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1949-11-18 第6回国会 参議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十八日(金曜日)    午前十時三十七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十三号   昭和二十四年十一月十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第八日)  第二 外国為替管理委員会委員の任命に関する件  第三 選挙法改正に関する調査に関する件(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。山内卓郎君より病気のため会期中請暇の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————    〔佐々木良作発言許可を求む〕
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 佐々木君、何ですか。
  6. 佐々木良作

    佐々木良作君 一昨十六日のこの本会議場における総理発言について、議事進行発言をしたいと思いますが、お許しを願いたいと思います。
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) よろしうございます。佐々木良作君。    〔佐々木良作登壇拍手
  8. 佐々木良作

    佐々木良作君 一昨十六日、本議場におきまして星野芳樹君の質問に対する総理答弁中、速記録によりましてこれを調べますと、次のような文句が入つております。最初を省略いたしますが、軍備云々のことが述べられて、そうして「日本が再び軍備を持つて世界の平和を脅かすというようなことは断じていたさない」という発言をされた。続いて、「この趣旨が、国民趣旨、憲法の趣旨が徹底してこそ国民の危險が除去されるのであつて」、ここまでは私はいいと思うのです。それから次にあつて、「軍備を持つがいいというような、苟くも片言隻語と雖も、これは誤解を與え易いものですから、かくのごとき問題は」、次からが問題なんで、「議会において、殊に参議院等において軽々しく軍備というような問題、或いは戰争というような問題を議論せられるということは、私は国家のため甚だ遺憾に考えるのであります。」これが今の問題の総理答弁であります。これは速記録にそのまま載つかつておるものであります。これにつきまして直ちに星野芳樹君から又質問したわけでありますけれども、そのあとの総理答弁は、私はまあそういうつもりで言つたのじやないということが言われておるだけであります。併しながら私ここで申上げたいことは、少くとも速記録ちやんとこういうふうに、ともかくも記録の表面から見ますると、議会、殊の参議院におきましてはです、参議院等におきましては、軍備というような問題や、戰争というような問題を言つて呉れちやいかんと、ここにまあ総理は「軽々しく」という言葉を使われております。併しながら、軽々しかつたとか重々しかつたということは主観の相違で、総理自身は軽々しいと考えられたかも知れませんが、むしろ本会議場で、私共はこういう問題を国民の代表として誰も軽々しく言う者はないと思います。それよりも、総理がこういうようなことを言うことの方が余程軽々しいのであつて、その点を余程十分に気を付けて貰わなければいかんと思う。若し総理がここに言われた……ともかくも、つもりはどうであつたにしろ、この記録に現われたこのままで見られるような内容で総理がおられるとするならば、今後参議院におきましては軍備の問題或いは講和の問題というようなことを述べちやいかんということに、結果的になつて来ざるを得ぬと思います。そういうことになつて来ますと、これは丁度今国際的な問題であり、同時に講和会議を控えて、国民自身が非常に必要しており、同時に議員諸君中心もここにあつて、どの質問を見ましても、この講和の問題、外交の問題が入つて来るような重要な段階に処して、今後そういう総理のお考えでありますならば、この参議院の、議会運営上これは重大なことであると思います。従いまして、若し総理が果してこのような考えそのままを持つておられるとするならば、今申上げましたように、本会議におきましても、委員会におきましても、軍備とか或いは講和とかという問題は十分述べることができない、或いは参議院では述べることができないという結論になつて来ると思います。こういうふうでありますと、質問もできなければ意見を述べることもできないのでありますから、今度の参議院運営上極めて重要な問題を持つことと思うのであります。私はこの質問に特に時間を借りましたのは、この重大な問題に対しまして、果して総理がそういう考えを持つておるかどうか。持つておるとするならば、議長は相当なお考えがあつて議長自身から何らかの方法によつて今後の参議院議事運営を何とか打開を図つて行き、或いは総理に対して、或いは政府に対して言うべきことがあるんじやなかろうか。こういうふうに考えるわけであります。従いまして私は議事運営上、一昨日の本会議において述べられた総理言葉がこのまま解釈されるようであるならば、今後参議院運営上非常に重大な影響を及ぼすと、こういうふうに考えますから、議長におきまして総理のこの真意を確かめて貰うとか、或いはその他適当な措置によつて今後参議院運営が、少くともこの国民中心事であるところの外交問題、講和問題に対しても、本格的な討論ができるような措置をお願いしなければならない。こう思うわけであります。こういう意味におきまして、この問題につきまして議長総理真意を確かめるとか、今後の問題について何らかの措置をとつて頂きたいということをお願いするわけであります。(拍手
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今佐々木君の議事進行発言に関しまして、内閣総理大臣より発言を求められました。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手〕    〔「気を付けて言えよ」「脱線するな」と呼ぶ者あり〕
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私の申すことは(「お答えいたそうじやない」「默つて聽け」と呼ぶ者あり)国会において、或いは参議院において、講和会議若しくは軍備の問題に関する議論を阻止したわけではないのであります。しばしば私がここで申す通り講和会議その他の問題についての御議論は自由である。ただ問題が重大でありますから、愼重にお考えを願いたいと申したわけであります。なぜそう申すかと申すと、これは始終尋ねられることでありまするが、日本軍備をどうする、これは外国人から、或いは外国政府と申すか、関係の人から始終尋ねられるのでありますが、(「小学校の先生みたいなことを言うな」と呼ぶ者あり)諸君国におきましては、日本が再び軍備を持つのじやないか、或いは又日本の従来の軍備と申すか、海陸軍将校その他が地下部隊になつて、そうして在存しているのではないか、或いは又外国に、例えば中共或いは国民政府等の軍隊に入つて、そうして恰かもドイツが第一次戰争後におきまして、ソヴイエトに飛行機隊とか、飛行機将校とか、或いは飛行機の研究をするためにドイツ将校を送り込んであつたというようなことは、これは事実であるかどうか知りませんが、そういう疑いが当時あつたものでありますから、日本に対しても同じような疑いを持つて日本としては中国に相当の元の陸海軍将校を送り込んで行くのぢやないかというような疑いがありますので、こういう疑いがないようにするためには、軍備に対して、或いは又講和條約等については、愼重にお考えを願いたいと思うわけでありまして、(「言わなくても分かつておる」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)決して何と申しますか、論議を希望しないわけではない。論議は御自由であるということはしばしば申しておるのであります。この趣旨で御了承を願います。(拍手、「答弁にならんじやないか」と呼ぶ者あり)      ——————————
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。去る十五日の大蔵大臣演説に対してこれより順次質疑を許します。森下政一君。    〔森下政一登壇拍手
  12. 森下政一

    森下政一君 二十四年度補正予算並びに二十五年度予算の概要につき、過般大蔵大臣説明演説を伺いました。二、三質疑をいたしたいと存じます。  吉田総理はこの施政方針演説において、我が国経済は安定したと申されました。大蔵大臣我が国経済は漸く安定の軌道乘つたのであるが、誠に慶賀に堪えぬと申したのであります。ここにこの両者の財政経済に対する認識の相違を見出すのでありまするが、我が国経済がすでに安定したと断言するのはもとより無謀であり、我が国経済が漸く安定の軌道乘つて、而も慶賀に堪えぬというのは、俄かに私は同意いたしかねるのであります。  二十四年度予算経済九原則の要請に応えたもので、一般、特別両会計を通じ総合均衡主義を徹底させたこと、租税を重課して歳出はこれを中心とする経済收入で賄うこと、公債は積極的に償還すること、企業合理化し貿易の振興を図ること、インフレを抑制してデイスインフレを目途として進むこと、かような特質を持つて消費を節約し、勤労強化することを企図した、いわゆる耐乏予算でありました。事実この予算実施によりまして、我が国経済は大転換をしたと思うのであります。  飜つて予算実施以来七ケ月有余に亘る経過を辿つて見ますると、財政面からの通貨の放出が抑制され、復金融資が停止されて、却つて貸出回收にすり替えられて、戰後増勢を辿つて参りました日銀券が一先ず落ち着きを示して、更に為替レートの設定は企業合理化に圧力を加え、企業自立態勢の確立に追い立てられたのであります。併しながら予算編成当時予想されなかつた多くの情勢変化のため、予算編成基礎條件が崩れて参つておると思う。世界的な経済不況物価の低落、ポンドの切下げ、これらの影響を受けて貿易不振、滯貨の増大、金詰り深刻化有効需要の低下による過剩生産の増大、顯著なるデフレ傾向国民所得の減少というがごとき諸情勢が現われて、何一つ売れ行きの増加するものはなく、各方面減産傾向に拘わらず滯貨は増大し、失業者は次第に多きを加え、経済不安、社会不安に恐れておるのが今日の姿であります。