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風早委員 私は
日本共産党を代表して、ただいま提案になりました
輸出信用保險法案に
反対の
意見を表明するものであります。
アメリカの対日援助
資金の削除傾向に伴いまして、
日本の
貿易振興のためには、
輸出の増進が特別重要性を増して来たことは、十分に認められるのであります。しかしながら対外
貿易はどこまでも対等、平等の
取引関係のもとにおいてのみ、
日本経済の再建に役立つのでありまして、現在のような不平等
関係に盲従しておるという
状態のもとでは、
貿易をやればやるほど、ますます恐慌輸入が激しくなる。これに対抗しようとして飢餓
輸出、ダンピング
輸出というものが必然となるのであります。そのために輸入滯貨が激増しておる、またフロア・プライスを三割も五割も割
つた飢餓
輸出の結果といたしまして、中小企業や家内工業というものは、工賃を法外に押し下げられて、現にその多数が沒落させられておるのであります。ローガン・フレール
貿易方式というものは、従来の軍政的な繁文縟礼の排除には、若干役立
つたと言えるかもしれないのでありますが、しかし決して根本的な問題の困難の打開にはな
つておりません。根本的に
盲貿易、恐慌押しつけ輸入というものに対する断固たる自衛手段というものを放棄しておる現状におきましては、
日本の業界の
危險負担というものは、ますます増大しつつあるのであります。このときにあたりまして、
政府がとにもかくにも
輸出業者、生産者の
輸出取引に伴う
危險を
補償しようとする
趣旨でこの
法案を用意したということは、その
趣旨においては同感であります。外同商社による工業権の侵害を手放しにしておきながら、
日本の商社による外国商社の工業権侵害に対してのみ、嚴罰をも
つて臨もうとする、あの先般私も質疑をいたし、またわが党が
反対いたしました不正競争取締
法案、ああいうものの提出をあえてした
吉田内閣が、それから間もなく今日におきましてこの
法案を出しておるということは、きわめてふしぎなことと考えるのであります。しかしながら実はこれはふしぎでも何でもなか
つたのでありまして、よくこの
法案を検討いたしますと、また今後の
政府の運営を予想いたしますと、
政府の
趣旨弁明とはま
つたく逆に、これまた
吉田内閣の外国
保險会社に対しまして
日本国民の税負担、これは先ほど
宮幡政務次官は税負担ではないと言われましたが、やはり最終的には
政府が
国民の税負担で、これを
補償しなければならぬ。
独立採算制とは言いながら、やはり相当の
予算をこれに捻出しておるのであります。そういう次第で
国民の
税金負担において行使せんとするものであ
つて、決して
輸出向き生産
業者の救済にはならない。従
つて真の意味の
輸出振興、
日本経済の再建にはならないしろものだということを、発見するものであります。私は
日本の対外
通商については、どこまでも対等平等な
取引関係を、一日も早く回復しなければならぬ、この立場から、また特に
輸出業者、生産
業者の個々の立場から、この
法案に対する
反対論旨を述べたいと思います。
反対理由の第一は、まず
保護事業の
範囲があまりに限定され過ぎておる。生産
業者ないし
輸出業者の実際上の
保護効果は、これでは上らないという点であります。この
法案は一般に
輸出契約当事者の責に帰すべからざる
事故のみを、
補償の
対象にしておるのでありまして、しかも
信用の
危險というものに対しては何ら規定しておりません。先般
修正案が出て、その
信用の
危險の一部分について、
修正が試みられたのでありますが、それも結局立消えにな
つてしま
つておるというようなことでありまして、結局ほんとうに
輸出業者、特に生産
業者が困
つておる問題を解決するための
法案にはな
つておらない。現在の
輸出業者及び生産
業者が最も苦杯をなめておるのは、何とい
つても
信用の
危險であるのであります。特に買手側の責に帰すベき
信用上の
危險であります。
政府資料によりましても、戰後昨年六月までのキヤンセルは、
輸出契約調査表を見ましても、件数においては千九百四十二件、金額において二千六百四十五万ドル、三百六十円で換算すれば、実に九十五億二千五百万円という莫大なるものにな
つております。キヤンセル総額の五○%以上というものは、買手側の責に帰すべきキャンセルにな
つておるのであります。戰前にはそうした取消不能
信用状ないしは手形買取通知書の開設というものを積出しの條件とする慣習も存在してお
つたのでありますけれども、今日ではまるで武装解除の奴隷的な
貿易でありまして、そういうような慣習は、少くも
日本の商社に対して、多くの場合存在しておらないのであります。
業者は完全に泣寢入りをしておるという
状態であることは、どなたも御
承知の
通りであります。でありますから、
輸出信用保險制度というものが、真に生産
業者ないしは
輸出業者の利益を
