○加賀山
説明員 この地方組織改正の問題に先だちまして、一言、国有
鉄道の全般の組織機構について、お聞きをお願いいたさなければならないと私は存ずるのであります。
御承のことく、昨年の六月一日に
日本国有
鉄道は、長年の官庁
経営を脱しまして、いわゆる公共企業体という機構に改められた次第でございまして、その際、
日本国有
鉄道法等を御
審議いただくにあたりまして、その自主性あるいは能率性について十分な御
審議を煩わしたことは、まだ
皆様方の御記憶に新しいところであると考えるのでございます。しかしながらただいままで約一年でございますが、法律の上におきましても、また実態におきましても、非常な変革を遂げているということは申せないと私は存じておるのでございまして、この点、いわゆる自主性の問題、能率の問題については、私
どももちろん責任の立場といたしまして、日夜努力を傾注いたさなければならないことは当然でございますが、
国会等におきましても、これらの点に関して、常に御関心を煩わしておるところであると考えるのでございます。機構の問題といたしましては、これはいろいろに考えられることでございまして、長年の沿革を経て今日まで参
つております機構が、これが全然だめであ
つて、ほかのものは絶対にということは、私は申せないと思うのであります。どの機構をと
つて考えましても、一利一害がある、かように考えるのでありますし、また機構はその内部の運用、
運営よろしきを得なければ、いかに機構いじりばかりしてみましても役に立たない、かようなことが申せると思うのであります。しかしこの国有
鉄道の長年の
経営が、いわゆる官庁
経営の形式を脱して行きました際に、これを何か、いわゆる企業形態に合うような企業
経営にして行く
方法はないものか。これはだれしも考えるところであると私は考えるのでございますが、たまたま
関係方面からもかなり強い示唆を受けて参
つたのであります。昨年、いわゆる未曽有の人員整理をいたしました前後におきまして、特にこの問題は、
関係方面からも強い示唆を受けまして、実は私
どもとしては、長年の風習、伝統からいたしまして、一気に乗り切るということは、なかなかでき得ませんで、できるならば
現状維持で、これをいわゆる能率的に、人員を減らしてや
つて行く
方法を考える
方法はないか、いろいろ検討を盡した次第でございます。しかしながら一方考えてみますると、
現状の姿をしてお
つて、気持をかえ、仕事のやりぶりをかえるということはなかなか困難でございまして、一気に姿をかえ、形をかえることによ
つて、物の
考え方なり、仕事のしぶりをかえるということが、楽に容易になる場合も考えられる。そういつた他動的な力によ
つて気持を入れかえるということも私は必要だと考えて、アメリカ側から示唆を受けました機構について、これをいろいろ検討いたしたのでございますが、まず中央の機構につきまして改善すべき点を考えた結果、この従来の中央の権限が地方へ移ります場合に、いわゆる横断主義とわれわれの方で申しておりますが、
地域的に分割いたしまして、中央の全機能を地方の代表者が全部カバーするという方式をと
つてお
つたのであります。つまり地方の
鉄道局長が、中央の全機能をカバーして
経営に当り、全責任を持つ。しかしながら中央には中央でさらに経理、資格あるいは営業といつたぐあいに、それぞれ責任ある局長が配置されていることでございまして、そこらにいわゆる縦横両機能、両責任の粉河が必ずしもないということが言えなか
つたのでありますが、これを思い切
つて縦割り主義に私
どもは改めたのであります。つまり従来の
鉄道局の権限を、経理、会計は中央の経理局長が縦割りにして、地方に設置されておる経
理事務所長を指揮、監督するという式であります。資材、営業それぞれその式でありますが、特にそのうち御注意を煩わしたいのは、営業という部門でございまして、従来国有
鉄道の部面には、
輸送一体とな
つてや
つておりましたために、あまり注意が向けられなかつた部門があつたかと考えるのであります。先ほど
藪谷営
業局長から自動車、
船舶等のいわゆる対立機関等の
関係等も
