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1950-05-02 第7回国会 衆議院 厚生委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年五月二日(火曜日)     午後二時三十二分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 青柳 一郎君 理事 今泉 貞雄君    理事 大石 武一君 理事 松永 佛骨君    理事 金子與重郎君 理事 金塚  孝君       幡谷仙次郎君    丸山 直友君       堤 ツルヨ君  委員外出席者         参議院厚生委員         長       塚本 重藏君         参議院議員   小杉 イ子君         参議院参事         (法制局第一部         第一課長)   中原 武夫君         厚生事務官         (公衆衛生局庶         務課長)    菅野 周光君         国家地方警察警         視       國島 文彦君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君 五月二日  委員田中重彌君及び山崎岩男君辞任につき、そ  の補欠として寺島隆太郎君及び橘直治君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  青少年飲酒防止法案参議院提出参法第一  号)     —————————————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより会議を開きます。  青少年飲酒防止法案議題といたしまして審議に入ります。  まず提案者より提案理由説明を聽取することにいたします。塚本参議院議員
  3. 塚本重藏

    塚本参議院議員 ただいま議題になりました青少年飲酒防止法案について、提案理由を御説明申し上げます。  この法案参議院議員二十二名の発議で、百十六名の賛成署名をもつて提出したものであります。この法律は、青少年自覚克己並びに国民理解と親切によりまして、青少年飲酒になじまないようにすることによつて、その天分素質を養護し、心身ともに健全で、優良な国民を育てることを目的とするものであります。  近時社会情勢からいたしまして、青少年不良化ないしは犯罪傾向が非常に悲しむべき状態にあります。この法律によりましてその不良化犯罪化防止する必要がありますし、また青少年素質天分のままに向上させることが必要であると存じて、この法案を提出いたした次第であります。  内容につきましては、第一は現行未成年者飲酒禁止法を廃止いたしまして、禁酒年齢を二十五歳まで引上げようとするものでございます。但しこれを一挙に断行するのではなくいたしまして、この法律施行の際に現に二十歳以上の者には適用いたしません。従いまして、二十歳未満の者から一年延びに順次適用いたしまして、実施後五箇年を経過いたしまして、初めて二十五歳以下の者全部に適用することとなるのであります。なお医師指示によつて医療用として使用しまする場合、または結婚儀式用として使用する場合等は除外することといたしまして、実施の上にむりのないようにいたしたのであります。  第二の点は、一般人に対しましては、青少年がみずから飲用することを知つて酒類を販売し、譲渡し、または提供してはならないことを規定いたした次第であります。  何とぞ愼重に御審議くださいまして、御議決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 御質疑ありませんか。
  5. 丸山直友

    丸山委員 ただいま御提案になりました青少年飲酒防止法案でありますが、今まで古くからありましたのは未成年者飲酒禁止法でありまして、禁止法というのが防止法ということになりましたことは、おそらくは三條の二項の、「機会を與えないように努めなければならない。」ということから、防止法とせられたものと考えますが、そうしますと、これは禁止法では強過ぎるというので、防止法というようにお直しになるという御意向でございますか。その御意向を承りたいと思います。
  6. 塚本重藏

    塚本参議院議員 別に従来の未成年者飲酒禁止法を重くしたという意味では決してないのであります。むしろ心持の上から行きますと、禁止という固い言葉を使うよりも、防止という言葉使い、そうして広く国民の協力を求めて、その目的を達したい、こういう意味合いで防止法とかえた次第であります。
  7. 丸山直友

    丸山委員 さようにいたしますと、強化したというものではないとも考えられますが、禁酒法大正十一年にできまして以来、これは二十歳未満でありますが、しかしこの法律が完全に守られていなかつたようにも考えるのでございます。この満二十年に至らざる者の禁酒法ができてから、その罰則適用せられたという状況は、大体近年どんな傾向をとつておりますか、お教えを願いたいと思います。
  8. 塚本重藏

    塚本参議院議員 これらにつきましての資料は、一部手に入れたものがありますが、主としてこの法案説明に当られるはずでありました姫井伊介氏の手元にありまして、私の手元には今ありませんので、正確には申し上げられないのであります。大体といたしましては、ほとんどこれに触れて罰せられたというようなものはないといつたような状態にあると承知いたしております。
  9. 丸山直友