二十四年度予算を突き付けられて、その要請に余儀なく重い税金と勤労強化と首切りの脅威にさいなまれて、耐乏生活を忍びつつ、経済不安、社会不安におののいておるのが国民の姿であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その姿を捉えて経済の安定は漸く軌道乘つた、誠に慶賀に堪えないという大蔵大臣のお言葉は、俄かに承服し難いのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)通貨の増発も物価値上りも一応ストツプしたではないか。或いはこう言われるかも知れませんが、それは外部的な圧力でインフレが抑えられておることを示すものであつて我が国経済それ自体がすでに健全化されたことを示すものでは断じてない。現に今回の補正予算において、食管特別会計のインヴエントリー・フアイナンスを政府原案に反して一般会計からの繰入れによつて賄うように要請されたこと、来年度国債償還政府原案二百三十億円が七百二十一億円となつて、そのうち五百億円が租税負担することを要請された。これは共にインフレ再燃の危險性を防ぐためと言われておるのでありまして、我が国経済情勢が未だ健全化されていないことを示しておる証左であります。  二十四年度予算編成基礎條件が崩れて情勢変化が生じたのでありまするから、二十四年度予算に応ずる諸政策、殊に財政経済政策は、この際再検討すべきであると考えるのであります。為替レートを変えないという声明だけでは貿易は振興しません。企業合理化の掛声をかけて労働者の首を切つておるだけでは国際競争場裡に立つて行くことはできないのであります。大蔵大臣は二十四年度予算編成に当つて、予定された基礎條件がその後の情勢変化で今日崩壞しているということをお認めになるか。若し認めるとするならば、二十四年度予算に対応する財政経済政策の再検討が必要であると考えるが、御所見はどうであるか。補正予算並びに来年度予算に対応する財政経済政策は、二十四年度のそれに比してどこが如何ように変るのであるか。先ずこれを質したいと思うのであります。  減税は現内閣のかねてよりの公約であります。先は来朝されたシヤウプ使節団の努力によつて我が国税制改革に対する幾多の勧告報告書となつて公表されました。政府はこれを総合的に取入れて画期的な改革を断行せんとするもののごとくでありますが、ここに注意を要することは、シヤウプ勧告の目標は租税負担軽減ではなくて、税制合理化にあるということであります。即ち税制改革重点は、租税軽減よりも租税合理化に置かれておる。政府減税を大きく吹聽して国民負担軽減を説くことに極めて熱心であります。而もこれが直ちに国民大衆家計に潤うものであるかのような印象を與えておるのであります。併しながら私はここに奇異に堪えないと考えますのは、負担軽減を口にすり限りは、ひとり国財政のみならず、地方財政即ち都道府県市町村財政をも、総括的、総合的な見地に立つて財政の全貌を示し、果して国民負担軽減されるかどうかを明らかにすべきであると思うのでありまするが、過般の演説において大蔵大臣は遂に一言も地方財政に触れることはなかつたのであります。税制改革重点負担軽減よりは合理化に置かれた今回のシヤウプ勧告の場合においては、一部減税されるところがあるといたしましても、それは單にただ負担置き場所を変えて、甲の方から乙の方に移したに過ぎない場合もあれば、或いは又従来府県が賦課していたものを今度は市町村が課徴するところもあり、国税軽減されても地方税は却つて増徴される、こういう場合もあり得る。従つて国税の一部軽減を捉えて直ちに負担が軽くなり国民家計が豊かになるような印象を與えるのは、確かに一つの欺瞞であると思うのであります。(拍手国税地方税のそれぞれ賦課徴收主体は異なつておりますが、搾られる国民の財布は同じ一つの財布であります。従つて国民が一番知りたいと思うておりますことは、国も府県も市町村も総括して、税制改革の結果、果して国民負担軽減され、真に国民個々家計が窮乏を打開されて潤うのかどうか。その点であります。シヤウプ勧告によれば、地方自治の再建、整備、強化、及びこれを基礎付ける地方財政自立独立的傾向強化が強く要請されております。国と都道府県市町村との間における事務の配分を明確にし、その所要財源の交錯を全面的に断ち切つて、それぞれ分画された税源によつて財政收入を求めるという方針がはつきりと示されており、これがため地方税においては可なり大幅な増税が予想されておるのであります。然るに減税額補正予算において二百億円、来年度予算において九百億円、従つて相当な負担軽減になるというだけでは、未だ国民の知りたいと思うところに答えておらないのであります。恐らく地方税を併せて考えるならば、この減税額は遥かに下廻ることになると思うのであります。これを明らかにすることなくしては、政府減税の公約を果したと言えますまい。私は大蔵大臣が今一度総合的観点に立つて減税がどれ程になるのか、真に国民負担軽減し、国民おのおの家計に潤うのであるか、この点を解明されたいと思うのであります。補正予算では減税額二百億二百万円となつております。これに対する財源の主なるものは、価格調整費の節減による不用額二百三十億円、前年度剩余金二百六億円、租税自然増收二百十六億円であります。七月上旬のガス用炭安定帶補給金の廃止から始まつて鉄鋼用炭コークス用炭、銅、ソーダ安定帶補給金及び油脂、ゴムに対する輸入補給金の廃止又は削減が行われ、本年十二月を以て廃止する漁網用資材に対する輸入補給金の全廃、春肥からの肥料四割値上による補給金の一部削減等によつて、当初政府は三百四十七億円の価格調整費削減を予定しておりましたが、輸入食糧が当初の予想に反して増加いたしましたために、同時に又鉄鋼、肥料の補給金削減期が先にずらされた関係によつて価格調整費は二百三十億円だけ削減されることになつたようでありますが、この価格調整費の節約は当然物価に撥ね返つて来るものでありまして、現にマル公の引上を惹起しておるのであります。ガス料金の七割八分、ソーダの四割、鋼材の三割五分の引上がすでに今日行われております。更に今度は石鹸、ゴム製品値上等予想されて、この外に米の消費者価格が一割一分、鉄道貨物運賃八割、海上運賃九割三分が引上げられる。そこでこうした価格調整費の節減による物価騰貴は、当然国民の、殊に勤労生活者生計費影響を與えるのであります。経済安定本部調査課は、シヤウプ勧告による税制改革補給金削減勤労者の世帶に及ぼす影響調査して、シヤウプ勧告補給金削減家計への影響を発表しておりますが、これによると家計負担減税を以てしても毎月増加することになつております。尤もこの調査は、価格調整費削減見込を、当初政府の原案とされた三百五十億を予定しておる。そこで今回の補正予算に比して百二十億円多いが、一方、減税額において、これ又政府当初の見込である二百五十七億円を見込んでおりますから、補正予算の示すよりも減税額も多く考えております。而も主食消費者価格値上り貨物運賃海上運賃値上り等は計算に含まれておらないのでありますから、これらをも含めて計算するならば、蔵相が言うがごとく、減税が果してよく価格調整費削減による物価騰貴運賃引上等による今後の生計費膨脹を埋め得るやは頗る疑わしい。恐らく減税を以てしても生計費の膨脹は相殺されないと見るのが先ず穏当であることは、社会党ではなく、政府自体調査がよくこれを裏書しておるのであります。  そこで私は大蔵大臣質問したい。補正予算に現われた減税家計を潤おすものではないと思うが、御所見如何減税財源として税の自然増收を充てるとすれば、これは国民を納得せしめるのはむずかしい。補正予算では丁度減税額を少しく上廻る自然増收二百十億円が歳入として計上されておる。併しながら自然増收は今日すでに全額が收納済のものではなく、年度末までを見通しての予想であると思われるのであります。従つて自然増收をこれだけの額に上らせるためには、年度末に近付くに連れて徴税旋風を煽り立てて、徴税が強行されるであろうことは、これ又予想に難くないところで、その対象となるものは多くは法人税となつておりますが、勤労者源泉所得税の含まれておることは申すまでもありません。これでは、右手で徴税を強行し、左手で拂戻しをするようなもので、これが減税であり、負担軽減であると申されましても到底国民は承服しないのであります。誠に国民を愚弄する一つのからくりである。こう申しても過言でないと思うのであります。かくても尚蔵相は減税家計を潤おすものであると申されるのであるか。お伺いしたいと思います。  二十四年度予算実施に伴う経済大転換以来、企業合理化は強く要請されて参りました。戰時戰後を通じて技術、経営の進歩改良を全く怠つた我が国企業が、これを契機として大いに機械設備の改良を企て、刷新を図つて、その水準の向上に努め、生産原価を低め、品質を改善し、物価国際水準を目標として訂正し、海外の競争に堪え得るようにすることが、誠に望ましい企業合理化であると思います。ところが、そのためには企業合理化に充当すべき資金の裏打ちが必要であつて、これに事を欠かないだけの財政経済施行策政府において用意されておらないならば、誠にその目的を達成することはできないことになるのであります。敗戰によつて極度に弱体化しました我が国経済力では、こういつた合理化に充当するだけの資本に欠けておる。この資本の欠如が一つの大きな隘路になつておりまするが、この隘路を打開するものとして、政府は本年度当初予算説明に声を大にして対日援助見返資金を挙げて、経済の安定、経済の復興に最も有効適切に運用することを言明したのであります。今年におきましては又同様のことを仰せになつておる。今回の補正予算説明に際しても同じようなことをおつしやつておる。ところが曾て声明された実績が上つたか。今日までのところ、当初の政府声明に反して、総額一千四百億円のうち、すでに設備方面に投下されましたものは、鉄道通信関係に予定されておる二百七十億円のうちの百八十三億円と、民間では飯野海運外一件の三億七千万円に過ぎないのであつて長期資金供給に随時その機能を発揮し、経済安定に果す役割は極めて大きいとされた期待は全く外れまして、企業者側におきまして失望の声が随分高いのであります。一方、市中銀行設備融資は、経済界の前途不安のため長期貸出には極めて消極的である。設備資金供給不足のために、積極的な、本格的な合理化は、やろうとしても実行できないというのが今日の有様である。今回補正予算並びに来年度予算の概要の説明に当りまして、大蔵大臣は、本格的企業合理化要請に伴う長期金融に言及しまして、特に対日援助見返資金の有効にして速かなる運用に努めると言われました。ところが先程申しましたように、この声明は本年度当初予算説明の際に拜聽した事柄でありまして、昨年度大蔵大臣はかように述べております。「米国からの援助は、極めて曖昧な姿で輸出入物資に対する実質上の価格差補給金などに漫然使用されておつたのでありますが、今後はこれを内外に明確にし、経済再建に必要なる方面に対する長期資金供給国債等の償還に活用して、市中金融の緩和に資したいと存じます。