○青木
公述人 私は青木でございます。新しい
生活保護法案について、その
趣旨の実現に関しまして、他の法例並びに予算
措置、また運営の
実施面について、若干の
意見を申し上げたいと思うのでございます。
いろいろ
お話がありましたように、この草案におきましては、
生活権保障実現の理想が掲げられておりますがもそのためには、何と申しましても予算を確保するということが、まず第一だと思うのでございます。それにつきまして、その第一になりますのは、何と申しましても今まで
お話にありました
保護の基準の問題だと思うのでございます。これが
厚生大臣が定めるということになりておるのでございまして、厚生省当局におかれましては、非常に御苦心をなす
つて、ただいままで第十次改定というふうに、苦労をされておるのでございます。その苦労にもかかわらず、なおかつ
保護を受けている
人たちが必ずしも満足をしていないということを
考えなければならぬと思うのでございまして、基準設定に関する何らかの機構というものを
考える必要があると思うのでございます。これは
あとでも申し上げたいと思うのでございますが、百億ないし百五十億の国費を使うのに、その基準になるものを設定することについての役所の機構というものが、現益では非常に貧弱であると思うのでございます。
社会局
保護課の一隅において、わずかの人がいくら一生懸命勉強しても、他の
方面け材料をかき集めて来て、これを継ぎ合せるというような機構では、とうてい合理的な満足すべき案をつくることはできないと思うのでございまして、この機構を整備するために、相当の経費を計上すべきことが必要と思うのでございます。これは役所の機構をふやせとか何とかいうような問題とは違うのでありまして、百五十億の金を使う必要経費として、当然是認さるべきことであろうと思うのでございます。従来経済界の変動が非常に激しくて、インフレにつぐにインフレをも
つてしていたのであります。その間の当局の苦心は大いに多とするのでありますが、今後これをさらに合理的に、理論的にも実際的にも調査研究をして行く構機を、しつかりと打立てていただくようにお
考えを願う必要があろうと思うのでございます。と同時に、これを各
方面の人人に納得していただく。
社会各層の支持を得られるという考慮を拂う必要があると思うのでございまして、これについてはあるいは審議会の
制度、あるいは
委員会の
制度というものを
考える必要があろうかと思うのでございます。この第八條の條文の中に、もしでき得るならば、そういう機構について一項お加えいただくならば、非常によくなるのではないかと思うのでございます。
それから第二点といたしましては、国及び
地方公共団体の予算の確保については、この
法案中には明文がないのであります。これはいわゆる国の義務及び
地方公共団体の義務費に属するものであろうと思うのでありまして、この経費を必ず確保しなければならないと思うのでございます。あるいはこれは国の責任であるというふうにも解されまするが、他の一面において、
保護の
第一線に当るものは
市町村長であるというふうにな
つておるのでありまして、
市町村長は国の
機関としての働きをしておると思うのであります。この国の
機関としての
活動に対して、市町村が経費を支弁している、こういう
建前にな
つておるのでございます。そういう場合に、
保護の決定が迅速に行われ、かつ遅滞なくその費用が拂われるということが必要なのでありますが、これには国及び都道府県の予算が、十分確保されるということが必要であると同時に、特に重要なことは、市町村の予算計上ということを十分にさせておかなければ、
市町村長はこれを支出することかできないと思うのでございます。これが法の
建前において、市町村という自治体と
市町村長という身分が、国の
機関として働くというときのギヤツプになると思うのでありまして、この関係について、この
法案においては、はつきりとしていないのでございます。あるいはこれは
地方自治等の明文によ
つて解決される問題であろうとも存ずるのであります。
地方自治法の第七十七條の義務に属する経費という中に入る費用かもしれませんが、せつかくこの
法案を、新しい
憲法の現想にのつと
つてつくるというときであります。あるいは道義的規定と類されるものも相当織り込んであるのでございまして、こういう事項を——市町村あるいは都道府県は、十分な予算を計上する責任を持つものであるという一項をお加えおき願うことが必要ではないかと思うのでございます。ことに従来市町村は一割の負担をしておるわけでありますが、その一割の負担すらも非常に困難を感じておる。あるいは分與税がその財源であるというようなことにな
