に各大会社が悩まされているところの会社荒しを一層跋扈せしめるがごとき原因になるようなことは、これはつとめて防止されるべきである、こう考えます。先ほどの御答弁で大体了承したのでありますが、再考されんことを希望いたしまして、以上をもつて私の質問を終ります。
  16. 花村四郎

    ○花村委員長 田代文久君。
  17. 田代文久

    ○田代委員 この一部改正法案は、非常に簡単なことのようにも見えますけれども、実は日本の産業経済に対して、強く申しますならば根本的に重大な内容を持つておるということは、実際に経済に携わつておられる人々が言つておる通りでありまして、たとえば松本烝治氏その他、そういう権威筋でもこの商法に対して反対しているというような実情であります。実際においてこの法案改正されるにあたりまして、日本経済産業界の実情を十分見られた上で、現在の実情からいつてこういう改正をどうしてもしなければ、日本の産業の発展は望めないという、日本の国情の必然性から、こういう改正案なつたかどうか。実際、現在これだけの大立法を急遽通過させなければならないという実情であるかどうかという点を、まず御質問いたします。
  18. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 ごもつともなお尋ねでございます。私どもといたしましては、あとう限り実際界の希望も承るようにいたしましたし、また多少不足ではございましたけれども実情調査いたし、最後におきましては法制審議会の御検討を願いまして、まず適当であろうという御答申がございましたので、国会提案いたした次第でございまして、時期尚早でもなし、また不用意な提案でもないと実は考えておる次第でございます。この敗戰後におけるわが国の産業を振興いたしまするために、企業の中の中枢と申しまするか、重要なる部分を占めます株式会社というものに検討を加えることは、当然のことと考えるのでありまするが、企業における最も重要な問題の一つは、資金調達という面ではなかろうかと思います。ところが、現行法によりますと、株金分割拂い制度が廃止されました後におきましては、自己資金調達増資以外にはまつたく方便がございませんで、はなはだ業界においてもお因りのようでございます。しばしば申し上げました点でございまするが、株金分割拂い制度を廃止いたしまする法案を研究いたしました際に、各方面の御意見を聽取いたしましたところ、東京商工会議所、生命保険協会、損害保険協会、東京銀行協会、持株整理委員会、証券取引委員会、あるいは通産省等から、その欠陥を補充する方法として、アメリカに広く行われておるところの授権資制度採用することがきわめて至当であるというふうな力強い御意見もございましたので、私どもは安んじて研究に着手いたした次第でございます。法制審議会の産業方面の専門家の御意見を承りましても、授権資制度はぜひ早く採用してもらいたい。実は現在、現行法増資手続というものがきわめて煩瑣で、会社に無用な費用と手数をかけている。これを修正していただくことは、会社における資金調達に非常な利便を提供するので、何とかこれを措置してもらいたい。株主総会招集についても、きわめて莫大な費用を要することは、私ども最近つまびらかにすることができたのでありますが、ことに増資特別決議であることは、増資の前に特別決議によつて増資の決定をいたさなければならないと同時に、さらに今度は報告総会を開かなければならないという二重の手間があるので、これは非常に会社にむだな手数と費用をかけておる。これが授権資制度採用によりますときわめて合理的に、しかも彈力的に行われることになりますので、私はこれは日本企業復興に大いに役立つものではないか、かように考えるものでございます。  次にこれに関連いたしまして、授権資制度採用いたしますと、必然的に取締役というものの権限がはなはだ強化されるのでございます。従いまして取締役会を法定すること、あるいは取締役選任、解任について、適当な法律上の措置を講ずること、あるいはその責任を強化するということも、これは当然のことではないかと考えておるのでございます。それから従前のように、大企業が財閥によつて経営せられまして、大株主中心として企業が行われているという状態におきましては、あるいは現行法でもよろしいかと考えまするが、これもお手元に配付いたしました資料で、十分御検討願えることと思いまするが、日本における重大なる産業が、国民大衆によつて支持されると申しますか、株主が国民の各界に分散されつつあるというこの現実の事実を考えますると、少くとも投資家としての株主に、十分法律上の権利擁護の機会を與える。あるいは強き権限を有する取締役の職務執行に対して、適当なる共益権的な監督権を與えるということも、これは適当な措置ではなかろうか。先ほど門脇委員の御指摘になつたように、権利濫用につきましては、また大いに考慮しなければならないと思いますが、少くとも株主権利を保障するということが、大衆の間に株式が分散するために、必要欠くべからざる措置である、かように考えますると、やはりこの点も何とか適当な措置を講じなければならない、かように考えた次第でございます。従いまして私どもが取上げました問題は、現下日本経済実情に即応いたしまして、日本経済復興に役立つ新しい株式会社のあり方というものを実現するためには、必須のことと考え立案いたしたのでございまして、決して時期尚早ではなかろうと、かように考えておる次第でございます。
  19. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、大体この法案を立法されるにあたりまして、産業界各界の意見を聞いたら、その結果としては、各界とも大体こういう法案改正がむしろ望ましいという結論が出たということになるのでありますか。
  20. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 さようでございます。ただ門脇委員もさつきお尋ねになりましたように、あまりに強き共益権的な権利株主に與えることは、悪意のある株主権利濫用の機会を與える。この点がはなはだしく心配であるという趣旨の御意見をしばしば承りましたけれども授権資本あるいは取締役会権限強化、そのほか株主権利の強化も、理論として、あるいは理想としては、きわめて至当である。ただ悪意ある不当なる株主権利濫用について、適当なる措置を講じてもらいたい。これが非常に強い要望であつたのでございます。
  21. 田代文久

