○田中(織)
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、本案に対しまして
政府に対し重大なる警告を付して、賛成の意を表するものであります。それは現
内閣が失業問題をきわめて甘く見ているということであります。昨年の第五国会におきまして
政府がわれわれの反対にもかかわらず、むりやりに強行いたしました定員法による首切り整理を初めといたしまして、
政府がいわゆるドツジ・ラインに忠実に
従つておるという名のもとに、現に国民に押しつけつつある極端なデフレ政策の結果は、企業の大中小を問わず、著しくその経営を困難に陷れておるという見地から、
政府事業、民間企業を問わず、相当の人員整理が行われつつある実情であります。それに対します
政府の失業対策は、この失
業者を出さない
ところの、結局労働に対する有効需要を増大せしめるというような施策の面において
政府のとりつつある対策は、きわめて不十分である。そういうことがやはりこの失業保險に関する
政府の処置にも現われて参
つているのであります。われわれの見る
ところでは、来年度において
政府が失業保險特別会計の
歳入下足のために、大体本年度と同額の
一般会計からの繰入れを行おうとする
ところに、本改正法案のねらいがあるわけであります。これは根本的に今申した
政府の失業対策、ことに失業保險の面について、
政府の認識が十分でないことを補うための最小限度の処置でありますから、われわれはこれに対してあえて反対するものではないのでありますが、この際われわれが
政府に強く警告しておかなければならない点は、これはただいま可決になりました農業災害保險にも現われており、その他社会保障制度全般に現われているように、
政府がみずからいろいろ社会上、経済上の災害が起り、また失業が起るような種をまいておきながら、それがあるいは失業とかあるいは農業災害とか、その他の社会的ないろいろな不幸な出来事とな
つて芽をふいて来る。この芽を刈取ることに対しての施策が十分でないという点でございます。われわれは
政府が現にとりつつある経済政策全般について、根本的な反省を要求するとともに、その反省の上に立
つて、
日本の再建の基盤である
日本の労働
生産力を確保するという見地に立
つての施策を強力に進め、その一環としての失業保險制度の充実、こういうことでなければならないと信ずるのであります。さらに失業保險それ自体につきましては、現在の保險料についても、われわれはこれまたあらゆる社会保險については、当然国家がその責に任ずべきである、こういう建前の上に立
つて、保險料の問題についても、国庫の負担の増大に向
つて政府が一段と努力することを、強く要求するものでございます。
なおこの機会に、われわれは日雇い労働者いわゆる土建労働者の失業保險の問題について、
政府に対して強く要望をいたしておきます。日雇い労働者に対しても失業保險の適用を見ることに相な
つたのでありますが、現在の方法では、その目的が完全に有効に達せられるとは、われわれ認められないのであります。まさに極論いたしますならば、有名無実にひとしいと言わざるを得ないのであります。こうした日雇い労働者は勢い失業という不幸な社会的事実の上に立
つて、失業救済の事業に多く従事しなければならない。その
意味において、現在のわれわれの社会におけるきわめて気の毒な人たちであるのであります。もちろん就業時間あるいは就業場所等が、他の労働者に比べますならば安定性を欠いているという点があることは事実でございますけれども、そういうように就業場所または就業の時間等に安定性を欠いているだけに、これらの人たちに対する失業保險制度の充実した形における実施ということが、強く要望せられるゆえんでありますから、その
意味におきまして今後
政府においては、日雇い労働者の失業保險の充実の点について、格別の努力をしていただきたい。
最後に希望を付しておきたい点は、今回の
歳入不足の補填にあたりましては、二十六億円はこれを従来の積立金から
歳入補填に転用する
意味の予備費にまわす。こういう構想に相な
つているのであります。この失業保險における積立金というものは、これはその運用にあた
つては、過去のいわば蓄積であります
関係から、こうしたものに
政府がたよるという行き方ではなくて、他の部面における国費の節約によ
つて——この失業保險の積立金をただちに、これを今後発生を予想せられる失業保險給付の増大に一時的に間に合せて行くような、そういう便宜的な手段は、できるだけ
政府は避けるように努力しなければならない。
以上の諸点を強く希望として申し述べまして、本案に賛成するものであります。