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1950-04-04 第7回国会 衆議院 法務委員会 第19号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十五年四月四日(火曜日) 午後二時二分
開議
出席委員
委員長
花村
四郎
君
理事
角田 幸吉君
理事
北川 定務君
理事
小玉
治行
君
理事
田嶋 好文君
理事
山口 好一君
理事
猪俣 浩三君
理事
田中
堯平君 押谷 富三君
眞鍋
勝君
武藤
嘉一君 三木 武夫君
世耕
弘一君
出席政府委員
法務政務次官
牧野
寛索
君 刑 政 長 官 佐藤
藤佐
君 検 事 (
刑政長官総務
室主幹
) 關 之君
法務
府
事務官
(
矯正保護局
長) 古
橋浦四郎
君
民事法務長官
田中
治彦君 検 事 (
中央更生保護
委員会事務局
長) 齋藤 三郎君
委員外
の
出席者
專 門 員 村 教三君 專 門 員 小木 貞一君 ――
―――――――――――
三月二十七日
委員田
万
廣文
君及び林百郎君
辞任
につき、その
補欠
として
石井繁丸
君及び
加藤充
君が
議長
の指 名で
委員
に選任された。 同月三十一日
委員高橋英吉
君及び
石井繁丸
君
辞任
につき、そ の
補欠
として
水田三喜男
君及び田万
廣文
君が議 長の
指名
で
委員
に選任された。 四月一日
委員水田三喜男
君
辞任
につき、その
補欠
として
高橋英吉
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
三月二十九日
国籍法案
(
内閣提出
第一三八号)
国籍法
の
施行
に伴う
戸籍法
の一部を
改正
する等 の
法律案
(
内閣提出
第一三九号)
更生緊急保護法案
(
内閣提出
第一三五号)( 予)
保護司法案
(
内閣提出
第一三六号)(予) 同月三十一日
土地台帳法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提
出第一四六号) 同月二十七日
岡山地方法務局津山支局庁舎建設工事促進
の請 願(
若林義孝
君外一名
紹介
)(第一八六三号) 田上町唐湊に
決定
の
少年観護所設置位置変更
に 関する
請願
(
床次徳二
君
紹介
)(第一八八五 号)
名古屋高等裁判所
及び同
高等検察庁
の
金沢支部
昇格独立
に関する
請願
(
鍛冶良作
君外五名紹 介)(第一八九三号)
不良図書取締対策
に関する
請願
(
松澤兼人
君紹 介)(第一八九四号) めいてい(酩酊)
者取締法制定
に関する
請願
(
武藤運十郎
君
紹介
)(第一九九一号) の審査を本
委員会
に付託された。 同月二十九日
商法
の一部
改正
に関する
陳情書
(第六六九号) 同 (第六八四号) を本
委員会
に送付された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した事件
公聽会開会承認要求
に関する件
矯正保護作業
の運営及び利用に関する
法律案
(
内閣提出
第八八号)
国籍法案
(
内閣提出
第一三八号)
国籍法
の
施行
に伴う
戸籍法
の一部を
改正
する等 の
法律案
(
内閣提出
第一三九号)
土地台帳法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提
出第一四六号)
更生緊急保護法案
(
内閣提出
第一三五号)( 予)
保護司法案
(
内閣提出
第一三六号)(予) ――
―――――――――――
花村四郎
1
○
花村委員長
これより
会議
を開きます。 本日はまず
公聽会開会要求
の件についてお諮りいたします。ただいま本
委員会
において
審議
中の
商法
の一部を
改正
する
法律案
は、
一般的関心
及び
目的
を有する重要なる
法案
であり、
国民生活
に及ぼす影響がきわめて大でありますので、
商法改正
に関し、
一般国民
の声を十分に聞くことが肝要であると考えられます。従いまして本
委員会
といたしましては
公聽会
を開くことにいたしたいと思いますが、
衆議院規則
第七十七條により、あらかじめ
議長
の
承認
を得た後にその
決議
をしなければなりませんので、
公聽会開会承認要求書
を
議長
に
提出
いたしたいと思いますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
花村四郎
2
○
花村委員長
御
異議
なければさようとりはからいます。 なお
議長
の
承認
を得ましたときは、改めて
決議
をいたさず、
議長
に対する
公聽会開会報告書
の
提出
、
開会日時
及び
公聽会
において
意見
を聞こうとする案件の
告示等
、
衆議院規則
第七十九條による
手続
につきましては、
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
花村四郎
3
○
花村委員長
御
異議
なければさようとりはからいます。 —————————————
花村四郎
4
○
花村委員長
これより
土地台帳法等
の一部を
改正
する
法律案
、
国籍法案
、
国籍法
の
施行
に伴う
戸籍法
の一部を
改正
する等の
法律案
、
保護司法案
及び
更生緊急保護法案
について、順次
政府
の
提案理由
の説明を求めます。 —————————————
牧野寛索
5
○
牧野
政府
委員
土地台帳法等
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、
提案
の
理由
を御説明申し上げます。 現在の
土地台帳
及び
家屋台帳
は、
土地家屋
の
状況
を明らかにし、
地租
及び
家屋税
を徴收するために必要な
事項
を
登録
する
課税台帳
でありますと同時に、地籍、
家屋籍
に関する
台帳
といたしまして、
不動産登記制度
の
基礎
ともな
つて
いるのであります。しかるにこの
土地台帳
及び
家屋台帳
に
登録
する
賃貸価格
の
調査決定
は、
税務署
においてこれを行うこととな
つて
おります
関係
上、その
台帳
の
事務
は
税務署
の所管とされていたのでありますが、
地方不動産登記
の
事務
が
登記所
の所管でありますために、
不動産制度
の見地から考えますならば、いたずらに
手続
を煩雑にし、
事務処理
の円滑を欠く
うらみ
があつたのであります。今回、
税制改革
の一環といたしまして、
地方税法
の
改正
が行われようとしておりますが、これによりますと、
地租
及び
家屋税
は
市町村
がこれを徴收することといたしますとともに、その
課税
は右の
賃貸価格
を
基準
とせず、毎年
市町村
において認定する
土地家屋
の
価格
を
基準
として行われることになりますが、その結果は、
賃貸価格
の
登録
をする必要がなくなり、
従つて
また
税務署
において
台帳事務
をつかさどる
理由
も消滅することとなるのであります。ここにおいて、
土地台帳
及び
家屋台帳
の
事務
は、これと最も
関係
の深い
不動産登記
の
事務
をつかさどる
登記所
に移管し、あわせて
土地台帳
及び
家屋台帳
の
事務
と
不動産登記
の
事務
との間に、ある程度の
手続
上の
簡易化
をはかりますとともに、従来
通り市町村
に
土地台帳
、
家屋台帳
の
副本
を備え、
市町村
の
課税
上支障を生じないように相互の連絡をはかることといたしたのであります。以上申し述べました
趣旨
によりまして、
土地台帳法
、
家屋台帳法
、
不動産登記法
その他
関係法律
の
規定
に
所要
の
改正
を加えるため、この
法律案
を
提出
いたした次第であります。 以下この
法律案
の要点を申し上げますと、まず
土地台帳法
の
改正
におきましては、第一に、
土地台帳
の
事務
を
登記所
に移管いたします結果、
登記所
に
土地台帳
を備え、その
登録
の
事務
は、
当該土地
につき
登記
の
事務
をつかさどる
登記所
がつかさどるものといたしました。 第二に、今後は
土地台帳
に
賃貸価格
を
登録
する必要がなくなりますので、
土地
の
賃貸価格
に関する
規定
は、全部廃止することといたしました。なお、
市町村
におきましては、
土地台帳
の
副本
に、
課税
の
基準
となる
土地
の
価格
を記載することとなりますので、今後は
土地台帳
にも
市町村長
の通知により、
土地
の
価格
を記載するものといたしました。 第三に、
土地
の異動に関する
所有者
の
申告
は、現在ではすべて
市町村
を経由してすることとな
つて
おりますが、今後は直接
登記所
に対してすることもできるものといたしました。 第四に、
法令
により
登記名義人
またはその
相続人
に代位して、
不動産
の
表示
の
変更
その他の
前提登記
を申請し、または嘱託することができる場合でも、従来は、
土地台帳法
による
申告
を代位してすることができませんでしたため、種々
手続
上の不便を生じましたので、今後は代位してその
申告
をすることができるものといたしました。 第五に、現在
土地台帳
の
閲覽
は許されないこととな
つて
おりますが、今後
土地台帳
が
登記所
に移管されますと、
登記
との
関係
が現在以上密接となり、その
閲覽
の必要を生じて参りますので、従来の
謄本
の交付の
制度
のほかに、新たに
土地台帳
の
閲覽
を認めることといたしました。 第六に、
現行
の
土地台帳法
は、
申告
、
土地台帳
の
副本等
に関する重要な
事項
をも、その
施行規則
においてこれを
規定
いたしておりますが、これらの
規定
を整理しまして、
土地台帳法
中にとり入れることといたしました。 第七に、罰則につきまして、必要な整備を行うことといたしました。 次に
家屋台帳法
の
改正
におきましては、
土地台帳法
の
改正
と同様の
趣旨
によりまして、第一に、
登記所
に
家屋台帳
を備え、その
登録
の
事務
は、
当該家屋
につき
登記
の
事務
をつかさどる
登記所
がつかさどるものとし、第二に、
家屋
の
賃貸価格
に関する
規定
を廃止するとともに、
家屋台帳
には、
市町村長
が通知した
家屋
の
価格
を記載するものとし、第三に、
家屋台帳法施行規則
中重要な
規定
を
家屋台帳法
中に取入れることといたしまたほか、
家屋
に関する
申告
、
家屋台帳
の
閲覽
、罰則の整備につきましても、
土地台帳法
とほぼ同様の
改正
を加えることといたしました。 さらに
不動産登記法
の
改正
におきましては、第一に、現在、
登記所
が
土地
の
所有権
、
質権
もしくは
地上権
または
家屋
の
所有権
の
得喪変更等
に関する
事項
の
登記
をしました場合には、これを
税務署
に通知して、
税務署
はこれに基いて
土地台帳
または
家屋台帳
の
登録
を修正することとな
つて
おりますが、今後はその必要がなくなりますので、その通知を廃することといたしました。 第二に、現在
不動産
の
所有権
の保存の
登記
及び
不動産
の分割、合併その他
表示変更
の
登記
を申請する場合には、
土地台帳
または
家屋台帳
の
謄本
を添付することとな
つて
おりますが、今後はその必要がなくなりますので、これらの
謄本
の添付を要しないものといたしました。 第三に、
不動産
または
登記名義人
の
表示
が、
登記簿
と
土地台帳
または
家屋台帳
と符合しない場合には、その一致をはかるための
措置
としまして、
当該不動産
または
登記名義人
の
表示
の
変更
の
登記
により、まずこれを符合させた後、他の
登記
をすべきものといたしました。 第四に、
登記申請
の
手続
の
簡易化
をはかる意味におきまして、
土地台帳法
または
家屋台帳法
による
申告
をする場合に、別に
登記
の
登録税
の納付があれば、その
申告
のほかに、
不動産
の
表示
もしくは
登記名義人
の
表示
の
変更
の
登記
または
所有権保存
の
登記
の申請があるものとみなして、その
登記
をすることといたしました。 以上申し上げましたのが、この
