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1950-03-30 第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三十日(木曜日)     午前十一時四十分開議  出席委員    委員長代理理事 小金 義照君    理事 澁谷雄太郎君 理事 永井 要造君    理事 村上  勇君 理事 山手 滿男君       阿左美廣治君    岩川 與助君       關内 正一君    高木吉之助君       田中伊三次君    多武良哲三君       中村 幸八君    福田 篤泰君       前田 正男君    坂本 泰良君       伊藤 憲一君    田代 文久君       河野 金昇君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         通商産業事務官         (通商振興局         長)      岡部 邦生君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月二十七日  病院用電力基準創量増加に関する請願(堀川  恭平君紹介)(第一八七二号)  電気事業分断反対に関する請願志賀義雄君外  五名紹介)(第一八八一号)  電気料金値下げ並びに同地域差撤廃請願(木  村榮君外一名紹介)(第一八八二号)  同外三件(木村榮紹介)(第一九五四号)  電気自動車充電用電力確保等に関する請願(川  野芳滿君外一名紹介)(第一八九七号)  医療用変性アルコール配給に関する請願降旗  徳弥紹介)(第一九三八号)  同(降旗徳弥君外一名紹介)(第一九八五号)  九州地方の電力問題に関する請願高橋權六君  紹介)(第一九四六号)  同外二件(村上勇紹介)(第一九五五号)  東北地方電気事業確立に関する請願安部俊  吾君外二名紹介)(第一九八七号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十九日  現行電気料金制度改訂に関する陳情書  (第六四三号)  九州地区地域差電力料金制度改善に関する陳情  書  (第六四四  号)  電力事業分断反対陳情書  (第六四五号)  電気料金値上並びに分断反対等陳情書  (第六四  七号)  商工会議所法制定促進陳情書外十一件  (第六五〇号)  電気事業分断中止陳情書  (第六六三号)  九州地区地域差電力料金制度改善に関する陳情  書(第六七二号)  電気料金の値上反対陳情書  (第六七六号)  電気事業市営復元に関する陳情書  (第六七九号)  電気事業分断反対陳情書外一件  (第六八一号)  商工会議所法制定促進陳情書  (第六八  九号)  特別鉱害復旧臨時措置法成立促進に関する陳情  書  (第六九二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  輸出信用保險法案内閣提出第九一号)     ―――――――――――――
  2. 小金義照

    小金委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。  本日は私が委員長の職務を行います。  輸出信用保險法議題といたしまして、この前質問は終つておりますが、補充的に質問を簡単にお許しいたします。風早八十二君。
  3. 風早八十二

    風早委員 皆さんのお許しを得まして、補充質問を二つほどさしていただきたいと思います。  この輸出信用保險法案の法文に現われました大体の問題は、すでに質疑は終つておるのでありますが、その中で一つだけ特に政府の意向をただしたい点があるのであります。それは補償事項の中で、契約当事者の責に帰せざる條項の中で、たとえば革命とか動乱とか、そういつたような非常事態が生じて、その結果生じた損害に対して補償するというような点があるわけであります。これは具体的にどういう場合が予想されておるかということを十分に考えておかなければ、非常な思わざる結果を生じはしないかと考えるのであります。この点について質問したいと思います。  まず実例をあげてみますと、最近におきまして、台湾にいろいろな内部動揺や問題があるわけであります。こういう際に、特にその内部のいろいろな動揺を知りながら、なおかつこれに対していろいろ相当重要なる物資向う輸出しておるというような事実があるように考えるのであります。この点について政府はどういう措置をとつておられるか、まずそこから伺いたい。
  4. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御質問の要点は、台湾との取引をどうしておるかということであろうと思いますが、これは御承知通りに、ただいまバーター式でやつておるわけでありまして、要許可品目につきましては、輸入につきましては予算のわくがありまして、それで順次申込順に、その他の方法によりまして審査して許可をする、かような形で、それ以上一方的な資金決済方法ではただいま取引は行われておらないような状態であります。
  5. 風早八十二