お話を申し上げたのでございますが、そういつたいわゆる競争
関係も生じて参りましようし、従来はいわゆる官庁であつただけに、これは積極的にやつた面もございますけれ
ども、受身とな
つて陳情、請願を受けてやるというような面が多かつたろうと思いますが、公共企業体とな
つて真に
経営成績を上げ、国民のためにな
つて行きますためには、どうしても地方の産業、経済あるいは文化と密接な結びつきを持たなければならない。かような観点から、従来の申出を待
つて初めて動くのではなくて、こちらから積極的に出向いて調査もし、施策をして行くというような部門がぜひ必要である。こういう面からいたしまして、営業という仕事を機能的にはつきりとわけまして、これを中央から各地方にわた
つてその代表をもちまして、一体とな
つて国有
鉄道の施設の改善に——施設と申しますのは、広い意味における施設でございまして、
制度等も含めて考えていただきたいと思うのであります。たとえば
運賃でありますとか、
輸送の
制度等、そういつた全般を含めて改善をはか
つて行く必要がある。それが今度の営業部門の大切な機能になるわけであります。そういう点からいたしまして、これははつきりとその地方の行政なり、産業、経済、文化あるいは観光の
事業といつたような各
事業と、密接な結びつきをも
つて進んで参る、かような
考え方であります。同じような式で、経理も資材もそういうふうに分課しまして縦割りにいたす、こういうようにまず中央でいたしまして、他方もすでに北海道は本年の初頭から、四団は本年の四月一日から、そういうふうにして地方機構をや
つておるのであります。残
つたのは本州並びに九州でございましたが、この残つた本州並びに九州の地方機構について、ただいま申しましたような改正を、ぜひ北海道と四国と同じようにやろうと考えまして、先日その大綱を決定し、発表いたしたような次第であります。
今、中央、地方の機構をかえることに至りました前提として御報告申し上げたいのでございますが、今回のこの地方機構改正の
方針といたしましては、大体三つぐらいの重要なポイントをも
つて、われわれのねらいといたしておるのであります。一つは先ほど中央機構のとき申しましたいわゆる縦割り主義、縦に責任を貫くという主義を貫いたということであります。これは責任態勢をはつきりいたしたということに相なるわけであります。次にはできるだけ仕事をダブらせないように、簡明直截に行うという
関係で、段階を少くしたということであります。これは従来は御承知のように
鉄道局、管理部、現場というふうに、中央から行きます場合に、さらに二段階を経て現場に達しておつたわけでありますが、これを一段階はずしまして、直接現場に一つの段階で行くようにいたすということであります。今申しました営業
関係もそういうふうに相な
つておるのでありますが、
鉄道局の機能のうち、この外部に目を向け、いわゆる経済、産業、文化と結びつきをする機能のほかに、
鉄道自体には、いわゆる
鉄道プロパーと申しますか、汽車を動かし、
輸送するという仕事があるわけであります。これはいわゆる線路の上を機関車々走らせ、その車両を修繕し、線路を
維持するという仕事であります。それでその従事員を内に向
つて監督するという機能が一つあるわけであります。この機能を地方的には
鉄道管理局という名前で、これを地方的に分担させまして管理をさせる、こういう方式をとつたわけであります。
従つて営業の方は、かみしもを脱いだような気持で、営業支配人という名前を用いたのでございますが、この内部に対して監督する部面は、地方
鉄道管理局という名前を用いたのであります。従来
鉄道局の所在地並びに管理部がございましたところにおきましては、
鉄道局に昇格の問題として、取扱われ、うちには
鉄道局がなくなるということを非常に大きな問題として、大騒ぎにな
つたのでございますが、今回つくりました
鉄道管理局は、いわゆる作業を監督する仕事だけを受持つわけでございまして、
鉄道の機能が先ほど申しますようにわかれました結果、それを全部まとめて見るようなところは、なかなか適当な場所がないというわけで、一部には管理部が廃止に
