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1950-02-24 第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月二十四日(金曜日)     午後二時三分開議  出席委員    委員長代理理事 神田  博君    理事 有田 二郎君 理事 小金 義照君    理事 澁谷雄太郎君 理事 今澄  勇君    理事 有田 喜一君 理事 風早八十二君    理事 山手 滿男君       岩川 與助君    江田斗米吉君       門脇勝太郎君    小西 英雄君       關内 正一君    高木吉之助君       田中伊三次君    中村 幸八君       福田 篤泰君    福田  一君       前田 正男君    柳原 三郎君       伊藤 憲一君    河野 金昇君  出席国務大臣          通商産業大臣 池田 勇人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君           資源庁次長 始関 伊平君         経済安定事務官         (物価庁第三部         長)      川上 為治君  委員外出席者         通商産業事務官         (資源庁電力開         発部長)    豐島 嘉造君         経済安定事務官         (動力局次長) 中川 哲郎君         経済安定事務官 藤田  勇君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大右 主計君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  電気に関する件  中小企業に関する件     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。  前会に引続き私が委員長の職務を行います。  この際委員の異動についてお知らせいたします。昨二十三日平井義一君が委員を辞任せられ、新たに江田斗米吉君が委員になられました。  次に議案の付託についてお知らせいたします。昨二十三日内閣提出地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所支所設置に関し承認を求めるの件が本委員会に付託せられました。以上お知らせいたしておきます。  ただいまより電気に関する件を議題として調査を進めます。質疑を継続いたします。有田喜一君。
  3. 有田喜一

    有田(喜)委員 電気事業の再編成は、そのやり方いかんによりましては、電力需給関係一大変革を起しまして、料金地域差をますます多からしむる。またわが国産業及び国民日常生活に、重大なる影響を與えると考えるのであります。 従いましてこれが取扱いは、あくまで愼重にやらなければならないのでありますが、本問題を検討する場合に、私はまず第一に電気特性わが国電気事業特質ということを十分見きわめた上で、わが国電気事業のあり方をいかにすべきかという根本的問題から検討して行かなければならぬと考えるのであります。ところが電力編成といえば、最近日本発送電気を單に分割するというようなことを、最初からきめてかかつておられるような感じを受けるのであります。もちろん集中排除法の問題もありまするが、私はあくまで電力事業特質を基調に置いて、この問題を検討いたさなければならぬと思う。御承知通り電力発電送電配電が瞬時に行われまして、その間貯蔵ということはできないのであります。従つて電力経済需給の調節ということが根本である。これがためにはでき得る限り電力圏の広いことが必要であります。しかも電力圏拡大は、国家的の見地よりする一大送電幹線一元的運営が絶対的必要條件であると私は考えます。今日問題になつております電力料金のはなはだしき地域差という問題も、一大送電幹線一元的運営によつて緩和されるのでありまして、電力圏拡大は、電力産業本質的要請でありまして、またこれが世界的の趨勢でもあるのであります。しかるに現在提唱されておるところの政府案と称せられるものは、ブロック別発送配電一貫経営ということに、中心を置かれておるように思います。なるほど発送電力一貫経常ということはけつこうでありますが、それがブロック別になつておる関係上、縱の連絡はできましても、かんじんな横の連絡ができないのでありまして、これは電力経済本質に反すると私は思うのです。この点に対して政府の御見解をまず伺いたいのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 電気事業特性につきまして、有田君の御意見まことにごもつともな点が多々あるのでありますが、私といたしましては発送配電一元化しまして、そこに責任体制を確立も、有効にやつて行くのがいいと考えるのであります。しかもまた規模状態におきましても、やはりその地域地域によりまして、いろいろな事情もありますので、適正経営規模の形で行くのがいいと思つておるのであります。日本発送電をわける場合に今まで七分割案あるいは九分割案あるいは十分割案など、いろいろ案があるのでありますが、私は体制といたしまして、適正経営規模の上に発送配電一元化することが、電気事業の将来において最もいい方法だと考えて、今案をつくつておる次第であります。
  5. 有田喜一

    有田(喜)委員 通産大臣適正規模ということをおつしやいましたが、なるほど適正規模ということは非常にけうこうでありますが、しかしはたして電気事業の質から見て、どれが適正規模であるか、これが問題であると思います。もちろん配電事業のように直接需要家関係し、しかもサービスを提供する面におきましては、私はあまり大きくないということが必要であると思いますが、先ほども申しますように発送電、すなわち発電及び送電のうち、ことに送電というものは、電力経済本質から考えまして、電力源が広くなければならぬ。その意味におきましていわゆる横の連繋、これが私は絶対的な必要要件考えるのであります。この意味におきまして私は送電一元化ということは、これはいわゆる適正規模一つであると思う。ところが遺憾ながらブロック別分割案というものは、この見地から見まして私は適正を欠いておるのではないかと思うのであります。ことに送電ということは御承知通り建設に相当の努力はいりますが、一旦できた送電線を通じての電力の流れ方は、きわめて簡單に流れるのであります。従つて小さくすることが適正規模だということは言えないと思います。この点は配電部門送電という特質から言いまして、明確に区別すべきであると、私は考えますが、大臣はこれをもつてもなおブロックになることが適正規模とお考えになるのでしようか。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 有田君の御意見は、発電送電配電とわけてお考えになつているようでありますが、私はその御意見を汲みながら、全国をどういうふうなわけ方にするか。九ブロックにわけるにしましても、そのブロック地域的の標準で行くか。今までの発電送電配電つながりをどういうふうにするか。そのわけ方によりまして議論がわかれて来ると思うのであります。従いまして俗にたこの足とか、たこ上げとかいうことを言つておられますが、たとえば関東地方におきましては、猪苗代湖水源あるいは信濃川水源をこつちに持つて来ることにしますれば、お話の送電の問題は解決つくと考えておるのであります。送電線を九ブロックよりも別に会社をこしらえてやるというようなことは、先ほど申し上げましたような厖大な発送配電一元化するという趣旨から見まして、適当でないと考えておるのであります。
  7. 有田喜一

    有田(喜)委員 大臣発送配電一元化ということは非常にけつこうだと言われます。もちろん私もその点については賛成でありますが、しかし発送配電一元、すなわち縱の一貫よりももつと重要なことは、横の一貫、すなわち送電、これが電力経済根本である。ことにわが国のごとく水力を主とし、火力を縱としたこの特殊的国情に鑑みますと、どうしても送電系一貫ということは絶対的要件である。そこで問題は発送配電一貫ということと、横の一貫、これをいかに調和するかということが問題であります。もちろん全国的に発送配電一つにする、これは一つ理想形態であります。しかししばらくその問題は別といたしまして、しからば発送配電というものをブロック別一貫してやるのがいいか、送電という横の連繋を強く持つて、その前提において配電を適当にやつて行くのがいいか、これは大いに検討しなければならぬ問題であります。私が考えますのに、なるほど発送電というものと配電というものはわかれておる。これは不便だというが、しかしその不便さというものは大したことはない。これは御承知通り電気発送配電会社形態は違つておりましても、発送配電ともつながりがある。ところが横の送電連繋というものがぶち切られて行くと、これは電力系本質からいつてたいへんなことになる。なるほど七ブロック案とか、あるいは今回の松永案という九ブロック案にしましても、その間の調和に対しては相当苦心はされておるようであります。しかしそれはまだ不徹底であります。ことに今日、日本電力は不足しております。それをもつと強化して、一層電力の足らざるところを補う。もちろんこれは電源開発に待たなければなりませんが、現在ある電力をもなお有効に、一滴の水をもむだにしないようにして行くのが、今日電力の不足しておる日本におきましては急務中の急務である。それが今回の案は遺憾ながら逆になつておる。これを私は非常に遺憾に思うのですが、その点について政府はなお反省されないのか、その点をもう一回ただしたいと思います。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えしたところで盡きておると考えておるのでありますが、横の連絡ということを申されますけれども、私は九分割にいたしまして、いわゆるたこ上げのかつこうで行けば、送電についてはさしたる支障はないと考えておるのであります。一説には九分割にいたしますと、電気ロスが非常に多いという説をなすものもありますが、私はそう考えておりません。各方面の意見を聞きまして、電気ロスは非常に少いのではないかということになりましたので、やはり発送配電一元化した方がいいという結論に達したのであります。
  9. 有田喜一

    有田(喜)委員 大臣もおわかりくださつたと思いますが、たとえば渇水期におきまして、九州電力の不足したときにどうやるか。中国電力九州にまわし、その電力中国から送つて行く。いわゆるリレー式によつて互いに有無相通じて、全体の霊力の調和をはかる。ことに猪苗代湖のごときはわが国における最大貯水池でありまして、いわゆる宝庫であります。この猪苗代湖運用一つを見ましても、豊水期におきましては関西の水を関東に流す、猪苗代湖は水をため、発電送電を抑えて置く。そして涸水期になつて関西がとまつたときに、猪苗代湖の水を流して火力とセーブしながら、日本電力経済的に流す。そういうような作用をやるのは、すなわち電力系統拡大され、送電幹線がまつとうされてこそ、初めてできるのである。しかるに今回のブロック案は、それが潰されておる。なるほど猪苗代湖水源の方はいいかもしれない。しかし日本全体の電力経済としては、非常にそのためにロスが生ずる。そこで私はことに今日のような電力危機のときに、かような現象が生ずるような再編成は、よほど考えていただかなければならぬ。よほど大事なことである。ことに今日も遭遇しておるところの地域差電力料金の相違、かくのごときことは送電幹線というものが一つ握られて、互いに有無相通じておるならば、おのずからその間は緩和される。政府地域差のことに関して相当苦心されて、あるいは水力の豊富なところから、税金か何か知らぬが取上げて、そしてそれで料金を調節されようとしておる。そういうようなことをやらなくても、全国的な電力経済本質からして、送電幹線というものを一つに握つて有無通ずる態勢をとつておくならば、おのずから、片方から取上げて片方にやらなくても調和ができる。私は電力本質から見まして、送電幹線一つに握るということは絶対に必要だと思う。大臣の今の御答弁は、どうしても私に納得できないのです。ひとつ御検討願つて反省を願いたい、かように考えます。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 九ブロックにわけますと、今までの電気の流れがとまるというふうにお考えになりますが、決してとまるのではないのであります。ブロック間におきまして協定をつくりまして、従来通り過不足を調整することはできます。何もとまるのではございません。従いまして今九州にも三万か三万五千行つておりますが、それは依然として続きましよう。しかしそれは日本発送電の計算と責任においてやるのではなしに、九州地区と他の地区との協定によつて流れるようにするのであります。決して支障は起らぬと考えております。
  11. 有田喜一

    有田(喜)委員 大臣協定とおつしやいますが、なるほど協定であると思います。しかし契約というものは——これは年間契約あるいは月契約になるかもしれませんが、おのずから限度がある。電力は、最初に申しましたように、発電配電一貫としておる。だから毎日の過不足を生じて来る。普通に貯蔵ができるようなものならばあるいは契約によつてできる。その認識が根本である。火力根本にするところにおいては、なるほどある程度行きます。ところが水力、この大事な水力——日本資源がないのです。唯一の資源水力資源である。これをむだなく使うということが、電力経済根本であり、また日本産業の基盤をなす重要なものである。その特質をつかんで、そうして電力潮流の有無相通ずるところの組織にしないと、大臣考えておられるような簡單契約で行くことにはならない。これは双方の地域間でというようなものではできない。それをよく考えていただきたい。ことに先ほど言いましたように日本水力が主なので、電力につきまして最も大事なことは言うまでもなく電源開発、そうしてその起した電力をいかにむだなく合理的に流して行くかということです。それから料金の問題、これが私は中心問題だと思う。ところが今度の再編成は、まず料金の問題に困つてしまう。しかも先ほど言うように、せつかく起つたところの電力にむだが出て来る。しかも電源開発という点から見ましても、ブロックごとにわかれてしまうと、なかなかりつぱな電源開発できない。ことに日本の今日までの電源開発は中くらいなもので、経済的にいいものばかり開発されて、今残つておる電源というものは、よほど大きな電源である。一つ会社とか、一ブロックではできないというのがあります。たとえば只見川がまだ残つておる。これはどうしても国家的見地から考えなければならぬ。これは決してブロック会社にやらすような小さなものではない。この方式はどういう方式をとられてもかまわぬが、とにかくこういう発電というものを興しても、それが送電線さえしつかり握つておけば、まるがかえができる。実際の発電運用というものは、送電線を握つておればできる。そのことをやらなければ、ほんとうの電力の再編成にはならない。  私は電気の問題について、もつともつと納得の行くまで質問をしたいのでありますが、時間の制限がありますのでまず根本問題だけ質問して、あとは留保したいと思いますが、今申した点に対して、大臣は十分御検討あらんことを特に切望します
  12. 有田二郎

  13. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 私は昨冬行われました値上げの問題について、大臣にお伺いをいたしたいと思います。これは十二月九日今澄委員より動議がありまして、この電気料値上げわが国産業、それから地域的に国民生活にも及ぼすところが大であるということは通産経済の全委員総意でありまして、これを延期してもらいたい、もう一つはこういう重大なことを通産委員会にかけてもらいたいという動議が、満場一致で可決されたのに、これに対して何らのあいさつなしにこの値上げ措置が行われたのです。そうしてそのことの結果、われわれが八日、九日の連合審査会において言つたことが、一箇月足らずのうちに現実になつて参つたわけです。第一番に、政府は三割二分二厘の値上げ言つておりましたが、昨日福田委員からの発言がありましたように、日発でも大体倍程度電気收入があり、関東配電だけでとりましても、従来一箇月十億ないし十一億の電気料收入が二十億になつた。しかもこれは値上げのために納められない人があるのにそうなので、実際に全部をとれば三十億と称されております。そういうことをすると、実際上は二十割ないし三十割の値上げということになるのでありますが、こういうことの結果、われわれが指摘したように第一番に労働者のアパートや寮、あるいは学生の寮などにおきましては、従来七十円程度のものが百五十円になり、ひどいところでは百円のところが四百円、東大追分寮、エビ川寮などに至つては、従来一人八十円程度のものが、最もまじめに帰省などをしないで寮にいたものは九百円というふうに、十倍以上の値上げになつておるわけであります。これが中小企業に及ぼす影響は、たとえば共同印刷などにおきましては電気割当量減つた結果、勢い労働する時間を短縮したが、それでは労働者が食べて行けないので、電気をつけないところで労働者が印刷の仕事に従事しておる。こういうことの結果が目を惡くしたり、その他健康の障害が起つておる。また病院などでは——これは阪大の病院だそうでありますが、患者手術をするのに懐中電燈手術をしているということも起つております。昨日私どものところへ兵庫県の療養所から請願書が参つておりますが、ここでも療養所電気代が三倍に値上つた結果、患者生活にいろいろと響いて来ておるわけであります。たとえば消燈時間が早くなるとか、あるいは療養所予算に対して電気代がそれだけ食い込む、こういうことから病人に対するる生活が一般的にひどくなつて来たこれは東京の清瀬、中野等療養所においても同様でありまして、中野療養所のごときは、四倍程度に値が上つたと言われております。また研究機関でありますが、たとえば東大理工学研究所では、従来の実績では大体七万四千キロワット・アワー割当があつたのに対して、今度の新しい割当は三万五千キロワット・アワー従つてこの料金は、従来は十二万円であつたものが六十一万ないし六十二万というふうに実に五倍に上つておる。ところがここの研究所予算というものは五十五万しかない。だから電気代を拂つてしまえばなくなるのではなくて、電気代支拂うのに研究所予算が足りない、こういうことの結果、ここにおります風早委員が直接東大懇談会に呼ばれて行つて聞いたことであるし、また私自身が、共産党の議員団が主催して、会館で電力問題の懇談会をやつたときに、東大の職員が来て報告したことでありますが、通産省行つたところが、結局いろいろ問題がありますが、私のところではどうにもならない。だからESSへ行つてくれ、こういうことを言われたわけです。そこで行きますと、向うでは、そんな五倍も上るなどということはとても信じられない。それで領収書その他を見せた結果、それは信ずる、しかし料金が公定であるならば、これはむしろ研究所予算をふやしてもらいなさい。しかし研究所予算日本政府がふやしたからと言つても、われわれはこれに同意しないだろうということを言つたということを報告しています。こういうことになりますと、まつたく電気代のために日本研究所はつぶれてしまう。これは仁科博士のやつておる科学研究所においても同様な事態が起つています。もう一つ農民についてもやはり三倍から十倍くらい値上げがありまして、このことのために灌漑作業などはできないだろうということが言われております。これは大体労働者農民中小企業者に対する電気代影響でありますが、それならば割当でもつて調整をすると言われた大企業においてはどうか。ところがこれは川崎の昭和電工日本鋼管川崎製鉄所及び東芝の堀川工場などにおいてもおのおの電気代が下りまして、割当がずつと減つた結果、たとえば従来昭和電工では硫安の電気代トン当り一万七千二百円のものが、今度割当減つた結果超過料金支拂うので三万五千円程度に上つています。こういうことの結果、どうしても生産を縮小しなければならぬ。またこのことはすべてに通ずるのでありまして、賃金を下げるか、首を切るか、とにかく生産設備を縮小せざるを得ないような状態に追い込まれておる。これを最も端的に現わしておるのは私鉄国鉄であります。御承知のように私鉄では、もう値上げ運動が起つておる。それから国電では減車をやつています。そのほかたとえばパン屋パーマネント屋さん、あらゆる面に及び、問題はそれだけで終らないで、すべての国民生活影響して来ている。その極端なのは国鉄私鉄に及んでおるわけであります。こういうふうにしてすべての国民生活を破壊し、及び産業を混乱せしめているのでありますが、こういうことに対して少くとも国会の全員が一致し、国民総意が一致して、これを延期してもらいたい、こういうふうに国会に諮つてもらいたいということを無視してやつた結果、わずかのうちにこういうふうになつたということ、これに対して第一番に国会を無視した態度について、大臣はどう考えるか。  第二番には、三割二分二厘というものは、実際には倍にも三倍にもなる。関東でもそうですから、四国や九州はもちろんそうです。これは各委員やあなた方のお手元に行つておると思いますが、関西中国九州、これはすべて県知事、事業家労働組合農民組合、つまり国民のあらゆる層がこぞつて、この値上げ措置に反対しております。こういうことについて、この混乱について応急の措置をどういうふうに講ぜられるか。この二点をまずお伺いしたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年十二月の本委員会通産省あるいは安本等の間におきましての料金改訂についての了解事項は、私存じておりませんので、後刻調査してからお答えいたしまするが、あるいは宮幡政務次官がおられますので、宮幡政務次官からお答え願つてもいいと思います。  なお第二の問題の料金改訂産業に及ぼした非常な影響について、今後どうするかという問題でありますが、これは御承知通り、今年の冬が非常に暖冬でございまして、電気供給量その他が非常に予定よりも変化を来しました結果に基く部分が、相当多いと考えておるのであります。従いまして通商産業省といたしましては、この電気の非常に出たこと、また今後豊水期に向います等のことを考えまして、適当な措置を考慮いたしておるのであります。問題の大学の配電あるいは私鉄等につきましても、ただいま適当な措置をとるべく検討を加えておる次第でございます。
  15. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 ただいま動議について御存じないということでありますが、これは安本通産委員会議事録にも載つておりますし、かたがた当日は閣議が開かれておる際で、ここから小金委員が持つてつておるはずであります。従つて当時大蔵大臣として——今でもそうですが、出席されておつた池田通産大臣御存じないということは、はなはだ不見識ではないかと思うのであります。これはよくお調べになつていただきたい。もう一つは、いろいろ豊水期に向つて云々ということでありますが、今年の冬は大体豊水期と同様に水力は豊富なのであります。しかも少しくらいよけいだというなら別問題ですが、三割二分二厘が関東配電收入——これはきのう福田委員言つたことによると、今までの倍の收入があつたという、これは実に十割の値上げであります。これは豊水期にあたり云々というようなものではないのであります。そこで私はお伺いしたいのですが、こういうふうにして得た收益は、わが国外国債の七割を占めておると言われる電力債の償還に充てられるのではないかということをお伺いしたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 委員会通産省のことは、先ほどお答えした通りであります。なお今後の電力料の問題は、今年の暖冬によります水力の増加並びに今後豊水期に向つて参りますこの二つの要件を頭において、適正なる措置を講じたいと考えております。なお電力料金の増收は、大体一箇月で二十億あまりと聞いておるのでありますが、これが措置につきましてはどうするかということは、ただいま検討いたしておるのであります。しこうしてこの料金を外債の償還に充てるというようなことは問題になりません。これは外債は政府の債務であります。しこうしてこの料金発送電あるいは配電会社の利益であるのであります。直接の関連はございません。
  17. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 大体今私が申し述べましたように、時間がないので省略したのですが、とにかくこれは全国例外なしに大企業を含めてすべての国民に対して重大な影響があるということ、またかつて連合審査会の席上においても、とにかく値上げをする理由が見当らないので、そこで物価庁第三部長の川上政府委員が説明されておるのであります。いろいろ理由を述べて最後のところで、十月の末になつて司令部の方から電力の供給を増強するために従来やつておりましたようなやうな方では、なかなか火力の方も増強できないし、この際根本的に改めるべきであるというような考え方から、お手元に差上げました新しい料金についての試案が示されて参つたのであります、云云。と言つておるのであります。私は政府としては今日の状態値上げをする何らの根拠がないのであるが、こういうふうに試案が出されて来たので、それだけで値上げをしたのではないかと考えるのでありますが、そういうことはないのでありましようか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 わが国電気事業関係会社の経理の状況をごらんになれば、発送電は無配を続け、しかも株価は非常に低落いたしまして、新規に発電計画をするのに、なかなか支障を来しておるのであります。配電会社におきましても、経理状況は、先般の値上げ以前の状態では、非常に危惧の念を起さざるを得ない経理状況であります。しこうして発送並びに配電会社を適正な経営規模の上に立たすためには、やむを得ずあの料金の引上げをいたしたのであります。そういう事情でございまして、料金引上げの理論的根拠がないのじやないかという説には、私はくみし得ないと考えます。
  19. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 それならば第一今度の値上げ措置につきましては、ことに地域的な相違をつけるということに対しては、日発の当事者自体が反対しておるのです。分断に対しても反対です。日発当事者自体が反対しておるし、われわれがここで明らかにしたように、とにかく日発から配電会社に対する卸売もきめなければ、原価もきめないで、今度の措置はやられた、そういうことと今大臣のおつしやることとは食言すると思うのですが、どうですか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 日発の当事者が反対しようが、電力国策の上から申しまして、地域差を設けた方がいいという考えのもとにやつたのであります。決して私は食言しないと考えております。
  21. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 私は分断のことについては、のちほど申し上げようと思つたのですが、これは今の値上げ措置と関連がありますから申し上げます。この間の値上げは分断を前提として行うのじやないかということは、民主自由党を初め共産党に至るまでのすべての委員が追究したのに対して、これは言を左右にして各大臣も政務次官も答えられなかつた。ところが西村安本政務次官は、私が質問したのに対して、こう答えております。現在のところは分割するという意思はないのでございますけれども、実情は皆様方の御承知通り関係が、春先から進んで参つておりますので、またそういう情勢に向うことはあり得ると御了承おき願いたいのであります。政府としては努めて分割することには同意いたさない考えを持つております。こういうふうに西村政務次官が、少くとも安本通産委員会連合審査会に出て来て、政府を代表して答弁をされておる。ところがもちろん分断に賛成したくはないのでありますから、従つて地域的な相違をつけて値上げをする意思は、西村政務次官の言からいえば、政府としてもなかつたはずである。いわんや分断についても同断です。ところがきよう池田通産大臣の話を聞きますと、政府としては分断したくないのだということは全然どつかへ行つてしまつて、分断を前提として適正ということが問題になつております。あるいは稻垣前通産大臣においてもしかりである。松永案なども、九分割というような分断を前提としてやられておる。一体政府としては一貫した方針であるのかないのか。きのうだつたか今澄委員が言われましたように、一体安本の政務次官と各大臣の間には意見の相違があつて政府としては一貫した方針がないのかどうか、こういうことをお伺いしたい。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 先般の料金改訂の問題は、直接分断の問題と関係はないと御了承願います。しこうして西村政府委員が、政府は分断したくないのだという気持を言われたことは、私は存じません。ただいま通産大臣といたしましては、私は集中排除の問題、あるいは将来の電気事業のことから考えまして、九分割案を支持し、また閣議決定をいたした次第でございます。
  23. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 ただいま、西村政務次官が言われたことは知りませんと言つておるのですが、言われたことを知らないのは御無理ないと思います。同席しておられなかつたのだから……。だが政府の方針としては、分断したくないのだという方針を持つておつたのか。そして現に今もなお持つているのか。分断したくないという考えを持つているのだが、適正になつたり九分割なつたりするのか。その点政府としてどうであるかということをお伺いしたい。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 過去のことは知りませんが、現在の状態では分断する考えでおります。
  25. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 開いた口がふさがらないのですが、少くとも政府ともあろうものが、この間と言つてもまだ二箇月しか経つていないのに、今では全然国会を無視して、分割する考えを持つているとか何とか言つておるが、われわれはただの人間じやない、淡呵を切るわけじやないけれども、国民を代表して、しかも全会一致できめて、その場でもつて西村政務次官が発言されたのです。今日通産大臣はかわつたといえども、二箇月そこらしかたつていないのに、前にはどうだか知らないが、今日は分割案を持つておりますなどといつたようなことは、政府として不見識もはなはだしいと思うのですが、大臣の見解はどうですか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 状況の変化でございまして、不見識ではございません。私は事務の引継ぎのときに、稻垣通産大臣から、私が先般決定を受けました分割案と大体同様程度分割案を、稻垣通産大臣の名において、関係方面へ持つてつておられるのであります。私はその引継ぎを受けまして、しかしてそれを検討した上で、それとは少しは違いますが、やはり分断案を閣議で決定をしたのであります。政府は何も食言したのでもありませんし、国会を無視したのでもありません。しかしこの問題は、政府がそういう考えを持つて折衝しておるということだけであつて、分断がいいか悪いかということは、皆様方の御判断に委ねる考えでおります。
  27. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 大臣は、分断問題はいいとも悪いとも考えておらないが、皆様方の御意思によつて決定するということを言われましたが、しかしこれについては全員一致で反対であります。これは動議が可決されているのであります。こういうことを知らないで、今日電力問題についてここへ来て言われるということに対しては、非常に不可解でありますが、念のために、われわれの意思によつて決定されるかどうか、もう一度お伺いしたい。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は、昨日も質問に出ましたが、集中排除法の適用ができないかという点が質問にあつたのでありますが、私は事非常に重大な問題でありますので、集中排除法の適用によつてやるよりも、国会の議決を経ます法律によつてやつた方がいいと考えまして、今分断案を自分のところで計画し、そして関係方面と折衝に入つておるのであります。しかして法律案として皆様方に御審議願うのでありますから、これを生かすなり、殺すなり、あなた方の御勝手であると私は考えております。
  29. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 小西英雄君。
  30. 小西英雄

    ○小西(英)委員 簡單に二、三政府にお尋ねいたします。豊富低廉な電気を配給するという建前から日発が生れ、今日までに至つておりますが、経過から申しますと、決して豊富低廉な電気がまわつたようにも考えられず、また開発の面も、遅々として進まなかつたという点等から見まして、私は現在政府考えている民有民営ということの原則については、大体賛意を表するものであります。しかしこの前に電力地域差を設けたために、中小企業あるいは電気を原料とする各工場が相当悪い状態に追い詰められているのが現状であります。政府においては、九分割をする意思をきめられたようでありますが、これを早急にやつた場合には、特定の化学産業とか、あえいでいる中小企業は相当悪い状態になるので、現在の地域差の均衡は具体的にどういうふうにするか、また時期はいつであるかということをお伺いいたします。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 御案内の通り、ただいまは電力が不足であるのであります。九分割案考えますにも、発送配電一元化しまして、これにどんどん金が入つて来るような態勢を整えなければならぬというのが、私の一つのねらいであるのであります。この分割をいつやるかという問題は、関係方面との折衝が、先般持つて行つただけでまだ始まつておりませんので、この折衝の時間によつてつて来ると思うのであります。しこうして九分割をいたしました場合の地域差の問題につきましては、一時的に激変が起つて産業に悪影響を及ぼさないような、あらゆる措置を講じたいと考えております。
  32. 小西英雄

    ○小西(英)委員 政府の九分割案電気事業編成審議会の九分割案は、その内容においても相当意見を異にしているようでありますが、関係当局においては、十分割というふうな意見も出たようであります。現在関係方面には電気事業に対する相当なエキスパートが来ておられますが、意見の食い違うのは実に電力のみを考えているからであるので、日本産業再建の基礎をなす電気事業が、電気事業者の一方的な小さい視野において再編成されるようなことがある場合には、政府日本産業全体の立場から、政治的折衝をされるようお願いするものであります。  さらに、前国会通産委員会においても、この再編成のために電源開発が遅れるようなことがないようにと忠告をしておきましたが、電源開発に対する見返り資金の融資の問題であります。これは昨年十一月十八億円、十二月末に四十三億円、合計六十一億円であると聞いておるのでありますが、これでは予定の百十一億円に対してなお五十億円不足であります。しかもこの五十億円が圧縮されて三十九億円になつておる。この三十九億円は遅くとも今月一ぱい、二月末日までに融資されなければ、二十四年度の計画が実施できないと思うのであります。この見返資金の援助が順次見送りになつて行く場合には、電源開発が非常に遅れるので、その点政府の御答弁を願いたいと思います。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 電力編成の問題は、單に電力事業者本位のみには考えておりません。電力産業の基本をなすものでございますから、日本産業に最も役立つようにやつて行きたいと考えておるのであります。  次に電力開発の問題でございまするが、これは先ほど触れましたように、再分割して行つて発送配電一元化することが、開発にも好影響を及ぼすものであると考えているのであります。従いまして、分割によりまして開発事業が遅れるというようなことは、絶対にいたさないつもりであります。しこうしてただいま見返り資金から電力開発にどれだけ出ているかと申しますと、私の記憶では六十四億と思います。なお今年度におきまして三十六億円を出すべく努力いたしておりまするが、これは今のところ向うの了解を得るのが、なかなか困難ではないかと思うのであります。それはどういうところから来るかと申しますと、電産の問題もございます。配電会社あるいは発送電の経理状況その他の問題もありますので、私としてはできるだけこの三十六億円を今年度内に出すべく努力いたしておりますが、いろいろな支障が起つているということを遺憾ながら申し上げざるを得ないのであります。しかしいずれにいたしましても、計画通り今年度は百億円、来年度は少くとも百五十億円が電力開発に見返り資金から出るように努力を続けて行きたいと考えている次第であります。なお見返り資金ばかりではないのでありまして、地方債を出しまして、県によります電力事業もやつて行きたい。御承知通り、大分県、宮崎県におきましては、県によつてつております。また最近も県によつて発電計画が進められておりますが、私は地方債のわくをふやして県営の発電事業もどしどしやつて行きたいと考えている次第であります。
  34. 小西英雄

    ○小西(英)委員 もうあと一箇月ばかりで本年度が終りますのに、今なお三十四億が出せるようになつてつて出せない。それには電産の問題あるいは給與べースの問題がからんでおるようでありますが、そういう問題は一日も早く善処していただきまして、われわれ電源開発日本のほんとうの国を立てるもとをなすという考えを持つているので、水力発電並びに火力発電の計画ができたら、その資金を出していただくように政府に要望いたしておきます。  もう一つ。昨日宮幡政務次官は、次回は法律をつくつてでも昔の状態にもどすが、特に四国の問題に言及いたしまして、住友のみはそういう状態にしないと言われました。私はこれは住友の状況を知らざるもはなはだしいと思います。現在日発が四国に持つている電力は十五万キロでありますが、このうち七万五千キロは化学肥料のため、あるいはアルミの製造のため当時住友がつくつたものであります。現在自家用として二万二千キロを持つており、あと三万キロ内外は現在の日発から買つておるのであります。電燈の電力は多少ドロップがありましても光を放つのでありますが、化学工場とかあるいはアルミナ工場においては、そういう質の悪い電力配電会社からもらつた場合は、作業がなかなか困難なので、産業を生かすという考え方から行きますならば、この三万キロは過去において使つておつた量でありますから、これを切り離すも離さぬも何ら関係がないので、全体を返すと四国四百万の国民のためにも非常に悪影響があると思いますが、これはどうかほかの例にならつて返してもらいたいということであります。これは決して住友ばかりではありません、日本の基礎産業を生かすかどうかという岐路に立つておるのであります。もう一つは民有民営——独占禁止法あるいは集排法によつて分断されるが、四国とかあるいは北海道が政府の趣旨に反して、これが全然送電線が本州とつながつてない。まことに孤立しておるところに発送配電を一社にいたしますならば、ちようど日発配電発送も全部一緒にやつたような状態が起り、四国あるいは北海道は独占企業になるおそれをなしとしないので、こういう観点から申しますならば、四国を一本にするということは、前よりさらにひどい独占企業状態になることは必至であります。その点ひとつ政府において御答弁願いたいのであります。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 自家発電の問題、ことに分割後従来日発ができ上つたときに強制的に取上げられたものをどういうふうな形で、いつ返すかという問題は相当に重要な問題であるのであります。従いまして私は分割後やはり個々の場合を検討いたしまして、適正な措置をとつて行くよりほかにはないのではないか。ただこの分割に際しまして、でき得れば返したいという気持はありますので、特定の発電所を分割と同時に返す案をこしらえておるのであります。分割後におきまして従来県営でやつておつた発電所をどういうふうにするかという問題は、次の問題として検討して行きたいと考えておるのであります。  次に四国とか北海道は送電線がないために、分割後は今以上の独占になるのではないかというお考えでありますが、私は今以上に独占というのはどうかと思いますが、今後四国におきます発電を四国の発送配電会社のみでやつて行くか、あるいは先ほどお話いたしましたように、私の耳に入つておる那賀川電力発電というものを県でやつた場合に、この間がどうなるかということは、今後の問題として検討して行くべきではないかと思います。御承知通り関東におきましても、東京電燈ばかりでなしに、各電車会社配電をやつたところもあるのであります。また地区によりましては県単位のところもあるのであります。私は分割後の日本の情勢に応じまして、極力電気をたくさんにするという線に沿つて考えて行くべき問題ではないかと思つております。
  36. 小西英雄

    ○小西(英)委員 私たちがこれを全体の問題としてどうしてもこうやらねばならぬというように決定した場合に、四国が一つになるかどうかという問題もあとに残されると思うのでありますが、化学肥料あるいは現在動いておる工場が、他の会社と自由競争に入つても、大体やつて行ける程度の処置を——これは四国のみではありません。北海道あるいは中国九州等においても何かプール制を設けるとか、あるいは補給金を考えるとか、開発できる日まで何とか政府において処置せられんことを希望して、私の質問を終ります。
  37. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 これにて電気に関する件は一まず打切ります。     —————————————
  38. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 次に中小企業に関する件を議題として調査を行います。門脇勝太郎君。
  39. 門脇勝太郎

    ○門脇委員 この機会に現下の重要問題であります中小企業対策について、池田通商産業大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。  現下いわゆる中小企業の段階に属しております商工業者が、極端な窮迫状態に陥つておることは、あらゆる角度からすでに論議し盡されておりまして。ことに最近では三月危機説も叫ばれておるような状態であります。すなわち二月から三月にわたつて行われます申告所得税の確定更正決定にからんで、税額千五、六百億円が政府によつて吸い上げられる、これに対して政府は見返り資金の放出あるいは復金債の償還その他によつて資金の還元をはかつて、相当に緩和すると言つておられるのでありますが、現在のごとく逼迫しておる金融情勢において、この際若干でもの資金が引上げを見るときには、三月危機の襲来もまた多分に現実化するおそれがあるのであります。先般もこの三月危機説の派生的事件として蜷川中小企業庁長官の進退問題を惹起したのでありますが、新聞紙の報ずるところによりますと、同長官はこれに端を発して、将来本省と中小企業庁との摩擦することを憂慮して、辞職することにきまつたと聞いておるのであります。もしこれが事実とすれば、中小企業問題にからまる一つの悲劇的なエピソートであると私は思うのであります。中小企業庁の調査によりますと、全国で九十六万七千の総企業体のうち九割九分が中小企業体であり、しかもそのうちの八割が従業員四人以下のいわゆる零細企業体であるということでありまして、これらが最近くびすを接して倒産をして行く。これによつて現在までに約五十万人近い失業者を出しておるということであります。よつて今日これを救済いたしますことは、單なる経済問題の收拾策にあらずして、大きな社会問題である。こういう段階に達しておるのであります。もしこれを放置するときは、ゆゆしき政治問題さえも惹起するの懸念が多分にあるのであります。どうか大臣におかれましても、こういつた点をとくと御考慮を願いたいのであります。中小企業者の困窮の現状を仔細に検討いたしますと、その原因は、第一には金融の逼迫であり、第二には徴税課税の重圧であり、第三には輸出の不振であり、第四には原料高の製品安、こういつたような順序になると考えるのであります。  そこでまず第一にお伺いしたいことは、金融問題の打開策であります。中小企業者が金融問題の対象として一番期待しておりますのは、商工中央金庫の拡充であります。政府は従来勧業銀行あるいは興業銀行等を、この中小企業者に対する金融の対象としてお考えになつておるようでありますが、これらの銀行は真に中小企業者の現状を理解しておらない点があるかのように、見受けられるところが多々あるのであります。中小企業者を親切に育成して行くというような熱意に欠けておる。そこで中小企業者がその対象としておりますところの唯一の機関は、この商工中金であるのでありますが、その商工中金が現在におきましては、わずかに出資金が一億五千万円、預金の総額が十九億余万円、貸出が二十八億余万円といつたような、現在としましては比較的小規模状態であるのであります。政府におかれましてはこれを画期的に飛躍的に拡充されるお考えがあるかどうか。また現在の商工中金の営業制度は、中小企業者個々に対して直接に取引ができ得ないようになつておる。すなわち組合を通じなければ取引ができ得ないようになつておるのであります。そこで商工中金が個々の中小企業者に対しても、直接取引し得るように制度を改正される御意向があるかどうか、まずこの点について政府の御意向をお伺いしたいのであります。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 中小企業の育成、また消極的に申しますと、非常に金詰りで苦慮せられておるということは、私も十分承知いたしておるのであります。従いまして昨年夏以来いろいろ手を盡して行つておるのでありますが、何と申しましてもインフレを急激にさしとめました関係上、しわが主として中小企業に向うということはやむを得ないのであります。従いまして、これからいろいろな御質問があると思いますが、まず金融面につきまして、最近におきましても銀行その他で足りない場合におきましては、中小企業に最も関係の深い無盡とか、あるいは市街地信用組合等、いわゆる共同企業体の方に極力金をまわすようにいたしておるのであります。昨日も八億五千万円ばかり出しましたが、合計で預金部資金が十六、七億、この一月に出たような次第であります。また別に御案内の日本銀行の別わく融資も、去年の八月ごろまでは十二億であつたのを、徐々にふやしまして、ただいまでは三十七億円になつておるのであります。二十五億円、半年ばかりの間に中小企業の別わく融資もふやしておるのであります。その他無盡、市街地信用組合の所有国債につきましても、日本銀行の操作をいたしておりますし、あらゆる手を盡して行つております。なお今後の問題につきまして、商工中金を十分活用するのがいいのではないかという御意見、まことにごもつともでございまして、ただいまのところ商工中金は一億五千万円の出資でありますが、できるだけ早い機会にこれを五億円にいたしまして、そうしてまた見返り資金から五億円の出資をいたし、十億円の資本金をもつて二百億円の商工債券の発行をなし、これを商工関係の方に持つて行きたいと考えておる次第であります。しかしこれは商工中央金庫法案の改正ができまして、そうして増資の手続をし、それからのことでありますので、早急に、この二三箇月のうちというわけに参りません。従いまして私はできるだけ早い機会に、日本銀行からの別わく融資をふやしますとか、あるいは預金部の金を使いますとか、あるいはその他の方法によつて商工業者に金の流れるようなことを今計画いたしておるのであります。御承知通産省中小企業庁、並びに各府県の中小企業の振興課におきまして、真に中小企業の長期資金として、どれだけいるかという調査をいたしたことは御承知通りでありますが、あのうち七十億円と推定せられておりますが、早急に要するもの四十億円という計算が出ておるのであります。私はこの四十億円の内訳を見まして、これを市中銀行を通じてできるだけ早くこれに対して出すように、すなわちわれわれ通産省並びに各府県庁の調査の実績を生かすように今努力を傾注いたしておる次第であります。なお商工中金が債券を発行した場合において、従来の市街地信用組合、あるいは産業組合のかわりました信用協同組合と、農林中金との関係をどういうようにして行くかということは、これは将来の中小商工金融の育成に、最も重要な点であるのであります。従いまして、この点につきましては、幸いに大蔵省と兼ねております機会に、できるだけ簡便な方法を講ずると同時に、また許しますれば、お話の商工中金から直接に各業者に金が出し得るような制度にしてみたいと自分は考えております。その問題につきまして、信用協同組合等と商工中金とのつながりは、割合に楽に行くのでありますが、大体これが組合金融ということを主眼にいたしております関係上、商工中金から組合には出ますけれども、組合員の個々に出すということが、法制の建前からどうかというのが、かなり問題になると思うのであります。しかしその金融にいろいろな関所を設けるということは、せつかくの金融機関というものが動きませんので、実情に沿いまして、私の理想といたしましては、信用協同組合と商工中金とのつながりをまずつけ、しかる後に個々の業者にも行くような方法を考えたいと、今努力をいたしておる次第であります。
  41. 門脇勝太郎

    ○門脇委員 いろいろ御親切にお考えになつていることは感謝にたえませんが、昨年十一月に発表されました日銀のマーケット・オペレーションによりまして、地方銀行を通じまして長期設備資金を中小企業者に貸出すというこの制度、並びに見返り資金を四半期に三億円ずつ出資されまして、これに地方銀行が同額出資をして、長期設備資金を中小企業者に貸出すというこの二つの方法ともに、末端の地方銀行にさらに熱意がないために、現実においてこの貸出しというものはほとんど行われておらぬ。ことに中小企業庁が音頭をとつて全国の企業体の審査をされたのでありまして、その審査に通つたら大体借金ができるものと地方筋では考えて非常な希望をつないでおつたにもかかわらず、その後この貸出し方法によるところの実行がきわめて蓼々たるものでありまして、実行されておらぬ。そこでいかに中央においていい考えをお出しになつても、結局それは一つのデスク・プランであつて、実行に縁が遠い。そこで私の考えでありますが、特に地方銀行のうちでも、中小企業に向つて貸し出すべき何かそこに中央から責任を持つた指令を出される前に、それについて損益がかかつた場合においては、ある程度中央において負担するといつたような積極的な指令を出されるにあらざれば、結局これが絵に描いた餅に終るおそれが多分にある。この点につきまして、どういうぐあいにお考えになつておるのか、お伺いいたします。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 日銀のマーケット・オペレーションによりまして、中小企業の長期資金というお話は、多分別わく融資のことと想像するのでありますが、別わく融資につきましては、先ほど申し上げましたように、昨年の八月ごろから二十五億円ほど今純増で出しております。しこうして昨年十二月に声明をいたしました、見返り資金から四半期三億円というものの活用でございますが、何分にも新たな制度を設けてやりますときには、スタートが遅れがちなのであります。そこでこの金の状況を調べて見ますと一月の十五、六日ごろは全国で八百五十万円程度でございました。二、三日前に私聞きましたところ七千万円という報告を受けたと思うのであります。何がゆえにこんなに遅れるのかと申しますと、見返り資金が出ます場合には、担保を供與いたしております。日本は御承知通り、担保制度の手続がかなりめんどうであるために、遅れておるという状況であるのであります。私は見返り資金は一応一・四半期三億円、月一億円という計画であつたのでありますが、こういう金をどんどんふやして、大胆に金を貸出すようにやつてもらいたいということを、機会あるごとに銀行業者に話しておるのであります。スタートがちよつと十分に行かなかつたのでありますが、今後はこれが相当まかない得ると考えております。しかも先ほど申し上げました通産省で調査いたしました設備資金の個々の会社につきまして、名簿を勧銀とか、興銀とか、あるいは商工中金に與えまして、そしてこれを主体に貸出しを検討するように、私は指導して行きたいと考えておるのであります。三億円の見返り資金もふやしますし、御承知通りにこれは補償ではございませんが、五対五、こういうので、半々で出しております。しかし事情によつては見返り資金が八を持つて、市中銀行が二まで行き得ることになつておるのであります。これはあまり公表いたしておりませんが、私の腹としてはその程度であります。そうしますれば、百万円の金を貸しても、五十万円銀行が先取りするのでありますから、これを経済的に申しますと、半分を補償しているということも言い得るのであります。私はこの制度を今後十分活用して行きたいと考えております。しこうして、お話にありました中小企業金融について、政府が何か保証制度をとつたらどうかという問題であります。これはなかなか困難な問題でありますが、保証制度をとる場合に、どういうふうな基準で行くか、相当検討を要する問題であると考えておるのであります。御意見としてはごもつともな点もありますので、今後検討して行きたいと考えております。
  43. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 この際門脇君にお諮りしたいことがあります。大臣は、閣議が開催されておりますので、簡単に願います。
  44. 門脇勝太郎

    ○門脇委員 ただいまお話がありました、昨年の十一月に発表されました日銀のマーケット・オペレーションによるところの中央銀行を通ずる長期資金の貸出しは、これは特わく融資とは全然別個なのです。それで、大体二十億を目標として、それを一つの魅力にして、中小企業庁は全国の各企業体の審査をしたのでありまして、この点はあとでゆつくりお打合も願いたいと思います。  次に、信用協同組合の育成でありますが、昨年中小企業庁の協同組合法ができました際に、従来の市街地信用組合法によります信用組合は、全部この方の法規に統一されたわけであります。ところがその後いろいろな事情があつたこととは存じますが、この法律への移行ということに、相当手間取つたようであります。最近はその期限が来まして、順次そういうことに統一されておるようでありますが、これは統一されたもの以外に、新しく信用組合が相当許可されるべき趣旨のもとにこの法律ができたのであります。ところが実際において許可されるところの大蔵省が、いろいろとこれに対して、故意ではないでありましようが、相当手遅れになりまして、現在まで一つも許可になつておらぬ、一組合も許可になつておらぬ。——それは最近のことだから、知りません、これは許可基準がどうのこうのという詮議のために、手間取つたということもあると思いますが、大体昨年の法律制定当時においても、大蔵省の政府委員がこの委員会に参られまして、どうもこの信用組合のなわ張りを通産省にとられるということは、大蔵省としては非常に被害者だというような、非常に対立的な言辞を言われたわけであります。そういつたような一つの感情が大蔵省に残つておるために、特別にこの信用組合の認可を遅らしておられるのではないかといつたようなことが、現に私どもも臆測するような情勢にあるわけであります。これにつきまして、新規成立をすべからくこの機会に促進するように、幸い大蔵大臣通産大臣が同一な方でありますから、この機会にこの弊害をぜひとも打開していただきたい。どうかこの信用組合が促進されまして、少くとも新しい組合が早急に営業を開始でき得るように、多分の御考慮をお願いしたいのであります。  その次に、信用保証協会の制度でありますが、現在東京都におきましては、都自体が五億円を出資いたしまして、信用保証協会を設置いたしまして、五十億円を限度に信用保証制度を実行しておるのであります。全国各地方とも、こういつたようなことを大同小異にやつておりますが、この方法も中小企業の金融打開に大いに貢献し得ると考えますが、政府では何かこれを統一して、法制化して強化されるような御意図があるかどうかということを、あわせてお伺いしたい。  その次に、不動産の金融でありまするが、過去におきましては、不動産は勧業銀行の一手販売のように、これを担保として金融をしておつたのでありますが、近年はこれが停止されております。この不動産金融について、政府は将来どういつたような方針をもつて臨まれるかという点につきまして、これもひとつ御所見を伺いたい。  なお、先ほど日銀の特わくを拡大されたというお話も伺つておりまして、三十七億に拡大されたということであります。そのうちで商工中金の引受が十六億五千万円でありまして、冒頭に私が申し上げましたように、興銀とか勧銀とかは比較的中小企業者に対して理解が少い。でありますから、勧銀興銀等の特わくで融資されても、実際にそれが中小企業体に届きかねる憂いが多分にあるのでありますが、こういつたような特わくの拡大は、大体今後は商工中金のみにされるように、これはひとつ特にお考え願いたいと思うわけであります。  なお、年度末手当として政府が信用組合並びに無盡会社に八億五千万円の預託をされるということも伺つておるのでありまするが、現在貨幣価値が下つたときにおいて、八億五千万円程度の金は、いわば二階から目薬と言いますか、そういつたような程度の金であつて、今行き詰まつておるところの中小企業者が、その恩典に浴するということは、なかなかむずかしいと思います。思い切つてこの際百億とか二百億とか、そういつたような大きな金を信用組合あるいは無盡会社、あるいは商工中金等に、年度末の切拔け資金として一時預託されるというような、思い切つたことをぜひ御決行願いたい、こう私どもは考えるわけであります。  以上は大体金融問題でありますが、次は税金攻勢に対するところの重圧を大いに緩和してもらいたいという問題であります。これは、中央におきましては、昭和二十五年度の予算等におきましても、総額において七百幾億円かの税金が、今度は国民は軽減されるのだ、こういつたような非常に明朗な話であるのでありますが、実際に下部に参りまして、税務署に直接接しますときにおいて、個々の税務署に対して非常な高額な割当政府がされる。そのために税務署自体が、その割当を調達するために、昨年の倍とか三倍とかいつたような一つの目標を示して、そうして国民を苛斂誅求する。これは現実の姿であります。この税金の重圧のために、現在の中小企業者は実に涙をもつてこれと闘つておるという惨状にあるわけでありまして、中央からのそういつた割当制度というものは、相当画期的に方針をおかえにならぬと、結局いかなる善政をしかれても、末端に行つてそういつたような、国民が苦難をなめるのであります。現実に国民がその恩典に浴し得るような、末端に行き届く徴税政策をおとりになることを、特にこの点は、大蔵大臣通産大臣が同一の方であるということによつて、りつぱにこれを解決していただきたいと考えるわけであります。  なお、最近輸出が非常に不振でありまして、輸出不振ということがいろいろの面に関連しまして、関連的にやつておるところの中小企業にも、相当これが深刻に響いておるのであります。こういつたことに対して何か現実に中小企業がもう少し浮び上るような、具体的な親切な制度をこの際政府は何らかお考えいただけるかどうかということも、あわせてお聞きいたしたいのであります。  そのほか、まだたくさん用意しておるのでありますが、非常に時間をお急ぎのようでありますから、またあとは次の機会に讓りたいと思います。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 まず御質問の第一点は、金融の問題でございます。うち、信用協同組合の新設が遅々として進まぬ、大蔵省の方でとめておるのではないかというお話でございまするが、私はそういうふうなことはないと思いますし、もしありとすれば、すみやかに改めさせます。中小企業金融の一助にもなるという考えのもとに、従来の一県一行主義を改めて、そうして信用のある銀行の設立が申し出られるならば、ただちに認めるという気構えのもとにやつておるのであります。一県一行主義をやめて、そんならどんな銀行ができたかと申しますと、何と申しましても、金融機関というものは信用を土台にしなければ成立たぬものでありますので、いろいろな調査をしております。従いまして、信用協同組合につきましても、私のただいま聞いているところでは、二つ新設されたそうであります。内認可をしたものは、すでに十二あるのであります。それから産業組合より改組して内認可したものが三十四あります。市街地信用組合は、これも振りかわるのでありまして、これは四百二十ある状況であります。お話の点もありますので、十分信用協同組合がりつぱなものが早急にできるように育成して参りたいと考えております。これにつきましてはいろいろな手も考えておりますが、適当の機会にまた申し上げることにいたしましよう。  次に信用保証協会、お話の通り東京にもできました。また大阪にも前からできておりました。また全国各地でできまして、非常に成績を上げているところもあります。聞くところによりますと東京はあまり手続がやつかいで保証協会で調べ、同時に銀行が調べる、二重の調べでなかなかたいへんだということでありますが、これは何とかうまい運用によりまして所期の目的を達して行きたいと考えております。これが立法の問題につきましては、私は立法が適当だと考えておりますが、事業者団体法の関係上、ちよつと今支障が起きております。考え方としては信用保証協会というのはりつぱないい制度だと自分は思つております。支障が早くなくなるように努力したいと思つております。  次に不動産金融の問題でありますが、一時不動産金融機関を別個に立てるというふうなこともあつたのでありますが、採算上なかなか困難であります。従いまして不動産金融というものは長期金融でありますので、私は適当な銀行、すなわち従来不動産金融をやつておりました興銀、勧銀あるいは北拓、こういうものを増資させて、不動産金融に專念——專念とは申しませんが、商業銀行のうちでも、特に不動産金融をやり得るように金融債を発行して長期資金を獲得して、不動産金融を奬励して行きたいと考えております。  それから別わく融資を商工中金に三十七億のうち十六億しか出していない、こういうお話でありますが、これはやはり銀行の経常の状況を見ないと、なかなか困難であるのであります。御承知通り商工中金は今まで二十億か二十五億しかの余裕金を持つておらず、全国で三百数箇所の支所があるだけで、これにうんと金をつぎ込んだからといつて、これを利用するだけの機構がまだできておりません。従いまして私は就任以来あそこの重役陣を強化するように手を打つております。そうして今後先ほど申し上げましたような状況が起りますので、早急に拡充強化を考えておるのでありますが、今の状態で百億というものを出してもまわり切らないのであります。そこで徐徐に機構を拡大いたしますと同時に、金も十分出したい、残りの分も興業銀行には六億しか出しておりません。勧業銀行はやはり従来から長期資金を取扱つておる関係上、大体農林中金よりもちよつと少いくらいの金が出ておる状況であるのであります。この年度末を切り拔けるのに五十億、百億という大きな金をぽんと出したらどうかという御意見もさることでありますが、何も中小企業は無盡や商工中金に限つたことではないのでありまして、地方の銀行も相当従来中小金融をやつておりますから、片寄らず市中銀行で足らざるところを、特殊の金融機関に持つて行くという今までの考え方を、市中銀行と特殊な金融機関と両者相まつて行くのが適当じやないかと考えております。  次に中小商工業者に対します徴税強行というお話でありますが、大体今年の一月、三月の税金の徴収は昨年と同様であります。千八百数十億——千九百億であるので、今年は三千百億から五千百億にふえましたが、十二月までに相当の徴税の成績を上げておりますから一月、三月は一般の人が言つているように去年よりもうんと税金がふえるわけではないのであります。しかしてこのうちでもいわゆる中小商工業者を主体とする申告納税は、これはその一部分であるのであります。御承知のように五千百億円の予算のうちで、申告納税は当初は千九百億円であつたのを、当初予算で二百億減らして千七百億円にしておる。千七百億は農業者、水産業者、中小商工業者あるいは自由職業者、こういうものが入つております。中小商工業者の納める税金は千七百億のうちどれだけかと申しますと、私は事業所得、営業所得等が千億円余りと思うのであります。従いまして千億円余りの分が年額でございますから、今まで相当収まつております。徴税強行というようなことを中小商工業者のみに対して、やつておるわけではないのであります。それで中小商工業者の納める税金も、そう大した金額ではないのでございます。個々の金額におきましても、もし税務署が不当な決定をいたしましたならば、ただちにこれを直させます。しかも今の金融経済の状況から申しまして、一昨日も国税課長を集めまして、苛察にわたつてはいかぬ、割当はないのだ、君らの報告でけつこうだと申しまして、いろいろな手を打つて納税者のお気持をくんだ円満な徴税に、万全を期しておるのであります。従つて私は今の状況から申しますれば、千七百億円の申告納税、その中で中小商工業者の納める金額は全体として五六百億円くらいでございましよう。これにつきましては特段の注意をいたしておるのでありますが、大体におきまして千七百億円とれるかどうかということは疑問であります。しかし私は赤字が出てもけつこうだ、絶対にむりをしてはいかぬ、こういうふうにいたしておるのでありますから、御心配の点はあまりないのではないか。また御心配をいただくのは恐縮でございますから、御心配のないように努力いたしておる次第であります。  次に輸出振興の問題でございますが、これはやはり中小商工業者を中心とした輸出振興と申しましても、私は中小商工業者の輸出振興は問屋業というものを育成するのが、一番中小商工業者によいのではないかというので、昨年の八月も問屋業に対する金融は丙であつたのを甲に直しました。従いまして八月ころは問屋業に対しましては、百七、八十億円であつたのが、三、四箇月の間に倍以上の四百億近くの融資になつて来たのであります。中小商工業者にもいろいろなものがありますが、やはり問屋業を育成し、問屋業者がバイヤーあるいは外国の事情等を見まして、徐々に発達するようにしなければならぬと思うのであります。輸出振興策につきましては、いろいろな点を考えておるのでありますが、これはまた別の機会にゆつくり申し上げたいと考えております。
  46. 今澄勇

    ○今澄委員 大臣はお忙しいようですから、私は間口を狹めて一問だけ聞きます。いろいろ聞くことはありますが、あとは次会に譲りまして、今の門脇委員の質問に関連して私が特にお伺いしたいのは、信用協同組合の問題であります。信用協同組合の設立認可は二月七日に一件、十一日に一件、合せて二件出ておるように私は了承しております。これは去年法律ができてから、実に八箇月間を経過した後の今日のことで、大蔵大臣のお話を聞くと、大いに認可するつもりであるというので、実は安心をいたしました。しかしこれまでの実績あるいは銀行局長等のやり方について、大蔵大臣がお知りになられぬ点もあるかと思いますから、一点お伺いいたします。すなわち今信用協同組合の設立認可を出しておるものが、いわゆる地域単位、都市単位、全国的に組織がばらまかれておるものと、三つに分けてどれくらい出ておるか伺いたい。  それからこれらのものに対する認可について、大体大蔵省できめた基準について該当しておるのに認可がないのでありますが、該当しておりさえすれば、これはまとまつてただちに認可をされる意思があるかということが第二点。  第三点は全国に会員を持つ信用協同組合が、単一の組合として届が出ておりますが、これらのものについては至急御調査をされて、認可をされる意思があるかどうか。  第四点は、この法律によつて中小企業等協同組合法によつて、市街地信用組合は自然廃止的に、昨年十二月に廃止になつておるが、自然廃止の運命にある信用組合の全国連合会に対して昨年の十一月奇怪にも内認可が與えられておるのであります。これは大蔵大臣も御承知であろうと思いますが、GHQその他との関係や、いろいろなことで遂に今日実現は見なかつたらしいのでございますが、これは伝え聞くところによると、愛知銀行局長が独断でその内認可を與え、しかも認可を関係者に約し、これに関してはいろいろ祝盃をあげた等の事実もあるやに伝え聞いておるのであります。この市街地信用組合なり、信用協同組合の認可については、かくのごとき状態が少くとも中小企業者に伝わるということは、中小企業者に侮蔑の念を持たせ、これは私は大きい問題であると思うのであります。大蔵大臣通産大臣を兼ねられたこの機会に、私はただ一つ望みたいことは、どうぞひとつこのような信用協同組合の設立について、実地に大臣みずからそれらの状況をお聞取りを願つて、ともにいろいろの條件に合したものは、これに対して全部認可されるという御処置を希望いたします。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 四点あるようでございますが、個々についてお答え申し上げます。今信用協同組合の出願がどれだけあるかという問題は聞き及んでおりません。通産省としてわかつておりますのは、新設の内認可二十、新法によるものが先ほど申しました十二でございます。新設の認可済みの新法によるものが二件でございます。その他は先ほど申し上げた通りであります。しこうして申請がありまして、免許の基準に該当しておるものは、ただちに認可の指令を出す考えには間違いはありません。該当しておるかどうかは検討しなければなりませんが、該当しておりますればただちにやることにいたします。  次に全国を一体とする信用協同組合の設立についてはどうかという問題でありますが、これはよほど検討しなければならぬ問題だと思います。それは先ほど申し上げましたように、従来ありますところの商工組合中央金庫というものを、育成強化して行こうという政策をとつておるのであります。しこうしてまた育成強化されました商工組合中央金庫というものと、従来の信用組合との関係をつけて行こうとしておるときでありますから、商工中金に似たような全国的の信用協同組合につきましては、にわかに賛成はできないと思つております。  次に市街地信用組合の問題でありますが、これは結局中小商工業者の金融機関であるのでありまして、従つて私は信用協同組合法設立のときに、これはそのまま居直つて行くようになると聞いておりますが、これはやはり信用協同組合と同様に、中小商工業者のための金融機関でありますから、これは育成して行きたいと考えております。その他の点はよくわかりませんので、いずれ聞いてからお答えすることにいたします。
  48. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会