○猪俣
委員 近時いろいろの
原因から発生するのでありましようが、官吏、政治家そういう一団の人たちによります疑獄
事件というものが、しばしば世間の耳目に響いております。五井産業
事件を初めといたしまして、九州の日興殖産無盡会社、あるいは金相哲の不正
事件、あるいはやみ金融
事件というような大がかりな
犯罪が、ひんぴんとして世に伝えられておるのであります。そこで私はこの綱紀の頽廃に対しまして、一、二の具体的事案につきまして、
法務総裁の御
意見及びその御決心を承りたい。
まず私
どもが事案のある程度のことを存じております
事件につきまして、それを代表的に選びまして、それに対するところの
法務府の御
意見をお聞きしたいと存ずるのでありますが、
一つは都不動産株式会社に関するところの大蔵官僚の間に起きました贈收賄
事件、あるいはまた脱税
事件、なお京橋税務署に関係しますところの、私のいわゆる集団贈收賄
事件、いわゆる大蔵省及び税務署にも関するところの事案であります。その次には五井産業
事件について
お尋ねいたしたいと思います。
まず大蔵官僚に関します
事件といたしまして、この都不動産株式会社の
事件というものは、一眇たる会社の事案でありますけれ
ども、実に今の大蔵官僚、今の税務署というもののあり方、官紀の紊乱、さようなことにつきましての
一つのサンプルとして、概略を申し上げまして、
法務総裁の御
意見を承りたい。この都不動産株式会社というのは、いわゆる物納不動産といたしまして、大蔵省の管理に属しますところの不動産を拂下げを受けて、これを競売し、その競売代金は国庫に入れるという指定業者の
一つであります。この社長は追放者でありまして、名前は田村秀吉氏、この人は戰時
内閣時代に石渡蔵相のときに参與官をやられましたる、大蔵省の官吏の経験ある方であります。現在追放者とな
つておられるのでありますが、この大蔵省の指定会社の社長と相な
つておるのであります。現池田大蔵大臣とは、熊本の第五高等学校時代の同窓で先輩であるそうでありまして、非常に懇意な仲だそうであります。この池田大蔵大臣の威勢をかさにいたしまして、大蔵省に出入いたし、なお大蔵省の官僚に饗応いたしまして、この物納不動産のうち最も味のあるところの不動産の拂下げを受け、そうして莫大なる利益を上げてお
つた。こういう指定業者が東京財務部の管下に十七あるそうでありますが、そのうち最も拂下げ事案が多くて、しかも最ももうけておる第一等に位するのだそうであります。そしてさように相なりましたのは、一にこの田村秀吉氏の手腕にま
つたというのであります。しからばいかなる手腕を発揮したかと申しますと、大蔵省の管財
局長から、下は單なる平官吏に至るまで、実に驚くべき饗応をや
つておるのである。その成果が上
つてこの優秀なる成績を上げているというのであります。これは私が内部の人の的確なるところの事案に基きましての言を聞いたのでありまして、決してデマではありませんし、事案は
法務府の特審局におきまして実に詳細に調べられているはずでありますにかかわらず、どういうものであるか、
事件はやみに葬られそうに相な
つておるのであります。
そこで、その饗応の
状態につきまして、これは
法務総裁の御参考までに申し上げるのでありますが、実に驚くベき
状態である。しかもこういうことが他の機関にもひんぴんとしてあるのではないかという推測ができるのでありますから、
法務総裁に御参考までに申し上げます。この会社は田村氏が社長になりましてから、大蔵省に深く食い入りまして、まず饗応を官吏にやる。そのやり方もなかなか
考えたものでありまして、いわゆる
局長級の上級の官吏に対しましては、中野のモナミという料亭及び紀尾井町の
福田屋という料亭、これはなかなかわれわれが近寄ることのできない上級の料理屋だそうでありますが、まずここで歓待をやる。それからまず課長級程度の者は、これは台東区の白鬚にあります隅田別館で、中年ごろの者はここで饗応する。なお若い連中は銀座の橋のたもとにありますキヤバレーのハレムという所に送り込む。かように三段階にわけまして、しかも東京の財務部には第一、第二、第三課とあるのだそうでございますが、まず第一課が済むと、その次は第二課、次は第三課というように、少いときでも四、五人、多いときには二十人くらい招待をや
つて、それぞれ三階級にわけて饗応をや
つたのであります。この費用が平均月三十万円で、年三百五十万円から四百万円かか
つているのだそうであります。管財
局長を初め、各課長、平署員に至るまで、ほとんど饗応を受けざる者なしという
状態だそうでございます。これは本省のほかに、新宿、品川、立川、目黒に出張所があるが、これも御多聞に漏れず、それぞれ所長以下が饗応にあずかる。なおそのほか発展いたしまして、千葉と横浜にある——横浜の方は万栄樓という支那料理屋であり、千葉においては稻毛の浅間屋というのがこの係を仰せつかる、かようにいたしまして、ほとんど饗応を受けざる者なしという
状態だそうであります。この拂下げの問題は、東京財務部が所管であり、その上には管財局があるのでありますが、この
局長以下がかような
