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本多国務大臣 地方税法の改正案の提出がまことに遅延しておつたのでございますが、ようやく提案の運びになり、ただいま議題に供せられたのでございまして、この際その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げたいと存じます。
言うまでもなく、わが国は敗戰による苦い体験から、終戰後いち早く新しい憲法のもとに、
民主主義に基いて国政を運営する旨を確定いたしたのであります。もとより
民主政治の確立は、軍に
政治運営の形式を民主化するにとどめてはなりませず、
政治運営に関する判断が、広く国民の中から生れて来るように仕向けて参らなければならないのであります。これがためには、すべて公事に関する問題は可及的に、その問題の周辺にあつて、その問題から直接影響を受ける人たちの手によつて責任ある処理を行わせるようにして参らなければなりませんので、
民主政治の確立と
地方自治の強化とは、表裏一体をなす問題であります。
しこうして
地方自治の確立を意図してすでに
地方自治法が制定せられ、骨格は
整つたのでありますが、その事務を豊富にし、財政を強化して、内容を充実させることこそ先決の問題であります。しかるに
地方公共団体の現状は、相次いで負荷せられる任務の重いのに比べて、財政力は微弱であり、
地方自治は財政的に破綻に瀕しているとまで極言せられているのであります。これを税制の面について申し上げますならば、すでに
地方団体のうち七割を越えるものが
標準税率を越えて課税しておりますし、
法定税目のほかに、
地方団体が新税の設定を余儀なくされておりますものが、
課税団体で二千、税目で百種類を越えているのであります。たいていの団体がその税率で課税するものとして定められているはずの
標準税率で課税している団体が、むしろ例外でありましたり、
法定税目そのものが、かなりむりなものを拾い上げて、国民に圧迫感を與えておることを恐れております際に、その上さらに多くの団体が幾多の
むりな税目を設けざるを得ない状況に置かれているということは、
地方税收入のはなはだしい不足を示すものであつてそもそも
地方税制そのものが、破綻していると申さねばならないのであります。
現行地方税制は、すでに
国税附加税を捨てて、
独立税中心主義をとつているのでありますが、中枢をなす
事業税、地租及び家屋税の三收益税は、あるいは国の所得税や法人税と
課税標準を同じくし、あるいは国の決定した
賃貸価格を
課税標準とする等、なお著しく国に依存する態勢を改めていないのであります。
そもそも
地方自治の伸張そうとするならば、活動の源泉となるべき財源を豊富にするとともに、これを
地方団体みずからの責任において確保させ、もつて
自治運営に対する住民の鋭い監視と批判とを求めるようにして行かねばならないのであります。よ
つて地方税收入を拡充し、
地方税制の自主性を強化して、
地方自治の根基をつちかうことを、今次
地方税制改正の第一の目標といたしているのであります。
次に
現行地方税の主要な税目の個々について申し述べたいと存じます。
その一は事業に対する課税でありますが、
戰前地方税総額の二〇%を占める程度であつたものが、
現行税制で参りますと、昭和二十五年度には三五%内外を占めることになるのであります。しかも
事業税のうち個人の事業主の負担いたしますものが、戰前の五〇%内外から九〇%内外に増加して参つているのであります。このことは
現行事業税が二重の意味において不合理になつているのでありまして、すなわち第一には他の
課税客体に比べて事業の負担が重過ぎるということであり、第二には本来応益的に負担すべき
事業税が、大企業に不当に軽課されているということであります。
その二は、土地及び家屋に対する課税でありますが、
地代家賃統制令との関係があるからとはいえ、
戰前地方税総額の三〇%を占めていたものが、
現行税制で参りますと、昭和二十五年度ではようやく一〇%を占めるにすぎなくなるのであります。しかも他の税目と比べましても、かなり負担の均衡を欠いていることが感ぜられるのでありまして、
営業用乗用車ですらその一台の負担は畑地三十七町歩、家屋八百数十坪の負担に匹敵しているのであります。
その三は、住民税であります。元来戸数割を廃止して住民税が設けられた当時は、收入を目的にはしないで、單に
負担分任の精神を
地方税制の上に存置しておくための、ごく少額のものであつたのであります。ところが
地方財政の窮乏は、この税に相当多くの收入と弾力性とを求めざるを得なくなり、
自然団体間においても課税額にかなり大きな幅ができ、
標準税額の十数倍に達している町村も珍しくなくなつて来たのであります。こうなつて来ると、
