○
田中(織)
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題にな
つております
日本勧業銀行法等を
廃止する
法律案、並びに
銀行等の
債券発行等に関する
法律案に対しまして、反対の意思を表明するものであります。
日本勧業銀行法等の
廃止によりまして、これらのいわゆる特殊銀行が普通銀行と同一になるということでございまして、一見いわゆる形式的に言う民主化にマツチするがご
とく見えるのであります。問題はこれらの金融機関の民主化の問題は、これをいわゆる特殊銀行という名称を
廃止しただけによ
つて、民主化が達成できるのではないのであります。特殊銀行という名称はついてお
つても、実質的にこれが民主化され、るということが真の民主化であることは、三歳の童子といえども知
つておることだと私は思うのであります。すでに実質的には、勧業銀行にいたしましても興業銀行にいたしましても、普通銀行的性格を持
つて参
つておるということは、いなめない事実であります。それがこれらの特殊銀行に対して、
国民一般から期待しておることに対する大きな裏切りにな
つておるということは、これまたいなめない事実でございます。ことに勧業銀行にとりましては、いわゆる不動産金融に対する新たなる
国民の要望が強ま
つておるときに、今日勧業銀行が実質的には普通銀行にな
つてしま
つて、勧業銀行本来の使命ともいうべき不動産金融の問題につきましては、まつたくこれをたな上げしておるという事実は、これはたとえば、不動産金融による長期産業資金の調達という見地から見まして、強くこうした面で勧銀が本来の使命にもどるということが強く要望されておることは、私は事実だと思うのであります。興銀につきましても同様なことが言えるのでありまして、今日のいわゆる興業銀行について申しますならば、これは中小企業といわず、大企業といわず、設備資金の調達をいたすためには、興業銀行にたよらざるを得ない実情にあるにもかかわらず、窓口から参りますならば、やはり設備資金、そういう点が興銀の本来の貸出しの使命であるということを申しますけれども、いざ
審査が済んで実際の面に参りますと、なかなか設備資金は出さないで、短期のひもつき融資、その他の融通資金の面の貸出しなら応ずるという形に興業銀行が運営されていることは、これは一たび興業銀行の門をくぐつた者のひとしく体験しているところだと思うのであります。問題はこうした特殊銀行という名称を
廃止いたしまして、普通銀行にすることによる形式的な民主化にあるのではなく、私は民主化の実質をいかに達成するかということにあるのでなければならない、こういうことを申し上げなければならないのであります。
さらにこれらの勧業銀行にいたしましても、興業
銀行等にいたしましても、特殊銀行は従来
国家からの手厚い
損失の補償、その他の
関係を持
つて参
つておるのでありますが、これをこの特殊銀行法の
廃止によりまして普通銀行化したといたしましても、現にこれらが
国家との結びつきにおいて官僚的であり、非民主的である要素が、そのまま普通銀行に
なつたからというて踏襲されたのでは、私の主張いたしますところの、真の金融機関の民主化の線には決して近寄らないのでありまして、われわれはそういう観点から、この勧業銀行法等を
廃止する
法律案に対しましては、反対の意思を表明するものであります。
次に
銀行等の
債券発行等に関する
法律案でございますが、これにおきまして、いわゆるわれわれは前段の
日本勧業銀行法等の
廃止に反対する理由で申しましたように、これらの特殊銀行、あるいは商工中金、農林中金等の金庫の特殊金融機関におきまして、
一つの資金調達の
方法といたしまして、今日、ドツジ・ラインによるところの金融政策がきわめてへんぱな形において行われておる段階において、債券発行の限度引上げによるところの資金調達ということにつきましては、われわれあながち反対はいたしません。しかしながらこれをそういう特殊金融機関からさらに普通銀行に至るまで、いわゆる銀行法の適用によるところの銀行すべてにこの
制度をしくということにつきましては、われわれは異論をさしはさまざるを得ないのであります。
そういう点と、それからこのたびいわゆる銀行の増資による優先株を、見返り資金で引受けるという道を開こうとするのでありますが、これにつきましては現に勧業
