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平田政府委員 昭和二十五年度の税制
改正後におきまする
所得税の見積りにつきましては、先般お手元にその
根拠を詳しく説明したものを差上げておいたわけでありまして、その基礎はすでにその資料によればおわかりになりますようりに、すべて二十三年度分の課税実績をもとにいたしまして、それに対して生産、物価、雇用、
賃金、それぞれの最近における数字の増加歩合を乗じまして課税
所得を見積つたのであります。その際におきまして、私
ども一応生産につきましては、経済安定本部の昨年の十一月ごろ推計しましたところの見積りによることにいたしております。それから物価、
賃金の水準につきましては、これはいろいろ問題があろうかと思いますが、やはり見積りといたしましては、その当時の
状態が横ばいするというふうに見積るのが、一番妥当であるという
見解を持
つているのでありまして、大体九月ごろの水準が二十五年度においても引続き維持するものとして、
所得を
計算いたしております。その辺に、今奥村委員の
お話になりましたように、問題の点があろうかと思いますが、
予算の見積りといたしましては、さような
方法をとるのが一番妥当であり、かつ無難であろうと
考えまして、さような見積りをいたしているのでございます。ただ米価についてだけは、公定価格をある
程度引上げるということを当然食管特別
会計においても予定をいたしております。春作も多分一六四パリティー、秋作が一六八パリティーという予定を一応いたしておりますので、農業
所得の
計算については、そのパリティーをもとにして増加率を予定いたしております。その点国民
所得とちよつと
計算を違えておりますが、さように見ております。それからさらに二十四年におきまして、御承知のように滞貨が
相当増加いたしております。
従つて滞貨が増加しますと、生産国民
所得は物価が下らない以上それだけふえるのでございますが、各人に帰属するところの分配国民
所得は必ずしもふえるとは言いがたい。なかんずく課税の場合においては、まだ現実に
処分しないで
所得が実現しませんので、滞貨の増によりまして、生産がふえたもののうち滞貨の増に見合う分につきましては、ある
程度生産の増加歩合を低目に見ております。この点は安本の
計算しております国民
所得の
計算よりも生産の数字は私
どもの方が低くな
つております。二十四年度においてそういう事情にあるということも、生産を見る際にある
程度考慮に入れて見積りを立てたのでございます。そういうことを
前提にいたしまして、それぞれ計数はいつかお手元に配りました数字によ
つて御検討願います。それで課税
所得の全体としての増を見込む。それに対しまして二十三年にくらべますと年数も二年の間がございます。それから
税法の
改正によ
つて相当所得の把握も合理的に行き得る可能性がより多くな
つて来た。かように見るわけでありまして、そういう意味からして把握の増につきましても、
勤労所得と農業
所得は三%
程度把握の増になる。それから営業
所得は前々から非常に問題がございましたように、なお
調査不十分の点が
相当ございますので、この方は六%
程度二十三年度に比べて二十五年度は把握が増す。これは一面におきましては申告がよくな
つて、それだけふえる部面も出て来る場合もございましようし、他面におきましては税務官庁の能率が増進いたしまして、
調査が正確に行くということによ
つて出て来る面もあろうかと思います。要するにそういう
考え方からいたしまして、
勤労所得と農業
所得につきましては三%
程度把握がふえる。そのほかの営業
所得につきましては六%
程度ふえる。それをさつき申しました生産、物価、
賃金、雇用等の増減指数とさらに相乗じまして、二十五年度の課税
所得の推計をいたしておる次第でございます。その推計しました結果の数字は、さらに先ほどお配りしました階級別の表としまして、詳しくお示しいたしておる
通りでございます。それに対しまして今度の
改正後の税率を適用しまして、それぞれ
税額を算定いたしたわけでありますが、一応單に
改正前の
税法を二十五年度にそのまま適用して算出しました場合と、
改正後の
税法を適用して算出した場合と、その差額が、前々から申し上げておりますように、形式的に行きますと、
税法改正による純増減ということに相なるわけでございますが、この数字は
相当大きな数字になるのでございます。
その大体を申し上げますと、まず基礎控除の引上げによりまして、約三百九十億円
程度の減になると見ております。今申し上げましたような見方からいたした場合であります。それから扶養控除を、今まで
税額控除で一人当り千八百円から、
所得控除で一万二千円に改めたのでございますが、それによりまして
相当減収になるのでございまして、七百八十億円