法律案
の
概要
であります。次に
国籍法案
及び
国籍法
の
施行
に伴う
戸籍法
の一部を
改正
する等の
法律案
について、
提案
の
理由
を説明いたします。
現行国籍法
は、明治三十二年の制定にかかるものでありまして、その中には新
憲法
及び
改正民法
の
趣旨
に沿わない
規定
が含まれておりますので、これを改める必要があるのでありますが、
改正
を要する
條文
が多数に上ります
関係
上、
現行国籍法
を廃止して、新たに
国籍法
を制定することといたしたのであります。またこの新たな
国籍法
の
施行
に
伴つて
、
戸籍法
その他の
関係法律
を整理する必要があるのであります。以上の
理由
によりこの二つの
法案
を
提出
いたしたのでありますが、まず
国籍法案
の
内容
について、
現行法
と異なる点の
概要
を説明いたします。 第一に
現行法
では、
国籍
を
離脱
することができる場合を狹く限定し、かつ
国籍
の
離脱
に
伴つて法務総裁
の許可を必要とする場合があるのでありますが、これは
国籍離脱
の自由を保障した
憲法
第二十二條第二項の
規定
に牴触いたしますので、この
法案
におきましては、
外国
の
国籍
を有する
日本国民
は、すべて
法務総裁
に届け出ることによ
つて
、自由に
日本国籍
を
離脱
することができることといたしました。 第二に
現行法
では、第二條その他
民法
の家の
制度
に立脚する
規定
があるのでありますが、家の
制度
は両性の本質的平等及び個人の尊嚴を宣言した
憲法
第二十四條の
精神
に反するものとして、すでに
民法
の
改正
を見た次第でありますので、この
法案
では、
現行法
のこれらの
規定
を廃止することにいたしました。 第三に
現行法
は、
国籍
の
取得
についても、また
喪失
についても、妻は夫の
国籍
に従うという
原則
及び子は父または母の
国籍
に従うという
原則
を採用しており、婚姻、離婚、
養子縁組
、離縁、
認知等
の
身分行為
に伴い、あるいは夫または父母の
国籍
の
得喪
に
伴つて
、当然に妻または子の
意思
に基かないでその
国籍
の
変更
を生ずることにな
つて
いるのでありますが、これまた
憲法
第二十四條の
精神
と合致いたしませんので、この
法案
におきましては、近時における各
国立法
の例にならい、
国籍
の
取得
及び
喪失
に関して、妻に夫からの地位の
独立
を認めて、その
意思
を尊重することとし、また子についても、出生によ
つて日本国籍
を
取得
する場合を除いて、子に父母からの地位の
独立
を認めることといたしました。 第四に
現行法
では、
帰化人等
に対しましては、国務大臣その他
国家
の重要な官職につく資格を制限いたしておりますが、これは、
国民
はすべて法の下において平等であることを宣言した
憲法
第十四條の
精神
に反しますので、この
法案
では、
帰化人等
に対するかかる資格の制限を撤廃いたしました。 第五に
現行法
では、
日本
に特別の功労のある
外国人
につきましては、勅裁を得て
帰化
を許可することができることとな
つて
おるのでありますか、
憲法
第四條の
規定
によ
つて
、天皇には国政に関する権能がないことになりましたので、この
法案
では、
国会
の
承認
を得て
帰化
を許可することができることといたしました。 その他この
法案
では、二重
国籍
の発生を防止するため、
外国
で生れたことによ
つて
その国の
国籍
を
取得
した
日本国民
は、
戸籍法
の定めるところによ
つて日本
の
国籍
を留保する
意思
を
表示
しなければ、出生の時にさかのぼ
つて日本
の
国籍
を失うものとし、また
現行法
における
国籍回復
の
制度
を
帰化
の
制度
に統一し、なお
帰化
及び
国籍離脱
の効力の発生の時期を明確にするため、
帰化
及び
国籍
の
離脱
は官報に告示された日から効力を生ずることといたしました。 以上説明いたしました諸点を除きましては、この
法案
は、
現行法
の
規定
の
趣旨
を踏襲いたしております。 次に、
国籍法
の
施行
に伴う
戸籍法
の一部を
改正
する等の
法律案
の
内容
について、その
概要
を説明いたします。 第一に、新
国籍法
の
施行
に伴いまして、
国籍
の
取得
及び
喪失
に関する
戸籍
の
手続
にも
変更
を生ずることとなりますので、
戸籍法
中
国籍
の
得喪
に関する
規定
に
所要
の
改正
を加えることといたしました。 第二に、新
国籍法
の
施行
に伴いまして、
法務局
及び
地方法務局
に
法務総裁
の管理いたします
国籍事務
を分掌させる必要がありますので、
法務
府
設置法
に
所要
の
改正
を加えることといたしました。 第三に、明治六年第百三
号布告改正法律
は、
外国人
を養子または入夫とする場合の
條件
を
規定
いたしておるのでありますが、
入夫婚姻
の
制度
は、現在すでに廃止され、また新
国籍法
では、
養子縁組
は、
日本国籍取得
の原因とはならないこととな
つて
、右の
法律
はその必要がなくなりますので、これを廃止することといたしました。 以上簡單でありますが、
国籍法案
及び
国籍法
の
施行
に伴う
戸籍法
の一部を
改正
する等の
法律案
について、その
内容
を説明いたしました。 次に
保護司法案
の
提案理由
について御説明申し上げます。 いわゆる
刑余者等
のよき
相談相手
として、何ら報酬を目当とすることなく、ひたすら奉仕の
精神
をも
つて
これら社会の
落伍者
の
更生補導
に当
つて
来ましたわが
国司法保護委員
の
制度
は、
昭和
十四年九月
現行司法保護事業法施行
の以前から、その献身的な努力によりまして幾多の
犯罪者
を更生させ、
犯罪
の防遏に大きな功績を築いて参つたのでありますが、別途この
国会
に上程になりました
更生緊急保護法案
を実施のあかつきは、これに伴いまして、
司法保護事業法
と、これに基く
司法保護委員令
が廃止されることと相なります。ところが一方この
司法保護委員
は、
犯罪者予防更生法
による
保護観察
その他
犯罪前歴者
の
改善更生
並びに
犯罪
の
予防活動等
に必要不可欠の重要な任務を
帶びておりますので
、ぜひともこの
種事務
に従事する者の組織、権限に関する
法律
を新たに制定する必要が生じたのであります。よ
つて
本
法案
は、この機会に
犯罪者予防更生法
その他の
関係法令
と完全に調和した
独立法
を制定することといたし、従来の
司法保護委員
にかえて、その任務にふさわしい名称の
保護司
を置き、これに
適用
すべき各般の
基準
を定めまして、同法の円滑な実施を期そうとするものであります。かような本
法案
の
趣旨
は第一條に法の
目的
として掲げたところでありますが、以下その他の
條文
の
内容
について重要な点を概略御説明申し上げます。 第一に、
保護司
の
職務
の
執行区域
、服務、監督、
事務
の
執行
に要した
費用
の支給及び表彰について
規定
いたしておりますが、これらはこの
法案
第一條の法の
目的
及び後述の
保護司
の任期に関する
規定
と相ま
つて
、
保護司
の公的な
身分
と
責任
の
範囲
を明かにいたすものであります。
保護司
は大体従来の
司法保護委員
の性格を受継ぎまして、その服務の
基本態勢
は
社会奉仕
の
精神
をも
つて
職務
を遂行するものであり、またこれには給與を支給いたしません。けれども現実に
職務
の遂行上要した
費用
にいきましては、これを全部
保護司
の負担にまつことは、
事務
の
性質
及び実効の
点等
から見て当を得ませんので、国が予算の
範囲
内でその
費用
の両部または一部を支給できる道を開くことにいたしております。
保護司
は、以上のごとくまつたく奉仕的にこの国の
事務
に従事する
篤志家
でありますから、
職務
上特に功労のあつた方々に対する表彰の道を法文上明確にいたしますことは、国としていささかその労に報ゆる当然のことと存ずるのであります。なおこの
保護司
の
性質
、すなわち
国家公務員法案
または刑法との
関係
についてでありますが、
保護司
は、それぞれ実社会で現に活動中の方々にお願いして、その本職のかたわら無報酬で奉仕的にこの仕事に携
つて
いただくのでありますから、これに
国家公務員法
を全面的に
適用
することは妥当でないのでありまして、人事院もまた同様の解釈であります。しかし、その
身分
はこの
法案
による
委嘱
をま
つて
発生するものであり、またその従事します
事務
は本
法案
及び
犯罪者予防更生法
に
規定
するものでありまして、すなわち
保護司
は
法令
により公務に従事する職員にほかならないのでありますから、刑法上は
公務員
として取扱うべきものと解するのであります。第二に、
保護司
の推薦及び
委嘱
、
欠格條項
、
保護司選考会
、
保護司
の任期並びに
保護司
の
解嘱
について
規定
いたしまして、全
保護司
が常に
適任者
のみで充実されることを期しております。
法務総裁
が
司法保護委員
を任命または解任する従来の形を改めまして、この
法律
による
保護司
は、
中央更生保護委員会
が
委嘱
または
解嘱
するものとし、その
委嘱
または
解嘱
にあた
つて
は、各地に置かれる
保護司選考会
の
意見
を聞き、また
解嘱
の場合に
当該保護司
に弁明の機会を與えることにいたしましたのは、法の運用を
犯罪者予防更生法
の
規定
に調和させ、かつ
保護司
の進退に特に愼重を期する意図にほかならないのであります。第三に、
保護司
の
設置区域
及びその定数と
保護司
の種別に関する
規定
を設けておりますが、これは、
保護司
の従事します
事務
が、広く全国的に発生散在し、かつその
内容
、対象ともきわめて複雑多岐多様にわたりますのにかんがみまして、
保護司
の最も適正な配置に意を用いているのであります。以上が本
法案
の要旨であります。 最後に
更生緊急保護法案
の
提案理由
について御説明申し上げます。 最近
犯罪
の累増、
凶惡化
が
国民生活
の平穏を脅かし、
平和国家建設
の前途に大きな暗影を投じまして、
社会寒心
の的とな
つて
おまりすことは御承知の通りでありますが、この憂うべき
犯罪現象
の陰には、多くの場合、すでに
犯罪
の経験を過去に持ついわゆる
前歴者
がおど
つて
いるのでありまして、その者があるいは新しい
犯罪集団
の中核となり、あるいは自暴自棄に走り、または一層無謀大担な犯行に出るなど、その現象に大きな役割を演じておりますことを考え合せますと、この
前歴者
の
再犯
を完全に防止することが今日の社会不安を一掃し、
国家再建
の
基礎
を確立するためにきわめて重要な事柄であると存ずるのであります。しかしてこの
再犯防止
の大きな一つの
基本的措置
といたしまして、去る第五
国会
で御
審議可決
を得まして、昨
昭和
二十四年七月一日から
施行
に相な
つて
おります
犯罪者予防更生法
があるのでありますが、同法によりますと、その
保護観察
の対象は、仮釈放中の者、仮退院中の者、
少年法
により
家庭裁判所
において
地方少年保護委員会観察
の
保護処分
を受けた者、及び
少年
時
刑執行猶予
の言い渡しを受け
猶予
中の者の四者に限定されておりまして、これに漏れたいわゆる
満期釈放者
、
起訴猶予者
または大半の成人の
刑執行猶予者等
のうちにも、その
再犯防止
に何らか的確な
保護
の
措置
を必要とするものが少くありませんにもかかわらず、これについては現在ほとんど放任の状態にあり、国の施策といたしましては、わずかに今日すでに無力に近い
状況
に陥
つて
いる
司法保護事業法
(
昭和
十四年
法律
第四十二号)が存するに過ぎません。またこの
犯罪者予防更生法
も、国の
財政等
を考慮して、専用の
收容保護施設
に関する
規定
が設けられておりませんため、同法による
保護観察
中の者に対する応急の救護の
措置
に万全を欠く
うらみ
があるのであります。 そこでこの
法案
は
犯罪者予防更生法
の
適用
を受けないいわゆる
満期釈放者
、
起訴猶予者等
のうち
再犯率