我が国民経済自立のために、尚暫らく米国からの援助を必要とする現在、今回の対日援助資金に関するこの措置は、援助趣旨を最大限に実現するがための最も時宜に適するものと、かように信ずるのであります。」今回の補正予算説明において、又しても繰返してこれと相似たことを申されておるのであります。運用の実績は先に申しましたごとく全然期待外れとなつて、失望の声が高いのであるから、繰返し同じことを拜聽いたしましても、御言明に信頼性が持てないのであります。故に私は念を入れて大蔵大臣に質したい。今日までこの資金が何故遅々として活用されなかつたのか。これを阻んだのは何であつたのか。将来如何にしてあなたの言われる速かにして有効なる運用を期し得られるのであるか。一歩進んで御説明願いたいと思うのであります。  適切な金融政策の裏付けがなく企業合理化要請されて、勢い合理化は残念ながら最も好ましからざる方向にその重点が移されたのであります。即ち労働人員の整理、労働強化による労働搾取、これであります。予算の縮小によつて窮地陷つた企業為替レート設定により苦境に立たされた輸出産業金詰りと売行不振に挾撃を受けました中小企業におきましては、一齊に人員整理が断行され、その他の産業では、人員整理よりもむしろ増産によつて單価を切下げて、競争上有利の地位に立ちまして、当座を切拔けようとする努力がなされた。これが労働強化となつて現われて参りました。その結果として、減産どころか生産が却つて増加したのでありますが、かような当面を糊塗する安易な方策が、企業経営を健全化せんとする合理化の重大な要請に応えるものでないということは申すまでもないのであります。  更に注目しなければならないことは、企業合理化に対応する適切な財政経済の施策のない政府の下で、合理化旋風にさいなまれて最も深刻な打撃を蒙むりつつあるものは中小企業であることである。我が国経済では中小企業占むる比重が著しく大きい。従つてこの特異な構造を無視し、中小企業の崩壞を傍観して、経済の安定は期することはできないと思うのであります。中小企業調査に手数がかかり、実体が把握しにくい。そこで採算に合わない、従来取引がなかつたというふうな理由によつて金融機関から敬遠されて、金詰りは大企業に比較いたしまして、ひとしお深刻であります。従つて今日相次いで続々と倒産を促しております。従つて今日まで行われました企業合理化は、人員整理労働強化中小企業の崩壞という最も好ましからざる形において、労働者中小企業の犠牲において行われて参つておるのであります。これは全く今年度の超均衡予算実施に当つて、これと並行すべき適切な金融経済政策を欠いたこと、並びに情勢変化に即応する施策が貧困であつた結果であります。けだし無策の下において強い者が弱い者を倒して行くというのは理の当然であります。開店休業状態にある国民金融公庫に対して、本年度五億円、来年度からは当初三十億円を予定しながら漸く十二億円を出資いたしまするが、これが果して広く中小企業の要望に応えることができるでありましようか。大蔵大臣が言う不動産金融機関の自主的設置、誠に耳への響きは快適でありますが、倒れて行く中小企業を葬る空念仏に終ることなくんば幸いであります。企業合理化がかような状態であり、中小企業が非常な影響を受けておりますが、所管大臣はこれに対して如何に対処せんとしておられるか。  政府は可なりデフレに対して大胆のように思いますが、今後十五ケ月に亙つて一貫して既往の方針を進めようとしております。為替レートを堅持するという企業合理化への絶対的要請は、この上更に多々ますます失業者を街に氾濫せしめるに至るであろうと思うのであります。そこで更にこれに対応する政策といたしまして、私は社会保障制度の完全整備が絶対不可欠だと、かように思うのであります。設備更新によるコストの切下げが進まない。そうしてすでに生活水準の低い勤労者の労賃をこれ以上低下せしめるということは限度があつてできない。勢いの赴くところ必ず労働大員の整理が強行される。実際人員整理を行いながら、その犠牲者の生活を保障する措置が講じられないならば、労働不安、社会不安が嵩じて、殆んど收拾することのできない情勢に導かれることを恐れるのであります。政府は、補正予算による失業者並びに労働者の新規雇用量の増加及び失業者吸收計画を発表いたしまして、本年中に百二三十万人を吸收し、失業問題は一応これで解決したと言われておるようでありますが、これは極めて安易な机上の計算に過ぎない。一体政府の失業発生見込数は、いつそれが発生累積するのであるか。対策の吸收計画はいつどれだけそれを吸收することができるのであるか。時の観念を欠除しておる。更に又政府の計画の誠に遺憾であることは、質の考慮、人に対する観念の欠除していることであります。ただ公共事業への吸收率を引上げても、強制労働配置を行われない限り、それはどこまでも單なる数字上の計画であります。地域的、質的考慮をめぐらすと共に、人を扱う具体性が計画に現われなければならない。もとより失業対策を私は不必要とは言わぬが失業見込数と失業吸收可能数の辻褄を合せただけでは満足ができぬというのであります。  私がここに言う社会保障制度は、社会保障の制度がもつと系統的に整えられ、一応失業者の最低生活が保障され、失業者をがつちり受け止める態勢の確立を言うのでありまして、憲法第二十五條による生活の保障に関する国民の権利としての社会保障制度を意味しておるのであります。(拍手)これなくして積極的な企業合理化は行い難いのでありまして、その整備は、経済の安定、経済自立経済の復興を念願する我が国焦眉の急務であると思いまするが、これに対しまして政府の御所見は如何でありますか。  最後に私は一言、薪炭需給調節特別会計への一般会計よりの繰入五十四億七千万円について質したい。これは今回の補正予算歳出の中で相当大きな額を占める一項目でありますが、放漫なる政府の薪炭行政から端なくも赤字問題が暴露したため、遂に昭和十五年八月以来十年に亙るその幕を閉じるに当つて、その赤字補填のために繰入れられる額である、こういう噂を聞きまするが、果してそうでありましようか。真相が承わりたい。政府は、この春の薪炭の滯貨が直接の原因となつて、買上資金の枯渇から窮地に陷つて、去る七月三十日から買上停止を行い清算準備に入つたが、今日尚政府すらこの特別会計の実体を把握しておらぬ実情で、目下調査中という始末のようにも噂されておりますが、若しそうであるとするならば、まだ清算の終つておらないものに、何を根拠としてこの多額の金額を国民から徴收した租税收入を以て補填せんとするのであるか。巷間伝うるところによれば、山村の零細なる薪炭生産者に対しては、この春四月以前から政府が買上げました約二十億を越すところの買上代金を未拂のままに放任し、一方卸売業者からの、売掛代金の回收は、これ又極めて遅々として進んでいない。こういうわけで、この点にも国民の疑惑を買うておるようでありますが、これらの点に関して政府は率直にその真相を表明されたい。  以上の点につきまして日本社会党を代表いたしまして御質問申上げます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇
  13. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。  御質問の第一点、政府財政経済政策は失敗に終つたではないか、今年四月頃より世界の情勢、国内情勢が変つた、即ち基礎條件変化があつたから、財政経済政策を再検討するの要があるのではないかという御質問でございまするが、結論から申上げますと、財政決済政策を再検討する気持はございません。私は、今年三月第五国会に当りまして申上げたあの政策を今後も実行して行かんとしておるものであります。而もこの財政経済政策は予期以上の好成績を收めつつあることを私は自負いたしておるのであります。その後ポンドの引下、輸出の不振、こういうことがありました。又国内では滯貨が殖えて来たというふうなことがございまするが、これはインフレーシヨンを止めてデイスインフレに移る経過的の現象でございまして、初めから予期していることでございます。而も又こういうことは早晩解決せられまして、本当の自立経済が近いうちにできることを確信しております。(拍手)  次に税の問題でございまするが、シヤウプ博士の税制に対する勧告案は、お話の通りに先ず合理化、而して減税ということになつております。この基本原則によりまして、本年度補正予算におきましても減税をやる、そうして本格的の改正は昭和二十五年度からやつて行きたいと思うのであります。で、果して国民租税軽減されるかどうかという御質問でありまするが、中央地方を通じまして、シヤウプ博士の勧告通り相当の減税になります。国におきましては今年度二百億円余の減税であります。来年度は七百億円、而も今度の減税を加えますと、国税において九百億円程度の減税になると思います。(「大した減税だ」と呼ぶ者あり)そうして又地方におきましては、シヤウプ博士は税收入を三百億円の寄附金を入れて千九百億円と見込んでおられます。そういたしますると、本年度租税收入は千五百億円でございまするから、税としては寄附金の三百億円を加えて四百億円の増税になるわけであります。こういたしますると差引き五百億円の減税になるのであります。合理化の上に減税でございます。家計は潤うかどうかという問題でありまするが、減税をいたしまするから潤います。こと数字に亘りまするが、これで一—三月の間に本年の補正予算の結果はどのくらいになるかと申上げますと、年收五万円の独身者であつて実質賃金は〇・七一%上昇いたします。十万円の年收のある夫婦者であつたならば二・三六%上昇いたします。十五万円の夫婦並びに子供二人のものであれば三・九三%の上昇になります。勿論これは各種の減税と、片一方では米価の一一%余りの値上り、電気料、新聞代、ゴム製品或いは板ガラス、各種の今後上つて来まする物価の上りを加味して、こういう計算が出るのでございます。(「嘘をつけ」と呼ぶ者あり)又後から必要があれば資料をお出ししてもよろしうございます。御検討を願いたいと思います。(拍手)  次に、それでは一月から三月まではそうだが、来年の四月からはどうなるかという問題になりまするが、シヤウプ案をそのままやつて参りますると、所得税におきまして勤労階級の独身者が余り減税になりぬ関係と、そうして地方税で住民税或いは不動産課税が殖えます関係上、シヤウプ案の通りで行きますと独身者の低賃金の者については実質賃金の引上げになりませんが、概ね先程申上げましたようにシヤウプ案で行つて家計は潤うのであります。それは国の歳出、地方の歳出が非常に減つて来るからであります。