○西村(直)
委員 これは私だけでなくして、シャウプ勧告にはつきり出ておりますので、いわゆる
納税者の
納税義務という思想を普及すると同時に、これに対してこの義務をかなり強化するわけであります。今回の
税法で、また
税務官庁自体も、新しい
税法になると、どうしても今度こそ新しく
なつたからしつかりやる、あるいは
青色申告を出さないからこうだというような、いろいろ問題が起
つて来る。そうした
納税の確定について、あるいは確定後において問題が起
つた場合に、どうしてもこうした
租税事件だけを担当するところの
裁判所を置くことが必要じやないか。この点は御
研究の必要がある。
第二点は、刑政長官の直接の管下にあるところの
税務係
検事の問題であります。実は現在の実情から見ますると、特に
一つの例を
中小企業者などに求めますと、たとえば私はこういう具体的な事例を知
つておりますが、百万円の物品税の脱税をした、そうすると旧法によ
つて五倍ただちにかか
つて来る。合計六百万円――しかも小さな中小商工業者は五百万円の赤字を出しておる。なるほど過去において百万円の脱税をしたことは惡いが、その人が五百万円の赤字に際して、さらに六百万円を出さなければならない。すなわち言いかえれば一千万円以上のそこに借金ができる。どうにもならない。それから
税務署の方で、最後にはもし納めなければ告発をしますという、ただ簡單な答えがある。それからそれが
検事局へ移れば、
検事局ではただ犯罪の面だけや
つて行く。そうすると一人の人が要するに刑務所に行
つて、どうにもならないという現状が起
つておるのを私は一、二見ております。また具体的な事例として、いまひとつ私は非常に遺憾な事例と思
つたのでありますが、なるほど物品税を脱税しますのは犯罪でございます。そうしてそこに最低五倍の追徴がついて来る。しかもさらに
経済調査庁方面が
検事局と連絡をと
つて、
経済事犯となる。私は前の
国会で申し上げましたが、首をつらして足をひつぱるような印象を受ける。これはたまたま見つか
つた者が不運であるというような印象を與えておる場合が多いのであります。私は
経済の現状を
考えますと、いわゆる
税務係の
検事さんが、よほど金融なり
経済の実態をよく把握しまして、脱税者の事犯の
扱いをなさ
つていただくように、強い御希望を申し上げたいのでありますが、特に一番業者その他弱体なもので脱税にかか
つた者が弱
つておりますものは、身柄が拘束される場合であります。中小商工業者におきましては、身柄が拘束される場合には、一家の事業が完全にストップするわけであります。一切こまかいことから大きなことまで一人でや
つておるという場合に、ややもすると
検事さんがそういう点についての十分なるお
考えがない。いわゆる普通の強力犯と同じような
考えで、判事の令状をも
つてどんどん御執行になるということがあると私は思うのであります。それらの御監督をお願いできるかどうか。特に昨日
大蔵大臣からもありがたい御答弁をいただいたわけでありますが、今回加算税、延滯金等は従来二十銭あるいは十銭というような高率であ
つたものを、四月一日から八銭なり四銭に切りかえる。しかもそれをさらに單行法をつく
つて、今回
国会にかけて、これが通過しますれば一月一日にさかのぼ
つてこれを実施して行く。すなわち
納税者あるいは滯納者にと
つては非常に便宜でありますが、いまひとつこれは
検事局におかれましても、
税制が四月から新しくなり合理的になるならば、過去の、しかも比較的みんなが見て鼻血も出ないような
中小企業者に対しては、
税金が納まらない、脱税したというような場合にも、できるだけ起訴猶予または不起訴、こういうような手をおとりになるように、検察陣に対しまして御指揮ができるかどうか、こういう点であります。御存じのように昨今は町におきまして話題になりますものは、金詰まりと
税金、しかも話題の問題は
中小企業者であります。この
中小企業者が二十三年、二十四年のいわゆるしわの寄
つた税金の滯納なり脱税なりに対して、最後には牢獄の手がまわ
つて来る。しかして四月一日から新しい
税法が生れようとしている。この際に過去の問題に対しては、ある
程度経済の実情に合うようにや
つていただきたいことが
一つであります。特にこれは
検事さんの惡口を言うわけではありませんが、昨今検察
当局をごらんいただきますと、外地からお引揚げに
なつた
検事さんが
相当入
つておられます。また民間からお入りに
なつた方もたくさんありまして、それらの方々には立派な方もあるが、一面においてずいぶん乱暴な検察をおやりになる方もあります。私も今日
検事の資格審査の
委員の一人にはな
つておりますが、
検事さんの行動に対してはなかなか監督が薄いわけであります。言いかえれば、か
つては警察がファショであ
つたと言われたが、今日はうつかりすると
検事ファショという言葉が出て来るのであります。そういう意味で
経済方面、特に抵抗力の小さい
中小企業、しかも今日非常に困難な立場にあるものに対して、むずかしい
税法――しかも
税法の切りかえが行われ、
経済の波が荒れているときにあた
つて、検察の最高幹部の方々といたしましては、十分な注意をも
つて新
税法を施行されると同時に、従来の比較的――脱税はみな惡質と言えるでありましようけれ
ども、生きるために脱税をしなければならぬ、あるいは企業採算がとれなく
なつた結果として、どうしても税が納まらぬというような場合の
扱いについては、今後施行になるであろうところの新
税法が合理的であるだけに、合理的にやるならばそこに摩擦が起るという点についてお
考えにな
つて、十分なる御監督なり御指示をいただきたいと思います。この点に対する御所見を伺いたい。