応能原則を重視すべき租税としてもはや放任しがたくなつてしまつたといわねばならないのであります。
このような現状にかんがみ、
地方税制を根本的に改革して、国民の
地方税負担の合理化及び均衡化を確保することを、今次
地方税制改正の第二の目標といたしたのであります。しかしてこのような目標のもとに、のつとつた具体的な
地方税改革の方針は、
第一には、
財産課税の重課、
流通課税の整理、
消費課税の
減少軽減、
所得課税の増加、
事業課税の軽減、雑税の整理等を行い、
地方税全般にわたつて、その負担の合理化と均等化を徹底することであります。
第二には、
課税標準、税率等に関する
地方団体の権限を拡充して、
地方税制の自主性を強化するとともに、
道府県税と
市町村税とを完全に分離し、もつて
税務行政の責任の帰属を明確にすることであります。これによ
つて道府県税としたものは、普通税で
附加価値税、入場税、
遊興飲食税、
自動車税、鉱区税、
漁業権税及び
狩猟者税の七税目、目的税で
水利地益税であり、
市町村税としたものは、普通税で
市町村民税、
固定資産税、
自動車税、荷車税、
電気ガス税、鉱産税、
木材引取税、広告税、入湯税、及び
接客人税、の十税目であり、目的税で
水利地益税及び
共同施設税であります。
第三には、有力な直接税を
市町村税としてその收入の強化をはかるとともに、住民の
市町村行政に対する関心の増大を求め、もつて、
地方自治の基盤をつちかうとともに、
民主政治の推進を期することであります。
第四は、
特別徴收に関する規定を整備すること、
納税秩序を強化すること等により、税收入確保の方途を講ずることであります。
第五は、税率を全税目にわたつて明確に規定することにより、地域間における
地方税貞担の衡平化を期することであります。
かくして
地方税法を全文にわたつて改正したのでありますが、これによつて、昭和二十五年度において、
地方団体が收入することのできる税額は千九百八億円となる見込みであります。昭和二十四年度千五百二十四億円と比較すると三百八十四億円の増税ということになります。この地方税のほかに
地方財政平衡交付金の創設、
災害復旧費全額国庫負担等を行いますので、相当の財源が増加になりますが、もちろんこれにより
地方財源ははなはだしく潤沢になつたということはいえませんが、現下の
国民租税負担の現状にかんがみ、地方税としてはこの程度の増收にとどめることをもつて、適当すると考えた次第であります。
以下新税の創設、
既存税目の変更、
徴税手続の合理化の順に従つて、新
地方税法の内容を御説明申し上げます。
まず新設された税目についての説明でありますが、その第一は、
附加価値税であります。
附加価値税は
事業税及び
特別所得税を廃止するとともに、これらの
課税客体であつた事業の
附加価値に対し、
附加価値額を
課税標準として、事業所または
事務所所在の道府県において課税するものであります。
ここに
附加価値と申しますのは、
当該事業がその段階において、国民総所得に附加した価値を指すものでありまして、
生産国民所得の観念で申しますならば、
一定期間における
当該事業の総
売上金額より、他の事業から購入した土地、建物、
機械設備、原材料、商品、動力等を控除したものを言い、逆にこれを
分配国民所得の観念で申しますならば、賃銀、地代、利子及び
企業者利潤を合算したものと言えましよう。このような
附加価値額を
課税標準とするところの
附加価値税を、従来の
事業税にかえて創設するゆえんは、
第一に、従来の
事業税でありますと、まず
收益課税たる本質上、非転嫁的なものでありますがゆえに、今日の、ごとく所得の上に累積的に課税されているときにおいては、事業に対する負担が耐えがたいまでに重くなること。
第二に、
事業税の
課税標準は所得であるがゆえに、必然的に国税たる所得税及び法人税の
課税標準の算定の結果に追随せざるを得ないこととなり、
事業税課税についての責任の帰属を不明確にすること。
第三に、
事業税によるときは、所得のないものは常に課税を免かれるが、事業を継続している以上は、常に
地方団体の施設の恩惠に浴しているのであるから、事業はすべて応分の
地方税負担をすべきであることなどの欠陥を有するのに対して、
附加価値税においては、これらのいずれ
地方欠陷をも一応克服できる上に、
取引高税のごとく
重複課税とならないこと、企業の
垂直的結合を促進するがごとき欠陥を有しないことなどの長所があり、さらに進んで
固定設備の
購入代金が
課税標準から控除されますがゆえに、現下の
わが国経済にとつて最も必要であるところの産業の
有機的構成の高度化を促進するという効果もまた期待できるのであります。
しかして
附加価値税は、農業、林業並びに鉱物の掘採及び採取の事業に対しては、非課税の取扱いといたしたいと考えております。その由は、前二者につきましては、主として