つてお
つたのでありますが、これがあいまいなものにな
つてしま
つているというようなわけでございますので、これを十分この法において確保するようにしていただかなければ、法の円滑なる
実施という点において、欠けることになるのではないかと思うのでございます。
もう
一つ、市町村においてこれを
実施することについて困難を訴えておるものに、いわゆる事務費の負担というものが、非常に問題にな
つておると思うのであります。市町村の事務費についで、国において相当めんどうをみてやる必要があるのではないか。あるいは全額あるいは半額というようなものを
考えてやる必要があると思うのでございます。これは
市町村長以下の吏員が、国の
機関としてこの
仕事を扱うという
意味においても、当然そう
考えるべきであろうというふうに
考えられるのでございます。これはまた後ほど触れたいと思うのでありますが、今回この
法案で事務機構を整理するということにな
つておるのでございますが、その事務機構を整理するについても、こういう考慮を拂わなければ室文に帰すると思うのであります。すなわち責任を持つ事に当れる
補助機関を置くという
措置を、十分国で
考える必要があると思います。
それから
保護の実際について、従来問題にな
つておりました点は、国からの予算が非常に遅れるという点が問題にな
つておるのでございます。これは予算の成立あるいは令達というものの技術的な問題であろうかと思いますが、市町村においては非常に迷惑を感ずる。ことに年度がわりというようなときなりましては、非常に迷惑をして、いわゆる立てかえ拂いをしておかなければならぬというわけでありますが、これが今日の
地方自治体においては、非常に困難を感ずるのでありまして、これについては、あるいは国、府県というようなところにおいて、相当の
措置を
考えなければなもないと思うのでございます。あるいは繰越しの使用とか、あるいは繰上げの充用というようなのは従来は認められてお
つたことと思うのでございます。新しい
財政法その他では、こういうことはできないようでありますが、継続的に
保護をしなければならぬ義務費的なものについては、そういう
制度をもう一ぺん
考え直してみる必要があるのではないかと思うのでございます。
その次に申し上げたいのは、
補助機関の充実と素質の向上という点を申し上げたいと思うのでございます。
民生委員の問題が出ておるのでございますが、この
民生委員の
活動と市町村の
社会福祉主事との関係をどういうふうに調整するかということは、すこぶるむずかしい問題であろうと思いますが、公的責任を持つ
市町村長の
補助機関として
社会福祉主事を置くということは、理論上まことに筋の通
つた措置であろうと思うのであります。しかしながらこれにはその局に当る人の素質と、その数とが問題になると思うのでございまして、これは先ほ
どもちよつと申し上げました百五十億の金を運営する事務機構の問題に関連することでございますので、この際十分この機構を整備するようにしていただかなければならないと思うのでございます。市町村の行政費については、補助費も負担費もないというような
状況でありますが、これは当然国において
考えて、
第一線に優秀なケース・ワーカーを配置するようにする必要があろうかと思うのでございます。
また専任の吏員の養成訓練ということが、この
法案には書いてないのでございます。他の
法案、たとえば児童
福祉法とか、あるいは身体障害者
福祉法とい
つたようなものには、こういう
仕事を取扱う人の養成訓練の規定が、わずかではありますが、書いてあるのでございますが。これらの
法律よりもさらに大きな予算を運営する
人たちの養成訓練ということについて、法文にこれが盛られていないということは、やや平仄を失するような感じがするのであります。あるいはこれは近く制定を予想される
社会事業の基本法において触れられるつもりであるかもしれぬと思うのでありまして、もしそういう
方面でお
考えがいただけるならば、それに讓られてもけつこうとは思いますが、この専任
職員の養成訓練ということは、非常に大事な問題でございますので、この点をお
考えおき願うことが必要ではないかと思うのでございます。
それから
保護費を支拂いの迅速化という点でございます。これは三十一條にありまする前拂いの
制度が、この法文に明らかにされたことは、非常にけつこうなことでございます。これについて
