○
杉山(勝)
公述人 私は
朝日放送株式会社創立準備委員長の
杉山勝美でございます。本日
公聽会におきまして
民間側の
意見を
公述いたしまする
機会を得ましたことを、深く感謝する次第であります。私は本
委員会の
委員であられまところの
橋本委員、並びに本日御
出席にな
つておられまするところの
NHKの
会長の古垣君と一緒に、
終戰時まで朝日
新聞におきまして机を並べておりました同僚の間柄にありました。本日は古垣君には少々お耳に痛いことを申し上げるかもしれません。あらかじめごかんべんをお願いする次第であります。また所定の時間をやや超過するかもわかりませんが、この点もあらかじめ御了承を願いたいのであります。
私はこの
放送法案につきましてはいろいろの欠点があり、また
修正を要すべき点が多くある。こういうことは認めるのでございますが、次のような理由によりまして、この
法案に原則的に
賛成するものであります。
NHKの
独善的プロによりまして、いかに
国民大衆が迷惑し、悩んでいるか。これは日々の
新聞、月々の
雑誌の
ラジオ評などが指摘するところでありまして、これは
輿論の一致するところである、こういうように解したいのでございます。現在
民間放送局の
開局申請は、
全国におきまして三十九の多きに上ります、さらに三月までには五十局にも達せんとしておりますが、この
申請者が続出しておるという
現実こそ、
NHKに対しまするところの
不満を持
つておる
輿論の反映である、こういうように思うのであります。社会不安とか
経済混乱の
温床がありまして、初めて
危險思想が芽ばえ育つがごとく、
NHKに対しまするところの
輿論の
不満という
温床があ
つて、
民間局の
申請が続出している、こういうように思います。
民間放送会社はこの
輿論の
要望にこたえまするために、営利を
目的とせず、
文化事業の先兵といたしましてここに立ち上
つておるのであります。この
輿論の
要望が熾烈であるという
現実の前に、私はこの
法案は種々の不都合な点を持
つておるが、あえてそれを忍んで、原則的に
法案に
賛成の意を表するものであります。いな、一日も早く
法案が成立しまして、
NHKの
独善的経営が揚棄せられ、
民間放送が誕生しまして、
日本の
ラジオ界が健全な
発達をしまする日の、一日も早からんことを望む次第であります。私は法文の個々につきまして
修正意見を申し上げる前に、根本的な、かつ基本的な問題につきまして、ここに深く掘り下げてみたいと思うのであります。
その第一は、
NHKの
法案反対論は不当である、こういうことを申し上げたいのであります。
NHK及び
NHK支持者でありますところの人
たちが、この
法案が成立しまするときは、
放送の自由性が失われる、こういう点を反対の第一にあげられております。しかし私はこれは納得行かない点であります。
NHK当局及び同支持者の
方々は、この
法案は
NHKを二重、三重、いな四重、五重に縛
つて、まつたくこれでは身動きができない。こういうように申されておりまするが、しかしこの反対論は、
放送の自由という美名のもとに、自己の勢力温存をはかり、現状維持を策しておるもの、こういうように考えておるのであります。現在
日本におきまする諸種の制度、機構の変遷を見まするに、たとえば国鉄とか專売局などが、官営から漸次公共企業体と
なつたごとく、制度、機構は
民主化の線に沿いまして民営の方向へ進んでおることは、御承知の通りでございます。これが
日本の現状でございます。しかるにこれまで民間の一法人でありました
NHKは、この
法案によりまして公共企業体になることは、前に申す
日本の傾向、趨勢に逆行するものでありまして、私は
NHKはむしろ純然たる
民間放送になるのがよくはないかと思うのでありますが、今
法案によりまして公共企業体となる。こういうようにきめられておる以上、種々の
監督や規整を受けるのは当然である、こう思うのであります。この
監督、規整がおいやであるならば、
NHK当局は純然たる
民間放送になるように、そういう方面になぜ猛運動をなさらないのか、私の深く疑問とするところであります。現在のごとく他から何らの
監督、制肘を受けず、わがままほうだいにお手盛りでや