の最も高いと認められる
状況
にある、すなわち刑事上の
手続
によ
つて身体
の拘束を解かれた後一定の期間内の者に対しまして、
強制力
を伴わない緊急適切な
更生保護
の
措置
を講じて、その
再犯防止
に遺漏なからしめることを期し、あわせて
犯置者予防更生法
の
規定
する
保護観察
中の者に対する応急の救護を円滑に実施するとともに、さらにこれらの
更生保護
に関する
事業
の健全な
育成発達
をはかりますために、
現行司法保護事業法
を廃止いたしまして、新たに
生活保護法
、
職業安定法
その他の
関係法令
とも十分に調和し、また実効の期待できる
法律
を制定しようとするものであります。以下この
法案
の
内容
の重要な点につき概略申し上げます。 第一に、ただいま申し述べましたこの
法律
の
目的
のほか、
更生保護
及び
更生保護事業
の定義、
更生保護
の
責任
と
範囲
、
事業経営
の許可と届出、国の
委託費支弁
とその他の
費用補助
及び
附則等
にわたりまして
規定
を設け、
更生保護措置
の
内容
及びその
措置
に対する国の
責任
と
範囲
を明らかにし、またこの種の
事業
の運営上、特に重要で、かつ関連の多い他
法律
との
関係
に意を用いまして、
犯罪者予防更生法
を初め
刑事訴訟法
、
監獄法
はもちろん、
生活保護法
、
職業安定法
及び
労働基準法等
との間の結びつき及びその
適用関係
を明確にいたしております。これらの
規定
の中で、
更生保護
の
措置
を国の
責任
で行うことの
原則
を明確にいたしますとともに、国みずからの機関で直接これを行い得ない場合に処するため、一定の
国費支給
の裏づけを持つた
委託
の
制度
を開き、その
委託先
を国の監督が適切に行き届く
地方公共団体
、または
更生保護会
に限定しておりますが、これは本来この
事務
が、その
性質上国
の
刑事政策
の一環として行われるべきものとする考え方に基くものでありまして、つとに旧
監獄則
当時から官営の
保護事業
たる別
房留置制度等
の姿で認められ、その後
国家財政等
の
理由
により国は一歩後退し、わずかに
奬励金
の支出をも
つて
この
種事業
の経営をもつ
ぱら民間篤志家
の手に依存する近状にありましたものを戰後の経営困難その他諸般の事情にかんがみ、ここにその本然の姿に帰そうとするものであります。 第二に、
保護
の
開始手続
及び
更生保護会
の行う
更生保護
について
規定
いたしまして、
更生保護
の
措置
は本人の申出があつた場合にのみ
適用
が考慮されること、及びその当面の
事務
の
取扱い責任者
たる
保護観察所長
を初め、
関係機関
のとるべき
保護
の
手続
、
委託
の場合の
保護措置
の
内容
を明らかにし、あわせて
犯罪者予防更生法
の
規定
による
提護観察
中の者に対する応急の救護に、
更生保護会
を容易に活用できる道を開いております。 第三に、
更生保護事業
の経営の認可と認可
事項
の
変更
、変止、
更生保護会
または
地方公共団体
の営む
事業
の監督、
事業経営
の制限停止、認可の取消し、
事業
の運営監督に関する重要
事項
審議のための
更生保護事業
審議会、寄付金の募集の監督及び罰則等について詳細な
規定
を設けておりますが、これらはただいま申し述べましたこの
事業
の本質及び今日の経済その他各般の事情にかんがみまして、従来比較的ゆるやかな監督のもとに置かれてきた司法
保護
団体運営の方式を一擲いたしまして、新たなる構想のもとに、この
法案
による更正
保護事業
が真に社会の信頼にこたえ、また治安の確保に寄與できますように
事業
の認可その他各般の監督を適正に行い、も
つて
国がみずから直接この
事業
を全面的に行う場合と実質上ほとんど異ならない支配のもとにおいてこれを管理しようとするものであります。 第四に、
費用
の徴收及び表彰について
規定
しておりますが、これは前述の厚生
保護
開始の
手続
の
規定
と相ま
つて
、国と被
保護
者との
関係
を明らかにし、また報酬をも度外に置き、この困難な
事業
に献身される
更生保護会
またはこの
事業
の従事職員に対し、特に国として表彰の道を開く旨を法制上明確にいたすものであります。 以上が本
法案
の要旨であります。新
憲法
の公布後、その
精神
を具現するため、
犯罪前歴者
の
再犯防止
に関する拔本塞源的な法的
措置
は、
刑事政策
の一環として、まず第二
国会
において新
少年法
及び
少年
院法が、次いで第五
国会
において
犯罪者予防更生法
及び同法の
施行
法がそれぞれ可決成立し、すでに実施に移されて、逐次その実効をあげているのでありますが、本
法案
関係
と別途
提案
の
保護司法案
関係
の分野に関しては、
事務
の
性質
上その他各般の事情から今日までその改廃が遅延しいていたものであります。今回この両
法案
の法制化によりまして、初めてここに
前歴者
の
再犯防止
に関する法制が総合的な体系として整い、すでに実施されております右の各
関係法令
も、全面的にその効果を発揮することと相なるのであります。 何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
花村四郎
6
○
花村委員長
以上をもちまして
政府
の
提案理由
の説明は終了いたしました。何か御質疑はございませんか。
猪俣浩三
7
○猪俣
委員
一点だけお專ねいたします。
土地台帳法等
の一部を
改正
する法建案について、私は
内容
をまだよく検討しておりませんから、
條文
の微細にわた
つて
の質問は後日に讓りたいと思うのでありますが、概略的に見まして、農地調整法、自作農創設特別
措置
法に基きまして、自作農の創定が
登記
手続
上非常に遅れているということは、一つの大きな問題に相なる。そこでさような際におきまして、こういう
登記
方面の法規が
改正
せられます際に、そういうことに影響を及ぼして、なおその
登記
が遅延し、自作農の
土地
の所有が確保せられないような状態が起るやいなや。さようなことに対して多少の危惧の念があるのでありますが、さようなことに対しては何ら心配はないという
政府
の御確信があるのかどうかをお答え願いたいと思うのであります。
花村四郎
8
○
花村委員長
ただいまの猪俣浩三君の質疑に対する答弁は、民事局長がおりませんので、後に讓りたいと存じます。 —————————————
花村四郎
9
○
花村委員長
ほかに御質疑はありませんか。——別になければ、本
法案
の
審議
はこの程度にとどめ、次に
矯正保護作業
の運営及び利用に関する法建案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。小玉
治行
君。
小玉治行
10
○小玉
委員
私は本
法案
についてまず総括的にお聞きしたいと思います。今中小企業が仕事がなくな
つて
非常に苦境にあることは、
法務
府当局もよく御認識のことと思うのでありますが、この法建を
施行
する段階になりますと、いわゆる官公需の仕事はまず優先的に刑務作業にと
つて
しまうという結果になりますために、民間の印刷業でありまするとか、木工であるとかいつた部面の仕事を非常に圧迫する結果になるのではないかと思います。むろん
法律
で、懲役に科せられた者については
国家
においてこれに職業を與えなければならぬということは当然のことでありますけれども、一面その結果非常に民間企業を圧迫して、失業者が続出するという結果に相なりますと、またゆゆしき問題だと考えるのであります。この
矯正保護作業
の運営及び利用に関する法建案の
提案理由
を拜見しますと、この点についてかようなことを申しております。「さらに考慮すべきは、現在のごとく
矯正保護作業
の確保を、まつたく一般企業との自由競争に放置しますれば、その当然の結果として
矯正保護作業
は、仕事を手に入れることができず、ために受刑者の中に不就業者が続出し、受刑者の矯正
保護
はもとより、刑務所の治安維持の上からも、まことに憂慮すべき事態を来すことがおそれられるのであります。」ところが配付になりました
法務
府
矯正保護局
からの資料によりますと、印刷の方は
昭和
二十二年度に三千二百六十五万五千四百五十九円という收入高にな
つて
おります。それが
昭和
二十三年度は七千四百二十五万八千八百三円、
昭和
二十四年度は六千九百二十四万九千四百七十四円、これは註によりますと、二十四年度は十二月末現在であるということにな
つて
おりますから、これを年度末の三月まで加算すれば、やはり二十三年度と同様あるいはそれ以上の額に達するのではないかと思う。また洋裁縫については、二十二年度は千二百六十六万三千七十九円、二十三年度が二千二百八万五千四百三十五円、二十四年度が二千九百五十四万五千九百八十円、こういうに非常に收入がふえておる。さらに金層工は
昭和
二十二年度が二千二百五十八万五千二百五十七円、二十三年度が四千三百三十七万二千四百五十六円、二十四年度は一月から三月までを除いても四千百九万四千八百八十二円、こういうふうにな
つて
大体ふえておるようですが、この表から見ると、この
提案理由
にありまするように、このまま自由競争に放置しておくと、当然の結果として仕事の入手が困難になるというようなことはちよつと見当らないように思われるのであります。しかのみならず大体刑務所が仕事をすることは、仕事の
性質
はやはり私企業であろうと思うのでありまして、だんだん自由競争時代になりますれば、一般の民間の私企業と刑務所の企業とは同じ立場において、同じ
地位
において競争してしかるべきではないかと思うのであります。特に刑務所作業について優先的にこれを
保護
するということは、職業の自由の
原則
から申しましても適当でないと思うのであります。かような観点から、私はまず第一点として今申し上げました
通り
に、この表がら見れば、だんだん刑務所作業の收入は三年間の統計を見ても増加しておるような実情にあるにかかわらず、かような
法律
をつく
つて
特に刑務所作業を
保護
しなければならぬというのは、いかなる
理由
に基くのであるかという点についてお伺いいたします。 第二点といたしましては、今日刑務所作業をかようにして強化いたしますると、民間企業を圧迫する。その当然の結果として印刷業であるとか、あるいは洋裁縫その他について非常な失業者が出て来るということも考えられるのでありまするが、それに対してはいかなる対策を講ぜられる考えであるかというこの二つの点についてまず私は御質問申し上げたいと思うのであります。
古橋浦四郎
11
○古橋
政府
委員
ただいま御質問でございまする
提案理由
のうちで、刑務所はこのまま放置いたしますれば、作業が少いために漸次就業が惡化して、治安上はなはだ困難になるということを書きました点について、参考資料として出しました表における作業收入の漸次高まつたこととにらみ合せて理解ができないという仰せでございます。その点についてまず申し上げます。御承知のように戰争中に刑務所が施設を失いましたのは、全施設の約三分の一でありまして、しかも当時約五万の人間を收容し得る施設であつたのでございます。ところが終戰後非常に收容者がふえて参りまして、現在では十万に達しております。終戰後舎房その他の建築を第一番にいたしまして、それにつれまして漸次工場等に手をつけて参りまして、ただいまようやくその七分
通り
、あるいは六分
通り
までの工事を進めておるわけでございまするが、しかしまだ工場に至
つて
は、戰前程度には復旧いたしておりません。従いまして
昭和
二十三年ごろの就業者の数並びにその当時の工場の
関係
、また
昭和
二十四年度におきまする就業者の数とその工場との
関係
などが、この作業收益にも非常に影響して参
つて
おります。なお物価の高騰ということもございまするし、また作業によりましては、たとえば非常に材料の少いマッチ箱を張らせるとか、封筒を張らせるとかいうような仕事をやらしておりますれば、作業收益というものは非常に少いので、表の上では少くなるわけでありますが、これをある程度組織いたしますれば、どうしても材料を注ぎ込みますから、その材料代はそのまま数字に出て参
つて
おります。従いまして、この表でも