意見を申し上げたいと思います。單に前拂いの
制度を
生活扶助のみでなく、
教育扶助というようなものについても
考える必要があるのではないかと思うのでございます。従来の
教育扶助は、
生活扶助の中に入
つてお
つたから当然
考えられたのでありますが、
教育扶助もこれは学期の初め等に
相当多額な金がいりますので、前拙いをする必要があるのではないか。あるいは他の扶助についてもこれを
考える必要があろうかと思うのでございます。それからこの前拙い
制度の
実施を確保する
措置を
考える必要があるのではないかと思うのであります。
法律にこれを明文化されたのでありますが、これは被
保護者の権利にな
つておるのか、あるいは軍に
市町村長の行政上、執行上の訓令的な規定にとどまるものか、この法文の書き方ではすこぶるあいまいであると私は
考えるのであります。これは被
保護者の方からは権利と解釈するであろうと思うのであります。また
市町村長も必ずこれを前拂いをするように努めなければならないと思うでありますが、それを履行する義務というものがどの
程度のものにな
つておるのか。一月以内という、非常に逃げたような
言葉も書いてありますし、たいへん問題になる規定ではないかと思うのであります。立法の
趣旨はよくわかるのでありますがこれを確保するには、この法文の書き方と。さらにもう
一つは予算上の
措置であろうかと思います。これは
市町村長がもし予算がないとき、あるは不足なときはどういうふうにしてこれを履行するのか。一時借入金というようなことまでして、この義務を履行しなければならないのか。またその権限というものは一時借入金、あるいは予算外の借入れをするようなことが、
地方自治法によ
つて認められておるのかどうか。あるいは認められていないとするならば、この
法律においてはつきりとその権限を認めておかなければ、すこぶる危險な規定ではないかと思うのであります。一方においては履行自体による責任を
市町村長は負わなければなりませんし、あるいは他の一方において、予算がない場合に、もしこの支出をしたとすれば、予算外支出をしたということでその責任を追究されるというようなことにな
つては、非常に問題になりますので、この点はもう少し研究を要する問題であろうかと思うのであります、か自治法におきましては、年度内に返還をする借入金は認めておるのでありますが、問題は先ほ
どもちよつと申し上げましたように、年度がわりのときに起きるのであります。そういうようなときに、年度を越えてやる三月四月というようなときに問題になるのであります。そういうようなときに町村長の責任を果せることのできるような権限を付與し、その責任を解除するような規定を
考える必要があるのではないかというふうに
考えるのでございます。
それから府県市町村への補助金が、非常にこれまでは遅れておるのでございますが、その立てかえの支拂いをしなければならない、これが問題でございます。しかしながらさらに問題になりますのは、
保護施設の委託費の支拂いが非常に遅れておるのでございます。先ほ
ども下松さんから
お話があ
つたのでありますが、これらのものは施設の一時借入金ということによ
つて急場をしのいでおる。それが何箇月かの
あとにならなければもらえません。その間の借入金は、銀行その他の金融
機関から高い利息を拂
つて借りて来なければならない。しかもそれは十分なる
保護費かもらえないということにしておりますので、この点については遅れた場合には、あるいは利息などは拂わなければならないのではないかということが当然
考えられるのでございます。これは法文の上に明らかにするか、あるいは
実施のときに御考慮を願わなければならないと思うのでございます。
それから繰りかえ支弁の規定が七十
二條でございますか、はつきりと掲られておるのは非常にけつこうであります。これについて問題を私は三つの御指摘申し上げたいと思うのでございます。
一つはここにある「その区域内に所在する
保護施設又は指定
医療機関」というふうに限られておりますが、これについてさらにこの範囲を拡張する必要がありはしないかということが、その第一点でございます。たとえばこれは身体障害
福祉法に書いてある失明者の更生施設とか、あるいは更生指導施設というようなものもこれに含まれるのかどうかということは疑問でございますが、いわゆる
保護施設あるいは児童
福祉施設というようなものが、みな別個の取
扱いを受ける。しかも
法律が違うということになりますと、これはそういうものが含まれないように