    丸山委員 資料がございませんと、私どもちよつと審議に困難を感ずるわけでございますが、二十歳までにならない者に禁酒する法律がありまして実行せられておつても、その罰則適用せられておる者はほとんどなかつたということを述べておられますが、これは法律を犯した者がなかつたから、罰せられた者がないという結果を生じたものでありましようか。あるいは法律があつても、これを嚴重に適用しなかつたから、そういうものに触れて罰則適用された者がなかつたという結果を生じたものでありましようか、それを承りたいと思います。
  10. 塚本重藏

    塚本参議院議員 もちろん未成年者禁酒法がありましたときにも、多くの未成年者の間におきまして、飲酒した者が相当数あることは事実だと認定してよいと考えるのであります。しかしそれについて、その罰則適用せられた者がほとんどなかつたという状態でありましたことは、どういう事情でありますか、よく存じないのでありますが、しかし私どもの物の見方といたしましては、なるほど罰則適用は受けませんでしたけれども、この未成年者禁酒法ができましてから、その当時はずいぶんバーなりあるいは酒場等におきましても、未成年者はここに入つてはならぬとか、あるいは飲酒してはならぬというような宣伝がかなり強く行われましたし、そういうことからいたしまして、いつとは知らず未成年者は酒は飲んではならないということが、未成年者及び国民全般のすでに常識にまでなつて来ておると思うのであります。そういう点で、未成年者禁酒法の効果は十分にあげられておつたものと承知いたしておるわけであります。
  11. 丸山直友

    丸山委員 以前からございました飲酒禁止法によつて、その罰則適用をせられた者はなかつたが、しかしその法律があるために、その精神が一般に普及したとおつしやいますが、しかしこれは数において今どちらからも反証があげられることだと考えますが、私ども考えから申しますと、かえつて敗戰後状況などで、この法律を広くせんければならぬというような改正をここにお考えになつたということは、これは違反するものがだんだんふえて来るような傾きがあるから、なおこれを強化しようという御意思があつたのではないかとも考えられるのでありますが、いかがでございましようか。
  12. 塚本重藏

    塚本参議院議員 この点は、もちろん敗戰後国民の頽廃と申しますか、そういうことからいたしまして、特に悲しむべき現象がだんだん強くなつて参つたことも認められるのであります。そういうことと合せまして、戰後未成年者ないしはわれわれの目的といたしております二十五歳年齡層に達しますまでの間の青少年犯罪というものも、非常にふえて参つたのでありますが、そういうことからいたしまして、なおこの際この青少年の健康の問題と、不良化防止の問題とを合せまして、年齡をむりをしないで、漸次引上げる方が文化国家建設のために必要だ、かように考え提案いたした次第でございます。
  13. 丸山直友

    丸山委員 最初お話を承りましたところでは、この法律がありましたために、罰則に触れる者が漸次なくなるほど法の目的が達せられた。つまり未成年者飲酒をしない習慣が漸次出て来ておつたというお話もございましたし、またただいまのお話によりますと、敗戰後相当に増加したというようなことも承つたわけで、その間に私は矛盾を感ずるわけでありますが、なお違う方から考えまして、最初にできております飲酒禁止法といいますものが、法を犯した者は大体科料に処することになつております。しかるに一方未成年者喫煙禁止の方は、法を犯した者は罰金刑となつておる。この間に喫煙禁止法科料よりも重い罰金刑適用せられておるが、飲酒禁止法罰金刑がなかつた。こういうようなことはその間に軽重の差があると考えます。これは飲酒禁止法の方が守りにくいというふうな感じを與えておると思いますが、いかがでございましようか。
  14. 塚本重藏

    塚本参議院議員 お説のように、禁煙の方は少し刑が重いようでありますが、こちらの方はそこまでしないでも大体守られるのではなかろうかということと、それから禁煙の場合と禁酒の場合とにおきましては、状況に多少の相違があります関係からいたしまして、こちらの方では拘留または科料程度にとどめた次第であります。
  15. 丸山直友

