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吉田国務大臣 日本の食糧自給自足
けつこうな話でありますが、まず
国民食糧の確保が必要だと思います。終戰直後において、
日本の食糧が非常に足りなくて食糧の統制をするとか、いろいろの経験をして来て、そのために
国民はずいぶん苦しんだのでありますが、仕合せにその後アメリカの補給とか、あるいは豊年とかいうために、食糧事情は非常に緩和され、その緩和されたことが
日本の今日安定をだんだん回復しつつある一つのおもなる原因だと思いますから、
国民の食糧確保ということが第一であり、その次は自給自足というふうに行くべきのが順序だろうと思います。しこうして
日本の
国民食糧を確保する、あるいは自給自足に持
つて行くのに重農政策がいいか、重商政策がいいか、これは問題であろうと思います。私の今日
考えておることは、今の農業経済、農家経済と申すか、個人経済から
考えてみても、今の
ような農業経済ではいけない、自立ができておらないと思うのであります。たとえばこれは始終申すことであるが、農業労働者あるいは一家がこぞ
つて農業に従事しておる、その農業に従事しておる家族の労金を計算して行
つたならば、今日の米の経済もあるいは養蚕の経済も、計算上は立
つて行かないはずであると思う。これで
日本の農業経済が健全なりやいなやというと、これは健全でないと私は思う。家族の農耕者までも相当な労金が計算せられて、農産物の価格がきまるということにまでならなければ、農家経済というものは健全でないと思います。その域まで持
つて行くのにどうしたらいいか、そのためには農事の改良ということも必要でありまし
ようし、農業のやり方、多角農業経営と申しますか、それにすることも必要でありまし
ようし、その他農業政策として
考えるべきものがたくさんありはしないか、ことに戰時、戰後を通じて
世界の農業は、よほど改良されておるという話であります。たとえばアメリカの農産は戰前に比べると三倍、四倍の増收にな
つておる。これは灌漑とか、あるいは治水、利水という
ようないろいろな国家施設の結果であるという話でありますが、そういう施設も必要でありまし
よう。各方面から国家がいろいろな政策を十分に
考えて、農家経済が独立した、採算に合う経済に持
つて行くためにはどうしたらいいか、これが重農政策というか、重商政策というか、農家の農業によ
つて生じた農産物その他の価格が、貿易に振向けることによ
つて上るということも
考えられるでありまし
ようし、
簡單に重農政策とも言えず、重商政策とも言えず、政策においても多角的に
考えて農家の経済を健全な、そして採算に合う経済に持
つて行くというのにはどうしたらいいか、これは
政府としてもまた国家としても、
考えなければならぬと
考えて、
関係省を通じて研究をいたしております。そういうふうに
日本の経済を改良して行かなければ農家も将来国際水準に立
つて、国際水準の農産物の価格の上から
考えてみて、
日本の農家を守るためには、いろいろな方面から研究をいたさなければならぬ問題があると思
つております。またこれについては研究を怠らぬつもりでおります。
それから国内の治安の問題でございますが、治安問題については、具体的に申せば警察組織でありますが、現在の警察組織で満足すべきものであるかどうか、これは予算の
関係もありますが、いたずらに警察を拡大する、増員するという
ようなことにな
つて、現にいろいろうわさが聞えますが、これによ
つて日本が再軍備するのだ、警察の名前において軍人を使用して一つの軍備をするのではないかという
ような疑いが、濠州方面でかなりあるそうであります。ゆえに警察の増大、拡大ということも内外の予算の
関係、あるいは
客観情勢から
考えてみて、よほど愼重にいたすべきものであるとして、
政府はこの治安の維持の手段についての改良は、相当苦心して、今研究をいたしております。現在の
状態で決して満足はいたしておりません。そこでアメリカの兵隊が撤兵したその後における治安はどうするか、これは先のことでありますから、その場合場合で撤兵後において研究いたしたいと思います。今日こうする、ああするということの多少の
考えはなきにしもあらずでありますが、これをここでも
つて発表いたしますのは、多少何といいますか、想像を交えてのことになりますから、具体的にこうし
ようという案は立てておりませんが、こうしたいということについての多少の案はあ
つても、これは申しにくいのであります。