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土橋委員 私は共産党を代表いたしまして、ただいま上程されております
国家公務員に対する
臨時年末
手当の
支給に関する
法律案につきまして、
反対の
意見を表明するものであります。その根本的な原因は、
国家公務員が
国家公務員法の制定によりまして、
団体交渉ないし
罷業権の
制限あるいは
禁止という
條項があることは、明らかにその
生活が擁護せられ、
公務員諸君の
給與に関する問題は、
国家公務員法が明記いたしておりますように、第二條あるいは第二十
八條等によりまして、当然
人事院がこれを科学的に検討して、
政府なり
国会に対する
勧告なり、あるいは具申なり、その他の方法によ
つて、
給與の改善がはかられることが至当でありますが、さらに
政府職員の新
給與実施に関する
法律の第九條の
條項に照しましても、当然そのような
処置は、
人事院が総括的に統裁しているのであります。しかるにもかかわらず府政が
人事院と何らの
協定もなく、相談もなくして、一方的にこのような年末
手当の
支給に関する問題を上程するということにつきましては、明らかに私は
国家公務員に対する
給與に関して、二つの大きな頭からこの問題を処理しようとしていることで、この
吉田政府の根本的な
誤りにつきまして、まずわれわれは
反対しなければならぬと思うのであります。
公務員諸君の登録の問題なり、
政治活動の
制限に関する問題なり、あるいはその他の
制限につきましては、
政府はこれに対しまして絶大なる
賛意を表しながら、
給與の
改訂に関するどころの
勧告を、
人事院はすでに十二月二日にこれを発したのであります。しかるに
政府は、いまだ
人事院の
勧告に対するこの九千七百円
ベース引上げについては、何ら
考慮することなく、しかもただいま
昭和二十五
年度の
予算編成中でありますにかかわらず、こういう問題については少しもこれを取上げないのであります。取上げないのみならず、
国鉄の
仲裁裁定書をあぐりまして、ただいまのような赤字の累積なり、
生活の困窮ということが明瞭になりまするや、
政府は
人事院と無
関係に、ただいまのような
法律案を上程いたしまして、そうして
公務員諸君に
給與をせんとするのであります。この
公務員諸君に
給與をせんとすること自身につきましては、われわれはあえて
反対をいたしませんが、しかしながら
政府の
態度、
人事院の九千七百円
ベース引上げの
勧告に対しまして、この
臨時年末
手当をも
つてすりかえんとしておる。この
態度について私は
反対するのであります。さて
人事院が少くとも
国家公務員法によりまして、
政府に
勧告なり
国会に
勧告する場合には、常にその
勧告を尊重しなければならないことは、言をまたないのであります。しかるにもかかわらず、今日すでに三週間
程度をけみしますにもかかわりませず、何ら
人事院の
勧告については
政府は具体的な
措置を講じておりません。従いましてこういう
観点におきまして、私
たちは
吉田政府の今までの
政策をながめて参りますと、
労働階級にとりましては常に低
賃金政策を強要いたしまして、また一方におきましては低
米価政策を強要いたしまして、
外国資本の導入に対しまして、きわめて容易な態勢をとると同時に、
日本の
勤労階級を非常な苦しみに陥れておるのであります。これは低
賃金政策のみならず、今日まで
吉田政府がと
つておりまする諸般の
政策を見ますと、たとえば
食糧確保臨時措置法における
態度、あるいは
外国貿易及び
外国為替に関する
管理等の
法律を見ましても、
日本のあらゆる産業に対しまして、
外国資本がとうとうとして入
つて参りまして、そのもとに
日本の
勤労階級が常に低
賃金に泣かされ、しかも
罷業権、
団体交渉権などが
制限あるいは
禁止をせられまして、そうして一部の
国際資本に何諛迎合するところの、
日本の
独占金融資本の擁護を期するような
政策を、多々行
つて来たのであります。現に昨日の
新聞であ
つた思いますが、
わが国は
小麦協定に参加しておりませんが、この
小麦協定に今年は参加することが可能であるというような情報も、
新聞が伝えておるのであります。そういたしますと、
日本の
食糧生産等に関する問題につきましても、農家にとりましては非常な問題であります。こういう
政策を逐次行いまして、そうして特定の
国家に依存をする。しかしわれわれは
全面講和を念願いたしておりますが、その線に
反対をいたしまして、
單独講和の線をも出そうとするようなことを積み重ねておる。その一端が年末
給與にも現われておるのであります。こういう
観点から、われわれはただいまの
政府の
法律案につきましては、
反対の
意見を表明するものであります。
第二点といたしましては、九千七百円べスにつきましても、昨日の
政府の
説明によりますと、今年四月を
基準として
説明しておりますが、この六千三百七円
ベースの
改訂は、昨年の七月の
生計費なり、あるいは
全国工業労働者の平均の
賃金から算定いたしまして、そうして十二月当初において、七月の場合から
考えて当然六千三百七円
ベースの
支給が至当である。こういう
観点から昨年の十二月にこの点が決定したのであります。ところが
政府は
予算二百六十五億のうちからこれを
分割いたしまして、当初は三箇月の予定でありましたが、これを四箇月といたしました
関係上、これが非常に
公務員諸君にとりましては不幸な現象と
なつたのであります。かてて加えまして年末
調整ということをやりまして、
公務員のある者は二十年勤続で百三十五円、ある者は十数円を頂戴したという不幸な結果を見たのでありまして、四月から六千三百七円が
完全実施に
なつた。こういうことを
説明しておりますが、これは根本的な
誤りでありまして、当時
人事院が
勧告いたしました精神は七月当初において少くとも二千四百円
程度の
成年男子の
生計費が必要である。こういう
観点から出されましてそうして四月におきましては第五回
国会におきまして、
政府が御
承知のように
郵便料金は五割上げ、
