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1949-11-19 第6回国会 参議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十九日(土曜日)    午前十時十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十四号   昭和二十四年十一月十九日    午前十時開議  第一 常任委員長辞任の件  第二 国務大臣演説に関する件(第九日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、常任委員長辞任の件。去る一日金子洋文君より図書館運営委員長を辞任いたしたい旨の申立がございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、常任委員長選挙を行いたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  7. 小林勝馬

    小林勝馬君 本員は、図書館運営委員長選挙につきましては成規の手続を省略いたし、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  8. 岡元義人

    岡元義人君 小林勝馬君の動議に賛成いたします。
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長図書館運営委員長三木治朗君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、国務大臣演説に関する件。昨日に引続き順次質疑を許します。小畑哲夫君。    〔小畑哲夫登壇拍手
  12. 小畑哲夫

    小畑哲夫君 会期が切迫して気を揉んでおりますときに、大臣の出席が遅れることは、議事進行上誠に遺憾に存じます。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は民主党を代表して、主として産業経済の面から二、三の質問を行います。  過般の総理大臣施政方針演説並びに大蔵大臣財政演説を聞いて先ず感じますことは、言うは易く行うは難しということであります。理想を述べることは至つて易しい、併しながらこれを実現させて行くということは極めて困難であるということを感ずるのであります。大蔵大臣は今回の補正予算を称して復興予算だと言われておりますけれども、果してそれが復興予算の本質を発揮し得るや否や、多大の疑問を抱かざるを得ないのであります。大蔵大臣財政演説の劈頭において、我が国経済正常安定化の方向に向いつつあると言い、今後の施策は、これを更に強化し、国際経済との関連を重視しつつ、我が国経済再建復興発展させて行くところにあると言われておるのであります。併しながら現実日本経済正常安定化の軌道に乘つているかどうか。何人もこれを疑わざるを得ないのであります。現実日本経済萎縮その極に達していると言つても過言でないと思うのであります。日本経済自立発展のためには、何よりも先ず貿易発展が期待されなければなりません。その輸出は振わず、年度初めの計画の二割も三割も下廻ろうとしているのであります。国内有効需要は激減し、滯貨は数百億円に上り、金融は梗塞して、不渡手形は激増し、企業の倒産、破産は相次いで、失業者の群は巷に溢れようとしておるのであります。かかる状態を以て決済は安定しつつありと豪語することは、恰かも耳を掩うて鈴を盗まんとする類ではないかと思うのであります。このような状態を更に押し進めようとする今回の補正予算並びに明年度予算案が、果して我が国経済再建復興発展に導くかどうか。却つてそれが我が国経済をして萎縮、衰退、破綻に導く危險の公算が大であると言うべきでないか。輸出が振わなくとも、不渡手形が殖えても、失業者が氾濫しても、それでもこれを安定経済と言うのであろうか、吉田首相並びに池田大蔵大臣安定経済を如何なるものと考えているのか。その所信を承わりたいのであります。  今回の補正予算案は決して均衡予算でもなければ、復興予算でもありません。超均衡予算であり、むしろ收奪予算であると断ぜざるを得ないのであります。大蔵大臣は得々として減税を述べられております。けれども、それは表面だけのことに過ぎません。成る程物品税を減し、織物消費税取引高税を廃し、所得税軽減することになつております。かくして約二百億円に上る減税が行われたことは、徴税の嵐に悩んでおる国民にとつては誠に感謝に堪えません。併し同じ国民は一方に租税自然増收によつてそれ以上を支拂うことになるのであります。大蔵大臣は、減税してやるのは国民が相手であつて自然増收支拂うのは他の者であるかのごとく考えておられるのか。拂う者は結局我が国経済であつて、決して外の者ではありません。その経済は一体如何なる情勢にあるかと言えば、先程も申述べたように、大蔵大臣の楽観するような正常安定的な経済ではなく、むしろ近来経験したことのないデフレ恐慌の渦中にある経済であると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)その経済現実を眺めながら、そこに自然増收見込むことが不思議である。この自然増收見込みながら、尚、減税であると称することは矛盾である。国民を瞞着するものであるという外はない。日本経済は、今自然増收という美名の下に重ねて徴税旋風が起るのではないか、或いは苛斂誅求が行われるのではないかとおびえておるのであります。而もこのような苦しい財政の中から債務償還をできるだけ多くしようという意向が見られまして、明年度は見返資金の分は別といたしまして五百億円の債務償還計画されております。しかのみならず本年度補正予算を見ましても、一般会計から食糧管理特別会計へ百七十億円の繰入があります。正に吸い上げ偏重の予算であることを端的に示しておると思うのであります。元来公債は余裕のあるときに償還せられるのが本旨でありますが、池田財政においては最も苦しいときに償還せられるようになつております。これは均衡予算でなくて超均衡予算であります。かくしてデフレ傾向はますます強くなり、企業は空気の不足しておる金魚鉢の中で泳いでおる金魚のような運命を背負わされるのであります。蔵相は如何なる算盤を以て自然増收を計算しておられるのか。又これを以てしても尚、均衡予算と呼ばれるかどうか。明快なる答弁をお願いしたいのであります。  増税とか減税とかいう問題は、国民担税力との比較でなければなりません。担税力を何で見るかということはこれ又問題でありますが、政府において推定した国民所得について見ますると、二十三年度に二兆四千六百億、二十四年度においては二兆九千七百億円であります。ところが二十三年度における納税額は三千二百億で、国民所得比率が一三%となつております。これが二十四年度当初予定された租税は五千百四十六億でありますから、その比率は一七%となつて増加しております。若し補正予算を加えた租税総額が五千百六十億とすれば更に比率は大きくなります。若しこれを減税だと主張するならば、二十四年度国民所得が前年度よりも増大して、年度末三ケ月は特にそれが著しく大きくなるということを証明しなければなりません。大蔵大臣国民所得の増大を立証し得る材料を持つておるかどうか、お尋ねいたします。  尚、税金関連してお伺いいたします。織物消費税取引高税等廃止されまして、物品税が若干軽減されることになりましたのは、多年の要望もあつた租税だけに慶賀に堪えません。元来物品税戰時特別臨時税でありました。即ち昭和十二年北華事変特別税法から始まつたものであります。従つて戰争終結と同時に廃止さるべきが当然でありますが、現在のごとく財源が枯渇しておるときには、かかる租税の存置も止むを得ないでありましよう。併し物品税を存続させるならば、完全に奢侈品税たるところの性格を持たせるか、然らずんば極めて低率の課税とすべきであります。ところが現状では大衆必需品に対しても三割、四割の高い税率を適用し、そのために却つて脱税を多くして、正直に納税しておる者が脱税品との競争に苦しんでおるというのが現状であります。政府脱税を事とする不正直者を育成しようとして物品税を存置しておるのではないでありましようが、現状は正にその通りになつております。