    丸山委員 次にこの内容について少し質問したいと考えております。アルコール含有量三度以上ということに限界を設けられました理由をお聞かせ願いたいと思います。
  16. 塚本重藏

    塚本参議院議員 大体アルコール含有料を三度以上といたしましたのは、ビールを含めた酒類を用いてはならぬというところに限界を置きましたのと、もう一つは料理等使いますみりん、これなどは三度以下であります関係で、みりんなどはこれに適用しないというところで、三度という限界を設けた次第であります。
  17. 丸山直友

    丸山委員 みりんが三度以下であるということは私ただいま初めて承つたのでありますが、大体日本のみりんアルコール含有量はどのくらいになつておりますか、お聞かせ願いたいと思います。
  18. 塚本重藏

    塚本参議院議員 さつき私の申し上げましたのはちよつと間違いがあります。みりんは大体八度くらいあるとのことでありますが、最初に申し上げましたように、ビール以上の濃度のものを酒類として用いさせないようにということできめたのであります。
  19. 丸山直友

    丸山委員 それからこの「飲用」という言葉使つてありますが、大体「飲用」ということの定義をひとつお聞かせ願いたいと思います。と申しますのは、酒をそのままの状態で飲むのが飲用であるのか、あるいは三度以下に薄めた場合に飲用であるのか。料理使つた場合は食用であるのか、飲用であるのか。その飲用定義を明確にお聞かせ願いたいと思います。
  20. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 ここで三度以上の飲料禁止いたしております趣旨は、強度のアルコール青少年のからだに及ぼす影響考え規定されておるのであります。従つてただいま御指摘になりましたような方法によつてアルコール含有量が三度以下に落ちる場合には、含まれないと解釈いたしております。
  21. 丸山直友

    丸山委員 それでは医学的の御説明をひとつ願いたい。アルコールの害は、濃度によるところの害と、飲んだアルコール全量によつての害と、いかなる差がありますか。医学的に証明されました事項がありましたら、御説明願いたいと思います。
  22. 塚本重藏

    塚本参議院議員 これは非常にむずかしい問題でありまして、アルコール飲用した場合の身体に及ぼす影響弊害並びに精神に及ぼす影響弊害、これは非常にむずかしい問題でありまして、参議院公聽会を開いた場合にも、この問題を専門的な立場から論じられた方があつたのでありますが、これは人によつて非常に差異がある。ある程度強いアルコール飲用いたしましても、割合にその弊害が及ばない者もありますし、またきわめて少量の飲料が、非常にその弊害を強く及ぼす体質を持つておる者もある。人によつて非常な相違があるということも、医学的にわかつておるのであるというお話があつたのでありますが、私といたしましても、そのようであろうと考えておりまして、一様には律しがたいと思います。
  23. 丸山直友

    丸山委員 次にこれはなお機会がございましたならば、この青少年に及ぼす害と、それから私の希望いたしますところは、二十歳以下の者と、二十歳から二十五歳までになる者との間の、大体のアルコールに対します抵抗力差異及びその弊害程度、それから濃度全量との弊害関係等を、もう少し明確にせられた材料を、私はお示し願いたいということを特に希望いたす次第でございます。  なおこの法案を拝見いたしますと、青少年自覚克己国民理解と親切というようなことをもつて青少年飲酒になじまないようにするということが、この法律目的であるというようになつておりますが、青少年自覚を促し、克己心を養成し、あるいは国民理解と親切を求めるというようなことが、この法律のどこに盛られておりますか。禁止條項が主でございまして、最初目的とするところの、これらの自覚等を與えるようなことに関する規定がないと思いますが、これはどういう理由でありますか。
  24. 塚本重藏

    塚本参議院議員 特に自覚を促します規定はなるほどありませんが、この法案全体を通して、こういう法律ができること自体が、青少年自覚を高めることとなり、ひいて酒害に染まらないようにしなければならぬという克己心も誘発させることができる、こういうふうに考えておるわけであります。それから国民理解と親切の問題でありますが、これは第六條のような規定によつて、大体その目的が達成せられるのではないか、かように存じておる次第であります。
  25. 丸山直友

