○
井手委員 ただいま上程せられました
首都建設法案につきまして御説明申し上げたいと存じます。その前に、本法案の提出に関しましては、本委員といたしまして、各位におかれ、特段の御配慮をいただきましたことを、この機会にあつく御礼を申し上げたいと存じます。
法案の説明の段階といたしまして、まず本法案を提出いたしまする総括的な説明を申し上げまして、逐次、
逐條説明をいたしたいと存じます。
私がここで申し上げるまでもなく、元来、都市の機能といいますものは、国内の他諸地域及び
世界各地との関連におきまして考慮されねばならないのであります。敗戦によりまして、
わが国は将来永久に戦争を放棄し、自由と平和を愛する
文化国家を建設することとなりましたが、東京都が
わが国の文化を表徴する
文化都市として新たに
世界各国と関連を持つ上におきましても、はたまた
わが国経済の
中心地として、
世界経済と密接な交渉を持つ上におきましても
わが国の首都としまして、十分にその機能を発揮し得るように整備されますことが、絶対に必要であります。さきに公布せられました
広島平和都市建設法、
長崎国際文化都市建設法が、広島、長崎をして、各
平和都市、
国際文化都市として生れかわることを世界に宣言しましたことが、
国際信義を高揚する上におきまして、多大の意義がありますように、
わが国経済、文化の中枢であります首都を、首都として十分にその機能を発揮せしめ得るように整備しますことが、絶対に
国家再建のために必要な事業であり、これが
国際文化の向上、
世界経済の繁栄に寄與するところ大なるものがあると信ずる次第であります。
飜つて過去の東京を見まするに、東京都が明治以来首都でありました点におきましては、いまさらあらためて私が申し上げるまでもないのでありまするが、従来の東京都は、政治、経済、
文化等の中枢であり、
世界各国と関連を持つ上の
中心地であるといいますよりも、むしろ
徳川時代におきまして、京都が都でありましたように、宮城を中心としましたきわめて封建的な都、いわゆる帝都として存在しておつたということが言い得るのであります。
従つて、そこに建設せられます国家の
重要施設も、首都としましての機能を発揮します上に、いかなる影響を與えるかにつきましては、考慮せられることがきわめて少く、個々別々に建設せられる状態でありまして、
都市能率の
向上等は、全然無視せられていたと
言つてもさしつかえがないのであります。また首都でありますために、他の都市と比較しまして、いかなる特別な取扱いをなしていたかにつきましては、その行政におきまして都制を施行します等、ある程度の特別な措置を講じてはいたのでありますが、その首都としましての都市の施設の整備につきましては、何ら他都市と区別を與えられていないのであります。ただ御承知のごとく、大正十二年の
大震災の
復興事業におきまして、国がその一部を直轄し、あるいは補助をなします等、国におきまして相当な援助を與えているのを見ることができますが、これがはたして首都であるという見地から、特別な措置を講じたものでありますかどうかは、横浜市の復興につきましても同様の措置を講じている点から見まして、疑問とするところであります。
都市計画は、
市区改正以来引続き施行せられてはおりますが、これは他の都市と何ら異るところはなく、
都市民の安寧を維持し、福利を増進するという点に立脚するものでありまして、特に全国的あるいは国際的な関連を考慮しまして、総合的に計画され、実施せられたということは覆い得ないのであります。かりにこれを考慮したとしましても、
都市計画法第一條には「
都市計画ト称スルハ交通、衛生、保安、
経済等ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ
維持シ又
ハ福利ヲ
増進スル為ノ
重要施設ノ
計画ニシテ」とあり、従来これに含まれるものであれば、文化的諸施設でありましても、
都市計画として決定し得るものと解釈せられ、相当多数にわたりまして決定せられてはおりますが、首都における政治、経済、文化の
中枢活動に対しまして、首都を首都としての機能を十分に発揮せしめるためには、これらの施設だけではなお十分とは言い得ないのであります。
しかしてわが東京都は、
罹災面積におきまして実に四千三百万坪、全国の
罹災率の二四%、その人口におきまして約三百万、全国の三一%、
罹災家屋におきまして約七〇万戸、全国の三一%、その
物的損害におきましては、当時の物価におきましても百二、三十億という莫大なる戰災を受けております。今日の
