○田村文吉君 次に伺いますが、先般本
会議でもお尋ねいたしました問題でありますが、産業資金が非常に枯渇し
状態にありますので、これに対して
政府はどういうふうな御
方針をお採りになるかということをお尋ねいたしましたのでありますが、それに対しましてできるだけ産業家は自己資金によ
つてこれを賄う
ような
方針を採るべきである。又日銀の発行額は、決して
政府としては或る限度で止め
ようという
ようなことは、この年末に対して
考えておらんのである。必要あればどんどん増加するだろう、するかも知れん、併し自分は
余り増加しない考であるが、決してそれはチェックしてない、こういう
ような
お話であ
つたのでありますが、実際産業資金が非常に枯渇しておりまするということを、私ははつきりとこの際申上げたのでありますが、これは
一つの会社の例でございまするが、戰争前において資本念千五百万円の会社で、流動資金が約五百万円あればよくて、月の売上高は約百五十万円、こういうものが今日どうな
つておるかと申しますと、資本金が自己資金によりまして千五百万円が一億に増加した。月の売上高は二億円、約百三十三億ぐらいに増加した、ところで、これに対する流動資金は六億六千五百万円の金がないと実は廻
つて行かんのであります。併しいろいろ昨今の
状況でありまするから、手形の融通をいたしましたり、又手持ちをできるだけ極度に切り詰める
ような方策を採りまして、大体まあ三億
程度で実は賄わざるを得ない
ようなふうにな
つておるのでありますが、ここに実は非常に無理がありまして、今の
ような
状況でありますると、今まで貸しておりましたものも間もなくに帰
つておりました金も、昨今の
状況ですと、先が支拂をして来ないという
ようなことになりまして、そこに非常に資金の窮屈を感じておるのであります。そこでこの間
大蔵大臣が言われました
ように、できるだけ資本金を増加して、又社債を発行してや
つたらいいではないか、こういうことでありますが、何分千五百万のものが一億円に増資したということでもかなりに急激に増加しておるのでありまして、尚この上に二億、四億と殖やして参るということは、なかなか実際上容易にできない。殊に昨今の証券界の
状況は御
承知の
通りでありまするが、我我が見て非常に値打があると
考えるものが拂込み以下の値段しかしていない。こういう
ようなことでありますと、到底なかなか増資という
ようなことは困難である。又社債にいたしましても、さ
ような会社に対してはなかなか流通の途が困難である。こういう
ような
状況下にありますので、この
ような推移で参りますというと、今横這い
状況下にありまする生産が逆に転落する
ような虞れが出て来るのではないか、こういう
ような心配があるのであります。そこで私は、もう少しこの産業資金に対しまして何とか工夫して、これに融通する方法を
考えて頂くべきではないか、こう
考えるのでありますが、この流動資金の非常な尨大な増加というものに対すること自体がすでにそういう
ような
実情でありますが、況んや設備を改善いたし、いわゆる真の合理化に移ろうといたしまする長期的の金融に相成りますると、これは昨今興業銀行に一手にお任せになる大体の
方針でありますが、大体市中銀行も無論か
ような長期金融を原則とはしない筈でありますが、しておるのであります。又これがしておらなか
つたならば
事業界は廻らないのであります。ただいわゆる市中は商業銀行でありますから、どうもこれは銀行の
考え方と産業家の
考え方がそこに一致しないのでありまして、長期な金融として当分借りたつもりでございますものが、金が詰
つて参りますとこの回收を求められるという
ようなことになり勝でありますので、どうしても長期の金融の途を立てなければならんのでありますが、興業銀行一銀行であり、あと中小
関係の商工金融金庫、農林中央金庫等ございますけれども、か
ようでありますと、いわゆる長期の産業金融は興業銀行一人では、いわゆる独占みたいな形でございますので、恰もこの前やられました復金と同じ
ようなことになる虞れが多分にあるのでありますので、これはどうしても日銀から産業資金として、産業の長期金融として市中の銀行を通じて特に金融を廻してやるということが将来とも必要でありまするが、今日としては最も適切にその必要が認められておるのではないかと
考える次第であります。先般
お話のあ
つたような自己資金というものがそう容易にはできない
ような今日の情勢下にあるということをお
考え頂きまして、これに対する何らかの方法で応急に手をお打ち頂く必要があるのではないかと
考えるのであります。尚私は参考までに申上げまするが、興業銀行、これは私は興業銀行にお世話にな
つておりまするが、別にどうこうと何もあるわけではありませんが、私が曾て大震災のあとに、興業銀行に金の融資を頼みます場合に、それは六十万円の金を借りるのに、私は二十五遍銀行に通
つたのであります。そういうことをいたしまして漸く六十四万金の融通を受けたのでありますが、私の友人は、お前は
余りに馬鹿正直だ、これが政治的に働いて行けば、一日のうちに百万円の金は借りられる、要するにお前は馬鹿正直だ。こういうことを言われましたので、今日はその当時の調査官をしてお
つた懇意な方と相顧みて笑
つておるのでありますが、か
ようなことが、今のただ
一つの銀行で独占されてやるということになると起り勝になります。殊にこれが政治的なインフルエンスすら及ぼす
ような場合がないとも言えないのであります。でありますからこの点からしましても、どうしても今後の産業開発のためにはさ
ような市中銀行からの長期金融を日銀から特別な融資によ
つて賄う
ような方法をなさるべき必要が絶対にあるのではないか。こう
考えるのであります。
大蔵大臣の御所見を承りたい。