    丸山委員 第六條の規定とおつしやいますが、六條の規定は、拝見いたしますと、販売し、讓渡し、提供してはならないということであり、前項の規定違反した者は罰則——これは罰則でございまして、販売や讓渡ということで、決してこれは青少年自覚と何ら関係のない事項のように考えられますけれども、いかがでありましようか。
  26. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 第一條に書いてあります青少年自覚克己国民理解と親切ということは、條文と直接つながると言いますより、この法律が運用される根本精神が、ここにあるのだということを示したのであります。従いまして、第三條では青少年に対する禁止規定がございますが、その酒を飲むなということは、青少年自体自覚克己心から、そういう方向に進んで行きたい。また六條も同様に、国民理解と親切によつてこういう禁止條項が守られるようにありたいという目標、運用の根本精神というものを、一條に掲げたのでございます。
  27. 丸山直友

    丸山委員 どうも私まだぴつたりいたさないのでありますが、この第一條目的をとつても、これは青少年の酒による害を防止する目的をもつて禁止する方法となさつて、これをこのままお使いになつてもちつともふしぎのないような條文であるように考えるのでありまして、こういう目的を掲げられるからには、何か目的に沿うべき條項が、どうも私には必要だと考えられます。これは議論になりますから省略いたしますが、次に第六條の「何人も、医師指示に基き医療用として使用する場合」ということがありますが、医師指示ということはどういう場合をさしますか、ひとつ具体的にお示しを願いたいと思います。
  28. 塚本重藏

    塚本参議院議員 これはいろいろの場合があろうと考えます。私自身はもう青少年ではないのでありますけれども、先ごろしばらくわずらつて入院いたしておりましたが、むりをして退院して故郷に帰りますときに、注射をしてもらいたい、こういうことを言つた場合に、医者からむしろ注射をするよりは、ぶどう酒を飲んで汽車に乗られた方がいいでしよう、こういうような指示を受けて、ぶどう酒を飲んで帰つたことがありますが、そういうふうに何か健康上、これはある程度アルコールを用いることを必要とすると思われた場合に、そういう何をどの程度に飲めというふうに医者指示を受けた場合においでは、飲んでもよい、こういうふうに書いてあるわけであります。
  29. 丸山直友

    丸山委員 実は私は医者でございますから、この條項は非常に重要に感じておる次第でございます。なぜかと申しますと、違反のあつた場合には、これは医者指示であつたということが示されますと、違反にならないわけであります。従つて医者指示があつたかなかつたかということを立証するということが、違反になるか、ならないかというわかれ目になるのであります。従いまして、この医者の地位というものを立証しなければならぬ必要が必ず生ずる場合があり得るのであります。この場合に医者は証言を求められるのでありますが、その場合の指示という言葉を明確にしておきませんと、医師にしばしばある程度の責任が負わされるという危険があるのであります。私どもは医薬として用いる場合と考えられますから、投薬する場合においては処方箋を発行しなければならぬのであります。口頭をもつて指示してもよろしいということであるならば、その辺も将来考えなければならぬと思いますが、その点明確にしてもらいたいということが私の希望であります。指示ということを定義づけていただきたいということであります。
  30. 塚本重藏

    塚本参議院議員 この場合におきましては、大体処方箋によることにいたしたいと思います。
  31. 丸山直友

    丸山委員 私ども医師酒類を使用する場合、多くぶどう酒使つております。ぶどう酒は三%以上でございますから適用範囲に入るのであります。それを與える場合に必ず処方箋をやるということが原則でございますが、しかし救急処置の場合においては処方箋をしばしばあとから発行して、前には発行せられないという事実があるのであります。その場合に、相当医師としては注意を要する條項だと考えますので、特に念を押してお伺いしたわけでありますが、処方箋によるということを明確にせられましたので、その点はやや安心いたしました。  それからその次の結婚儀式用として使用する場合、こういう條項がございますが、儀式用ということも明確にしていただきたい。儀式の式場においてという意味でございますか、儀式終つた後の宴会という意味でございますか、あるいはなお翌日親戚の者を呼ぶということも儀式と関連して考えられますが、その段階範囲というものを明確にしていただきたい。
  32. 塚本重藏

