○田中
説明員 水産物の
統制問題に対して、現在政府で考えております結論的なことと、それからそれを実現するために現在までと
つて参りました措置の
概要を、まず最初に申し上げたいと思います。
昨年末
漁業用資材に対する補給金の撤廃問題が決定せられましたときに、われわれとしましては、当時
国会の要望もございましたし、大体水産物の
統制撤廃の時期を本年の四月ということに想定をいたしまして、諸般の準備をして参
つたのであります。しかし当時補給金撤廃問題が決定いたしたときに、司令部といたしましては、この問題と水産物の
統制問題とは全然別個である。少くとも補給金を撤廃したがゆえに、水産物の
統制を撤廃するというような必然的の関連はないということを、重ねて申してはおりましたけれ
ども、私
どもといたしましては、当時から大体の目標を四月において準備して参
つたのであります。安定本部、
水産庁、物価庁、それぞれその職分に応じまして、必要な
資料の整備をいたして参りました。最近に至りまして三者の
資料も整備せられ、かつまた内部的に
意見の一致を見ましたので、司令部に対しまして次のような案を提起いたしたのであります。それは水産物の
統制は、現段階においてはあまり大きな
意味を持たない、むしろ撤廃をしてもこれで実質的に国民の生計費の支出の増嵩を来すことはない、しかしてその実施の時期は四月一日といたしたい。こういう申出をいたしたのであります。それに対して司令部側では、いろいろ議論もございましたが、その当時議論をいたしました結果として、一応水産物の
統制を撤廃してもよろしいということは認める。しかしその実施の時期については、四月一日は時期尚早である。あるいは五月といい、あるいは六月といい、あるいは七月が適当ではなかろうか。いずれにしても撤廃の時期についてはあらためて相談をしたい、こういうような申出があ
つたのであります。その後司令部側では、そういう考え方から
関係官庁の課長を呼びまして、いろいろの
資料の
説明なり、あるいは提出を求めておるのでありますが、その間にいろいろ空気から判断いたしまして、またもや
統制の撤廃そのものについて基本的に疑問であるというような
意見を漏らしておるということを伺いましたので、安定本部から先般それに対して、水産物の
統制問題は、先般の
会議の席で撤廃をするということは決定した。ただその時期について若干問題が残
つたので、それについてあらためて討議をするということにな
つておる。しかもその撤廃の時期が六月とか七月とかいうことに相なりますと、またあらためて
統制問題を論議しなければならぬことにな
つて、今回水産物の
統制は撤廃するということをきめたことの
意味もなくなる。従
つてこの前の
会議の結論から
言つて、水産物の
統制撤廃問題は、一応撤廃するということに決定をされ、かつその時期について四月がいいか、あるいは五月がいいか、きわめて短期間の時期の相違があるというふうにわれわれは了解しておるということの、確認を求めたのでありまして、それに対して向うも、いましばらくその時期の問題については
資料の整備をするから待
つてもらいたいということで、そのまま議論は絶えておるのが現状であるのであります。そこで日本政府側が、かような
意見を司令部側に出しまして
折衝いたしました主要なる根拠は、
一つは水産物の供給の問題であります。これは
水産庁におかれまして、
統制開始直前から最近に至るまでの各年度の漁獲高の推移、それから六大消費都市に対する入荷量の推移、従
つてそれから計算せられるところの消費者一人一日当りの消費量、あるいは配給量、また海なし県に対する入荷量とい
つたような、いろいろの数字を年次別に用意をせられまして、それから大体結論せられることは、漁獲高も大体
統制前の七五%
程度に回復して参
つておりますし、また六大消費都市におけるところの消費者の一日当りの消費量も、ほぼそれに近い水準にまで回復して来ておるということから、大体
統制を撤廃してもよろしいという
一つの根拠がこれから出て来るという
説明をいたしたのであります。次は消費の
実態でありますが、これは主として物価庁において、CPSの分析からいろいろの