つて行ける、こういうことは
NHK当局にとりましてはまことに都合のよいことでありますが、それではわれわれ
国民はたまつたものではないのであります。この
法案に盛られておりまするところの
監督規定が嚴にすぎる、こういうことは私も認めます。しかし
NHKが今までや
つて来られましたところののほうずと申しますか、そういうやり方をこの際徹底的に矯正する、打破するためには、このくらいの
監督行政はがまんするのがよくはないか、こういうように考えます。また会計検査はいやだという反対論も聞いておりまするが、これも正しい経理、むだのない
経営であれば、進んで検査を受けられるのに何らの不都合もない、こういうように考えます。さらに
NHK当局並びに支持者の
方々は、とかく
NHKが受けておられまするところの、種々の特典については一切口をつぐんで、不利益な点をのみ大声叱呼されておる、こういう傾きがあるように見受けます。
民間放送には與えられておりませんところの非常な特典、恩典を受けておられまするが、かかる恩典、特典があればこそ、取締り、
監督もまたこれに伴いまして嚴重とな
つておる、こういうように考えます。もしこの
監督、規整が嚴重に過ぎるというのでおいやであるならば、この特典、恩典を返上したらどうか、こういうように考えます。
次に
NHKの
電波波長の独占を清算してもらいたいということを、お願いしたいと思うのであります。
NHKは現在
日本に許されておりまするところの波長の大部分を独占的に使用して、
民間放送の方に割当てられまするところの波長は非常に少く、とても多くの
民間局は出現不可能であるというのが、一般の声であります。しかしこれは
NHKが
電波の大部分を独占しているがためであります。
電波監理委員会が発足いたしまして、
電波が免許される際には、一応現在の波長を全部御破算にしまして、総合的に合理的に波長の割当をなさるのがよいのではないかと思います。
民間局に対しまして反対される
方々は、波長の少いのをも
つて反対しておるようでございますが、
NHKの波長を全部御破算してやれば、相当数の波長の割当はできる、こういうように考えます。
NHK当局は口をお聞きになりますと、これ以上局を増加するときは、混信をすると言
つておられます。しかし
NHKは現在
電波庁に対しまして、第二
放送の拡充を
申請しておると聞いております。自分が第二
放送を拡張するときは、混信を来さず、
民間局が
申請するときには混信するからだめだ、こういうような反対論はまつたく
NHK中心の議論であろう、こういうように考える次第であります。
次に、
NHKの第二
放送を開放してもらいたいことをお願いする次第であります。
NHKの設立
目的は、第七條に、「あまねく
日本全国において受信できるように
放送を行うことを
目的とする。」と
法案に明記してございます。この
目的を達成いたしまするためには、現在の第一
放送で十分である、こういうように私は考えます。第一
放送と第二
放送の二つがなければ、
協会設立の
目的が達成できないということは、これは
協会当局の腕がまずいがためだと断言したいと思うのであります。
新聞におきまして、現在の二ページにて、十分昔の八ページ以上の記事を掲載しており、十分に読者の満足を買
つております。四ページとか八ページなければ、
新聞の
使命が達成できないなどということは決して申しません。四ページあるいは八ページあれば申分はないが、四ページ、八ページなければ全然だめだということはありません。編集者のくふうや技術上の改善によりまして、うまく
新聞紙面の狹隘を乘切りまして、多数読者の満足を買
つておるのが現在の状況であります。
放送においてもしかりで、第一
放送のほかに第二
放送がなければというのは、自己の力量不足をごまかす遁辞にほかならない、こういうように私は考えるのであります。この
法案を見ますると、どこにも第二
放送をうた
つておる條文はありません。これは
法案が第二
放送を対象としていないことを示しておるもので、私は第二
放送はこれを民間に開放すべきものと確信いたします。そうしますれば波長が足りないため混信を来すという点は、
たちまち解消するでありましよう。