銀行等におきましては、この見返り資金による優先株の引受けにつきまして、勧業銀行内部においても必ずしも賛成の意見がないということでございます。実質的には、結局勧業銀行あるいは興銀その他商工中金、農林中金等の
関係に限定されるやの
政府側の答弁もあつたように、われわれは聞くのでありますが、見返り資金によるところのこうした銀行の増資優先株の引受の効果の問題につきましては、われわれは先ほど自由党の前尾君が賛成討論に述べられたこととは、反対の結論に到達しているのであります。見返り資金の運用の問題につきましては、根本的にはこの運用の自主権をいかに確保するかということにあることは、何人も異論のないところであります。その自主権を確保するという見地に立ちますならば、これは廃業に対しまするところの直接投資が最も望ましいことは、言うまでもないのであります。今日自主権がきわめて不十分であります
関係から、直接投資というのはきわめて困難な、またむずかしい手続を要するところから、直接投資の
方法がとられていないのでありますけれども、私はこれは本来ならば産業に対する直接投資の形が、一番望ましい形態だというように
考えるのであります。債券の発行によること、あるいはこうした優先株式の見返り資金による引受というような形において、銀行の資金が調達されましても、今日債務償還、国債償還に現われておりますように、金融機関の持
つている国債が
国民の血税によ
つて償還されたといたしましても、これが貸出しとな
つて現われるという効果がほとんど見ることができない。これは私は厳然たる事実だと思うのであります。それは
政府側によりますれば、そういう形において銀行の手持資金がふえるならば、勢い貸出しの方にまわる資金がふえることになるのだ。ある意味におけるいわゆる間接投資の形になるということを強調されるのでありますが、現実に二十四
年度におきましても、見返り資金によるところの債務償還等も行われている。公債等に対しましても、いわゆる
国民の血税からの償還が行われておりますけれども、現実にそれらの資金が産業資金とな
つて貸し出されたかといえば、むしろ逆な結果である。そのように調達された資金が、すべて日銀に還流するという形に相な
つて、そこに日銀券の発行高が三千億の台を割るというような、極端なデフレ現象が今日出ているということは、これはいなめない事実だと私は思うのであります。そういう観点から、われわれは見返り資金の
関係につきましては、むしろこれは直接投資の方向に持
つて行けるように、この見返り資金運用の自主権を確保するという方向に向
つて努力するということが、先決問題ではないかということを
考えるものであります。
さらにこうした形において、相当のいわゆる長期資金を調達することができるのだということを、賛成論者は申されるのであります。長期資金の調律の
方法としては、これが
一つの
方法として
考えられることは言うまでもありません。しかし今日の金融政策の面におきまして、最も難点とな
つている問題は、そういう形において調達された資金の貸出しの方針に現われて来ているのであります。ドツジ・ラインに従うところのいわゆる健全金融政策、この見地から、もうからぬところには貸すな、貸倒れのおそれのあるところには金を貸すなという、この健全金融方式——今の公債の償還にいたしましても、今日のこの
法律の処置におきまして、見返り資金あるいは
債券発行等の形において調達された資金も、今日健全金融の名において、貸倒れのおそれのある中小企業等には貸さないという厳重なる方針が、金融機関を拘束しておる限りにおいて、今日の金融難は決して打開できないのであります。むしろ金融政策の転換は、こういう形式的な問題にあるのではなくて、実質的なそういう点になければならぬ。同時に今日いたずらに
自由経済を自由党の諸君が謳歌せられておりまするけれども、戰勝国におきましてもやはり
国家資本の力がきわめて増大しておるということ、これは歴然たる事実であります。ことに中小企業の
関係におきましては、これは金融機関みずからが申しておりまするように、最悪の場合における
損失の少くとも半額程度の国庫によるところの
損失補償というような政策がとられて、初めてこうした面への貸出しが円滑に行くのではないかということを、われわれは
考えておるのであります。そういう見地からいたしまして、われわれはこの
銀行等の
債券発行等に関する
法律案につきましても、遺憾ながら賛成することができないということを申し上げて、討論を終る次第であります。