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夏堀源三郎君 水産常任
委員会におきましては、この
地方税の問題につきまして、現在の水産業のこの苦しい立場、そしてこの
地方税を実施する際に水産業は完全に潰滅
状態になるということを前提として、各委員の間に愼重審議をいたしまして、
委員長のお手元に差上げてあります
通りの三項目にわた
つて修正案の提出を
お願いいたしたのであります。
まず私はこの水産業の非常に苦しい立場の概要を申し上げてみたいと存じます。
日本の水産業としてこの産業面において何が一体最も大きく金詰まりが来るかというと、もちろんこれは漁業労働者の方であり、アメリカからの輸入の漁業資材であるのであります。その漁業資材は補給金の打切りによ
つて、二倍ないし三倍の値上げに
なつているのでありまして、すでに漁業の経営は不可能であるとさえ叫ばれているのであります。加えて四月一日からの統制撤廃は、われわれの予期しお
つた通りはなはだしきは五割、ややいい程度においても二割程度の大暴落を示したのであります。これは国民の購買力の減退にもよりましようし、いろいろな
理由もありましようけれ
ども、こうしたような混乱時期が到来したのであります。そこで私は
日本の水産に対する重要性、これは申し上げるまでもないのでありますけれ
ども、こうした時期に、最も不均衡なこの
課税方法によ
つて水産業に
地方税が賦課されることは、致命傷的な大打撃となるのであります。そこで
政府は国民の
地方税負担の合理化とその均衡化を確保することが、今次
地方税法
改正の大眼目であると申されているのでありますが、確かにその
通りであろうと存じます。水産業においてはさらにこの点についてきわめて不合理及び不均衡が多いということが、この
修正案の根本の
理由と
なつているのであります。まず私は法の精神から言
つて、このはなはだしき不均衡を——
事業の潰滅
状態になるまでたたいて、この法の目的を果すのでなくして、目的遂行に支障を来すことをなぜやらなければならぬのか、これを私は言いたいのであります。しからばどういう点が不合理であり、不均衡であるかということの
理由を、次に申し述べることにいたします。
まず第一項目として、前申し上げたような
理由によ
つて、
附加価値税については水産業は
非課税とするということを、
お願いしたいのであります。その
理由といたしましては、同じ原始産業である農業及び林業が
非課税と
なつており、鉱山業も
非課税と
なつております。その
理由は農業林業においては土地、家屋等の
固定資産税が著しく増徴されるというのであ
つて、水産業の
固定資産税の負担が
実情において決して農業、林業に劣るものではないのであります。そうして鉱山の方でも鉱区税と申しましようか、そういう税があるからということでありますけれ
ども、漁業においては漁業権税があるのであります。そうしてなお二十七年度から許可料、免許料として全漁獲高の三%、この
附加価値税よりももつと重い率をも
つて政府に納めなければならぬのであります。こうした
理由は完全に他業者に比較してその負担が多いということであります。農業においてその附加価値相当額が四十万円以上に及ぶものが
非課税と
なつておるのに、水産業の附加価値九万円以上のものが
課税されるということであります。農業の場合におきましては皆様も御
承知の
通り野菜類とかあるいはみそとか、そういうようなものもめいめい農家の手で、これをつくることができ、食糧の面においてもいくらか保有米等で楽になる面もありましようけれ
ども、漁業の面においては一々買わなければなりませんので、その生活
状態が違
つておるのであります。そうした面において九万円程度においてこの
課税がいわゆる何の役に立つかということでありますが、九万円程度においては全漁業者の一人も残らず
課税されなければならないという結果になるのでありまして、九万円を限度として云々ということは当らない、こういうことであります。もつと詳しく申し上げますと農業に附随して行う畜産業、これは
非課税、畜産業を経営する北海道の農業及び林業における附加価値相当額は右をはるかに越えるものである。先ほど申し上げた水産業の数字からはるかに越えるものである。これらはすべて
非課税であ
つて、水産業は自然の制約を受けることがきわめて強い。絶えずその生命、財産を直接不可抗力の危険にさらす。いわゆるいまだ産業としての
確立を見ておらぬという点もあるのでありまして、かつその機械的な合理化、
計画的水産ということはきわめて困難であ
つて、将来産業として
確立し得るという的確な水産
計画の見通しも必ずこれをつかみ得ることはできないのであります。
従つて労賃等の支出は非常に多い。たとえば、これは専門的に申し上げてもおわかりにならぬ方もあるかと思いますが、あぐりとかかつを、まぐろ、いろいろの業種別から詳しく申し上げますと、各業種別によ