国会に出ておる請願、陳情の大部分がこれであります。曰く紙、陶磁器、「きせる」、木製家具、行李、マツチ等、実に多いのであります。若し物品税軽減されるならば、脱税品も少くなり、税率を半分ぐらいにしたところで決して税收入は半減しないであろうと思うのであります。かかる点に鑑みまして、政府物品税中、大衆必需品についてはこれは大幅に軽減する意向はないかどうか。  次に織物消費税は一月から全廃されることになつておりますが、この消費税は四割課税織物については一月から一割にせよ、若しできるならば九月に遡つて実施せよというのがシヤウプ報告書の趣旨であります。それが漸く一月に実施されることになつたわけでありますが、この消費税に関し、私は次の三点を大蔵大臣にお伺いしたい。第一は、何故に消費税軽減をもつと早くしなかつたか。若し急げば十一月一日には実施できた筈である。将来軽減されるという見込生産者売れ行き不振に苦しんでいたのであるが、この実施されなかつた理由はどこにあるか。第二は、今回提案された織物消費税廃止法案は一月一日から実施されることになつておるが、これを十二月一日に実施することの修正に応ずる意想があるかどうか。第三は、一月から実施されるとすれば、今後一ケ月半は殆んど売れ行きを停止するであろうが、その間の未納税織物に対する金融を緩やかにする意思はないかどうか。お尋ねいたします。  今回の補正予算並びに明年度予算を通じて現われております特色の一つに価格調整費削減が挙げられると思うのであります。即ち補正予算では二百三十億円の支出節約を行なつて主なる財源といたしております。明年度予算においては価格調整費として九百億円を計上しております。いわゆる補給金についとは、曾てのドツジ声明にもあつたように、それは竹馬経済の一方の足と目されて、いずれは廃止せらるべき運命に置かれておるのであります。我々も補給金削減撤廃に反対するものではありません。むしろ我が民主党においては第五国会においてこれが主張をしたのであります。併しながら補給金の実態をつぶさに検討いたしますと、その中には資源の貧弱な我が国産業特異性に対する生産助成的性格を持つ部分もあります。従つて補給金削減撤廃については、その時期と方法を十分に勘案して、業界を混乱に陷らせることのないように万全の措置を必要とするのであります。統制撤廃についても同様のことが言えると思うのであります。なかんずく基礎物資に関してはその影響するところが極めて広汎であるから、十分な対応策並びに善後措置を講じなければならないと思うのであります。今次補正予算案に示された補給金削減の主なる部分は、特定産業向け石炭補給金撤廃であります。換言すれば石炭統制撤廃から来るものが大きな分野を占めております。御承知のごとく、石炭は去る九月十六日から配炭公団廃止自由価格自由販売ということになつたのであります。撤廃後二ケ月の経過を見まするのに、中小炭鉱は非常な苦境に追い込まれております。中小炭鉱苦境に追い込まれることは統制撤廃前から予想された点でありまして、さればこそ国会においてしばしばこの問題を取上げて政府善処方を要望したにも拘わらず、政府は今日までのところ殊んど何らの対策を講ぜず、野放しのまま放置しておるのであります。年度当初において石炭の増産を強制したところの政府は、その責任を如何なる形においてとろうとするのか。損失補償苦しくは炭鉱融資の点について青木安本長官並びに稻垣通産大臣の明確なる御答弁を要求いたします。  補給金削減善後措置としてとつ政府の抽劣なる対策鉄鋼の場合においても明確に現われております。鉄鋼石炭補給金撤廃により、去る九月七日全面的に価格改訂を行いました。その結果、需要者価格は、製鋼用銑では二倍強、鋼材は三割から三割八分の値上りとなつております。然るに爾来未だ三ケ月を出でざる今日、輸入石炭補給金削減によつて、再び鋼材三割八分値上げを中心とする鉄鋼価格改訂が問題となつております。鉄鋼生産は平時にあつて近代工業発展の中枢をなすものであります。さればこそ終戰後今日まで、乏しき国家財政の中から、石炭と並んで、いわゆる傾斜生産方式が採用されたのであります。又総司令部当局のなみなみならぬ援助によつて、辛うじて現在の生産水準が維持されて来ているのであります。然るに最近の政府のとつている施策を見るのに、この重要なる基幹産業たる鉄鋼業に対して全く肯けないものがあるのであります。鉄鋼価格改訂は、單に鉄鋼企業のみに止まらず、機械、車輌、造船業等を始め、あらゆる鉄鋼需要産業に大きな影響を與えるものであります。政府基礎物資価上り高次製品製造段階においてこれを吸收させ、最終価格値上りは防止する方針を示しておられます。過般の鉄鋼価格改訂によつて需要関連産業は十分にこれを吸收することができないのに、矢継早価格改訂を行なつて、尚且つこれを吸收することができるかどうか。この面における企業合理化とは、政府考えている程、しかく容易なものではないと思うのであります。政府の折角の御期待にも拘わらず、結果においては却つて価格全面的引上げに移行する虞れはないか。この点について青木安本長官並びに稻垣通産大臣の明確なる答弁を要求いたします。  外国貿易重要性は改めてここに説く要はございません。八千万の国民がこの狹い四つの島に生活して行けるかどうかも、つまりはこの外国貿易が円滑に行われ得るか否かにかかつていると思うのであります。失業問題も結局はここに帰着すると思うのであります。然るにこの貿易の実情を見ますると、振わざること甚だしいものがあります。殊に輸出の不振は憂うべきものがあつて、二十四年度六億ドルの輸出目標は到底不可能でありましよう。輸出不振の原因は、日本内部原因にあると言うよりは、むしろ外部に多かつたことは否定いたしませんが、政府のこれに対する努力又不十分であつたということも認めざるを得ないのであります。今回の補正予算を見ましても、直接貿易に関係するものは五億円の輸出金融補償特殊会計があるだけでありまして、現下我が国貿易が、国際取引関係において種々の不利益、不対等の立場に置かれていることを考えますと、まだまだ不十分であると思うのであります。而も他方輸出貿易の不振は、單に海外市場開拓によるだけではなく、国内市場の培養、拡大、安定を必要とするのでありますが、これに対して補正予算国内需要を極度に抑えるところのデフレ予算であります。政府は常に貿易重要性を唱えておりまするが、実際に行なつているのは貿易進展を阻むところの政策であると思うのであります。いわゆる盲貿易の打開、我が国業者海外渡航商務官の設置、輸出CIF契約の実施、日本商船海外就航通商協定会議への参加等、すでに我々は聞き飽きる程耳にしたのであるが、その実現は遅々として進まざる状態であります。これは国民重大関心事であるが故に、これらの諸事項に関して、昨日通産大臣の御説明になりました以外の点について、その進行状態見通し等について詳細なる報告をお願いしたいのであります。  又貿易進展を阻んでおるものは輸出品滯貨の激増であります。時間もありませんので……この滯貨市場圧迫をしております。これを如何にして除くかということについて、通産大臣対策をお伺いしたいものであります。  尚、昨今における輸出貿易の不振の最大原因は、ポンド切下げと円不安にあることは何人も否定できないところであります。政府円切下げは絶対にやらないと言つております。過般波多野議員から、何故に円切下げを必要としないか、その合理的根拠を問われた際に、首相は三百六十円レートを妥当と信ずると言つておるのみで、何ら納得せしむる答弁を行なつておられません。総理施政方針演説に、先に單一為替レート国民の予期せる額より円安に設定せられ、貿易振興に寄與しつつあるとあつたが、私は日本の実力から見て、円安に決定されたとは思つておりません。併し円安に決定されたことが貿易振興に寄與しつつあるならば、若しポンド切下げの行われた現在、円が割高になつておるとすれば、今後、円を切下げる、円安に対することがやはり貿易に寄與すると考えらるるかどうか。首相並びに関係大臣答弁をお願いいたします。  通産大臣ポンド切下げに対応する政策として、いつも企業合理化を唱えておられます。企業合理化は絶対に必要であります。されば政府産業対策は、ありとあらゆる場合に企業合理化の一本槍であります。而もその方法論については何ら明示もされなければ御指導もありません。