さらに
観点をかえまして他の
観点から見まして、現在の事実が示すがごとく、第一
放送は八十八局あります。そしてあまねく
日本全国において受信できるというようにな
つておりますが、第二
放送はわずかに二十六局で、とてもあまねく
日本全国において受信できないのであります。第一
放送と第二
放送の比率は、三対一でございます。この数字が示しますように、今日において第二
放送は
全国あまねく受信できないのみならず、将来におきましても、波長の
関係上、
民間局を圧殺しない以上、
全国あまねく受信できないのでありまして、かかる制約を持ちますところの第二
放送は、
協会の設立
目的第七條に反することとなるのでございます。この
観点から考えまして、第二
放送はこれを民間にゆだね、その創意くふうによ
つて内容を充実することが最も至当である、こういうふうに考える次第であります。
次に特典、恩典は、
協会と民間を同一にしていただきたい、こういうことを申し上げたいと思うのであります。
法案の第四十二條の
放送債券三十億円の発行、四十八條の免税、四十九條の土地收用法の適用など、
協会は非常な特典、恩典を與えられておりますが、
民間局にも同一の待遇を與うべきものである、こういうように考えるのであります。両者間に何をも
つて区別しなければならないか。納得の行かない点であります。
協会の
放送は
公共放送であり、
民間局は
広告放送であるから、かような区別があるのは当然である。こういう論を聞きますが、そもそも
公共放送とはどういうことであるか、この点について少しお話したいと思うのであります。この
公共放送という言葉、概念ほどはつきりしないものはなく、いろいろ自分に都合のいいように使用されております。
NHKは同
協会から発行しておりますパンフレツトの中に、
協会の
経営形態を簡單に
公共放送とうた
つておりますが、この言葉は当らないと思います。
放送はすべて第一條に明示されておるごとく、公共の福祉に適合するように規律されておるものでありまして、
NHKのみが
公共放送で、
民間局が全部
広告放送ではないのであります。
民間局におきましても、全体の三分の二以上の時間は、いわゆる
公共放送をやるのでございます。かかる見地からいえば、
協会に與えますところの特典を
民間局に拒否する理由は、これを発見するに苦しむものであります。われわれ
民間局のものは、
協会以上の特典を與えよと叫ぶものではありません。
協会と同一の特典を與えよというのであります。
協会と
民間局とは同一の
基盤の上に立ちまして、正々堂々と
相互に切瑳琢磨し、
日本の
ラジオ界の健全なる
発達に寄與せんとすることを念願するものであります。また
放送債券三十億円は、どういう計算の基礎に立
つておりますか。私はそれをつまびらかにいたしませんが、かかる厖大な債券発行は不必要と考えるのであります。二十三年度におきますところの
NHKの貸借対照表を見ますと、長期借入金一億二千万円、短期負債一億八千万円で、長期短期を合しまして三億円の負債しか持
つておりません。その上同期におきますところの利益金は一億六千万円あつたということが対照表に載
つております。この彼我を対照して見まして、
放送債券三十億円などという厖大なものは、まつたく不必要である、こういうように考える次第であります。
また聽取料を現行と同じく、第三十二條中に月額三十五円とすると明示してあるのはどうでありましようか。三十五円が適当であるか、または不当であるかということは、
法案が成立しました上で検討されてよいものでありまして、法文中にあらかじめ明示すべきものではない、こういうように考えるのであります。三十五円は昭和二十三年の七月に、従来の十七円五十銭を一躍二倍としまして実施したものでありますが、二十三年度末の
NHKの收支を見ますと、一億六千百万円の利益を計上しております。すなわち四月、五月、六月の三箇月間は十七円五十銭の聽取料でありましたが、残りの九箇月分を三十五円に引上げただけで、一億六千万円の利益をあげております。二十四年度にはさらに多額の利益をあげておることと思います。この收支状況から見ましても、法文中にあらかじめ三十五円を明記することは不当と考えるのであります。