なつたようなかつこうになるところもあるけれ
ども、これは全然性能が違つたものができたというふうに御承知を願わなければならぬ、かように考えるのであります。そこで
鉄道管理局のつくり方並びに位置等について御報告申し上げたいと思うのでありますが、これは先ほ
ども申しましたように能率を上げて、しかも現場を直接はつきり把握をして、監督を十分にするということを建前としております
関係上、その範囲が狭ければ狹いほど——われわれの方では営業キロというのを標準にしておりますが、営業キロが短かければ短いほど、目は行き届くはずになるわけであります。しかし目が行き届くからとい
つて、これをあまり小さくわけ過ぎますと、またそのつながりも悪くなり、あるいは管理局を数多く設置することになるのでありまして、ただ名前をかえただけで、従来の管理部を全部そのまま
鉄道管理局というようにしようものなら、数は四十数箇の管理局になり、人員も減らすことができないし、また中央からそれを把握監督いたしますにも、非常に困難になるということであります。
従つて管理局のつくり方としては、十分に把握管理ができると同時に、できるだけ大きく見るという、二つの要請が満足するような形に持
つて行かなければならぬ。これが管理局のつくり方として非常に私
ども苦心をいたしている点なのであります。ごく数学的に申しますならば、
鉄道の営業キロが全部で二万キロございますが、これが例を四国にと
つてみますると、四国は約八百キロを一つの
鉄道管理局が管理いたしております。この
程度が最も適当であると私
どもは考える。六、七百キロから千キロまでの間が、一つの
鉄道局の管理として、時間的にも、到達し得る距離からい
つても、目が届くことができる。いわゆる必要にして十分な大きさを持つという
考え方を持
つておるのであります。そういたしますと、たとえば千キロといたしますれば二十の
鉄道管理局ということになるわけでありまして、従来の
鉄道管理部は大体三百キロから四百キロくらいを所管しておりましたので、結果としては約二つの
鉄道管理部を合せて管理する
鉄道管理局をつくるということに相なるわけであります。この場合に私
ども管理局のつくり方の重要な点について、二つの目標を持
つておるのでございますが、一つはつながりをよくするということであります。従来
鉄道局の分界、管理部の分界が、いかにも一つの非常に大きなフロツクのように考えられまして、つながりが悪い管理部の境界で、急に車をとりかえたり、あるいはそこで列車が長い時間待つたりするというような
関係が、間々御非難を受けた。それで私
どもは、
せつかく国内を統一した
鉄道として
経営している以上、監督面の境界が、
運営そのものの境界に相な
つては絶対に相ならぬことであると思いまして、このつながりをよくするということが、第一にわれわれが取上げた点なのであります。従いまして支線系統におきましても、従来県の境で切
つておつた所も、できるだけこれを一本に監督するようにいたし、幹線はできるだけ長く持たせるようにするという
方法を取入れようといたしたのであります。しかしながらたとえば東海道線、山陽線のごとき長い幹線は、それだけでも一千キロ余を持
つておりますので、とてもそういうふうに管理いたすことはできませんので、当然それを分割しなければならぬというのが、われわれの
考え方であります。
今申しました支線、幹線のみならず、ここに大きな私
どもの最初の試みとして考えましたのが、青函間と東京、大阪、関門付近のつながりであります。北海道は海を隔てて本州と組対しておるのでございますが、従来ここには青森管理部、続いて
船舶管理部があり、これは札幌の
鉄道管理部に従属しており、一方の北海道内は札幌
鉄道管理部というふうにわかれておりまして、しかも青森側と北海道側にはそれぞれ大きな操車場を持ちまして、貨物の
輸送連絡に当
つているという、実に密接不可分の
関係に立
つている業務機関があるわけであります。これを一つの目で監督することは、ぜひ
鉄道の
輸送面から必要なのでありまして、従来はこれがどうしても行われなか
つたのでございますが、