貨幣価値に直しますならば、おそらく一兆以上に上る損害であつたと言い得ましよう。こういう莫大なる戰災を受けて終戰を迎へたのでありますが、その復興にあたつては、
大震災の
罹災面積は戰災の約四分の一であります。関東
大震災があれほど大きな災害であつたといいましても、今回の
罹災面積からいいますならば約四分の一、
罹災人口は戰災の約半分でございます。当時百五十万の
大震災復興事業に、国家において與えました助成は、総
事業費約六億六千万円のうち、国におきまして施行し、あるいは補助を與えました額は四億四千五百万円で、約六八%に相当する国の特別の措置の例に徹しましても、当然與えられなければならないものを、
戰災復興におきましては、
事業費に対する助成の比率につきましては、一
地方都市と何ら異ることはなく、その
復興事業の面積におきましては、
地方都市におきましては
罹災区域の全面積に施行しているにもかかわらず、東京都におきましては、
罹災面積のわずかに約十分の一の区域にしか実施し得ないような状態であるのであります。冒頭に述べましたように、新しく
平和日本の首都としまして、国家の協力のもとに整備、建設せられなければならない首都の復興におきまして、かくのごとき状態でありますのは、まことに寒心にたえないところであります。しかしながら
終戰後の
復興都市計画におきましては、
わが国の首都としてその機能を発揮し得るよう鋭意
調査研究を遂げ、道路、
河川等交通施設におきまして、
公館地区、
用途地域等土地利用計画におきまして、あるいは公園、
緑地等保健施設におきまして、
都市計画といたまして決定し得るものにつきましては、極力考慮を拂い、逐次決定をいたしたのでありますが、その計画は依然としまして一
地方公共団体の計画であるとの感を與えましたのみならず、
都市計画施設といたしまして、たとえば鉄道、軌道、道路、河川、
下水等を決定いたしましても、道路には
道路法があり、河川には
河川法があり、
鉄道軌道には
鉄道法、
軌道法があり、下水には
下水道法があるといいますように、ほとんど全部が單独法によつて処理し得られ、
都市計画法自体他の法律に上ることを拒否していない以上、計画に従いますことを強制する何らの規定も慣例もないのでありましてそれぞれの
施設計画が決定せられた
都市計画に即応しませず、これを無視しまして、個々別々に実施せられる実情もありまして、
復興計画の将来の完全な実施を困難ならしめる状態に立ち至つていることは、各位も十二分に御存じの通りでございます。人あるいは東京都の人口は大であり、面積も大であり、
重要産業、
交通施設が集中しているので、これらの事業に対しまする財源を持つているでありましようから、早急に実施すれば、その懸念も解消するのではないかと言うかもしれません。しかしながら戰災の痛手は、
公共施設の復旧に例をとつてみまするに、道路におきまして、その復旧に約九十四億を要するのにもかかわらず、施行せられたのは約六億でありまして、その
進捗率は
終戰後五年にしてわずかに
荒廃道路の六%、公園におきましては
復旧費一億に対しまして、一千四百万円の約一四%という状態でありますから、
復興計画の実施のごときは、とうてい本格的な若手は不可能でありまして、その現況は計画せられた
道路区画整理、運河、河川、
高潮防禦、
排水場、
河川埋立、
公園緑地、
塵埃焼却場、港湾、上水道、
下水道等の総
事業費約四千億円に対し約四十六億、これは現在の物価に換算してでありまして、約一、一%というまことに心細い限りであります。これは戰災による
経済力の復興が依然として進まないのに加えまして、数次にわたる水害がまたその復旧に莫大なる費用を要したのにもよるのでありますが、その状態は次第に首都であるとの構想のもとに立てられた計画が、従来の復旧に大差ない程度に後退せざるを得ない状態に立ち至つておるのであります。これは国家が首都の建設にあまりに無関心であるということが、大なる原因であると指摘し得るのであります。
終戰後東京都が首都として国際的な関連を持つてきたことは大なるものがありまして、その結果は
交通施設におきまして、または
保健施設におきまして、あるいはその他の
文化施設におきまして、早急に整備を要するのを感ずるのでありますが、近く行われるでありましよう
講和会議後におきましては、ますますその必要を痛感することを予想せられるのであります。
以上述べましたのが