つて
刑務所の作業
経営
が非常に整
つて
来たということをただちに断定することには参りませんで、むしろ私どもといたしましては、收容者が倍にもふえましたにかかわらず、作業を與えるということは事実上刑務所におきましては非常な困難を加えておるのであります。現地の刑務所におきましては、毎日ほとんど一万に達するような夫業状態にある人々を收容しておるのでございまして、その数は決して減少しておるというわけではございません。もつとも最近私どもにおきましては、受刑者を遊ばしておいてはいけないので、いろいろむりをして何でもかんでも少しでも仕事をつけろというぐあいに指導いたしおりますために、現地の努力によりまして、ある程度の仕事はつけるようにしておりますが、その仕事を得ることの困難ということにつきましては、非常に大きなものを加えて来ておるのであります。 なお御質問の第二点でございますが、この
法律
は中小企業の圧迫にな
つて
、この
法律
実施
のために夫業者を増大するということを考えなかつたか、またそれに対してどういう
措置
を講ずるつもりであつたかという御質問でございますが、私どももちろん刑務作業をやります上につきましては、この
法律
の必要だけではなしに、中小企業に対する
関係
も、われわれの知識の
範囲
内において十分考慮いたしました上に、なお
政府
部内の各
機関
の御
意見
も徴しまして、この
法律
の草案を進めたつもりでございます。刑務所の作業が
日本
の全体の経済にありますその
地位
というものは、非常に小さいものでございます。また全国の官公庁に層するいわゆる官用主義の線に入
つて
おります工業に対しまする刑務所の作業の比例、これも数字で申し上げますると、大体私どもは一パーセントぐらいと承知いたしておるのでございます。そうしてこの一パーセントに当る刑務所作業が中小企業に対してどういうぐあいに影響を與えるかということも考慮いたしまするに——これはもちろん刑務所作業が今日民間作業ばかりに依存してお
つて
、直ちにこれを官用主義に振りかえるというのではございまんが、すでに刑務所作業の
経営
は実質的にある程度官用主義の線に向けられて参りました。今日では全作業を通じますると、約五十パーセントぐらいが官用主義の線に入
つて
来ておりまして、そのほかの約五十パーセントが民需ということにな
つて
おります。従いまして将来この
法律
を
実施
いたして参りまする上に影響があるとすれば、刑務所がこの五十パーセントの民需作業をやめて、官用に振りかえるという点に影響があると思います。私どもが聞いておりますところによると、中小企業庁におかれても、この刑務所作業の官用主義が中小企業にいかに影響するかということつきまして御調査の上、影響がないようにに御
決定
に
なつ
たということを聞いておるのでございます。御必要がございますれば、そちらの方から資料をお取寄せになれば、その点は私が申し上げるよりはつきりいたすと思うのでございます。 それから印刷工と木工について御質問がございましたので、大体の御説明を申し上げたいと思います。印刷作業は約七十パーセントがすでに官需に振りかわ
つて
おります。そのうち約五十パーセントが他の官庁、二十パーセントが自治庁、
法務
府
関係
というぐあいでございまして、あとの三十パーセントが民需にその道を求めておるのでございます。大体それが今日の作業の状態でございまして、将来においてもこの程度はあまり増大いたしません。 金額で申し上げますと、本年度の印刷の收入は大体一億二千万円程度までになる予定でございまするが、そのうち三千六百万円程度が民需にな
つて
おりまして、将来これが官需にな
つて
来る程度でございます。その金額が印刷工業全体のパーセンテージでどういう数字を持
つて
おるかと申しますると、大体
昭和
二十四年度の全国印刷業は、官需、民需合せて二百四十億と推定されております。従いましてそのうち約三千六百万円程度が将来官需になる部分に当るわけでございまして、パーセンテージから申しますれば、ほとんど問題にならぬ数字のように承知いたしておるのでございます。 木工につきましては、大体これと同じようなことが申し得るのでございまして、民間作業に対して一%にも達しない、〇・三%程度の全作業能力でございまして、その中の約半数の民需の分が振りかわるという程度の影響を及ぼすわけであります。従いまして私どもは官用主義の
法律
ができました上において、
社会
に大きな経済的な影響が参り、失業者がふえるということは、とうてい考えられないと承知いたしておるのでございます。 なおしかしながらこの
法律
の
実施
の上におきまして、もちろん刑務所作業を厖大なものにいたしまして、生産本位にいたすということになりますれば、いろいろな影響もあることはもちろんでございまするが、当局といたしましては、矯正を本位にいたしまして、生産作業につきながら職業の訓練ができるようなぐあいに考えまするために、刑務所作業の拡張ということも、私どもといたしましては必要の程度を越さないようにや
つて
参りたいと思
つて
おります。そのために私どもがただいま考えておりますることは、官用主義の
法律
がもし
制定
せられることになりますれば、その
実施
のためには私ども
法務
府以外におきまして、各
関係
官庁並びに業者の代表という方の協議会を持ちまして、それによりまして刑務所作業の運営におきまして、中小企業との
関係
を遺憾なく調節するようにいたしたいと考えておるのでございます。
小玉治行
12
○小玉
委員
いろいろお伺いしたのでありますが、この表にある最近三箇年の業種別の作業收入高という面から見れば、逐年刑務所作業收入はふえておる。ところがこれはいろいろ刑務所の方で、当局は苦心して、受刑者に職業を與えることに努力しておる。それが何とか失業せずにや
つて
おるのだということを先ほどもおつしやいましたが、これは民間の企業者といえども、現在の経済不況についてはまつたく血と涙をも
つて
、やつと鬪
つて
生活をしておる現状でありますから、刑務所当局におかれてもほんとうに民間企業の
方々
と同じように、仕事を與えることに努力するのは当然のことであると思うのであります。でありますから、もしこの
法律
をつくつた結果、刑務所の
関係
の
方々
がこの
法律
に依存して、今まで続けておる努力を放擲するような結果になりますと、これはゆゆしい問題だと思うのであります。でありますから今の
状況
を続けて行
つて
も、御説明によりますと、全体としてはわずかに一%ぐらいしか民間企業に食い込まないということでありますから、それならば私は刑務所当局が真劍にこの民間企業の
方々
と同様に、ほんとうに努力されたなら、わずか一%くらいの仕事はとり得て、かような
法律
は設ける必要はないのじやないかと考えるのですが、その点について御説明をお願いしたいと思います。
古橋浦四郎
13
○古橋
政府
委員
もちろんこの
法律
に
通り
ましても、刑務所側で十分な努力をいたさなければ、とうてい收容者に適当な作業を與え、訓練を全うすることは困難であります。数字の上におきまして、現在まである程度や
つて
いるのであるから、それでたくさんだという御議論でございますが、しかしながら私どもの見ておりますところでは、今日このまま推移いたしますれば、私は遠からずして刑務所の作業が非常な困難にぶち当
つて
参ると思うのでございます。のみなず、さような仕事を探すために狂奔して、一般の自由市場において競争をするということは、かえ
つて
また一般の生産者に対する影響がどうかと思うのでございまして、私どものねらいますことは、一石二鳥と申し上げましようか、刑務所の作業を
一定
の規格のもとにおきまして、
一定
の
範囲
から出らないようにして、私企業との競合ということを避けます。その半面刑務所におきましても、適当な仕事をある程度得まして、それによ
つて
矯正訓練にさらに一層努力して、受刑者をして、出てから再び職がないとか、あるいは職につけられない、能力がないというようなことで、舞いもど
つて
来ることのないようにいたすことが必要であると思
つて
いるのでございます。
小玉治行
14
○小玉
委員
先ほど印刷
関係
について、全国の印刷の收入と申しますか、それは統計によると二百四十億、そのうち刑務作業は三千六百万円とおつしやいましたが、この二百四十億という統計ですが、これはどこからの統計でございましようか。
古橋浦四郎
15
○古橋
政府
委員
この統計は、本年の二月に
日本
印刷工業会が通産大臣あてに
提出
した諮問の答申書に、その数字が出ているのでございます。
小玉治行
16
○小玉
委員
この
法案
を立案するにあたりまして、印刷であるとか、そのほかここに掲げてある幾多の業者の御
意見
は御聽取に
なつ
たのでありましようか。その点をお伺いしたいと思います。
古橋浦四郎
17
○古橋
政府
委員
草案中には、直接生産
関係
者には御
意見
を承りませんでしたが、通産省の御
意見
は十分承
つて
おります。
小玉治行
18
○小玉
委員
大体かようなことは、民間企業者に直接影響のある問題でありますから、立法にあた
つて
は、そうした方面の
意見
を徴されることが、あるいは妥当ではなかろうかと思うのであります。いわゆる通産省だけの
意見
を聞いて、一般民間企業の
意見
を聞かなか
つて
ということは、いかなる経過に基くか、その点をお專ねしたいと思います。
關之
19
○關
政府
委員
この
法案
を立案するにあたりましては、ただいま古橋局長から申し上げたように、民間の方には直接御
意見
を伺わなかつたのであります。その点でありますが、刑務作業をどう考えるかというと、基本の問題は民間企業との競合の問題でありますから、私どもとしては非常に苦心いたしたのであります。直接民間の業者に伺うのがいいか惡いか、あるいはそれの行政面を担当している
関係
各省の御
意見
を伺うのにとどめるのがいいか惡いか、いろいろスタートするについて苦心いたしたのであります。私どもとしましては結局いろいろ考えまして、これはその各部面を担当されている行政庁にお伺いをいたそう、こういうことにきめたのであります。 そこでなでそういう考えをきめたかと申しますと、刑務所の作業は概略今二十五種類から三十種類ありてまして、それを一々聞くことになりますと、これはたいへんなことでありまして、しかも中小企業については中小企業庁、あるいは労働面については労働省、それぞれの各主管の省がありまして、十分に各業界の実情を把握しておられるわけであります。私どもとしては、印刷の問題はこれこれ、木工の問題はこれこれ、皮革の問題はこれこれというふうに、私どもの刑務所の作業施設、作業能力、将来の見込みなどを、すべての数字を差上げまして、これに基いて率直な御
意見
を伺いたいというふうに申し上げて、それらの問題について、去年の春ごろから数回にわた
つて
会議
を開きまして、こちらとしては大体こういう
法案
をつくりたいという気持で事に臨み、別に案を確定せず、各省の御
意見
を伺いまして、そのうちにだんだんこういうものを固めて行つたのであります。私どもとしては、立案について個々の業者の御
意見
を聞かなかつたのは、そういう
理由
からであります。
関係
各省においてその個々別々の中小企業、あるいは労働面等の御
意見
は十分そこで反映して、私どもの方へ御通告いだだけるものであると思
つて
、直接お伺いすることはししなかつたわけであります。
小玉治行
20
○小玉
委員
私の質問は今日はこの程度で終ります。
角田幸吉
21
○角田
委員長
代理 次に山口好一君。
山口好一
22
○山口(好)
委員
大体本日私が質問しようと思いましたところは、小玉
委員
より御質問にな
つて
おりますので、大体の当局の見方はわかつたのですが、一つだけお尋ねしたいと思います。 刑務所の作業をして民間企業をできるだけ圧迫しない。すなわちこれとよくつり合いを保
つて
競合するところを少からしめるためには、普通の民間企業でやらないような部面をなるべくやらせるという方針をと
つて
行つたならば一番いいのではないかと思うのであります。たとえば通常の人のいやがる作業道路の修理にしても、困難で、普通の人ではこれをきら
つて