状態で、この会社から饗応を受けている。そこでなお御考慮願いたいことは、この会社は、ある拂下げを受けました不動産を売りますというと、その売上げ代金の中から、大蔵省から五分、買受人から五分、計一割のコンミツシヨンをもらう。これは仲介料として正式なものであります。ところがここにふかしぎなことは、田村秀吉氏が社長になりますと、その手腕を発揮いたしまして、大蔵官僚と交渉の結果、特別報獎金制度というものが昭和二十三年度から成立されまして、五万円以下の不動産を売買した場合には、その売拂い一筆ごとに二千五百円均一の特別報奬金というものをもらうのであります。これが三千円に売れたといたしましても二千五百円特別褒賞金として貰う。その上になお一割貰うのでありますから、大蔵省の国庫にはいりますのは、三千円に売れても二百円しかはいらないのであります。こういう制度を確立された。そこでこの特別褒賞金によりまして、十二分に大蔵官僚の招待ができるという仕組みに相な
つておる。実に天下の奇観と申すべきものであります。国民が血の涙でも
つて金で拂えないで物を、土地を、家を税金として出しておる。それをなるべく有利にさばきまして国庫の收入をはかるべきであるにかかわらず、かような業者と結託いたしまして、かような特別褒賞金制度というものを樹立いたしまして、平均一割七分というもうけをさせた。昭和二十三年度の五月から二十四年度の五、六月ごろまで、約一年間に一億円の売上げがあ
つたそうでありまするから、一千七百万円の收入が上
つて、この接待費を差引きましても六百万円ばかりの純益を上げたというのであります。しかるに税務署の届は逆に百何十万円かの赤字という届をして、それがそのまま通
つておるのであります。しかも驚くベきことは、この会社は一年間に四回本社の所在地をかえておる。最初は神奈川県の茅ヶ崎にあ
つた。その次は有楽町の三丁目に持
つて来た。その次は新宿の揚場町に持
つて来た。最後に現在は中野区昭和通二十五番地の田村社長のおめかけさんの家に置くというのであります。実際の
事務所は文京区湯島三組町二丁目八番地に置いてある。しかるに何のためだか本社の所在地はこういう所に登記しておる。これは何のためであるかというと、脱税のためだそうであります。茅ケ崎税務署が調べかかるとどこかに行
つてしまう。今度は東京都有楽町にある。これは神田の税務署だ。それが新宿に行き、今度は中野に行
つておる。こういうふうに転々としてお
つて、結局税金がかからぬ。税金をごまかす
意味において本社の所在地を移転するということが、近ごろの脱税の
一つの
方法だそうでありまして、実に模範的にこの会社はや
つておるというのであります。かような実情を聞きまして、私
どもは憤慨にたえない。そこで私は
お尋ねしたいのは、一体こういう
事件はすでに特審局が田村秀吉氏の政治活動問題について調べましたときに、こういうことまでも全部調べ上げたそうであります。特審
局長に
質問いたしますと、自分は追放関係だけであるからその他のことは答弁ができないということでありましたが、こういう涜職
事件につきまして、検察庁は搜査をしておいでになるのであるか、ならぬのであるか、これが第一点であります。第二点といたしましては、搜査の結果かような場所でごちそうに
なつたことの事実があ
つたとするならば、これは涜職罪として処断される意思ありやいなや。
法務総裁の
福田委員に対する御答弁を見ますと、ほのかなる人道主義をお持ちにな
つておるようでありまして、まあこんな一ぱいごちそうになるくらいはよかろうというようなお
考えであるかどうか、その点をお聞きいたしたいのであります。
なお立
つたついでにお聞きいたしまするが、毎日新聞の報ずるところによりますと、京橋の税務署というものができ上
つて、新庁舎ができて、その祝賀会が盛大に行われた。百三十万円ばかりかか
つたというのであります。これは百数十軒の業者がみな寄付をしたというのであります。一体喜んで今日税務署にいわゆる寄捨をするような業者がありましようか。税務署はそれこそかたきにな
つておるはずであります。この税務署に莫大なる寄付金をするということはどういう
意味であるか。しかも計理士の何とかという人間が発頭人とな
つてこの金を集めて歩いた。私はこれは一種の贈賄罪だと思うのであります。このやり方というものは、実に念が入
つておる、来た税務署の署員にはみな五百円以上の化粧箱とおみやげを配
つて、しかも七十人くらいは第二次会として松志満というところで二次会をや
つて、ここにも数十名の芸者が出て、そうして歓待したというのであります。一体かような時世に、かようなはなばなしいことをやるということがいかがなものであろうかと思うのでありますが、それにいたしましても、かような税務署に対しまして、業者がかような行為をするということは、私は
先ほども申しましたように、これは一体刑法上の集団贈賄ではないかというふうに
考える。さような一体観念ができるかどうか。
法務総裁なり、刑政長官なりの御
意見を承りたい。全部がそうでないにしても、音頭をと
つてこういうような金を集めて、そうして税務署に贈るとい
うその行為、その
趣旨は、これは贈賄であることは明らかである。彼らが感謝して税務署にものを贈るというようなことは
考えられますか。何とか特典にあずかりたい、顔を売
つてきげんをと
つて、何とか税金でも負けてもらいたいという
考え方以外に想像ができない。それは暗黙の意思表示であり、贈賄の暗黙の意思表示をこの行動によ
つて表わしたものであると判定するのでありますが、
法務総裁はどういうふうにお
考えになりますか。この大蔵省の本省及びこの税務署等に関しますところのかかる行動につきまして、
法務総裁の確固たる信念を承りたいと存ずるのであります。