首都建設法の制定を必要とする理由でありまして、以下
首都建設法の意図する点につきまして簡單に述べてみたいと思いますが、その第一点としましては、東京はあくまで一
地方公共団体としての東京都だけではなくして、新しくわが
平和国家の政治、経済、
文化等の
中心地としまして、また
世界各国と交渉を持つ中心としての首都が、新しく誕生することを宣言したものであります。
その第二点といたしましては、東京都を
わが国の首都としまして計画いたし、建設するにあたりましては、その政治、経済、文化その他あらゆる部面におきまして、首都としての
有機的機能に着目いたし、首都におきまして、
わが国及び
世界各国との関連におきまして行われますあらゆる国家の
中枢活動を、より能率的に、より効果的になし得るよう計画いたし建設することを定めたことであります。
その第三点としましては、以上の諸施設を計画いたし建設するにあたりましては、国家的問題としまして、政府がこれを取上げ、全国民がこれに参画し、協力し、援助し、関心を持つて達成される必要があることであります。これを具体的に述べますれば、東京都の区域内におきまして首都としての機能を発揮するに必要な施設の計画及び事業の基準は、
都市計画、
都市計画事業、
特別都市計画、
特別都市計画事業のみならず、運輸、交通、
供給施設等はもちろん、
中央官衙計画等の
市街地計画、その他いかなる施設であろうと
首都建設計画が決定し得るということでありまして、その計画は、
国務大臣、国会を代表する者、
東京都知事、
東京都会を代表する者、
学識経験者より構成する
行政機関たる
委員会が決定し、その計画の作成及び実施には国、東京都の区域内の
関係地方公共団体及び
関係事業者、すなわち官、公、民を問わず協力いたし、援助を與えなければならないこととするものでありまして、さらに東京都の区域内で行われる
都市計画事業は、東京都が首都であることにかんがみて、
首都建設上必要があると認めましたときは、東京都及び関係の
地方公共団体の同意を得た場合は、その内容である事業を主管する
行政官庁が執行できることとしたのであります。これはたとえば道路については
建設大臣、港湾については
運輸大臣、あるいは公園について
厚生大臣が執行することができることとしたのでありますが、これは
国家的要請に基き、首都としての
機能達成上必要な施設は、国の事業として執行するのが当然でありますから、この場合こういうように定めたのであります。また
東京都知事あるいはその他
行政庁が、
首都建設計画に基く事業を実施する場合には、一
地方公共団体としての活動に必要な以上に規模を大にし、あるいは精密にしなければならない場合があります。たとえば、丸の内の
交通状態を見まするに、東京都が首都でなかつた場合は、おそらく現在のような道路の
駐車状態を見ないでありましようが、もしこれがために
駐車施設を整備するとすれば、当然国家的な要請によるものでありますから、国家におきまして相当考慮しなければならないものであります。または
東京駅前の広場の広狭の問題にしましても、首都であるために、国際的にあるいは国内的に整備を要する場合、あるいは
国際交歓施設等を含む国際的な
中央公園、あるいは
国際空港等を知事が実施するとしますれば、これらについても、当然特別の助成を必要とするものでありまして、その方法としまして、
国有財産であります
普通財産が、その事業の用に供しなければならない場合には、必要とする
公共団体に譲渡することができる道を開いて、その事業の容易に完成するよう考慮しようとするものであります。
以上で本法案を提案いたします大綱の御説明にいたしたいと存ずる次第であります。
なお逐條につきまして若干御説明申し上げたいと思います。
第一條は、この法律の目的を定めたものでありまして、その目的には二つの重要な意味が含まれています。すなわちその一つは、東京都を新しくわが
平和国家の首都として計画し、建設することを目的とすると規定したことでありまして、東京都に
平和国家の首都としての性格を與えた点にあります。もちろん、東京都が
わが国の首都である点に関しては、事新しく規定するまでもないのでありますが、従来の東京都は政治、経済、
文化等の中枢であるというよりも、むしろ皇居のある都、すなわち帝都として存在して来たのでありますが、今次世界大戰の結果、
わが国は武力を永遠に放棄し、新しく
平和国家として
国際社会の一員に加わることとなつたので、首都である東京都の性格も
軍国主義、
