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田中(堯)
委員 まず第一に
お尋ねしたいことは、終戰直前から終戰時に至るまでの間に、中国人捕虜が所々方々において非常な虐待、さらには虐殺をされたという事実があるようであります。たとえば昭和十九年から二十年にかけて、当時建設中であ
つた木曽川の御嶽発電所工事、これに中国人捕虜が約千五百名
労役に従事せしめられたのでありますが、終戰時までに生き残
つた者はわずかに五百名、他の一千名はみないろいろな
理由で死んでおるのでありますが、役場に届けられておる死亡届並びに死亡診断書によりますと、わずかにそのうち四十三名だけが届け出られておるのです。その死亡診断書の
理由は、爆死か縊死自殺、後頭部複雑骨折、慢性胃腸炎、衰弱症というような病名が載せられておるのでありまして、これらの病名からしても、食事その他の待遇が非常に惡か
つたとか、あるいは物理力を用いて殺されたのではあるまいかという推察にかたからざる死因であるのでありますが、附近村民の多くの人々が語るところを総合しますと、たとえばトンネル工事中にトンネルの中で惨殺された捕虜もあり、これらの死体はトンネル内のセメントの中に埋め込まれたというようなことも言
つておる。また食事にいたしましても、一日た
つた三個の粗惡なる。パン。縦横の寸法も三センチに七センチ、厚さが三センチ、小麦粉が六〇%にぬかが四〇%というような、とても人間として生きて行くことはできないような食事、しかも副食物は何らついてはいないというような事実が、実は單に近所の人の語り伝えではなしに、電産労働組合の長野県支部木曽川分会の相当責任ある調査によ
つて、今日明らかにされておるのであります。これば單に木曽川の御岳発電所工事に使役された捕虜の問題でありますが、その他一々
説明は省略いたしますけれ
ども、たとえば北海道の平和炭鉱におきましても、大体似たような虐待と虐殺が行われておるのであります。また秋田県の花岡鉱山におきましても、終戰直前、七月一日に中国から送付された捕虜が九百余名、そのうち終戰までに生き残
つた者はわずかであ
つて、四百十六名が殺害されてお
つたというような事実、その他常磐炭田とか、あるいは九州炭田、あるいは別子銅山というふうに、
全国あちらこちらにおいて、このようなまことに国際的には日本として申訳のない、はずかしい行為が行われたことがあるのであります。ところで戰争犯罪の裁判のときには、この
種類の戰犯につきましては、ほとんど追究をされておらないのであります。在日華僑総会の人々の言をも
つてしますれば、これは明らかに人種的偏見による取扱いである、けしからぬということで、非常に憤激をしておられる。思うにこういうふうな事件が大なり小なりあ
つたという事実があるならば、これは捨て置きがたいことだと思います。われわれはこれから中国とも、あるいは種々の国々、朝鮮とも、南洋諸国とも、その他全世界の国々とよしみを結んで、善隣
関係を進めて行かなければならぬのでありまするが、しかしこういう事実をただほおかむりをしていつまでもほ
つたらかしておく、臭いものにふたをしておくというような、かりにそういうような態度であるとするならば、将来の日本の対国際
関係は非常に重大なる問題になり、非常に不利であるということを
考えまして、このような事件を調査されたのであるか、あるいは調査中であるか、どういうことにな
つておるのかということについて、まずお伺いをしたいのであります。