稻垣通産大臣のごとき、先日この壇上において、企業合理化が行われるのは今日のごときデフレ恐慌下が最も好適であると放言しておられます。池田大蔵大臣の表現をそのまま拜借いたしますと、正しく国民経済に対する国の干與を極力排除し、企業自主性を尊重された結果であろうと想像するものでありますが、併し客観情勢から判断するいわゆる企業合理化も漸く一定の限界に到達したかの観があるのであります。残された途は設備の改善であります。而も自分で賄うことは覚束ないし、政府金融機関接助も、現下デフレ恐慌と、このデフレ予算の下では望み薄であります。かく企業合理化限界が見えて来ております。若しも以上述べたような、輸出増進対策が効を秦せず、企業合理化がその余地乏しとすれば、円の切下げ以外に方策なしと了解してよいかどうか。総理大臣の御答弁を求めます。  尚、輸入民間貿易に移すということは長らく要望されたところであるが、それが漸く明年一月から実施されることになりましたことは誠に慶賀に堪えません。かくのごとく漸次輸入が自由になつて来ると、国内物件海外物価競争が起きて来て、その間、過渡期としての波瀾は免れないと思うのであります。政府関税政策その他に関し十分の用意を以て対処すべきであるが、その用意があるかどうか、通産大臣の御意見をお伺いしたいものであります。  以上を以て私の質問を打切りますが、今夏、総理大臣が御殿場に靜養しております時代から、我が国民はこの臨時国会の開かれることを一日千秋の思いで持つてつたのであります。どうか以上を通じて国民に満足のできるような御答弁を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。現在の状態が安定しておるか、いないかといういろいろお話がありましたが、私は安定しつつあるものと確信いたすものであります。過日この演壇で申述べた通り日本は領土を失い、貿易を失い、船を失い、漁場を失つて、この四つの島に追い込まれておる。この状態においてインフレーシヨンが起ることは当然なことであり、又第一次戰争の後におけるがごどき恐慌が起るということも予定されることでありますから、政府としては非常にこの点については従来心配しておつたのであります。にも拘わらず幸いにして恐慌は起らなかつたインフレーシヨン止つた、又日本銀行紙幣発行高も停止した、闇相場も停止しつつあるといういうようなことを以て、私は国民生活は安定しつつあると確信いたすものであります。(拍手)又現在の予算計画が、これが復興予算にあらずと言われるのは御意見でありますが、私はそうは考えないのであります。この予算において復興は更に一層促進し得るものと確信いたすものであります。  貿易についてお話がありましたが、貿易のごときは時に消長あるのは普通な話でありまして、ポンド切下げられた、従つて円切下げられやしないかという考えから、世間の想像から、貿易は一時停止いたしましたが、政府としてはその疑惧の念がいけないのである、その疑惧の念が貿易を阻害するのであるから、政府としては見るところあつて、即ち過日申した通り円レート切下げない、三百六十円は堅持するという方針で進むということはしばしば声明した通りであります。よつて輸出は漸次上昇しつつあるのであります。その他は所管大臣からお答えいたします。    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の予算は超安定予算であるというお話でございまするが、正しくこの第五国会に御賛成を頂きました予算は、又今回の予算案も超安定予算であります。この超安定予算があつたからこそインフレーシヨンを止め得たと私は確信いたしておるのであります。(「止つておらん」と呼ぶ者あり〕  次に自然増收お話でございまするが、国民所得が増大し、課税基礎が殖えて来れば、増税をせずに税收が殖えることは当然でございます。従いまして、今回二百十三億円の自然増收見込んでおりまする内容について申上げまするとお分りになると思うのであります。先ず第一、法人税につきまして、予算の二百七十億円に対しまして二百二十八億円増を見込んでおります。これは今まですでに決定いたしました金額が予算に対しまして九十五%に達しておるのであります。今後決定する法人税見込みますと二百二十八億円の増收であります。何故法人税がそんなに殖えたかと申しますと、業績もよくなつたでございましよう。非常に脱税が少くて申告が非常に沢山になつて来たのであります。又個人から法人に変るものもありますので、決して苛斂誅求でなしに殖えて来ておるのであります。次に増收の主なるものは勤労所得税でございます。予定いたしました額よりも非常に沢山入つて参りました。十月未までに予定の千二百億に対しまして六十数パーセント入つておるのであります。私の見るところでは百五十億円の増收でございましよう。御承知通り勤労所得に対しまする税は源泉徴收でございまして、税務署が得手勝手に課税標準を決めるのじやございません。俸給を拂うときにその拂う俸給から所定の税率によつて取るのであります。即ちこれは俸給の殖えたと見るより外はありません。或いは予算が少な過ぎたと申し得るかも知れません。従いまして百五十億の増收は決して水増しでもないし、見込違いでもないのであります。次に酒の増收を百二億円見込んでおります。これは「いも」がどんどん入つて参りまして、五千万貫作る予定燒酎が一億万貫になつてしまつて、この燒酎売れ行きが非常によろしうございます。今までのカストリを追拂つてしまつて闇酒カストリを追放してしまつて、これが税金でみんな入ることになつたのであります。こういたしますると、四百数十億円のはつきりした増收が今実際に出て来ておるのであります。併し実際の面を見ますと、中小商工業者或いは農業者の千九百億円に上る所得税は少し見込が多いのじやないか。これは私は苛斂誅求とかいう問題ではなくて、申告納税につきましては二百億円の減收見込んでおるのであります。こうお考えになれば、決して水増し増收でも何でもないのであります。これは当然入つて来ておる筈であるのであります。次に物品税につきまして税率を大幅に下げたらどうか、又生活に直接必要なものにも課税しておるというお話でございます。誠に御尤もなお話でありますので、補正予算提出に当りまして、物品税につきましては相当に軽減をいたしております。思い切つた軽減をして、二百七十億円の予算に対しまして、平年度では百億円ばかり減るような案にいたしました。次に案物消費税シヤウプ博士の言われるように九月に遡つて減税しないのはどうか。これは織物消費税は御承知通り製造場から出るときに課税して取つてしまつておるのであります。今頃九月から減税するということはできぬことでありまして、この点はシヤウプ博士が少し検討が足りなかつたと私は考えまして、九月からはいたしません。そうして又十一月一日から実施すべきではないかというお話でございまするが、十一月一日からやるには国会の御決議を、御賛成を得なければできないのでありまするから、十一月一日からは、やるわけには行かないのであります。皆さん方に御審議願つて減税いたしたいと思います。更に十二月に実施する修正案について政府はどう考えるか。これは仮定の問題でありますのでお答えいたしません。私は一月から減税を外の減税と同時に出発したいという考えで本案を提出いたした次第であります。尚、織物の製造者に対して未納税の措置をとらないか。未納税の措置にはいろいろな点がありますが、織物の生産業者に対しましては、できるだけの金融の便宜を図る用意をいたしておるのであります。関税政策についてどうかというお話がございましたが、貿易民間貿易に移りますと、関税政策は重大なる問題であります。併し何分にも今占領治下でありますので、検討は続けておりまするが、これを具体的に実施する運びに至つておりません。(拍手)    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  15. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今小畑議員の御質問の、現在がデフレ恐慌と見るがどうかという御質問に対して先ずお答え申上げたいと存じます。  今日の経済が安定したと申しておりますのは、本年の四月以来、安定施策の効果が着々と現われまして、通貨は正常な季節的変動の型に従いつつ、御承知通り概ね横這いでございます。