国民家計が潤うことは国の歳出が減れば当然のことであります。(「了解」と呼ぶ者あり)而してそれじやシヤウプ案よりも安くなるかという問題でありますが、これは我々としてはできるだけ歳出を削るのは、国は勿論のこと、地方におきましても、できるだけ歳出を減らして行つて減税は自治体の方で図つて頂きたいと、大蔵大臣は冀つておる次第であります。  次に見返資金の問題でございますが、お話の通りに十分予期通りには動いておりません。動いていない原因はどうかというお話でありますが、これはまだ金利を決まりません。又運用計画につきまして関係方面との折衝にも長くかかりました。そうして又直接投資のいわゆる私企業に対しまする融資の申請が非常に遅々として出て来なかつた。なぜ出て来ないかと申しますと、見返資金運用する場合には還債計画も出さなければならない。然るに見返資金を借りようとする会社は復金その他からも借りております。どういうふうにして復金の金を返そうかということを先ず決めなければならぬ。それから借りた金をどうして返すか、こういう関係で申請も遅れて来ております。又貸すにいたしましても相当の調査をしなければいけません。銀行が普通に一億円、二億円を貸すにいたしましても、二、三ケ月はかかる。あの放漫な貸出をしておつたと言われる復興金融金庫から金を出しますのにも二、三ケ月はかかつてつたのであります。殊にこういう金は余程借手を精査しなければならないので遅れておりますが、国への、いわゆる特別会計への貸出等は予定通りつております。而して今見返資金に入つて来た統計は八百億円余り、そして二百億円ばかりを出しておる。そうして復金債の償還に充てております。復金債の償還に充てられない余つた金が六百億円ばかりございまするが、これは遊ばしてはいけませんので、食糧証券を買上げたり、或いは日本銀行へ預け入れて、そうしてこれをとにかく市中銀行が使うとか、日本銀行が貸出の財源にするとか、とにかく遊ばして置くことはやめております。将来の見通しといたしましては、どうしてもこれを財政演説で申上げましたように、速から有効に使わなければならないので、関係方面と折衝いたしておりますが、これは今後はどんどん出て来ると思います。私はこの年度内に、二百億或いは三百億ぐらいの貸出が年度内、来年の三月までにはあるということを期待する十分なる自信があるのであります。もう暫らくお待ち願いたいと思います。  次に産業合理化、特に中小企業対策はどうかという問題でありますが、先程申上げましたようにデイスインフレの線に変る場合にはいろんな摩擦がございます。併し我が国産業状態から申上げましても、どうしても中小企業に特に意を用いなければならぬことは当然でありますので、興銀或いは農林中金、商工中金の増資をし、債券の発行を認めて、これに十分な金を出すように計画をいたしておるのであります。大企業を助けて中小企業に酷に当つているというお話でありますが、我が国中小企業は大企業と密接な関係がありますので、大企業に融資することは間接に中小企業を助ける途でもあるのであります。(「反対だ」と呼ぶ者あり)その辺は適当にできるだけの金を廻すように図つておるのであります。  次に社会保障制度の問題でありますが、社会保障制度はお話の通りに必要な問題であります。而もこれは重大な問題でありますので、政府は特に委員会を設けましてこの制度の拡充強化を研究いたしておる次第であります。  次に最後に、薪炭特別会計への繰入は如何なる理由に基くか。これは八月から事業を停止いたしましたが、今までの買上げ債務の支拂等に要しますので、一般会計から出すことにいたしておるのであります。まだ赤字が出るか出ないかははつきりいたしません。清算中でございます。(「長過ぎるよ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  14. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 企業合理化の問題についてお答えを申上げます。企業合公化は今日におきましては、為替の一本レートであるところの国際価格への鞘寄せ、並びに企業合理化を促進する、或いは容易にするための統制の撤廃、そういつた点をバツク・スクリーンといたしまして、そうして結局企業合理化ということは、操業度を高めるということと同時に、又一方において経営の能率化を図る。こういうことでなければならぬと思うのであります。これを裏返して申しまするならば、原価の構成を一体どういう比率に持つて行くか。或いは又一人り当りの生産高をどうするか、或いは同時に企業内容におけるところの設備或いは技術について改善をどうするか。こういつたような問題を中心といたしまして、この点は中小企業も大企業も一様に同じような線において行わるべきものだと思うのであります。そういう点において実際に企業合理化は私は着々行われて行つておると考えておるのであります。又これに対するところの資金の面でありますが、中小企業に対する問題については、この前、太田議員に御質問に対してお答えを申上げたと存ずるのでありますが、資金対策についてはお答う申上げたのでありますが、同時に又これの受入れ態勢についても我々はいろいろ中小企業庁において御斡旋申上げておるということも、この前申上げた通りであります。又企業合理化に対するところの設備資金につきましては、日銀のマーケツト・オペレーシヨンにおいて、九月度において十八億円、十月度において四十億円の融資が行われております。尚、同時に市中における自己資金の獲得というものも着々行われておりますので、私は企業合理化は要するに国際価格に鞘寄せするということを中心にして着々行われておる。かように存じておるのであります。ただ、この企業合理化をやる場合において、日本の将来の産業構成はどうすべきかという問題の十分検討し、又御相談にあずからなければならぬ、かように心得ております。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇拍手
  15. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 失業対策は極めて重大であると同時に極めて困難なる仕事ではありますけれども、この春の国会で、これは勿論推定でございますが、失業者の出て来る状況についての当時持つてつた資料による推定を申上げました。大体その推定の線は著しく崩れるようなことはなく、大体その方向で今日まで推移して来ていると私共は見ております。只今御質問の今後に出て来る失業の問題の見通しでございますが、これは勿論現在手に入りまする資料の範囲内における推定であるということを予め御了承願いたいと存じます。今年の九月から来年の三月まで、つまり下半期における、失業ではなくして離職者でございます。職を離れるという立場にいる人達がどのくらい予想されるかという問題でありますが、これは一方において現在狹い意味の完全な失業状態にいる人達が五、六十万いるという推定が成立つのでございますが、その外に行政整理によつて御承知のように出て参りました離職者のうち就職を希望しているところの人々は全離職者の大体七〇%であり、労働者のその後の調査によりますると、その七〇%の中の六八%、大体七〇%はすでに就職済なのでございます。従つて、この行政整理関係で、今日及び今日以後尚職業を求めながら得られないという失業の形で残るところの人達は四万人前後と推定いたしております。  次に民間の企業整備はずつと続いておりまするが、七月、八月、九月を山といたしまして、それを頂点として今日においては続いておりまするが、あの当時よりは遥かにカーブは緩やかになつて来ておるということも考えております。そうして、この多くの人達は失業保險を受取つておるわけでございます。勿論その給付期間が過ぎれば、この人達の全部ではございませんが、相当の部分の人達が一応失業保險も受取れず就職もないという失業者の形に変つて来ることは勿論でございます。その人達は大体第三四半期において五万五千人、第四四半期において約十三万人、合計下半期において十八万五千人くらいが予想されます。併しながらこの人達が全部失業者になるというわけでは勿論ございません。一方において国民雇用の上昇は他の面においてあるのでございますから、六ケ月の間にこの人達が就職して行くという人達も相当あるわけでございます。更に進駐軍の労務関係が收縮され、明年三月末までには、この方面から三万人近いところの離職者というものが出て来るのではないかと見ております。その他、統制の撤廃、補給金削減等によりまして、石炭その他の勲から、或いは一般の離職者、引揚者、露天商関係等からも予想されまするが、これらをすべて合計いたしましても、この下半期においてこの面から十万人を超える人達が失業者の形で現われて来るということは大体ない。大体十万人が限界だと見られておるのであります。以上のように、今後の、これは失業者ではございません、下半期における一応の離職者を強いて現在持つておるところの材料から推定いたしますれば、三十五万人前後の人達が予想されるということが現在の推定し得る範囲でございます。その外に御承知のように、さつき申しました今日すでに存在する完全失業者というものもあるということは言うまでもございません。これに対してどういうふうに政府は対策を考えておるかという点でございますが、勿論一挙に一つ政策が行われる故に直ちにその次の日から完全雇用の状態になつて、完全に失業問題が解消されるというような、奇想天外な失業対策がある筈がないのでありまして、飽くまでも政府の全般的な経済政策が滲透して国民雇用が上昇して来て、最終の安定した形で、できるだけ多くのこの人達が吸收されて行き、その中におきましては、失業保險の制度或いは緊急失業対策の制度を以ちまして、段階的に処理して行くという考えが、結局最も手堅い、可能性のあるところの方法だと考えておるのでございまして、二十四年度下半期の補正予算に現われたこの計画の考え方を一応申上げまするというと、大体一般の民需産業、自由業その他すべての産業を通じて、下半期において一方に離職者は出ますけれども、一方において二十七万人程度の雇用というものは、上半期の実績から見ても、又安本その他の計画と十分打合せした点から見ても予想されると考えております。その次に、補正予算に盛られましたところの公共事業関係その他において十三万五千乃至十八万五千人の吸收は十分予定することができます。その内訳は、緊急失業対策法に基きまして、公共事業の失業者吸收率を改正いたし、それからその適用部分と拡げておるのでありまして、その関係からして七万五千、それからもう一つは、補正予算に盛られましたところの一般の公共事業費の増加によつて六万乃至十一万、それからこれも予算の裏付けを持つておるのでございますが、失業対策事業費の増加によりまして雇用が八万人になる。