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國務大臣(
鈴木正文君) 若しこの
予算全体の中に、
失業対策的な十分な施策が盛られておらないといたしますれば、八億五千万円でも、十倍の八十五億円でも、現在の
失業対策費としては不足だと思います。若し又
予算の中に十分に
失業対策的な性格を持つたところの措置がとられておるのでありましたならば、場合によ
つては八億五千万円はなくてもいい場合があると思います。という
意味は、八億五千万円に盛られたこの緊急
失業対策のごときに
政府の失業問題解決の力を全的にかけておるのではない、逆に解して申しますと、これもああいう自由
労働者を中心とした失業に苦しんでおる方々に対する重要な喫緊な
失業対策の
一つで、ゆるがせにできないことは勿論でありますけれども、戰後のこの大きな国民
経済の
再建と、
労働力の配置転換を中軸とする、こういう性格の
失業対策というものは、これは極く一部分でありまして、本体は飽くまでも
政府自体の
再建の成否如何にかか
つておるのであり、それを実行して行くところの
一つつの
政策の中にかか
つておると、私達は考えておるのであります。
従つて失業対策の
政府の
考え方を聞いて頂きたいのでありまして、そういたしますれば、
相当考え方も納得して頂けるのではないかと思います。先ず第一番に、端的に申しまして如何なる
対策が出て来てもその
対策が実行された途端に現在の
日本に
失業者が一人もなくなるという、そういう奇想天外の妙手はないということは事実でありまして、要するに一年の間に
失業者と言いますか、
失業者と言うよりも離職者が出て来る、一方においては如何なる場合にも国民
経済の中には必ず新しい雇傭というものがあるのでありますから、その離職者を新らしい雇傭の中で吸收して行く、吸收し切れない
段階、その
段階に処す構想としては失業保険なり、緊急
失業対策なりを以て対処して行く。その外に重要なのはいわゆる公共事業であるわけであります。公共事業をと
つて見まするというと、二十四年度のごとく五百億円の公共事業が行われるといたしますと、それによ
つて生ずるところの雇傭力は大体五十万人になります。二十五年度には一千億の公共事業が動かされるのでありまするからして、百万人の雇傭が公共事業だけの両で以て生れて来るという概括的の
計算ができ上ります。併しながら御承知のように今年五百億円行われ五十万雇傭しておるのだから、来年四月一日から公共事業の拡大によ
つて生ずる新たに加わ
つて来るところの雇傭力は、差し引いて五十万人であるということになるわけでございます。こういう問題、それからこれは同様に
補正予算にも十分盛られております、
補正予算の中に御説のように八億五千万円の緊急
失業対策費があります。これは
昭和二十四年度一年間を通じての八億八百万円に較べれば約四倍前後の拡充であります。この八億五千万円はこれをそのまま延ばして二十五年度
予算には四十億円として計上されております、継続的にできております。併しながらこんなものだけに頼
つておるのではないのでありまして、
補正予算だけを見ますというと、新たに百六億六千万円の公共事業費が追加されております。その内訳は災害復旧に八十五億円、一般の公共事業費六億六千万円、六三制の建築費に十五億円であります。この一般公共事業と言いますのは、実は従来の公共事業が地方中心にな
つておりましたのを、都会の
失業者に対処する建前から、私の
意見を探入れて、必要だと
労働大臣が一認めるときに、都会中心の
失業対策事業的の工事を起すという、そういう考の下に織込まれておるところの
資金でありますが、これは或る
意味でさつきの八億五千万円とお挙げに
なつた緊急
失業対策と同じ性質のもので、合せて十五億一千万円と考えて頂いても実質的には間違いのない
数字であります。それら失業保険の方も六十億円くらいは支拂い得る措置がありますけれども、更に
補正予算に八億五千八百万円を追加計上しております。これによ
つて八十億円くらいまでは悠々と失業保険を拂
つて行けることになるわけでありますし、八億五千八百万冊の中には約九千万円の日傭
労働保険に対する
政府の新らしい負担金も
計画されております。これによ
つて近く実施される日傭
労働保険、これは今年の春の
国会で皆さんの御賛成を得まして成立しておるのでありまするが、実施は近く行われます。これによ
つて毎日、昨日も今日も明日も毎日二万人ずつの日傭
労働者の
失業者を受入れて行く態勢もできておるわけであります。こういうふうなものを合計いたしますと、
失業対策に比較的
関係の深い
数字だけで、
補正予算のみを以てして百二十三億六千八百万円あるわけでありまして、八億五千万円きり
失業対策的のものはないじやないかという考は全然当らないと思います。どうぞそれらの点を
一つ綿密に調べて見て頂きたいと思います。荷ついでにそれならこれに
まつ一体どれだけの
人達を新らししく吸收できるところの雇傭力が生れて来るのか、
補正予算だけを例にと
つて申上げますと、公共事業費によ
つて場三十三万乃至三十八万人の
人達が新たに雇傭し得る、それから
失業対策、さつきの八億五千万円であります。あれによ
つて八万五千人の、
人達を毎日使
つて行くところの雇傭力が出て来る。それから失業保険金の繰入を増加したことによ
つて玉十三万人の
失業者に保険を與えて行くことができる、来年の三月三十一日まで……、その内訳は一般失業保険の方で四十万人、さつき申しました日雇
労働者の新らしい失業保険に又毎十三万人ずつこれを受入れて行くことができる。こういうことが
計算されるのであります。これらを総計いたしまするというと、これは概括でありまするからして、多少の幅というものが出て来るのですけれども、
補正予算のみを以ていたしましても、新たに九十六万五千人乃至百一万五千人の新らしい対象の
数字が挙げられておるとか言えるのであります。勿論併し、只今も申しましたように、失業保険のごときはそのまま放置するならば六ケ月先にはもう保險が貰えなくな
つて、その間に仕事がなければ新たに保險も貰えないところの純粋の
失業者として再出現して来るということは、言うまでもないことでありまするけれども、そういう間において、こういう形で以て来年の年度末まで止めて置いて、来年度は公共事業費はなくなるのじやありません。今申しましたように五百億円乃至一千億円にな
つておるのでありまするから、この面だけは五十万人の雇傭力が
上昇するのであります。そういうものを吸收するには又見返
資金もあります。見返
資金は遅れておるのじやないかと申しまするけれども、とにかくあれだけの金が準備されておる力大藏
大臣も下半期には急速にこれを放出するようにと言
つておりますし、来年度の見返
資金も、すでに大体方途が昨日あたり決ま
つたのじやないかと思います。そういうようにな
つて参りまするというと、決して八億円或いは来年度の四十億円
程度の緊急
失業対策費だけを頼りとして、唯一の頼りとしてこの大きな失業問題に対処して行こうなどという
考え方を、
政府も私も持
つておるのではないのでありまして、そういう性格の、その中で以て或る一部分のものを受持つための
経費が、今御
指摘になりました八億何百万円かの緊急
失業対策費であるというふうに御解釈願いたいと思います。