固定資産税の負担が相当重くなつていることによるものであり、後者につきましては、別途鉱産税が存置されているからであります。
次に
附加価値税の税率は、
標準税率を四%とし、
最高税率を八%としているのでありますが、
原始産業、
自由業等につきましては、
標準税率を三%、
最高税率を六%とし、免税点はいずれも
附加価値額の総額が、十二月分として九万円を原則といたしております。さらに
附加価値税の
徴收手続は、
申告納付の方法によるものとしております。すなわち、法人にありましては、各
事業年度における
附加価値額の実績により、個人にありましては、各年の
附加価値額の実績によつて、それぞれ所定の手続に従いまして
申告納付するものであります。ただ六箇月を越える
事業年度を定める法人にあつては、六箇月を越えてから一箇月以内に、個人にあつては五月及び九月に、いずれも前
事業年度または前年の実績を基礎として、概算納付することといたしおります。
しかして、これらの場合におきまして、二以上の道府県にわたつて事務所または事業所を設けて事業を行う者は、
附加価値の総額を事務所または
事業所所在の
道府県ごとに、みずから法定の
分割基準に従つて分割し、その分割した
附加価値額を
課税標準として
申告納付するものとし、更正及び決定は、主たる事務所または
事業所所在の
道府県知事が、
地方財政委員会の指示に基いて行い、これに関する
関係道府県知事の異議も、同様の方法によつて決定することとなつております。
なおこれと関連しまして、
附加価値税につきましても、
青色申告書の制度を採用することとし、
納税義務者が
地方財政委員会規則で定める
帳簿書類を備えつけて、これに
附加価値の計算について必要な事項を記載しているときは、
青色申告書によつて申告させることができるものとし、その者については原則としてその
帳簿書類によらなければ更正または決定ができないものとしたのであります。
また、昭和二十五年度限りの
課税標準算定の特例として、金融業、運送業及び倉庫業につきましては、その選択によつて、総
売上金額の一定額をもつて
附加価値額とすることができるものとしておりますが、その理由は主としてさしあたり負担の急変を避けようとする趣旨に出たものであります。この
附加価値税の收入見込額は、昭和二十五年度四百十九億円、平年度四百四十一億であります。
所税のその二は
市町村民税であります。同じ税目は従前にも存していたわけでありますが、その性格を一変しているのでありまして市町村内に住所を有する個人に対しては、均等割及び所得割により、事務所、事業所または家、屋敷を有する個人、及び事務所または事業所を有する法人に対しては、均等割によつて課税せられるところの税であります。
従来の
市町村民税と異なりますのは、第一には、世帯主を
納税義務者とする家族主義的な構成になつていたものを、所得のある限りは成年者をすべて
納税義務者とする個人主義的な構成をとつていることであり、第二には、均等割、資産割及び所得割の三者によつて課税していたのを、資産割を廃止して、均等割と所得割の二者によつて課税することとしたことであります。第三には、法人に対しては均等割しか課税しないこととしたことであります。
しかして均等割の額は、人口五十万以上の市において、個人は八百円を標準とし最高一千円、法人は二千四百円を標準とし、最高四千円、人口五万以上五十万未満の市において、個人は六百円を標準とし、最高七百五十円、法人は千八百円を標準とし、最高三千円、これら以外の市町村において、個人は四百円を標準とし、最高五百円、法人は千二百円を標準とし、最高二千円としているのであります。他方、所得割につきましては、前年の所得税額を
課税標準とじ、その百分の十八を標準とし、百分の二十を最高とする方式、及び前年の課税総所得金額を
課税標準とし、百分の十を最高とする方式、並びに前年の課税総所得金額から所得税額を控除した後の金額を
課税標準とし、百分の二十を最高とする方式の、三方式のいずれかを選択し得るものとしておりますが、昭和二十五年度におきましては、第一の方式のみを採用することとしております。
なお
市町村民税は、前年において所得がなかつた者及び生活保護法の適用を受けている者、並びに不具者及び未成年者に対してはその全部を、同居の妻に対しては均等割を課さないものとしております。ただ未成年者及び不具者であつても、一定額以上の資産所得または事業所得を有し、かつ独立の生計を営む場合、または同居の妻であつても、その夫が
市町村民税の
納税義務者でない場合においでは、非課税の取扱いを受けないのであります。
課税団体は、六月一日現在において住所または事務所、事業所もしくは家、屋敷が所在した市町村で、その課税方法は賦課処分によるものとし、納期は原則として、均等割のみを納付するものは七月、その他のものは七月、九月、十二月及び二月の四回としております。また收入見込額は、昭和二十五年度において五百七十五億円、平年度において四百八十七億円であります。新税のその三は