    風早委員 台湾にそういつたような状況があるということ、私は問題を特に輸出信用保險の問題に限つてこれに関連して出しておるのでありまして、今回政府の再保險によつて、結局それらの事故によつて生じた損害補償が、ある程度一部できるという趣旨法案でありまして、そういつた補償自身はもとよりけつこうでありますが、補償せられて輸出せられる。その輸出によりまして生ずる、あるいは生じ得べき事態を具体的に考えておるのでありますが、この台湾に、たとえば有刺鉄線——これは鉄條網であると思いますが、鉄條網のようなものを多量に送つておるというような事態は、結局この法案によりまして、それによつて生ずる損害に対して保險がされるということになる。これは結局この保險というものが窮極において国民税金負担であるということを、もう一度この際考えておく必要がある。そういう国民税金負担によつて、この台湾に対する有刺鉄線の多量な輸出危險を侵してやつて行く。そういうことは一体どういう結果になるであろうか。これは今日台湾の置かれております実際の位置、また特に具体的には、台湾中共政権との関連、その他の民主主義諸国との関連、こういうものを考慮した場合におきまして、特にこの際台湾の一部の勢力に対して有刺鉄線のようなものを多量に送つて行くというようなことは、結局戦争に巻き込まれると言うよりも、むしろそういう戦争挑発を奨励するような役割を持つのじやないか、われわれはその点を考えるのでありますが、政府はどういうように考えておられますか。ただ形式的にこの法案を解釈して、そういう場合に生じた事故をただ補償しさえすればよろしいというのでは、非常に重大な結果を生ずるおそれがあると思うのでありますが、政府の所見はどうか伺いたい。
  6. 宮幡靖

    宮幡政府委員 風早委員のお尋ねのうちに、非常にむづかしい事項もたくさんあるわけでありますが一応申し述べますと、第三條の第四号に掲げてあります事項というのは、前回にも御説明申し上げましたように、仕向国のストライキ、ボイコツト等が大体考えられたわけであります。為替相場の変動に伴うというのは含んでおらない、こういうようなことも申し上げてあるわけでありまして、この中に、御指摘のような事実が四号として考えられるがどうかということについては、これは風早さんの方がよく御存じのことだろうと思います。  その次には、国民税金から云々のお言葉がありましたが、法案を通じてごらんの通り、この特別会計独立採算制でありまして、保険金給付のために一応基金の操作はありますけれども、結論におきましては、基金をお出し願う財政的措置以外に、国民の血税によつて負担を願うということは想定してつくつておらないところの予算であります。たま御指摘有刺鉄線台湾に多量にやつておるというように言われますが、これは前回委員会において松尾通商局次長から品目について申し上げましたように、スチール、ワイヤーという名目で出ておる。その中に有刺鉄線があるかどうかということは、現在のところわかつておりません。また台湾の一部のものという御指摘でありますが、これは現在中国というものを対象としたエスクロー・バーター・システム決済協定というものもあるわけでありまして、これも正常な貿易條件によつてなされることについては、とかくな干渉もできないし、また誘導するということも、現在政府ではいたしておらないのであります。その点御了承をいただきたいのであります。
  7. 風早八十二