国家主義のいわゆる帝都より、
わが国の政治、経済、
文化等の
中心地として、また
世界各国と交渉を持つ上の中心としての首都が、新しく誕生することを宣言したものであります。
もう一つの重要なる意味は、東京都をわが
平和国家の首都として計画し、建設するにあたつてその政治、経済、文化その他あらゆる部面において首都としての機能を十分に発揮し得るよう計画し、建設することを定めたことであります。従来の
都市計画法、
特別都市計画法においては、
都市計画法第一條に「
本法ニ於テ都市計画ト称スルハ交通、衛生、保安、
経済等ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ
維持シ又
ハ福利ヲ
増進スル為ノ
重要施設ノ
計画ニシテ」云云とありますごとく、
都市計画とは、その都市を單位として住民の安寧を維持し、または福利を増進するための計画であつて、無統制な発展により生ずる交通上、衛生上または保安上生ずる障害を未然に除去するとともに、
既成都市の改造を行おうとする、いわば浦極的な性格を有するきらいがあつたのでありますが、この法律は、單に
東京都民の安寧を維持し、福利を増進するためばかりでなく、進んで首都としての
有機的機能に着目し、首都において
わが国及び
世界各国との関連においで行われる政治、経済、文化その他あらゆる国家の
中枢活動をより能率的により効果的になし得るよう計画し、建設して、
国際文化の向上、
世界経済の繁栄に寄與することを目的とするものであります。
第二條は、
首都建設計画の定義を示したものであります。「この法律で、
首都建設計画とは、東京都の区域内において施行せられる
重要施設の
基本的計画」を指す、こう定めてございます。以下「東京都における」云々から「事業の基準となるものをいう」までは、前段の
基本的計画を
補足説明した規定であります。「東京都の区域内において施行せられる
重要施設」とは、
首都建設計画をもつて規制せられる土地の範囲内に関して規定したものであります。すなわち
首都建設計画は東京都の
行政区域に限られるものであつて、本計画は
都市計画及び
都市計画事業の基準となるものである以上、
都市計画法第一條において「市若
ハ主務大臣ノ
指定スル町村ノ
区域内ニ於テ又ハ其ノ
区域外ニ亘り
施行スへキモノ」と規定せられている
区域外にわたり施行せられる計画及び事業は、
首都建設計画としても取上げる必要があると思われるのでございますが、しかし形式上は当然
首都建段計画に含まれ得ないと解さねばなりません。これはみだりに首都と特別に関係のない他府県の利害に影響ある計画及び事業を決定されるのを防止するものであると考えられます。しかしながら、たとえば小河内の水道の
貯水池事業が山梨県に及んでいるのでありますが、このような事業を
首都建設計画として研究する場合は、山梨県にわたる
計画そのものは決定し得ないとしても、区域内の計画及び事業の内容によつて、その
執行者であるものが当然
都市計画及び同事業において考慮することとなつて、事実上は大なる支障はないものと考えられます。
重要施設とは何を指すかということについては、その
補足説明において規定せられている通り、
都市計画及び同事業並びにその他の施設の中で重要なもので、しかも第一條の目的を達成するに必要なものでなければならないものであります。
従つて地域的には相当重要なものであつても、その
施設そのものが首都の機能を発揮する上に何ら関係のないものは決定し得ないものであります。
またこの規定にいう
都市計画及び同事業とは、
都市計画法にいう
都市計画も、
特別都市計画法にいう
特別都市計画も、もちろん包含されるのでありまして、この場合は法律的にいうものではなく、
社会通念上の
都市計画を指すものであり、この
首都建設計画は決してこれらを排除するものではなく、これらの施設の基準となるものであり、さらにそれよりも
一段高次の
基本的計画であつて、
都市計画、同事業、
特別都市計画、同事業のみならず、運輸、交通、
供給施設等はもちろん、
中央官衙計画等の
市街地計画その他いかなる施設であろうと、また
都市計画として決定し得るもの、得ないものにかかわらず、その施設の計画及び基準となるべき事柄を包含し得るものであります。
さらに第三條から第八條までのことについて申し上げますが、これは
首都建設委員会及びその
事務局について規定したのであります。本條は、この法律を所管し、この法律に基く
首都建設計画の作成及びその実施の推進の衝に当る国の