やらないという部面、あるいは開墾作業とか、あるいは戰時中で例をとりますれど、船舶のびようを打つような作業、これは普通の企業者ではとてもやり得ないところを、刑務所の労力によ
つて
非常に能率的に優秀にやるという例もありますので、こうした面に今日まで刑務所の作業としてどの程度どういうような方面に、どの程度こうした作業が行われておるかというようなことを、お調べにな
つて
おつたら承りたいと思う。
古橋浦四郎
23
○古橋
政府
委員
刑務所の作業の運営におきまして、民間作業との競合を避ける上におきましては、どうしても受刑者の仕事が勢い困難な仕事に向けられて参るのでございます。しかしその仕事も、このような仕事の中に矯正的に見て非常に有効な仕事も多々あるのでありますから、私どもといたしましては、そういう点に特に重点を置いて刑務作業を
経営
して行く方針でや
つて
参りまして、ただいままでに、北海道の開発作業にはすでに二箇年引続いて多数の受刑者を送りまして、特に辺鄙な山の奥であるとか、あるいは水の中に入
つて
働くというような相当困難な仕事でありますが、その仕事に従事をさせております。本年もまた引続き北海道にその作業を
実施
いたしたいと計画しておるのであります。そのほかなお全国的にこれに類するような作業がたくさんありまして、それにはやはり一万くらいの人間を出す予定にな
つて
おります。
山口好一
24
○山口(好)
委員
それにつきまして、そうした大部分は重労働に層すると思うのですが、そういう重労働に従事し得る受刑者に対してはこれができましようが、重労働に服し得ないような受刑者、この両方の比率はどのように相な
つて
おりますか。
古橋浦四郎
25
○古橋
政府
委員
ただいま御質問になりました点が、私どもが刑務作業の
経営
の上に非常に困難を感じておる点でございまして、受刑者の中には身体強壯な者ばかりではございません。特に身体的な欠陷がある、あるいは弱いというようなことのために
犯罪
に陷る者も相当ございますので、私どもが構外作業などに出しまして、土木あるいは河川工事などに従事させます者は、全体の收容者のうちからは約四分の一くらいの者であります。なおそのほかに低格者としまして、きわめて労働能力その他に身体的あるいは
精神
的な欠陷を有します者は、全体のうち約四〇%を占めております。これらのものに対する適当な仕事を見つけることが、非常に私どもの苦心しておるところでありまして、そのためにはどうしてもある程度構内におきまして、一般の普通の仕事を覚えさせるというような方向に進んで行かなければならぬのであります。
山口好一
26
○山口(好)
委員
構外に出して、人のいやがるような仕事をさせる。これは受刑者に対して最も適した仕事を與えるということになりますが、今言つた低格者の約四〇%、これはどうしても刑務所の内部で、これに適するところの職業補導をいたしまして、そうしてその改過遷善をはか
つて
行くという必要があるだろうと思うのでありますが、この四〇%のものに大体一年を通じて
内容
と量において適当な仕事をやらせて行くということになりますと、先ほど言われたようにに、民間の企業に対して約一%というような比率になりますか。
古橋浦四郎
27
○古橋
政府
委員
構外作業におきましても、実は自由労働者との
関係
もありますので、その点からの制約もあります。従いまして構外作業につけ得るものも、その就業場所その他について、十分な考慮を拂
つて
やらなければならないのであります。、また受刑者の全部が構外作業等によりまして、身体的な訓練をすることが必要であるかということも問題でありまして、中には
一定
の職を持たせて、肉体労働以外のある程度の技術を持つた仕事につかせることが、本人の善導のために最も適当だと思われるものもあるのであります。またそのほかに身体的な事由で、先ほど申し上げました約四〇%ほどのものは肉体労働には適しないものであります。それらのもののためには、どうしても所内作業におきまして最も適正な仕事を與えまして、それを通じて訓練して行くという方法を必要とするわけであります。一年中それらのものに対してある程度の作業を與えるというためには、どうしてもかような
法律
によりまして、訓練と同時に生産につけるという方法をと
つて
参る必要があるわけであります。なお受刑者の善導ということは、どうしても生産作業につけるということが一番効果ある仕事であります。もちろん技術のない者、あるいは
少年
たちにつきましては、学科的な訓練、その他の教育方法を講じますけれども、最もよい訓練の方法は、人の自然的な状態のもとで生活し得るような方法で訓練をして行くことが望ましいのであります。従いましてある程度熟練した者に対しましては、どうしても生産作業に従事させながら、
社会
生活に適応するような訓練をして行くというために、構内作業におきましても、各種の作業を取入れた
経営
を意図しなければなりません。
山口好一
28
○山口(好)
委員
その民需の
事業
に対しまして、そうした計画で行きましたときに、民間企業に食い込む率は約一%という計算になるのですか。
關之
29
○關
政府
委員
ただいまの点はきわめて重要な問題でありますからして、少し数字に基きまして、やや長くな
つて
恐縮でありますが、詳細に御説明してみたいと思うのであります。通産大臣官房統計課の資料と、こちらの資料等によりまして、刑務所作業と民間作業との比率を一応と
つて
みました。それは要するに現在において両方の力がどのくらいあるかという比であります。それは各木工、印刷、金属、皮工、洋裁等、これだけの部面について一応と
つて
みたのであります。大体従業者の数と生産額と両方にわけてと
つて
みました数字は、何人という数字は省略いたしまして、パーセントで申し上げることにいたします。木工については、民間の力を九八・一%といたしますと、刑務所の数は一・九%に当るのであります。これが従業者の数であります。生産額の数から申し上げますと、民間の方は九九・七%、刑務所は〇・三%になるのであります。次は印刷ででありますが、従業者の数から申し上げますと、民間が九七・六%、刑務所が二・四%になるのであります。生産額の方から申し上げますと、民間が九九・七%刑務所が〇・三%という比率になるのであります。次に金属でありますが、従業者の数から申し上げますと、民間は九八%、刑務所は二%になるのであります。生産額から申しますと、民間が九九・九四%、刑務所は〇・〇六%になるのであります。次に皮工についてでありますが、従業者の数から申しますと、民間が九二・四%、刑務所が七・六%であります。生産額の点から申しますと、民間が九九・五%、刑務所が〇・五%となるのであります。次に洋裁でありますが、従業員の点から申しますと民間が九七・六%、刑務所が二・四%、生産額から申しますと、民間が九九・九%、刑務所が〇・一%、大体こういう数字を示しているのでありまして、これが従業者及びその生産額の上から見て、民間の企業と刑務所の企業のウエイトを調べたものであります。大体こういう点から見て、従業者から見まして、多くて二%前後である。そうして生産額から見ますると、一%まで行
つて
いるものはよいのであ
つて
、中には〇・〇六%というような、全体から見ますると、ほとんど言うに足らないというような数字を示しておるのであります。これらの
基礎
の上に立ちまして——もとより刑務所の一つの企業でありまして、この
法律
によ
つて
若干官の仕事をこちらの方にいただくことになりますれば、今まで民間へ流れたものがこちらに来るということになりまして、その部分が若干の影響はもとよりあることでありましようが、それはしかし重大なものではない。しかも私どもといたしましては、従来刑務所においても苦労して民間の仕事をと
つて
いたわけでありまするが、今度は従来刑務所においてとつた民間の仕事は刑務所でもらわないことに
なつ
た。今度その仕事が民間の方に流れて行く。トータルの上から見れば、彼此相殺されて、結局仕事の量から見れば同じことになるというふうに考えられまして、しかし重大なる影響を與えないものであろうというような大体の測定を、この問題については考えていたわけであります。
山口好一
30
○山口(好)
委員
今の統計は大体いつを
基準
としてお調べに
なつ
たのでありますか。
關之
31
○關
政府
委員
両方とも二十三年度の数字を元にいたしまして作成いたしたものであります。
山口好一
32
○山口(好)
委員
今日は大体この程度にいたしまして、またいろいろ調べた上御質問を申し上げます。
押谷富三
33
○押谷
委員
この
法案
の
提案理由
の説明の中に、
矯正保護作業
は民需よりも官公需の仕事をなすことが適当だというお考えのもとに説明せられておるようであります。その御説明の要点を考えますと、民需に基いた作業を課するということは、受刑者は一私人の利益に
奉仕
して、その労働が私利に供せられておるという感を抱きがちである。こういうようにお考えにな
つて
おるようであります。私人の私利の追求のため、利潤追求のために自分が
奉仕
しておるということは
精神
上おもしろからざる影響を與える、こういうようにまた御説明にな
つて
おり、これに反して官公需に基く仕事を課すれば、受刑者は自分の労働が一般公共の用に供せられておると考えて、作業上、矯正上よい結果を来す。こういうのでありますが、かように
精神
的の方面から考えられましたことは、何かそこにそういうお考えをお抱きになる根拠があるのですか、もしあればその材料をひとつお示し願いたいと思うのであります。
古橋浦四郎
34
○古橋
政府
委員
ここに申し上げました
精神
的利益の実例につきましては、材料を申し上げることはできないのでありますが、かような考え方は各国とも同じにな
つて
おりまして、低い賃金でも
つて
受刑者を酷使する、利用するということをよく人が口にしがちでありまするし、また受刑者などがさような点につきまして、事実に反する疑いを持つおそれが、強制労働についてはつきものでございます。さような点を特に考慮いたしまして、なるべく公共の仕事につけることが望ましいとされておるのでございます。
押谷富三
35
○押谷
委員
今各国例がこういうような考え方であるという御説明がありましたが、各国の文化の程度も違います。受刑者の気持ももとより違
つて
来ると思うのであります。また御説明の中に、一般にそういう安い賃金でこき使
つて
おるというような感じを持
つて
おるという、一般人の考え方を御説明に
なつ
たようでありますが、ここにあるのは受刑者の
精神
に及ぼす影響ということが基本にな
つて
いるのです。私どもの考え方では、
日本
の行政
制度
が行われてから今日に至るまで、刑務所で働いている受刑者が、その仕事が私人の仕事であるから、私人の利潤追求のために
奉仕
しているのだ、官公の仕事であるから、私は公のために
奉仕
しているのだというような、纎細の気持を使
つて
や
つて
いるようなことはまずないと思います。そこでこういうように断定を下されたのは、何か刑務所で統計でもおとりにな
つて
、そしてなるべく
精神
的にこういうような大きな影響を與えていたのだということの材料から出たかどうかを私は聞いたのですが、お手元にそういう材料がなければ、あなた方らのお考えから出たと考えなければならぬと思うのですが、そう考えていいですか。
古橋浦四郎
36
○古橋
政府
委員
一例をとりますると、先般長野の刑務所におきまして、長野市の洪水のときに收容者を出さしたのでございまするが、そういうような作業におきましては非常な働きがなされまして、一般の
社会
から感謝されていることが多いのございます。長野におきましては、副知事さんがわざわざ
法務
府までお出向きになりまして、私どもに感謝を申されたのであります。当時の收容者の働きぶりは、実に驚くべき自己犠牲の発揮であつたということを申されたのであります。これに類するような仕事は各地で行われておりまするが、それは多くは、公共の仕事に
奉仕
する場合にそれが発揮せられるのでありまして、そういうような点を特に強調する意味で書いた次第であります。
押谷富三
37
○押谷
委員
同じようなことを繰返しておるわけなのですが、結局なるほど何か災害の場合に受刑者が
奉仕