    ○田代委員 お話でございますが、どうも私はそのようには考えないし、またそのように伺つておるのでありますが、この法案に対して賛成されるという業界の方があつたとしましても、それは一部のきわめて大きな資本を持つておられる方々じやないだろうか。それで御説明では、大体全産業界がそういう、たとえば会社荒しというような面で危惧されるだけで、他は全面的にこれを支持され、あるいはむしろこれが実情に即するものとして、早くつくつてもらいたいというような御意見だというように受取れますけれども、実際はそのように——私は各界の一部の人の意見は聞きましたが、そういうふうではないので、相当反対が強いのでありまして、なおまた一面から申しますと、外国資本日本経済産業を支配する道が開けて、その点で非常に危險じやないかということも言われておりますし、また事実私たちはこの点に対しまして、大危險を感ずる次第であります。なお申しますと、こういう法案が実際の日本実情に立脚して、日本の心から出た、どうしてもこういうものをつくらなければならないという考えから出たのではなくして、むしろ外国の力によつて、こういうものをつくるべしというような、そういう線のために出たのではないかというような疑いを多分に持たれるのでありますが、そういう点に対する御意見を承りたいと思います。
  22. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 本法律案がかりに実施いたされますならば、アメリカの法制が多分に取入れられている関係上、アメリカの業界に対しましては、日本に対して投資するという機会と申しますか、安心感を強く與えるという点はあるかと思います。しかしこの法律改正によりまして、非常に外資が導入されやすくなつたとすぐ言い得るかどうかということにつきましては、その点私十分の経験を持ちませんので、少し出過ぎたことになるかもしれませんが、多少の利便は提供するであろうけれども、この法律の実施によつて、ただちに外資が入り得るということは、むしろ言えないのではないか。外資が入るか入らないかは、経済上あるいは政治上のそのほかの條件によるのでございまして、この法律は、体系といたしましてはアメリカに非常に近いために、アメリカ資本が安心して入り得るというふうなことは言えるとは考えまするが、それ以上のことはあまり期待できないのではないかと考えます。日本産業復興のために外資がある程度必要であることは、これは言うまでもないことと思いますが、外資に関しましては、他の外国為替管理法とか、あるいはそのほか一連の外国人の経済活動に関する法律によりまして、適当な措置を講ずることができまするならば、ただいまお尋ねのような心配な状況は、適当に阻止されるのではないかと考えます。  またこの法律案は、関係方面から非常に強い要望があつたために、まつたくそのために立案したのではないかというような御趣旨に拝承したのでございますが、関係方面から非常に有力なる勧告と申しますか、御意見が私どもに示されたことは事実でございますけれども、われわれ事務当局といたしましても、あるいは法制審議会におきましても、十分自治的に検討いたしたのでございまして、必ずしも外国と申しまするか、外部の勢力によつて、いやいやながらむりにつくり上げた法律案というものではないということを、はつきり申し上げたいと存じます。
  23. 田代文久

