○
加藤(充)
委員 あまり一人で
発言してどうも恐縮に感じながら、なるべく詰めようと思
つておるのですが、先ほど私が民主的な
刑事訴訟裁判の
運営からい
つても
公開の
原則というものがおおらかに貫かれなければならない、そういう点の
配慮から、今の
改正点を問題にしたのですが、もう一つその反面にやつ
ぱり関係当事者の自由なる
意思に基いた陳述自由なる
訴訟上の
行動というものが許されなければ、
傍聽人はもちろんですが、
証人とか
被告人の立場に立たされた者について言うのですが、自由なる
訴訟行動、
法廷内の現実の
行動が許されなければ、私は民主的な
裁判の
運営にはならないし、それに基いた
判決の
妥当性も出て来ないと思う。それで
秩序維持とか何とかいうことで、さつき申し上げたようなことになりましたならば、まさしく
裁判所の権威とかいうものに藉口して、自由なる
行動、
意思の表示というようなものを制約することにな
つてしまうと思うのですが、こういうふうな
事前に
関心を持つ事案で、白か黒かということが非常に話題にな
つているときには、たくさんの
傍聽人が来る。まさかの場合にはということで、たくさんの
警察官か
配置せられる。こういうことになりますと、
被告はもちろん、あるいは
証人でも、宣誓、ステートメントなどというものをとられている
証人はもちろんのことですが、これは三鷹
事件や
松川事件に今現在行われ、先般私が
発言いたしました
通り、新聞にも報道されている
通りに、さきの地方
裁判所にはそういう問題が起きていると思うのですが、こういう検事、あるいは調査機関に
警察官側の
威圧が加わるということになれば、まさしくこれは角をためて牛を殺す類であります。そういうふうなことでは敬虔に菊の御紋を張りめぐらした昔の
裁判所と同じ考え方だと私は思う。それはまた同時にあなた方政府が認めているように、
太政官達明治十四年と同じ内容のものです。こういうことをさつきからお聞かせ願
つているわけです。どうも区別がつかないようなこういうものを持
つて来るならば、私は今まで立法されて来た民主的なほのぼのとした明るさを、せめてすき間明りでも望めるように
なつたものを、この一点だけで殺してしまうことになる。私はこれを非常に憂えるのです。しかもそこらのばくち打ちだとか、鶏どろぼうだとか、あるいは刑事
事件だけではなくて、民事
事件でもそうですが、そういうような問題については、私
ども経験がありますように、細君が臨月にな
つて常習賭博のおやじがとうとうつかま
つてしま
つた、そうして三箇月か半年かつながれる、
公判に行くのに汽車賃も電車賃もない、臨月でまだ乳のみ子を抱えているというようなことで、
法廷ではむずかる子供がやかましいので、
法廷外の廊下に出て、よいよいあやしながら
法廷内部の父の裁かれ方、夫の裁かた方を
心配しているというような事案は、非常に深刻でかわいそうで気の毒ではありますが、そういう問題については、七十
一條や七十二條の適用の問題はまず起らないのであります。どろぼうや何かの問題では起らない。結局これは犯罪というよりも、それ
自体が社会問題的な意味合いを持
つたもので、七十
一條や七十二條のこの
改正点は、
警察官の武力的な
威圧は直接
法廷の中に入
つて来るわけに行きませんから、
裁判長のいわゆる
法廷秩序の
維持ということに便乗してどつと入
つて来て、社会的な問題に対するいろいろな無意識的な反抗、反腰としての、あるいは悲痛な不満としての
行動が犯罪的な形態をも
つて取締りの対象にされる。そういう事案はほんとうの
人民の声
——何のために苦しんでおるかということや、どうわれわれは希望しているかということが
法廷で明らかになるときに、当然それは社会の世論の支持も得るでありましようし、社会の一部の相当な感興もそそり、
関心もたくさん出て来るというときに、これはまさしく悪法といえ
ども行う、それを適用するに何の妨げかあらんというような、昔の悪代官、鬼畜検事というようなやり方が、この
規定によ
つて合理化されて、
暗黒裁判のうちに、言うこともならず、主張することもできず、だれも傍聽することのできないようなうちに処断されて行くということがあ
つてはならないと思う。ここでいろいろ言
つてみてもしようがありませんが、七十
一條と七十二條の
改正点は、新
憲法の民主的な点、あるいは
刑事訴訟法、あるいは民事
訴訟手続なんかに盛られた、新しいこの民主的な曙光というものを、これで致命的に押えつげてしまう恐るべきものであり、この七十
一條、七十二條の
改正が通過することになりますれば、ま
つたくこれは天下御免の、あの昔のお白州という形が出て来て、そこに何の人権保障もなければ、言うことも言われない、ただ上からぽかんぽかんと、
裁判ということを通じていわゆる犯罪人、前科者を製造することにな
つてしま
つて、
裁判所はこの一、二によ
つて囚人の製造工場といういうようなものに相な
つてしまう。私はそういう意味で七十
一條の一、二の
改正については、いろいろ具体的にそういうことをなからしめるために
言葉の表現を用いたけれ
ども、うまく表現はできなか
つたということを、私は悪意に解釈するつもりもありませんが、しかしながら私は今の答弁だけで、これはうまく行くに違いない、これで民主的な人権の保障はでき得るに違いないという安心はできない。むしろ私は今までのあなた方の答弁や言動の中に、何でもないようなことを言
つて、みんなのためにやるのだということを言
つておるが、こういうことの中に、あなたの言
つていることと本心は逆でこれによ
つて民主的なものを窒息せしめる大きな問題を持
つている。そういう意図を隠して出されたものであるということは、われわれの
経験の上から、これは
委員会の他の人も同様に、多かれ少かれこのことをやつぱり感じておられると思うのです。こういう意味で、これはお白州再現の
規定であり、民主的なものに非常にもどると思うのです。これで私の
質問は終りますが、最後に私
どもが安心できる御答弁をお願いしたいと思います。