をすれば、第三者からは非常な感謝でしよう。しかし受刑者としてはたしてそれがどの程度に公共の
奉仕
をしたといういい影響を與えたたかということは、多少の疑問があると私は考えております。それよりも、特にこの
提案理由
の中に、私人の仕事を刑務所でさすと、受刑者に対しては
精神
上おもしろからざる、思わしからざる影響を與えるからである、こう断定をせられた、この言葉に私は大きな疑義を持つのであります。個人の仕事に受刑者が協力したら、その受刑者に
精神
上おもしろからざる影響を與えるのだというような考え方は、まつたく官僚独善です。こんな考え方をも
つて
進んだら、
日本
のお互いが産業復興に協力をしているその人たちの——中小企業者全部の人たちの仕事は
国家
公共の福祉のためには
奉仕
しておらぬというような考え方を持
つて
おる官僚独善な考え方がこの言葉にな
つて
現われたのではないか。こういうようなことがもしも片鱗だにあるならば、この
法律
は私は大いに考慮をせなければならぬ、こう言うのです。国実や
社会
や経済は、全部申すまでもなく一つの総合的な有機体的なものだと考えております。
従つて
どの面においての協力でも、これはやはり
国家
にも協力し、
社会
にも協力し、一人の私人の企業に協力したからというて
精神
上おもしろからざる、思わしからざる影響を與えるのだというような当局の
提案理由
の説明にあることを、私は非常に意外に思い、しかも遺憾に考えるのです。この点についてどう考えられますか、その点をもう一ペン伺います。
關之
38
○關
政府
委員
この点につきましては、結局受刑者が強制的に労働を科せられるというか、自由を拘束して、
強制力
によ
つて
苦役を科せられる、この点におきまして非常な圧迫を感じて仕事をしているわけでありまして、その結果といたしまして、自分たちがこんなに苦労して——重苦を強制して、自由を奪
つて
仕事を科せられているこの仕事のでき上つたものはこうだというふうな考え方を抱いていがちである。これは別に私ども統計を一々とつたわけでもございませんが、受刑者がそういう気持を抱いているであろうということは、現場の看守の諸君、あるいは所長の皆さんなどのときどきの御報告などにもうかがわれることでありまして、要するに自分が自由を奪われて仕事をしている、そのできた仕事はこうではないか、こういうふうな不満を持
つて
いる。この点は行刑の実際についている看守の諸君などから聞きましても、疑い得ない一つの事実だろうと思うのであります。それでそれが結局いろいろな不満とな
つて
出て来る。その看守から聞いた事実を私どもはかように考えて、この
理由
を書いてみたのであります。
押谷富三
39
○押谷
委員
自由を奪われて作業をすることは、観念的にすでに当然のことでありますから、その点についての不平は受刑者にはないと私は思うのです。しかしそれからやはり
精神
的に思わしからざる影響を與えているというその断定をお持ちにな
つて
いるのですか。そういうことを聞いたとおつしやるのですか。
關之
40
○關
政府
委員
この問題は比較の問題でございまして、かりにここに民需の作業と官需の作業と二つあつた場合に、どちらがいいかという比較の問題であります。もとより私どもも民需の作業が全然不適格だと申すわけじやありません。ここに官の作業と民の作業と二つあつた場合に、どちらが
精神
的な圧迫か、また訓練矯正の上にいい結果を與えているかと申しますと、かような
理由
からやはり官需の作業が受刑者の矯正上は適当な仕事である、かように考えているのであります。それでもとよりすべての受刑者がさような感じを抱くというわけでもございませんでしようが、中にはまたそういうふうな感じを抱くものも相当多数いるであろうということは、現場の看守諸君の報告を聞いても私どもは感じているわけであります。その点から見て、官需の仕事、民需の仕事二つ並べてみたときにどちらかということになりますと、やはりかようなことも一つの
理由
とな
つて
、官需の方がより適当なる矮正
保護
の仕事である、かように考えているのであります。
押谷富三
41
○押谷
委員
大体わかりましたが、納得はできません。私はこういう希望を持
つて
おります。別に御答弁をいただかなくてもいいのでありますが、もし受刑者にして私人の、民需の仕事に対して、それに
奉仕
することが
精神
上何か惡影響を受けるような受刑者があるならば、行刑に
関係
せられる役人は、そのあやまちをむしろ是正すべきである。いかなる私経済に協力しても、それは
国家
公共のための協力であるというように指導せらるべきであると考えます。それを、そう考えることは思わしからざる影響を與えるのだから、民需に対しては受刑者に仕事をさせないようにしようと考えられることが、私は役所の皆さんとしては官僚独善的な考え方だということを、断言してはばからぬのであります。
従つて
今後においては、そういうような考え方があるならば、この際さつぱりと改めてもら
つて
、刑務所の仕事は民需の仕事をや
つて
も、やはりそれは
国家
公共のために協力するものであるというように指導を願いたいと思います。いずれまた調べまして、あとの質問は次の
機会
にいたします。
小玉治行
42
○小玉
委員
今の押谷
委員
の質問に対する当局の御説明では、私もはなはだ納得ができないのでありますが、大体囚人に仕事を與えて改過遷善に導くという根本的の
理由
は、これは仕事を與えずしてぶらぶらさしておくということは、無聊な日を送り、
従つて
更生の道に資するところではない、これに適正な仕事を與えて、そうして勤労の風習をつけ、また仕事に対する興味と申しますか、それに熱中して、そうして自然自然に教化して行くというところに私は根本的の眼目があるのではなかろうかと考えるのであります。官の仕事であるからして、それには非常な興味を持
つて
、そのために民需の仕事よりも改過遷善の率がよろしい、また民需の仕事はそれほど熱が入らぬということを聞きますと、何か囚人にイデオロギー的の考えがあ
つて
、そうして一般公共の仕事であれば熱を出してやるが、私企業であれば、共産主義方面から行くというと、資本に
奉仕
するというような見地から、熱が入らぬという見地に立つように受取られました。それはこの囚人に刑務作業をさして、それによ
つて
囚人を矯正するという本道、本体を私は見きわめざるところの見方ではないかとかように考えるのですが、その点についてちよつとお伺いしたいと思います。
古橋浦四郎
43
○古橋
政府
委員
この
法案
の第一の
目的
は、ただいま御指摘がございましたように、收容者に矯正に適する仕事を與えるということが最も大事な点でございます。そうしてそれをねら
つて
この
法案
を出したものに違いないのでございます。そういたしまして、しからばその作業をどういうところに求めたらいいかということになりますると、
国家
が刑罰に処して労役につかしている以上、
国家
がや
つて
おるのだから、
国家
がそのまま自分の仕事をやらせるのがいいという説明にな
つて
参ります。またその
国家
の仕事をやらせるのがいいという説明に付加いたしまして考えますると、二つの仕事があつた場合どちらがいいかという場合には、その
国家
のやらしておる仕事をやるということが、自己の贖罪というような点と、
国家
に対する贖罪というような点の結び方が最も自然であるというように考えられるわけであります。さように考えております。
小玉治行
44
○小玉
委員
これは私率直に申しますが、かようなむずかしい説明をされなくても、いわゆる官公需の仕事であれば仕事は得やすい、民間の仕事であれば仕事は得にくいということから、まず官用主義というものを第一点において、そして民需というふうに移る。こういつたような仕事が得やすいか、得やすからざるかという便宜論から出発しておるのではなかろうかと思うのですが、この説明はどうもふに落ちないのですが、ほんとうの率直のところはいかがですか。
關之
45
○關
政府
委員
結局申しますと、要するに仕事をどうしてもさせなければ刑務所としては失業者が氾濫いたしますから、治安維持上困るから、どうしても仕事がほしい。その場合に、刑務所の初めからの問題でありますが、これを官に求め、あるいは民に求めて今まで来たのであります。仕事があれば両方の仕事のどちらでもよろしいという一つの考え方と、それからさらに民需の仕事の場合と、官需の場合といろいろ考えてみますと、かようなことも事実として一応感得されるというようなことから、官需の方から出たものがベターな一つの仕事であるというように考えられると思います。
小玉治行
46
○小玉
委員
そうしますと、私企業に
奉仕
する、一私人の利益に
奉仕
するということは、思わしからざる惡影響を與える。その労働が私利に供せられるという感を抱いて、そして思わしからざる
精神
上惡影響を與えるということを、この立法
理由
にお書きにな
つて
おる。そうすると、この印刷の仕事でも、民間人の印刷を引受けられるということは、一私企業に
奉仕
する結果に相なるわけであります。でありますから、この
法案
を
施行
すれば民間の仕事も引受けられるとおつしやるのでありますが、そうしますと、その仕事を囚人にやらせることは、あなた方のお考え
通り
であるとすれば、いわゆる受刑者の
精神
に思わしからざる影響を與えることにな
つて
、結局あなた方の御主張と衝突して自殺論になるのではないかという質問でございます。
關之
47
○關
政府
委員
この
法律
の建前といたしましては、官の注文と民の注文と同じような仕事について注文があつた場合において、まず官の注文を受けて、民の方の仕事をするということが
法律
の建前でありまして、官の方だけで仕事がまかなえないときには、民の方も引受けてやるという
法律
上の建前であるのであります。これは今までも再々御説明いたしましたように、刑務所の仕事を大きくわければ、官と民と二つがあ
つて
、どちらかといえば官の方がベターである。しかしそれでは民の仕事がいけないからして、仕事を受けないで受刑者を失業のままに放置しておきましては、これは惡の惡でありまして、民であろうが官であろうが、どんな仕事であ
つて
も仕事をさせることは絶対の要件であります。官の仕事があれば官の仕事をやらせる、もし官の仕事が全体の仕事の量をまかなうことができないことになりましたならば、また民の仕事も引受けてやる。大体こういう意味合いにこのことを考えておつたのであります。
小玉治行
48
○小玉
委員
議論にわたりますけれども、それならば民の仕事も引受けられることを予定されておる
法案
だと思うのです。そうすると民需に基いてこの作業を課することは、一私人の利益に
奉仕
し、その労働が私利に供せられるというような感を抱きがちでありまして、受刑者の
精神
上思わしからざる影響を與えるという説明がどうも私は納得が行かないように思うのでありますが、それはどういうふうにお考えにな
つて
おるか。なお御説明願いたい。
關之
49
○關
政府
委員
大体この
法案
をつくりました結局の
目的
といたしましては、刑務所の仕事は全部官の仕事でまかないたい、こういうような気持であるわけであります。それでその完全なる理想の型を実現するまでには二年、三年ないし五年くらいの歳月を予定しなければならないことであろうと考えておるわけであります。それで何と申しましても、実際の第一線の作業
実施
の結果を見ますと、官の仕事の方が、そのほかの仕事の種類などから見まして、適格であることは私どもとして疑うことはできません。そのでき上つた末のことを思いますると、やはり官の仕事をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
小玉治行
50
○小玉
委員
もうこれで終ります。
田中堯平
51
○
田中
(堯)
委員
今の点の関連でありますが、たとえば印刷につきまして、民間の印刷を引受けて受刑者にやらした、官の仕事をやらしたという場合に、またそういうことは今まであるわけですが、そこで何か
精神
的な影響が非常に重大なように書いてあるのでありますが、その重大な
精神
的な影響について何か確証を持
つて
おりますか。それは統計でなくても一つ二つの例でもよろしゆうございますから、そういうものがありますか。單なる
