○山室
証人 これは
木炭事務所側として
卸売業者にどういう便宜なとりはからいができるかということでございますけれ
ども、私
どもの捜査の上で証拠上現われて参りましたのは、これは
関係被告人の自供と、それからそのほかのいろいろな
書類なんかも証拠上現われております。それの上から見ますと、大体
木炭が産地から参ります。すると実際には駅あるいは港に着くわけでございますけれ
ども、それを引渡す際に、
木炭事務所側の末端の職員、それから
運送業者、これは船の場合は船会社、それから陸の場合は通運でございますけれ
ども、それと
卸売業者全部が立会
つてそこで引渡しをする。そうすると、その際に
事故の見積りをなるべく多くしてもらう。これがかなり手かげんでできるんだそうです。その点についての
事故の見積りをなるべく多くしてもらうというとりはからい。それから乱俵というのがございまして、これは炭を投げたりしますから、俵がこわれるのだそうです。それをつくろうのを
業者は手直しということを
言つておるそうであります。この手直しというものをやはり
木炭事務所から
業者に請負わせるのだそうです。しかしこれは同じ乱俵の手直しと申しましても、めちやめちやにこわれてしま
つたのもあるし、それからなわが一、二本解けた程度のものもあるし、だからこれはなわが一、二本解けたものも八円なら八円、十円なら十円ということになれば、非常にありがたいわけです。その乱俵の手直しをなるべく多く請負わしてもらうというようなこともある。
それからさらに一番大きい点と考えられましたのは、結局
政府から
卸売業者に
品物を売る。そうすると
卸売業者はそれに対して
品物の領収書を発行します。
木炭事務所ではその領収書に基いて納入
告知書を出して代金を取立てる。こういうことになるのですけれ
ども、
業者としてはなるべくその代金の
支拂いを遅らせた方が利益でございますから、そこでまず第一に、
木炭を受取
つていながら、
木炭事務所に対して受取
つたという領収書を発行しない。もちろん催促されます。それをなるべく待
つてもらうということです。この点については、千葉に証拠上現われましたところでは、領收者を
業者が出ししぶりますから、
木炭事務所はそれに対して過怠金と申しますか、領収書を出さないことに対して一日幾らで罰金みたいなものをとるのです。それを千葉県では現に取ろうとして、ある職員が計算したことがあるのです。それをいざ出そうとしたところが、
業者から泣きつかれてやめたというような事情もありまして、まず領收書を出ししぶることを寛大に見てもらう。それから領收書を出した後、今度は納入
告知書を振り出すことです。これはたとえば十万円の
木炭を買
つたら、十万円の納入
告知書を出すのがあたりまえですが、しかし
木炭事務所としては、これは
業者の懐ろぐあいを見て、小刻みに切るのだそうです。一万円なら一万円ぐらい、今度は二万円拂えるから二万円というふうに、その納入
告知書を切
つてもらうのをなるべく少しずつや
つてもらう。それからなるべくそれも寛大に延ばしてもらう。そうすると
業者は
政府に抗う金を拂わないで金を持
つていますから、金利が非常にもうかるわけです。のみならず、昨年私
どもがあの事件をやりました当時は、統制の解除ということを見越して、
政府に拂う金を持
つてみな山元に買付に行
つているというような状況で、
支拂いを待
つてもらうことは非常にありがたいことらしい。そういうふうな便宜のとりはからいをしてもらうことに対する謝礼というふうに私
ども認識しています。