    塚本参議院議員 この場合の儀式用というのは、純然たる結婚式をさしておるわけであります。
  33. 丸山直友

    丸山委員 次に、その條項青少年に対し飲用に供することを知つて販売するということでありますが、販売するときに飲用に供することを知つてつたか、知つておらなかつたかということは、判定に困難を生ずると考えます。その点についてもう少し詳しい御説明を願います。
  34. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 六條にこういう制限を設けましたのは、青少年が親の使いで買いに来た場合にも絶対に売らない、売つてもらえないという事態を避けるために、積極的に青少年自身が飲むのであるということを知つてつた場合、これは違反にする、こういうことにしたのであります。
  35. 丸山直友

    丸山委員 これは法律としては非常におかしい條文です。青少年は自分で飲用に供したいと思いましても、買う場合においては、飲用に供しないというて買うのが常識だろうと思います。飲用に供しないと言うたのみで、青少年飲用に供することを知らなかつたということの証明になるかならぬかという点を、もう少しはつきりしていただきたい。
  36. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 八條で知らなかつた場合でも、普通に注意をすれば知ることができるはずであつたときには……。
  37. 丸山直友

    丸山委員 実に不明確な法律で、これは場合によりますと、私どものおそれますのは、その酒類の販売しておる者に対して、ある罰則適用した方が都合がいいと考えられる場合には、この法律は自由に適用せられる危険があると思います。この法をゆるく使う場合には、ほとんど一人も罰せられない。この前、未成年禁酒法大正七年に出て以来、ほとんどこの罰則適用がなかつたという事実と似たような事実が起つて来るのではないか。そうしますと、これをやつても、この法律というものは事実運用する上に非常に欠陷が起きて、ただいたずらに法律があるというだけで、その法律を軽んずるような傾向が生じます。そういう危険があると考えられるが、その点に対してのお考えを承りたい。
  38. 塚本重藏

    塚本参議院議員 御心配の点はごもつともだと思いますが、この法律をつくりました者といたしましては、できるだけむりのないようにということで、今御指摘になりましたような、飲用に供するということを知つてというようなことは、これも使つてなかつた言葉でありますけれども、酒を買うのに子供を使うこともできないというようなことは、非常な不便が生ずる、明らかにこれは家庭の使いとして買いに来た者であるということでありますならば、普通の注意をいたしまして、そういう者には売つてもよい。売つた方がよかろうということで、使いが自由できるようなことも考えて、こういう文句を用いたわけであります。こういうことをやると、結局この法律が骨拔きになつて取締りが十分にできないのではないか。そういうことに陷る危険性がある、そういうふうにお考えになりますことも、十分わかるのでありますが、この法律が施行せられますと、漸次こういう法律があることによつて、知らず知らず二十五歳未満の者が酒を用いなくなる、飲んではならぬというような意識がだんだん高まつて来る。そういうことによつて、この法律を制定いたしました目的は達せられる。こういうふうに考えておる次第であります。
  39. 丸山直友

    丸山委員 かなりこの法律が不明確な、そうして非常に適用に苦しむ。法を扱うのにも困難をし、不完全なものではないかという感じを私は持つたのであります。それは私の意見でありますから申し上げませんが、大体私の承りたいことはこれで盡きておりますが、先ほど申し上げました、アルコール濃度の健康に及ぼす影響及び全量の及ぼす影響、及びその年齢の各段階における差ということと、それから古い時代からの、禁酒法がありましたその時代違反者の数、並びに取締りの方針について、もし資料があつたならばいただきたいことを希望して、私の質問を打切ります。
  40. 堀川恭平

    堀川委員長 ちよつとお諮りしておきますが、ただいま公衆衛佳局管野庶務課長が来ております。それから国家地方警察本部刑事部防犯課國島文彦君という方も来ておられます。そういう方が来ておりますから、政府側の御意見をお聞きになることがありましたならば、あわせてお聞きしてけつこうであります。
  41. 金子與重郎