    風早委員 有刺鉄線の送付ということは、これは一例でありますが、この一例も、その事実がはつきりしないと言われるのは逃げ口上ではないかと思う。これは今までの日経の他の新聞さかでたらめを書いておるわけではなかろうと思う有刺鉄線というのはその一例でありまして、結局目標は、台湾における国民党勢力の残存に対する軍備の装備のために、日本のいろいろな重要物資を送つているというところに問題がある。そういう点でそれが結局どういう役割をするかということは、この際政府としての十分に考えておかなければならない責任があると思う。ただ目先輸出ができる、相手が買つてくれそうそれだけでは今日の貿易はもはや相済まされない状態ではないかと思うのです。こういう戦争準備になるような——結局内乱といいましても、中共政権というものが国際連合にもやがて認められようという段階にあるときに日本がわざわざそ中を割つて入るような、その輸出補償をやるというふうなことは、はなはだ問題ではないかと考えるのであります。われわれは今の政府の非常にあいまいな御答弁では一向納得が行かないのでありますが、この点は一応政府が暗黙に、われわれの疑議をやはり否定してはおらないということをわれわれは判断し得るので、この程度にしておきたいと思います。それからもう一つの問題は、これもやはり新聞紙上で散見するところでありますが、たとえば日本経済の三月二十九日であります。プラント輸出ということが出ております。その点について見返り資金の活用によつて、この場合いろいろな危険を補償して行きたい。こういうことが出ておるわけでありますが、現在政府はそういう点について、どういう方針を持つておられるのか。また将来実際これを実行しようとする意図を持つておられるのか、そういう点についてお尋ねしたい。
  8. 宮幡靖

    宮幡政府委員 プラント輸出につきましては、昭和二十五年度の通商産業重要施策一つとしてこういうことをやりたいということで書かれておつたことは事実であります。日経の記事については私は肯定も否定もいたしませんが、そういう計画をもつて発表いたしたことは事実でありますけれども、まだ日本経済力から申しまして、いわゆるプラント輸出というものは、はたして遂行できるかどうかということは多大の疑問を持つております。また個人といたしましては、この重要施策審議いたしまする省議におきましても、発言を求めまして、この点時期尚早であるというような意見を申し述べたことは、はつきり覚えております。従いまして現在プラント輸出につきまして具体的な考え方としては、通産省としては持つておらないような状況でございます。
  9. 風早八十二

    風早委員 今のお答えプラント輸出というものが可能であるかどうかという技術的な面からお答えになつておるのでありまして、またそれがはたして可能であるかどうかということについては政府は確信が持てない。もしこれができるということになれば、東南アジアに対してプラント輸出をやるおつもりであるかどうか、その点を重ねてお尋ねします。
  10. 宮幡靖

    宮幡政府委員 もしさいわいにいたしまして、日本国が平和的、文化的国家として再建ができました場合において、その経済力に余裕がありましたならばお話のような東南アジアとか、そういう地域を限定せずに、必要な地区にやるということの措置が、当然になつて来るのではなかろうかと考えております。
  11. 風早八十二

    風早委員 今宮幡政務次官東南アジアだとか、どこだとかを問わずと言われますが、今これが具体的に国際問題とたつておりますのは、東南アジアです。東南アジアも、しかもこれが特に総司令部のウエスト氏あたりから、この問題が出されておるということも、これも具体的な事実として、また具体的な問題として考慮しなければならぬ。われわれこの場合においても台湾動乱に対してそれを知りながら、なおかつその一方の勢力に特別な軍事的施設の拡充に援助を與えるような、そういう重大な影響な持つておるということを指摘したのでありますが、同じような問題がやはり東南アジアに対する工場施設輸出ということについては起り得ると思います。今まで見返り資金というものはその用途につきまして、また実際運営権の所在につきまして、たえず問題を起しておるわけであります。また今度はいよいよこの資金運用をして、そうして日本がこれらの東南アジア地域の一部の勢力の軍事的な拡張のために日本が役立つというこの目標が、非常にここではつきり出ておるのではないか。そういうことを具体的に予想して宮幡政務次官は当然に御回答があつてしかるべきだと思うのです。それは東南アジアでもどこでも、日本平和国家に、なつた場合には、当然お互い対等平等な資格で、有無相通ずるということは、これはもとより言うまでもありませんが、現在の具体的な段階におきまして、この輸出信用保険法案というものが、さまざまに運用せられる。というよりも、むしろそういつた意図が最初からあつてこういう法案というものがつくられる。それが認められる、こういうふうなことにたるとすれば、これは日本の将来にとつても、また世界の平和を念願する立場からいつても、きわめてこれは重大な問題であると考えるのであります。そういう点では政府は一向にこの問題を具体的に考えようとしておられないのか、あるいは考えておるけれども、それは一般的な問題の中に解消して、一時を糊塗してしまう、そういうふうに考えておられるのか、どつちかではないかと考えるのであります。その点はどうですか。
  12. 宮幡靖

