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國務大臣(大屋晋三君) 只今の御
質問、大体基本論といたしましては現在のものを八割上げますのですから、全然影響のないということは、これは言い得ないのでありますが、又同じ商品の運賃を
考えまする場合におきましても、凡百のものが今御指摘の輸送の距離とか、或いはその商品のサイズであるとか、或いはその価格の嵩というような、いろいろな点で或いは影響が一致しないことは無論そうなんであります。ところがこれを押しなべて八割上げるということは非常に影響する度合が大いに不都合じやないか、それを一律にやるのは不都合じやないかという議論は、
根本論といたしましては、さような
通りであると思うのでありまするが、どの分は何割、度の分は何割というふうに、一々無数の貨物をさようなふうにいたすわけには参りませんので、一律に八割ということにいたしたのでありまするが、さてこれが一般生産者並びに一般消費大衆にどういう影響があるかという問題ですが、私の理念といたしましては、インフレーシヨンがどんどん進行の過程にある場合には、ちよつとした事柄でも物価に刺戟を與え、影響を與えるというような
政策は当然避けなければならない、こういうふうに
考えておるのでありまするが、現在のこの段階は無論十分ではございませんが、インフレも進行過程を中止いたしておると
考えております。むしろ物によりましては不景気が参り、又デイス・インフレ或いはデフレーシヨンというような
方向を今辿
つておる際であり、且つ又もう一つ
根本の理念は、大体運賃なるものの本質が、いわゆるこれはコストをカバーしない運賃でありまして、国鉄の只今運搬しておりまする主要品目全部の平均をいたしましても、コストの四八%しか運賃を取
つておらんのであります。こういう馬鹿気た私は経済事象はあり得ないことで、今まではずつと十数年前からの国鉄の経営
方針は、大体旅客運賃に重点をおきまして、貨物運賃はこれを非常に少なく見積
つておつた。
昭和十一年は大体経済
状態がバランスの取れた時代でありますが、このときには貨物運賃と旅客運賃がやや均等に五〇%、五〇%ぐらいのウエイトで営業の収入を
考えておりましたが、その後段々旅客運賃偏重主義にな
つておりまして、
昭和二十三年度におきましては、旅客運賃の方はコストに対しまして一〇四%ということにな
つておりますが、今度は貨物の方は逆にコストの四八%しか貨物運賃に当
つていないという馬鹿気た
状態にな
つておりますので、これはいつの日にか是正しなければならん。旅客運賃とのバランスを取らなければならんというので、そのときを見計
つておりましたのでありまするが、八割値上げというと如何にも影響が多いように思うのですが、そういう見地からも、どうしてもコストまでは引上げなければならんのですが、十分コストまではの八割はカバーできませんが、ともかくもそういう百円かかる運賃を四十八円しか取
つていないと、いうようなことでは到底国鉄の経済もできませんし、又いつの日にかこれ充足しなければならんので、今回それを一つやろうと思つたのでありまするが、さてこれを数字的に見ますると、御指摘のように、
昭和十一年は運賃が一般物価に占める割合は四・六%でございますが、現在は僅かに二・三%にしか当
つておらない、これを八割値上げいたしましても四一%という数字がともかくも出まして、
昭和十一年度の四・六%に比しましてこの八割値上げをしましても、平均は四・一%で、数字ばかりが無論能じやありません。先程高橋君の御指摘のように、各商品に関するいろいろの特色のあることは十分
承知いたしておりまするが、まあまあこういう程度であるので、中にはいわゆる硫化鉄鉱であるとか、或いはその他のもので運賃を八割値上げをいたしますと、一〇%以上に上るものもあります。併しこれらは素材、生産材でございまして、それが
国民の消費大衆に影響する場合には、二次製品、三次製品、四次製品の形を取りまして、非常に微分化されてフラクシヨンとなりまして、
国民の実際の日常
生活体系の中に入
つて来るので、私はその程度の分は吸收ができるものと、かように
考えておるので、無論影響が全然ないということは私は申さないのでありまするが、この程度の値上げでございましたならば、とにかく吸收ができるんじやないか、さように
考えておる次第でございます。