    ○田代委員 今の説明は、はなはだ私は不十分で納得できないのでありますが、この外国資本投資機会を十分に與え、安心感を與え、そしてまたそれによつて外資がどんどん入るわけではないから、別に外国資本日本の産業界を支配するというようなことに対する危険を、考えられる必要はないのではないかというような御見解でありますが、現在かりに増資にしましても、それが非常に困難になつておる。がしかしこれは單に外資が入るとか入らぬとかいうことは、この法案だけによつて決定するのではなくして、実際現在政府の取つております経済政策、日本の産業経済に対する考え方というものは、全面的に各法案を通じて出て来ておるのであります。つまりその中の一つの積極的な立法としてこれが現われておる。私たちが通商産業委員会へ出まして、その中で審議され、あるいはまた強引に通過されておるいろいろな法案が全部こういう形で出て来まして、結局日本経済日本の産業をいかに育成するかというような点よりは、むしろ外国資本をいかに擁護するかというような点が全面的に出ております。たとえばこういう法案が出ることによりまして中小企業というようなものはどうなつて行くか、これは門脇委員も先ほど心配されておつたと思いますが、私はこれはますますひどいことになつて来るというふうに思いますし、また事実そのようになつております。御承知のように現在資金難から、資金調達を容易にするためにこれをつくるというふうに言われますけれども、では現在資金は自由に調達されておるかどうかといいますと、そうではないのでありまして、御承知のように、見返り資金というものが非常にオールマイティみたいな力を発揮しつつある。その見返り資金は一体だれが握つておるか、だれが動かしておるか、対日援助の見返り資金は当然国民の運転し得る権利を持つた資金でありますけれども、実際はそのように動いていないのでありまして、何か対日援助資金の延長みたいな形で外国の発言権が強いという実情になつております。そういう形で資金がどんどん産業界に入つて来る。そうしてこういう法案が通過するということになりますと、非常に資金難に立つております経済界におきまして、かりにそういうわずかな資本が入るとしましても、それがたとえば取締役会というようなところへ顔を出して来て、日本の産業界を牛耳つて行くということになる。従つてそういう意味から取締役会権限を持たせるということは非常に困るので、取締役会というようなものについて、これをもう少し民主的にしたのだというような御説明でありますけれども、その取締役会自身が非常に大きな、いまだかつてないような権限を持つことになりまして、それの背後にはそういう見返り資金とかあるいは外国資本とか資金とかいうようなひもがついておる。そういうことになつた場合に、日本の産業経済がほんとうの日本人のものとして、これが一本立ちで歩けるかどうかということは私たち見通しがつかないのであります。御説明には納得できない。  そこで私は質問いたしますが、しからば現在この立法をされるにあたりまして、日本実情も十分考えたとおつしやいますけれども、現在の株式市場の状況はどうなつておるか、また増資事情はどうなつておるか、非常に大暴落をいたしておるのでありますが、それの対策は大体どういうふうに考えておるかというような点につきまして、まず御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 企業の経営は單に株式会社法というような商法的な組織法だけで運用されませんで、経済政策あるいは資金政策、そのほかの一連の産業上の施策というものによつてつながります関係上、その産業政策あるいは資金といつたような関係になるので、私お答えする立場におらないのでありますが、この商法の中にあります株式会社組織だけは他の一連のいろいろな施策とまざり合いますことによりまして、その現われはいろいろな形をとるとは思いますが、株式会社そのものはきわめて中正なものと御了解いただいてよろしいのではないかと思います。あるいは外資が入つて参ります場合に、これに対する国家的な管理、あるいは措置が適当を欠きまするならば、それは相当憂慮すべき事態の発生することもあり得るかとも思いますが、それは別の観点において検討せらるべきものと考えます。株式会社法自体といたしましては、実はそういう問題につきましてはきわめて中正な、無色な立場をとつておるということを申し上げたいと思います。  それから今お尋ねになりました最近における株式市場の状況あるいは株価の暴落、株式分散の実情、それに対する将来の対策いかんというようなお尋ねでございまするが、これは他に適当な政府委員があろうかと思いますので、私からお答えすることは差控えたいと存じます。
  25. 田代文久