物価も、補給金削減その他によりまする関係、公定物価の引上げにも拘わりませず、大体におきまして安定をいたしております。多少物価の下落が認められた点もございますが、実効物価は大体保合いでございまして、賃金も大体において安定をいたしておる次第でございます。幾つかの指標が示しておりまするとこから根拠付けられるのでありまして、この点は皆様が統計等に現われておる点で御了承が願えると存じます。併しながら安定施策実施の過程におきまして、若干有効需要の減退、生産の停滯気味であるという点については、これは貿易の不振等とも併せまして現われておることを、政府としても認めておる次第でございますが、併しこれを以て直ちに恐慌なりと断ずることはドグマではないかと存ずるのであります。即ち生産についても、停滯気味であるとはいえ、指標が本年の七月乃至九月におきましては、昨年の同期に比べまして約二割、二〇%の上昇を示しておる。企業合理化に伴いまする労働の生産性の向上であるとか、品質我いはコストの低下等が漸次推進される等、経済正常化の動向が見られまして、貿易につきましても、海外市況不振であるとか、或いはポンド貨の切下げ等、幾多の障害はございますにも拘わらず、四千万ドル台の輸出を維持しておるのでございまして、この点は御承知通り事実でございます。勿論政府といたしましては徒らに楽観しておるものではなく、(「楽観しておるよ」と呼ぶ者あり)貿易の面において、近く輸出入を大幅に民間に移管し、或いは従来ネツクとなつておりました諸問題の解決に努力する所存でございまするが、有効需要の減退については、公共事業費の増大、建設投資と拡大いたしまして、これを喚起し、金融面においても、見返資金の一層の活溌な活動に期待すると同時に、市中金融機関の自主的な活動による産業資金の供給であるとか、その他統制撤廃によりまする自由競争の拡大等、各般の施策を講じまして、折角安定の軌道に乘りました我が国の経済を更に推し進めて、健全な発展を招来いたしたいと存じておる次第でございます。  それから第二点でございますが、質問の御要点は、補給金削減についてどうか。こういう御質問でありまするが、ドツジ氏がいわゆる竹馬経済と言つた、竹馬の脚の一本である価格調整費の支出は、終戰後のこのアブノーマルな経済事情に基いて起つておりまする止むを得ない措置、即ち経済が次第に正常化するに連れまして、これを漸次節減すべきであるのでありますが、余りに縮減を急ぐことは、折角の経済の回復を水泡に帰する虞れがありますので、その時期方法の決定は愼重に考えなければならぬ。そうして本年度は当初予算といたしまして合計二千二十二億の価格調整費が計上せられましたけれども、その後、鉄鉱石であるとか、肥料であるとか、或いはソーダ等の価格の改訂、それから石炭、銅、輸入纖維原料等の補給金撤廃によりまして、二百三十億円の節約が今回の補正予計に計上されております。これはすべて日本経済全体に及ぼす影響を十分検討の上実施され、或いは実施を予定しておるものでありまして、これによつて我が国産業の根本を危くするというがごときことは全くないのであります。むしろその正常な回復乃至発展を助長するものであると思つております。明年度予算案においては総額九百億の価格調整費予定されておりますが、これは今年より補給金支出対象が一層縮小され、品目も整理すると共に、最少限度必要な品目については、飽くまで補給金を残しまして、日本経済の正常な安定に資する所存でございます。尚、お言葉でございましたが、石炭統制撤廃したが、その結果中小炭鉱等の苦境が起つておるが、それに対しては政府はどうするかという点については、政府といたしましても、これに極力金融の途を講じて参りたいというので、只今折角努力中でございます。尚、例えば鉄鋼補給金につきましては、常にその資材又は資金、輸出の可能性と、国内鉄鋼を需要する諸産業を念頭に置きまして、その補給金の縮減を研究いたしますと共に、その原料即ち鉄鉱石や粘結炭の輸入価格の変動であるとか、それに伴いまする国内炭の価格変動の趨勢を反映いたしまして、適宜補給金を操作して参る所存でございます。それから又価格改訂によつて物価体系に影響はないかと、こういう御質問であつたと存じまするが、御承知通り、個々の価格については、いろいろとでこぼこが生じておりますることは私共もよく認めるのでございますが、今年度物価体系についてこれを崩すとか、或いはこれを改訂するという考えは毛頭ございませんし、その必要もないと確信をいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  16. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) お答え申上げます。  補給金撤廃についての処置についての問題でありますが、御承知のように日本基礎産業に対する政府の助成を廃して、できるだけ早く自立態勢に持つて行くということは、これらの基礎産業の将来のために最も望ましいことでありまして、この点は小畑議員も御同感であつたように存ずるのであります。そこで個々の問題についていろいろお話がありましたが、例えば石炭補給金問題は、これは各種特殊産業に転嫁されますので、この補給金の問題はないと存ずるのでありますが、これを統制を外した点についての措置について御議論があつたようであります。併しながらこの問題は小畑議員も御承知のように、この前の臨時国会におきまして、七月におきまして四千カロリー以下を打切りました。当時の経緯におきまして、このときにすでに今後半年後には一般に統制を外すという考え方が十分論議されておつたと思うのであります。従つてこれに対するところの販売組織なり或いはその他の用意というものは、当時業者がすでに整えていなければならなかつたことであろうと私は考えておるのであります。低品位炭につきましては、御承知のように、終戰後の日本情勢が止むを得ず低品位炭まで進んで採掘をいたさせたのでありますが、今日の情勢においては、もはや低品位炭の需要がそう多いものではないということも十分承知されておつたことと存ずるのであります。尚これが対策につきまして、融資の面におきましては、中小炭鉱に対して約六億程度の我々の斡旋融資が行われておりますが、報告しないものを加えれば、それ以上になつておるのではないかと存じます。  鉄鋼につきましては、御承知のように鉄鋼石炭特殊補給が廃止された。こういつたようなことで鉄鋼の値段も上つたのでありますけれども、併しながら鉄鋼価格が上りました後におきましても、最近相当鋼材の、或いは厚板その他の海外輸出が行われております。本年度三十三万トンを予定されておりました鉄鋼輸出も、鋼材輸出も、価格の値上りに拘わらず実行され得ると我々は存じておる次第であります。そういつた点の輸出、或いは国内に対するところの消費の問題、そういつたものを勘案いたしまして、そうして価格改訂、或いは補給金の漸次廃止、こういつた面をやつておるわけであります。尚、今後全面的に撤廃するという場合について、鉄鋼のコストにどういうふうに影響するかという問題があるわけでありますが、一面は合理化によらなければなりませんけれども、同時に最近におきまする輸入鉄鉱石、或いは輸入粘結炭、こういつたようなものの価格が相当大幅に低減されておりますので、この鉄鋼補給金廃止いたしましても、大きな影響は與えないと、かように存じておるのであります。尚第二次、第三次製品につきましても、同様なことが私は言えると存ずるのであります。又銅の補給金につきましても、御承知のように非常に貯蔵が多い。これがいわゆる価格を圧迫し、そうして経営者を困難ならしめている点もありますので、その点については一万トンを限つて融資をいたす。かような状態であります。と同時に、最近これが輸出につきましては相当大口の契約が行われるような状態に相成つておるのでありまして、決して市場を圧迫しないと私は存じておるのであります。  次に貿易の問題に移るのでありますが、貿易不振の話がよく出るのでありますが、本年一月から六月までの貿易の増加は、契約額は三億二千万ドルでございます。尚その後におきましても、それと同じ率で進んでおつたのでありまするが、ポンド切下げによつてこれが俄然低く相成りました。ここで貿易不振の声を大きく言われるようになつたと思われるのであります。