資料を整備せられまして、その結果として魚の公定価格が実質的に市場価格に終
つておる。すなわち非配給のやみ価格に対しては全然影響のないのはもちろんのこと、配給品の価格に対してすら、必ずしもマル公が守られておらないというような事実も明らかになりましたし、また最近におけるところの実効価格の推移というものが、非配給の価格すなわちやみの価格にほとんど追随いたしておりまして、しかも最近においては、ほとんどその両者の価格のカーブが一致するごとき状態に相な
つておるのであります。そのことは、言いかえれば、すなわちマル公というものがほとんど
意味がない。また配給というものが数量的にあまり大きなウエートを持たないことを
説明するわけでありまして、そういう観点から、この際水産物の配給並びに価格の
統制を撤廃してもよろしかろうという
一つの根拠が生れるという
説明をいたし、かつまた撤廃の時期につきましては、各魚種の季節的な価格の変動を
検討いたしますと、大体四月から六月にかけては、毎年定期的に魚の価格は下るのであります。従いまして大体下り始める直前の時期、すなわち四月に価格をはずすことが、その悪影響の発生を未然に防止するという
建前から申しても、きわめて適当であるというような一応の
説明をいたしたのであります。しかしいずれにいたしましても、供給の問題にいたしましても、あるいは消費の
実態、価格の変動にいたしましても、対司令部
折衝におきまして、いまだも
つて完全に戰前の状態にすべてが返
つたという
説明はできないのであります。従
つて水産物の
統制を撤廃してもよろしいという、確実なきめ手がないというのが
一つの欠陷であ
つたのであります。そこで安定本部では、これに対する
一つの対策といたしまして、先般新聞紙にも発表いたしましたが、本年の一月現在の数字をもちまして、昭和二十五年度の日本
経済の見通し作業というものをや
つたのでありますが、その見通し作業に基くところの国民
所得、あるいはさらにその国民
所得から出て来るところの魚に対する有効需要とい
つたものと、
水産庁の推定になるところの魚の供給量というものの両者の見合いにおきまして、
統制を撤廃した場合に、はたして消費者の家計費の支出の実質的な増嵩を來すような価格の高騰が起きるかどうかということを、理論
経済学的に分析をいたしまして、その結果一応の魚の供給量が二%増、一人当りの配給量にいたしまして、一日十二匁くらいの配給が確保できる
程度に供給がありますならば——もちろん季節的には魚の価格の変動は起るではありましようし、あるいはまた
統制を撤廃した当初においては、一時的な価格の高騰も起り得るかもしれません。また魚種によりましては、あるものは高く、あるものは下るというようなぐあいに、いろいろ別個の動きを示すかもわかりませんけれ
ども、魚全体としての価格の変動は、実効価格としては影響がない。すなわち家計費の支出には実質的に影響がないということを、一応数字的に結論をつけまして、それをも
つて水産庁あるいは物価庁のそれぞれの
資料に基く根拠とともに、司令部に
説明いたしたのであります。それに対する司令部の態度は、安定本部でいろいろ理論
経済学的なフオーミユラで
説明いたしましたものに対しては、その理論あるいは根拠については、ま
つたく異論をさしはさむ余地のないことは認めたのでありますが、ただかくのごとくフオーミユラの方式によ
つて算出をした数字に基いて、この現段階における水産物の
統制問題を議論することがいいか悪いかということについては、若干疑問があるというようなことを
言つてお
つたのでありますが、結局、結論としては水産物の
統制撤廃を認める。時期について、最初に申し上げましたように、なお今後
検討を加えてきめたいというようなことにいたしたのであります。なおこの供給の問題、あるいは消費者の
実態、価格の変動の
実態、あるいは安定本部で理論
経済学的に算定をいたしましたその根拠については、ここに担当の課長なり係官の方が来ておりますので、もしお許しを得ますならば、具体的な御
説明をいたしたいと思います。とりあえず私から結論的な問題、その
経過の
概要だけを御
説明しておきたいと思います。