○内村清次君 私は只今問題となりました
日本国有鉄道法の一部を改正する
法律案に対しまして、
日本社会党を代表いたしまして反対の意見を申述べたいのであります。
反対理由の第一点は、
大蔵大臣の権限についてであります。この改正法案におきましては、公共企業体としての経理の重要なる部分の大半の権限が
大蔵大臣に握られておるのであります。国有鉄道は申すまでもなく独立採算制を決前としておる公共企業体でありまして、従
つてその公共性を活かしつつ、又独立企業としての妙味を発揮するという公共企業体の実を挙げることがその目的でなければなりません。故に公共性の責任は運輸大臣に、企業体としての責任は国鉄総裁に、哉に国が負うべき責任は
内閣が直接その責に当るべきが正しい立法の建前でなくてはなりません。然るに今回の改正案を検討いたして見ますると、
内閣と運輸大臣の間に
大蔵大臣が強い権限を持
つておるのであります。例えば
予算、決算、資金計画、予備費、契約など閣議決定を必要とする事項でも、
大蔵大臣がその中間において調整を行い得るようにな
つておるのであります。勿論
予算の実施に伴うところの打合せや又は協議事項につきましては、これは運輸大臣と
大蔵大臣とが連絡をとる程度のことは必要でありましようが、国有鉄道の独立採算という建前からいたしますると、
大蔵大臣に強い権限を持たすべきではなく、公共性と企業性とを共に活かして行くというところにおいて国有鉄道の経営上に大幅の自主性ある権限を持たせることが適当であると思うのであります。かかる点から
大蔵省の独裁的傾向が充満しておるこの内容につきまして、
賛成のでき得ない第一点であります。
反対理由の第二点は、現行法第十二條の監理委員会の構成についてであります。現行の監理委員会は、その権限において大きな役割を持つものであります。即ち第十條及び第一條によりますると、監理委員会は、鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営をなすために、
日本国有鉄道の義務運営の指導、統制をする権限と責任を有すると規定されております。従
つて日本国有鉄道の運営を能率的なものにしますには、第一のものは何であるかと申しますると、そのため一番協力を願わなくてはならないものは、一人の
大蔵大臣でも、一人の運輸大臣でも、総裁でもないのでありまして、それは実に五十万を超えるところの第一線に働く従業員諸君の協力なくしては、絶対にこの能率の
向上はでき得ないのであります。(
拍手)然るにこの改正案によるところの監理委員会の構成は、運輸業、
工業、商業、金融業を以て構成しております。一番大切なる労働
関係に広い知識と経験を有する者を除外しておるのであります。かかる非民主的なる監理委員会の構成におきましては、
日本国有鉄道の円滑なる運営は到底不可能と考えまするが故に、この点につきましても反対を表明するものであります。
理由の第三点は、現行法第二十六條の二項におきまして、
日本国有鉄道職員が地方公共団体の議会の議員を兼職することを禁止しておる点であります。この事項は憲法におきまして許されておるところの
政府的自由を抑圧するものであり、且つ又公共企業体労働
関係法、この精神に違反するものであります。現行法第三十四條におきまして、公務員法の適用を受けないと明確に規定してありながら、他の條項におきましては公務員に課する以上の
政治的抑圧をなしておるというところにこの立法の矛盾があるのであります。更に地方公共団体の議員兼職につきましては、先に專売公社におきましてはその抑圧を解除しております。許されておるのであります。ただ国鉄の労働者に対してのみ禁止されるということは、法的にも
社会的にも甚だしい矛盾であり、片手落であると存じまするが故に、このようなことは明らかに国鉄職員に対する
政治的彈圧であると言わねばなりません。
理由の第四点は、改正案第四十四條の給與準則でありまするが、四十四條には、「一事業
年度の
支出が
国会の議決を経た当該
年度の
予算の中で給與の額として定められた額をこえるものであ
つてはならない。」と規定されておるのであります。この
法律案がそのまま運用されるといたしましたならば、一
国会において
予算が決められまして、次期
国会において再び
予算が補正されない限りは、如何なる経済的な変動があろうとも、又国鉄の成績が上
つても、職員の給與は釘付けになるということになります。而も二十八條の二項におきまして、「職員の給與は、生計費並びに
国家公務員及び
民間事業の従事員における給與その他の條件を考慮して定めなければならない。」と謳
つてあります。そういたしますると、この條項からいたしましたならば、当然物価が異動をして
生活に影響を及ぼしたとき、及び公務員のベースが改まるとき、又
民間企業の賃金ベースの改訂があつたときには、国鉄
予算に
関係なく改訂せねばならないということになります。それを四十四條では奪
つておることは、本議員の了解し得ないところであります。三十四條に公務員たる性質を規定し、三十二條の嚴しい規定において義務を負わせ、三十三條において勤務時間の延長など、働く公務員に山程の義務を押付けて置きながら、給與の面においてその権利を剥奪するがごときは、正に惡法と言わねばなりません。この法律に一貫して流れているものは、大蔵フアツシヨの下に、あらゆる労働する従業員の自由を束縛し、義務だけを強要し、権利の主張を抑圧する彈圧法と言わねばならないのであります。(
拍手)
日本社会党は、以上に述べました要旨を修正案といたしまして、委員会にも正式に了解を求めてその手続をとり、それぞれ
関係方面と折衝中であつたのでありまするが、その諾否も待たずに衆議院の委員会におきまして審議を打切
つて、改正原案を押通したことは、
国会運営上誠に遺憾とするところであります。更に参議院におきましても、第三
国会におきまして
日本国有鉄道法が可決される際に、本院は院議を以て次のことを
政府に
要望しておつたのであります。即ち第一に、運輸大臣の監督は
日本国有鉄道の自主性と高能率を尊重して行うこと、第二に、
予算としての拘束はその大綱に止めて、その他は機動的に、
効果的に運用されること等、四條件を附しまして、院議によ
つて政府に
要望したものであります。併しながら
政府はこの度の改正案の中に、その
趣旨を全幅的に取入れてはおりません。
かくのごとく衆参両院におきましても、
国会を軽視するがごとき
政府與党の非民主的な態度によ
つて押切られるところの非民主的な法案に対しまして、
社会党は断乎として反対を表明するものであります。(
拍手)