併しながら幸いにこれは一時的な現象でありまして、十月の下旬から十一月の上旬にかけましては、前のレートと同じような足取りで輸出が行われておるということを御報告申上げて置きたいと思うのであります。尚これに関連して円レートの問題がありましたが、この点につきましては、この前、波多野議員の御質問に対して私はお答え申上げて置いたのでありますが、要するにポンド切下げられる前に、すでに市場におきましては三ドルというレートが出ておつたのでありまして、これは実際の数字の上に現われておつたのであります。ノミナルに私は三〇%が切下げられたと、かように考えております。従つて実際に三〇%も切下げられたということは、各ポンド地域におきましては、物価の騰貴を来しているので、半分くらいはこの騰貴によつて埋められていると考えているのであります。その一方におきまして、輸入の原料その他は切下げに応じたところの安い原料を我々は入れることができる。かような利益を持つていると私は考えるのであります。それ以外に、我々がいろいろな諸方策を講ずると同時に、これを機会に輸出態勢のでき得るように国内企業合理化をやるということに相成りますれば、私は円のレート切下げまして、そうして再び日本インフレーシヨンを起すよりも、絶対に円のレート切下げないことの方が、どんなに我が国の経済にとつて有利かと存じている次第でありまして、我々といたしましては円レート切下げ考え方は全然持つていないことを御報告申上げて置きます。  尚、貿易その他の振興策の経過がどうなつているかと、こういつたようなお尋ねでありましたが、昨日、船のことは申上げたわけでありますが、貿易協定その他につきましては、できるだけこの際多角協定をいたしたい。多角協定ということは、これはよく俗に言われる無理矢理に物を輸入しなければならんじやないか、或いは為替の差額で止むを得ず不要なものを買うことは困るじやないかというような御質問に対する点から申しましても、多角貿易で決済するという、多角協定の見地に立つて、できるだけそういう方向に進みたいということも話合つているわけであります。その他、先程小畑さん自身がおつしやつたようにCTF建の問題、或いは調査員の派遣その他の問題、尚、通商協定にも我々の方の人を参加さして貰う問題、そういつたような問題につきましては、時々時宜を失せずして交渉を継続いたしている次第であります。  尚その他は合理化の点についてお話があつたようでありますが、私はこの前合理化の問題につきましてはすでにお答えを申上げたので、ここで繰返す必要はなかろうと存ずるのでありますが、先程小畑さんが申されました、こういうときにこそ合理化が本当にできるのだ、こういう申し方の意味は、こういうときにこそ設備機械の改善は必要である。又設備機械の改善の必要は、こういつた時期にこそ本当に合理的に合理化されて行われるのである。然らばその資金はどうか。こういう問題に私はなると思うのであります。こういう問題については、実際その資金によつて採算がとれ、企業合理化に継続され得る見込が立ちますものについては、今日においては政府、市中銀行において融資は可能なものである。かように私は確信しております。現に九月におきまして、設備資金につきましても我々の斡旋だけで十九億、十月においては四十億の斡旋をいたしているということを、ここで御報告申上げて置くわけであります。尚、関税の問題につきましては、先程池田大蔵大臣がお答え申上げましたと全く同意見であります。(拍手)     —————————————
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  18. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は無所属懇談会を代表いたしまして質問いたします。  第一に、いわゆる十五ケ月予算編成の基本になつております三つの問題について御質問申上げたいと思うのであります。その第一は、我が国経済現状に対する政府の認識、第二は、我が国経済の見通し、第三は、政府施策の根本方針、この三つについて先ずお尋ねいたしたいと思うのであります。これについては総理大臣池田大蔵大臣、安本長官からの御答弁を願いたいと思うのであります。  第一に、我が国経済現状の認識につきましては、政府は安定していると言い、反対の方は安定していないと言い、論争は繰返されておりますから、私はこの論争を再びここで繰返そうとは思いません。私の問わんといるところは、政府の安定という言葉自体については必ずしも反対ではないのでありまして、問題は、一体政府の安定というその内容がどういうものであるか、内容の問題、又この安定がどういうものによつて、もたらされておるか、そのいう点が問題であると思うのです。そこで安定の内容については、私は二つ問題があると思うのです。その一つは、何が安定しておるのか、又何によつて安定されておるのか、これが一つの問題であると思うのです。それでは何が安定しておるかと言えば、安定しておるのは大銀行と大企業であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)例えば本年度予算において、政府政府出資として復興金融金庫債券三百億円を大銀行に償還しました。又見返資金の中から六百二十億円を償還する。これが大銀行に返つてつて、復金債券を運用しておれば、利廻りはたかだか五分程度、これが現金に償還され、その現金は我我から税金を取つて償還する。その現金は銀行に行けば少くとも一割以上には廻るのであります。而も続々と国債償還という形によつて、銀行の持つておる国債、復金債券、そういうものを償還する。そうすれば銀行が安定しておるのは当然であります。而もその大銀行と結んでおる大会社は、それによつて最近金に困つておらない。大会社の金融は安定しておる。安定しておるのは大銀行及び、大会社であります。(拍手)  それでは何によつてそういう安定をもたらされておるかと言えば、ここに一つの綴り方、いわゆる作文がございます。これは東京都の小学校の四年生の書いた、鈴木助三郎君という人の作文であります。これは「あさかわくん」と題した綴り方ですが、これを読みますと、   あさかわくにはお母さんがいなくて、お父さんは、くつみがきやさんでした。あさかわくんと、五つくらいなちいさいいもうとと、うちでまつているのです。あさかわくんのお父さんは、ときどき、ちびちやんをつれて、学校へきて、あさかわくんやぼくたちをまどからみていました。いつでもくつみがきのはこをもつていました。かえりには三人でおうちへかえりました。きよ年のふゆ、あさかわくんのお父さんは死んでしまいました。あさかわくんは、すつかりやせてげんきがありませんでした。それからあさかわくんが学校へこなくなつたので、ぼくがあそびに行つたら、いなかのしらないおばさんがいました。ちびちやんが「兄ちやんは死んじやつたよ」といつたので、ぼくはびつくりして、つまんないのでかえつてきました。それからぼくはあさかわくんちへいかなくなりました。いつかお友だちにきいたら、ちびちやんも死んでしまつたそうです。どうしてみんな死んじやつたのかしら、かわいそうだなあ。  これが失業靴磨き屋さんの生活状態なんであります。こういう多くの失業者を出し、そうして大衆生活が窮乏化し、又中小業者の整理破綻が行われ、そうして大衆の購買力が減退して、滯貨が非常に多くなつておる。こういう犠牲において大銀行、大企業は安定しておる。(拍手)これが安定の内容であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)安定についてはここが問題になつておるのであります。これを以てして政府はこの安定は好ましい安定と考えられるか。政府の言う今の安定はこういう内容であります。(「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり)  もう一つ安定の内容について問題があります。安定と言つておりますが、如何にもみじめな安定なんであります。昭和十一年に比較しまして生産は大体六割であります。人口は当時より二千万人殖えております。そうすると人口を勘案すると生産は昭和十一年の五割程度であります。極めて低い水準で安定しておるのであります。安定と言えば安定であります。