    宮幡政府委員 なごやかなこの委員会審議の中で申し上げるのもどうかと思いますが、政府といたしまして、輸出信用保劍法案を提案いたしまして、御審議をいただいておりますのは。風早さんの御指摘になりましたような、いわゆるこの制度運用して行くのではないかというような意図ではなくて、一般的貿易振興のため、特に輸出貿易の金繰りのために、さわやかに考えた法案であることをひとつ御了承いただきたいのであります。特に東南アジア地区につきます問題については、これは風早さんの方がよく御承知だと思いますが、日本貿易はただいまおほむね協定貿易であります。日英協定によりますスターリング地域、そのほかの、最近はパキスタンも、ビルマも、タイも、それぞれ占領下における日本に代位いたしまして、司令部がその協定貿易を結んでおりますが、その中にプラント輸出項目はないのであります。通産省としましては、もし皆さんの想像するような事態が起きておつたならば、そのことについての構想や考えを申し上げますことは、国会であります以上は、ばかりませんが、ただいま協定貿易の中にそのようなことは現われておらないので、将来は考えるかもしれないが、今のところはない、かようにはつきり申し上げたわけであります。
  13. 風早八十二

    風早委員 すべて法案といつたようなものは、それはどつちにでもころぶわけでありまして、今はそう考えておらないと言つても、実際にこれを運営するものが、そういう方向へ使つて行けば、そうなる。われわれは今までの吉田内閣の諸施策に一貫したものがあると思うのです。その点を非常に危険に感ずるわけでありまして、同様この輸出信用保劍法案もまた、日本がそれらの国々の一部に対してその軍備を特に拡張させる下請機関になつておる、しかもその場合において、結局は戰争の挑発という方向へ実際事態を導いて行く、それに日本がまた一役買う、こういう点がありありと予想されるではないかと考えるのでありまして、こういう点から私は今の御答弁には、全然満足はできないわけであります。  最後にもう一点だけお尋ねいたします。今度は円クレジットの問題であります。円クレジットが今具体的に日程に上つて来ておるようでありますが、東南アジアに対して日本円建貿易をする場合におきまして、日本の方からクレジットを提供する、そうして今のプラントにしても何にしてもでありますが、特定の重要物資向うへ送りつけるといたような問題が出ておるように考えるのでありますが、こういう点の事実関係、どういうふうな見通しになつておるか、これは一応まず政府の説明を承りたい。
  14. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この問題は、りくつで申すのではありませんが、私の省からお答えすべきほんとうの筋の問題じやないと思いますが、ちようど幸い昨日参議院の本会議におきまして、共産党の板野議員から、ただいま見返り資金運用修正、及びこの円クレジットの問題についての緊急質問がありました。私も大臣にかわつて出席いたしておりましたが、そのとき経済安定本部総務長官がかわりましてお答えをしておりました。その中に、承つておりますと、御指摘東南アジア地区に円の信用を供與する、こういうようなことについては考えている。——あるいは速記録をそのまま読まなければ、青木さんのお答えそのものにならぬと思いますか。これは御参照願えばけつこうであります。今、日韓貿易協定を、期限切れになるのでやつておる。その間において円レート設定ということを考えておる。そういうことは聞いておるが、その他のことは聞かないというような趣旨の御答弁でありましたので、これは恐縮でありますが、参議院の御答弁を参照していただきたい。現在のところ、通産省におきましては、それについての具体的な問題のお話合いを受けておりません。しかながらかりに青木長官の答えられました日韓円レート設定につきましても、日本は嚴然たる三百六十対一、朝鮮の円は、私の知つている範囲では四百五十円対一ドル、しかもそのやみドルは数千円しているということでありますので、かようなことを考えても、はたして実施価に移せるかどうか、通産省考え方を申せば、さように疑問に思つているわけであります。
  15. 風早八十二