固定資産税であります。
固定資産税は、土地、家屋及び減価償却の可能な有形固定資産に対し、その価格を標準として、原則として所有者に課するところの税であります。これは従来の地租、家屋税を拡充したものでありまして、そのおもな相異点は、
課税客体が土地、家屋のほかに、償却資産の加えられていること、
課税標準が
賃貸価格と異なり、価格であることであります。
しかしてその価格は、毎年一月一日の時価を基準としておおむね各市町村に設置される固定資産評価員の行う評価に基き、市町村長が決定いたします。この市町村長が決定した価格は、
固定資産税の課税の必要上、市町村に作成を義務づけられた固定資産課税台帳に登録し、
一定期間関係者の縦覧に供して確定することとしております。但し、昭和二十五年分の
固定資産税の
課税標準に限り、農地以外の土地及び家屋については、
賃貸価格の九百倍の額、農地については、自作農創設特別措置法による買收農地の対価に二十二・五を乗じて得た額とするものとしております。
また、償却資産の価格については、資産評価法の規定によつて再評価を行つた場合における再評価額の限度額と、同法の規定によつて償却資産の所有者が現実に行つた再評価額、または再評価を行わない場合にあつては、その資産の張簿価格とをにらみ合せて市町村長が決定するのでありますが、原則として資産再評価法による再評価額の限度額を、
課税標準たる価格とするよう指導すべきものと考えております。
固定資産税の税率は百分の一・七五を標準としておりますが、当分の間百分の三を最高とし、かつ昭和二十五年度分に限りまして、百分の一・七五に一定したのであります。いずれも課税の一條件を同一にすることによつて
課税標準額について存する不均衡の所在を明確にし、次の機会における固定資産の公正な評価を容易ならしめようとする趣旨であります。
なお、大規模の工場や発電施設が、近隣の市町村の公共費の支出に直接かつ重要な影響を與えたり、これらの地方における経済と直接かつ重要な関連を有する場合においては、
地方財政委員会がこれらの固定資産を指定し、これを評価してその価格を決定し、固定資産の存する市町村のいかんにかかわらず、その価額を関係市町村に配分することができるものといたしておりますのは、税源の極端な偏在を防止しようとする趣旨にほかならないものであります。
また船舶、車輌その他二以上の市町村にわたつて使用される移動性もしくは可動性償却資産及び鉄軌道、発送配電施設その他二以上の市町村にわたつて所在する固定資産のうち、
地方財政委員会が指定したものについては、
地方財政委員会が価格を決定し、その価格を関係市町村に配分するものとしておりますが、その趣旨は、主として関係市町村間における評価の適正を期そうとするところにあるわけであります。固定費産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とし、納期は原則として四月、六月、八月及び十一月の四回としておりますが、昭和二十五年度分の償却資産に対する
固定資産税に限り一月一回と定めております。この税の收入見込額は、昭和二十五年度において約五百二十億円であり、平年度において五百七十八億円であります。
第二は、
既存税目に対して加えられた変更に関する説明でありますが、その一は入場税に関するものであります。第一点は、税率を従来の十五割の部分を十割に、また従来の六割の部分を四割に、それぞれ三分の一づつ引下げることであります。第二点は、新たに参課税除外の規定を設けたことでありまして学校、社会教育団体、社会事業の経営者等が主催する学生、生徒、児童またはしろうとの行う催しが行われる場所への入場に対しては、その催物の純益がすべて学校、社会教育、社会事業等のため支出され、かつ、関係者が何らの報酬を受けない場合に限つて入場税を課さないことができるものとしたのであります。第三点は、催物の主催者等に所定の入場券または利用券の発行義務を課するとともに、入場者が入場しまたは利用者が利用する際に、その入場券または利用券の一半を切り取つて他の上半を入場者または利用者に交付する事務を課したこと、及び全員を無料で入場させた場合であつても、その状況により経費を
課税標準として課することができるものとしたこと等、徴收の強化をはかつた点であります。
その二代
遊興飲食税に関するものであります。第一点は、現行の税率十五割、八割、五割及び二割を十割、四割及び二割に引下げ、もつて負担の軽減徴税の適正化をはからんとしたことであります。第二点は、條例で領收書発行及び証紙使用の義務を課し得るものとし、乱れがちな
遊興飲食税の徴收を確保する道を規定したことであります。
その三は、