このようにみすぼらしい安定でよろしいのでありましようか。このように貧弱な安定、これを以て政府は満足されておるのでありましようか。好ましい安定と考えられますか。ドツジ・ラインによるところの安定は、これは通貨面からの安定措置を講じたに過ぎない。マネー・スタビリゼーシヨンをやつたに過ぎないのであります。そういう措置をやつたから通貨は殖えない。物価は上らない。これはそういう措置なんです。そういう措置の結果どういうことが起つたか、どういう内容のものが起つたかが問題なんであります。政府の安定措置としてやつた通貨は殖えない、物価は上らないということは、それは自然にはならない。自然にそうなつたのではなくして、そういう対策を施した。これはドツジ氏の政策です。その結果どういうことが起つたかが問題です。その内容が今申上げましたように、大資本、大銀行、大企業の安定であつて、而も非常に広汎な大衆の犠牲においてこれが行われている。而もその安定の水準たるや、事変前の五割程度の極めてみすぼらしい安定の水準である。こういうような安定を以て政府は真の安定と言えると思えましようか。ブルジヨア経済学でも、近代のケインズあたりの経済学は、エンプロイメント即ち雇用を伴わないところの安定はない。(拍手)こういうように言つております。失業者をうんと出したところの安定というものは、近代のブルジヨア経済学でも安定ではないと言つております。(「恐慌だ」と呼ぶ者あり)ケインズの雇用理論はこれを明らかに示していると思います。この点について、私はもう一度内容につきまして、こういうものを政府は果して好ましい安定て見ているのかどうか。総理大臣大蔵大臣、安本長官の御見解を承わりたいのであります。  次に経済の見通しについて、大蔵大臣はこの予算は来年度までの経済の見通しの上に立つて作られている、こう申されておりますが、その見通しを明らかにして頂きたい。どういう見通しでございますか。私は、これから来年度に亘る経済の見通しは、デフレがやつて来るという見通しであります。これについて大蔵大臣はどうお考えであるか。私は、デフレ要因として、この補正予算においてすら非常にデフレ要因があると思います。例えば食糧管理特別会計の百七十億の繰入、貿易計画におきまして輸入超過が五千五百万ドル増加した、これもデフレの要因であると思います。それから復金の回收が政府当初の七十億程度が二百十九億程度殖えております。而もその金は何ら使われておらない。鉄道会計への融資が殖えておる。一般会計からの繰入が殖えておる。又一ドル三百六十円、これは確かに円高であります。そういうデフレ要因がある。而もドツジ・ラインは決してデイスインフレのラインではないのでありまして、大蔵大臣もすでに認められている通り、超均衡予算ということはデフレ政策なのであります。辻に大蔵大臣予算演説において注目すべき言葉を述べておられた。それは物価を安定しつつ更にこの物価を引上げる方向に持つて行きたいと述べております。これは私はデフレの方向に持つて行く、こういうお考えではないかと思うのであります。又伝えられるところによりますと、ドツジ公使の意見としては、賃金水準を官庁の低い給與ベースにこれを鞘寄せさして行つて、全体の賃金を下げる方向に持つて行く、これがドツジ・ラインである、こういうように伝えられております。この点について政府は、民間給與を低い官庁の給與ベースにこれを持つて行く方針であるかどうか。鈴木労働大臣意見をお伺いいたしたいのであります。更にこの際、鈴木労働大臣が衆議院の本会議で社会党の水谷氏に対して、水谷氏が実質賃金は下つているということに対して、鈴木労働大臣は実質賃金は八月になつてつている、こういうことを答えられておりますが、これは私は甚だ詭弁であると思うのです。と申しますのは、八月になつてから政府が実質賃金を計算する場合の基礎になる消費者物価指数の算定方式を変えておるのであります。これまではフイツシヤー式によつてCPIを計算しておつたのをラスパイル式に変えておる。CPIは、フイツシヤー式によりますと、本年一月の指数が四七〇・九であつたものが、本年七月にはこれが五〇一・四に殖えるのです。これがラスパイル式で計算いたしますと、本年一月の一三二・四が、本年七月には一三二・八にしかならない。CPIが非常に下るのです。非常に低くなつたCPIで賃金を割りますから、実質賃金は余り下らないか、或いは上るわけです。こういう実質賃金の算定方式を政府は八月において変えておる。それを以て実質賃金が上つておる、統計を見て上つておるというのは、これは私は欺瞞であろうと思うのです。更に又賃金の内容を見ましても、遅配欠配というものが含まれておらない。こういう賃金統計を以て実質賃金が上つておるとか、下つていないというのは、私はこれはごまかしであると思うのです。もう少し正確に科学的に答えて頂きたいのであります。これを併せて労働大臣に御答弁を煩わしたいのであります。  それから第三の、今後の政府の根本施策について特に吉田首相にお伺いしたいのでございますが、それは先程も述べましたように、日本経済は極めてみじめな状態にある。事変前に比べて五割程度の生産水準生活水準、これを今後生産水準生活水準を高めて行くためには、どういう経済政策をとつてつたらよろしいか。吉田内閣の方針は自由経済方式である。これはあらゆる面に現われております。価格差補給金、これを撤廃して行くのも、自由価格によつて経済の合理性が貫かれて行くという、こういう政策である。又いわゆるローガン方式、この貿易方式も自由経済方式であります。財政金融を分離したのも自由金融である。この自由経済方式を以て、この低い生産水準日本をこれから高めて行くために、そういう政策を以てこれはやつて行けるかどうか。いろいろな破綻が私は生じて来るのではないかと思うのです。この点について確信があるのかどうか。特に補給金削減した場合、補給金を今後どんどん削減した場合、日本鉄鋼とか、ソーダ、こういうものが潰れてしまつたならば、あとは外国からこれを買えばいい、こういうのであるかどうか。日本の産業構造について稻垣通産大臣はどういうお考えであるか。この点についてお伺い申上げたいと思うのです。  次に、この国会召集の眼目であり、国民が非常に注目しております減税の問題についてお伺いしたい。税の專門家である大蔵大臣は、税の軽減には二つの面があるということは御存じであると思う。一つは、税法上の減税、もう一つは、実質上の減税であります。政府がここに二百億減税されるというのは、これは税法上の減税である。実質的な減税ではありません。実質的には、この予算において、むしろ当初予算よりも十三億一千万円の増税になつております。而もシヤウプ勧告によれば勤労所得税は千三百九十六億になる計算であります。これに対して政府は当初の千二百億の勤労所得税を、大体このシヤウプ勧告案の線まで自然増收として増加しております。ところが申告納税においては、シヤウプ勧告案によれば、二千七百十四億円の申告納税の額にならなければならないのを、政府は当初予算千九百億を逆に千七百億に減らしておる。自然減收として減らしておる。何故勤労所得については自然増收を認め、何故申告納税についてはシャウプ勧告案とは逆に自然減收としてこれを減らしておるのか。勤労所得においては、勤労階級においては増税であります。この点についてお尋ねしたい。  更に次に金融政策についてお伺いしたい。その第一は、財政金融を分離した結果、金融が民間の市中の大銀行の手に委ねられた。従つて金融の社会性、公共性を高めなければならないということは、大蔵大臣も主張されたところであります。その結果として日本銀行にポリシー・ボード、政策委員会が設けられた。ところがポリシーボード、これが著しく非民主的であると思う。八月一日の金利引下げに際しまして、一万田日本銀行総裁及びこのポリシー、ボードの委員は金利引下げに反対したそうである。反対の意向である。そうして大蔵省及び有力筋の強硬な主張によつて漸く金利を引下げた。而も金利の引下げの率は極めて低いのである。シヤウプ税制勧告においても、日本において預金の利息と貸出の利息がこのように著しく開いておる、こういう国はないということを言つております。もつと預金の利子を引上げ、貸出の利息を引下げるべきである。こういうことを勧告しておりますが、この政策委員会、ポリシー・ボードはそういうことをやつておりません。むしろこれは反対しておる。