    ○田代委員 これは議事進行に関してのことになりますけれども、今の御説明によりますと、私は現在の立法というものがいかに経済界実情とかけ離れた形でつくられているかという点ではなはだ遺憾に思うのでありまして、実際にこの株式会社法とか、商法とかいうものが中正無私、文字の上でそのようになつておりましても、これは実際に血の通つた形で生きて町を歩いて、日本の全経済を動かして行くというところに大問題があるのでありまして、文字がどうである、こうであるというようなこと、いかに法文がりつぱにここに完成しておるといたしましても、実際に生きて来なければ問題にならないのであります。そういう意味から実情を十分把握されておるかどうか。また日本経済実情を把握の上で立法がなされておるかどうかということで問題になるのであります。  ただいま議事進行で委員長にお伺いしたいのですが、連合審査をやりました根本は、もしこの法案が非常に間違つておる、これを撤回しなければならぬ、あるいは修正しなければならぬという部面がある場合においては、修正しなければならないので、連合審査をやる、連合審査をやるについては單に法律関係だけを見ても経済界実情はわからないから、そこで実際にそういう法律が生きて歩いて、経済界に及ぼす影響というようなものを見て、その上でこれを修正するなら修正しなければならないし、撤回するなら撤回しなければならない。その参考にするために連合審査会が開かれたわけでありまして、その連合審査会に経済界増資実情がどうなつているか。あるいは株式界の実情はどうなつているか。それの対策はどうなるか。実情法案とがどういう関連になつておるかということがわからなければ、私は法務委員会の同僚委員諸君がこの席においでになりましても、これは実際無意味である。まつたく法務委員会自体として審議なさつたことを、またここでむし返して聞かれるというのはたいくつきわまることになるのじやないかと思うのでありまして、その点どんなふうに措置されたのであるか。またこの形で他に法務関係政府委員だけで審議を進められるかどうかという御意見を伺いたいと思います。
  26. 花村四郎

    ○花村委員長 ただいま法務委員長に対する御質疑のようでもありましたから一言申し上げておきます。実は通商産業委員会の方から合同審査をやつてくれという御希望のもとにやることになつたのでありますが、もちろん合同審査でありますから法務委員会委員諸君も、通商産業委員会委員諸君も、ともにこの法案について連合審査会を通じて十分に審議をしていただき、しかも修正する必要のある場合においては、修正もしてもらうという建前で連合審査会を開くわけですから、さような意味に御了承願いたいと思います。
  27. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、これは動議でございますが、経済関係政府委員がお見えになつた上でやつた方が私至当ではないかと思いますが、お諮りしていただいて、とにかくそれは他の委員の方で必要がないということになればやむを得ませんが、私どもとしましては、それでは意味がないというふうに考えます。
  28. 花村四郎

