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池田国務大臣 金詰まりの問題は、昨年の夏ごろ以来大きい問題で、われわれもできるだけ金融の緩和をいたすべく努力いたしておるのでありますが、何分にも今までのずつとや
つて来たインフレを急速にとめますために、一時的には
相当金詰まりの問題は覚悟しなければならぬのであります。すなわち過去十数年来
事業家は物をつくればもうかるし、物を買い込めばもうかる。こういうことにならされて来てお
つたのであります。何でもかんでも仕事をふやせばもうかる時代であ
つたのでありますが、こういうインフレの
状態をとめるということになりますと、そこに一時的の金詰まりの現象が起ることは当然なことであるのであります。ただその金詰まりによ
つて日本の
経済界が根底からこわれる。こういうことがあ
つたならば、これは角をためて牛を殺すのそしりを免れませんので、そういうことがあ
つてはならない。しかしとにかく片方でインフレをとめながら、なお片方では
事業活動を続けて行くのには、ある程度の金融ということはもちろん
考えなくてはなりませんので、昨年の八月以来いろいろな手を打
つて来たのであります。最も困
つておられる方は中小企業の方でありますのでいろいろな手を打ち、また今後も打たんといたしておるのであります。何と申しましても金がないというのではなく、金をうまく使
つて行く
制度が完備していない、こういうことにあると思うのであります。従いまして勧銀あるいは興業銀行、農林中金、商工中金等を使いまして金融債を発行せしめ、これによりまして主として長期
資金を調達する準備をいたしておるのであります。これも本
国会で御承認を得まして、四月ごろからスタートするのでありますが、それまでに非常な金詰まりが起
つてはいけないという
考えのもとに、私は最近ある種の
措置を講じたいと
考えております。昨年の暮れからとりました策といたしましては、年末に預金部
資金を百億円も出しましたし、また先般公団
関係の滯貨あるいは未
收入金の処理につきまして、預金部の金を百五十億円使うことにいたしております。また復興金融金庫で余裕金が八十億円ばかりありますので、このうち五十億円は短期の
資金とし、また三十億円は来年の四月までの長期の
資金として繰出しております。また見返りから月一億円という
制度を開始し、この一億円も要求があればもつと増額して行くというような
措置もと
つておるのであります。今後とる方針としましては、最近金融債発行までの経過的の
措置として、ある程度の金融
措置をとりますと同時に、
政府の持
つております余裕金を活用して行きたいという
考えで、手続を進めておる次第であります。片一方
徴税が問題になりますので、
徴税につきましても今の金融
情勢を見はから
つて徴税の円滑を期するように、国税庁方面には指示いたしておるのであります。ただ非常に問題にな
つておりますところの中小工業、ことに全体から申しますと申告納税でございますが、御
承知の
予算では
勤労所得に対する税は千二百九十億円、それから中小企業を
中心とし、農業者も加えてでございますが、申告納税は千七百億円、こうな
つております。
勤労者の納められます税は、今年度においてもう千億円を越えておる。しかし
事業者、農業者、商業、工業あるいは自由職業の方々の納められた
税金は、まだ七百四十億円程度にしかな
つておりません。これは申告納税の当然の結果とは言いながらも私は
勤労者の
税金と
勤労者以外の農業、商工業あるいは自由職業の
税金との徴收が、商工業者、農業者の分が非常に少いというのはどこかに原因があると
考えておるのであります。従来
勤労所得と
事業所得の差というものは、
事業所得の方がうんとたくさん入るのが普通なんであります。しかしここに一、二年の
状態から申しますと、少くとも昨年の
状態から申しますとそれが逆にな
つております。これはどこに何があるのか、一方では苛斂誅求、
税務署が非常にひどいことをやるように言われておりますが、私は
納税者の方にもある程度の責任があるのではないかということを
考えまして、
徴税の適正、完璧を期するために極力実
額調査をや
つて、むりな
税金をとらぬと同時に、とり足らぬことのないように
指導はいたしております。ただいかにもこの一、三月の金詰まりの
状況を見まして、公売をするようなことはしばらく待
つた方が、金融
情勢からしていいのではないかという
考えで、公売処分はしばらく見合せるようにというふうな
指導はいたしておりますが、金の方にも気をつけますし、また
徴税の方にも十分妥当な
方法を講じて行きますれば、この一、三月の乗切りは大して心配はいらぬと
考えております。