次に
民間局への門を開いた以上、くぐれる門にしていただきたい、こういうことを申し上げたいのであります。
放送法案を立案された
方々は、この
法案によ
つて民間放送の門を開いた。その門をくぐるといなとは、
民間局を企画する人
たちの勇気と企業開拓の精神によると、いかにも得々として申されております。確かにかたくとざされましたところの門を開かれました功績は、これを認むるものでございまするが、しかし門を開いた以上、その門は少くともくぐれる門でなくてはならないと思うのであります。くぐれない門を開いたのでは、まつたく不可能事をしいるものであると言わざるを得ないのであります。今この
法案を検討してみまするに、その門は小さくて、なかなかなかぐりにくいと思われるのであります。私は賢明なる立法の
方々が、かかる立案者のひとりよがりを排しまして、広くかつ大きな門にしていただきたいと願う次第であります。そのためにはいかなることが必要かと申しますると、
民間局が成立しやすく、また成立した以上は永続できるような措置を講じてくださることであります。初めから不可能に近いことが予想されておるにもかかわらず、それを看過したり、またあとで
法案の改正をやるというようなことは、用意周到な立法者のとらないところであろう、こういうように考えるのでございます。われわれが求めまするものは、門を開く以上、くぐれる門でなくてはならないということであ
つて、その門を撤去してしまえとか、あるいは大きなパリーの凱旋門のようなものにしてくれということを申すのではございません。そういう過大な要求をするものではございません。ただくぐれる門であれば
けつこうなのでございます。しからばそのくぐれる門とは何でございましようか。これから具体的に申し上げます。その第一は聽取料、すなわち
受信料の問題でございます。
法案では、
協会には
受信料の徴收を認め、一方
民間局には
広告收入だけでやれ、こういうことにな
つております。その理論的根拠はどこにあるか。どうも私には割切れないものがあります。
協会は
公共放送であるから
受信料を認め、
民間局は
商業放送だから認めないという論もあるように見受けまするが、先にも申しましたように、
民間局の
放送のうち、少くとも三分の二の時間は
協会と同じ公共的
放送なのであります。その部分については
協会と
民間局の
放送との間に、本質的に何らの差異もないのであります。この
民間局の公共的
放送の部分に対して、なぜ
受信料の徴收を認めないのでありましようか。納得の行かない点でございます。また一方
民間局の聽取範囲がはつきりせず、
聽取者の数が不明であるため、
受信料の徴收が事実上不可能である、こういう当局者の弁解も聞くのでございます。しかしこの聽取範囲の測定は、種々の方法によ
つて可能なのでございます。一例をアメリカにとりますると、アメリカの局では
受信機を乘せましたところの数台の自動車を四方八方に走らせまして、自社の
電波の聽取可能な範囲を確定しております。かかる方法ではかつた自社のサービス・エーリアを明示した地図を
広告主に見せ、
広告主をして安心して
広告放送をさせておると聞いております。かかる方法によりますれば、聽取の範囲は測定され、その中におる
受信機保有者の数もはつきりいたします。その数を内輪に見まして、その何%を
民間局の
聽取者とするということはできるのでございます。
聽取者数さえとらえることができまするならば、その数に比例しまして、
協会の
受信料の一部を
民間局にさくことが可能であります。
協会は三十五円に、民間にさくべき二円なり三円なりの額を、まとめて徴收すればよいのであります。
民間局のない
地方から、
民間局にさく
受信料をとるのは不都合である。こういう議論も一応成立つと思うのでございますが、第二
放送のない
地方からも、第一
放送、第二
放送と二つある
地方と同様に三十五円の
受信料をと
つておる以上、かかる論難は当らない、こういうように思うのでございます。さらに三十五円の
協会の
受信料のほかに五円を徴收いたしまして、その一部を
民間局に、その
聽取者の数に比例して按分して、残額は広く