考えられるのでございますが、現にそういうところに多数の
生活保護を受けられる方が入られるのでございますので、そういう
方面へこれを範囲を拡張していただくということが第一点。それから第二点はこの地元市町村に対しましては、
財政上特別の
措置をお
考えをいただく必要があるだろうというふうに
考えられるのでございます。大きな市——東京都は都でやることにな
つておるから、けつこうとは存じますが、他の市あるいは町村というようなところになりますると、この繰りかえ支弁をするための事務並びに
保護費というものが、
相当多額になると思うのでございます。あるいは結核療養所、あるいは身体障害者の施設、あるいは子供の施設というようなものにおいて、
生活保護のめんどう受けられる施設がたくさんある所、しかもそれらは必ずしも
財政上ゆたかでない町村があるのでございます。その場合その事務費なり、あるいは繰りかえをする経費というものは、どういうようにして支弁するのか、あるいは借入金をも
つてでも支弁しなければならないのか。あるいはその義務があるのかどうか。この点は一時繰りかえしなければならないというふうに書いてあるのでございますが、これは義務となるならば、あるいは半衡交付金等において特別の
措置が講ぜられるのかどうか。あるいは直接国においてそこに相当の補助金等をお
考えになるのかどうか存じませんが、
財政上特別の
措置をとる必要があろうと思うのでございます。ただいま申し上げました身体障害者の施設等を見ましても、たとえば塩原町とか、相模原町というような所は、必ずしも
財政上ゆたかな所ではございません。また結核施設の相当たくさん集ま
つておる清瀬村というよう所にも、問題があるのではないかと思うのでございます。そういう点の御考慮をお願いしたいと思うのでございます。
それから四番目に、
保護施設について二、三の
意見を申し上げたいと思うのでございます。第一点は
保護施設の経営主体についてでございます。これは
保護施設はだんだん公営のものが増加しておるのでございますが、私はさらに公営のものを増加するように、国においてお
考えを願わなければならない。これは施設の数も収容能力も現在は非常に足らないのでございます。たとえば養老施設についてここに下松さんがお見えでございますが、現在約八千人ばかりの方が養老院に入
つておられるのであります。しかしながら
全国的にこれを見ますると、約三万人の老人は養老院においておせわをしなければならないというような
状況にな
つておるのでございます。また家族
制度の変遷等を
考えまするならば、今後ますますこの要
保護老人というものがふえるというふうに
考えられるのでございます。そういうような場合において、この養老施設というようなものは、軍に民間にのみまかせておくということはどうかというふうに
考えられるのでございます。またいわゆる宿泊提供の施設というようなものも、これはもう民間ではどうにもいたし方がないのでございます。民間には新しいものをつくる能力はないのでございまして、これは公の力にまたなければならないのであります。ところがこの
法案におきましては第四十條に、「都道府県は七
保護施設を設置することができる。」こういうふうに書いております。また「市町村は、
保護施設を設置しようとするときは、都道府県知事の認可を受けなければならない。」これはいささか微温的な規定ではないかというふうに
考えられるのでございます。国及び
地方公共団体の法的責任を果すという意気込みを、この
法案にもう少し盛
つていただきたい。照に費用を負担する、金を出すということだけではなく、自分で施設を持
つてその責任を果すという意気込みを、この新しい
法案に対して
考えていただくこどが必要ではないかと思うのでございます。それは別に新しい事柄でも何でもございません。児童
福祉法の三十五條におきましては、「国及び都道府県は、命令の定めるところにより、児童
福祉施設を設置しなければならない。」というふうに規定をいたしておりまた身体障害者
福祉法の参第二十七條においても同様の規定を置いておるのでございます。こういうことを
考えまするならば、この規定をさらに積極化して、国、都道府県、市町村の意気込みをここに示すようにしていただきたいと思うのでございます。ことに養老院というものは、人間の生命あるいは老衰ということはたれしも免れないものでございまして、人口百万になれば、その中何人かは、必ずおせわしなければならない者が出て来るのは当然でございますので、これのごときは必ずや都道府県に一箇所は、都道府県の責任として設置せしめるような義務を負わす。また宿泊所の提供の事業というものも、国庫補助をも