    風早委員 この円クレジツトの問題は、円建を幾らにするかという問題として私は出しておるわけじやない。これはどこまでもやはり通商の問題として、つまり今アメリカ世界諸国に対してやつているその同じ式を、日本がまたそのアメリカ独占資本下請機関として同じようなことを東南アジアに向つてやる。両々相まつてそれぞれ東南アジアに対するプラント輸出、これを特に補償して行くというこの問題が見返り資金によつてなされるということが出ておるわけであります。これと同じような本質を持つた問題として出しておるわけであります。今あまり通産当局としてお答えがないようでありますから、これはその問題がみな同性質、しかもこれが一貫して吉田内閣経済また対外貿易政策に流れておるという点だけを指摘して、質問はこれで打切りたいと思います。
  16. 小金義照

    小金委員長代理 これにて保留質問を打切ります。  引続き本法案議題として討論に付します。討論は通告によりましてこれを許します。中村幸八君。
  17. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいま提案せられておりまする輸出信用保劍法案に対しまして、私は自由党を代表いたしまして、将来におけるかなり思い切つた修正を期待いたしまして、本案に賛成の意を表するものであります。  本来、輸出業者に対しまするこの程度安全感付與は、国家としては当然過ぎるほど当然の措置でありまして、われわれが今日置かれておる国家現実を思うがゆえに、あえて忍び難きを忍び、不十分ながらも納得せざるをえないのであります。  顧みまするに、今日までわれわれは、関係国商業道徳のいかんにかかりませず、また関係筋よりの示唆をもまたずして、自発的に対外関係調整に意を注ぎ、あわせて対内的には社会道徳、ひいては経済道義に反省と啓蒙とを加えて参つたのでありまして、輸出品取締法の嚴格なる実施を強行し、へーグ條約の忠実なる履行を果すために、不正競争防止法の一部を改正するなど、信を世界に問うて今日に至つたのであります。しかも列国はもとより、独占禁止法の最も強固と言われはるアメリカにおいてすら、輸出組合法、換言いたしますならば、広汎な貿易業保護法の制定せられている今日、わが国業者のみがひとり何らの国家補償もなく、また自主的な同業者結成による自己防衛の道もなく、きびしい国際商業争覇戰に臨まなければならないのであります。さらにその貿易業者——何らの保護も、同業的な結合をも許されておらない貿易業界業者の下積みになつて、黙々として働いている全国のおびただしさ中小企業者の姿を思いまするときに、われわれはうたた敗戦のきびしさを身にしみて感ずるのでありまするが、個人道義と同様に、正を踏んで行きまするならば、いづれの日にか関係大国にも、わが国の意のあるところが理解せられるであろうことを信じて疑わないのであります。本法律案は、相手国貿易業者に対する手厚い庇護に比較いたしますならば、かわいい子には旅をさせろとも言いたい体のものでありまして、英国等におけるこの種信用保劍損害填補範囲並びに種類には遠く及ばないものがあることを認めないわけには行かないのであります。しかしここに考えなければならないことは、こうして荏苒日をむなしく送るにおきましては、これが適用を受けんとする国内多数の業者の困惑は、はかり知れないものがあるのでありまして、かくては事の大局よりいたしまして、国家的な不利益を招来するのみで、その間何ら得るところがないのであります。願わくば、政府関係者はもとより、本法律案意図する大目的の貫徹のために、はたまた輸出業者企業安全感確保のためにも、国民一般もまた不断に本法律案実施の前途に対しまして、あたたかい好意ある支援を惜しまざるよう念願してやまない次第であります。  仄聞するところによりますれば、台湾仏領インド支那等に対する輸出契約を行う業者にありましては、本法案のよりよき出現を刮目しているやに聞くのでありますが、最近の中共国民政府の抗争、バオ・ダイ政権ホーチミン党軋轢等を見まするならば、その気持は当然として受取り得るような気がいたすのであります。ことに先般総司令部より正式発表のありました中共政権下地域との貿易許可は、これら地域との平和にして友好的なる経済交流を望む貿易業界にとりましては、明朗なる反響をまき起したのでありまして、加うるに本法律案成立は、いよいよもつて安心と好感とをもつて迎えられることは、必定であろうかと存ずるのであります。  最後に本法律案の施行にあたり、保險契約者の災害に対する第三條の諸項目に対する第三條の諸項目に対する該当適否に関しましては、常にこの種の審議会ないし監督官庁が、えてして惡意の解釈をくだしたり、あるいはまた事務的に遷延して、当然支拂わるべき再保險による保險金額を引延ばすといつたことのないように、あくまで親切と好意とをもつて処理せられるよう、念願いたしてやまないのであります。  以上をもつて私の賛成意見といたしたいと存じます。
  18. 小金義照