    ○花村委員長 それは、田代君が産業方面の政府委員の御出席を、求むることが御希望であるという意味ならば、出頭を求むることにいたします。
  29. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 ちよつと今のに関連して……。ただいま田代委員からの動議か何かわかりませんが出ましたが、われわれ通商産業委員が合同審査をやるというのは、この條文の逐條的とか、そういつた法文の訂正とか、そういうような面でなくて、この画期的の会社法改正にあたつて、これが運用について、通商産業方面、ことに今度のこの改正の要点であるところの無額面株式の問題であるとか、あるいは授権資制度の問題であるとか、こういう法律改正があつて、はたしてこの改正に基いてそれがうまく運用できるような状態にあるかどうか、またこの審議会において実業家、あるいは学界からのいろいろな意見が出ている。そのいかなる意見で、いかなる見通しで、この法律改正が行われるか、こういう観点から、ほかのところはどうか知りませんが、私自身としては考えて参つたわけであります。ですからあとで質問いたす点も、いろいろそういう内容的のものでなくて、経済的方面の関係から二、三質問したいと思つているわけですから、願わくばそういう方面の見通しとか、あるいはそういう責めのあられる方が出られて、答弁を願つたら非常にけつこうだと思います。
  30. 花村四郎

    ○花村委員長 ちよつと速記をとめてください。   【速記中止】
  31. 花村四郎

    ○花村委員長 それでは速記を始めてください。
  32. 田代文久

    ○田代委員 私は先ほど申しましたように、この法案と直接関係のある増資の実体、これをどんなに政府がつかんでおられるかという点がわからないと質問を続行できないのです。ですから今できなければきようは一時休んで、そして続行ということで、月曜でも火曜でも再開していただくというふうにしていただくことがよいのではないかと思いますが。
  33. 花村四郎

    ○花村委員長 政府委員がおられますから、あなたの御希望せられるような答弁はできると思います。
  34. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 手元に十分資料がございませんので、少し大まかなことを申し上げて恐縮でございまするが、一昨年、昨年にかけまして、重要産業会社増資をいたしましたことは田代委員承知通りだと思います。その増資が一斉に、しかも大量に行われました関係上、非常に株式の氾濫と申しまするか、インフレを来しまして、株価が暴落した、と同時に会社の実体につきましても諸般の経営上の支障がありまして、思うほど業績が上らないというこの両面の作用によりまして、株価が暴落して行く、かように私は考えておる次第でございます。これに対しまして政府がいかようなる対策をするかという点のお尋ねでございまするが、これは遺憾ながら当政府委員からはお答えいたすことができないのでありまして、これは通商産業大臣あるいは大蔵大臣にお尋ねをお願いいたしたいと考えます。
  35. 加藤充

    ○加藤(充)委員 議事進行に関連して発言いたしますが、委員長おはからいの通り、しかるべき適格者が現われますことを予測いたしまして、現われなかつた場合は継続的に審議の続行をお願いいたしたい。それで、田代君の方からの発言はそういう意味合いで中断いたしますので、今まで門脇委員並びに田代委員質疑岡咲政府委員がお答えしたことに関連的に質問をさせていただきたい。これは場合によつては聞き捨てならぬことだと思う。決しておどかすわけじやありませんが、付属法規の手配ができてないがどうか、一貫して審議さるべきものがあるように思うがという門脇委員質問でありました。岡咲政府委員はそれに対しまして、修正を多分に予想する箇所があらかじめ意図されておるので、その修正を見た上で付属法令考えておるのだ、こういうのですが、これは役人としての答弁としては、官僚的に満点だと思うのですが、しかしこれはまた逆に言うと聞き捨てならぬと思うのです。付属立法に配慮されなければならない点が多分にあるほどの修正を予想した法案を、委員会に出して来るということは、委員会を侮辱したものだと思う。お前らでやつてみろ、おれは気がついて、ここらあたりは多分に修正を予想するのだが、それに気がつかなければおれの方はこれでやるというのですが、これは政府責任としても、万全のものは一つしかないと思う。人間のやることですから相対的な万全でありますが、相対とは言い條、万全なものはそれに応じて一つしかないと思うのです。修正を多分に予想した法律案委員会に出して来るというのはもつてのほかだと思うのですが、この点についての御見解を承りたいと思います。
  36. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 先ほどあるいは言葉がよく加藤さんに徹底いたさなかつたので、誤解をお招きしたかと思いまするが、本来は本法律案と同時にこれと関連がある施行法案、あるいはそのほかの関係法令を全部整理いたしまして、提出するのが本来の建前と考えます。ところが先ほど申しましたように、法制審議会審議に予想以上に長時間をかけました関係上、本法律案を実際に立案いたしますことに手一ぱいでありまして、とりあえずこれを出した次第でございます。それを弁解いたすわけではございませんが、実はこの法律案は非常に重大な現行法修正を含んでおりますので、私どもは昨日も申し上げましたように及ばずながら全力を盡して立案いたしまして、まず完璧に近いものと考えまして提案をいたしたのでございまするけれども、非常に重大な改正を含んでおりまする法案であります関係上、国会におかれましてこれを検討されて、多少修正をせられることはあるかもしれない、多少と申し上げたのです。そういたしますると、その修正部分によつて施行法令が非常にかわつて来なければならない、そういうこともございまするので、一応この法律案を出しまして、御審議を願つて、その結果によつてこの施行法令を考えることも決して不適当ではないだろう、かように考えまして、とりあえずこの法律案を出したということのおわびを申し上げておく次第であります。
  37. 加藤充

