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鈴木国務大臣
失業者の数を大体にしても押えるということは、なかなか困難なことであります。しかし今の
日本で持ち得る
資料というものは、大体総理府の統計でや
つておる調査と、それから労働省
関係の全国の職業安定所を通じての
趨勢と、この二つをにらみ合せるということが比較的信憑もできるし、それから全般的にわたる方法だと思
つております。そのほか
部分的に非常に綿密な調査の
一つとして、たとえばある府県ある都市を
対象として、特殊の綿密な調査をやるということもやり得ますけれども、現在では今申し上げました二つの方法であります。それでその第一の方はどんなぐあいにな
つておるかというと、これは
失業者の数の
見通しの
一つの方法でありますが、昨年の五月、八月、十一月というふうに調査しておりますが、五月が比較的多くて正確なものが出ております。必要ならば八月、十一月等の
数字も係から御
説明することができると思いますけれども、大体論であります。大体の
数字はもし御必要ならば
資料を差上げます。私のお答えするのは、いわゆるラウンド・ナンバーと申しますか、大づかみの
数字で申し上げることを御了承願います。それによりますと、昨年の五月に全国で追加労働を希望しておる人たちが、全職業を持つた三千何百万人かのうちでも
つて四百万と少しありまして、この四百万を少し越えるところの追加労働を希望しておる人たちが、
失業者の動向を考える場合の
対象になる。
従つてその分析と
見通しによ
つては、
失業者の数の押え方というものに相違が出て来ることはありますけれども、とにかく
対象となる
数字であります。このときに同じ追加労働を希望しておる人たちと
言つても、その四百何十万の中には、二百二十万人くらいは一週間に三十五時間以上その当時働いておつた。そうして家計を充実させるためにもう少し働きたい、こういう希望の追加
労働者が約半分あつたのであります。これは考えようによりますし、また経済情勢の変化によ
つても違いますけれども、私たちの考え方では、この二百二十万の人たちはいわゆる厳密な
意味における
失業者というよりは、すでに就業しておるけれども、追加労働によ
つて生活をもつと充実して引上げたいという、生活上の問題であると一応考えたのであります。そうしますとあと二百十万人くらいだつたと思いますが、三十五時間以下の労働をしてお
つてそうしてこの際もつと追加して労働したいという人たちがあるわけであります。これの分析でありますが、このうち四十何万人かは
——数は大ざつぱに申しますから、あとで
資料を見ていただきたいと思います。四十何万人かが当時完全
失業者という名前でも
つてはじき出されておりました。そうするとその四十何万人が
日本全部で
失業する。これになりますと、統計が不備であるとは申しませんけれども、あの統計でも
つて完全
失業者としてはじき出すそのわくは、きわめて厳密なわくがかか
つておるのでありまして、そのときにその前の一週間以内に一時間も仕事をしなかつた。同時にその一週間以内に安定所を通じてか、知人を通じてか、とにかくどつちかを通じて就職したことがあるという事実がある。この二つのわくがかか
つておるのであります。そうしますと、常識的に考えて十日前に知人、安定所に頼んだという人は、この際に完全
失業者からしいて言えばのけて行くということになりますし、二時間でも五時間でも働いたという人ものはて行くということになるのでありますから、統計の不備、粗漏ということではありませんけれども、完全
失業者のとり方においてきわめて厳密であるから、この四十数万という
数字だけを押えて、
日本の現在の完全
失業者はそれだけであると言い切ることは、やや危険であると私は思
つております。そうするとその当時の
数字でありますが、二百万のうち三十五時間以内でも
つて十九時間以上三十四時間以下を働いておるという人たちが、百万人
ちよつとあるのであります。百二万人であつたのであります。この人たちは経済情勢によ
つて、経済情勢が逼迫して来ると、十九時間以下あるいは場合によ
つては完全
失業者の群れに落ちて行く可能性があると同時に、国民経済が充実して来ると、最初にあげました三十五時間以上働いておるという人たちの方に引上げられる。その両方の性質を持
つておるのが百万人前後であると思います。十九時間以下働いておるという人たちが、その当時において五十万あつたわけであります。こういう振合いをながめまして、私どもはどこに完全
失業者の
数字を置き得るかという明確な科学的な
根拠で、横から聞かれても縦から聞かれてもいいというふうな方法論は、なかなかでき上りませんけれども、最低の完全
失業者四十何万はあまりに厳密過ぎる。三十五時間以上は一応生活の問題と考えていいが、その二百万以下の中でも
つて百万を越える程度、まさかの場合にはこの二百万の人たちが全部、経済情勢が逼迫して来て完全
失業者もしくはそれに近い人たちになるおそれがあるという考えを持
つて——これは必ずなるという
意味ではありませんが、対策としてはこの程度のところを押えて、
失業対策というものを立てて行くということが、可能にして同時に大過ない方法ではないかという
見通しをつけておるのであります。でありますから、現在完全
失業者は何人おるか、こう聞かれますと、総理府の統計に表われたところの
数字を一応お答えする以外には、確固たる
根拠のあるものはありませんけれども、
失業者の数というものの考え方においては、以上のような
見通しを持
つて考えて行
つて大過ないと思います。同時にもう
一つの
見通し、職業安定所にや
つて来て、そして仕事を得られなかつた人たちというものがどういうふうにな
つておるか。これは昨年の六月に四十二万人であつたのが順次ふえて、十月には六十八万人くらいにな
つております。この
数字はその月に就職を申し込んで就職のできなかつた人たちであります。それではこれで全部かと
言つても、ただ職業安定所に来てあぶれた人たちだけが
失業者だとも言えないと思います。従来平時の場合には、職業安定所であぶれた人たちの三倍程度の
失業者が、実際にはあるのが普通とされておりました。しかしそれは
失業問題が切実でなくて、安定所などへはほとんどや
つて来なかつた時代でありますが、御
承知のように知識階級も一般
労働者も引揚者も、一齊に安定所に押しかけて来ているという現在におきましては、その率は相当かわ
つて来ていると思うのであります。両方を総合いたしますると、ここに
失業の
救済対象として政府が計画すべきものは、百万ないし二百万人くらいの
——実際の数は捕捉できませんけれども、そのくらいの
失業対策というものは立てておかなければならないという大よその
見通しがつくと思
つております。これは御
質問に応じて、
昭和二十五
年度の
予算の中に、どういうふうな対策が盛られておるかということはお答えいたしますが、私どものその対策の基礎とな
つておるところの大よその
失業者というものの考え方、
見通しは、以上のような考え方の上に立
つております。