保護することを
趣旨とするものである限り、必ず
信用上の
危險に対する保障を與えることが絶対に必要でなければならぬと思います。しかるにこの法律がそういう規定をま
つたく欠いておることは、この
法案が何ら
業者の
保護をはかることを目的としたものでないと断ぜられても、全然弁明の余地はなかろうと思います。またこの
法案の特に重点を置いてありまする商品代金の移送の
危險、この移送
危險というものに対する
補償としましても、その中に輸入国によります通価の切下げあるいは
為替相場の切下げというものに基く損失の
危險については、何ら明記しておらない。これは今日各国が不況にあえいで非常に激甚な競争をや
つておるという現状から見ましても、はなはだ不備であると言わなければならぬと思います。
反対理由の第二としまして、この
法案は明らかに国内生産
業者を犠牲にして
保險会社、ことに外国の
保險会社に対する
保護に傾いておるという点であります。これは第二條を見てもわかりますが、特に外国
保險会社というものが、たとい
日本に店舗を持
つておらぬでも、ここに適用せられる契約の当事者たり得ることにな
つておるのでありまして、個々の
保險契約当事者というものは、
輸出業者と
保險会社と言いますけれども、この
保險会社というのは、実際問題として問題になるのは、外国
保險会社の場合であると考える。そうした場合にこの
業者がとうていこれに対して太刀打ちができない。もしも
保險会社と
業者との間に問題が起
つた場合には、全然太刀打ちができないという力
関係の実情をわれわれは実際に考慮しておかなければならぬと思います。この
法案は
保險事故というものを極度に限定しておる。また
輸出業者に対して、
保險会社の支拂う補填率はわずか八○%である。これは今まで
日本の旧法によりましても九〇%であ
つたのが、八○%に切下げておる。そういうふうにして
保險会社の安全というものを手厚く擁護しておきながら、この
保險会社が不正行為をなした結果、
輸出業者ないしは生産
業者がこうむるべき損失に対しては、一般の民、商法の適用に讓
つてお
つて、何ら
政府として積極的に
業者の
保護に任じようとしてはおらない。そういう規定は全然ないのであります。これは今申しましたような、非常に力の強い、また
資金力の強い
保險会社、特に外国
保險会社と
輸出業者ないしは生産
業者との実際の力
関係を考えてみますと、明らかに
保險業者保護に、はなはだしく偏したものであると断ぜざるを得ないのであります。
輸出信用保險審議会のような組織にいたしましても、従来この種の
審議会、
委員会は必ずひもつきでありまして、自主性はま
つたく欠除しております。結局外国
独占資本のサゼスチヨンとか何とかによりまして、左右されるということを考えるならば、自主
貿易促進の立場からすると、きわめて
危險なものであるといわざるを得ないのであります。
反対理由の第三としまして、これは先ほど追加
質問をいたした問題でありますが、この
法案がかねて一貫して買弁的な性格を持
つております
吉田内閣の手によ
つて運用せられるという場合に、これがはなはだしく
危險な
方向に
運用せられるおそれがあるということであります。現に
台湾におきまして、治安が非常に不安定であるとはいいますが、実際はもはや当然
中共の領土であり、
中共の支配するところとならざるを得ない
状況におきまして、そういうこともすでに知りながら、その一方、中華人民共和国にあたかもたてをつくような
鉄條網であるとかいうような、戰略的な
物資を送りつけまして、これに対して外国
保險会社、とい
つても大体相場はきま
つておりますが、特定の外国
保險会社がこの契約を取結ぶ、それに対して
政府がまた再
保險する、こういう仕組みにな
つておる。そういう方面に使われる公算は、きわめて大であると考えるのであります。また先ほどの
東南アジアに対する
プラント輸出という計画が、すでに
——これは
日本の側からではない、
日本の
政府の側からでもない、要するに
一つのひもつきでそういう計画が出ておる。これに対してやはりこの
法案が一役を買うという予想は、十分にだれが見てもつくわけであります。こういう
危險な面をわれわれが考えるならば、少くも吉田現内閣の手で、この
法案が出されるということは、きわめて
危險であると考えざるを得ないのであります。
これを要するものに、この
法案というものは、その提案の
趣旨とま
つたく逆でありまして、生産
業者、転出
業者の
保護にはならない。かえ
つて今後進出を予想せられる外国
保險会社の
保護にとどまるものではないか。これでは
日本の対外
通商の自主性の回復の立場に対しては、むしろ障害をなすものではないか。また特にこの
法案の
運用によりまして、
日本がみすみす特定国の戰争
挑発者のお先棒をかつぐ。そういう
役割を演ぜざるを得ない。これらの点を私は十分に検討いたしました結果、この
法案に対しては徹頭徹尾
反対せざるを得ない次第であります。