○
加藤(充)
委員 日本共産党の
意見を申し上げます。
裁判所法等の一部を
改正する
法律案は、第一は
裁判所書記官研修所を置くというようなこと、第二には
少年保護司の
制度を改めて
少年調査官、
少年調査官補を置くというようなこと、そのほかに第三の
法廷の秩序維持に関して
裁判長、
裁判官の
警察官派遣要求権を認めるという三つの点についてですが、第一、第二の点については、さきにも別の法案に対する
意見のときに申し上げましたように、
研修所を置いたり、あるいは
保護司の名前をかえてみたりするようなことでは
根本的な対策にな
つておらぬ。
根本的な対策をやることを怠り、そういつたことはたなに上げておいて、こういうふうなことばかりや
つてお
つても、これはだめだということで、私は反対いたしますが、第三の問題については少し述べてみたいと思うのであります。
それで大体現行法において七十一條、七十二條、七十三條のほかに、
法廷秩序の維持のために七十一條の二をあらためて附加し、七十三條を強化
改正するということがあると思います。この点については
日本弁護士連合会からも
意見がありましたから、この法案の設置に反対する
理由についてはここで申し上げませんが、大体民主的な
裁判をや
つて行く、そうしてその
裁判によ
つて人権が保障されなければならないという見地からいえば、こういう
規定の
改正はやらなくてもいい、やる必要がないばかしじやなしに、こういうことを強化してはならぬ。この
改正案のような
改正をや
つてはならないのだという要請が、われわれはあることをわきまえなければならないと思うのであります。しかるにもかかわりませずこういう
改正案を出して来ますほんとうの意図というものは、いわゆる
法廷公開の原則、憲法八十二條とか、それから
法廷における各人の自由の陳述とか、これは憲法三十八條、刑訴法三百十一條、三百一條、三百十九條等々に出ておりますが、こういうものを
制限し、私はさらに進んでこういうものを無視して押し殺してしまう、こういう意図が含まれておるということを見届けないわけにはいかないのであります。
法廷の秩序が一、二の例で多少ノルマルな状態であり得なかつたことは、不幸な事実があるようでありますけれ
ども、それからまた私
どももそういう場面の経験を多少持ちますけれ
ども、こういうふうな秩序のノルマルさが多少好ましくない程度にゆがめられたというような事柄の
根本原因を探りますれば、何とい
つてもあの有名な、
裁判所は化石じやないかと言われた警句なり言葉がありますが、何度
制度が新しくなりましても、依然としてその席にすわ
つてその職を補充しておりますものは、依然として化石的な考え方を持つた判事であり人間であります。従
つてやはり警察
政治と結びついた、あの菊の御紋章をいだだいて、天皇の名において
裁判したあの昔の夢がさも理想的であり
なつかしく感じた連中が、天皇制
制度の
裁判というものを今の世にも強化して行こうとする、こういうようなやり方に対して、それじや言うべきことも言えないじやないか、それじやおれが警察でいじめられた
通りで、何も公判廷に来たかいがないじやないかというような問題が出て参ります。こういうふうなことが多少混乱を惹起した
根本の原因であるということはあまりにも明確な事柄であります。こういう状態にありますときに、それに籍口しまして七十一條の二を加え、七十三條の罰則を
改正しようとすることは、昔の
通り菊の御紋章をいただき、天皇の名において
裁判するあのやり方を摩擦的に、今度はたれが何とい
つても
法律がそういうふうにできたということで、法制的に合理化し、せめて新しくでき上つた
裁判の
制度を、司法権による人権の保障
制度と逆行させ、旧憲法のところに持
つて来る重大なる意図であり、そういうふうなことを意図するといなとにかかわらず、そういう重大な結果をこの
改正によ
つてもたらすということをここで指摘しなければならないと思うのであります。しかも
改正理由の中には、従来明治十四年の大政官達第八十六号が存したのでありますがということが言われております。言葉の上ではなるほど存したというのでありまして、前のことであります。存するのでありますということは書かれていない。私は言葉のあげつらいをいたすわけではありませんけれ
ども、ここらあたりに明治十四年かの太政官達八十六号を持
つて来て、この
制度の合理化をやろうとした
根本の意図があると思う。この大政官達なるものは、すでに資料として配付を受けました書類の中でも明らかでありますように、旧
裁判所構成法廃止の今日においては、はなはだ穏当ならざる議と存ぜられ候的なしろものであると思うのであります。どういうふうな大政官達とかいうようなかびの生えたちよんまげは、憲法が制定され、それに基いて
裁判所法が制定
実施されたときに、もうすでに意識されて排除されたものだと解さなければならないと思うのであります。私は
改正理由がこの法例の復活の必要を強調するに至
つておるところに、この
改正の意図を率直に正直に暴露しておるものであり、まことにひどすぎると思うのであります。私は実際問題といたしまして、
裁判所の武装された警官の配置が、事前的に一般的に常置的に、しかも多数の武装警官を配置した狭い
法廷の内外、傍聽人も公開の
法廷に入ることをやむを得ず
制限せられざるを得なくなり、あるいはまたそれに意識的に多少の逡巡を感ずるようになり、こうして隔離された、
警察官、
裁判官、検察庁、そういうものに包囲された狭い
法廷の中に、現在の
裁判所の
法廷の構造がそうでありますが、その中にぽつんと隔離されて置かれた被告人、あるいはまたその
事件に関連する証人その他のものがどういう情景にあり、どういう心境にあるか、ちよつとそれだけの情景をしのぶだけで私は結果はまことに明瞭だと思うのであります。こうなればもう昔のお白州と
まつたく同じであります。お白州の再現であります。検察庁の方針
通りの判決をつくり出すこと、またつくり出さなければならない、そういう結論にな
つて来るようなところにすべての状態を追い込んで行く、これほど新しい憲法のもとでひどい人権蹂躙があるか、私はまことに残忍なものがあると思うのであります。しかもそういうことは被告人の
立場に立てばもちろんそうであります。
事件関係人の
立場に立てばそうでありますけれ
どもまた大きく見れば検察庁の行政権がこしらえた、要望するところの出した結論を、
裁判所に強行的にこれを押し込み、結局においては
独立すべき司法権を行政権の制圧のもとにこれを置かんとする、置いてしまう結果になるのでありまして、こういうふうな三権の分立が乱れてし
まつた、また乱すような
制度あるいは
法律案の
改正というものは、まことに反動的なものがあることを恐れなければならないと思うのであります。それで私の反対の
理由は以上で盡きますが、これは一部面であり、一半にすぎないのでありまして、先ほど
法務委員会を通過いたしましたこの法案にいたしましても、彈圧機構を強化拡充する。こういうようなことによ
つて差迫つた生活の逼迫や、社会不安の中から出て来るやむを得ない社会惡としての
犯罪的ないろいろな現象、あるいはさらに進んでは、その社会惡を
政治的な、社会的な運動によ
つてこれを除去して行こうという民主的な、人民的な国民運動すらも、これを彈圧機構の拡充によ
つて押えつけてしま
つて、
責任をたな上げして行こうという意図は、一方的にきわめて露骨でありまして、本法案はその全体的なものの一つの現われにしかすぎないのであります。でありますから、私
どもはそういう意味から、この法案に反対をしなければならないものであります。