行政機関として
首都建設委員会を設けること、及び
委員会を
総理府の外局とすることを定めたもので、
国家行政組織法第三條第二項「
行政組織のため置かれる国の
行政機関は、府、省、
委員会及び庁とし、その設置及び廃止は別に法律に定めるところによる」の規定に基くものでございます。この種のみずから
行政的権限を行使する
会議制の
行政機関としての
委員会制度は、新
憲法施行以来、
わが国の国法上多くその例をみるところで、
国家公安委員会、
全国選挙管理委員会、
中央労働委員会、
証券取引委員会等、
わが国行政組織上の一傾向をさえ有するのであります。特に本條において
首都建設計画の作成及びその実施の推進に当る
行政機関として
委員会制度をとつた理由は、以上述べた
行政制度の例にならつたものではありますが、より根本的には、
首都建設上重要なあらゆる施設の
基本的計画の作成というがごとき、愼重にして周密なる調査のもとに、衆知を集めた国家的な構想により作成することが絶対に必要な事柄は、
單独行政官庁にまかすよりも、
会議制によることがより適当であるという考えに基いています。さらにこの
委員会を国の
行政機関として設置したことは、一見
地方自治に逆行するがごとき感じを抱かせるのでありますが、
首都建設計画に含まれる施設は、第二條において説明しましたことく、各省の
所管事項にまたがるあらゆる
重要施設を包含するものでありますから、とうてい一地方庁のよくするところではありません。しかも
首都建設計画は、東京都の建設にあたつて、
わが国の首都としての機能を十分に発揮し得るように、
国家的見地に立つて
各種計画及び事業の基準を與えようとするものでありますから、
地方自治をそこなうものでもありません。
委員会を
総理府の外局としたことも、以上の理由に加えて、
各種重要施設の
基本的計画が、必然的に
各省所管事項中
首都建設に関連ある部分の
総合調整をはかる役割を持つことによるものであります。これが第三條に掲げてありまする
委員会設置の基本的な考え方でございます。
さらに第四條は、
委員会の任務及び権限について規定したものであります。
委員会は、
首都建設計画を作成するだけでなく、その実施の推進に当るものであります。実施の推進に当るとは、漠然とした言い方ではございますが、
首都建設計画にのつと
つて各種施設の計画及び事業がなされるよう常に監視し、勧告し、その他実施の促進をはかることで、第九條公告、第十一條の勧告に関する規定は、その任務及び権限の一部を掲げたものでありまして、これのみにとどまるものではありません。
さらに第五條でございますが、
委員会の組織構成について規定をいたしてございます。別に説明を加える必要もありませんが、国の執行機関及び議決機関のうちから、その指名をする者に加えて、東京都の執行機関及び議決機関のうちから、その指名する者を委員としました理由は、
首都建設計画が、東京都を日本の首都としてあくまで国家的立場から計画しなければならないのでありますが、
首都建設計画に基く諸事業の執行面は、知事が担当する場合も多く、またその施設のほとんどが、
公共団体たる都の施設と関連がございますから、
公共団体たる都としての立場も、計画の作成に反映させることが望ましいとの政策的見地に立つたものであります。
なお
建設大臣を委員とせられたのは、
首都建設上の諸計画及びこれに基く事業は、その大部分が
建設大臣の主管する事項に属するものが多いのであります。また第六号に定めてあります権限を行使する事項等も、国会の両議院の同意を得ることになつておりますから、国家公務員法第二條第三項第九号によつてその職は特別職であり、国家公務員法の適用はなく、またこれらの委員は非常勤とするものであります。
第六條は大したこともございませんから説明を省略いたします。
第七條は別段これも詳しく述べる必要もありませんが、
委員長は会務を総理する権限を有するのでありますから、
委員会事務局の内部組織を定めておりますこと。但し
国家行政組織法第七條の適用があります。及び必要があれば、
委員会議議事規則を設けることもできるし、
委員長もまた委員として一箇の議決権を有すると規定しておる次第でございます。
第八條は
事務局に関する規定で、
委員会に
事務局を置くことは、
国家行政組織法第七條第四項にすでに規定されているところでありますが、本條一項にあらためて規定しました。
事務局の内部組織をどうするかは今後の問題でありますが、もし部を設置することとなれば、法律でもつて定めなければなりません。