民間放送の技術研究費などに使用させる。こういうことにしますれば、不公正だというそしりを免れることを得ると思うのであります。方法論的には相当の困難性があり、やつかいな問題ではございますが、
受信料を一部
民間局にまわすということは、全然不可能なことではないのであります。大体聽取料、すなわち
受信料という言葉を使用いたしまするから、誤解を招きやすいのでありまするが、
受信料のかわりに
受信機使用料という言葉を使えば、一般の了解を得やすいのではないかと思うのであります。
協会は三十五円の
受信料を徴收し、
民間局は五円の
受信機使用料を徴收するといたしますれば、両者の
関係もはつきりすると思います。
協会は
受信料、
民間局は
受信機使用料でございます。この五円のうちの一部を、
民間局の
聽取者に比例して配分します。残りを研究費、徴收委託費、こういうものに充当すればよいと思います。
法案の立案をなさ
つた方々の中には、
民間局としては
受信料契約を禁止してはいないから、
聽取者と契約してか
つてに
受信料をとつたらよいと申される方があるかもしれませんが、これは
現実を遊離した詭弁であります。ただで聞ける
放送を、金を出して聞くほどの物ずきはありません。もし当局がそういうことを強調されるならば、われわれには
協会の標準
放送を受
けつけない、そして
民間局の周波数だけにマツチしました
受信機を製造しまして、
聽取者に配付するという奥の手はあります。かかる
受信機は簡單で安価に製造し得ます。もしも実際にそんな場合が起りましたならば、
協会は相当の打撃をこうむることと思うのであります。以上申し上げました
受信料の一部を
民間局にまわすことは、最も簡便な
民間局育成の近道であります。その他前に述べましたところの、
NHKと同様の種々の特典を
民間局に與えることは、くぐれない、あるいはくぐりがたい門を、広くする道であると確信する次第であります。
また国際
放送は
協会の独占と
法案にな
つておりますが、
民間局の機能いかんによりましては、
民間局を利用することも、
民間局を育成する
一つの方法でありましよう。
民間局を初めから国際
放送の利用範囲外におく第三十三條は、不当であると思うのであります。
また中継
放送のため、安い特別
料金を設定することなども、助長手段の
一つでありましよう。
以上は
民間局育成助長のための積極面でありますが、消極面の方を見ますると、そこにもいろいろの注文がございます。すなわち積極面は、小さい門を大きくすることであります。消極面は、門に入れないように門前に横たわ
つておりますところの、もろもろの障害物を取除くことでございます。障害物とは何でございましようか。それは
NHKの企画されております
事柄が、
民間局の育成に重大な支障となる点であります。
その第一は、前に申し上げました
NHKの第二
放送網の拡充
計画であります。この拡充
計画は一応
電波庁の手で押えられていると聞いておりまするが、
電波監理委員会ができました後、またいつ何どきこの案が日の目を見るに至るか、はなはだ危險なしとしないのであります。第二
放送網の拡充がもし許される場合には、先に申しました通り
民間局への割当波長がなくな
つてしまうおそれがあります。
第二の障害物としましては、
NHKの非常に大きな、超大局の新設
計画であります。大阪のJOBKは現在十キロ局でありまするが、これを近く百キロ局とすると聞いております。かかる百キロ局が出現するとなりますと、
民間側の十キロ局は、手も足も出ない結果となります。
NHKのかかる
計画は、結果的に見まして
民間局を圧迫するということになると思うのであります。この百キロ局の新設案は、ジユネーブの国際会議で
承認されておりますが、
日本の地形上から見まして、また現在の
日本の経済的不況からいいまして、現在の十キロ局で十分である。せいぜい五十キロ以下で
けつこうと思うのであります。最大出力を五十キロ以下に制限することは、消極的な
民間局育成策でございます。
NHK当局は、表面
民間局の出現を歓迎されているがごとき顔をなされているのでございますが、以上のごとく
民間局が生れます以前に、
民間局の圧殺となるような
計画を平気でなさ
