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夏堀委員 漁業に関する税制改革に対する要望事項について、
簡單な
説明を申し上げます。これは小
委員会で大体
意見をまとめたのでありますが、附加価値税が漁業は課税され、農業及び林業が非課税になるという理論的根拠はどこにあるかとうとことであります。これはシヤウプ勧告案に示めしてあります
通り、漁業のことはよくわからないとあちらでも言
つておりますにかかわらず、
政府がこれを立案したということに対して、まことに不可解な点があります。ここに一々農業と漁業との数字的な比較は要望事項に明記してありますので、このことは各
関係大臣にも
説明を加えてあります。昨日は司令部の方に参
つて詳細にこの
説明をしております。この問題に対しては、大体理論的にその根拠はないということは、どちらもほとんど
意見が一致しておるようでありますので、この漁業に関する税制問題については、この取扱い方法等は
地方行政
委員会に提出に
なつて、審議中に本
委員会に合同審議を申し入れてわれわれのこの案対する
意見を十分申し述べて修正をしよう。こういう考えも持
つておりますので、
委員長においても、そういう方法でおとりはからいのほどをお願いするのであります。一応朗読いたします。
漁業に関する税制改革に対する要望事項
一 附加価値税について
政府は漁業に対しても附加価値税を課する旨の立案をしているが、これは農業、林業と同様非課税とすべきである。漁業に課税すべき理論的根拠は薄弱であるから特別な漁業を除き非課税にすべきであるが、万やむなく課税の対照とする場合においては左の
措置をとるべきである。
(一) 家族労働を主とする漁業は非課税とすること。
理 由
イ、元来沿岸漁業は必ず農業、林業を兼営しており、税制上も従来おおむね平等に取扱われていたのであるが、この際農業、林業が非課税なるに対し、漁業のみが課税されることはきわめて不合理であり、漁村に與える
影響は重大であると言わねばならぬ。
ロ、シヤゥプ勧告において農業については「販売
価格に広汎な
政府統制が行われていること、及び地租家屋税の大巾引上げの
影響を強く受けること」を取上げ、漁業については「地租の
影響をほとんど受けないので、事業税(附加価値税)を納付する力があるように思われる」と言
つているが、
水産物もその過孚は
政府の
統制下にあり、農林産物は漸次
統制撤廃され主食
関係についても漸次
撤廃拡大の趨勢にある。なお
水産物は副食中最大無二の国民蛋白自給源として、その重要性において主食に毫末も劣るところはない。また漁業においては地租の
影響が少いことは当然であるが、固定資産税全部については姫路市近郊の標準的実例により、
漁業者と農ところ、
漁業者がその所得に対し三八九%を負担するに比し、農
業者は三・三〇%を負担するにすぎない。沿岸漁業においてはおおむね負担に劣るところがない、なお一般的には現行の十数倍に及びむしろはるかに負担が大であ為。
シヤウプ勧告においても「漁業については十分な研究をしていないので確たる
意見は述べることができない」云々と言
つている次第であり、
政府は当然
実情により課税を
検討すべきである。
ハ、農業が非課税の場合は昭和二十三年の北陸の農家所毎一戸当り平均二十万千八百五十二円(
農林省農家経済
調査報告等により昭和二十三年度を推計せるもの、なお全国平均——除
北海道——は十一万二千百四十円)が非課税となるに対し、周年の三重県小漁民の附加価値十戸平均十二万三千六百十二円——漁業収入平均二十万五千八百四十六円——(昭和二十三年
水産庁漁家
調査による漁家は家族従事者三人——五人、傭人なし、刺網延繩採貝採藻)が課税されることとなり、きわめて不合理であるが、なお
北海道の農業——農業に附随する畜産業は非課税——及び林業を考える場合不合理はきわめて顯著であり重大であると言わねばならない。なお本年一月一日より漁業用資材の補給金は全廃され、かつ、
魚価低落の
傾向強く、これが
漁業者の負担増加三——四割を予想される際において、漁業に対する課税いよいよ不合理かつ重大であろう。この不合理は免税点の引上げにより打開されるものではなく、家族労働による漁業は当然非課税とすべきであり、なお、
北海道農業及び林業をも勘案して常傭二三名以内の漁業は非課税とすべきである。
(二)
水産業協同組合法に基いて設立された組合が行う漁業は非課税とすること。
理 由
協同組合は零細漁民の協同組織であり、また、同法第八十條及び第八十一條により組合員みずからが働き員外被傭者は例外的にしか認めない旨の規定がある点よりするも、その営む漁業は本質的には前記の「家族労働を主とする漁業」に相当する。
(三) 所得のない年は免税にすること。
理 由
附加価値税の本旨よりい
つて、所得の有無に関せず課税を考えるのは一応もつともではあるが、漁業が自然の制約を受けることがきわめて強く、不漁、その他不可抗力による赤字を生ずることがむしろ常で、あらかじめこれを考慮に入れた計画的
生産、機械的合理化のきわめて困難な原始籏業で、容易に他に転業できない生業であり、なお、漁具、漁獲等につき何ら補償、保險等の制度のない現在においては、漁業いよいよ破滅に導くものであ
つて、また、シヤウプ勧告で変動所得、損失の繰延べ繰もどしを認めた趣旨にも沿わない。しかし、課税が万やむを得ない場合においては、所得税の変動所得及び損失の繰延べ繰もどしに準じて適切なる
措置を講ずべきである。
(四) 昭和二十七年度以降は廃止すること。
理 由
昭和三十七年度からは新漁業法に基いて漁獲高の平均三%に及ぶ免許料許可料が徴收されるため担擁力がない。
(五)前記(一)及び(二)以外の漁業に対しては、税率を半分(現行案三%の場合は一五%)にするか、または、附加価値を收入金額の四〇%として算定すること。
理 由
一般産業の附加価値が総收入の二〇%ないし五〇%であり、税率が四%である場合においては、総收入に対する税額の平均が一・四%であるのに対して、漁業の附加価値は総收入の六〇%ないし九〇%であり、税率が三%の場合において総收入に対する税額の平均は二・二五%となり不合理である。現行事業税において一般産業に比し、個人漁業が軽減せられている点を考慮し、かつ、前述のような漁業特有の惡條件を勘案して、一段の軽減をなすべきである。
(六)本税收入中相当額を漁業経営安定のための制度の基金として支出することとし、これにより
漁船漁具等の災害保險、漁獲保險等の再保險の財源を求め、漁業再
生産の基礎を
確保し、よ
つて生ずる将来の税源をつちかうよう考慮すべきである。
二 漁業権税について昭和二十七年度以降これを廃止すること。
理 由
昭和二十七年度からは新漁業法に基いて免許料が徴收される、これは漁業権税と重複するところが多い。
三 所得税について
(一) 家族專従者各人ごとに基礎控除を認めること。
理 由
主として家族労働に依存する漁業においては他の産業に比して負担が不公平である。
(二)青色中音は漁業の実態に即して簡便にすること。
理 由
シヤウプ勧告に示された漁業経営に重大
関係を有する損失の繰越し繰もどしその他の
措置を漁業において十分に利用し得るよう、漁業の実態並びに
漁業者の
実情に印して可及的に簡便にすべきである。
(三)適正なる必要経費を確定し公示すること。
理 由
收入金額より控除の認められる必要経費の認定にはいまだ不合理の点が多い。すみやかに漁業の
実情に即した適正な基準を
決定し公示すべきである。
四 法人税について水産業
協同組合に対する税率を二五%とすると。
理 由
協同組合の特殊性を勘案して税率を現行
通りすえ置くべきである。