国家行政組織法第七條二項、三項、四項
事務局の職員の職は、国家公務員法にいう一般職であり、その定員はこの法律の附則第六により、
行政機関職員定員法を改正して二十五人と定めてあると思います。第九條は、公告に関する
委員会の義務を規定したもので、公告することによつて国、
関係地方公共団体及び
関係事業者は、
首都建設計画の実施にできる限り協力し、援助を與えなければならない義務を負う。これが第十條とともに、
委員会は第十一條に定める勧告を行う権限を有することとなります。本條において「
首都建設計画を作成したときは」と言い、「決定したときは」と言わなかつたのは第四條に「
委員会は、
首都建設計画を作成し」とあるのと対応したものでございまして、意味は「
委員会会議において決定されたときは」というのと同じでございます。
第十條は広島平和記念都市建設法において、その第一條に「国及び
地方公共団体の諸機関は、平和記念都市建設事業が第一條の目的に照し重要な意義をもつことを考え、その事業の促進と完成とに、できる限りの援助を與えなければならなければならない」と規定されているのと類似している規定で、
首都建設計画に基く事業の実施についての援助及び協力義務について規定したものでありますが、広島の場合と異なる点は、單に事業の実施についてばかりでなく、
首都建設計画の作成そのものについても、援助並びに協力の義務を與えたこと、及び義務者として国、東京都の区域内の
関係地方公共団体のみならず、
関係事業者をも含めた点にございます。
関係事業者とは、必ずしも意味の明瞭な言葉ではありませんがたとえば運輸交通
関係事業者、電気、ガス事業者等をさしておりまして、
関係地方公共団体とは、單に東京都及び都の区、布町村をさすものであります。
次に第十一條は、前條において
首都建設計画の重要性にかんがみ、
首都建設計画に基づく事業の執行については、広く国も東京都の区域内の
関係地方公共団体も
関係事業者もその実施について協力し、援助をなすべき法律上の義務を與えたのでありますが、なおこれのみをもつてしては、その実効性を確保しがたいので、さらに本條において
委員会に勧告の権限を與えたものであります。行政作用としての勧告の制度が、
わが国法上認められた例は戰後の立法例に多くみるところでありまして、勧告を受けた者は、勧告の権威を重んじ、理由なく勧告に違反することを得ない法上の責任を有する点において、單なる建議とは異るが、命令のごとく義務者がぜひともその命令に従うことを要する法の強要性はないものと解せられます。
従つて勧告は法律の権威をもつて、かくなすべしまたはかくなすべからずということを要求するものではありまするが、万一勧告に違反する者があつた場合には、何らかの制裁をもつてその履行を確保する手段を持たないものであります。また勧告の相手方は、一般私人よりも国または
地方公共団体の機関である場合が多く、立法例においても内閣に対して勧告するもの、これは国家公務員法第三條による人事院の人事給與等に関する勧告及び内閣及び国会に対して勧告するもの、地方行政調査
委員会議設置法律三條による
委員会の国及び
地方公共団体の事務の配分調整に関する勧告、内閣総理大臣または特定の
行政官庁に対して勧告するもの、社会保障制度審議会設置法第一條による審議会の社会保障制度に関する勧告、運輸省設置法第七條による運輸審議会の運賃及び料金等に関する勧告各
行政機関及び
地方公共団体の長に対して勧告するもの、統計法第六條の二による統計
委員会の統計機構に関する勧告等でありますが、本條の勧告は、その範囲において以上のどの例よりも広く国、東京都の区域内の
関係地方公共団体または
関係事業者に対してなし得ると規定をいたしたのであります。本條第一項は、国、東京都の区域内の
関係地方公共団体に対して、その所管の施設の計画の決定及び事業の施行または許可、認可等の行政処分について、
首都建設計画を尊重するよう勧告するとともに、
関係事業者に対しても、その事業の計画及び施行について勧告し得る意味でありまして、たとえば私鉄がある路線の新設または延長をなすがごとき場合、
運輸大臣に対し事業の認可について
首都建設計画に基かしめるよう勧告をなすとともに、認可申請以前の段階においても、私鉄に対し、
首都建設計画に即応した計画を立てるよう勧告することができます。こういう意味を持つております。かくして首都における
重要施設が
首都建設計画に適合し、