つて、都道府県あるいは市町村に必ず設置せしめることができるような
措置をと
つていただきたいと思うのでございます、ことに先ほど下松ざんから
お話がありましたように、民間の施設においてどうにも手に負えないというようなものの
措置を、最後にどこでめんどうをみるかということを
考えて参りますと、これは公権的施設においてめんどうをみていただくという道を開いておかなければならないのでございます。現在の
生活保護施設は大体四割
程度までは民間にその責任を移しておられるようでございますが、そうでなくて、さらに国、
地方公共団体の法的責任をみずからの施設においても果すのだということが必要ではないかと思うのでございます。
それから民間の施設につきましては、問題が相当たくさんあるのでございますが、そのおもなものを二つ、三つあげたいと思います。それは委託費の問題でございます。これは先ほ
どもお話があ
つたと思うのでございますが、現在の私設経営の
実情から見ますと、これはかなり不足をいたしております養老施設というものは、ごく大局的に見ますと、必要な経費に比べて三割
程度は不足しておる。昨年は四割くらいは不足しているというようなことであ
つたのであります。厚生当局のお骨折りによ
つて、非常に
措置費が上げられて参
つたのでありますが、なお三割は不足しておるというのが
実情のようでございまして、これらは共同募金とか、あるいはララ援助、あるいは他の特殊寄付でまかなうというような
状況でございます。また特殊婦人の施設、あるいは浮浪者の收容施設というようなものは、四割ないし五割も不足しておるというようなことを訴えておるのでございます。これらのものは共同募金の配分をするときの調査でわか
つた事柄でございますが、さらに精細に調査をしてみる必要があろうかと思うのでございます。ことに問題になりますのは、そこに働いておられる
職員の方々の
俸給その他の事務費というものに対しては、公の施設と比べものにならないほどひどいというのが
実情でございまして、これについては
あとでまた私設の
職員の身分の保障という点で申し上げたいと思
つてお
つたのでありますが、こういうことを
考えますならば、この委託費を決定することについても、軍に一方から施設は委託があ
つた場合にこれを拒んではならないということも、その費用が国または都道府県または市町村から行
つた経費でこれをまかなわなければならないという観念をごつちやにしてはならないと思うのでございます。引受ける義務があるからには、その義務を果すだけの経費は十分支出するということが必要であろうかと思うのでございまして、その委託費決定について、私設側と相談をされるとか、御
意見を聴取されるという機構をお持ちになることが必要ではないかと思うのでございます。現在の民間施設の賃金ベースが非常に低いという点も、私設側の
意見を十分御信用にな
つて、この委託費の中に十分盛れるような機構をお
考えを願いたいと思うのでございまして、これらももし法文に必要とするならば、お書き加えを願うことができれば非常にけつこうだと思うのでございます。それから私設側で委託支拂いが非常におそくて困
つておるということは、前に
お話がありましたので省略をいたします。
その次は
職員の問題でございますが、現在の
保護施設は、公共施設の代行をしておるというのがその
実情でございます。しかしながらその
職員の待遇は非常に薄い。それでございますので、その共済
制度とか養老年金の
制度をつく
つていただきたいという要望が非常に強いのでありますが、ことにさ上迫
つた問題は、私設に職を奉じておられる方々の身分の保障ということが問題にな
つて来るのでございます。これは被
保護者の権利を擁護される点からは、非常にけつこうなこととは思うのでございますが、たとえば養老施設に入
つておられる方では、あるいはその性格が異常な方もおられる、あるいは虚偽の風説をまき散らすとか投書をするとかいうことで、それをもし一般の方がそのまま信用される、あるいは一部報道されるということになりますと、多年こういうことに献身されて来た人も、非常な疑いを受けるとか、その地位を去らなければならないようなことになるというような困難に遭遇されることがあるのでございます。こういうような点について民間施設の
職員の身分について、何らかの
措置を講ずる必要があるのではないかと思うのでございます。ことにこの七十四條第二項の第三号に「は
厚生大臣及び都道府県知事は、この