つて多数の漁業労働者を使わなければならぬ。大体私の算定によりますと、全
収入の八五%から六〇%程度をいわゆる
附加価値税として見出せる。こういう結果になるだろうと存じます。私はここに
日本の産業界のあり方は、なるほど大企業によ
つて、近代
設備によ
つて水産の能率化ということが絶対必要ではありましようけれ
ども、その半面人口問題失業問題、この
解決点を見出さずして、
日本の産業経済を語るということはどうかと存じます。私はこの労力問題の
解決点は、できる、だけ雇用率を多くするということが当然であ
つて、これは漁業ばかりではないだろうと思いますけれ
ども、この
附加価値税によ
つてそうした問題の
解決点は非常に困難になるということであります。そうして今この
附加価値税を実施されることによ
つて、どういう結果になるかと申し述べますると、水産業の場合はほとんど
事業的に成立たない。それで
設備を放棄するであろう
事態になるおそれが多分にあるのであります。そうした場合に、私ただいま申し上げましたような労働問題、失業問題、こうした面は漁業のみならず各企業に相当大きく展開するであろう。これは
日本再建の途上において、非常に悲しむべき
事態が起るではないか、こう私は
考えるのであります。しかしこの法律によりますると、労働者を多く使うところが
附加価値税の
課税がいわゆる重課されるのだ、そうして近代
設備を持
つた大企業は軽課されるというように、結果においてそうなると私は
考えております。
政府の
説明はその反対に、いわゆる今まで大企業が軽課されてあるから、この均衡をとるとこう仰せられておりまするけれ
ども、私の
意見としてはかえ
つて反対の結果になるのではなかろうか、特に漁業の場合は中企業、たとえばまぐろ、あぐりその他の定置漁業の中企業の中に、最もたくさんの労力を要するために、最もこの負担が重いということに
なつて、私の算定によりますると、大体平均漁獲において見ますると、現行法の所得税及び舟税、
船舶税、そういうものを総合して比較いたしますると、大体現行法と
改正案の比率は、はなはだしいのは三十倍となる。大体十五倍くらいになるじやなかろうか、そういう結果になるのであります。それは
固定資産税において大体この算定は十二倍程度を見ておるのであります。これを総合してそのような重課される産業は、とうてい成立とうとは
考えられないのであ
つて、私はこの産業を総合的に申し上げると、
日本の中小企業の育成、これは絶対必要であ
つて、この近代
設備を持つことのできない資力のない中小企業に対して、重課されるという結果になるこの法律案に対しては、どうしても
修正していただかなければならぬ。こう思うのであります。
第二に、漁業権税では昭和二十七年以後廃止すること、これは昭和二十七年度から新漁業法に基いて免許料が徴収される。これは漁業権税と重複することが多いということでありますが、先ほ
ども申し上げたように全漁獲高の三%程度免許料として全漁業から徴収されるのであります。こうしたような多額の金額は、やはり
政府に納めなければならぬのであ
つて、法の解釈からい
つて、どういうりくつになるかしれませんけれ
ども、漁業権税というものと、この免許料というものと重複すると、私
どもは解釈しておるのであります。漁民が負担し、支拂いするのは確かに重複するのでありますから、どのような解釈があ
つても、その解釈は是正すべきである。こう
考えております。
固定資産税の漁船の
課税率について、これを何とかもつと減少してもらいたいということでありますが、漁船は自然の制約に縛られることがきわめて強いのであ
つて、たえず直接に不可抗力の危險にさらされておる。
従つてその危險及び事故はきわめて多いのであります。土地、家屋その他の
一般陸上償却
資産のように、これを保護すべき十分なる
保險制度の活用すら不可能であるのであります。現在漁船
保險において、建造後四年未満の総トン数三十トン以上の漁船については、
保險金額は建造価格の五割を越える額を引受けることはできない。こう
なつておりまして、危險性の多い漁船であるがために、
資産の保護
制度さえ十分に認められていないのであります。そこで
資産保護
制度の不十分及び償却の不徹底等の
理由から、漁船についてはその
課税標準においても、別個に特段の措置をなすべきである、こう
考えるのであります。
中島委員長案として新聞に発表に
なつておりますが、いわゆる
船舶税は
独立税として、トン数によ
つてとるということが見えております。私
どもまだ内容もよく伺
つておりませんけれ
ども、せつかく御苦心の上でこの
船舶税なるものを
独立税にしてとるというお
考えに
なつたのでありまして、私
どももこの線に同調することは一向さしつかえないと思います。