総合調整されて建設されることを要請するものであります。
本條二項は、ある事業が
首都建設計画を尊重し、それに基く事業ではありますが、その事業の実施について必要な事項を勧告し得ることを定めたものであります。たとえば事業の執行の順序あるいはその年度、執行方法等について
首都建設計面上必要と認めた場合になし得るものと解します。
以上は委員がなし得る勧告の範囲を定めているものでありますが、以上の勧告を受けたが、ある種の事情により勧告に従うことができない場合については、何らこれを強制する道はないが、あくまで
首都建設の重要性を認識し、極力その勧告を尊重するよう期待するものであります。これにより
首都建設計画との間の調整をはかる等の努力をする機会を與えるとともに、すくなくとも知らず知らずの間に、
首都建設計画に支障のある事業の実施が行われる等のことのないのを期待しておる次第でございます。
次は第十二條でありますが、本條は
都市計画法に
行政官庁が執行し得る規定がありますから、その必要を認めないとの意見もあり得ますが、本法にいう
都市計画事業とは、第二條に述べましたように、
特別都市計画事業も包含せられると解釈せられますので、
特別都市計画法の特例でもあり、さらに
行政官庁が執行する場合は、東京都及び
関係地方公共団体の同意を要することといたしましたので、本條を置いたのであります。
首都建設計画を実現するために、
都市計画法による
都市計画事業、
特別都市計画法による
特別都市計画事業の方法によることが多いのでありましようことが、将来予見せられるのでありますが、
特別都市計画事業の執行については、地方の実情に即し、地方民の熱意と創意を反映せしめる趣意の、もとに、
行政官庁は直控その執行に当らない旨を定めております。
特別都市計画法第一條第四項にこういうことがきめられております。しかしながら東京都の区域により行われる
都市計画事業については、それが
首都建設計画に即応したものであります限り、單に都民の福利を増進するための施設ばかりでなく、首都としての機能を発掘する上に必要な施設を含むのでありますから、たとえば道路について
建設大臣、港湾について
運輸大臣、国営公園について
厚生大臣その他その事業の内容である事項を主管する
行政官庁が、直轄事業によりまして執行することが適当な場合もありますので、本條により
行政官庁が執行し得る旨の規定を定めました。しかしがらこの場合におきましては、東京都及び
関係地方公共団体の利害に大なる影響があり、
地方自治を阻害するおそれもなしとしないので、将来これとの間に起ることを予想せられる紛議を避けるため、東京都及び
関係地方公共団体の同意を要することとしたのであります。
次に第十三條でございますが、本條は
首都建設計面の実現を促進する手段として執行する
都市計画事業特別都市計画事業も含みますがそれらに対する特別の助成についての規定であります。助成の対象となるものは
公共団体でありますから、この場合の事業
執行者は当然
公共団体を統轄する
行政庁であることは明らかであります。
従つて首都建設計画に基くものであれば、
特別都市計画事業または
都市計画事業として八王子市長の執行するものや、立川、武蔵野市長の執行するものも本條に含まれるものであります。
国有財産法においては、
普通財産の売拂いについて、第二十九條に一定の用途に供させる目的をもつて売拂いをすることができることとなつているのに対し、本法において
都市計画事業の用に供する場合は譲渡することとしたのは、当該財産を所管する各省、各庁の長がその買受人に対し用途並びにその用途に供しなければならない期日及び期間を指定しなければならないこととなつているのを、
首都建設計画に基く
都市計画事業においては、その用途指定、期日期間の指定をせずとも売拂いをなし得ると解すべきであり、また
普通財産を他の用途に供する目的をもつて売拂いの必要が生じても、
首都建設計画に基く
都市計画事業により譲渡の必要が生ずる場合は、必要と認めるときは、譲渡することができるとの規定であつても、これは任意に譲渡するかいなかを決定する自由裁量権を大蔵大臣に與えたものではなく、譲渡することができる権限を付與したものと解すべきであつて、他の法律にこれに優先する規定のない現在、
首都建設事業が優先すると解すべきであります。なおこの点に関しましては、従来の特別立法におきましては、普通