保護施設の
職員が、この
法律若しくはこれに塞ぐ命令又はこれらに基いてする処分に離反したときは、当該
職員を解職すべき旨を指示することができる。」という條文が掲げられておるのでございます。これは公の施設としはてあるいけ当然の規定であるかもしれませんが、現在の施設運営の経費も十分でない。またその賃金
俸給という点についても十分な保障がないというようなときに、相当考慮を要する問題ではないかと思うのでございます。しかしながら私はこの規定をどうするということではないのでございまして、この規定が
ほんとうに
意味を持つように、その裏づけをしていただくことが必要でおろう。すなわち委託を受けた
職員は公務員に準ずるものである。その身分等の保障について
考えられる必要がある。すなわち委託費のうちの
職員の
俸給なり、あるいは事務費なりを十分保障されまして、いわゆる疾病なり老後なり、あるいは死んだ後の遺族のことなどについての
制度について、お
考えを願うことが必要ではないかと思うのでございます。
それから最後に被
保護者の権利の擁護について、若干の所見を申し上げたいと思います。それは第二十七條にありまする「
市町村長は、被
保護者に対して、
生活の維持向上その他
保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることかできる。」一節二項の別項の指導又は指示は、被
保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。」さらに第三項において「第一項の規定は、被
保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。」こういうのでございまするが、この規定と第六十一條の規定とを対比してみるときに、はたしてこの表現がいいのかだうかということを若干疑うのであります。それは第六十
二條はその第三項におきまして、「
市町村長は、被
保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、
保護の変更、停止又は廃止をすることができる。」こういうことにな
つておりまして、それをまた、「指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない」という表現がいいのかどうか。私はこの立案の
趣旨は、決してむりな指導とか指示はしてはならないという
意味のことではないかと思うのでございます。私の
意見といたしましては、この第三項の
趣旨を第二十七條の第三項の中に入れで、「前項の指導又は指示は被
保護者の自由を尊重し必要の最少限度にとどめ、かつ愼重適切にこれを行わなければならぬ。」こういうふうにお書きになればその
趣旨が十分徹底するのでけないか。第三項のように、何となく指示をしたことが悪い
措置であるかのように印象つける規定よりは、愼重適切にやるというふうにして、その愼重適切にやる方法といたしまして、この指示をする場合にはあるいは
民生委員会議の
意見を徴するというようなやり方をする。あるいは
福祉主事に十分な復命をさせて学識経験者の
意見を徴してやるというようなことによ
つて、
弊害のない指示ができるし、適切な指示もできるのではないかというふうに
考えるのでございます。
それから第三十條に、これは収容をする、あるいは収容を委託するというのでありますが、その第三項に、「被
保護者の意に反して、収容を強制し得るものと解釈してはならない。」そうしてそれをどうしても強制する場合には、家庭裁判所の許可を得るというような御
趣旨のようでございまするが、これももつともな規定ではございますが、強制収容の方法がないというのでは、たとえばほかの施設はしばらく別といたしまして、ここの
救護施設あるいは更生施設というようなことについては、若干問題があるのではないかと思うのでございます。これは浮浪者の施設というようなものについて、若干の強制力に類したものが必要ではないか。しかしながらそれが
保護施設が留置場にかわ
つてはならない、こういう
趣旨のごとだろうと思われますので、もう少し
考えなければならぬとは思うのでございまするが、もし一方警察等の設備が十分になるならばけつこうでございますが、そうでなくて、
救護施設、更生施設というものを生かすために、その場合にこの規定がこのままうまく運用できるのかどうかというような点を心配いたしているのでございます。
大体気のついた若干の点を申し上げて御参考に供したいと思う次第であります。