  19. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 日本社会党を代表いたしまして、簡單に賛成討論をいたします。  輸出貿易関係は、戰後は盲貿易でありましたが、多少正常化しつつありました。ところが現在の国際情勢は、政治的不安を伴いまして、それは貿易の面にもはなはだしく影響を與えておるような現実であります。貿易業者はこの現実、すなわちこの危險を冒して貿易に従事しなければならないという状態にあるのでありまして、現在の貿易業者の要望熾烈なるものを見ますと、われわれとしては、やはりその保護を考えなければならぬのであります。従いましてこの法案内容につきましては、愼補の対象のケースの問題その他いろいろ異論があると思いますが、これは今後の貿易正常化と相まちまして改正するということを要望いたしまして、現段階では、この内容でやむを得ないかと思うのであります。ただただいま風早委員からも補充質問がありましたが、本法案運用の問題であります。この点については、十分運用のよろしきを得るよう、当局者に強く要望をいたす次第であります。  かような理由におきまして、本法案に対して賛成討論をいたすものであります。
  20. 小金義照

    小金委員長代理 次は風早八十二君。
  21. 風早八十二

    風早委員 私は日本共産党を代表して、ただいま提案になりました輸出信用保險法案反対意見を表明するものであります。アメリカの対日援助資金の削除傾向に伴いまして、日本貿易振興のためには、輸出の増進が特別重要性を増して来たことは、十分に認められるのであります。しかしながら対外貿易はどこまでも対等、平等の取引関係のもとにおいてのみ、日本経済の再建に役立つのでありまして、現在のような不平等関係に盲従しておるという状態のもとでは、貿易をやればやるほど、ますます恐慌輸入が激しくなる。これに対抗しようとして飢餓輸出、ダンピング輸出というものが必然となるのであります。そのために輸入滯貨が激増しておる、またフロア・プライスを三割も五割も割つた飢餓輸出の結果といたしまして、中小企業や家内工業というものは、工賃を法外に押し下げられて、現にその多数が沒落させられておるのであります。ローガン・フレール貿易方式というものは、従来の軍政的な繁文縟礼の排除には、若干役立つたと言えるかもしれないのでありますが、しかし決して根本的な問題の困難の打開にはなつておりません。根本的に盲貿易、恐慌押しつけ輸入というものに対する断固たる自衛手段というものを放棄しておる現状におきましては、日本の業界の危險負担というものは、ますます増大しつつあるのであります。このときにあたりまして、政府がとにもかくにも輸出業者、生産者の輸出取引に伴う危險補償しようとする趣旨でこの法案を用意したということは、その趣旨においては同感であります。外同商社による工業権の侵害を手放しにしておきながら、日本の商社による外国商社の工業権侵害に対してのみ、嚴罰をもつて臨もうとする、あの先般私も質疑をいたし、またわが党が反対いたしました不正競争取締法案、ああいうものの提出をあえてした吉田内閣が、それから間もなく今日におきましてこの法案を出しておるということは、きわめてふしぎなことと考えるのであります。しかしながら実はこれはふしぎでも何でもなかつたのでありまして、よくこの法案を検討いたしますと、また今後の政府の運営を予想いたしますと、政府趣旨弁明とはまつたく逆に、これまた吉田内閣の外国保險会社に対しまして日本国民の税負担、これは先ほど宮幡政務次官は税負担ではないと言われましたが、やはり最終的には政府国民の税負担で、これを補償しなければならぬ。独立採算制とは言いながら、やはり相当の予算をこれに捻出しておるのであります。そういう次第で国民税金負担において行使せんとするものであつて、決して輸出向き生産業者の救済にはならない。