国有財産法二十九條に譲與という言葉を使つてあるのでございますが、諸般の事情から、ここに本法に限りまして、譲渡という言葉を使つていることに特に着目いたしたいと存じます。次に附則でございます。この法律は公布の日から施行するものとせられているが、
事務局は当然予算措置を伴わなければ設置できないことになるので、この法律の全文を公布の日から施行するとすれば、ただちに政府において予算措置を講じなければならない義務を生ずるが、今その準備もできていないので、一応法律には
事務局は予算措置が講じられたときにあらためて設置することとしたのであります。しかし予算措置を講じないで、いつまでも
事務局を設置しないということは、本法の趣旨に反することでありますから、最も争い機会に予算措置を講じられなければなりません。次に日本国憲法第九十五條「一の
地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その
地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」との規定が、この
首都建設法制定につき適用があるかどうかということは疑問のあるところでありますが、この法律と同様に
都市計画法の特別法として制定せられだ広島平和記念都市建設法の制定にあたつて、積極、消極両論が行われ、憲法第九十二條から第九十四條までにおいて
地方公共団体の組織、運営、機関、事務の範囲、條例制定の権限等を定めた後を受けて、第九十五條が規定されていることから、第九十五條の趣旨は、
地方自治の基本的事項に関しての特別法制定の場合にのみ適用になり、国家事務の法としての組織を立てられています
都市計画法の特別法たる広島平和記念都市建設法の制定には、適用されないとなす論もあつた模様でありますが、憲法第九十五條の表現が、單に一つの地方公教団体にのみ適用される特別法とありますから、この場合には、適用ありとなす論が多く、遂に議院運営
委員会に諮つた結果、適用あるものとすると決定された経緯もありますので、この法律も、
都市計画法、
特別都市計画法の特別法たる性格を有すること、及び一つの
地方公共団体にのみ適用になる点において、広島の立法と同様でありますので、この附則により、住民投票をなすものと定めました。
次に、憲法第九十五條に基く住民投票の費用に関しましては、法律の制定についての一種の手続でありますから、国家事務であり、当然国費をもつて支弁すべきであると解せられ、
地方自治法施行令第百八十五條にも、衆議院選挙法施行令を準用して、公の機関の負担すべき費用、すなわち選挙人名簿投票の用紙及び封筒、特別投票者証明書及びその封筒、投票箱並に点字器の調製、選挙管理委員、選挙長、開票管理者または投票管理者、選挙会場、開票所または投票所の費用等は国庫の負担とせられているが、
首都建設法におきましては、その特例として、住民投票に要する費用は東京都の負担とするとの規定を設けたのであります。これは、打割つてお話を申上げますと、本法の制定にあたりまして、予算措置が伴つておりません。この法律が施行せられますと、憲法の規定によりまして、住民投票を要するということになります関係上、どうしてもただいま申し上げました趣旨によりまして、国費の負担においてされることが本筋と考えておる次第でございますが、このことに関しましては、特に法律施行後重要なる意味を持つ本法の制定が、早急になされなければならないという実情にかんがみまして、特に涙をのんでこのような法律にきめた次第でございます。このことにつきましては、地方財政法第十一條の「主として国の利害に関係のある事務を行うために要する経費については、
地方公共団体は、その経費を負担する義務を負わない」との関係において異論のあるところでありますが、住民投票は、
地方自治法の規定によつて、その行う期日を定められている関係上、その期間内に国の予算措置を期持することは困難であり、しかもこの法律は、東京都の住民に対し、ある種の利益を與えることは事実でありますので、この費用のうち、選挙管理
委員会、投票等、公の機関が当然負担しなければならない費用は、東京都が負担するというふうにきめざるを得ない実情になつたことを、ひとつ御了承願いたいと存じます。
以上で大体の御説明を終つた次第でありますが、十分御審議をいただきまして御決定あらんことを特にお願い申し上げたいと存じます。不十分でございまして、研究の至らないのをまことに遺憾に存ずる次第でありまするが、委員各位の全面的御協力をいただきまして、本案の通過をお願い申し上げる次第でございます。