つておられる。われわれは最もこれが恐ろしいのであります。
NHKは横綱であり、われわれはかけだしの十両以下であります。横綱は堂々と受けて立つ、こういう大きな襟度をも
つてわれわれに対せられるのが至当であります。
委員の
方々にはこの辺よろしく御洞察を賜わりたいと思うのであります。
次に、
民間側に往々ありますところの泣きごとには、
賛成できないということを申し添えたいと思います。
民間局企画者の中には、
日本におきますところの
広告ソース、
広告資源の貧弱さをもちまして、
民間局の
経営はとてもできないと力説される方もありまするが、私には何だかこういうことは、悲鳴か泣きごとのように聞えるのであります。アメリカにおきますところの
ラジオ界の現状は、これから生れますところの
日本の
民間局にとりまして、貴重なる先例や参考資料とはなりまするが、アメリカの例がそのまま
日本に当てはまるかどうか、私は疑問とするところであります。
日本には
日本の特殊の事情があり、またわれわれには
日本人独自のくふうもあります。この点は皆様も意を安んじていただきたい、こういうことを失礼ながら申し上げたいと思うのであります。
放送法案につきましては、種々小さな條文的
修正はございますが、時間の都合上これら條文の
修正点は申し上げません。しかしこの
法案を通覽覧して感じますことは、世間一般にいわれておりますように、
放送法案があまりに
NHK温存
法案のにおいが強いことであります。
法案全文五十八條のうち、
協会に関する條文は第七條から第五十條まで、四十四箇條ございます。しかるに
一般放送に関します條文は、五十一條と五十二條の二條であります。法は少きをも
つてたつとしとする。こういうように申しますから、わずか二條しかないということは、一方ありがたいとは考えるのでありまするが、
協会の四十四箇條に対しまして二條とはどうでありましようか。私はここに
協会に対しますところの、立案者当局の勢力温存と
官僚統制のにおいがあることをひどく感ずるとともに、民間蔑視の昔からの弊風を肌身に感ずるものであります。少くとも第四十四條の
放送番組の編集、第四十五條の政治的公平などは、第一章の総則の中にまとむべきものでないか、こういうふうに思うのであります。私はくぐれない門をくぐれる門にしていただきたいと、長々と立法に携わ
つておられまする皆様にお願いいたしたのでありまするが、もしもかりに万一われわれが
要望しておりますことが何
一つとしていれられず、どうしてもくぐれないような門でありますならば、その門を押し倒しても、乘り越えましても、突進する勇気を持
つております。パイオニアの精神は、われわれ言論界におりまする者の最も誇りとするところであります。しかし門を押し倒したり、乘り越えたりしますれば、そこに必ず種々の
混乱が起きて参ります。私どもはその
混乱を決して好むものではありません。どうかかかることの起らないよう、立法府の皆様の御明察によ
つて、
民間局のため広き門が開かれますようお願いする次第であります。
最後に重複いたしますが、私の申し上げたいことは、一、
放送法案に原則的に
賛成であること、二、
NHKの
法案反対論の不当なること、三、
NHKの
電波、波長の独占はいけないこと、四、
NHKの第二
放送を
民間側に開放すること、五、特典、特権は
協会と民間は同一とすること、六、
民間局を許す以上大きな門を開いてもらいたいこと、七、
民間局企画者側に往々にしてある泣きごとや悲鳴には賛 成できがたいことなどであります。
民間放送は世論の強く
要望するところであります。一日も早く健全なる誕生ができますよう、われわれの
要望をいれられて、法文を
修正されんことをお願いして、私の
意見開陳を終ります。
なお
民間局の死活のかぎを握る
電波監理委員会委員の
人選とか、目下
電波庁で原案を作成中と聞いている免許基準などについても、
意見を申し述べたいのでありまするが、あまり長く時間を独占いたしますると、
NHKと同様の非難をこうむりますので省略いたしますが、いつにても文書あるいはかかる会を開いていただければ、馳せ参じて
意見を開陳いたしますから、よろしくお願いいたします。どうも長々御清聽のほどありがとうございました。(拍手)