金融の民主化に逆行しておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)  第二に、金融についてお伺いしたいのは、政府租税及び貯蓄の形で沢山の金を吸收しながら、これを遊金、アイドル資金としてこれを抱えておつて運用していない額が相当の額に上つております。これが財政面だけでなく、金融面から、著しく金詰り、デフレを強化しておるのである。例えば見返資金におきまして、最近の見返資金の金額は約八百二十億たまつておる。そのうち民間に貸してあるのは飯野海運及び日本窒素の約四億、その残りは更に鉄道、通信に対して百六十億程度運用し、あとは四百億程度米穀証券に運用しておる。これは日本銀行に持つておる米穀証券を買うだけであつて日本銀行政府の間のキヤツチボールに過ぎない。国民から見返物資を売つて吸い上げた金が八百二十億ある。それが運用されていないのです。米穀証券以外に非常に多額の、二百十六億のアイドル資金があつて、何にも使われていない。こんな不経済な無駄なことはないと思う。更に又復金であります。復金においては二百十九億円の回收がありますが、これも何にも使われておらない。又預金部資金も八億も現金があつても、これも使われておらない。こういうふうな遊金が沢山ある。このアイドル資金を政府はどうして運用しないのか。これは著しく不経済で、而もデフレを非常に強化しておると思う。この点についての大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。  更に、円価対策その他について御質問申上げたいのですが、時間が参りましたので、これは委員会において質問いたすことにいたしまして、(「やれやれ」と呼ぶ者あり)私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。現在の安定の内容が、政府はこれを以て満足するや否やというお尋ねのようでありますが、無論政府はこれを以て満足しておるわけではないのであります。ますます安定をせしめ、ますます増産を図つて、安定の内容をますます高めて行きたいというのが政府の念願であります。又政府の、我が経済政策の基本方針如何というお尋ねでありますが、成るべく従来の統制経済方針を捨てて漸次自由経済の方向に移行したいと思うことが、我が内閣の考えておるところであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 安定の内容は、大銀行、大産業が安定して、一般のものは安定していないというお話でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)而もその裏付けとして、復金債の利子は五分であつて、それを高く貸しておるというのが根拠のようでございますが、復金債の利子は七分五厘でございます。而して今銀行の預金コストは八分を超えておるのであります。こういう状態であつて、今度見返資金から市中銀行の復金債を償還しようというときに、銀行家は何と言つておりますか。余り早急に復金債を償還して貰いたくないという声が多いのであります。実情がその通りであります。而して銀行が配当をいたしておりますか。あの企業の銀行が配当していないのであります。これを以て安定とは言えますまい。又大産業は安定しておると申しましても、価格補給金削減でなかなか四苦八苦しておるのであります。だから増産して今大体よくなつているところは、敗戰後、企業合理化と、態勢を切替えて新事態に副つてつた企業は安定しておる。そうして一般のものがそれに今ついて行かんとしておるのであります。私はこの際におきまして、安定が軌道に乘つたと、こう言つております。尚、今の安定はみすぼらしい安定だと言われましたが、それは昔に比べればみすぼらしいでございましようが、このひどい敗戰になつて、そうしてインフレに慣れて来たインフレ論者はみすぼらしい安定と言いましよう。併しひどい敗戰になつてこれを立て直すとき、これは戰前に比べたら生産も少いのは御承知通りです。これを切替えて敢てインフレの收束に向つて努力を注いで、インフレを終熄さして、そうしてこれから復興して生産の増強を図ろうというのが我が内閣の政策であるのであります。(拍手)  次に税の問題でありまするが、今のお話は、来年度見込んでおります所得税についてのお話のようであつた考えてお答え申上げます。来年度の分はまだ正確な数字は出しておりません。シヤウプ勧告は、御承知通り基礎控除の引上げ或いは扶養控除の引上げ、こういうことで行つておるのであります。而も最も重大なることは、勤労階級に対しまして従来の二割五分の控除を一割にしておるのであります。従いまして申告納税の分が非常に減つて、源泉課税勤労所得税が減らないのは当然のことであります。これはシヤウプ勧告がいいか惡いかは別問題として、シヤウプ勧告案によればそうなるのが当然、而も又シヤウプ博士は来年度国民所得の計算につきまして、相当増加することを見込んでおります。私は或る程度の増加は見込まれるけれども、シヤウプ博士程には行かないのではないかと、今検討中なのであります。従いまして来年度の税につきましては、いずれ又第七国会で御議論を願うことにいたしますが、今言つたような状況から来ることであるのであります。尚、増税について、形式的の増税、実質的の増税ということを言われましたが、我々の論議すべき問題は、法律によりまする増税かどうかということを論議すべきものであります。税法上の増税減税を論議しておるのであります。国民所得が殖えて来て、所定の税法を適用して税收が上がるということは、増税にはなりません。これはどこの学者もそう言つております。ただ国民負担がどうなつたかということを結果的に見る場合におきましては、それは歩合が殖えるでありましようが、議会で論議すべき問題は、税法上の増税減税を論議すべきであると思うのであります。  次に金利の問題でございます。政策委員会或いは日銀が金利の引上げに反対したというふうなことを言われておりますが、私はそう考えません。私は絶対に金利は引下ぐべきであるという信念の下に、八月十五日に貿易手形の一部につきまして二厘の引上げをやつております。又九月十五日に普通金利を二銭八厘から二銭七厘に下げております。今後もできるだけ金利を下げて行つて、そうして物価と同様に金利も国際水準に引付けたいというのが念願であります。では下げ得るか、下げ得るかと言つたら下げ得られます。お話通りに、今の日本の金利は預金金利と貸出金利に非常に差があります。それはどこから来るかと申しますと、事務費が非常に高いのであります。事務費の中のどれが一番高いかと申しますると、事務員の俸給が可なり高い。これが預金コストの増加を来たしておる最も重大な原因であると考えております。従いまして、各方面に経営の合理化を図りまして、極力金利の引上げに向つて行きたいと考えております。  尚、見返資金の運用につきまして、遊んでおるじやないかというお話でございます。これは御承知通りに、見返資金は関係方面の許可を得て出さなければならない。従いましてこの許可を得ることが非常に遅れたのは、日本側に相当のあれがあるのであります。政府が惡いかと言つたら、そうで、或る程度の負担を持たなければなりませんが、申請が遅いのであります。即ち見返資金を借りてどういうふうな事業に使い、いつどういうふうな方法で返しますという見通しが付かないために、申請が非常に少なかつたのであります。而も又出て来た申請をそう審査せずに出すわけにも行きません。従いまして只今申請になつておりますのは三百億近くでございます。すでに百七、八十億は関係方面へ出しております。いずれにいたしましても、この年度末、来年の三月までには相当の金額は貸出しできると思うのであります。併し決して今残りの金を遊ばしておるわけではございません。お話通りに食糧証券を借りて運用しております。又日本銀行に金を預け、そうして市中銀行への貸出を図つております。従いまして昨年の今頃は日本銀行の市中銀行への貸出は五百数十億円であつたのが、この頃は千億円を超えておる。この財源はどこから出て来たかというと、やはり見返資金を日本銀行で引受けておるからであります。直接に見返資金特別会計から一般投資に行かないから金が遊んでおるということは、早計ではないかと思います。