政府
委員
諸氏の所見によ
つて
のお話でありますか。
關之
52
○關
政府
委員
この問題は受刑者の矯正
保護
上一つの問題でございます。しかしそうかとい
つて
表立
つて
こういう仕事はどうか、ああいう仕事はどうかと言
つて
受刑者に聞くことは、かえ
つて
いろいろな問題を包蔵いたしますし、こちらとしてその点を積極的に統計的に調査するということは、今までいたさなかつたのであります。しかしこれは先ほども
矯正保護局
長からのお話の
通り
に、災害のために川の土手がくずれて、相当まとまつた労働力がどうしても得られない場合に、受刑者にこういう仕事かあるから行かないかと申しますと、率先してすベてが一致団結して、一名の逃亡者も出さずにその仕事に従事する。これなどはこの例としてはあまりふさわしくないものかもしれませんが、要するに受刑者が公の仕事をや
つて
おるのだというくらいの感じを持
つて
おりますと、逃亡もしないで專心その仕事に一生懸命になる、その結果晴れ晴れとした気持ちにな
つて
、いいことをしたという気持で、人間的な良心をそこに感ずるというようなことを、私どもはしばしば今の災害などの場合を通じて知るのであります。これは昨年の秋に長野市内に大きな川の氾濫がありまして、軍政部の建物が水の中に埋ま
つて
しまつた。県として非常に困りまして、軍政部の方からここ二、三日うちに流れをとめてしまえという嚴命が下りました。そうかとい
つて
労働者は集まらない。そこで長野刑務所が晝夜兼行で千人近くの総動員をいたしまして、そこの復旧に当つたのであります。雨の中をびしよぬれにな
つて
、危險にさらされてまでも奮闘したのであります。その間に千人の者がわずかの看守に連れられて、一名も逃げずに、みんなきわめて愉快な気持で仕事をしてそこを往復していた。そのためにあとの結果から見ますと、やはり受刑者もいいことをしたのだという気持で、各受刑者に人間的な良心を感じさせたという意味におきまして、非常にいい結果を来したということは現地の報告から見ても私どもは知るのであります。これは通常一般の仕事に対する例として申し上げることは不適当であるかもしれませんが、さような事例は種種あるわけでありまして、それらの事例またそれにつけ加えまして現地の各刑務所などへ参りまして、受刑者の賃金は今日はそうではありませんが、か
つて
はやはりきわめて安い賃金にあつたわけであります。そういうときに、特に経済的な問題に関心を持
つて
おる受刑者などにおきましては、とかくそういうことを漏らしがちのことは私ども伺
つて
おるわけであります。そういうようなところから見まして、やはり官公の仕事をや
つて
おるということは、受刑者に
精神
的な意味からもいい影響を與えるであろうというふうに私ども考えておるわけであります。これは私どもそう思
つて
おりますと同時に、
外国
などの文献にも同じようなことが結論づけられておりまして、われわれ
日本
の行刑のみならず、
外国
においても同じであるという感を深くしておるのであります。さようなことからこれを
提案理由
の一つとしてあげてみたのであります。
田中堯平
53
○
田中
(堯)
委員
今示されたような例はそれは事実でありましようし、受刑者の心理としてそういうことは考えられるわけであります。ここで受刑者の心理をつべこべと論ずるわけではありません。その点については後刻といたしますが、一時的な土手くずれとか、風水害で人手がなくて困
つて
いるというときに、受刑者が平生は拘束されているが、彼らが外へ出されて、みんなと顔を合せて同一な
資格
で働いて、しかも人からも一応あがめられるというようなことであれば、これは大いに喜ぶに違いませんが、しかし所内で継続的な地味な仕事をやるという場合、たとえば印刷なら印刷をやる場合に、その仕事が官の仕事であるか、あるいは私の仕事であるかということによ
つて
、どうも今の風水害の場合の受刑者の心理、それがそのまま今の所内の靜かなる仕事に
適用
されるものとはちよつと考えにくいのであります。先ほどの御説明によると、官用主義ということであと四、五年か、二、三年後には大体基本の
原則
でや
つて
行きたい、官だけでやりたい。それまでは民の仕事も請負うというような御説明であつたようでありますが、私どもの考えとしては、一体官の仕事というものは限られておるし、いつでも民の仕事の方が創意工夫をこらして先へどんどんと進んで行くものでありまして、
従つて
犯罪
階級とい
つて
はおかしいのですが、
犯罪者
層というものも日常
社会
の生きた
社会
から入
つて
来るのですから、すべての仕事にいくらか直接間接
関係
のある連中が入
つて
来るのですから、官の仕事、すなわち型にはまつた、時代より一歩遅れたものではとうてい物足りないので、五年たとうが三年たとうが、どうしても官用主義一点張りで事は解決しない。どうしても受刑者の必要とするような仕事の類型を満たし切るものではないと思うわけなのです。ここで官用主義をどうしても実現しなければならぬとされる
理由
が、どうも
精神
主義的な御説明であつたり、あるいはいろいろな説明がありますが、十分な納得の行く説明がないわけであります。私は今日はこれで質問を打切ります。
押谷富三
54
○押谷
委員
先ほど関
政府
委員
の御説明を聞きますと、三年、五年後には全部官公需で満たすように計画をするのだ、こういうようなお話なのです。そういうことになると、前に質問いたしました先輩に対する御答弁の際に、この
法律
が民間企業を圧迫しないか。民間企業の分野を侵害して失業者を出すのじやないかというときに、現在の統計によりまして大丈夫だというような御説明があつたわけです。現在は民需、官公需併用せられている。そういう形において民間企業に対する圧迫はないと言われる。しかし数年後には刑務所の矯正作業は全部官公需にな
つて
しまううということになりますと、中小企業者に対する圧迫も非常に大きくなる。あなたの御説明を、そのまま
政府
の方針であると承
つて
いいわけでありますか。
佐藤藤佐
55
○佐藤(藤)
政府
委員
ただいまの御質問にお答えする前に、先般来
提案理由
の説明の書き方につきまして、いろいろ御指摘を受けたのでありますが、民間の企業について受刑者を用いることは、受刑者に思わしからざる影響を與えるというような断定的な言葉で説明されてありますので、この点の御指摘につきましては、はなはだ遺憾に存ずるのでありまして、表現の仕方については、御指摘のようにまことにまずい言い方であるとも考えられるのであります。実はかような表現をいたしましたのは、先ほど
政府
委員
から説明いたしましたように、災害の際における構外の作業であるとか、あるいは北海道の開発作業のような場合に、公共の仕事をする際には、民間の仕事をする際よりも受刑者が非常に喜びを感じて精を出して仕事をなす。
従つて
仕事の能率も上
つて
おるのであります。また構内の作業にいたしましても、
社会
一般における仕事に対する
報酬
、対価というようなものと違いまして、
一定
の作業をなした者に
一定
の割合の作業賞與金を出す。それはごく率の低いものでありますが、そういう
制度
にな
つて
おりますために、所内の作業につきましても、民間の仕事をする場合と官公需の仕事をする場合とについて比較して考えますと、受刑者の仕事に対する熱意と申しますか、精の出し方が幾分違うということが往々見受けられるのであります。全部がそうだというわけではないのでありますが、さような傾向から見て、民間の企業と官公需の需要と両方ある場合には、どつちが受刑者の矯正作業として適当であろうかということになりますと、官公需の方が適当であろう、より望ましい。そういう観点からかような説明をいたしたのでありまするが、どうも表現の仕方がまずかつたために、皆様の御指摘を受けてまことに遺憾に存ずるのであります。 なおただいまの御質問に対してでありますが、この
法律
が通過いたしましてさつそく
施行
いたすのでありますが、現在の刑務所の作業を全部官公需のみの一本にするということは、これは相当遠い将来でなけば、そういろ理想の姿は達せられないのであります。できるだけ官公需一本にしようという
趣旨
がこの附則の第二項にも「
矯正保護作業
によ
つて
生産される品物及び受刑者の労務が、すみやかに、国及び
地方公共団体
の
機関
の需要のみに供せられることになるように、努めなければならない。」そういうふうに努力目標を定めておるのであります。
従つて
将来刑務所の作業が全部官公需に
なつ
たという姿は、これは何年先のことかはつきり予定もつきませんので、先ほど本法の
施行
によ
つて
民間の中小企業にさしたる影響もなかろうということを申し上げましたのは、
昭和
二十三年あるいは
昭和
二十四年の民間の生産
状況
と刑務所の生産
状況
を比べまして、
昭和
二十三年及び二十四年におきましては、刑務所の作業は六分民間の仕事をしており、四分官公需の仕事をしておるのでありますが、その六分の民間の企業に使
つて
おる生産力を全部官公需のみに費したとしても、それは全体として官公需の仕事のうちの約一パーセントくらいしか刑務所では生産能力はない。それであるから官公需の需要だけの一本にしてしま
つて
も、官公需全体の生産高の約一パーセントぐらいにしか当らないから、民間の中小企業の作業に対しては大した影響がなかろう、こういう結論を下しておるのでありまし、そういう理想的な姿になりますと、現在刑務所において民間企業をや
つて
おる分が、全然刑務所においては手を出さなくなるのでありますから、民間企業の分は全部民間にまかされることになるのでありまして、その点においてはプラス、マイナスになると考えるのであります。
押谷富三
56
○押谷
委員
ただいま佐藤
政府
委員
の御説明を承りますと、矯正作業が官公需一本になるのは遠い将来だと言われた。関
政府
委員
の御説明では大体三年か五年先だと言われたと思うのですが、大体どちらの方が正しいのですか。
佐藤藤佐
57
○佐藤(藤)
政府
委員
事務
当局の考えといたしましては、なるべくすみやかに官公需の一本にいたしたいという理想を持
つて
おるのでありまして、この
法案
の附則にも示されておるように、努力目標としてはなるべくすみやかにやろう、そうして今後の刑務所の施設の
整備
、また作業指導者の充員、また官公需の注文の出方等、いろいろな
條件
がありますので、こういう
條件
が備わるのが二、三年先であるか、あるいは五年先であるか、あるいはそれ以上かかるか、ちよつとはつきりした年数を申し上げかねるのでありますが、できるならばなるべく早く官公需一本にしたい、こういう努力目標を持
つて
おるのであります。
角田幸吉
58
○角田
委員長
代理 次に
世耕
弘一君。
世耕弘一
59
○
世耕
委員
私は簡單に数点お尋ねいたしたいと思いますから、簡單にお答えを願いたいと思います。 受刑者が仕事をする場合に、能率を向上せしむる意味において、請負
事業
とかいうことをやらしておるかどうか。それから刑務所内の機械その他の設備が新しい構想のもとに行われておるかどうか。また能率の向上につきまして、新しい計画を持たれているかどうかという三点についてまずお答え願います。
古橋浦四郎
60
○古橋
政府
委員
收容者の作業意欲を高揚するために、刑務作業におきましても、場合によりましては請負作業をや
つて
おるのでございます。ただいま具体的な数字は承知いたしておりませんけれども、各所でそういうことをやつたことがございます。次に機械の設備でございまするが、御承知のように施設が燒けましてから刑務所がつくられまして、それに応じて逐年ある程度の復旧と、さらに收容者のふえました分の就業に要する機械の設備は続けて参
つて
おります。またその次の工場の点でございますが、これも舎房の建築ができるにつれまして、工場の建築も漸次進めております。機械の点につきましては、
昭和
二十五年度としまして、作業予算のうちで備品費、機械器具その他に一億七千八百万円ほど敷設することにな
つて
おります。敷設いたしまする所は、主として昨年度新たにできました加古川刑務所あるいは久里浜刑務所、愛知
少年
刑務所、それから笠松刑務所その他なお復旧のできました各刑務所に少しずつわけてやろうと思