その中のすでに使つている分を除いて六万三千は新たに下半期における増加分になる。その他失業保險五十三万、その内訳は、一般失業保險四十万人、新たに最近実行しようとしておるところの日雇失業保險において十三万人、こういう計算になりまして、総計いたしますというと、九十九万人乃至百四万人、勿論この中には見返資金によるところの雇用力の上昇を含んでおりません。大蔵大臣の只今申上げましたような方針で、下半期において急速に見返資金が撒布されるといたしましたならば、この上に尚十万乃至二十万、或いは最も好成績の場合には三十万というような雇用の上昇が予定されるのでございまして、労働大臣といたしましては、切にその見返資金の急速な充実した撒布をも併せて希つておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  16. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 社会保障制度の問題につきましては、森下議員と全く同感でございまして、憲法が国民に保障する基本的人権を確保し、国民生活の不安を除去して民主主義社会の健全な発展を図るために、是非共必要なものと考えておるわけであります。この制度につきましては、昨年連合軍からの勧告もありましたので、内閣においては御承知の通り社会保障制度審議会を設けまして、本年五月以来各委員の方の非常に御熱心な審議が行われたわけであります。幸いにいたしまして、去る十四日の審議会において、この制度を確立するための基本的な構想だけは決定せられましたので、引続ましてその線に沿つて更に具体的な事項が決定を見るものと期待をいたしておるわけであります。政府といたしましては、その審議の結果を待ちますと共に、右の基本的な構想の趣旨に従いまして、必要な部面より逐次社会保障制度の整備確立に方向に進んで参りまして、国民生活の安定に資したいと考えておるわけであります。さよう御了承願いたいと考えます。
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 田村文吉君。    〔田村文吉君登壇拍手
  18. 田村文吉

    ○田村文吉君 先ず大蔵大臣にお尋ねいたします。  第五国会におきまして、いわゆるドツジ・ラインに沿うて画期的な本年度予ざをお立てになり、インフレ克服を企呼せられまして、幸いに概ねその目的に近付きつつあることに対しましては敬意を表するものでありまするが、当時私共から御警告申上げたような金融の不円滑がますますその度を強め、折角本年三月まで上昇線を辿つて来た生産指数も四月以後は六十七、八%の線に停頓するようになりまして、今後来るべき冬季の電力飢饉に際会いたしまして、生産指数は更に低下、逆転する虞呉があり、一般産業界の危機を招来するのではないかと危惧されておるのであります。生産指数並びに物価指数は停頓しているとは申しながら、それでも昨年に比べますと三割方生産指数は増加しております。物件は少くも二割以上高くなつておるのでありますから、事業運転資金は昨年に比べまして六割以上増加しておる筈でありますのに、日銀の紙幣発行高は、昨年の秋に二千六百億が今年は三千億程度に止まり、昨年末三千五百億であつたのが、大蔵大臣の御理想からすれば、今年は三千六百億程度と承わつているのであります。そこで私は、そこに著しい無理が潜んでおると考えるのであります。余りにインフレを恐れて、ただ金の面からのみ経済を抑え付けられるように見えてならないのであります。物の生産を殖やさないで、ただ国家財政と金融の緊縮だけでインフレを止めようといたしましても、それは一時の即効薬にはなりますが、断じて真の健康体にはなり得ないものと信ずるものであります。即今の金詰りと、やがて来るべき歳末の事業金融に対しまして、どうお考えになつておりまするか。この機会に国民に表明し、納得、安心させて頂きたいのであります。  次に、政府は事ごとに企業合理化を唱えておられます。併し企業合理化とは徒らに人員整理だけを考えておられるのでありますまいか。戰災に痛められた機械を直したり、もつと高能率の設備を採用したりすることも重要な合理化であるのであります。併しそれには金が要ります。ところが、こういう長期の金融がなかなか容易でない。只今もお話がありましたが、建前から言えば、興銀がひとりこれを受持つことになるのでありまするが、これでは甚だしい不便、不自由であります。もつと日銀に市中銀行を経て特に長期金融の途を開くなり、或いは在来の勧業銀行にも引続いて債券の発行を許すなりして、中小企業は勿論、目下成績が惡くても、設備の補修改良によつて復活できるようなものに長期の金融を開くお考えがありませんかどうか。  次に、資産再評価をシヤウプ博士は勧告をしておられます。政府はあらゆる法人、個人に対してこれを強制なさるおつもりか。はた又任意にお任せになるおつもりか。尚、評価益に対して六分の課税と申されるのでありまするが、そういたしますると、減価償却をして尚利益あるものでさえも、再評価財産に対して、初年度において三分の外に、地方税が一分七五厘、合計約五分弱、二年度、三年度においても約三分の課税を受けることになりまして、非常な負担となるのであります。況んや大多数の企業において、減価償却をすれば赤字となるような所では致命的の負担となる虞れがあるのであります。私は再評価益に対する課税は、理論的にその理由を発見するに苦しむのみならず、実際に非常に困難ではないかと思いまするが、大蔵大臣はどうお考えになつておりまするか。  次に農林大臣に対して次の三つのことをお飼いいたします。  第一に、御管理になつておりまする食糧管理特別会計は、今年度は四千六百億にも上るのでありまするが、遅かれ早かれ食糧管理を廃止される時も来るのでありましようが、これを止める時は食糧も大体安定して、従つて自由価格も下向きとなる時であろうと思います。その場合に手持米の処分をいたしますれば、必ずや莫大の損失を生ずることとなろうかと、心ある者は今から心配しているのであります。幸いに婆心として一笑に附さるるようになれば仕合せでありまするが、最近の、只今も御説明のありました薪炭需給調節特別会計におきましてさえ、五十五億の、赤字ではないと仰せになりますが、実際赤字を出した例もあるのでありまするので、單なる取越し苦労ではないと思います。大臣のこれに対する御用意が如何でありまするか。  第二にお伺いいたしますることは、打ち続く二年間の平年作で、幾らか食糧に対して豊かな感じを持つているところへ、食糧の輸入が米国の好意的な援助によりまして年度内に五十万トンの増加となり、明年度は更に三百七十五万トンの輸入が計上されるということを聞いた国民は、さては待望の三合の配給が成るのか、少くとも甘藷を除いた二合七勺となるのか、いずれにせよ、食生活が闇がなくなるものと、希望的意見を持つているのでありまするが、大臣は果してどう考えておられますか、承わりたい。  第三に、食糧の根本問題として、大臣のはつきりした御所信を承わりたいのでありまするが、それは食糧自給自足の方針如何であります。一方の考え方によりまするというと、食糧はできるだけ増産することが望ましいが、人口も殖える一方だから、結局は、いつまでたつても足らない。従つて足りないものはこれを輸入する。これが代物には国内の製造品を輸出すればいい。生なかのアウタルキー式の考え方はよくないというのであります。私はこの考え方には賛成できないのであります。なぜなれば、成る程日本はすでに戰争を放棄したのみならず、今後も他国間の戰争の渦中に入るようなこともありますまい。併しながら世界には未だ冷たい戰争が行われ、いつ、それが熱つ戰争に変らないと保証ができないのであります。従いまして万一さようの場合が起れば、海上の交通も困難となり、食糧の輸入も不可能な場合も当然考えられるのであります。従つて日本国民の死ぬか生きるかの問題となつて、却つてそれがために戰争に捲き込まれる虞れも出て来るのであります。これらの最惡の場合を想定いたしまして、私は少くも平年作の場合において、食糧だけは絶対自給自足のできる方針を立てて置くべきであると思います。殊に現在米国民多大の犠牲の下に援助物資として食糧を貰つている点から考えても、一日も早く自給自足に移るべきであると考えます。幸いに日本は古来瑞穗の国でありまして、決して耕地に事欠かぬのであります。若しそれ、国民の勤勉に加うるに、更に高度の技術を以て、或いは耕地の改良、適肥の採用、機械力の応用等に刻々怠るところなければ、たとえ人口が一億になりましても、数年ならずして食糧の自給自足を完成し得るものと私は考えておるのであります。在来この目的及び方針政府にも国民にもはつきりしなかつたのではないかと思うものであります。政府はよろしく来る昭和二十八年ぐらいまでを目標として、食糧の自給自足を必ず達成する国論を纒むべきではないかと思うのでありまするが、農林大臣の確たるお考えを承わりたいのであります。  次に、通産大臣に対して次の三つの問題についてお尋ねいたします。  その第一は、円為替」ーレトは絶対に変更しないと、総理大臣も通産大臣も幾たびの機会に声明されております。私はこの問題に対して意見もありまするが、ここでは素直に総理声明を信頼するものといたしまして、ただその場合、如何にして我が国の輸出を振興し、国際貸借の均衡をとり、少しずつでも米国民援助に要する負担を減少するかが問題であるのであります。そうでなくても中共地区の荒廃、スターリング地区の輸入管理等で、なかなか輸出の振興は困難であつたところへ、今度のポンド片その他の切下げであります。日本が円レートを飽くまでも支持せんとする限り本問題の解決は頗る困難であります。即ちこれが対策として、いつも言われることは、第一に企業合理化による生産費の切下げ、第二には、いわゆるFOB価格輸出をCIFに変えること、第三には、海外商務員の派遣滯在等であります。然るに第一の合理化の問題でありまするが、今日のように金融圧迫の状態では、設備機械の改良など及びも付かず、せいぜい人員整理失業者国民が養うぐらいが落ちでありまして、実情は運賃が上つたり、電力料が上つたりして、実際コストはむしろ上昇せざるを得ない現況にあるのであります。そこで第二の問題、即ちCIFでありまするが、はつきり言えば、能う限り輸出品は日本の船で輸送させて貰いたい。せめてシンガポールぐらいまでは日本の船を使わせて貰いたいのであります。これは勿論連合国の好意ある許可を得なければならないことでありまするが、これによりまして三千万ドルなり五千万ドルの対外勘定がよくなるのであります。又三万人なり五万人なりの失業者が救われることになるのであります。三度でも五遍でもGHQに懇請されまして、この許可を得られるようにはならないものでありましようか。