従つて真の意味の輸出振興、日本経済の再建にはならないしろものだということを、発見するものであります。私は日本の対外通商については、どこまでも対等平等な取引関係を、一日も早く回復しなければならぬ、この立場から、また特に輸出業者、生産業者の個々の立場から、この法案に対する反対論旨を述べたいと思います。  反対理由の第一は、まず保護事業の範囲があまりに限定され過ぎておる。生産業者ないし輸出業者の実際上の保護効果は、これでは上らないという点であります。この法案は一般に輸出契約当事者の責に帰すべからざる事故のみを、補償対象にしておるのでありまして、しかも信用危險というものに対しては何ら規定しておりません。先般修正案が出て、その信用危險の一部分について、修正が試みられたのでありますが、それも結局立消えになつてしまつておるというようなことでありまして、結局ほんとうに輸出業者、特に生産業者が困つておる問題を解決するための法案にはなつておらない。現在の輸出業者及び生産業者が最も苦杯をなめておるのは、何といつて信用危險であるのであります。特に買手側の責に帰すベき信用上の危險であります。政府資料によりましても、戰後昨年六月までのキヤンセルは、輸出契約調査表を見ましても、件数においては千九百四十二件、金額において二千六百四十五万ドル、三百六十円で換算すれば、実に九十五億二千五百万円という莫大なるものになつております。キヤンセル総額の五○%以上というものは、買手側の責に帰すべきキャンセルになつておるのであります。戰前にはそうした取消不能信用状ないしは手形買取通知書の開設というものを積出しの條件とする慣習も存在しておつたのでありますけれども、今日ではまるで武装解除の奴隷的な貿易でありまして、そういうような慣習は、少くも日本の商社に対して、多くの場合存在しておらないのであります。業者は完全に泣寢入りをしておるという状態であることは、どなたも御承知通りであります。でありますから、輸出信用保險制度というものが、真に生産業者ないしは輸出業者の利益を保護することを趣旨とするものである限り、必ず信用上の危險に対する保障を與えることが絶対に必要でなければならぬと思います。しかるにこの法律がそういう規定をまつたく欠いておることは、この法案が何ら業者保護をはかることを目的としたものでないと断ぜられても、全然弁明の余地はなかろうと思います。またこの法案の特に重点を置いてありまする商品代金の移送の危險、この移送危險というものに対する補償としましても、その中に輸入国によります通価の切下げあるいは為替相場の切下げというものに基く損失の危險については、何ら明記しておらない。これは今日各国が不況にあえいで非常に激甚な競争をやつておるという現状から見ましても、はなはだ不備であると言わなければならぬと思います。  反対理由の第二としまして、この法案は明らかに国内生産業者を犠牲にして保險会社、ことに外国の保險会社に対する保護に傾いておるという点であります。これは第二條を見てもわかりますが、特に外国保險会社というものが、たとい日本に店舗を持つておらぬでも、ここに適用せられる契約の当事者たり得ることになつておるのでありまして、個々の保險契約当事者というものは、輸出業者保險会社と言いますけれども、この保險会社というのは、実際問題として問題になるのは、外国保險会社の場合であると考える。そうした場合にこの業者がとうていこれに対して太刀打ちができない。もしも保險会社と業者との間に問題が起つた場合には、全然太刀打ちができないという力関係の実情をわれわれは実際に考慮しておかなければならぬと思います。この法案保險事故というものを極度に限定しておる。また輸出業者に対して、保險会社の支拂う補填率はわずか八○%である。これは今まで日本の旧法によりましても九〇%であつたのが、八○%に切下げておる。