自動車税、
漁業権税、自転車税、荷重税、広告税、入場税、及び
接客人税についても、新たに
標準税率を定め、もつて地域間の負担の均衡化をはかるとともに、その課税手続、救済、罰則等に関する所要の規定を整備して、納税者の理解に便ならしめようとしたことであります。
第三は、賦課徴收について改正を加えました諸点に関する説明であります。
その一は、過納にかかる
地方団体の徴收金を納税者に環付し、または未納の徴收金に充当する場合において加算金の制度を創設し、もつて納税者の権利の保護に欠けるところのないようにしたことであります。
その二は、納税者または
特別徴收義務者について滞納処分、強制執行、破産宣告等があつたときは、
地方団体は、その徴收金について交付要求をなし得るものとし、もつて税收入の確保に遺憾なきを期したことであります。
その三は、納税者に交付すべき徴税令書には課税の基礎及び税額算定の根拠を明確に示さなければならないものとし、もつて納税者の保護とその納税への協力を期したことであります。
その四は、入場税、
遊興飲食税、
電気ガス税、
木材引取税等を
特別徴收によつて徴收させるときは、特別微收義務者にその徴收にかかる税金を申告納入させることとするとともに、入場税
遊興飲食税の
特別徴收義務者が
特別徴收をする場合においては、そのことを明示する証票の交付方を
地方団体の長に申請するものとし、その交付を受けた証票を店頭その他公衆の見やすい個所に貼付しなければならないものとし、もつてこの種租税徴收の強化をはかつたことであります。
その五は、
納税義務者が
申告納付し、または
特別徴收義務者が申告納入する場合においては、延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金の制度を、また督促状を交付した場合においては、延滞加算金の制度をそれぞれ新たに設け、もつて納税意識の高揚と滞納の絶滅を期したことであります。
その六は、所要の罰則規定を整備して、徴收の強化をはかつたことであります。なお今次改正によつて廃止される税は、さきに成立いたしました
地方税法の一部を改正する法律と合せ、道府県民税、地租、家屋税、
事業税、
特別所得税、不動産所得税、酒消費税、電話税、軌道税、電柱税、船舶税、舟税、金庫税、と畜税、使用人税、漁業権の取得に対する
漁業権税、自動車の取得に対する
自動車税、自転車の取得に対する自転車税、荷車の取得に対する荷車税、都市計画税等の多数に上るのであります。
以上を要するに、今次改正案は実に我が国の地法税制の創始以来の画期的なものであり、特に
附加価値税、
固定資産税及び
市町村民税の三大新税の創設、
道府県税体系と、
市町村税体系との明確な分離、及び賦課
徴收手続の明確化等の諸点においてきわめてすぐれた特色を有し、
地方財政の確立ないし
地方自治強化のために偉大なる貢献をなすべきことが期待されるのでありますが、反面それだけに、新
地方税制の実施にあたつては、幾多の困難と障害とが予想されるのでありまして、一言いたしたいのは、国民大衆に今次の国及び地方を通ずるところの税制改革において、租税負担の軽減を衷心より希望し、かつ、現に国税については所得税及び法人税において相当の減税が実現される見通しにあるにもかかわらず、ひとり地方税のみが逆に負担が重くなるということはきわめて解しがたいという意見と、
地方団体の徴税能力では、新たな
地方税法の運用にあたつてはきわめて無力であり、その結果
地方税收入の確保も期し得ないし、また地方住民の受ける圧迫感も増大するであらうという意見についてであります。この二の意見の中に、前者については、冒頭に述べましたような
地方財政の現実の下において、国政民主化の推進力ともいうべき
地方自治の基盤を確立しなければならぬという至高の要請にかんがみ、
地方財政を確立するために当然避け得られないところともいうべきでありまして、この点、
地方税負担の重くなることは、まことに遺憾でありますが、わが国政治の発展を期待する上からは、真にやむを得ないところであると御了解いただきたいのであります。また後者につきましては、確かに現在の地方税務機構をもつて足れりとは考えていないのでありまして、要員の急速な充足ないし教養訓練の徹底によつて、質量ともにすぐれた税務機構を確立するよう都道府県、市町村ともにせつかく努力していることを申し上げておきたいと存じます。私といたしましては、新
地方税制が国民朝野の絶大なる理解と協力のものとによくその所期の目的を達成し、もつて
地方自治の確立を通して、国政民主化の上に一大金字塔を打ち立てんことを望んでやまないものがあります。
以上改正法律案の
提案理由について、御説明申上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに議決あらんことを望みます。