第三の商務員の海外派遣は、連合国の好意によりまして順調に運んでおるようでありまするが、西ドイツではすでに二千人程の商売人が海外に出ておるや聞いております。この際、これも人員の増加をして早急に実行されるように懇請されてはどうかと考えるのであります。併しポンド地区への輸出は、在来の日本の顧客先でありましたに拘わらず、右申上げましたような実情で、我々の予期する程の成績を收めることは相当困難でありますが、アメリカに対する生糸の輸出は、ここで再検討されてよいのではないでしようか。せめて生糸の五万俵ぐらいを買つて貰えないものでしようかと思います。成る程ナイロンの発達以来、靴下のごときものには生糸は全然その敵にあらずと聞いておりまるが、最返アメリカで生糸とナイロン、生糸と醋酸絹糸との交織で頗る風味のある織物ができるとも聞いております。幸いにこの方面に需要が喚起されれば、生糸の輸出は五万俵ぐらいはわけなく消化するのではないかと存じます。この問題もGHQ援助の下に大いに宣伝隊を派遣いたしまして、「生糸はアメリカへ」の昔に還元することを考えられるのではないでしようか。  通産大臣に対して、第二の問題をお尋ねいたします。大臣の就任以来、綿布が多量に放出されたことは、たとえ、それが輸出用滯貨の処分であつたにせよ、誠に家庭の気持をよくしたことについて大いに敬意を表する次第でありまするが、尚、私の嘱望するところは、生糸を買つて頂く代りに、米国から綿花を十万俵の外に、更に三万俵を内地需要として輸入させて頂き、これに先般協定を得ました羊毛等を合せますなれば、日本国民一人当り五ポンどの配給は可能となるわけであります。五ポンドは戰前の約半額でありまするが、耐乏国民の今日といたしましては、先ず以て満足せねばならぬ数量でありまして、これによつて少くも衣類の闇はなくなります。私は先に農林大臣に食糧の闇をなくして頂いて、今度は通産大臣に衣料の闇をなくして頂くことを心から熱望するものであります。これによりまして人々は如何に安堵し、如何に朗らかになることでありましよう。  通産大臣に対する第三問、これは少少暗い話です。併し是非聞いて頂きたい事柄であります。それは電力に関する問題です。今月の初め政府の指令に基きまして恐らくは全国の配電会社になされたものと思いまするが、それはランプ・カツトは止めろ、工場電力は午後四時から七時までは数種の産業を除いて一切停電又は極端な減配にせよとの指令のようでありました。果せるかな我々の家庭は、数日間ランプ・カツトはされましたが、最近では停電がなくなり、銀座街頭のネオンは初めから停電もなく寒空に煌々と照り輝やいておるに拘わらず、工場の或るものは晝夜連続作業であることもお構いなく、四時から八時まで全く仕事にならない節電を強制されておるのであります。今年の十一月は昨年と同様近年稀なる降雨量があつたために、節電の結果多分に余る水をそのまま下流に放流しておつた実例を私はよく承知いたしております。かくて数億か数十億の日本の富は徒らに空費されたのであります。産業人である我々は実に見るに忍びず、聞くに堪えないものがあることは、少くも産業界出身の通産大臣は御了解できることと思います。併し私はこの一事を取上げてこの事自体を糺明したり、或いは政府が口に産業の興隆、輸出の振興を叫びながら、実は産業が萎靡しようが失業者が出ようが構わないというような考えかどうかということを、ここに議論する時間の余裕は持ちませんが、ただ私の申上げたいことは、現在の電力行政、或いは経営の主体が、一体政府にあるのか、はた玉配電会社にあるのか分らない。これが電力の開発が遅れて、いろいろと経済界に迷惑を掛けたりする根元である。即ち日本経済復興の癌であります。(拍手)電力再編成の問題が終戰以来取上げられておるが、多くはとかく過去に囚われた意見から脱却しておらない。歴代の政府も今日の政府も腰が切れないのであります。私は考えますのに、電力の需要は少くとも十年のうちに倍になる。来る七年間に六百万キロの水力の開発が絶対必要である。これなくしては日本は平和的、文化的に世界に伍する国になり得ないと極言するものであります。そもそも電力事業は、仮にこれを民間企業に移して見ましても、その事業の性質上、政府の管理或いは高度の監督なくしては不可能であります。そうすると結局屋上屋ができたり、二頭三頭の蛇ができ上つて、今日の混乱を繰返すのみであります。そこで、むしろ私は百尺竿頭一歩を進めて、一万キロ以上の電力事業はすべて国家の資本に移し、これが経営方法はTVAに倣えべきものであると年来主張して来たものであります。これが実行も現在の発送電外七社の株式を時価を以て買上げたらいいのでありまして、三百億もあつたら全株式の取得と借入金の肩代りができると思うのであります。  自由党だからすべての企業を民営に移すとか、社会党、共産党だからすべての企業を官業に移すとかいうことは、誠に假見と言わねばならぬのでありまして、要はその時々の情勢を詳細に検討し、その事業の性質及び能率を彼此参酌して決定せられることが、真に国民の幸福と人類普遍の真理に到達するゆえんであります。(拍手)自由を尊ぶアメリカでも、曾ては禁酒法案を実行したこともあります。社会党や共産党が保守反動だと非難する明治三十九年、時の政友会は日本鉄道の国有を断行しておるのであります。アンドレ・モーロアはこんな皮肉を言つております。「社会主義に個人主義を対立させたり、資本主義に共産主義を対立させて考えるごときは、実に恐るべき思想の貧弱を示すものである。殊に現実がかくも常なく変化し、複雑を極めており、歴史の進化が人類社会を一つの系統から他の系統に不断に変化させているこの時にだ」、こう言つておるのであります。要は政治は飽くまでも真に国民の幸福を希う人類愛の政治でなければならぬ。徒らに自由主義とか社会主義とか、或いは中道主義とかに固定した枠から角を出し合つてつては、事物の判断を誤まるのではないかと存ずるものであります。大臣の御所見を承わりまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  19. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。御質問の第一点は、金融が梗塞しておる、如何にしてこれを打開するかという御質問でございます。私は金詰りを否定するものではございません。一部の所には相当な金詰りがございます。併しこの原因を調べてみますと、二通りあろうと思います。即ち金融制度が今の状態にぴつたり合わないということが一つ、二は借方に信用がない。金がないというのではない、金を借りるだけの信用がないということだと思うのであります。金融機関の方といたしましては、差向き金融梗塞の最もびどい所は設備資金長期金融でございます。従いまして今後は興銀を拡充いたしますると同時に、農林中金、商工中金の増資並びに債券発行を図りまして、長期資金の融通に努めたいと思うのであります。勿論見返り資金がこれに出て行くことは当然でありまして、先程来お答えしておりますように、今後速かなる活用を図りたいと存じておるのであります。ただ今迄のような長期金融に対しましては一にも二にも金融機関から借りて設備を賄うという考え方は、最近に至つてつて参りました。我々は先ず第一に、自己資本の拡充を図るべきだという考えを持ちまして、証券金融その他に意を用いている次第でございます。従いまして、要約いたしますると、長期資金につきましては、設備資金につきましては、先ず自己資金の拡充、そうして金融制度の改革、見返り資金から出して行きたい、而して金詰りの他の原因の信用の回復ということは、これは企業者におきましてできるだけ早く合理化をして能率を上げて、そうして立派な品物を沢山作る方向に進んで行くことを希い、政府といたしましてもその方面に施策を講じたいと思うのであります。  尚、不動産金融につきまして、勧業銀行の改組のお話がございましたが、只今のところ政府といたしましては、従来の日本勧業銀行は商業銀行として進ませたい気持で行つております。而して別に不動産金融機関を設けまして、そして御審議願わんといたしております。来年度の五十億円の住宅金融なんかを、これに結び付けたいという気持で進んでおる次第でございます。  次に年末金融対策でございまするが、新聞には大蔵大臣は、これを昨年の三千五百六十億円……昨年の十二月二十九日には三千六百八十億円まで行きましたが、これを昨年通りにしよう、それ以上に殖やさない、いわゆる私が抑えるように新聞には出ておりまするが、これは飛んでもない誤報でございまして、私は只今のところでは、余程緩めて行かなければ去年より越すことなし、去年より非常に低くなるのではないかと心配しておるのであります。従いまして、どちらかと言えば、どんどん年末にかけて政府の支拂を早くし、そうして円滑に年を越させたいという気持でおります。何故昨年より減りそうだかと申しますと、最近租税收入の状況が非常にいいのでございます。今月におきまして大体、私は四百億円程度の租税收入があると、二三ケ月前には計画いたしておつたのでありまするが、今日までに入りました十一月の租税收入は三百六十億くらいになつております。こういたしますと五百億を越えましよう、そうしますと昨年の租税收入の倍以上になる、引上げる金は多いのでございます。而も又昨年は十一月当時は貿易会計におきましても非常に撤布超過でございましたが、今年は貿易会計の方におきましても百五十億くらいの引上げ超過になりましよう。それは滯貨の綿布を売出す関係でございます。で、米の資金が六百億程度は出ますけれども、只今言つたような情勢でございまして、私は金融が梗塞しないように、どしどし要る方面は年内に出して行くという方向で行つておるのであります。決して金を引締めるということは私は考えておりませんので、御了承願いたいと思います。  次に資産再評価の問題でございまするが、これはインフレによりまする名目所得に対しての課税を適正にしよう、こういう考えの下に出発いたしておるのであります。これが課税の根拠如何という御質問でありまするが、やはり従来讓渡所得に対しまして或る程度の課税をしておりましたこと、或いは又預金とか債券とかいう確定利付のものは、インフレによりまして実質的に損をしておる。固定資産を持つておる人が非常に得をした。而も又これを資本に振替えて、行く行くは株主にそのままで渡すというときには、これは担税力があるのではないかという考え方も起りますし、又一切課税をしないということになりますと、評価が過大になり易いのでございます。而してこれに只今のところ六%の課税を見込んでおりまするが、これが納税につきましては、シヤウプ博士の勧告案によらずに、もつと寛大な方法で徴税が便宜に行くように研究をいたしております。而して最後にこの再評価を強制するかどうかという問題でございます。私は強制はしたくないという方向で考えております。併し皆各企業が、今の経済情勢に応じ企業の実情に即して、適当な評価をおやり願いたい、而もその評価には相当の彈力性を持たすつもりで検討をいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇
  20. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 田村さんにお答えいたします。  第一に、食糧特別会計の閉鎖期において、薪炭会計のような赤字が出るようなことがありやしないかということを心配する、政府としてその用意ありや否やという御親切な御質問でありましたが、薪炭特別会計は、先程大蔵大臣がお話になりました通り昭和十五年から今日まで継続いたしております会計でありまして、その間一回の棚卸しもしておらない。その間、内閣が変ること十一回というような総理の状態でありまして、非常な赤字の発生を見まして、誠に政府といたしましては、国民諸君に迷惑をかけては大変であるということから、今鋭意整理に着手いたしておるのでありますが、この食糧特別会計におきましては、赤字が経理の上において現われておるのでありまするが、それは昨年度「いも」の切干を、超過供出を一四%予定いたしておつたのでありまするが、三四%の供出があつたのであります。その結果赤字が出ておるのでありまするが、併しこれは現物をはつきり把握いたしております。現にこれらの切干「いも」澱粉につきましては、科学の研究から非常にこれを質を改良するという道が開かれましたので、この措置によりましてこの赤字を消すことも予想されるのであります。又この食糧特別会計は、ここ数年間は今日の食糧事情から廃止することがどうかと考えるのでありまするが、政府におきましては、十分今御心配下さるような赤字を将来に残すということのないように、鋭意整理をいたしたい。かように考えておるわけであります。  第二、第三の食糧問題についてはまとめてお答えをいたしたいと存ずるのでありますが、今日の食糧事情を考えますときに、アメリカからガリオア物資として食糧を仰いでおる現状と、平和克服をして講和談判を許されまして、独立国として自主的な貿易のできる立場と、おのずからこの食糧事情等についての考え方も変つて来ると思うのであります。今日は予想いたしておりました二百二十万トンの外国の食糧の輸入が、三百十一万トンということに増加をされるという予想の下に食糧を考えて行かなければならぬのでありまして、その結果、「いも」類を外しても二合七勺の配給ができるのではないかということも予想されるのであります。一体日本の食糧が、戰前は二千四百カロリーは日本国民として必要であるということが考えられたのでありますが、戰争後非常に食糧は欠乏いたしまして、漸く千三百カロリーが許され、今日千四百カロリーが許されておるのでありますが、日本の従来の食糧のとり方が、このカロリー、いわゆる質というよりも量ということに重きを置いて来たのであります。併し我々今日は量というよりもむしろ質、カロリーを考え、又外に栄養ということを、蛋白質を考えて、食糧というものを将来見て行かなければならぬと思うのであります。国土が制限され人口が年々増加するこの日本といたしまして、将来の食糧を考えますのに、果して自給自足ができるであろうかということは、余程これは困難な問題であるのであります。併し今お話になりました通り、国際情勢がどういうふうに変化するかということも、これは将来の問題でありまするが、これも予想の中に入れなければならぬと思うのであります。併しその場合におきまして、日本は現在そういう場合を予想いたして食糧を貯蓄するということは、輸入食糧を仰いでおる今日としては許されないのであります。で、日本といたしましては、今日でき得るだけ高度に耕地の利用を高めて行く、いわゆる治山治水、土地改良、或いは品種の改良、科学技術の取入れ、応用等をいたしまして、耕地の耕作の安全性を高めて、そして脱率を高めて行くということを考えなければならぬと思うのであります。この限りなく増加いたします人口に対しましては、自給自足という排他的な考えでなしに、日本のこの労力を利用いたしまして、そうして原料の輸入、或いは原料資材によつて家庭工業、いわゆる農村工業を興しまして、そうして輸出の面を分担して食糧を確保するということも、自給自足の途ではないかと思うのであります。こういう考えから、これは先般三好議員にもお答いたしたのでございますが、自給自足ということよりも、自給度を高めてそうして国民が食糧の上に安心して行けるということに食糧政策を立てて行かなければならぬと、かように考えておるわけであります。尚、今日の食糧におきましても精白度を高める、或いは小麦の製粉能率を下げてそうしてできるだけ質の良いものを食糧として配給する方針をとつておるのでありまするが、食糧には限度がありまして、一日に五合配給すると言えばとても多過ぎる、或いは三合で或いは四合でということを考えさせられますが、先程から申しました量よりも質ということに、今後国民一般が食糧という問題について考えて行かなければならぬのではないか、又さように指導して行かなければならないのであるということを考えておるようなわけであります。    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  21. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 田村さんの御質問にお答え申上げます。第一点の、輸出振興に関連して日本船をできるだけ利用すべきである、これは全く御同感でありまして、この点につきましてはしばしば関係筋との間に折衝を試みております。大体基本的には了承を得ておるのでありますが、御承知のようにオーシヤン・ヴエツセルがもう日本には僅かしかないのでありまして、オーシヤン・スチーマーがない関係で、むしろ我々は早くこれを整備することを迫られておる。そこで戰標船、いわゆる戰時中の標準型の船を今年度において二十九隻約二十万トンを改裝いたしまして、できるだけオーシヤン向けのスチーマーにする、そういうことによつて日本船を利用するという点を促進して行きたい、かように考えておるような次第であります。  その次に商務官と言いますか、できるだけ海外に人を派遣する、この点についても全く御同感でありまして、これについては例のリテイン・システムによつて希望を申し出られた方が百八十名ばかりございます。その百八十名の中で今日まで大体許可を得ました者が二、三十名でありますが、これはヴイザの手続或いはその身元の調査といつたようなことで非常な手間がとれておるのでありまして、その点、甚だ私も遺憾と存じておるのでありますが、これについては絶えず促進いたしておるわけであります。又政府からの商務官と申しますか、貿易事務官というような派遣につきましても、関係筋との間にできるだけ我々の希望が達成せられるよう交渉を続けておるような次第であります。  それから第三の、アメリカへ生糸をできるだけ多く出すことについての御意見も全く同感でありまして、一時アメリカへの生糸の輸出というものは絶望視されたような形でありましたが、最近又生糸に対するアメリカの需要も相当起つて来ておりますので、この機会にできるだけ御説のような方向に進めたいと、かように存じておる次第であります。  第二の質問点の、内地向け棉花の取得の問題でありますが、これは我々も御同感の点もありますので、この点についてもできるだけ折衝を重ねて行きたいと存ずる次第であります。  第三の電力の問題でありますが、御承知のように本年の電力の計画といたしましては、大体水力は過去七年間の平均をとり、又火力は石炭四百六十五万トンを消化するという建前で、大体三百二十五億キロワツト時を予定いたしておつたのであります。これは大体前年度の六%増ということに相成つておるのでありますが、これについては予定通りに出ております。本年は豊水でありました関係で、十月まではその通りに参つたのでありますが、例のサンマー・タイムの切替時におきまして、いわゆるピーク時に非常に電力の需給がアンバランスになつた。こういう問題であります。これにつきましては、先般新聞で発表いたしましたような政策をとりまして、火力は至急補修をいたし、フルにこれを働かすと同時に、貯水池或は調整池の利用を極度に進めて行くという形でやつておるような次第であります。尚恒久対策として電力再編成の問題についてお話があつたのでありますが、これはまあ一つ田村さんの御意見として拜聽いたして置くことにいたして置きたいと思うのであります。ただ政府といたしましては、最近電力審議会を作りまして、この再編成と申しますか、いわゆる集中排除法にからむところの再編成関係について審議会を設けまして、経済界或いは金融界、法律関係の人、大口消費者、小口消費者というようなことで五人の委員をお願いいたしまして、審議会を作つて至急結論を得、又その結論を参考といたしまして、この再編成問題はいつまでもぐずぐずいたして置くべき問題でもないと存じますので、勇敢にこれが決定をいたして行きたい。かように存じておる次第であります。  尚この前私休みました間に松井さんから御質問があつた点に、序にこの機会に回答いたして置きますが、松井道夫議員よりの御質問は、只見川電力の開発の問題であつたと思うのでありますが、御承知のように只見川は例の農業用の問題もあり、或は治山治水、いろいろな方面の複雑いたしております点がございます。大体これが開発によりまして百七十万キロが出ますので、そういたしますと、いわゆるこれを補給用に使いますれば電力が常時化する、こういう重要なる問題であります。但しこの開発につきましては、いろいろな天然資源の問題もあり、又灌漑用の問題もあり、いろいろの重大の問題があります。殊にこれが資金につきましては、大体発電関係だけで一千億円、又これが送電関係で恐らく同様の金額が必要であろうと思うのでありまして、現下の日本財政といたしまして、直ちにこれに着手するということが甚だ困難な事情にあるわけであります。但しこれに対して外資を輸入するという問題もありまして、目下その関係の人が当地を調査しておるということは事実であります。若し幸いにこれによつて外資をこれに導入し得ることができまして急速にこれが開発を見ることができまするならば、日本の電力事情の上に大きな貢献をなし得るものと考えております。(拍手
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、大蔵大臣演説に対し尚質疑の通告がございますが、議事の都合により明日に讓りたいと存じます。御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、外国為替管理委員会委員の任命に関する件。去る十一日内閣総理大臣より昭和二十四年政令第五十三号第三條第二項の規定により外国為替管理委員会委員に大久保太三郎君を任命することについて、本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。    〔起立者多数〕
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本院は外国為替管理委員会委員の任命に同意を與えることに決定いたしました。      ——————————
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第三、選挙法改正に関する調査に関する件。元選挙法改正に関する特別委員長の報告を求めます。柏木庫治君。     —————————————    〔柏木庫治君登壇拍手
  27. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 只今議題となりました選挙法改正に関する特別委員会調査事件の審議の経過並びに結果について御報告いたします。  本委員会は現行の衆議院議員選挙法、参議院議員選挙法、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙法規、並びに教育委員会委員の選挙法規等、複雑多岐に亘る選挙法規を整備して選挙の基本となるべき法規の調査立案を目的とし、第五国会において設置されたものでありまして、第五国会中においてはその調査を終了し得ないため、閉会中の継続調査について本院の承認を得て、選挙法の調査に当つた次第であります。    〔議長退席、副議長著席〕  即ち去る六月十一日から十月二十一日まで委員会を開催すること二十回、小委員会を開催すること九回、委員打合会一回、委員長及び理事打合会を五回開き、又各委員会におきましても殆んど全員出席するという熱意を以て審議に当つたのであります。  審議に当りましては、先ず内外各国の選挙制度の資料の蒐集に努め、これを参考としつつ現行各種の選挙制度について検討を加えたのでありますが、その結果として、選挙の基本法の立案に当つては、單にこの程度の資料に止まらず、広く欧米各国の選挙制度にして而も最近における資料を集め、これを参考とし、以て我が国における民主主義政治の基盤となるべき恒久性ある選挙制度を確立する必要があるという結論に到達いたしまして、かかる見地から選挙の基本法規の立案については、一、二年の日子を費しても愼重に立案に当るべきであるということになつたのであります。従つて選挙の基本法規の立案に專念いたしますときは、勢い明年に控えた参議院議員の選挙に支障を来たす結果となるに鑑みまして、選挙の基本法規の根本方針を明確にし、これに則り、先ず参議院議員選挙法の改正案の立案に当るべきであるということになり、これを当面の目的とすることに定め、併せて選挙の根本方針について審議した結果、選挙法改正の基本方針としてその方針を次のように決定したのであります。即ち  第一は、各種の選挙に通ずる恒久性ある総合統一的法律を定める。  第二は、選挙公営を拡張し、その徹底を図る。  第三は、選挙の自由を期し、その運動を明朗闊達ならしめる。  第四は、選挙運動の公明を図るため、選挙費用の制限その他適当な規律を設ける。  第五は、国民が選挙法を容易に理解するように法文を簡明にする。  第六は参議院の全国区制は規行通りとすることであります。  委員会参議院議員選挙法の改正案立案のために、現行法規の細目に入つて検討を加え、又東北、近畿、九州の各地方において選挙に関する実情を調査しましたが、更に小委員会を設置して審議を加える必要を認め、これを十六名の委員からなる小委員会に付託したのであります。以来小委員会は先に決定されました選挙法の基本方針に基き、改正事項の審議をいたしました結果、参議院議員選挙法の改正案については一応の結論に到達いたしたのであります。  委員会は右の小委員会の結果の報告に基いて、参議院議員選挙法改正案要綱の審議に入ることになりましたところ、諸般の事情から急速に参議院議員の選挙、参議院議員の選挙、地方公共団体の議会の議員及び長並びに教育委員会委員の選挙等、各選挙を一括した選挙の基本法規の立案を必要と認めるに至りまして、右の小委員会の審議の結果をも参酌しつつ、基本規則について審議いたしました結果、各條項についての多数意見を取りまとめまして、別に議長に提出いたしました調査報告書の中に記載してあります選挙基本法案要綱を得るに至つたのであります。その委員会における審議の経過及び結果の大要について御説明申上げます。  本要綱は全文第一章から第十九章までで、その條文数も第一から第二百八十六までからなる厖大なものでありまして、その内容につきましては、総則、定数、任期、選挙権及び被選挙権、選挙に関する区域、選挙人各簿、選挙期日、投票、開票、選挙会及び選挙分会、候補者、当選人、特別選挙、同時選挙、選挙運動、選挙運動に関する收入及び支出並びに寄附、争訟、罰則、補則等の章を設けております。この要綱の内容につきましては、現行の十数件に上る各種選挙法規を総合し、能う限り一つの要綱の中に体系的に盛り込んだものでありまして、従来の複雑化した法規の單一化を図り、その内容についても簡易を期し、又選挙公営の方針に従いまして選挙運動の公営化を取入れることに配慮し、更に選挙の本義に従いまして運動の自由を認めると共に、他面、選挙運動の公明を保持するため、選挙費用、戸別訪問その他の事項についても或る程度の制限を加える等、先に決定した根本方針に則つたものであります。  その細部について特に重要な点及び特に論議のありました点の概略を申上げます。  第一に選挙区の問題につきましては、参議院議員の選挙区については全国区及び地方区共に現行制度を維持すべきであり、他の選挙の選挙区においても現行制度と同様にするということは、各委員の一致した意見でありました。  第二に選挙方法の問題につきましては、現行法の通り直接單記の投票方法を採用することについて、この際別に異議のなかつたところであります。  第三に選挙権の要件の問題につきましては、衆議院議員及び参議院議員の選挙については現行法の通りとし、地方公共団体の議会の議員及び長並びに教育委員会委員の選挙の場合には現行法の六ケ月の住所要件を三ケ月にするということは、委員の多数の意見でありました。  第四に、被選挙資格年齢の問題につきましては、参議院議員の選挙に関するもの以外の場合には現行法の通りとすることに別に異議もなく、ただ参議院議員の被選挙資格年齢につきまして反対意見もありましたが、結局四十年以上に引上げるという意見が多かつたのであります。  第五に、公務員の立候補の問題につきまして、各種の選挙について公務員は特定の公務員を除きまして在職中公職の候補者となることができないこととすることについては、別に異議もなく、都道府県の知事並びに市長については、自発行に離職した場合は、離職後六ケ月間は参議院全国選出議員の選挙又は当該地方公共団体の区域を含む選挙区においての衆議院議員若しくは参議院地方選出議員の選挙の候補者となることができないこととすることは、多数の意見でありました。  尚、以上の外に選挙人名簿の問題につきましては、衆議院議員選挙法及び参議院議員選挙法の採用する定時名簿主義により基本選挙人名簿を調製し、きれに随時名簿主義を併用して補充選挙人名簿を調製することとし、尚、船員について特例を設けて、能う限り選挙権の行使のできるようにするということ、立候補の場合の供託金の問題につきましては、各種選挙共に供託金制度を必要とする意見が多数でありまして、その金額については、参議院全国区選出議員の場合には十万円、地方選出議員の場合には六万円にすべきであるとの意見と、一律に三万円、一律に五万円とすべきであるとの意見がございましたが、この問題は公営費用の負担の問題とも関係する点から、結局公営費用は負担しないで、供託金は一律に五万円とするということ、尚、衆議院議員の場合及び知事の場合にも右と同額とすること、  補欠選挙の問題につきましては、現行法の通り一定数の欠損を生じた場合に補欠選挙を行うことはこの際別に異議のなかつたところであり、これに併せて補欠選挙に代えて繰上補充制度を採用し、当選人について選挙当日から三ケ月以内に欠員の生じた場合には繰上当選者を定めること、  選挙運動の演説会の問題につきましては、衆議院議員の選挙及び参議院地方選出議員の選挙並びに都道府県の知事の選挙については、公営の立会演説会を行うこととし、個人演説会及び街頭演説会はこれを自由とすること、  選挙の事前運動及び戸別訪問の問題につきましては、これを禁止することについて種々論議がありましたが、結局禁止するということ、尚右に関連して候補者が知人を訪問することは差支ない旨を右に附加して明らかにして置くということ、  選挙公営の拡充の問題につきましては、立会演説会の主催、新聞広告の掲載、閲歴公報の配付及び掲示表の掲示、無料葉書、ポスターに使用する用紙ガ特別乘車券、放送等、これらに要する経費はいずれも公営とすること、尚、参議院に関するものにつきましては、無料葉書は全国選出の場合には五万枚、地方選出の場合には三万枚、ポスターについては全国選出の場合には二万枚、地方選出の場合には四千枚とすること等は、いずれも委員会において委員の多数の御意見でありました。以上の外、尚、問題となつた点も多々あるのでありますが、詳細は速記録に讓りたいと存じます。  委員会は以上のような経過を経て一応その審議を終了し、選挙基本法案要綱を得るに至つたのでありますが、何分にもこの要綱の名條項については各委員の意見の異なつた点が極めて多々あるのでありまして、これを逐一決定して参るということは非常に困難でありますので、多数の意見のありました條項を取りまとめて要綱といたし、委員会調査の一応の案といたしたのであります。従いまして、右の要綱は委員会の終局的確定要綱には至らなかつたのでありまして、委員会としてはこの点遺憾ではありますが止むを得なかつたのであります。右の要綱は字句の表現方法、関係法律の整備、経過的事項等に亘つて更に考慮を加える必要があると考えられますが、閉会中におきまして、一応その調査を終了いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  28. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十八分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第九日)  一、日程第二 外国為替管理委員会委員の任命に関する件  一、日程第三 選挙法改正に関する調査に関する件