そういうふうにして保險会社の安全というものを手厚く擁護しておきながら、この保險会社が不正行為をなした結果、輸出業者ないしは生産業者がこうむるべき損失に対しては、一般の民、商法の適用に讓つてつて、何ら政府として積極的に業者保護に任じようとしてはおらない。そういう規定は全然ないのであります。これは今申しましたような、非常に力の強い、また資金力の強い保險会社、特に外国保險会社と輸出業者ないしは生産業者との実際の力関係を考えてみますと、明らかに保險業者保護に、はなはだしく偏したものであると断ぜざるを得ないのであります。輸出信用保險審議会のような組織にいたしましても、従来この種の審議会委員会は必ずひもつきでありまして、自主性はまつたく欠除しております。結局外国独占資本のサゼスチヨンとか何とかによりまして、左右されるということを考えるならば、自主貿易促進の立場からすると、きわめて危險なものであるといわざるを得ないのであります。  反対理由の第三としまして、これは先ほど追加質問をいたした問題でありますが、この法案がかねて一貫して買弁的な性格を持つております吉田内閣の手によつて運用せられるという場合に、これがはなはだしく危險方向運用せられるおそれがあるということであります。現に台湾におきまして、治安が非常に不安定であるとはいいますが、実際はもはや当然中共の領土であり、中共の支配するところとならざるを得ない状況におきまして、そういうこともすでに知りながら、その一方、中華人民共和国にあたかもたてをつくような鉄條網であるとかいうような、戰略的な物資を送りつけまして、これに対して外国保險会社、といつても大体相場はきまつておりますが、特定の外国保險会社がこの契約を取結ぶ、それに対して政府がまた再保險する、こういう仕組みになつておる。そういう方面に使われる公算は、きわめて大であると考えるのであります。また先ほどの東南アジアに対するプラント輸出という計画が、すでに——これは日本の側からではない、日本政府の側からでもない、要するに一つのひもつきでそういう計画が出ておる。これに対してやはりこの法案が一役を買うという予想は、十分にだれが見てもつくわけであります。こういう危險な面をわれわれが考えるならば、少くも吉田現内閣の手で、この法案が出されるということは、きわめて危險であると考えざるを得ないのであります。  これを要するものに、この法案というものは、その提案の趣旨とまつたく逆でありまして、生産業者、転出業者保護にはならない。かえつて今後進出を予想せられる外国保險会社の保護にとどまるものではないか。これでは日本の対外通商の自主性の回復の立場に対しては、むしろ障害をなすものではないか。また特にこの法案運用によりまして、日本がみすみす特定国の戰争挑発者のお先棒をかつぐ。そういう役割を演ぜざるを得ない。これらの点を私は十分に検討いたしました結果、この法案に対しては徹頭徹尾反対せざるを得ない次第であります。
  22. 小金義照

    小金委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  引続き採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  23. 小金義照

    小金委員長代理 起立多数、よつて本案は可決いたしました。  この際、本案の委員会報告書作成の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 小金義照

    小金委員長代理 御異議なしと認めます。委員長に御一任をいただいたものと決します。  午前中はこの程度にとどめまして、午後は一時半より再開し、電気事業会社の米国対日援助見返資金等の借入金の担保に関する法律案の審査を進めることといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた