○白鳥
公述人 私はただいま御紹介にあずかりました白鳥でございます。連日の
委員会でさぞかしお疲れのことと思いますが、しばらく私の公述をお聞き願いたいと思います。
今回の
地方税制の
改革は、多年
財政の窮乏にあえいでおりました
地方自治体にとりましては、きわめて適切なものでありまして、民主政治の基盤たる
地方自治は、これによ
つてようやくその
財政的基礎を確立し得るのでございます。この点私たち
地方行政の担当者といたしましては、最も望ましいものだと考えるのであります。これを
町村財政の実際に照らしてみまするに、千葉県千葉郡の十三箇
町村の
昭和二十四年度の予算現計と、二十五年度の新税法による歳入見積りとを比較検討いたしますと、最低のところで九%、最高のところで二〇二%の増とな
つたのでございます。そのうち人口の多寡によ
つてどうかわるかを調べてみましたところが、大体農村の方の増加率が多いようでございます。
町村以上の市に
なつたら、あるいはまた違つた現象ができるかもしれませんが、
町村で、最高二万三千くらいの町でございますと、最も増加率が少いようでございます。しかしこれを人口一人当りの割合にと
つてみますと、ほぼ同額の結果になりまして、最高一人当り三千円
程度、それから最低のところで千二百円
程度、平均いたしまして千六百円
程度の歳入と相なるように考えております。私の町は津田沼町でございますが、ここでは、昨年の末であ
つたのでありますが、
ちようど九%増とな
つております。しかしこの歳入総額の増加はわずか九%でございますが、その内訳について検討いたしますと、今までとは全然違つた現象を呈しているのでございます。と申しますのは、今までの、たとえば二十三年度の
決算を見ますと、総額二千万円ばかりの
決算額に対しまして、その半分が町税及び手数料、使用料、そういつた町独自の
財源によるものが約半分でございます。その他のあとの半分は、町債あるいは
寄付金が四分の一、つまり半分の半分、それから国及び県の支出金が同じく四分の一、つまり今まで私たちは自治体という名を與えられておりましたが、
財政的に見ますと、まつたく独立不能のものだ
つたのでございます。早い話が国というおとうさんから仕送りをもらわなければ、生活ができないような、そういつたようなものだ
つたのでございます。ところが今回の
税制改革による歳入見積りによりますと、町税並びに使用料、手数料、私たちの独自の力で調達し得る
金額が総予算の九割を占め、そうしてあと残りの一割強というのが
地方債だとか
地方債は今度はごくわずかでございますが、国及び県の
補助金その他の
收入でございます。こういうふうにして私たちは今までかすかす国のお情けで暮しを立てておりましたものが、今回ようやく一人前にふさわしい
財源を與えられたということができると考えられます。先ほど私は比較的人口の小さい所の方が増加率が多いようだ、こう申しましたけれ
ども、そうしてその額が私の調べたところによりますと、最高二〇二%の増に
なつた所がございましたけれ
ども、こういつたような農村の今までの
財政事情をお調べくださいますならば、いかにひどいものであつたか。そうしてまたそれだけの、三倍ばかりになることが当然であつたということかおわかりになると考えるのでございます。そこで私同時に調べたのでございますが、同じく千葉県千葉郡の十二箇
町村の二十四年度の当初予算を調べてみますと、驚いたことには役場費が総予算額の五割以上を占めているような村や町が、総体の半分、六筒
町村ございます。つまり千葉郡におきましては六箇
町村が、総予算額の半分を役場の経費に使
つているのでございます。しかもそのほかに農調
委員会の費用だとか、農地
委員会の費用だとかが
相当いります。そしてこれを合計いたしますと、六十%以上そういつた事務費を使
つている町や村が五箇
町村、最前は七六%ばかりになるのでございます。つまり総歳入の四分の三以上を、そういう事務費に使
つているという
実情でございます。それならそこではべらぼうにたくさんの吏員を雇
つているのだろう、ぜいたくをしているのだろうというようにお考えになるかもしれませんが、いずれにいたしましてもそういうところは、いずれも七名か八名のごくわずかの吏員をも
つて、かすかすに業務を営んでいるにすぎないのでございます。そういうようにたくさんの比率を事務費に使わなければならないような
状態でございますので、他の
事業費におきましては実にさんたんたるものでございます。
これを土木費にと
つてみますと、土木費が一万円以下の
町村が五つでございます。はなはだしいところは、わずかに二千円というところが二箇所ございます。今の金の二千円でございます。以前の金の二千円ではないのでございます。今の金の二千円で雇えるものとしたら、おそらく給仕一人の月給にも足らないでございましよう。そういつたような
金額で、二万里も三万里もあるような、そういう厖大な地域の
道路や水利
施設等、一切をまかなわなければならぬのでございます。これが現在の農村の
財政の
実情でございます。教育費についてみますならば、六万円というところがある。六万円であつたら、おそらく先生の一箇年の俸給をさいたら、あとどれだけのものが残りましようか。そういたしますと、もちろん修繕費のようなものが少しも
地方の
財政からまかなわれ得ない。あるいは教具もまかなわれ得ないという
実情がここに起きて来るのであります。
こういうふうにいたしまして、農村では今までの
財政事情でございますれば、どこまで行
つても
事業ができない。
町村民から税金を取立てても、それをほとんど事務費に投入してしま
つている。住民が最も望んでいるところの
事業費が、まかない得ないということであります。今まで
政府では、口を開けば自治の振興というようなことを御唱導くださいましたけれ
ども、こういつたような
実情に農村を長く放置しておいた。これはどう考えてみましても、ほんとうのあり方ではないように考えるのでございます。
従つてそういつたような事情からいたしますと、今回の
税制改革によりまして、先ほど私が申しました
通り、よしんば三倍くらいに
財政歳入が増して来るといたしましても、おそらくどれほどの
事業ができるか、これはむしろ疑問であると考えるのでございます。世上往々にして今回の
税制改革によ
つて、
地方自治体は放漫な
財政計画を立てるのじやないか、濫費をするのじやないかというような御心配を持
つている向きもあるようでございますけれ
ども、今私が申し上げました
実情からいたしますれば、おそらく今後やりたい仕事をまだなおできないのじやないか。もちろん
国民負担に大きな
影響を與えることでございますので、そうそう
町村の
財政ばかり確立すればいいということは考えませんけれ
ども、ぜひ今回の
財源くらいは與えていただきたいと考えている次第でございます。
しかし今度の
税制の
改革が、私から申し上げるまでもなく、きわめて広汎な、また根本的な
改革でございますので、
従つて私たちといたしましても、これが満足に徴收できるか、
相当疑問の
余地がございますし、できるならばこういつた点を改めていただきたいという点が二、三ございます。これからお聞き取りのほどをお願い申し上げたいのでございます。
今度の
税制改革によりまして、なるほど
町村民税と
固定資産税の率がきわめて大幅に引上げられたのでございます。もちろん
政府当局の話によりますと、所得税その他を全部通算すれば、幾らか減税になるのだという
お話でございますけれ
ども、とにかく重い税金にあえいでいる
町村民にとりましては、減つた方のことはあまり身にしみませんで、ふえた方の
町村民税が身にしみるだろうというように考えます。しかしただ單にこの率を下げるというようなことでは、さきに申しました
通り、今非常に
財政的に悩んでいう
町村の
財政が破壊するのでございますから、できるならばこの適用範囲をもつと広げて、そうして全体の率をそれだけ下げていただきたい、こういうふうに考えるのでございます。適用範囲を広げると申しましたが、これを
町村民税について申しますならば、今度の
改正案によりますと、法人に対しては所得割は課けられないことにな
つておりますが、これに対して低い所得割を課けていただきたい、これをお願いするのでございます。これはなお全体の率を低めるためにというのでなしに、そうしていただきませんと、いろいろな不合理がかえ
つて生ずるのでございます。
その一、二の例を申しますと、今
政府の方で原案が発表になりましてから、
町村の方では、今まで個人
企業だつた目ぼしい商店や何かが、続々と法人組織にな
つて行く。組織をかえてしま
つている。名前をかえてしま
つている。もちろん
企業の性格から申しまして、個人経営のものから法人組織にかわるということは、決して悪いことじやない。いいことだと考えますけれ
ども、今行われているような、ただ税金をのがれるために組織をかえるというようなことでは、経営の
合理化にも何にも役に立たないと考えます。またもう一つ申し上げたいのは、今回の税法によりますと、均等割が、二、三十万円
程度の小さな
会社も、何千万、何億というふうな大
会社も、
同一に取扱われております。その点かえ
つて均衡を失しているのではないか。やはりそういつた点から考えましても、低率な所得割を法人に対しても課けていただきたい。そうして全体の利率を下げていただきたい、こういうのでございます。
あるいは
固定資産税につきましても、先ほ
どもるる陳述がございました
通りに、
相当私鉄企業などに対しましては高率な税金が課かるように拜承しております。しかし
私鉄に対して課けて、
国鉄に対しては課けておりません。どうして同じような業務を営んでおりながら、一方においては課け、一方においては課けないのでございましようか。
電気税では、私の記憶の間違いでなければ、同じように取扱
つているように考えております。そうすれば
電気税では同じように取扱い、
固定資産税だけが別個の取扱いをするということが、どうも私にはふに落ちないのでございます。どうか
国鉄に対しましても
固定資産税を課けていただいて、全体の額を確保するに足るだけひとつ率を下げていただきたい。総額は限定しておいて、率を下げていただきたいと考えます。
第二にお願いいたしたいことは、免税点の引上げでございます。今回の
税制によりますと、年收二万五千円が免税点にな
つておるように拜承いたしておりまするけれ
ども、年收二万五千円と申しますと、これは戰前の
物価に比較いたしますれば、戰前はたしか月收百円が免税点であつたように記憶しております。今回は上げられたとはいえ、なおかつ年收二万五千円が免税点なのであります。これではおそらく免税点を設けるという
趣旨が、ちつとも盛られていないじやないかと心配するのでございます。今農村に参りましても、あるいは勤労者におきましても、中小工業者にいたしましても、
相当税金が高いという声が多いようでございますが、どうも免税点がこういうふうに低過ぎる。そのために
納税額が多くな
つて来ていると考えるのでございます。ぜひこの点を御考慮いただきたい。これは
地方税に直接
関係のないことでございますので、私申し上げるのはいかがかと思
つたのでございまするが、実はそれが
地方税を課けますときに、免税点が低いために重大な支障があるのでございます。重い税金を課けます場合に、一番私たち心配しなければならないのは、負担の公平を期するということでございます。これは過去三年間、私
ども供出のことにずいぶん悩んで参りましたが、供出についても、全体の額が
相当重いようであ
つても、個人々々への割当が、妥当であれば、農民は納得していただけるのでございます。
町村民税にいたしましても、その賦課額が、妥当であるならば、そのために学校の建てられるのだ、そのために
道路がよくなるのだということであれば、おそらく
町村民に納得していただけるのじやないかと思うのでありますけれ
ども、もしかりにそこに賦課の不公平があつた場合には、問題になります。納税成績に一番大きな支陣を来しますものは、賦課の不均衡な点でございます。ところが今回の
税制改革によりますと、一銭一厘のうそ隠しもない勤労所得者に対しても、あるいはまた反別をうそ隠しできない農民に対しても、その率で課けて行くのでございます。その
税額によ
つて課けて行くのでございます。一方においては所得の捕捉のできにくい業種がありますから、自然そこに不均衡の出て来ることは理の当然でございましようが、一番私が心配いたしておりますのは、所得の捕捉のできない人が
相当たくさんいるという事実でございます。これは私の方の税務署がはつきり
言つておりますけれ
ども、大体納税者の二割から三割くらいは税の捕捉ができない、こういうのでございます。私の方の津田沼町だけでも、八百人から千人くらいは、所得税の捕捉ができない人がいるのじやないかと心配いたしております。どういうところから私はその数を出したかと申しますと、今どき勤労所得税も納めないし、源泉課税も受けていないし、所得税も納めていない人が、このくらいいるのでございます。ところが生活費から申しますと、今おそらくは私
どものような近郊の町では、月一万円
程度の生活費は、最小限度いるのでございます。そうすると年收十二万円であります。年收十二万円あれば、
相当たくさんの税金を納めなければならないのだけれ
ども、納めていないという人が、今申しましたように八百人から千人くらいもいるのじやないかと考えます。もちろん今度の税法によると、そういつた税の脱漏者に対しては、
地方財政委員会の許可を経て、
町村長が独自に課税することができるというようにな
つていると承
つております。しかし私の町だけでも、八百から千あるだろうという脱税者に対して、
全国的にその申請が集ま
つて来たら、一体
地方財政委員会はどういうように御処置をなさるのでございましようか。おそらくこの條文は空文に期するのではないかと心配いたします。そこで今まで申しました
通りに、税の均衡を保ち得ないのじやないか。これが今まででございますれば、勤労所得者だとか、あるいは零細な農民だとか、そういつた方に対しましては、
町村の議会の承認を経まして、適当に査定することができたのでございますが、今度の税法によりますと、所得税の額に一定の率を乗ずることにな
つておりますために、そういつたような勘案をすることができない。もちろん法の建前からすれば、今まで私たちのや
つて参りました見込み査定よりは、あるいは一歩前進したものではないかとも考えられます。特に一定の基準のない、捕捉しにくい
企業者に対しては、私たちしろうとが見立てるよりも、税務署のような専門家の調査したものの方が、正しい額が出るのかもしれない。しかしそうだからとい
つて、今の税務署の査定をそのまま、どこまでも正しいのだということはできないのでございます。まして先ほど私が申しました
通りに、税の脱漏者がある。つまり所得税を免れている。それだけでもその人はずいぶんけつこうなことだし、そのおかげでまた
町村民税の所得割も免れる。こういうような人がたくさんいるのだし、また先ほ
ども申しました
通りに、業種間によ
つても課税の不均衡が
相当あるのじやないかと考えるのでございます。そういう懸念がありますから、ぜひこの際免税点を引上げていただくことが、税の公正をはかるよりも、一番必要じやないかと思います。先ほど申しました
通りに、脱税者が確かにたくさんございますけれ
ども、これらの人たちは、税法が現在こうな
つているから、脱税者にな
つているのであります。しかしまたもちろんそういつたような零細な方々は、青色申告さえもできない人が大
部分でございますが、これが最小限度の生活費まで免税点をお引上げくださいますならば、当然これは納税する義務のない人々が大
部分でございます。そういたしまして税務署の査定をする階層を整理していただきたい。下の方を切
つていただきたい。零細な者を税の対象から切り捨てていただきたい。そういたしますれば、勤労所得者等の三千円かそこらのかすかすの俸給をもら
つておる者も、ともにこれは免税点以下にな
つてしまうのでございますから、そこに均衡を失するというようなことがなくなるのでございます。ぜひその点御勘考をいただきたいと思います。
なおここでもう一つお願い申し上げたいことは、法規の上ではそうならなくとも、おそらく漸次そういうふうに改善されて行くと考えまするが、税務署が所得を査定いたしまする場合に、今後は
町村民税が所得税の附加税式のものにな
つてしまうのでございますから、その附加の額のいかんは、徴收成績に大きな
影響があることでございますので、
町村の税務係と十分連絡をしていただきたい。これは法規の上に出ませんでも、あるいは運用の妙をはか
つていただけるのではないかと思いますけれ
ども、もしできますならば、こういつたような機構をつく
つていただきたい。何せたくさんの納税者の事情について、一番知
つているのは
町村の税務係でございます。
町村の税務係だけは、比較的
実情をよく知
つておりますから、そういつたものと連絡をはか
つていただきたい。こういうふうな機構をひとつお考え置き願いたいと考えるのでございます。
第三番目に、私お願いいたしたいことは、事務の簡捷をはか
つていただきたいということでございます。というのは、今回の税法によりますと、
町村役場では
相当煩雑な業務を続けなければならなくな
つて来ます。
固定資産税にいたしましても、
政府の原案によりますと、賃貸
価格を九百倍いたしまして、それに〇・〇一七五をかけるのでございますが、しかし九百倍して〇・〇一七五をかけるのと、千倍して〇・〇一五をかけるのと、額においてはそう大して違いはないのでございます。ところが九百倍して〇・〇一七五をかけるということでは、非常に事務が煩雑になります。
従つてまた間違いも多くなりはしないかということを心配するのであります。結局納税者にとりましては、時価の賃貸
価格の七百倍が正しいのか、あるいは千倍であるのが正しいのか、それは私もよく存じませんけれ
ども、いずれにいたしましても納税者にとりましては、時価は幾らであろうとも、問題は結局
納税額でございます。
従つてぜひこの際は、ことに二十六年度から固定資産に対する評価を、私
どもの方で一々検討しなければならぬのでございますから、今年度はぜひ時価を一千倍して、それに〇・〇一五をかけるというような方法をと
つていただきたいと思うのであります。理論上はいろいろ支障もございましようけれ
ども、事務の簡捷という点から、そういうような処置をと
つていただきたいと考えるのでございます。
それから第四に私お願いいたしたいことは、平衡交付金に関することでございます。平衡交付金につきましては、今までの
配付税と多少異
なつた点もあるように承
つておりますが、実は
配付税では、私たち
町村長は実に苦い経験をなめております。御
承知の
通りに、昨年の
ちようど今ごろでございましたか、やはりこちらの
地方行政委員会におきまして、
配付税の減額の問題に関する
公聽会が開かれたのでございます。そうして委員
各位の非常な御同情にもかかわりませず、そうしてまた
公述人一同の品をそろえての血の叫びにもかかわりませず、
配付税が当然一千二百億に上るものと予想されていたものが、突然として五百七十七億に切られてしま
つたのでございます。もちろんこう
なつた事情は、中央予算の均衡をはかる上において、やむを得なか
つたのだと考えるのでございますけれ
ども、中央予算の均衡を、
地方予算の
犠牲においてなしたということは、私たちにとりましては、実にきわまりない痛恨事でございます。先ほど申し上げましたような、
町村の実にさんたんたる
財政事情等も、やはりそういつた点から生じて来ておるのでございます。土木費がわずか二千円、教育費がわずか六万円であるとか、事務費が予算の四分の三を占めるといつたような
実情は、結局昨年度におきまして、
配付税が半減されてしまつたところから生じておるのでございまして、今後税法の
改正によりまして、私たちに幸い
財源を與えられたといたしましても、平衡交付金が、今後何らかの事情によりまして、半減されるというようなことになりましては、私たち行政の担当者として、実に心配なのでございます。その点何らかの法制上の保障を與えていただきたいと、切にお願い申し上げる次第でございます。
最後にお願い申し上げたいことは、
国民健康保險税の創設に関してでございます。
終戰以後
国民の生活が非常にきゆうくつにな
つて参りました。そのために、一方社会保障制度として
国民健康保險制度が設けられ、半ば強制的に私たちは
政府の方から干渉を受けて設立して来ております。
全国ですでに五千以上の組合ができているのでございまして、いずれも
町村営でや
つております。それが現在どういう
状態にあるかと申しますと、せつかくつくりました組合が、一方におきましては公的医療機関がないということ、あるいは非常に少いということ、また一方におきましては、組合費の調達が非常に困難であるということから、いずれの組合においても
赤字に次ぐに
赤字をも
つてしておりまして、せつかく開きましたものを中止しておるようなところが、
相当数多く出て来ているのであります。その間の詳しい事情は、すべて申し上げることができませんが、私の知り得ている範囲におきましても、千葉県下におきましても、四つ五つの
町村がすでに中止しているような
実情でございます。これを
全国的に見ましたならば、あるいは
相当の
数字になるかもしれません。今日私その
数字をはつきりと存じておりませんが、今後組合費の徴收がますます困難になり、
従つてせつかく開いた
国民健康保險組合を、中止しなければならぬという
窮状に陥
つて行くところが、
相当あるのでございます。そこでもしもできますならば、
目的税として
国民健康保險税を創設していただきたい。水利税とか共同
施設税とかいうような
目的税が、今回の税法によ
つても残されているのでありますが、それと同じように、
国民健康保險税も創設していただきたいと考えるのでございます。一体
町村長は、うんと税金を取立てることを考えていて、今度またまた
国民健康保險税なんという重い税金を課けるのはけしからんというおしかりをこうむるかもしれませんが、これは健康保險の
実情を御案内の方は十分御
承知の
通りに、健康保險組合ができているところでは、その加入は、これはもう強制的なのであります。ただ組合費として徴收することが非常に困難であるから、それを
目的税に改めていただきたいという考えなのでございます。どうかこの点もひとつ御勘考を願いたいと存じます。
なお
国民健康保險につきまして、これは比較的小さな問題でございますが、今回の税法によりますと、お医者さんの力も附加価値税が
相当重く課か
つて来ているようでございますが、
国民健康保險で取扱つた医療費につきましては、どうか附加価値税の対象から除いていただきたいと考えるのでございます。と申しますのは、今の附加価値税が課けられますと、いずれ健康保險の方の單価が引上げられなければなりますまい。單価が上るということは、現在よたよたしている健康保險組合にとりましては、実に致命的な
打撃でございますので、この点ぜひ御勘考をいただきたいと考えるのでございます。
私今までいろいろと申しましたが、その要は、今回の
税制改革の
趣旨は、私たちにと
つてはありがたいが、その細部につきましては、二、三の御考慮をいただきたい。第一の点は、課税の範囲を拡張して税率を引下げていただきたいということ。第二の点は、免税点を引上げて、課税の公平を期してもらいたいということ。第三に、計算をできるだけ簡便にしていただきたいということ。第四に、平衡交付金の増額につきまして法制上何らか保障を與えていただきたいということ。そして最後に
国民健康保險税の創設を考えていただきたいということであります。以上をも
つて私の公述を終りたいと考えます。何とぞよろしく
皆様の御審議をお願いいたしたいと存じます。