    金子委員 議事進行について、ただいま丸山委員からいろいろ質問があつたのでありますが、それをお聞きしておりまして、まつたく私どもにもまだ納得のつかないたくさんの問題、ことに六、七、八條のごときは非常に影響力も多いし、また惡用すればどんなにでも惡用ができる。ことに売つた人を罰するということになりますと、それを故意に罰せさせるという行為も行われるという非常な疑念もありますので、御承知のように、きよう代議士会も休憩中であつて出て来ておりますし、委員もこの通り非常に少うございますので、この重大な問題でありますから、ぜひともこれはもう少し委員の多いときに十分審議して行きたい、こういうように考えますので、その意見を申し上げます。
  42. 堀川恭平

    堀川委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  43. 小杉イ子

    小杉参議院議員 先ほど川上貫一議員からお手紙をいただいたのでございますが、それには現在のように青少年のために十分な娯楽やその他のことに注意を拂われずに放任されているときに、いたずらにこうした法的な禁止法が出るということは、かえつて内訌させるもので、罪人をつくることになり、現状に適応しないことと思うので、反対いたさねばなりません、こういう手紙でございまして、これはほとんどの方がおつしやる言葉でございます。それにつきまして、私はこの問題の今日までの歴史を聞いていただきたい。そうして経過、それから対策を皆が求めていらつしやいますので、その対策も聞いていただきたいと思うのでございます。  このたびは参議院厚生委員長塚本委員姫井委員が最も力を入れまして、参議院議員二十二名によつて提案されました青少年飲酒防止法案は、昭和二十五年四月七日に参議院を通過いたしました。昭和三年に一度衆議院も通過いたしております。私はあすから議員でありませんので、再び皆様にお目にもかかれず、またこの法案の立案された理由、経過、対策について本聞いていただく機会がないかもしれぬと思いますので、十分ばかり聞いておいていただきたいと思います。そもそも人体と社会国家経済及び後世に及ぼす飲料としてのアルコール害を取上げることになつたのは「わずか十九世紀の中頃でありますが、この青少年飲酒防止法案を取上げることになつたのは、大正十三年、今から二十七年前新潟に開かれた全国禁酒大会のときであります。新潟で私は二十五歳案と、食糧に関する点で、個人的の余談のことでありますがちよつと聞いていただきたいと思います。二十七年前、私ども同志の間では、しきりに、もし日米戰わが食糧はどうするか、飛行機によればわが日本は一週間で燒きつくせるという、アルコール飲料ではない、燃料である。破壊は早いが、復興は長引くなどと聞きました。私は少女時代に日清戰争の切り合い、殺し合いの幻燈を見てから、非戰論者でありましたことと、また半世紀以前の話ではありますが、夫は学生時代から英米の哲学、神学博士方に日本語を教えておりまして、多数の英米人を知つておりましたことと、私も数名の先生に教えられましたことがありますので、英米人の親切や愛は、私どものように親子の間に至るまで、折算的の愛でも、親切でもない点を知つて、その人となりを二人は非常に尊敬しておりましたので、あのような人々に手向い、刃向いをしたくないと思い、この戰わじの声の消え去らんことを願つておりました。しかしながら、もしも敵を知らず、おのれを知らず後で申せばエチオピヤ対イタリー式の戰争とでもなれば、まず先立つものは食糧だと思いまして、二十五歳禁酒法では手ぬるい、この際食糧確保のため絶対禁酒法案として提案すべきだと主張いたしたのでありました。ところが政府、軍閥、飲酒家の反対で、とうていこれは通過はむずかしいということで、二十五歳禁酒法として提出することに決定したものであります。それから二十五歳禁酒法または青年禁酒法として、禁酒同盟から提出すること二十数回、青少年禁酒法として小杉イ子個人提出二回で、二十七年目の今日に至つたものであります。第一回国会には、衆参議員三百十五名の原案賛成を得て、厚生委員会で審議にかからんとするが早いか、時の厚生大臣は、もしこの法案が通過すれば、取締りが困難である、予算がないし、反対すると間接にはつきり言わしめました。その時私は、まだ審議にもかからぬ先に、反対と申さるることは、これは民主主義政治方法でありますかと申しました。