つて
おります。
世耕弘一
61
○
世耕
委員
御説明で一応了解いたしました。あまり新しい設備がおありになるような感じを與えられないのでありますが、これはまた別の観点からお尋ねいたしたいと思います。 なお最近各国の行刑施設並びにそういうような所をば調査に出る御計画がございますか。
古橋浦四郎
62
○古橋
政府
委員
法務
府におきましては、さきに二名アメリカに参
つて
おりますが、近くまた三名ばかり向うに参りまして、主として行刑施設等を視察して参ることにな
つて
おります。
世耕弘一
63
○
世耕
委員
日本
の行刑施設並びに受刑者に対するいろいろな指導方面のことが非常に遅れているように私は考えるのでありますが、幸いにすでに二名が派遣さされ、なお三名逐次御派遣にな
つて
新しい施設を御研究なさるということは、まことにけつこうであります。 次に刑務所の
内容
を見ますと、予算が非常にでこぼこでありますが、これはどういう点から年度によ
つて
でこぼこがあるのですか。予算年度の最初において大体の
事業
の計画性というものをお待ちにな
つて
いるかどうか、この点について伺います。
古橋浦四郎
64
○古橋
政府
委員
刑務作業の予算の支出につきましては、当局としては、刑務作業の
経営
に非常に困
つて
おりますために、またいろいろ予算
措置
について計画性を比較的欠いておりますために、民間の
事業
に比べて違
つて
おると思います。
世耕弘一
65
○
世耕
委員
受刑者の職能の選択権並びに性能試験などというものは、それぞれ研究され、
実施
されておりますか。
古橋浦四郎
66
○古橋
政府
委員
受刑者につきましては、最初收容いたしますと、その人の全人格につきまして、いろいろな方面からその人の力を測定いたします。私どもはそれを分類と申しておりますが、
社会
学的に、生物学的に、心理学的に、
精神
的な方面から、その人の全人格について考査いたします。また同時に作業の能力につきましても測定をいたしまして、作業を與えますときには、本人の希望とか、本人の将来の計画等とにらみ合せまして、それを適当にしんしやくした上作業につかすようにいたしております。
世耕弘一
67
○
世耕
委員
受刑者の労働によ
つて
得た收入はどういうふうに使われておりますか。私は刑務所の收入は刑務所の方に充てるべきであると思いますが、この点はどうな
つて
おりますか。 また受刑者の中に発明等のあります場合には、どういうような待遇をしてや
つて
おるか、またそういう指導方法について何か計画がおありになりますか。
古橋浦四郎
68
○古橋
政府
委員
受刑者の労力によ
つて
獲得いたしました收入は、すべて
日本
銀行を通じて大蔵省に参ることにな
つて
おりまして、刑務所には直接まわ
つて
行かない仕組みにな
つて
おります。なお
外国
の例について述べますと、こういうような場合には特別会計
制度
がありまして、それによ
つて
ある程度收容者の待遇の改善とか、更生資金の付與というようなところにまわし得る
制度
のところもあるやに聞いておりますが、
日本
におきましては、先ほど申しましたような財政
制度
に従来からな
つて
おります。 それから受刑者の発明に対しましては、
法務総裁
から賞金を出すことにいたしまして、奬励いたしておる次等でございます。
世耕弘一
69
○
世耕
委員
発明品あるいは発明等に関する賞品がこれまでどういう形式で出されておるか、この問題はあるいは
法務総裁
がおいでにな
つて
からお尋ねした方がいいかとも思いますが、
事務
関係
にも一応頭に入れておいてもらいたいと思います。私は刑務所收入は特別会計にして、これをも
つて
充てるのが最も理想的じやないかと思うのです。これについて新たな御計画があ
つて
しかるべきだ、かように考えるのであります。 それからもう二点ほど簡單にお尋ねいたしたいことは、受刑者中の男子に比較して女子が非常に少数であるが、何かここに統計的に説明できる材料をお持ちであるかどうか。それからこの表にも出ておりますが、最近における死刑者の数であります。戰前に比較してどういう数にな
つて
おるかをお聞きしたい。
古橋浦四郎
70
○古橋
政府
委員
受刑者の発明に対しましては、賞金を
法務総裁
から出す方法をと
つて
奬励いたしております。なお特許などの出願がありました場合には、当局の手を通じてその
手続
をとるようにいたしております。ただいまのところあいにくどの程度に実績が上つたかという点につきましては、表を持ち合しておりません。 なお刑務所作業の特別会計
制度
は、当局としては望ましいことに考えておりまするが、まだ今日刑務所作業自体の十分な
活動
も開始していない状態でございまして、その
実施
に至るまでに準備もできておりません。それから死刑囚につきましては、ただいま正確な数字は持ち合せておりませんけれども、ただいま全国の刑務所におりまする者は全部で八十二名でございます。
世耕弘一
71
○
世耕
委員
その八十二名の職能別がおわかりであつたらちよつと御説明願いたいと思います。資料の方はあとでけつこうであります。 それからもう一つお尋ねいたしたいのは、受刑者中の男女の比較で、非常に女子が少数であることはどういうところから来たのだということの御判定を願いたいと思います。
古橋浦四郎
72
○古橋
政府
委員
女子の
犯罪者
の数は、男子に比較いたしまして非常に低率でございます。その原因につきまして、私どもはまだ十分なる調査を遂げておりませんけれども、私が考えておりますところで申しまするならば、第一番に、女子に対しては比較的家庭その他の
保護
の
制度
が強いのと同時に、また検事局の起訴の率もおそらく男子に比して少いという点があると思います。なお
社会
的
活動
の状態等に根本的に差違がございまする点も影響があると思
つて
おります。
世耕弘一
73
○
世耕
委員
この男女間の
犯罪
の数が非常に差があるということは、
精神
的に、あるいは
日本
の家庭的な実情、新
憲法
下におけるところの今後の
状況
等を勘案して、当然これは新しく研究すべき
性質
のものだと思うのです。こういう点について何か御計画がございますか。
古橋浦四郎
74
○古橋
政府
委員
女子の
犯罪
につきましては、実は戰前におきましては、非常に数も少うございましたので、その
関係
で比較的調査が男子ほど十分にはなされていなかつたのでございます。しかし戰後やはり男子の率が高度になりますと同時に、女子としてもある程度少いながらに高率にな
つて
参
つて
おりますので、今日女子の
犯罪
に対する調査につきましては、相当現地におきまして調査もいたしておるのでございます。なお将来女子の
犯罪
につきましては、一層の調査を必要とすると思
つて
おるのでございます。
世耕弘一
75
○
世耕
委員
最後にもう一点お尋ねいたしますが、刑務所内のいわゆる情操的指導、この点についてどういう方法をや
つて
おられるか。なお先ほどお尋ねいたしました職業の選択権があるかどうかという問題についてですが、たとえば文士が刑務所へ入つた、そういう場合にどういう指導をなさるか、あるいは作曲家が刑務所に入つた音楽家が刑務所に入つた、そういう場合にどういう指導をするか、こういう点は当然それぞれ性格に応じて指導さるべき
性質
のものであ
つて
、またそれを生かしてやるべき筋のものじやないかと思う。こういう計画について何かお考えがおありになるかどうか、理想でもけつこうでありますから、お伺いいたします。
古橋浦四郎
76
○古橋
政府
委員
刑務所の生活は一般
社会
と非常に違いまして、情操方面が欠けておるのでございます。そこで收容者が長い拘禁生活の間に荒廃した
精神
を持
つて
出ることを避けるために、どうしても十分な情操的な訓練教育を必要とすると思うのでございまして、最近の行刑におきましては、その面につきましても特に注意を拂
つて
おるのでございます。そのためには全国の各刑務所等におきまして、各種の企画を持
つて
おるのでございまするが、一般的に申し上げ得ることは、各刑務所は、大体收容者の中から文学的な趣味のある者につきましては文学的な面、たとえば俳句とか和歌とか詩その他につきまして、毎月一回ぐらいの雑誌を発行させております。そのほか
活動
冩真、幻燈その他の視覚による方法により、情操的な教育をいたします。また音楽、音盤、ラジオ等を利用いたしまして情操教育に努めておる面がございます。 なお刑務所に入
つて
参ります人は非常に多種多様でございまして、まつたく
社会
の縮図でございます。その中には、各種の技能を持つた人が入
つて
来られるのであります。その人たちに対しましてそれに適する訓練を與えるということは、非常に困難なことでございますけれども、刑務所にいる間に、少しでもその技能の役に立つような方法をとるように、各刑務所とも心がけておる次第であります。
世耕弘一
77
○
世耕
委員
御説明を承つたのですが、私の感じは、どうも十年一日の感で、少しも進歩性がない。そこに理想が織り込まれていないということは、はなはだ遺憾に思うのであります。実はきよう各観点からお尋ねしたのは、行刑
事務
組織等について理想を伺えばけつこうだと思つたのですが、この点は私のお尋ねする観点が違
つて
おつたから、お答えができなかつたかと思います。いずれまた別の
機会
にお聞きすることにいたしまして、この程度にとどめておきますが、おそらくお読みくださつただろうと思いますが、ドストエフスキーの「死の家の記録」ですか、監獄生活をした中の記録的な小説が出ているようであります。私も一、二度読ましていただいたのですが、こういう観点から見ますと、
日本
の今日の受刑者の生活にはなお多くの改良を加えるべき必要があるのではないか、かように私実は考えるのであります。ことにあのドストエフスキーの小説の中に出て来るのは、趣味のない仕事を與えられるくらい苦しいことはない。また毎日同じことを繰返されるような仕事くらい苦痛なことはない。だから近所にまきの山があ
つて
、まき山へ行つたり、あるいは森林に行
つて
、木をたくさん切ることができるにもかかわらず、すぐそばに船がこわれていて、その船底を苦しい思いでぶち割
つて
、まきをつくらせられることが毎日続いたことくらい、まつたく苦しいことはなかつたというような感想も、受刑者の一人として、幾分文学的には現われておりますが、私は受刑者の心理をうがつたものではないかと思うのであります。往往にして
法律
はむしろ
監督
するものの便利のためにつくられたのが、
日本
の弊害であつたのであります。あたたかい気持で、受刑者に何を與うべきか、いかにして幸福に導くべきかというあたたかみが、
日本
の行刑
制度
の中に欠けているのではないかと私は考えるのであります。この点特に御考慮を願いたい。なぜ特別会計にした方がいいじやないかということは、いろいろな点について考えられることと、今御説明に
なつ
た中に、特別会計となれば、
独立
会計だから、收支計算も
独立
会計としてやらねばならぬ、今
独立
はできぬのだというような感じを私受けましたが、
独立
会計でも
経営
が十分立たなければ、一般予算から計上される例もあるのですから、いやしくも特別会計の收支が赤であるならば、私は一般会計から持
つて
来ることもさしつかえないと思うのであります。この点については受刑者の幸福と、今後
日本
の受刑
制度
に一大進歩を画されるように、御努力あらんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。 —————————————
角田幸吉
78
○角田
委員長
代理 他に御質疑はありませんか——御質疑がなければ、この際お諮りいたします。
土地台帳法等
の一部を
改正
する
法律案
の
施行
期日が四月一日にな
つて
おりますので、これをこの
法律
は公布の日から
施行
するというように修正したいと思いますから、この修正
意見
について
関係
方面と折衝したいと思いますが、御
異議
ありませんか。
角田幸吉
79
○角田
委員長
代理 御
異議
なければ、さようとりはからいます。 本日はこれにて散会し、明日午後一時から開会いたします。 午後四時三十五分散会