ただ願うべくは直接に行つた方がいいのでありますが、今言つたような事情で遅れておる。遅れたから遊ばしているのではない。外の方面で運用いておる状況であります。  尚、預金部その他につきましても、もつと活用しなければならないことはお話通り或る程度ございます。従いまして財政演説申上げましたように、復興にはどうしても金融の万全を期さなければならないという考えの下に、財政演説に述べた次第でございます。(拍手)    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  21. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 木村議員からの御質問で、極めてみすぼらしいデフレ状態であるというふうに見ておるがどうか。即ちみすぼらしい安定であると見ておるがどうか。こういう御質問であつたと思いまするが、御承知通り長期に亘ります我が国のインフレーシヨンが、昨年の末頃から漸次弱まつて参りましたが、本年の春の均衡予算編成と為替レートの設定によりまして、経済のこれに基く安定計画が実施せられまするとことより、漸く收束をして来たというふうに見ているのでございます。日銀券の発行高は、御承知通りに昨年末三千五百五十三億円から本年に入りまして段々收縮を続けまして、七月末には二千九百五十五億円となつております。その後は横這い状態でありまして、ほぼ戰前の正常な季節的な変動をしておるということが事実であると存じます。勿論この物価につきましては、公定価格は、補給金削減、それから為替レートの設定等の影響を受けまして、また多少漸騰の傾向にありまするけれども、闇物価は本年に入つてから漸く低落を示し始めております。闇と公定とを総合した実効物価は、本年初頭から大体同一水準にあります。又これらの結果、それでは平均賃金はどうであるか。昨年末までは約一割の上昇が続いておりましたが、本年に入りましてからは八千四五百円の水準がほぼ安定するに至つております。このようにいたしまして、通貨と、それから物価と賃金等の面から見まして、最近経済安定化の傾向は誠に顯著に現われておると存じます。昨年まで我々を悩まし続けて参りましたインフレーシヨンが終熄したと見ることができるのは、これらの事実から申上げておるのでございます。併しながら安定計画の遂行の過程において若干の困難な事態が起きて来るということは、これは事実でありますが、併しながらこれは、あれ程のインフレーシヨンを收束する際に当然通らなければならぬ経過であると存じます。従いまして、我々が健全な経済循環をして行きたい、維持して行きたいということに願いにおきましては、少しも変つておらないのでありまして、できるだけこの不都合なる経済循環、そういう経済循環を嚴に戒めて行かなければならない。政府といたしましては、以上の安定計画の成果を土台といたしまして、今後は産業、特に輸出産業の振興或いは電源の開発であるとか公共事業の増大等によりまして、積極的に雇用の機会を増大して、国民生活の安定に努力いたして参りたいと存じております。  尚、経済再建の方式といたしましては、企業自主性と創意を與う限り尊重いたしまして、自由競争を基盤として推進して行く方針が最も妥当であると考えております。併し我が国経済現状におきましては、再びインフレーシヨンに逆転する危險が未だなしとはしないのであります。完全な自由経済方式の実現は困難であります。政府といたしましては、生産、貿易、価格等、あらゆる分野において自由経済の範囲を逐次拡大いたしまして、今後とも行きたいと存じておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇
  22. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 木村さんにお答えいたします。実質賃金の趨勢は大体上昇の過程にありますけれども、これを戰前に比べますと御承知のようにまだ相当低いのでありまして、あらゆる機会に実質賃金を引上げて行く、充実して行くという政策は、勿論今後も継続して行かなければならないと思います。ただ、その引上げて行く方式におきましては、賃金三原則の関係もあり、現在の日本の全体の政策との関係もありまして、この春以来、日本国民が各面とも多大の困難に堪えて進めて来たところの安定政策の枠内においてこれを実現して行くということになるのでありまして、従つて勤労所得税軽減とか、大衆税的な、消費税的なものの軽減若しくは撤廃、或いは主食の内容の充実、又闇物価又はマル公価格を自由価格に変えて行く過程において生ずるところの消費価格の下落というものにも、相当の期待が持たれると思うのでありまして、そういつたものを総合したところの一連の政策によつて実質賃金を消極的には維持充実し、積極的には更に引上げて行くという方式を採るべきであると考えております。  更にCPIの問題でありますが、これはお税のごとくフイツシヤー式からライパイル式に変えたのでございまして、どうして変えたかという問題につきましては、專門家が長い間の討議により、又国際労働統計家会議の勧告等も参酌いたしまして、專門的な検討の結果、現段階においてこれが適当であるという意味で変えられたかと思います。政府自体なり何なりがこの変更に対しまして何らの意図を持つてつたというふうなことは絶対にないのでありまして、これが今日あるところのCPIであり、労働者の実質賃金の計算は爾後これを基礎として計算したのでございます。尚それについての前との繋がりその他の細かい点につきましては、極めて技術的な方面に亘りますので、委員会なりその他なりで尚御検討を願いたいと思います。    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇
  23. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) お答え申上げます。日本の産業の構成は如何あるべきかという問題でありますが、もとより日本の産業の構成は結局国際比較において考慮されなければならないと思います。又進んで言えば、東南アジア地方におけるところの各社の産業構成並びにこれに対する国際価格との鞘寄せ、こういつたものを中心として考慮すべきものと考えております。そういう線に沿つて日本の産業の構成を考えておるということを申上げたいのであります。  尚、補給金撤廃の影響についてのお話でありますが、この前の国会において、木村氏から委員会等で補給金の可及的削除の問題があつたのでありますが、その線に沿いまして我々は補給金の削除について、これらの基礎産業に影響を與えない程度においてこの補給金を削除することについて努力いたしておる次第であります。(拍手)     —————————————
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小川久義君。    〔小川久義君登壇拍手〕    〔「議長、定足数がないぞ」「定足数を調べろ」「降壇々々」「與党はいないぞ」「やれやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今出席を促しております。    〔「降壇々々」「遠慮するな」「定足数を調べろ」「延会々々」「與党はいないじやないか」「議員の出席を議長に要求し給え」「定足数がなくても議事進行するか、議長」「降壇降壇」「延会々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕    〔議長は、小川久義君を降壇せしめた〕
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大蔵大臣演説に対する質疑はまだ残つておりまするが、本日はこの程度において延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。(「議長うまいぞ」と呼ぶ者あり)次会は明後二十一日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知申上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、日程第二 国務大臣演説に関する件(第九日)