もちろん私ども同志は、このような法律を作ることは必要のないアメリカや中国の子供にも、笑われるであろうことが考えられますので、まず教育、宗教の力によつてその酒害知つてもらうことだと思い、わずかの同志ではありましたが、あらゆる方法で宣伝を続けること三十三年でありますが、ときには、自分の金で自分が飲むのが何が惡いのだ、いらぬせわだと申し、踏まれたり、けられたり、啖唾を吐きかけられたり、やつとくめんした金でつくつたビラを踏みにじられたものであります。それでも何らの効果もなく、今では青少年が、身分不相応に高い酒代ほしさに犯す犯罪は、表面に現われただけでも、昨年度は八歳から二十五歳までの者が、全国で二十五万六百六十一件、昭和十一年の約六倍で、青少年の九人に一人の割で、このうち強盗、窃盗が十七万五千六百件で、強盗の件数は大人の二倍、傷害は二万三千七百件で、大人より五千件多く、しかも十三歳未満の学童が二千三百件犯していることには、戰慄を催さざるを得ないのであります。しかし取締る法律があればこそ、殺人、強盗、窃盗、賭博等も現在の数で食いとめられているわけで、もしこの法律がなければ、底しれぬほど犯罪は出現するだろうと思います。またそれに相当する罰則があれば、人の言うことはきかぬ者でも、法律と申せば心を緊張させて、自然指導もしやすいのであります。この法案の立案の初めは、故泉二新熊大審院長は、犯罪の原因は、ほとんどが酒だと申され、また東大教授故片山國嘉法医博士は、学生の不良の根源をつくと、必ずそこに酒があると申され、また京大教授故松浦有志太郎医学博士は、惡性遺伝病、特に精神病、性病の原因は、ほとんど酒だと申され、また社会衞生の権威大平得三医学博士は、たえず酒害を教えておられます。また大阪弁護士会長故林龍太郎法学士は、金とひまにあかせて、本を読んで読んで読み盡したが、つまりのはては社会、国家、家庭の平和は、酒を排するにあることを知つたと申され、その他專門学者、酒害体験者の大多数によつて立案されたものであります。すなわち理由は、生理学上から心理学、優生学上から見て、心身の完成は二十五歳以後であるが、飲酒の習慣は、十七歳から二十五歳までが最も多いので、飲酒の習慣を未然に防止すべきである。また二十歳から二十五歳の間は結婚、分娩、種族保存上最も重要な期間で、特に胚種細胞に及ぼす直接的、間接的影響、中でも精神病、性病、犯罪其他の劣惡な遺伝的原因を除かねばならぬと申し、二十五歳未満者の飲酒防止法案となつたものであります。ここで取締りのできぬ法律は不用だと申す人もありますが、一方には文明国の母たちの持つような強い母性愛と法律をもつて、自然にこの法律が消えるまでに努めねばならぬと思うのであります。その対策の一つといたしまして、労働中の休みのとき、勉強に疲れたときのための野球場や水泳場等を設置し、ボート等を作り、楽器等を持たせること、映画、演劇類の観覧券、割引券の配布または大池などの種々の魚類を釣らせ、釣り過ぎれば売らせて楽しい收獲とさせること、家でできるものは金を立てかえ合つて、豚ややぎを自分の物として飼わせ、肉や乳の値段を下落させ、十分に食用ともさせて、結核予防の一つともすることであります。また性病毒を知る展示会も催す等々で、これには愛と指導と法律によらねば、身心は完成されないと思います。どうかよろしく御審議くださいますようお願いいたします。
  44. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは終りに臨みまして御あいざつだけさせていただきます。第七国会百五十日間、皆様方の御協力と御指導によつて大過なくこの国会を過させていただいたことは、感謝にたえないのであります。なお第五、第六、第七国会と委員長を勤めさせていただきまして、その問いろいろな法案がありましたが、皆様方のほんとうに熱烈な御協力によりまして、私本日まで勤めさせていただきましたことは、ほんとうに心から喜んでおるのであります。聞くところによりますと、本日寺島隆太郎君が後任になられるそうであります。元厚生参與官をし、ただいま賠償庁の政務次官をしておられるということを聞いたのでありまして、私本日をもつて第七国会が終るに当りますのとともに、皆様方とおわかれするかもしれぬのですが、心から皆様方に今までのお礼を申し上げまして、御あいさつにかえる次第であります。ありがとうございました。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時二十二分散会