○竹村
委員 私は現在提案されました
食糧管理特別会計の
歳入不足を補てんするための
一般会計からする
繰入金に関する
法律案に対しまして、
日本共産党を代表して反対するものであります。
本
法律案そのものは、農作物の共済掛金の一部を
消費者に
負担さすことなく、
一般会計から二十六億九千二百一万一千円を限り繰入れるというのが本法案の理由でありまして、そのことだけには問題はないのであります。しかしながらはたしてそれだけの金額が
一般会計から繰入れられなければ、
消費者の価格を上げなければならないかどうか。この点について大きな問題があるのであります。
まず第一点といたしましては、
昭和二十三年は一石当りの中間経費は二百三十五円であります。ところが二十四
年度にはどうな
つておるか。それはだんだん大きくな
つて二千五十円という中間経費をとるようにな
つた。これを一箇年の総額にいたしますならば、約六百六十億という厖大なものにな
つて参りまして、毎年々々この中間経費というものは増大しておるのであります。本
年度開かれました米価審議会におきましては、中間経費は一石一千円にとめよという條件を付して、あの米価
決定に対するところの四千七百円というものが答申されておるにもかかわらず、それの倍もかかるところの二千五十円というような厖大な中間経費というものが使われておるのであります。
第二点といたしましては、二十四
年度におきますところの農家の供出せる米は、いわゆる検査
制度の強化によりまして、二十三
年度に比べますならば、二十三
年度は米の等級は一、二等というのが大体七割ないし八割あ
つたのでありまして、三等、四等、五等というものは二割ぐらいしかなか
つたのであります。ところが俄然二十四
年度に至りましては、もちろん凶作であ
つたということも理由でありますけれ
ども、一、二等はわずかに二割ぐらいしか通
つていない。そうして三等、四等五等というものが約八割という検査を行
つておるのであります。
従つて米の買上げ値段が、一、二等を二割にし、あるいは三等、四等、五等を八割にしたといたしますならば、この買上げ代金においての差は一体どれだけあるか。これは約百億円に達するのであります。しかもこの百億円に達するところの相違の代金、これに対して
消費者価格を下げるのかと本
委員会におきまして質問いたしましたところが、
政府当局といたしましては、その金は微々たるものであ
つて、
計算の中に入れることはでき得ない、こう言
つておるのであります。しかしながら実際において一、二等を八割にし、三等、四等、五等を二割にするならば、本
年度において百億円というものが多くいることになり、もしこれを反対の八割にするならば、百億円少くなる。しかしこれに対して配給価格の算定を質問しましたところ、
政府当局は昨
年度の例になら
つて、
消費者価格を大体総合
計算によ
つてこれをきめたということを、はつきり
答弁しておるのであります。そういたしますと、昨
年度の一、二等が八割であ
つたということが基準とな
つて、
消費者価格がきめられておるのでありまして、それが一、二等が二割になりまして、その差が百億円に達するとするならば、それだけ
消費者に還元しなければならないのであります。しかしながらそのことを行わず、しかも安い米価に困
つている農家に対して幾分でもこの金を渡すのかと申しますと、そうではないと
政府は
答弁しておるのであります。これだけでも百億円というような問題があるのであります。このことは結局
消費者には高い米価を押しつけ、生産者には安い米価で買い上げ、そうして多くの中間経費をとりながら、なお等級の面においても百億に
相当するところの金額を、
政府はどういうふうに使おうとしているのか。おそらくこれは利潤の増大を意味するのでありましようけれ
ども、われわれが仄聞するところによれば、おそらくこれは食管特別会計の赤字の補填になるのではないかという危惧を持つのであります。
第三点といたしましては、
政府は
昭和二十五年十一月一日への食糧持越量を二百九十一万六千トンと予定しておるのでありまして、そのため大体外国食糧三百七十万トンの輸入を
考えておるのでありますが、現在世界の食糧事情というものは、生産の増大によりまして非常に明るい見通しを持つようにな
つておるのであります。たとえば
日本経済新聞二十一日付の報ずるところによりますならば、アメリカにおいては戰前は実施されていたが、ここ十年来はいろいろ食糧の需給のため必要のなか
つた生産割当制、すなわち小麦、綿花、とうもろこし、米などの主要食糧も作付面積の制限を受けることにな
つておる、こういうように報ぜられでおるのであります。つまりこのようにして世界の食糧生産というものは非常に増大しておる。しかるに
政府はこの世界的な農産物の増大を前にして、食糧の持越量を増大さすために輸入を増加せしめておるのであります。つまり国内ではいも類の主要食糧としての利用を制限して、全面的な利用を
考えずに、食糧輸入のため四百五十六億の補給金を計上しておるのであります。これこそは
政府の食糧行政に対するところの無
能力を、遺憾なく暴露していると言わざるを得ないのであります。たとえば本
年度の国内需給を見るならば、持越高を百万トンに抑えるとするならば、輸入食糧は約百九十万トン減ずることができるのであります。そういたしますならば、補給金は約二百二十億の不用になるわけでありまして、これを国内生産者にまわすならば、米供出価格石当り現在よりも約七百三十円高く買い上げることができるのでありまして、石当り四千九百八十円とすることができるのであります。つまり米価審議会の答申いたしました米価というものは、農家にと
つては不足でありますけれ
ども、米価審議会の答申案四千七百円よりも上まわらして買い入れることができるのであります。またこれを肥料の補給金にまわすならば、少くとも本年八月からは肥料は七割の値上げをされることになるのでありますが、この値上分総額は、われわれの
考えでは概算いたしますと約二百三十億でありますから、肥料の値上げはする必要がなくなる。百万トンに手持量を押えるならば、肥料の値上げはしなくともいいという結果になるのでありますが、このことも
政府はやろうと
考えていない。この事実に見るように、世界の食糧生産が増大上昇している今日、
政府はあえて手持食糧を増大させ、しかも世界の農産物生産が増大いたしましたならば、将来はだんだん価格が下落して行くということを見越しておりながら、今日高い外国食糧を買
つて、そうして国内生産者には低米価を押しつける。それから国内のいも類の活用も怠り、一方米麦などは供出をしいている。つまりいも類なんかの需要を怠
つて、米麦だけ供出をしいている。
消費者には高い価格で売りつけて、国民の血税を惜しげもなく外国食糧の輸入に向ける。配給量をふやすかといえばふやしもしない。これは一体どういうことを意味するのか。食糧の生産が減退しているときであ
つたならば、手持食糧をふやすということも
考えられますけれ
ども、増大しておそらく価格が下落するだろうというときに、手持食糧をふやすということは、どうしてもわれわれ納得することができないのであります。
政府はそういうことは
考えていない、つまり戰争準備を
考えていないとするならば、手持食糧をふやす必要は絶対にないと思うのであります。つまりこういうことは、結局におきまして現存の吉田
政府の農政に対する無
方針の現われである。国内食糧の需給態勢の諸
方針をおろそかにしているのも、またゆえなきにあらずと私たちは思うのであります。たとえば開墾にいたしましても、干拓にいたしましても、土地改良の面にいたしましても、あるいは山林牧野の開放にいたしましても、怠
つている原因はここにあると思うのであります。こういう意味からいたしましても結局本法案は、
消費者に
負担さすことなく、
一般会計から繰入れるのだという美名のもとに、自分たちの食糧行政の無
方針を隠蔽せんとする一つの欺瞞的な法案であると思いますがゆえに、
日本共産党はこれに対して断然反対するものであります。