程度の減、それから税率の
改正によりまして、五百十七億円
程度の減、これに反しまして勤労控除は二割五分を一割五分の控除に改めましたので、この方は逆に二百二十八億円
程度の増、合算課税の
廃止によりまして二百八十億円
程度の減、配当
所得の軽減等によりまして二十億の減、扶養控除の範囲を学生なり、成年者にも拡張いたしておりますが、それらによりまして七十六億円
程度の減、変動
所得の課税
方法をかえたことによりまして二十三億円の減、再評価による減価償却費が約二十億円の減、雑損のいろいろな災害の控除とか、あるいは医療費の控除等によりまして、約十五億円
程度の減であります。その他いろいろこまかい事項が若干ございますが、全体としまして差引き増減しますと、機械的に適用しますと、
所得税におきましては千九百億円
程度のものが、
税法の
改正によりまして減ということに相なるわけでございます。と申しますのは、来年度の
予算に見込みました課税の総額を、そのまま
改正なかりし場合において、同じ課税標準があるということに限定いたしまして、現在の
税法を来年そのまま適用した場合の、今申し上げましたような賦課見込額に対しまして、
改正後の
税法を適用いたしましたことによりまして、かような減收を来すわけでございます。従いまして
税法の
改正といたしましては、前々から申し上げておりまする
通り、税率控除等は
予算額の増減が示すより以上に大きなものがあるということは、この数字が物語
つておる
通りでございます。
そこで最後に、しからば千五百億の申告
所得税がはたして入
つて来るか、入
つて来ないかという問題でございますが、繰越しにつきましては、大体この説明にありますように、二百七十億円
程度が繰越すものと見ております。二十四年度から二十五年度に滞納になり、あるいは二十四年度中に賦課すべきものが、二十五年度に賦課されるというようなものを、約二百七十億円
程度見込んでおります。従いまして来年度の分としましては、それを差引きました約千二百三十億円
程度が、二十五年度の新
税法に基く歳入ということに相なるのでございます。これがはたして入
つて来るか来ないか、これは確かに問題はあろうかと思います。税率控除が今申し上げましたように
相当大巾に下
つておりますので、課税
所得が先ほど申し上げましたように、生産物価が
予算で見込んでおります
通り行くか行かないかということと、それから能率がある
程度上るか上らないかということが、実はわかれ目になるわけでありまして、私
どもといたしましては、一応この
予算を見積りましたときの
状態のもとにおきましては、やはり
改正後におきましても、この
程度の
收入は上げることが可能ではなかろうか。またこういうようなことに行きましてこそ、初めて従来から非難がありました税率が高過ぎる、あるいは控除が低過ぎてどうもまじめに納めている人は非常に高い負担になり、抜けておる人ほどうもいい加減な負担にな
つておる。こういう
関係を少しでも是正するということが必要でございますので、
政府といたしましては、おそらく
国税庁非常に今後問題があろうと思いますが、
所得の
調査、その他につきましても万全な
方法を講じまして、極力
税法通りの税務執行ということに努力することに相なるかと思います。しかいたしますならば、現在のところ大体におきまして不可能ではないと
考えておりますが、ただ最初に申し上げたように、物価水準を大体九月の水準で横ばいするということを
前提といたしております。生産の方は大体におきまして予定
通り行きつつあるようでございますし、これはまた私は
政府の今の政策が予期
通り行きますれば、でき得るのではないかと思いますが、物価水準の方がはたしてどういう方向になりますか。これによりましていろいろ問題が出て来るのではなかろうか。しかし現在のところは、
政府といたしましては、あくまでもやはりディス・インフレーシヨンの線を堅持しまして、物価水準として全体として大巾な下落をするというようなことは、政策上もやらないように努めるということにな
つておりますし、一部の非常に高いやみ価格等が
相当下ることもあううと思いますが、全体としましてはそれほど大きな異動をこの際予測するのは妥当ではない。こういう
考え方からいたしますと、現在の
状況のもとにおきましては、この千五百億円の申告
所得税の
收入を見込みますのは、私
どもとしましては妥当ではなかろうか。もちろん今後いろいろ現実経済の推移に対応しまして、
状況の変化がありました場合におきましては、そのときに応じまして歳入
予算あるいは歳出
予算等につきましても、調整の必要が出て来るかもしれませんが、現在のところといたしましては、いまだそのようなことを
考える必要はないのではあるまいか。大体原案によ
つて御審議願
つてさしつかえないのではないか、かように
考えておる次第であります。