せつかくこうした改正をいたす
機会に、今回は青函
鉄道管理局という機関を新たに設置いたしまして、海をはさんで両側の陸地を持ち、特にその重要な機関であるところの両操車場を取入れまして、一つの監督機関の手に收める、かような方式を採用いたしたのであります。続いて東京付近におきましては、新橋、上野という両管理部が対立いたしまして、東北対東海道の繋送に、別に非常な支障があつたとは考えられませんが、これをより一層結び合せる方が、貨物
輸送上ははるかによいのでありますし、また電車区間にいたしましても、できるだけ環状線を一つの手に收めで監督することがベターであるというような見地から、全部を合せまして東京
鉄道管理局というふうにいたしまして、新たにそういう施策をいたしました。さらに大阪付近におきましても、関門
地域におきましても、同じような
考え方をいたした次第であります。特に関門地帶のごときは、
せつかく関門隧道があいておりますが、依然として本州と九州はわけて管理するような方式よりは、関門一体に管理するという方がベターであるというような考えから、さような方式を採用いたしたのであります。
次に従来管理部がございましてそれがなくなり、従来の一つの管理部で管理されたところがかえ
つて三つの、あるいは二つの
鉄道管理局によ
つて管理を受けるというような地帶も、県を單位として申しますとできているわけでございます。しかし先ほどから申しましたことで御了解が願えると思うのでありますが、これは従事員の監督上の分界を定めたにすぎません。現にただいま山手線の電車に乗
つておられるお客が、これは上野の乗務員が乗
つているのかとか、これは上野の管内かとかいうようなことは、決してお考えにならないはずであり、またそういうことはお各様にはあまり
関係のないことなのであります。私
どもはそういう見地から、いかにも現在の
鉄道の所管が三つに分断されるというお言葉を聞くのでありますが、そういうことを聞きますことは実に懸念にたえないのでございまして、これは独立国の
鉄道でもなんでもないのである、また県営の
鉄道でもないのでございますから、その点はまつたく誤解に基くものであるというふうに私
どもは申し上げたいのであります。しかしながら県を單位としたいわゆる経済、産業、文化、そういうことの結びつきは、
鉄道は十分考えなければならぬ。いわゆる外部に目を向ける機関といたしまして、そのためにこそ営業部門という機能をわけて、しかもそれはそういつたこの
鉄道管理局の分界とは全然離れまして、経済單位、産業
地域を單位とした見方をして調査をいたしている、かようなことに相なるわけであります。一例を申してみますと、
鉄道の内部の従事員の監督の場所といたしましては、北関東では水戸と高崎を選んだのでございますが、いわゆる営業
方面の営業
関係の中心は宇都宮に配置して、宇都宮の営業支配人が北関東の
関係を十分調査し、御要求も伺う、かような
考え方をいたしておるのであります。
申し上げることは委曲を盡さなかつたと存じますが、私
どもがこの機構を政正するに至つた
考え方を申し上げまして、御参考に供したいと存じた次第であります。
なおこの改正によりまして、管理部門の人員がかなり減少いたすことが期待されるのであります。われわれ常日ごろできるだけ少い管理要員をも
つて管理する。また現場作業におきましても能率化いたしまして、できるだけ少い人数をも
つて鉄道を
運営して行かなければならぬ、かように考えるのでございますが、今回の挙も非常な大きなねらいが管理要員を減少するということにあるわけでございまして、少くとも二割の人員は——全部の二割ではございませんが、管理部門に従事している職員の二割は少くとも縮減し得るのではないか。あるいはわれわれといたしましては、できればさらに多くの人員を節減いたしたいと考えております。しかしながらこの節減いたしました人員は、そのまま整理をいたすというようなことはいたしませんで、できるだけ配置転換をいたしまして、その後の補充要員に充てる
計画を持
つておるわけであります。
以上、この機構改正につきましてのごくあらましを御報告申し上げた次第であります。