鉄道料金もさらに六割上げ、その他諸
物価を上げました
関係上、当然当時におきまして六千三百七円べ
ースでは食べて行けない
状況であ
つたのであります。こういう
基準を今日何ら顧みることなく、
政府は得々として
説明されております。われわれはこの
意味合におきましても、現在の六千三百七円
ベースというものは、明らかに
労働者が食べて行けない。
労働力再
生産ができない
賃金であることを確認しておるのであります。これは
一般の
工場労働者におきましても、あるいは
商業等を営んでおります
従業員諸君にいたしましても、当然今
日給與ペースが
引上げられておるのでありますから、今日におきましては二割ないし三割の低
賃金であることは、万人ひとしく認めておるのであります。それにもかかわりませず、
政府が将来行うであろうところのいわゆる
安定政策、あるいはその他の
政策によりまして、当然
物価が
横ばいをするというような期待的な
説明によ
つて、
賃金ベースの
引上げを阻止しておるのであります。
吉田政府は、第一項に私が申し述べましたような
日本の
勤労階級を犠牲にして、そうして
勤労階級の
賃金の
引上げなり、あるいは年末
賞與等に対しまじては、ただちに
経済九
原則を出してみたり、あるいは
賃金三
原則を出してみまして、常に押えておる。こういう
態度は、われわれは一部の
資本家の
諸君のために、国の
政治を担当しておる
吉田政府の
本質を現わしておると思うのであります。こういう
観点から、
給與べ
ースの
引上げは、少くともただいまの
人事院が
勧告しておりまするこの
程度が
最小限度として、
政府が
人事院の
権威と
国家公務員法の命ずるところによりまして、
支給するのが当然でありまして、われわれは
国鉄労働組合が要求せられております九千七百円
ベースの
引上げということにつきましては、
賛成をしておりまして、この
程度に相なることが絶対必要である。こういう
観点からただいま上程されておりまする
法律もさることでありますが、
給與ベースの
引上げということは、将来大きな課題といたしまして、私は
議員各位がこの問題について真劍にお
考えおき願いたいということを希望するのであります。
次に第三点といたしましては、
超過勤務手当でございます。この問題については去る第六回
国会の
最終日に、全部の
諸君の
賛成を得まして、
決議をされておりますが、いまだにその
支給が各官庁においては完全に
支給されていないのであります。当然これは
政府が
支拂うべきものを
支拂わないのであります。これは今年四月以来、
政府かあらゆる業者に対しまして
支拂いの遅延をいたし、あるいは未拂い等をいたしまして、この結果
国会においても
政府支拂促進
委員会というようなまことにわれわれ
国会議員といたしましては想像もできないような
委員会がつくられたのでありますが、その線と同様に
超過勤務手当につきましても、現在われわれが知る範囲におきましては、いまだに拂
つていないのであります。これも
給與に関する大きな問題でありますので、こういう点すら
政府が今日サボタージユをいたしておりまする点からかんがみまじて、このようなものは論をまたず
支給すべきである、かように
考えておるのであります。
次は
税金の問題でありますが、昨年の例からかんがみまして、われわれは年末
調整ということは、できるならばこれは廃止をしてもらいまして、そうして
政府が出されました平均三千一円、
公務員につきましては二千九百二十円でありますが、そういうものを敢然として出していただけるような態勢を
政府がとるべきだ、かように
考えておるのであります。ところがいろいろ伺
つてみますと、どうしても税法は曲げられない。ただ具体的な問題において、そういうことをなし得るであろうというような御
説明でもあ
つたのでありますが、われわれの経験によりますと、実際問題としてはそういうことはできないのであります。それは年末
調整は源泉課税でありますから、どうしても
政府の方から月給を頂戴する前に引かなければならぬという指令が出なくても、これは当然引かれるのでありますので、そういたしますと現在出されておりますわくというものが、最高は五千円を越えることはできませんので、どうしてもこれは年末
調整をとられ、
従業員諸君といたしましては、実際問題として何らの恩典に浴することができないのであります。こういう不都合な年末
調整等がございますので、われわれはこの点からもこの年末
手当がきわめて不十分なものであるということを
考えておるのであります。この点からわれわれはさらに
反対をするものであります。
第四点といたしましては、
吉田政府がこの低
賃金政策を継続する限り、
日本の
勤労階級を中心とする
生産の復興、祖国の再建、さらに文化
国家となり得るといういうな、憲法が明記しておりまする重大な全人民的な課題は逐次崩壊をいたしまして、そしてか
つての台湾国なり、か
つての朝鮮国と同じように、
外国資本のもとに
日本全体の人民が苦しんで来るというような、きわめて不幸な現象か現われつつあるのであります。こういう現象につきましては、
日本共産党はまつこうから
反対をして、この低
賃金政策を打破りまして、働いておる者が仕合せになるような、働く者こそ祖国再建の重大なにない手でありますので、そういう
諸君の
生活向上のために、この財政の問題も、また
政治の問題も、それを中心として取上げられるような
政治を要望してやまないのであります。こういう
観点から
吉田政府はすみやかにこの年末
手当をめぐりましても、この
政策のきわめて貧弱であると同時に、一部の
資本家を擁護するような誤
つた政策は、すみやかに打倒しなければならない、こういう
観点を持
つておるのであります。かかる
観点からわれわれはこの
法律案につきましては、絶対
反対の
意見を表明して、将来
給與ベースの
引上げにつきましては、なお一層全野党が一致いたしまして、この問題を実現するために、また
公務員諸君の
生活を守り、
国家公務員法に命ずるところの根本的な精神を、われわれは少くともある
程度は生かさなければならぬ、かように
考えるのでございます。