    ○加藤(充)委員 多少の修正を予想したというのですが、これはあたりまえの話で、いつの場合もそうなのです。多少の修正を予測されて、国会審議権を尊重する建前で貫かれているのでしようか。それならば政府みずからお認めになつているように、これと関連のある、そうして一体として出さなければならない付属法規というようなものも出して、それで本案について多少の修正があれば、それは付属法規についても多少の修正を受けるのは当然な結論であると思うのです。やはりどういうふうに答弁しようとも、岡咲君の話は——経済の実体についての答弁はもちろん職責外ですが、この法律案の問題についても、あるいは取扱い方についても、どうも及第点をとつた答弁を今までやつて来てないと思うのです。その点を私は誤解しているつもりはありませんが、多少の修正を予想するのだつたら、関連のある付属法規を全体として出して来られなければ、やはり政府側の出し方としては私は欠陥があると思いますが、この点どうです。
  38. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 先ほどもたびたび申し上げましたように、全部の法律案を用意して提案いたしまして、国会の御審議を仰ぐのが本来の行き方と思いまするが、時間的に十分余裕がございませんので、とりあえず本法律案提案いたしまして、この法律案が確定いたしましたならば至急関係法令整備いたしまして、施行には十分支障のないようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。全部の法案を用意できなかつた点は私どもの力の及ばなかつた点で、この点はお許しをいただきたいと考えます。
  39. 角田幸吉

    角田委員 私は議事進行についての意見をこの際申し述べておきます。通産との連合審査会は、なるべく今日にとどめていただきたい。何と申しましても、どういう御意見が出ましても、付託された主たる委員会の採決によつてきまるものであります。十分御意見のほどは、各党ともりつぱな代表された法務委員の方が出ておりますので、そちらの方に出していただきまして、こちらの審議関係等もありますから、なるべく今日程度において通産との連合審査会はとどめていただくように、この際希望を申し上げます。
  40. 田中堯平

    田中(堯)委員 今角田君の提案に賛成であります。但し実はこれまでも法務委員会質疑応答が行われて来ましたし、これからもやるでしようが、多くは法律面の質疑応答だつたと思うわけであります。そこで経済の実態についてわれわれ多くの質問を持つているわけですが、この連合審査が今日限りになるということであるならば、これからの法務委員会に通産関係政府委員の方々にぜひとも出ていただきたい、これをあわせて希望いたします。
  41. 花村四郎

    ○花村委員長 ちよつと速記を待つてください。   【速記中止】
  42. 花村四郎

    ○花村委員長 速記を始めてください。  ほかに御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、法務委員会通商産業委員会連合審査会は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会